レイ・イナモト氏、佐々木康晴氏が審査員視点で語る、「これからの広告に必要なこと」(動画あり)

世界の広告賞の受賞作を俯瞰すると、時代の潮流や人々の関心の方向を見て取ることができます。またそれは、企業がこの先何を考えどう進むべきかの道しるべにもなり得ることでしょう。

2019年、カンヌライオンズDigital Craft Lions審査委員長を務めたレイ・イナモト氏、同Creative Data Lions審査委員長の佐々木康晴氏が、現在の潮流と今後のクリエイティビティーの可能性を読み解きます。

前編は、審査委員長ならではの目線で、世界の広告賞の傾向から、「これからの広告に必要なこと」について語ります。

 

天才プログラマー2人が語る、高度IT人材の採用のポイントとは?

時価総額10億ドルを超える未上場のベンチャー「ユニコーン企業」。日本に数社しかありませんが、そのうちの一社がPreferred Networksです。同社は、約280人の社員のうち8割がエンジニア・リサーチャー。それも世界レベルのトッププログラマーが多数在籍するという異色企業です。

今回は、競技プログラミングコンテストを開催するAtCoder代表・高橋直大氏とPreferred Networksの執行役員・秋葉拓哉氏との対談が実現。高度IT人材の採用事情や、人材育成のために必要なことについて語っていただきます。88年生まれの同い年で、ともにプログラミング少年だったお二人の対談は大いに盛り上がりました。

Preferred Networks執行役員 秋葉拓哉氏(左)とAtCoder代表取締役社長 高橋直大氏
Preferred Networks執行役員 秋葉拓哉氏(左)とAtCoder代表取締役社長 高橋直大氏

最も競争の熾烈なAIの分野で能力を発揮し、社会課題解決に貢献したい

高橋:僕は学生時代に競技プログラミングに熱中し、その後AtCoderを立ち上げました。秋葉さんはどのようにしてPreferred Networks(以下、PFN)に行き着いたのでしょう。

秋葉:中3か高1からプログラミングコンテストに参加しはじめ、高橋さんと同じように競技プログラミングに熱中していたのですが、やがてアルゴリズム自体に面白さを感じるようになりました。大学から博士課程までアルゴリズムの研究に没頭し、そのままアルゴリズムの専門家になろうと思って国立情報学研究所(※1)でアルゴリズムの研究を続けることにしました。しかし研究を続けるうちに、自分が培ってきた技術を使って、社会的な課題解決や価値創出に生かしたいと思うようになったのです。

自分の技術力を生かして勝負できる分野はどこかと考えてみたとき、AIの領域がいいと思いました。AIは最も競争の激しい分野で、グーグルなど世界を代表する企業と熾烈な開発競争を繰り広げていますし、深層学習(※2)の技術も日々進化しています。この世界で自分の技術力をフルに発揮できれば、社会課題の解決に貢献することにもつながると思い、PFNに入社しました。

※1=国立情報学研究所
日本唯一の情報学の学術総合研究所。ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなど情報関連分野の総合的な研究開発を推進するとともに、全国の大学や研究機関、民間企業などと連携し、最先端学術情報基盤 CSIの構築や提供などの事業を行なう。
 
※2=深層学習(ディープラーニング)
機械が大量のデータから特徴や法則性を自動で抽出する技術。特に深層学習は画像認識・音声認識などの特定タスクにおいて飛躍的に精度を高め、AI関連技術の急速な進化の原動力となっている。
 

高橋:僕の場合、競技プログラミングの世界で競争する楽しさを味わっていますが、秋葉さんは実業の中で競争に励んでいる。フィールドは違うけれど、根っこは似ているのかもしれませんね。

秋葉:おっしゃるとおりです。入社後も、競争に勝つことで価値を生み出すプロジェクトに積極的に取り組んでいます。例えば深層学習の学習速度において、世界最速記録を樹立してニュースになったり、画像認識のコンテストで世界2位になったりという、実績も出しています。会社にとって価値ある技術をつくりつつ、世界に対して勝負を挑み続けているんです。

高橋:PFN の社内にもAtCoderのユーザーは多いですよね。

秋葉:PFNは、社員280名のうち約8割がエンジニアとリサーチャーです。AtCoderを含む競技プログラミングの経験者も20人以上いると思います。参加を公言せずに、勉強のため、ひそかに参加している人もいるのではないでしょうか。当社社長の西川徹も、ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)の世界大会経験者です。僕がPFNを選ぶ時も、プログラミング能力が世界トップレベルの人と一緒に働けるということは大きかったです。

高橋:PFNのエンジニアは、どのような分野で活躍されている方が多いのでしょうか。

秋葉:PFNは、最先端技術を実用化し、現実世界のさまざまな分野でイノベーションを実現させることを目指しています。その領域は、自動運転、ロボット、バイオ、ケミカル、工場最適化など多岐にわたりますが、軸となっているのは深層学習です。深層学習の基礎技術やモデル開発を行うエンジニアもいれば、ロボットエンジニア、製品化・サービス化を行うエンジニアもいます。

Preferred Networks秋葉拓哉氏
秋葉氏は、プログラミング業界で超有名人。お名前で検索するとサジェストに「天才」と出る

客観的指標を用いて、人材採用のミスマッチを防ぐ

高橋:非IT企業では、エンジニアの採用がなかなかうまくいかないと耳にします。人事担当にプログラミングの知識がない、スキルを可視化しづらいという意見もよく聞きますよね。PFNでは僕らが作問したコーディングテスト(出題された課題に対し、実際にプログラムを書くテスト)をエンジニアの採用試験に採り入れていただいていますが、どのような形で活用しているのでしょうか。

秋葉:面接前にコーディングテストの問題を解いていただき、その結果をもとに面接を行います。その後は他社と同じように、数回の面接を経て、経営陣の面接にあがっていきます。

高橋:面接では、どんなことを聞くんですか?

秋葉:コーディングテストで書いてもらったコードを題材にしながら対話をするのですが、このとき必ずしも「正解できたかどうか」だけを見るわけではありません。ある課題に対してプログラミングする時、さまざまな選択肢がありますよね。「ここはなぜこう書いたんだろう」という箇所があったら、その人はきちんと検討した上でそう書いたのか、単に他に思いつかなかっただけなのか。そういう「意図」を面接時に掘り下げると、考え方や知識の深さが分るので、スキルを測るうえで大きなポイントになります。

高橋:チェックするのは「実装力」と「アルゴリズムの能力」、どちらの比重が高いのでしょうか。

秋葉:どちらかというより、もっと基本的なプログラミング能力を見ていますね。テストでは短めのルーチンだけど込みいった処理を正しく書けるかという能力を見ています。

もちろんアルゴリズムの能力も見ていますが、「難問を解けるか」ということよりも、どちらかと言うと「普通の問題におけるアルゴリズムの設計力」を見ています。例えば計算量(※3)をしっかり意識しているかどうかという点ですね。

※3=計算量
アルゴリズムの性能を評価するための指標。アルゴリズムが問題を解くまでに必要とする処理ステップ数(時間計算量)と、アルゴリズムを動かすために必要となるコンピューターの記憶容量(空間計算量)の2つの指標がある。計算量が小さいほど性能がいいアルゴリズムと評価される。
 

高橋:AtCoderではPFN以外の企業にもプログラミングの試験問題を提供していますが、実は相手企業によって内容を変えています。PFNのようにエンジニアがコードまでチェックして面接の材料にする企業では、不正解の場合でもコードをしっかり見てくれるので「ひっかけ問題」も入れられますが、コードが分からない人事担当者が点数だけで評価する企業に対しては、できるだけ実力が素直に表れるような問題をつくっています。

いずれにせよ「AtCoderのテストはアルゴリズムの設計能力、実装能力を問うもの」という根本的な思想は変わりません。ただ、アルゴリズムの設計能力を問う際に、計算量の改善を主軸に置くのですが、あまりに数学的過ぎる問題など、実務で要求されるプログラムの実装能力から遠い問題を作成してしまうと、企業が求める人材からズレることがあるので、なるべく実装能力がわかるように意識して作問することが多いですね。

AtCoder代表取締役社長 高橋直大氏
もともと野球少年だったという高橋氏。ケガのため、パソコン部に入部したことがプログラミングを始めるきっかけになった

秋葉:もちろんコーディングテストで分かるのは、あくまでも能力の一側面にすぎません。点数が高いのに採用されない方もいれば、逆もまたしかりです。それでも、プログラミングコンテストなどのレーティングは非常に客観的な指標ですよね。アルゴリズムの能力、短いルーチンの実装能力が、正確に表れていると思います。

高橋:AtCoderでは、2019年12月から「アルゴリズム実技検定」をスタートさせました。先ほどの話にも挙がったように、エンジニアの採用に当たってコードの意図まで見る企業はごくわずか。多くの企業ではプログラミングスキルを把握する方法がなく、採用のミスマッチ問題も発生しています。そこで、実践を想定したプログラミング能力を問うスキル認定サービスとして、アルゴリズム実技検定を始めたんです。秋葉さんは、この検定についてどう思いますか?

秋葉:多くの企業にとって有用な、素晴らしい取り組みだと思います。これまでのAtCoderのレーティング同様、客観的な指標になるのではないかと期待しています。

高橋:ありがとうございます。この検定だけで実業に必要な能力をすべて測れるわけではありませんが、相関は十分あると考えています。

僕もNASAのプログラミングコンテストで上位5人に入り、アルゴリズムがスペースシャトルの技術に使われたことがありました。プログラミングコンテストが実業につながるケースは少なくありませんし、AtCoderでも実業の課題を解決するコンテストを複数開催しています。競技プログラミングと実業にはギャップがありますが、だからといって両者はかけ離れているとも言えませんよね。

秋葉:競技プログラミングで培った能力は、実業でも大いに発揮されると思いますよ。その最たる能力が、実装が早くて正確であること。ディープラーニングは実装して終わりではなく、試行錯誤の連続です。論文を読んで実装して…を何度も行うんですね。そのサイクルを素早く正確に回せれば、それだけ結果的に優れたモデルにたどりつける。そういう意味では、競技プログラミングのスキルはあらゆるケースで役立つでしょう。

プログラミング教育のカギは“競争”にあり

高橋:2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されます。僕の場合、ひたすらプログラミングコンテストに出場し続けることでスキルを磨いていきましたが、周囲に優秀な仲間がいたことが、とても良かったと思います。秋葉さんはどのようにプログラミングスキルを磨いてきましたか?

秋葉:プログラミングを始めた中高生の頃は、独学しか選択肢がありませんでした。運よく先輩に教えてもらえる部活に入り、そこからは本を読んだりゲームを自作したりしていましたね。でも最初はそこまで深く学べず、夢中になれませんでした。その後、コンテストで優秀な方々を見たり、ライバルに出会ったりして一気に能力が伸びたという実感があります。

高橋:やっぱり競争、協力関係にある人と一緒に学ぶ環境だと、能力も伸びるんですよね。そう考えると、学校教育の場でも、プログラミングスキルで競争させるのはアリだと思います。

秋葉:僕は東大でプログラミングの授業を受け持ったことがありますが、高橋さんもプログラミングを教える機会がありますよね。どういう教え方をしていますか?

高橋:多人数相手にプログラミングを教える時は、教科書は事前に全部読んでいる前提で、教えるときはいきなり実践問題を解いてもらいます。本は自分ひとりで読めるのだから、僕が教科書の内容を順に教えてもしょうがない。そのほうが、教えるべきポイントを絞れるので効率が良いです。

秋葉:結構スパルタですね。でも、僕も近いものがあります(笑)。僕が教えるときに目指したのは、「全員に理解してもらう」ことではなく、「本気で夢中になってくれる人をひとりでも増やす」こと。競技プログラミングの問題を紹介したり、「良いコードとは何か」を話したり、高度な話題を交えつつ、面白いと感じてもらえそうなポイントを授業にちりばめたんです。

というのも、僕自身も「夢中になれるもの」を発見できた時にいちばん伸びたから。プログラミングは経験が重要な分野で、夢中になってひたすら経験を積むことが最も成長につながると思います。

高橋:そういう意味では、興味を持てない生徒が授業についていくのは難しいかもしれませんね。

秋葉:そうですね。なので、これから授業が始まる小学校などでは、興味を持ってもらえるように先生方に頑張ってもらえるとうれしいなと思います。最近はビジュアルプログラミング言語(※4)も進歩し、プログラミングを学ぶには良い環境だと思います。僕らの頃は学ぶ環境が整っていなかったので、今の小学生がうらやましいです。

※4=ビジュアルプログラミング言語
プログラムをテキストで記述するのではなく、プログラムに必要な要素をグラフィカルなパーツにし、ドラック&ドロップなどの操作でプログラミングできるようにしたもの。MITメディアラボが開発した「Scratch」、文部科学省が開発した「プログラミン」などがある。
 

高橋:ただ、僕らの時代も良いところはありましたよね。昔は市販のゲームもそこまでクオリティが高くなかったので、自分でも市販品と比べて引けを取らないレベルのゲームを作ることができたんです。でも、今は絶対に無理ですよね。つまり、良いものを作るハードルは下がっているけれど、ひとりでものづくりをして世の中に発信して反響を得るのは難しい時代になっていると思います。「ものづくり」をモチベーションにプログラミングのスキルを磨くのは難しいかもしれません。

だからこそ、「競争」をモチベーションにするのは良いと思うんです。それこそ僕の母校のパソコン研究会のメンバーは、全員競技プログラミングをやっているそうです。

秋葉:情報オリンピックにせよ、アルゴリズム実技検定にせよ、目標ができるとみんなで一緒に頑張ろうという流れができ、プログラミング人口も増えますよね。そういう機会が増えることを願っています。競技の成績だけがすべてではありませんが、コンテストに夢中になることはその後のキャリア、人生にとってプラスになると思います。

Preferred Networks執行役員 秋葉拓哉氏とAtCoder代表取締役社長 高橋直大氏

高橋:そうやって高度IT人材が増えたとして、彼らの活躍の場を増やすために何が必要だと思いますか?

秋葉:企業の経営層に、技術への理解を深めていただくことでしょうか。

高橋:確かにそうですよね。高度IT人材はまだまだ人手不足で、需要が高まっているのにもかかわらず、報酬を上げている企業は一部ですよね。エンジニアを求める企業は多いのに、総合職の枠で募集をかけている企業もあったり、採用の仕方にも課題が残りますし、いざ入社しても技術職の部署がなかったりすることも。我々が高度IT人材を増やす活動を行うことも大事ですが、それと同時に企業が優秀なエンジニアを受け入れ、活用する体制を整えないと活躍の場は増えていかないと思います。

秋葉:おっしゃるとおりです。高橋さんの意見に付け加えるとしたら、エンジニアが面白いと思える仕事を企業が提供できるかどうかも重要だと思います。それは僕がPFNに入社を決めた理由の一つでもあります。「ここには面白い仕事がある」「技術的にチャレンジングで、新たな価値を創出できそうだ」「この技術を突き詰めれば、社会的課題を解決できるかもしれない」と思わせてくれる企業は、エンジニアにとっても魅力的ですから。

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電通のクリエイターによるアート展「ONE CREATIVE」が開催

電通の第1CRプランニング局に所属するアートディレクター、クリエイティブディレクターによるアート作品の展示会「ONE CREATIVE」のVol.1として、「畑野憲一 中澤真純 展」が東京・日本橋のgalerie H(ガルリアッシュ)で1月26日~2月8日に開催される。

電通のクリエイターによるアート展「ONE CREATIVE」ポスター

展示会では、普段広告に携わるアートディレクター、クリエイティブディレクターの、日々の仕事では見ることができない、アーティストとしての作品が披露される。

またVol.2「くぼたえみ 平田優 若田野枝 展」が2月16~29日に開催される。


「ONE CREATIVE」Vol.1
畑野憲一 中澤真純 展
会期 :2020年1月26日(日)~2月8日(土)
休廊日:1月27日(月)、2月3日(月)
開廊 :12:00~19:00 (最終日は17:00まで)
会場 :galerie H(ガルリアッシュ)
    東京都中央区日本橋小舟町7-13 東海日本橋ハイツ2階

【作家在廊日】
畑野憲一:1/26(日)、1/31(金)、2/2(日)、2/8(土)
中澤真純:1/26(日)、1/29(水)、1/31(金)、2/5(水)、2/8(土)

 畑野憲一 作品と画像
■畑野憲一
1CRP局 HRMディレクター。1962年神奈川県生まれ。東京藝術大デザイン科卒業。東京藝術大美術学部大学院修了。88年電通入社。ニューヨークADC金賞・特別賞、カンヌライオンズ銅賞、ニューヨークフェスティバル銀賞のほか、新聞広告賞、準朝日広告賞、毎日広告デザイン賞優秀賞、日経広告賞優秀賞など国内外の受賞多数。

 中澤真純 作品&画像
■中澤真純
1CRP局 クリエイティブディレクター。1962年茨城県生まれ。茨城大卒業、東京藝術大美術学部大学院修了。88年電通入社。カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル金賞・銀賞、アドフェスト ダイレクトロータス銀賞のほか、朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、日経広告賞など国内外の受賞多数。

麻生太郎の“単一民族”発言への擁護とアイヌヘイトが跋扈するなか、アイヌのアイデンティティを描いた『熱源』が直木賞を受賞!

 麻生太郎財務相が13日、「日本は2000年の長きにわたって一つの場所で、一つの言葉で、一つの民族、一つの天皇という王朝が続いている国はここしかない」と発言し、大きな批判の声があがっている。言うまでもなく、日本は単一民族国家ではない。沖縄はかつて琉球王国だったし、日本列島に...

ものづくりへの情熱と生命力を宿した “動きだすドレス”の制作秘話

次世代のアートディレクションを模索するため、新進のアートディレクターが自由な表現のプロトタイプを発表する“NEWSPACE”プロジェクト。第5弾は、まるで生きているように動きだす不思議なドレス、“ZOETROPE DRESS”です。

作品を手掛けたのは、グラフィック・空間デザイン・商品開発など、ジャンルにとらわれずさまざまなアートディレクションを行う、くぼたえみ。
“ZOETROPE DRESS”が誕生したバックボーンと制作過程を詳細に明かします。


“アート”と“ファッション”の間にある“装置”をつくる

まずは、実際にドレスが動く様子を収めた映像をご覧ください。

 

紀元前、人は“道具”として服を生み出しました。
やがて人々は着るものに影響され、気持ちや態度を変化させるようになりました。
もしもドレスに命が宿って、人間を翻弄しだしたら?
そんな空想を作品にしました。

─ ZOETROPE DRESSの構想は、どのように考えついたのでしょうか?
ZOETROPE DRESSは、まるで生きているように動くドレスです。
ゾートロープというアニメーション技法を応用して制作しており、ストロボを規則的に当てると肉眼でも動いているように見えます。

今回の作品の発想の背景には、学生時代から続く個人活動が大きく影響しています。昔から装飾の持つ影響力にとても興味があり、テキスタイルのシリーズや“装い”をテーマにした立体作品などを制作してきました。

過去の作品
過去の個人作品

また休日には、より考えを深めたいという思いから、服飾の勉強会や染めや織りの職人さんのお話を聞かせていただく会などに参加しています。
そんな活動をしていく中で、紀元前から人々を魅了し続けてきた“衣服”が持つ原始的なパワーを表現してみたいと思うようになりました。

でも私はファッションの専門家ではないし、美しいお洋服はすでに世の中にたくさんある。そこで、アートディレクターの技術と、服づくりのプロフェッショナルの方の技術が掛け合わさった時に初めて実現できる、“アート”と“ファッション”の間にある“装置”のようなものをつくりたいと思いました。


古典的なアニメーション技法を応用した“動くドレス”

─ 作品名にもある「ゾートロープ」について詳しくお聞かせください。
 “ゾートロープ”とは、ギリシャ語で“生命の輪”という意味。まだ映像技術がなかった時代に発明された、原始的なアニメーション技法を指します。連続性のある絵を環状に並べて回転させ、隙間からのぞくことで、絵が動いているように見えるというものです。
現代では立体を用いたアニメーションをつくる手法にも発展。人の視線を断続的に遮断すると、目の前で立体自体が動いているような効果が得られます。

今回の作品
今回の作品。ドレスのパーツひとつひとつがアニメーションになるように連続した形になっている

“衣服に応用できそうな私の技術は何があるだろう?”と考えていた際に、学生時代アニメーションを制作していた経験からこの技法を思い出しました。もしかして、ゾートロープとドレスを組み合わせてみたら、誰も見たことがない不思議なものができるのではないか?そんな仮説のもと、本当に実現可能なのか、試行錯誤の旅が始まりました。


鬼才クリエイターとの協働で想像とジャンルを飛び越える

─ 今回ニットを担当したファッションデザイナーの方とはどのようにつながったのでしょうか?
企画書を書き、coromozaの西田拓志さんに一緒につくってくださる方がいないか相談をしたところ、圧倒的な存在感のニットの作品で国内外から注目を集めている丹治基浩さんをご紹介いただきました。

丹治基浩さんの作品
丹治基浩さんの作品

私は他者と協働する中で生まれる相乗効果やエネルギーにとても魅力を感じています。今回も丹治さんやカメラマンの山崎彩央さん、プロデューサーの錦木稔さんをはじめ、各分野のプロフェッショナルの方たちと制作したことにより、自分の想像を超えた作品を完成させることができました。
家庭用編み機と手編みを駆使して描かれるパワフルなニットの表情に、ぜひ注目してご覧いただけたらうれしいです。


約半年間におよぶ制作は試行錯誤と手作業による検証の繰り返し

─ 試行錯誤の連続だったとのことですが、具体的なプロセスを教えてください。

 

まずはじめに、ニットでアニメーションを作った時の見え方の検証をしました。ドーム状の立体に、アバウトに連続した形状のニットパーツを取り付け、回転させました。(Step 1)

次に、ドレスの形状×ゾートロープの仕組みが成立するか検証するため、実際の約1/6サイズで実験をしました。ドレスの型紙を作成し、円周率などを使いながら、ドレスのパーツが連続して動くための配置を決めていきました。(Step 2)

その後、どんな形状のパーツがアニメーションになった時に効果的か、粘土を使用して模索しました。(Step 3)

そして、原寸大での調整。実寸のパーツで実験したところ、1/6サイズでは成立していた尖った形状が、本番の大きさだと重力によって垂れてしまうことが分かりました。(Step 4)

さまざまな形を試し、最終的に渦巻きの形状にたどり着きました。(Step 5)

そうして出来上がったドレスを使用し、映像と写真に収めました。

今回の作品

まだこの世界にない、カテゴライズできないものづくりを

─ アートディレクターという職業は、これからどのように進化していくと思いますか?
アートディレクターの役割や求められるスキルは、人々の生活環境の変化に伴い年々広がってきていると感じます。
平面や立体、空間などの包括的なディレクションを求められる案件も増えてきました。
例えば、食品会社さんのオリジナルスイーツブランド創設のお仕事では、コンセプトから店舗デザイン、グラフィックやパッケージ、ホームページなど総合的につくらせていただいたり、パティシエの方と商品を一緒に考えるなどしました。

パティスリーGIN NO MORIの事例

お仕事や作品づくりを通じて、さまざまな職業の方と協働していく中で感じるのは、柔軟であることの大切さです。

例えば、真面目なものと緩いものを掛け合わせてみる。
自国の文化の素晴らしさを知った上で、他国のすてきな文化を取り入れていく。
先入観を捨てて、まずは踏み出してみる。

そうやって物事の境界を飛び越えながらできるものは、まだどの世界にもない、唯一無二のものではないかと思います。
仕事でも個人制作でも、やったことのないことに挑戦しながら、カテゴライズできないものたちをつくり続けたいです。

今回の作品“ZOETROPE DRESS”も、発展・展開していきたいと思っています。舞台演出や映像作品への活用など、興味を持っていただいた方はぜひinfo@newspace.galleryまでご連絡ください。

「ZOETROPE DRESS」STAFF LIST
・Art Director:くぼたえみ
・Knit Designer:丹治基浩(motohiro tanji)
・Photographer:山崎彩央(amana inc.)
・Producer:錦木稔(amana inc.)
・Director:小野聖史
・Hair&Make:扇本尚幸
・Retoucher:首藤智恵(amana inc.)
・Music:佐藤牧子、佐藤教之(Heima) 敬称略

「人づくりから共創しよう」〜合同インターンシップ  engawa young academy

事業共創拠点「engawa KYOTO」で始めた新たな産学共創の取り組みのひとつが、engawa young academy(以下、eya)。2019年11月〜2020年2月の4カ月間にわたって、京都を中心とした大学生36人と異業種大手企業6社のメンターが共創し、将来の日本を担う学生の成長を支援する長期的な合同インターンプログラムです。参加企業は、島津製作所、積水ハウス、⽇本たばこ産業、パナソニック、みずほフィナンシャルグループ、電通の6社。

プログラムはリンクアンドモチベーション社と電通京都ビジネスアクセラレーションセンターで共同開発、運営を行います。電通側の事務局は、京都ビジネスアクセラレーションセンターの眞竹・湊が担当します。11月に行われた初回の様子とこのプログラムの開発背景や狙いについて、眞竹広嗣がご紹介します。

緊張感みなぎる「チームビルディングワーク」とは ?

今回のeyaは、2019年11月から2020年2月にかけて月1回のペースで行われるプログラムで、各回に狙いと目玉プログラムを仕込んでいます。

11月に行われた初日はチームビルディングワーク、具体的には二つのコンテンツで構成しました。

1:学生たち自らがチームメンバーを選ぶ、チームクリエイト
グループワークを行う場合、普通のインターンシップだとあらかじめチームが決められているケースが多いのではないでしょうか?eyaでは、以下のステップで、自分の個性を鑑みながらメンバーを選び、指名をする、またされた側は受けるかどうかを考える(=題して、戦略的M&A会議)ことで、多様性のある6人がチームメンバーになることを意識したワークを行いました。

狙いは、このプログラムの中で、自らの学び、成長を最大化するために、自分にとってどのようなメンバーとチームになるのが望ましいのか、自ら考え、情報を集め、選ぶ機会を与える、ということです。実際始まると、「チームになってください!」「ごめんなさい…」そんなやりとりもしばしば発生。どういうメンバーとチームを組むことが自分の刺激になりそうか、主体的に考える学生たちの姿勢が垣間見えました。

2:チームがメンターを逆指名!! メンタードラフト会議
チームメンバー同様、メンターも、決められたメンターではなく、チームメンバーと相談して、チームごとにメンターを指名する“メンタードラフト”を行いました。

まず、メンターの皆さんが、企業を明かさない範囲での業務歴や仕事観、人生観などに踏み込んで自らをプレゼンテーション。その後、メンターは各テーブルを回り、学生からの質問タイム。学生がメンターを選ぶための質問をぶつけていきました。

大人が真剣にプレゼンして、学生がチームのメンターを選ぶ。普通のインターンとは逆のケースで、企業側にも緊張感を求める。そんな場を設けることにももちろん、狙いがあります。一つは、チームクリエイト同様、自らの学び、成長を最大化するための環境をつくり、自ら考え、情報を集め、選ぶ機会を与える、ということです。もう一つは、企業側も学生から選ばれることで、学生の視点を直に感じる、というものです。いつもは選ぶ側の企業が、目の前で学生から選ばれる。この緊張感あるプログラム、メンターの皆さまからは、

「人事が試されるのはとてもグッドです」
「異業種の方のプレゼンテーションが、自分とは違い刺激があった」
「私自身の真価を問われる良いきっかけになったとも感じています」
(参加企業の声)

という声を頂きました。企業側も学生から選ばれることによる気付き、また学生同士だけでなく、企業同士も刺激し合う、という点において、初日のトライはある程度、目的を果たせたのではないかと感じています。

では、なぜ、このようなプログラム設計を行ったのか。eyaの開発背景と狙いを紹介していきます。

大手企業における人材課題の解決に向けて

「自社だけで活動をしていても、接触できる学生の層が固定化しつつあった」
(参加企業の声)

VUCAといわれる環境の中で、企業は新たな成長を模索しています。もちろん、強みを発揮しているコア市場での競争力維持・強化のために、必要な人材確保は欠かせません。企業が収益を上げる柱だからです。ただ、その観点での人材獲得だけでは、その先の成長を描くための取り組みを担う人材が不足する恐れがあります。多くの人材は、コア領域に基づくイメージをベースとしてその企業に好意を持ち、企業は、その志望してくる人材のみにアプローチすることになるからです。

新領域へ拡張する企業と学生の関係図

既存のやり方では接触し得ない、自社に関心のない人材をどう自社に関心を向けさせ、自社への志望動機を高めるか、これまでとは異なるスタンスのアプローチとの両立が必要になっているのです。つまりは、新たな成長事業をつくる人材領域にも、engawa KYOTOのコンセプトである、未知との境界線、ウチなる限界を越えてソトとつながっていく、というオープンイノベーションの考え方を持ち込むのが重要になるのではないか?ということです。

「合同インターンシップ」における企業側と学生側のベネフィット
 

「イメージだけで就職活動はしてほしくないので、自社、あるいは業界に対して正しい情報をお伝えした上で、学生に判断してほしいなと思っています」
(参加企業の声)

ネットの普及により流通する情報量が爆発的に増えたことに加え、企業の合併や事業領域の拡大により企業側のリアルな状態は複雑さを増し、その情報理解にはかなりのカロリーを要します。一方、ネットでのリコメンド機能になれている学生は、コンテンツの処理速度をどんどん高速化し、情報は選んで捨てるものと考えています。そのため、よほどのモチベーションがないと自ら情報を取りにいく、ということがおきません。

結果、学生が就活前に持っている知識の中で、企業イメージが処理されるケースが多く、「日系の大手」というだけで、
・年功序列で若手には裁量権がない。
・安定志向で挑戦の機会を与えてもらえない。
というレッテル化された文脈で処理されてしまい、企業研究すらしてもらえないリスクを抱えています。

eya開発の狙い

このような中で、eyaはこれまでの「人材を待つ」とは異なるアプローチの在り方として、「人材を育む」ことを目的として設計しています。「人づくりから共創しよう」のコンセプトのもと、電通のアイデア実行力とリンクアンドモチベーションの人材育成、それぞれのノウハウを基軸とした構成で、6社のメンターと共に企業のみならず日本の新たな成長を支え世界に通じる人材を育て、意欲ある学生のビジネスリーダー、イノベーターとしての資質を磨き、成長を支援していくことが狙いです。それにより、企業側、学生側双方に次のようなベネフィットを提供できると考えています。

engawa young academyの企業側と学生側のベネフィット

企業側のベネフィットとしては、

●自社のみの活動では接触できない人材との接点確保
異業種6社が集まることで、自社のみでは接点が持ちづらいタイプの人材との接触機会を生み、その視点、マインド、行動を直接、観察することができます。

●学生から選ばれることで、学生の視点を学ぶ
メンタードラフトの狙いですが、メンターが学生から選ばれる過程を通じて、今の学生の率直な視点を感じ、気付きを得ることができます。

●人事セクションでの企業横断のつながり、また切磋琢磨が生まれる
人事の活動において、他社と同じ時間を一定期間共有する、ということはなかなかなかったのではないでしょうか。異業種の人事同士が互いに刺激し合い、知見を交換し合う場にもなります。

実際、次のような期待を頂いています。

「業界や自社志望層ではない、通常の活動では接触できない層と接触ができる」
「学生だけでなく、参加するメンター共々に成長しあえる仕組みであるこのプログラムは、新たな社員育成の取り組みとしても期待しています」
(参加企業の声)

一方、学生側へのベネフィットですが、

●既存イメージの壁を破る企業情報のインプット
それまで視野になかった業種・業界・企業のメンターや情報に深く接触することで、6社だけでなく企業に対しての視野を広げることができます。

●ドラフト、チームクリエイトで自ら環境をつくる機会の提供
お仕着せの環境ではないことで、プログラムへのより主体的な参加を促します。もちろん、メンターやメンバーが希望どおりにならない方が多いと思いますが、その状況からどうやってチームの強みを生かすか、を考えることは成長につながると考えます。

●将来の社外同期ネットワークの保有
4カ月間、絆を深め合うチャンスがあります。それは社会人となった後、社外同期へとつながり、ビジネスの拡大や個人としての成長にとってこれからの時代に有効なネットワークになります。

ベネフィットは以上です、というのは、あくまで今のところの話で、人材領域での共創ベネフィットは、まだまだ奥深いところにもあるのではないか、見えていないところを今後さらに発見、開拓していきたい、と考えています。

合同インターンシップ参加者
では最後に、ヤングアカデミー総長の前田EPD、今回の共創パートナーで、アカデミー学長であるリンクアンドモチベーション樫原 洋平さんからのコメントです。

engawa young academyで描きたいストーリーがあります。それは、ここの卒業生が社会人となって、ここでつながったeyaの社外同期、企業、電通京都BACやリンクアンドモチベーションとの縁から新しいビジネスのタネが生まれ、共創し、実らせることです。そのためにまず、engawa KYOTOでの濃密な4カ月を、学生の皆さん、参加企業のメンターの皆さんとともに走りきりたいと思います。

リンクアンドモチベーション組織開発デザイン室 エグゼクティブ ディレクター 樫原 洋平
電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター プロジェクトリーダー 前⽥ 浩希EPD

電通京都ビジネスアクセラレーションセンター 情報発信ウェブメディア“JAMJAM!”も、のぞいてみてください!

ものづくりへの情熱と生命力を宿した “動きだすドレス”の制作秘話

次世代のアートディレクションを模索するため、新進のアートディレクターが自由な表現のプロトタイプを発表する“NEWSPACE”プロジェクト。第5弾は、まるで生きているように動きだす不思議なドレス、“ZOETROPE DRESS”です。

作品を手掛けたのは、グラフィック・空間デザイン・商品開発など、ジャンルにとらわれずさまざまなアートディレクションを行う、くぼたえみ。
“ZOETROPE DRESS”が誕生したバックボーンと制作過程を詳細に明かします。


“アート”と“ファッション”の間にある“装置”をつくる

まずは、実際にドレスが動く様子を収めた映像をご覧ください。

 

紀元前、人は“道具”として服を生み出しました。
やがて人々は着るものに影響され、気持ちや態度を変化させるようになりました。
もしもドレスに命が宿って、人間を翻弄しだしたら?
そんな空想を作品にしました。

─ ZOETROPE DRESSの構想は、どのように考えついたのでしょうか?
ZOETROPE DRESSは、まるで生きているように動くドレスです。
ゾートロープというアニメーション技法を応用して制作しており、ストロボを規則的に当てると肉眼でも動いているように見えます。

今回の作品の発想の背景には、学生時代から続く個人活動が大きく影響しています。昔から装飾の持つ影響力にとても興味があり、テキスタイルのシリーズや“装い”をテーマにした立体作品などを制作してきました。

過去の作品
過去の個人作品

また休日には、より考えを深めたいという思いから、服飾の勉強会や染めや織りの職人さんのお話を聞かせていただく会などに参加しています。
そんな活動をしていく中で、紀元前から人々を魅了し続けてきた“衣服”が持つ原始的なパワーを表現してみたいと思うようになりました。

でも私はファッションの専門家ではないし、美しいお洋服はすでに世の中にたくさんある。そこで、アートディレクターの技術と、服づくりのプロフェッショナルの方の技術が掛け合わさった時に初めて実現できる、“アート”と“ファッション”の間にある“装置”のようなものをつくりたいと思いました。


古典的なアニメーション技法を応用した“動くドレス”

─ 作品名にもある「ゾートロープ」について詳しくお聞かせください。
 “ゾートロープ”とは、ギリシャ語で“生命の輪”という意味。まだ映像技術がなかった時代に発明された、原始的なアニメーション技法を指します。連続性のある絵を環状に並べて回転させ、隙間からのぞくことで、絵が動いているように見えるというものです。
現代では立体を用いたアニメーションをつくる手法にも発展。人の視線を断続的に遮断すると、目の前で立体自体が動いているような効果が得られます。

今回の作品
今回の作品。ドレスのパーツひとつひとつがアニメーションになるように連続した形になっている

“衣服に応用できそうな私の技術は何があるだろう?”と考えていた際に、学生時代アニメーションを制作していた経験からこの技法を思い出しました。もしかして、ゾートロープとドレスを組み合わせてみたら、誰も見たことがない不思議なものができるのではないか?そんな仮説のもと、本当に実現可能なのか、試行錯誤の旅が始まりました。


鬼才クリエイターとの協働で想像とジャンルを飛び越える

─ 今回ニットを担当したファッションデザイナーの方とはどのようにつながったのでしょうか?
企画書を書き、coromozaの西田拓志さんに一緒につくってくださる方がいないか相談をしたところ、圧倒的な存在感のニットの作品で国内外から注目を集めている丹治基浩さんをご紹介いただきました。

丹治基浩さんの作品
丹治基浩さんの作品

私は他者と協働する中で生まれる相乗効果やエネルギーにとても魅力を感じています。今回も丹治さんやカメラマンの山崎彩央さん、プロデューサーの錦木稔さんをはじめ、各分野のプロフェッショナルの方たちと制作したことにより、自分の想像を超えた作品を完成させることができました。
家庭用編み機と手編みを駆使して描かれるパワフルなニットの表情に、ぜひ注目してご覧いただけたらうれしいです。


約半年間におよぶ制作は試行錯誤と手作業による検証の繰り返し

─ 試行錯誤の連続だったとのことですが、具体的なプロセスを教えてください。

 

まずはじめに、ニットでアニメーションを作った時の見え方の検証をしました。ドーム状の立体に、アバウトに連続した形状のニットパーツを取り付け、回転させました。(Step 1)

次に、ドレスの形状×ゾートロープの仕組みが成立するか検証するため、実際の約1/6サイズで実験をしました。ドレスの型紙を作成し、円周率などを使いながら、ドレスのパーツが連続して動くための配置を決めていきました。(Step 2)

その後、どんな形状のパーツがアニメーションになった時に効果的か、粘土を使用して模索しました。(Step 3)

そして、原寸大での調整。実寸のパーツで実験したところ、1/6サイズでは成立していた尖った形状が、本番の大きさだと重力によって垂れてしまうことが分かりました。(Step 4)

さまざまな形を試し、最終的に渦巻きの形状にたどり着きました。(Step 5)

そうして出来上がったドレスを使用し、映像と写真に収めました。

今回の作品

まだこの世界にない、カテゴライズできないものづくりを

─ アートディレクターという職業は、これからどのように進化していくと思いますか?
アートディレクターの役割や求められるスキルは、人々の生活環境の変化に伴い年々広がってきていると感じます。
平面や立体、空間などの包括的なディレクションを求められる案件も増えてきました。
例えば、食品会社さんのオリジナルスイーツブランド創設のお仕事では、コンセプトから店舗デザイン、グラフィックやパッケージ、ホームページなど総合的につくらせていただいたり、パティシエの方と商品を一緒に考えるなどしました。

パティスリーGIN NO MORIの事例

お仕事や作品づくりを通じて、さまざまな職業の方と協働していく中で感じるのは、柔軟であることの大切さです。

例えば、真面目なものと緩いものを掛け合わせてみる。
自国の文化の素晴らしさを知った上で、他国のすてきな文化を取り入れていく。
先入観を捨てて、まずは踏み出してみる。

そうやって物事の境界を飛び越えながらできるものは、まだどの世界にもない、唯一無二のものではないかと思います。
仕事でも個人制作でも、やったことのないことに挑戦しながら、カテゴライズできないものたちをつくり続けたいです。

今回の作品“ZOETROPE DRESS”も、発展・展開していきたいと思っています。舞台演出や映像作品への活用など、興味を持っていただいた方はぜひinfo@newspace.galleryまでご連絡ください。

「ZOETROPE DRESS」STAFF LIST
・Art Director:くぼたえみ
・Knit Designer:丹治基浩(motohiro tanji)
・Photographer:山崎彩央(amana inc.)
・Producer:錦木稔(amana inc.)
・Director:小野聖史
・Hair&Make:扇本尚幸
・Retoucher:首藤智恵(amana inc.)
・Music:佐藤牧子、佐藤教之(Heima) 敬称略

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