JRA「史上初」ナックビーナス「4年連続2着」の”異業”達成!重賞1勝ながらもG1馬と遜色なし!?

 7日に行われたオーシャンS(G3)はダノンスマッシュが制し、高松宮記念(G1)に向けて弾みをつけた。それと同時に、2着のナックビーナス(牝7歳、美浦・杉浦宏昭厩舎)は「同一重賞4年連続2着」という偉業ならぬ“異業”を成し遂げた。

 レースは逃げるエンゲルヘンにハナを譲り、2番手からの競馬。直線で先頭に立つと抜群の手応えも、あと一歩のところでダノンスマッシュの末脚に屈し2着に敗れた。3着のG1馬タワーオブロンドンに3馬身差をつける快走だけに、悔しい2着だ。

 この敗戦に杉浦調教師は「2番手からよく頑張ってくれた。ただ今回は勝った馬が強かったですね」と勝ち馬には白旗を上げつつ、重賞を惜しくも逃した愛馬の健闘を称えた。

 奇しくも同一重賞4年連続の2着となったが、これはJRA「史上初」の大記録である。

 JRA平地同一重賞の記録は「3連覇」が最高で、これまで6頭が記録している。その中の1頭、中山巧者・マツリダゴッホは2007年~2009年のオールカマー(G2)で達成している。障害ではオジュウチョウサンが中山グランドジャンプ(G1)4連覇という記録を達成しているが、盛衰の激しいスプリント界で4年連続2着の高いパフォーマンスを維持するのも至難の業だ。

 オーシャンSの1着賞金は4100万円、2着賞金は1600万円。4年連続で2着の賞金を獲得しているため、オーシャンSだけで6400万円を獲得。これは同レースの1着賞金以上に相当する。

 また、ナックビーナスがこれまで稼いだ総賞金は3億5000万を超え、重賞1勝ながらもG1馬並みだ。さらに15年の千葉サラブレッド・セールにて2160万円で取引されたことを考えると、かなり優秀な馬主孝行の馬である。

 これまで芝1200m以下の距離では、【6,9,3,7】の成績を収めており、勝率0.240、連対率0.600の名スプリンター。さらに中山競馬場では【4,8,1,1】と抜群の相性を誇っている。

 今年で7歳のナックビーナスだが、オーシャンSの走りを見る限りはまだまだ活躍に期待がかかる。マツリダゴッホが得意の中山競馬場で有馬記念(G1)を制したように、大仕事をするのはまだまだこれからかもしれない。

無印良品、好調でも暗雲垂れ込める…ニトリと全面対決の様相、新型コロナの余波も

無印良品」を展開する良品計画の先行きに暗雲が垂れ込めている。

 新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、2月6日までに無印良品の中国内の休業店が約140店まで拡大した。中国内の半数以上が休業に追い込まれたかたちだ。

 中国での無印良品の店舗数は2019年11月末時点で265店と、日本(437店)に次ぐ規模となっている。海外すべての店舗数は524店で、中国だけで半数を占める。中国ではこれまで年30店ほどのペースで新規出店してきた。大型店の出店も強化しており、14年に成都、15年に上海、18年には南京、19年1月に杭州にも出している。

 さらに、中国では店舗改装も積極的に行っている。年に20店舗で行う目標を掲げ、19年2月期は15店舗で実施した。

 現地での商品開発も進めている。中国市場でのニーズに合った商品を展開するため、18年9月に中国で商品開発部を設立。19年3月から現地開発商品の販売を開始した。まずは、マットレスとベッド台、シーツのサイズを世界共通サイズから中国における標準的なサイズへと変更している。

 たとえば、マットレスは全販社共通で幅は100cm、140cm、160cm、180cmだったが、中国における標準的なサイズである120cm、150cm、180cmに変更した。また、丈(長さ)も195cmから200cmに変更している。

 こうした変更により、他社のベッド台やマットレスなどと無印良品の商品とを合わせることができるようになった。

 ほかに、中国の生活様式に合わせて開発したステンレス保温保冷マグや木製フレームソファーなどの新商品を投入し、好評を得ているという。今後は家電や食器なども開発し、売り上げを向上させたい考えだ。

 良品計画はこうした施策で中国市場を開拓し、店舗網を拡大させてきた。だが、新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、今後の成長に黄色信号がともっている。今後の動向は予断を許さない。

生活雑貨が伸び悩み

 一方、国内事業はどうか。良品計画の19年3~11月期における国内事業の営業収益は、前年同期比8.8%増の2057億円と大きく伸びた。同期において店舗数が20店増えて478店に拡大したほか、国内無印良品の既存店売上高が前年同期比5.1%増と大きく伸びたことが寄与した。

 このように国内事業が好調だったほか、海外事業が新型コロナウイルスの問題が露見する前で好調だったため、19年3~11月期の良品計画の連結営業収益が前年同期比7.9%増の3282億円と大きく伸びた。

 こうしてみると、中国事業に不安を抱える一方で国内事業は盤石のように思える。だが、良品計画(単体)の商品別売上高をよく見てみると、不安材料が浮かび上がってくる。国内も今後は予断を許さない。

 売上高で4割を占める「衣服・雑貨」の19年3~11月期の売上高は、前年同期比21.3%増の1013億円と大きく伸びた。「食品」も14.9%増の202億円と、規模は小さいものの大きく伸びている。5割を占める「生活雑貨」は2.3%増の1251億円だった。

 いずれも増収なので不安材料はないようにも思える。しかし、生活雑貨の伸び率が鈍化している。これが不安材料といえる。同部門の17年3~11月期の伸び率が10.6%、18年3~11月期が5.2%だったので、19年3~11月期の伸び率(2.3%)は満足できるものではないだろう。また、全体の伸び率(10.5%)と比べて圧倒的に低いので、生活雑貨は伸び悩んだといえる。

 さらに、生活雑貨の内訳の伸び率を見てみると、より具体的な不安材料が浮かび上がってくる。それは「家具」の売上高が落ち込んだことだ。家具は生活雑貨における売上高で26%を占める主力商品だが、19年3~11月期は前年同期比1.7%減とマイナスだったのだ。

ニトリとの競合度合い高まる

 家具の販売ではニトリホールディングス(HD)が展開する家具チェーン「ニトリ」や、雑貨店「デコホーム」との競争が激しくなっている。少し前までニトリは郊外ロードサイドを主戦場としていたため、同立地にあまり店舗がない無印良品との競合度は低かった。しかし、近年はニトリやデコホームが都市部や商業ビルに積極的に出店するようになり、同立地を得意とする無印良品との競合度は高まっていった。これが影響し、無印良品の家具の販売が落ち込んだ面がある。

「ファブリックス」(布製品)もニトリHDの脅威にさらされている。直近本決算の19年2月期のファブリックスの売上高は、前期比1.2%減と落ち込んだ。また、家具は4.7%増だったが、全体が8.9%増と大きく伸びているので、家具は伸び悩んだといえるだろう。家具とファブリックスは18年2月期も伸び悩んでおり、全体が11.2%増だったなか、家具が0.3%増、ファブリックスが7.2%増にとどまっている。17年2月期も同様に伸び悩んだ。

 ニトリHDの攻勢はまだまだ続いているので、当面は無印良品の家具とファブリックスが苦戦を強いられる可能性は低くない。

 現在好調の衣服・雑貨も、中長期的にはニトリHDにやられる可能性がある。無印良品は中価格帯の衣料品を扱うが、最近、ニトリHDが中価格帯の衣料品を扱う店舗を本格展開し始めたためだ。

 ニトリHDは「N+(プラス)」のブランドで女性向けの衣料品の販売を始めた。将来における家具の頭打ちを見越し、新たな収益源として衣料品に目をつけたというわけだ。現在、東京、埼玉、千葉の1都2県に4店舗を展開している。商品のデザインはどれもシンプルで、価格帯は定価で1点2000~5000円程度だ。

 Nプラスと無印良品の衣料品は、デザインがシンプルという点で共通している。ただ、趣はやや異なるので、デザインにおいて真正面からぶつかることはなさそうだ。もっとも、価格が同程度のため、まったく競合しないとはいえないだろう。

 Nプラスは現状わずか4店舗しかなく、無印良品にとって脅威ではない。だが、近い将来に急激に店舗網が拡大する可能性がないわけではない。ニトリHDが規模の大きい衣料品チェーンを買収して傘下に収め、手に入れた店舗をNプラスに転換して一気に店舗数を増やすことも考えられる。そうなれば無印良品にとって大きな脅威となるだろう。

 こうしたことを考えると、良品計画の業績が現在好調でも、安穏とすることはできない。短期的には、新型コロナウイルスの影響で業績が大きく悪化する恐れがある。中長期的にはニトリHDとの競争激化で大きな打撃を被る可能性がある。十分注意する必要があるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

大学無償化で逆に中退率が急上昇?大学生の学力低下を招く可能性も

 この4月から導入される高等教育機関の無償化の具体的内容は、「授業料や入学金の減免」と、生活費をまかなう「返済不要の給付型奨学金の支給」である。

 その無償化の対象者の世帯年収については、給与所得者のケースで住民税非課税世帯(4人世帯のモデルで年収270万円未満)は授業料減免と給付型奨学金の金額の上限まで利用できる。270万円から300万円未満の世帯の場合は上限の3分の2、300万円から380万円の場合は3分の1となっている。対象は新入生だけでなく、在学生も利用できる。

 2018年の全国民平均世帯年収は441万円。大学受験生の子を持つ世帯に該当すると思われる40代後半の平均年収は502万円、50代前半は527万円となっている。すなわち、50代前後の世帯はもとより、その平均より100万円も年収が低い400万円台の世帯の場合も、無償化支援の対象にならない。

 成績優秀で授業料などの減免措置を受けていた地方の国立大学生で、年収380万円をやや超える程度の平均下位の世帯の学生が対象から外れてしまうことも、十分あり得るのだ。

 17年の熊本大学の例で見ると、4人世帯で給与所得の場合、授業料全額免除の目安は自宅通学418万円、自宅外通学481万円である。それまで授業料全額免除だった年収400万円台世帯の学生が、今回の無償化政策によって、逆に授業料全額免除から除外されてしまうケースが続出する可能性がある。

税制による不公平感はどうするのか

 また、非正規労働者でも給与所得の世帯の場合、収入算定は比較的はっきりしているが、自営業者などでは収入の捕捉が難しいという所得捕捉の問題がある。

 裕福に見える自営業者の世帯の学生が税務申告の関係で無償化の対象になっているのに、夫婦2人の年収の合計がやっと380万円を超える家庭の子どもが無償化の対象外となる。税金だけの問題であれば、まだ他人事で済むが、同じキャンパスで実際に無償化対象の自営業世帯の友人と我が子を比べると、その心理的な不公平感は大きくなるだろう。

 また、住民税非課税世帯などの基準も、未婚でひとり親の家庭では寡婦控除が適用されないため、既婚でひとり親の家庭と比べ、算定の所得に大きな差が生じてしまう。その結果、無償化の算定となる年収額が高くなり、このままでは未婚のシングルマザー世帯の大学生が無償化の年収条件で不利になる。

 基本的に、向学心のある低所得世帯の高校生に進学の道を開くには、小中学校時代に学習環境の大きな差が出る所得格差の是正から着手すべきだろう。高校の授業料の無償化だけでなく、広い視点から長期的に教育格差の是正に取り組むべきであろう。

途中で資格喪失、中退する大学生が増加か

 上の図表には、学生が支援を直ちに打ち切りとされる個人要件が明記されている。退学や停学はともかく、修業年限で卒業できない、あるいは修得単位数が標準の5割以下などの場合も、直ちに支援が打ち切られることになっている。毎年、マスコミ就職希望や国家試験受験のための就活留年組が一定数いる大学もあり、その場合は5年生になると授業料が有償となり、給付型奨学金も打ち切られる。修得単位数が標準の5割以下なら無償化の対象外というのは当然のようであるが、アルバイトに励む苦学生など、個々の事情で取得できないこともあろう。

 まして、警告後に打ち切りとなるケースのGPA(平均成績)等が下位4分の1や出席率8割以下の例は、相当数の学生が該当する可能性がある。学生数の多いマンモス大学では、警告と打ち切りを実行する学校当局と該当学生の交渉次第では、支援を打ち切られた学生の退学が増加し、中退率の急上昇を招きかねない。大学経営にとっても、頭の痛い問題が多くなるだろう。

 逆に、大学が学生とのトラブル発生を恐れて成績管理や出席管理を甘くすれば、長い目で見て大学生の学力低下を招きかねない。

高卒で就職する若者にも支援の手を伸ばすべき

 アメリカ大統領選挙の民主党候補の1人であるバーニー・サンダース氏の「公立大学の授業料無償化」という公約と違い、今回の無償化の本当の狙いがよくわからない。公金なので、いろいろと条件をつけたくなるのだろうが、学生のやる気と向学心を信用して、長い目でサポートすべきだ。

 家計の事情から進学せずに就職する高校生もまだ多いが、最近は地方公務員も大卒対象の採用枠が広がり、金融機関も高卒の採用人数を絞っている地方が多い。大都市や求人が多い地方工業都市を除けば、思い通りの就職口は選びにくい。そのような、高卒で就職する若者にも支援の手を差し伸べるべきだ。

 それには、息の長い産学連携が必要である。たとえば、静岡銀行は27年ぶりに高卒採用を実施する。静岡県内の高校を卒業し、大学の夜間コースまたは通信制大学に進学することが条件だ。在学中の4年間は、昼間は支店などに勤務しながら大学で学ぶ。受験料や学費は同行が全額負担する。このような地方の有力企業の施策を大学側が積極的に活用することで、高等教育の無償化が地方創生に結びつくことになる。

 その点で、最近増加しつつある地方の専門職大学なども、無償化の恩恵を受けて進学した地方の高校生が地元就職をするルートとして注目したい。

(文=木村誠/教育ジャーナリスト)

●木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

敵対的TOB急増、次はあなたの会社かも…身を守るために最低限知っておくべき知識

「gettyimages」より

 最近、日本でも敵対的TOB(株式公開買い付け)に関するニュースをよく目にするようになりました。とくに昨年(2019年)から急激に増加していますが、大手投資銀行ゴールドマン・サックス証券によれば、昨年はTOBが4割以上増加したとのことです。

 最近の事例では、伊藤忠商事によるデサントへの敵対的TOBが成功したのは記憶に新しいでしょう。デサントの取締役会は伊藤忠のTOBに反対しましたが、伊藤忠はTOBでデサント株の4割を取得しました。

 また不動産事業(ビル賃貸事業)・ホテル事業を行っているユニゾホールディングス(以下ユニゾ)をめぐり激しいTOB合戦が繰り広げられています。筆者が興銀マン時代は常和興産という名前の会社でしたが、15年に現在の名称に社名変更しています。その争奪戦は凄まじいものです。

 簡単にまとめると、19年7月に大手旅行会社のエイチ・アイ・エスが1株3100円でTOBする意向を表明しましたが、ユニゾは事業上のシナジー効果が見込めないとして、これに反対しました。このエイチ・アイ・エスによるTOB表明前日のユニゾの株価は1990円でした。その後、ソフトバンクグループの投資ファンドであるフォートレスが「白馬の騎士」として、1株4000円でTOBを実施すると発表。さらに10月には米国大手投資会社ブラックストーンが、1株5000円でユニゾ株をTOBする意向を表明。12月にはユニゾの従業員と米国投資会社ローン・スターとが共同で設立したチトセア投資が1株5100円でTOBを行うと発表。今年2月にはブラックストーンが買収価格を6000円に引き上げると発表といった具合で、この間ユニゾの株価は1990円から6000円と実に3倍弱にまで高騰しています。今後も目が離せない状況にあります。

 このほかにも、今年の1月には旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンスが東芝機械に対してTOBを実施すると発表しています。

 そもそもTOBとは、「買付け期間・買取り株数・価格」を公告し、特定の株式会社の不特定多数の株主から株式市場外で株式等を買い集めることで、以前は「乗っ取り」などと言われて経営陣にとっては脅威とされていました。

 06年には王子製紙が北越製紙にTOBによる敵対的買収を仕掛けましたが、失敗しました。それ以降、日本では敵対的TOBはほとんど行われていませんでしたが、昨年あたりから急激に増えています。

 筆者は旧日本興業銀行において7年間以上、プロジェクトファイナンスという投資銀行業務に従事していましたが、投資銀行(インベストメントバンク)とは企業の資金調達やM&Aをサポートする金融機関のことで、専業の投資銀行としてはアメリカのモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなどが有名です。

 そうした経験からTOBを含むM&Aについて拙著『金融・ファイナンス』(朝日新聞出版)に沿って、わかりやすく説明したいと思います。

M&Aとは?

 M&Aとは「Mergers and Acquisitions」、すなわち「合併と買収」の略語です。具体的には合併、株式交換、株式買収、資産買収、公開買付(TOB)、Leveraged Buy Out(LBO)などの方法があります。

 M&Aは、有能な人材、ブランド、工場、技術、店舗、競合シェアの獲得、他国あるいは他の地域への進出、販路の確保、供給網の確保などを目的として行うもので、「時間を買う戦略」です。企業だけでなく個人でも、インターネット上での企業売買で数億円を稼ぐ人もいます。

 最近では、国内市場が縮小するなかで、グローバル化のために海外企業を買収する大型のM&Aも増加しています。日本国内では創業社長が高齢になり後継者がいないなどの事由によって、企業を売却するいわゆる事業承継に伴うM&Aの事例も増えています。

 しかし、残念なことに多くの事例は失敗に終わっているのも事実です。

 M&Aの失敗の要因にはさまざまなものがありますが、それらの複合的な要因であることが多いと思われます。

1.戦略ビジョンが不明確だった

 全体戦略のなかで検討すべきにもかかわらず、証券会社などからの提案に乗ってしまったような例です。時間的制約が多いので、事前に全体戦略を構築しておくことがとても大切です。

2.高値で買ってしまった

 企業買収の価格は非上場の場合には後述する方式で算定しますが、やはり1との絡みでシナジー効果を出せないと高値で買ってしまったケースも多いと思われます。また、競合との買収合戦によって価格が吊り上げられてしまうこともあります。会計上ののれん償却や回復見込みのない場合には減損処理が必要になることも、事前に十分に検討しておくことが肝要です。今回のユニゾの例でも、買収側は買収額の評価が適切であることを株主に説明できるようにしておく必要があります。

3.ポストマージャーインテグレーション(PMI)の失敗

 シナジー効果、人材交流、企業文化等買収後のいわゆるPMIは予想以上に大変です。企業文化などは10年単位で変革していく必要があるでしょう。

4.人材不足、買収した企業の人材活用ができなかった

 他業種に進出する、あるいは他国へ進出するなどの場合には、実際に経営を行う人材が買収で辞めてしまうこともあるため、買収後の人材を社内あるいは社外から配置することが肝要です。

 上記以外にも多くの理由がありますが、やはり全体戦略のなかでいかにシナジーをあげるのか、という基本をしっかりと把握しておくことが大切です。

M&Aの方法

 M&Aにはさまざまな方法がありますが、代表的な方法をご紹介します。

・株式譲渡

 譲渡する企業が自社の発行済株式を、買収する企業に譲渡することによって、経営権も譲渡する方法。M&Aのなかで最も一般的な方法です。

・事業譲渡

 企業が自社の事業を、買収企業に譲渡する方法です。譲渡する企業の資産が一部の場合は「一部譲渡」と呼び、全部の場合は「全部譲渡」と呼びます。譲渡の対象となる資産には、土地・建物などの有形資産、流動資産、営業権・人材・特許・ノウハウ等の無形資産などがあります。

・合併

 複数の企業をひとつの企業にする方法で、吸収合併と新設合併があります。吸収合併は、A社がB社を吸収しA社を存続会社として、B社は消滅(解散)させる方法です。新設合併は、合併当事者企業がすべて解散すると同時に、受け皿としての新会社を設立し、一切の権利義務を新設会社に承継します。

・LBO

 LBOはLeveraged Buy Out(レバレッジバイアウト)の略です。一定のキャッシュフローを生み出す事業を、外部からの借入金を活用して買収する方法です。借入金をテコとして、買収する企業は投資する資本の金額を抑えることができるため投資収益率の最大化を図ることができます。このためレバレッジという言葉が使われています。事業が安定的なキャッシュフローを生み出すことが要求されます。バイアウト・ファンドといわれるファンドが、LBOによるM&Aの中心的な役割を果たしています。

・MBO

 MBOはマネジメントバイアウトの略で、経営陣が自ら会社の株式などを9割以上買収することです。この場合もLBOの方法をとるケースが多くなります。さらに経営陣が共同投資者(パートナー)としてバイアウトファンドをつくる場合もあります。上場企業の株式の非公開化やオーナー企業の事業承継などに利用されており、近年増加しています。株価に左右されず積極的な経営を行うために、一時的にMBOで非公開にして再度上場する例もあります。MBOの手順としては、まず株式買い取りのための受け皿である新会社を設立します。その新会社が現株主から株式を買い取ります。その後、親会社となった新会社が合併することになります。

 MBOのメリットは、現オーナーが株式売却により創業者利益を得られる一方で、後継者となる経営陣は少ない資金でも株式承継が可能になることです。他の株主にも株式の売却ができます。

・TOB

 前述の通り、事前に期間、株数、価格を公開した上で、市場を通さずに株式を買い取る買収や子会社化の方法です。以下、詳しく説明します。

TOB

 TOBには友好的TOBと今回のような敵対的TOBの2種類があります。

 友好的TOBは買収候補先企業の経営陣の取締役会から同意を得た上で行うものですが、敵対的TOBは同意を得ずに行います。敵対的TOBの場合には買収価格が高くなりやすいといわれています。ユニゾの場合にはすでに約3倍になっていることはすでに述べました。

 TOBは、大量の株式を一度に買い集められ、市場を通さないために一定価額で株式を取得可能です。あらかじめ設定した株式数を買い集めることができなかった場合には、TOBを中止することもできます。市場で株式を取得する方法では株価が上がってしまったり、取得価格が変化してしまうため、TOBには大きなメリットがあります。

 一方で株価が上がるためにコストが発生することや、相手先企業が買収防衛策をとることで失敗するリスクもあります。具体的な買収防衛策としては、以下のようなものがあります。

・ポイズンピル

「ポイズン」とは「毒」という意味ですが、既存の株主にあらかじめ新株予約権を発行しておくことで買収を阻止する方法です。

・ホワイトナイト

「白馬の騎士」の意味で、敵対的買収を仕掛けられた会社を友好的に買収する会社のことです。

・クラウンジュエル

 TOBをされた会社が価値の高い事業や子会社などを売却してしまうことで、株価を下落させてTOBをしようとする会社側の動機をなくしてしまう方法です。

・パックマンディフェンス

 TOBを仕掛けてきた会社を逆に買収してしまう方法です。

 これらのほかにも、90%以上の自社株を買いMBOを行うことで上場を廃止してしまう方法もあります。

 後継者不足から事業承継をめぐる問題が増えています。事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことですが、中小企業にとってオーナー社長の経営力そのものが会社の特徴になっている場合も多く、後継者選びは重要です。

 近年、従業員が経営権を承継するケースやM&Aが急増していますが、有能でワンマンな社長の場合には、一度は他人に経営権を譲っても再び復帰するケースなども多く、後継者選びは難しい課題ともいえます。今後ますます日本の高度成長を担ってきた経営者の高齢化が進み、事業承継の問題が増えるでしょう。

PMI

 M&A後の統合をPMI(Post Merger Integration)と呼びます。大切なことは統合によって効率化を図ることとともに、1+1が2よりも大きくなるようなシナジー効果を生み出せるかどうかですが、統合の過程においてはさまざまな課題が生じます。買収の際には、事前にPMIがどのように可能かをよく検討する必要があります。たとえば大手銀行などの場合には、システム統合に多額の投資が必要になるため重要な要素となっています。統合後も人事系統が別々であったり、たすき掛け人事といわれるような複雑な仕組みが長年続いたりしている例もあります。

 統合の大きな阻害要因となるものとしては、企業文化もあります。人材のタイプや価値観の相違、既得権益への固執、派閥争い、などさまざまです。筆者も銀行、通信会社、ベンチャー、コンサルティング会社など複数の企業で勤務しましたが、驚くほど企業文化は異なることを痛感しました。

 企業はヒトが動かしているものです。企業買収の際には、文化が融合できるかを最優先に考えるべきだといえるほど、重要度が高いです。そして、買収前に企業文化の融合を具体的にどう実施していくのか、その仕組みをつくることも大切です。

敵対的TOB急増の背景

 以上がM&AとTOBについての説明ですが、最後になぜ今、敵対的なTOBが急増しているのかについて、私見を述べたいと思います。

 ひとつには円安の影響もあり、海外投資家から見て日本企業は割り安になっていることがあります。通常、キャッシュリッチでかつ安定的なキャッシュフローを生み出すと予想できる会社はターゲットになりやすいのです。つまり、IT系企業などキャッシュフローが予測しにくい企業よりも伝統的な業種がターゲットになりやすいのです。たとえばホテル業であれば人口減少が続いている日本においては地方ではなく、インバウンドやビジネス客を安定的に見込める都心の一等地を有している企業が狙われやすいのだと思います。

 さらにマクロ的には、日本企業の内部留保(利益剰余金)が増加していることも要因だと考えています。日本企業の内部留保は7年連続で過去最高を更新しており、18年には460兆円を超えています。内部留保が急増している理由としては、正規雇用の削減と非正規雇用、いわゆる派遣社員の増大による人件費の削減が進んでいることと、政府による法人税の減税が主要因でしょう。一方で、本来は内部留保は企業が設備投資を行って拡大再生産をするために使われるべきですが、実際には設備投資は減少しています。

 つまり企業にはお金が余っているのに、国民の実質所得は減少しており、消費税の引き上げなどによって国内需要が伸びないために設備投資に回さないのです。企業としては当然の経営判断だといえるでしょう。

 そしてそれらの資金は、金融投資や自社株購入、子会社投資、そしてTOBを含むM&Aなどに回っているのです。株主からは「無駄に内部留保をためずに投資を行って収益をあげることで株価を上げろ」という声があがるため、優良な案件に一斉に群がらざるを得ない状況になっていると考えられます。

 以上のような理由から、日本でも敵対的なTOBは今後も増えていくのではないかと思います。

 もっとも、M&Aによって人材や資本などの経営資源を効率よく再配分することは、好ましいとも考えられます。今後、内部留保が多くたまっている企業はモノを言う投資家たちのターゲットになる可能性が高くなると予想されます。次はあなたの会社かもしれません。

(文=平野敦士カール/株式会社ネットストラテジー代表取締役社長)

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●平野敦士カール:経営コンサルタント

米国イリノイ州生まれ。麻布中学・高校卒業、東京大学経済学部卒業。

株式会社ネットストラテジー代表取締役社長、社団法人プラットフォーム戦略協会代表理事。日本興業銀行、NTTドコモを経て、2007年にハーバードビジネススクール准教授とコンサルティング&研修会社の株式会社ネットストラテジーを創業し社長に就任。ハーバードビジネススクール招待講師、早稲田MBA非常勤講師、BBT大学教授、楽天オークション取締役、タワーレコード取締役、ドコモ・ドットコム取締役を歴任。米国・フランス・中国・韓国・シンガポールほか海外での講演多数。

著書に『プラットフォーム戦略』(東洋経済新報社)、『図解 カール教授と学ぶ成功企業31社のビジネスモデル超入門!』(ディスカヴァー21)、『新・プラットフォーム思考』『シリーズ 経営戦略・ビジネスモデル・マーケティング・金融・ファイナンス』(共に朝日新聞出版)。監修に『大学4年間の経営学見るだけノート』『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(共に宝島社)など多数。海外でも翻訳出版されている。

O.マーフィー騎手「あの不利がなければ……」金鯱賞(G2)復調したラストドラフトが「逆襲」へ虎視眈々

 15日(日)、中京競馬場では金鯱賞(G2)が行われる。大阪杯(G1)の優先出走権が付与されることもあり、今年も中長距離G1を見据える実力馬が集結した。

この1戦で勝利を狙うのが、ラストドラフト(牡4歳、美浦・戸田博文厩舎)だ。

 ラストドラフトは、キャリア2戦目となる京成杯(G3)で重賞初制覇達成。だがその後が続かず、クラシックでは結果を残せなかった。

 休養を挟み、秋初戦となったオクトーバーS(L)では1番人気を裏切って8着と惨敗。だが中日新聞杯(G3)では、最後の直線で勝ち馬サトノガーネットの鬼脚に交わされたものの、2着と好走。さらに今年の初戦となったアメリカジョッキーCC(G2)でも3着と、馬券圏内に入り復調気配を見せている。

「AJCCでは中団後方につけて内を追走していました。勝負どころで上がって行こうとした矢先に、前に出ていたマイネルフロストが故障。下がってきた同馬を交わすため、想定していたよりも外に出されることになり、そこから懸命に脚を伸ばしたのですが、届かずに3着。

 騎乗していたO.マーフィー騎手も『あの不利がなければ、もっと前の馬に迫れたと思います』と語っていたように、前走が実力のすべてではないはず。ここはやってくれるでしょう」(競馬誌ライター)

 美浦Wで行われた1週前追い切りでは、僚馬ダイシンインディーを追走し、1馬身先着。時計は5F64秒9、ラスト12秒9を記録。斎藤助手は『デイリースポーツ』の取材に応じ、「時計も十分だし、動きも良かった」と期待を込めている。

「今回の中京競馬場の芝2000mは、2着に入った中日新聞杯と同条件。またラストドラフトはキャリア7戦中5戦で芝2000mを経験するなど、この距離を主戦場にしています。さらに上を目指すためにも、ここで不甲斐ない走りを見せるわけにはいかないのは当然です。陣営としても、ステップレースを勝って、大一番に備えたいところでしょう」(競馬記者)

 金鯱賞には昨年の最優秀3歳牡馬に輝いたサートゥルナーリア、チャレンジC(G3)を勝ったロードマイウェイ、NHKマイルC(G1)で2着に入ったケイデンスコールなど、同世代のライバルたちがずらりと顔を揃える。

 今回から新たに吉田隼人騎手とコンビを組むことになったラストドラフトは、ここで結果を残し、存在感を示すことができるだろうか?

漢検×ゆるスポーツ 漢字と遊ぶ「漢検ボール」とは?

電通のコンテンツビジネスを手掛ける社員の取り組みを紹介する本連載。第4回は、世界ゆるスポーツ協会の代表理事を務める澤田智洋氏が、日本漢字能力検定協会(以下、漢検)と共同開発した「漢検ボール」を紹介します。

楽しみながら漢字学習ができるチームスポーツ

「ゆるスポーツ」とは、年齢や性別、運動神経、障がいの有無に関わらず、誰もが楽しめる競技のこと。世界ゆるスポーツ協会は、「スポーツ弱者を世界からなくすこと」を目的としており、2015年の発足以来、80種類以上の個性豊かな新しいスポーツを生み出しています。

今回紹介する「漢検ボール」は2020年2月に誕生した、最新のゆるスポーツ。漢検から「多くの人に漢字に親しんでもらえる施策を提案してほしい」とお声掛けいただき、漢字と戯れるスポーツ「漢検ボール」を共同開発しました。記憶の定着効果が期待できる「音読」に注目した、ボールを使って楽しみながら漢字学習ができるチームスポーツです。

漢検ボールイメージ

まずは簡単にルール説明。コートに向かい合わせになり、フィールドプレーヤー6人対6人で戦います。フィールドプレーヤー以外に審判が1人必要です。出題される漢字を読みながらボールを前線へと運び、ゴールを目指します。

1. チームメンバーは、プレーヤー5人+パネラー1人の計6人です
2. パネラーは「漢字パネル」(基本 A3 サイズ)を持ちます
3. ボールを持っているプレーヤーは味方の「漢字パネル」の漢字を読みながら前進します
※ 漢字の読み仮名の数だけ前進できます(例えば出題が「開拓」なら、「カイタク」と4歩進めます
4. 一つの漢字を読み終えたら味方にボールをパスします
※ ラグビーのようにボールを持っているプレーヤーよりも後ろにしかパスできません
5. パスが次のプレーヤーに渡るタイミングで、パネラーはパネルをめくります
6. パスをつなぎながら、ゴールラインを越えたら、1点獲得となります
7. 漢字の読み方が分からない場合は、後方の味方にパスをすることができます
8. ただし、3 秒以上ボールを保有すると「未漢字」というファウルで相手ボールになります
※漢字を読み間違えた場合にも相手ボールになります
9. プレーするメンバーに応じて「 漢字レベル(級)」を選んでプレーできます

フィールドで汗をかきながら、共創した漢検スポーツ

漢字を用いた今までにないスポーツを開発するために、まずは世界ゆるスポーツ協会でベースとなるルールをつくりました。その上で、漢検、電通、世界ゆるスポーツ協会の開発メンバーと大学生を交え体験会を行いました。集合場所は会議室ではなくフットサルコート。いつもはスーツ姿で打ち合わせに臨むメンバーも今日だけはラフなウエアを着て、「ここにいる全員で新しいスポーツを完成させよう」という意気込みで取り組みました。

スポーツが得意な人や苦手な人、漢字が得意な人や苦手な人。多様なバックグラウンドを持つ人が集まり、ここにいる全員が楽しめるスポーツとは何か?仮説と検証を繰り返しながらできたのが「漢検ボール」です。

その後、いくつかの学校でも体験会を実施し、試行錯誤しながら漢検ボールをつくりあげました。

実際に「漢検ボール」を体験した中学生からは、
「楽しかった。新しいというか、難しいけど面白い」
「漢字はあまり得意ではないけど、スポーツを交えたら体も動かせるので、とても楽しかった」
など、好意的な感想を頂いています。また、今後新たな「要望」が出てくることも予想されるので、ルールは進化させ続ける予定です。

「漢検ボール」は、学校の授業の教材としてはもちろん、例えば企業のチームビルディングや、認知症予防スポーツとしても応用できるのではないかと考えています。想像を超える発展を遂げるのも、新しいスポーツをつくる喜びの一つです。

今回は一例として「漢検ボール」を紹介しましたが、世界ゆるスポーツ協会では他にも多くのスポーツを生み出しています。

ゆるスポーツで最も大切なことは、参加する方に楽しんでもらうこと。もちろん自社商品の認知拡大やイメージアップにつながることも目的ではあるのですが、何よりも自社で開発したスポーツで喜んでくれている人を目の前で見られることが一番の醍醐味です。興味を持った方はぜひ、ご連絡ください。

漢検ボール:https://www.kanken.or.jp/kanken/kankenball/

世界ゆるスポーツ協会:https://yurusports.com/

新型コロナ拡大で、米国で銃の弾薬販売が「2036%増」…混乱すると武装する米国人

 日本ではマスク不足やトイレットペーパーの爆買いが流行っているが、アメリカではトンデモナイモノが売れているようだ。全米ライフル協会(NRA)が運営するウェブニュースサイト「AMERICAN RIFLEMAN」は5日、『Coronavirus Fears Spur Sales of Ammo & Survival Gear』と題する記事を公開した。同記事は新型コロナウイルス感染症の拡大に備えて、弾薬の購入量が急増していると伝えている。

 同記事によると、オンライン弾薬小売業者Widenerの弾薬販売サイトでは、2月23日から25日までの間、サイトトラフィックが前年比で99.7%増、売上が2倍になったという。州別の注文増加割合はミシガン州566%増、コネチカット州390%増、フロリダ州383%増、ケンタッキー州304%増、ニュージャージー州241%増となっているという。

 特に売れているのは、日本の陸上自衛隊のライフルなどでも使用されている口径5.56ミリNATO(北大西洋条約機構)標準弾で2036%増、大型拳銃弾の45口径CAP弾は195%増、一般的な拳銃弾9ミリパラベラム弾が110%増だという。

 ニューヨークに駐在経験のある全国紙記者は話す。

「2001年9月11日の同時多発テロ以来、アメリカでは何かあると非常食やガソリンと合わせて、弾薬が売れます。新型インフルエンザが流行した際も、弾薬が売れました。まさか、ウイルス兵器に感染したゾンビが襲ってくるわけでもないでしょうが、とにかく社会の統制がとれなくなる危険性がみられると、武装し始める傾向にあるのが米国人です。ソースがNRAですから、PRも入っているのでしょう。ただこういう煽り方をした末に、今後、感染の疑いがある人が撃たれるような事態にならなければよいなとは思っています」

(文=編集部)

 

「コロナばらまき男」を駆り立てた“強い怒り”…テロまがい行為、今後増加の兆候

 愛知県蒲郡市で、新型コロナウイルス陽性と判明し、自宅待機を要請されていたのに、「ウイルスをばらまいてやる」と市内の飲食店2軒をはしごした50代の男性の動画が「文春オンライン」で公開された。

 この「コロナばらまき男」は、居酒屋とフィリピンパブを訪れており、フィリピンパブではカラオケに興じたり、ホステスと肩を組んだりしたようだ。フィリピンパブは、店内や周辺を消毒したものの、しばらくの間休業に追い込まれたため、オーナーは「これは“テロ”にほかなりません」と話している。

「コロナばらまき男」の不安と怒り

「コロナばらまき男」が、“テロ”まがいの行為に及んだのは、一体なぜなのか? 次の2つの心理が働いたように見える。

1)抱えきれない不安

2) 鬱憤晴らし

 まず、自分1人では不安に耐えきれないので、誰かと共有したい、誰かに話を聞いてほしいという願望が強かったのではないか。ところが、この男性は両親と同居していて、両親が発熱や呼吸困難を訴えて入院し、感染が確認されたそうなので、そういう役割を担ってくれる家族が身近にいなかったのだろう。しかも、親身に話を聞いてくれる恋人も友人もいなかったからこそ、居酒屋とフィリピンパブに行ったわけで、それだけ孤独だったのだ。

 また、やり場のない怒りを誰でもいいからぶつけたい、つまり鬱憤晴らしをしたいという気持ちも強かったと考えられる。この怒りから復讐願望が生まれ、誰でもいいから感染させて自分と同じように不幸にしてやりたいと思ったのだろう。

 そもそも、自分が病気にかかっていることを知ったときに怒りを覚えるのは、共通の反応である。死に瀕している患者200人以上にインタビューした女性の精神科医、エリザベス・キューブラー・ロスによれば、病気を告知されたとき、ほとんどの人がはじめは「いや、私のことじゃない。そんなことがあるはずがない」と思ったという(『死ぬ瞬間―死とその過程について』)。

 この否認は、ショッキングな知らせを聞かされたときの最初の反応であり、その衝撃をやわらげるためのものだ。しかし、やがて第一段階の否認を維持することができなくなり、「ああそうだ。私だ。間違いなんかじゃない」と思い知らされる。すると、今度は怒り、激情、妬み、憤慨などの感情が出てくる。そして、必然的に「どうして私なのか」という疑問が頭をもたげ、怒りが見当違いにあらゆる方向に向けられる。つまり、八つ当たりするわけである(同書)。

「コロナばらまき男」も、この第2段階の怒りの状態だった可能性が高い。たとえ新型コロナウイルスに感染しても、8割以上は軽症だし、致死率も低い。それでも、感染者も死者も増え続けている状況を目の当たりにして、不治の病と思い込んだのかもしれない。あるいは、入院によって生じる経済的損失が受け入れがたかったのかもしれない。当然、「なぜ自分が感染したのか。どうしてあの人じゃなかったのか」と怒りを覚えたはずだ。

飛び交うデマ

 自分が感染して腹が立ったからといって、他人に感染させることを正当化できるわけではない。ただ、怒りを覚えているのは感染者だけではない。多くの日本人がやり場のない怒りを抱いているように見える。しかも、この怒りはデマの拡散にも一役買っている。

 現在、さまざまなデマが飛び交っている。「あの店の店員は感染者だ」「〇〇が予防に有効」「トイレットペーパーが品薄になる。製造元が中国だから」といった類いのデマだ。 こうしたデマの影響で、その店に客が来なくなったり、ある商品が売れたり、トイレットペーパーが品切れになったりする。

 本当は自粛ムードや収入の減少に不満を募らせており、政府や厚労省の対応に怒りをぶつけたいのだが、それはできない。もちろん、ウイルスに怒りをぶつけるわけにもいかない。だから、怒りの矛先を見当違いの方向に向け、デマを流して鬱憤を晴らそうとするわけである。

 デマを流すことが鬱憤晴らしにつながるのは、次の2つの要因による。

1)大衆を振り回す快感

2)他人の不幸は蜜の味

 デマに振り回されて不安になったり、買いだめに走ったりする大衆を見てほくそ笑む輩は、どの時代でもどんなところにもいる。他人の不幸は蜜の味と感じるからだろうが、感染者でもない人を、感染者と名指しして、その人が困る事態になれば、蜜の味はさらに増すはずだ。しかも、その影響で自分の店の売り上げが増えれば、得することになる。

 現在、休業や営業時間短縮によって収入が激減している人が少なくない。そのうち経済的に困窮する人も出てくるだろう。そうなれば、強い怒りから鬱憤晴らしをしたり、やけを起こしたりする人が続出し、“テロ”まがいの行為もデマの拡散もさらに増えるのではないだろうか。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

エリザベス・キューブラー・ロス『死ぬ瞬間―死とその過程について』鈴木晶訳 中公文庫

 

なぜ日経新聞は、企業CMに“竹島に掲揚の韓国国旗&兵士”の映像を挿入したのか?

 日本経済新聞が6日に公開した自社の企業CM『世界を変えよう宣言篇』で、韓国国旗の太極旗が島根県竹島に掲げられている動画が挿入されていたとして、インターネット上で物議を醸している。

 問題とされるCMでは次のようなナレーションとともに、世界各地に翻る各国の国旗の映像が流れた。

「たとえ国境が何百年も変わらなかったとしても、技術による変化は国を超え、言語や文化を超え、人々の生活を次々とアップデートをしていく。あなたが今、どこで暮らしていたとしても、その手には何億人も明日をよくするそんな力がある」

画像・動画素材サイトに同じ映像が

 その中で、韓国の太極旗は海に面したレーダー通信施設らしき建造物の前に掲げられていた。旗のポールの横には戦闘服にヘルメット姿の人物がたたずんでいる。ちなみにこの映像は画像・動画素材サイトgetty imagesが「View of Korean Soldier(Dokdo Guard) Being on guard on the Dokdo Island(Natural Monument Heritage and one of most famous island in Korea) in South Korea」(原文ママ)との説明で配信していた。

 竹島に翻る韓国旗の映像に対してTwitter上では、日経の不買運動を促すような批判まで出始めている。

「日経新聞は、このCMの製作会社を明らかにし日経としてのコメントを出す必要がありますね」(原文ママ、以下同)

「日経は金輪際買わない」

「業務上仕方なく取ってましたが購読をやめようと思います」

日経「誤解を招く表現があった」と謝罪

 こうした事態に日経広報室は7日、公式Twitter上で以下のように謝罪した。

「弊社CM『世界を変えよう』宣言篇の一部に誤解を招く表現があったため、ネット上からこの動画を削除いたしました。確認作業が不十分でした。不快な思いをおかけしたみなさまにお詫びいたします」

 ここで気になるのは日経が弁解する「誤解を招く表現」「確認作業が不十分だった」とはどういうことなのかということだ。

 広告代理店関係者は次のように今回のCMに関して語る。

「竹島に韓国警察の特殊部隊『独島警備隊』が駐留していることは、日本国内の世論の賛否にかかわらず事実です。また竹島に居住している日本人島民がゼロであること、日本政府や島根県の行政機構が同島に所在していないこともまた事実です。どれほど日本国民の不興を買っても、その行為が国際的に不当であっても、そうした観点から言えばあの映像に嘘や紛らわしい表現はないともいえます。

 ただ通常、竹島などの領土問題は広告ではタブーです。どう描いても不快な人はでてきます。今回は新聞社の自社広告です。『社会・経済の問題点を明らかにする』『事実を報じる』ということが一番強いテーマになる場合が多く、今回のCMもそうした制作意図があったのかもしれません。

 しかし韓国国旗の動画や画像はほかにもたくさんあるのに、どうしてあの映像を使ったのでしょうか。非常に印象的な映像ですし、単純によく考えずに使用したという言い訳は少々、苦しいでしょう。広告局が外注の制作会社に丸投げして、日経本社がよく確認せずに公開したのかもしれませんが、少なくとも制作サイドがなんの映像だったのかわからないわけはないと思います」

 当サイトでは、日本経済新聞広報室に事実関係を尋ねたところ、以下のような回答を得た。

「『世界を変えよう』というCMに確認不足で竹島の映像を使用しました。本来伝えたかった意図とは異なり、不快な思いをされたとの声が寄せられたため、ネット上の動画を削除するとともにTwitterでお詫びを掲載しました。今回のCMは国旗に関連した様々な動画を収集しながら作り上げていきましたが、確認作業が不十分でした。今後、社内のチェック体制を強化していきたいと考えています」

(文=編集部)

 

楽天カードの投信積立、スーパーポイントを投資資金に充当も!エポス、セゾンと比較検証

 新型コロナ・ショックは我々の生活だけでなく、株価をも揺るがした。2月後半の3連休明けから株価は続落、一時は2万1000円を割り込む水準まで落ち込んだ。2020年正月の日経新聞には「今年の高値は2万5000円以上行くのでは」という観測も踊っていただけに、想定外のこの下げに肝が冷えている個人投資家は多いはずだ。株安は日本だけではなく、欧米もアジアも軒並み厳しい。コロナ騒動がもし昨年に起きていたら、間違いなく消費増税は吹っ飛んだことだろう。

 こうした状況は一進一退だが、コロナ禍の終息が見えて、東京オリンピックのゆくえが定まらないことには出口が見えない。19年に巻き起こった「老後資金2000万円問題」をきっかけに、つみたてNISAやiDeCoをスタートさせた投資初心者が多いとも聞く。順調に投資商品の積み立てを始めたところに、この大幅下げだ。マイナス表示がついた資産残高を見て動揺しているかもしれない。なかには、積み立てはしばらく休みたい……と泣きそうな人もいるだろう。

 かつて、筆者も積み立て投資をスタートして間もなくリーマン・ショックに遭遇、日経平均が8000円台になったあたりで耐え切れず中止したクチなので、偉そうなことは言えない。

 しかし、理論上で言えば、値動きする金融商品の積み立ては価格が下がっているときこそ買い時である。毎月同じ金額で投資信託を買い付けている場合は、基準価額が安ければ安いほどたくさん買えるからだ。逆に、値が上がれば買える口数は少なくなる。これが、投資セミナーで最初に習う「ドルコスト平均法」だ。

 とはいえ、ドルコストで淡々と買う方法が一番儲かるわけでなく、適正価格より安いときにどっさり買ったほうがいいに決まっている。先のリーマン暴落では、その時期にめげずに積み立てで買い始めた人は、かなり利益が出たとか出なかったとか。そう考えれば、今が積み立てスタートの好機と言えないこともない。

 落ちていくナイフをがっちりつかんでやろうじゃないかという度胸のある人は、たぶん投資に向いている。やる気になった人がスムーズに始められるのが、クレジットカードによる積み立てだ。

投資資金は後払い、ポイント還元も

 クレジットカード決済による投信積み立ての一番のメリットは、証券口座に先に資金を入金する必要がないことだ。カードの引き落とし用の口座に残高さえあればいい。また、使うカードによってはポイント還元も期待できる。

 身近なカードによる投信積み立ての先駆けになったのは、18年からスタートしたtsumiki証券のサービスだ。丸井グループが発行するエポスカードを使い、普段の買い物代金とまとめて決済ができる。

 エポスカードはユーザーの約7割が女性で、しかも若者層が多いという。年会費は永年無料、マルイのショッピングでの優待のほか、飲食店やカラオケなど遊興施設の割引・優待が充実しており、店頭で申し込める気軽さもあって人気のカードだ。

 カード会員であれば、登録済みのIDを使えば個人情報を連携できるため、口座開設も手間がかからない。カード保有者にとっても「証券会社に口座を開く」という一番面倒なハードルを乗り越えやすいのだろう(マイナンバーは必要だが)。

 tsumiki証券で買えるのは4つの投信のみ。数が多いと、初心者は逆に戸惑って選べないだろうとのスタンスだ。月3000円からの積み立てなので、4つのうち複数を買ってもいい。現在の実績では、積み立て金額1万円までが全体の56%、1万円以上が44%とのことだ。

 エポスカードによる積み立て購入サービスインから間もなく、続いて楽天カードが参入する。グループの楽天証券では、手持ちの楽天スーパーポイントを積み立て投資の買付に充当できる仕組みはすでに持っていた。もっと早く始めてもよかったのだろうが、tsumiki証券から遅れること約1カ月後の開始となった。

 二番手になったとはいえ、1900万人もの有効会員を持つ巨大カードの爆発力は侮れない。楽天証券によれば、19年12月時点で投信積み立てを設定しているユーザーの53%がクレジットカード決済を利用しているという。

 楽天証券は先のtsumiki証券の戦略とは真逆で、とにかく買える投信の数が多い。しかも、100円以上1円単位からという手軽さだ。さらに、積み立て額の1%分の楽天スーパーポイントが貯まる。毎月1万円積み立てすれば100ポイントの付与となり、そのポイントを自動で積み立て費用に充当することもできるのだ。

 なお、ポイントを使って月500円以上の投信購入(ポイントは全額でなくてもいい。「楽天スーパーポイントコース」に設定する必要あり)をすると、楽天市場での買い物がポイント+1倍にアップするSPU(スーパーポイントアッププログラム)の対象にもなる。もし100円の買い物をすれば、1%相当のポイントが2倍になり、2ポイント付与されることになる。

 多くの楽天ユーザーは決済元に楽天カードを設定しているだろうから、ポイントを効率よく貯めれば、新たに資金を入れずに積み立て投資を続けることも理論上は可能だろう。実際、グループシナジーが効果的に働いて、楽天証券における新規口座開設者の約5割が楽天のサービスからの流入だというのだから、楽天スーパーポイントさまさまだ。

セゾンカードは株の積み立て購入もOK

 カード決済により、投信だけでなく株の定期購入も可能にしたのが、クレディセゾンの証券サービス「セゾンポケット」だ。セゾンカード・UCカード保有者が利用できる。

 スマホにセゾンポケットのアプリを入れ、セゾンカードのネットサービスに登録済みのID・パスワードを入力し、取引口座開設に進む。開設審査の完了後、最短1営業日で取引可能になるという。

 積み立てできる金額は、投資信託が1000円から、株式が5000円からだが、投信はグループ会社であるセゾン投信が運用する2銘柄(セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド、セゾン資産形成の達人ファンド)のみ。

 積み立て投信としては超メジャーな2本だけに、すでに保有していますという人も多いのではないか。ちなみに、この2つはエポスカードで買えるラインナップにも入っている。

「セゾンポケット」で力を入れているのは、100を超える銘柄から選べるという株式の積み立てのほうだろう。最初に書いたように、今後も株安がしばらく続くなら、良い始め時ではないだろうか。なお、楽天と同じく手持ちの永久不滅ポイントを投信や株式積み立てに使うこともできる。

 しかし、エポスカードとセゾンカードの積み立て決済には、楽天カードのような毎月のポイント付与の仕組みはない。エポスカード(tsumiki証券)の場合は、積み立てを1年以上続けたら「がんばってるね!ポイント」として、年間の積み立て金額×0.1%(初年度)~0.5%(5年目以降)のエポスポイントがもらえることになっている。セゾンカードの場合は6回積み立てをした合計金額に対し、5000円ごとに1ポイントの付与がある。どちらも積み立てを続けてもらうインセンティブだろうが、ポイントはあくまでおまけと考えたほうがいいだろう。

 ただし、エポスカードのうちゴールド・プラチナカードを使う場合は積み立て金額が年間の利用金額に加算され、ボーナスポイント(年間50万円以上使えば2500ポイント、100万円以上で1万ポイント)の対象になる(積み立て5年継続の場合)。

 なお、クレジットカードによる積み立ては、どのカードも月5万円(つみたてNISAを利用する場合は3万3333円)が上限だ。

 クレジットカードによる積み立てが始まった当初は、前借りしながら投資というのもいかがなものかと、やや抵抗があった。しかし、この仕組みが一定のユーザー数を集めているというなら、それも時流なのだろう。乱気流相場だからこそ、あえて長期積み立て運用を初めてみようと考える人には、手軽な選択肢となりそうだ。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

●松崎のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。Facebookページ「消費経済リサーチルーム」