日産の業績悪化、ゴーン放逐は正しかったのか?優秀な経営者を放逐せざるを得ない日本

 2019年11月12日、日産自動車は今期の営業利益の見通しを1500億円に下方修正することを発表しました。カルロス・ゴーン前会長が逮捕されたのが約1年前の2018年11月19日。それから新体制へと移行したはずが、前期の決算は振るわず、2019年9月には後継者だった西川広人社長が辞任。そして今回の下方修正と、日産をめぐるニュースは悪いものばかりという印象です。

 このような比較をすると「最初から悪意をもって数字を並べているのだろう?」と勘ぐられそうですが、今回の記事のテーマとしては重要なことなので、あえてリーマンショックが落ち着いて以降の日産の営業利益の数字を並べてみたいと思います。

【日産の連結営業利益の推移】

2011~16年度平均 6,043億円(ゴーンCEO)

2017年度 5,748億円(ゴーンCEO)

2018年度 3,182億円(西川CEO)

2019年度 1,500億円(予定、内田誠CEO)

 この数字をただ眺めると、ゴーンCEOが君臨していた時代は安定して毎年6,000億円規模の利益をあげていたところが、日本人経営者に経営権が戻ったとたんに低収益企業へと逆戻りしているように見えます。

 ゴーン氏の日本デビューは鮮烈でした。今からちょうど20年前の1999年10月にCOOとして大赤字だった日産に着任し、リバイバルプランとして3つの公約を掲げ、それをすべて達成します。

1.2000年度連結当期利益の黒字化

2.2002年度連結売上高営業利益率4.5%以上

3.2002年度末までに有利子負債を7000億円以下に削減

 どれも私たちコンサルタントの眼からは不可能に思えたチャレンジでしたが、着任1年半後の2000年度末に日産は営業黒字825億円をたたき出し、2002年度の利益率目標も達成。2兆1000億円あった有利子負債は4年で完済しました。

 直近の日産の連結売上高の水準は過去4年間、ほぼ11兆円強の状態にあります。その状況での営業利益率4.5%というと、営業利益5000億円あたりが日産リバイバルプランで設定した目標水準です。日本人社長に代わった昨年度も今年度予定の数字も、どちらもリバイバルプラン当時の目標を大きく割り込んでしまっています。そのため「結局、日産はゴーン氏がいなくなったことで、またダメ会社になっちゃうんじゃないの?」と思われてしまうわけです。

「ルールを守った私物化」をどう考えるか?

 さて、日産のこれからも気になりますが、今回の記事で焦点をあてたいのは「会社を私物化するけれども、業績はきちんとあげるCEO」という存在を私たちはどう考えるべきかという話です。

 ゴーン氏についてはまだ公判中ですので、容疑としてあげられているような自身の金融取引の損失を穴埋めするために日産を利用したとか、20億円相当の自宅を日産に買わせたといった事実があったのかどうかはわからないという前提で話をします。

 では一般論としては、会社を自分のものであるかのように扱うけれど、長期にわたって利益を上げる有能さを持っている経営者は、良い存在なのでしょうか。それとも悪い存在なのでしょうか。これは感情論では受け入れがたい話である一方で、功利主義の観点でいえば「望ましい」と考える株主は多いはずです。

 もちろん私物化の影響範囲は広いので、たとえば権力をかさにパワハラやライバルの追い落としをするとか、有能なほかの社員のモラルを下げたりといったさらなる悪影響を伴うとすれば、いくら利益を稼ぎ出したとしても、それは悪だと考えるべきでしょう。報道によれば、日産の幹部がゴーン氏の行いについて検察に内部告発をするのを決めたのも、法令遵守という観点でモラル的に容認できないところまできていたということのようです。

 しかし仮に、ルールを守った私物化が成立するような新しいルールを考えた場合はどうでしょう。これはあくまで思考実験ですが、株主総会や役員会で「CEOには連結営業利益の0.5%を私的に使うことを許す」と決めたとしたら、この問題はどのように変わるでしょうか。「日本でもフランスでも、そんなルールは会社が決めることはできない」などと言わずに、「もしそのようなルールがあったらどうなのか」を考えてみましょう。

 もしこのようなルールの世界にゴーン氏がいたとすれば、彼の個人的な苦境は解消されるはずです。たとえば資産運用に失敗して20億円の担保を差し出さなければいけなくなったとしても、日産が6000億円の営業利益を叩き出せば30億円の私的流用枠ができます。それだけ毎年流用枠があれば、レバノンに20億円する豪華な自宅がほしくなっても、1年分の枠を使って社宅として買ってもらうことがルールのなかで可能になります。

アメリカの大企業では事実上導入

 なんとなく読者のみなさんもお気づきかもしれませんが、アメリカの大企業の業績連動型の報酬体系の下では、現在進行形でこのようなことが行われていて、CEOが100億円規模の巨額報酬を得ると同時に、株主も株価の大幅上昇で満足を得るというウィンウィンな状況が生まれています。

 ゴーン氏にとって不幸だったことは、親会社であるルノーの大株主がフランス政府で、フランスそのものが西側社会のなかでも社会主義的な色合いが強い国だったことでしょう。そのため、あれだけ世界的に有名な経営者であったにもかかわらず、ルノーでのゴーン氏の報酬は、日本の大企業経営者の報酬と大差がありませんでした。

 そして日本経済にとって不幸だったことは、法律を遵守しようとしたら、優秀な経営者を放逐せざるを得ないということです。少なくとも現行の法律がある以上、日産の株主も内部関係者も、ゴーン氏を告発せざるを得ない。

 さて、この状態を唯一変えることができるのは法律をつくる国会だけです。政治家や官僚がいろいろとやらかしていることがいつも国会で問題になりますが、わが国の官僚はしっかりしているので、大概の不祥事は法律上では合法になっています。だとしたら政治分野だけでなく経済分野に関しても「稼いでいる会社の利益の一部を流用するのは合法である」という法律もつくってみたらどうかと思うのですが、官僚のみなさん、経済成長のためにこういったことを検討してみてはどうでしょうか。

(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『ぼくらの戦略思考研究部』(朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング 経済クイズ王』(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。

日本の造船産業、存亡の危機に…国内大手でも韓国・中国勢の20分の1の規模

 11月11日、国内造船・重機大手企業である三井E&Sホールディングス(三井E&S)が第2四半期(7~9月期)の最終損益が665億円の赤字だったと発表した。それと同時に、同社は2019年度の最終損益が880億円の赤字になるとの見通しも公表した。大幅赤字の最大の原因は、インドネシアの石炭火力発電所の建築工事において約713億円の損失が計上されたことだ。

 リーマンショック後、同社の業績は中国経済の堅調な展開の恩恵を受けた。ところが、ここへきて中国経済の減速は一段と鮮明化している。中国の資源需要の落ち込みなどを受けて、世界的に鉱山などの開発も停滞気味だ。それに対して三井E&Sは、資産売却などを進めることによって当面の収益を確保しようとしている。ただ、中国経済の減速懸念をはじめ、世界経済の不確定要素は増えつつある。同社の改革がどれだけの効果をもたらすか、先行きは見通しづらい。

減速が一段と鮮明化する中国経済

 基本的に、石油化学関連の設備や発電所などの設計・建築(プラント・エンジニアリング)や、タンカーなどの造船を手掛ける三井E&Sの業績は、世界経済全体の動向に大きく影響されやすい。特に、リーマンショック後の同社の業績は、中国経済の動向に左右されてきた側面が大きい。

 現在、中国経済の減速は一段と鮮明化している。その背景には、中国経済が成長の限界を迎えていることがある。それは、GDP(国内総生産)の推移を見ればよくわかる。リーマンショック後、中国政府は4兆元の景気対策を発動し、道路や鉄道などのインフラ整備をはじめとする“投資”を軸にして経済成長率を高めようとした。これは、1990年代初頭に株式と不動産の“資産バブル”が崩壊し、“ハコモノ”の建設など公共事業の積み増しによって雇用の保護と景気の維持を目指した日本の政策運営に共通した部分がある。

 巨額の経済対策が打たれた分、中国の一時的に景気は持ち直した。2011年ごろまで、中国の需要などに後押しされ、鉱山やエネルギー資源の需要は持ち直した。それは三井E&Sが造船やプラント関連の受注を獲得し、業績の維持・拡大を目指すために重要な追い風となったはずだ。

 ただ、中国は構造物の建築や不動産開発などを通して景気浮揚を重視するあまり、過剰な生産能力を生み出してしまった。ある意味、中国政府は投資によってGDP成長率の“かさ上げ”を目指したともいえる。

 その結果、内陸部などにも高速鉄道が延伸された。もともと需要がぜい弱な地域にまで過剰な投資が行われ、中国経済における資本の効率性は大きく低下してしまった。中国経済の専門家の中には、「すでに、付加価値を生み出せる投資案件はほとんど見当たらない」と、かなり悲観的な見方を持つものもいるようだ。中国企業による債務の不履行(デフォルト)が急増し、債務問題が深刻化していることはその裏返しといえる。企業経営者や家計のマインド悪化も深刻とみられ、短期間で景気が持ち直す展開は想定しづらい。

三井E&Sが目指すビジネスモデルの改革

 三井E&Sは、プラント・エンジニアリングと造船分野を中心に、新たな受注を取り付け、完成した設備などを発注者に引き渡すことなどを通して成長してきた。発電所の建設や大型船の建造には、かなりの資本支出が必要だ。中国の過剰生産能力の解消が進まない間、同社が需要を取り込んで収益を得ることは容易ではないだろう。経営陣は現在の事業環境が“底”との見解を示しているが、事業環境が一段と悪化する恐れもある。大型の案件を受注し、業績を拡大するという同社のビジネスモデルは転換点を迎えていると考えられる。

 この認識に基づき、三井E&Sはより安定して収益が得られるビジネスモデルを目指している。具体的に、経営陣はエンジニアリングと造船の両事業において、発電所の保守点検や、船舶のメンテナンスなど、より収益の安定性が見込めるビジネスを強化し、業績を安定させることを重視している。造船関連では、環境への負担軽減のためにガス関連の製品競争力を高めることも目指されている。

 冷静に考えると、こうした改革案を実行していくことは重要だ。問題は、今後の収益動向の不確実性が高まるなかで、同社が改革を完遂できるか否かだろう。同社は7~9月期に計上した損失の範囲内でインドネシアの石炭火力発電所プロジェクトを完遂するとしているが、先行きは見通しづらい。

 加えて、世界の造船業界では大規模に業界再編が進み、価格競争が熾烈化する可能性が高まっている。世界大手、韓国の現代重工業は、大宇造船海洋の買収で合意に至った。また、中国では、中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の国有企業の経営統合が決定された。

 この結果、世界の造船業界における韓国と中国のトップ企業のシェアは、それぞれ2割程度に達したとみられる。世界的に海運への需要は低下傾向にある。世界シェアが1%程度とみられる三井E&Sが中韓の巨大造船企業との競争に対応することは容易ではないだろう。

求められる成長への明確な道筋

 また、三井E&Sは資産の売却などを進めることによって、収益と財務内容の悪化を回避しようとしている。資産売却を進める上で重要なことは、経営陣が、組織全体が進むべき方向を示し、経営資源を成長が見込める分野に再配分することだ。それができるか否かが、同社の事業の継続性に無視できない影響を与えるといっても過言ではないだろう。

 現在、同社の経営陣は自力での経営にこだわらない姿勢を示している。プラント・エンジニアリングと祖業である造船事業の両方において、同社は他社との協業や資産の売却を進めている。資産売却などを進めれば、固定費を中心に支出を抑え、一時的に収益を確保しやすくはなるだろう。

 やや気になるのは、そうした取り組みを続けた結果として、同社がどのような企業になりえるか、明確な将来像が描きづらい部分がある。突き詰めて考えると、他社との合弁を進め資産の売却を続ければ、最終的には自社の組織そのものがなくなってしまう恐れがある。

 この懸念は、造船分野における他社との提携などから確認できる。三井E&Sは造船分野において、国内の常石造船や中国の揚子江船業と提携した。さらに、公官庁向けの水上艦事業などに関して三菱重工との提携も模索されている。経営陣としては、提携分野を拡大することを通して環境変化に適応しやすい体制を整備したいのだろう。

 ただ、それが想定された成果を発揮できるとは限らない。利害関係者が増えれば、その分だけ利害の調整には時間と労力がかかるだろう。経済環境が一段と不安定になり事業環境が悪化するなどすれば、利害の調整が難しくなることもある。加えて、世界的な価格競争にも対応しなければならない。

 三井E&Sの経営陣に求められることは、改革が中期経営計画にて示された新しいビジネスモデルにどうリンクするか、明確なロジックを提示することだろう。それは、利害関係者(従業員、株主、債権者など)の賛同を取り付け、改革を進めるために不可欠な要素の一つと考えられる。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

“国産”エルピーダメモリを倒産させた坂本幸雄元社長、中国半導体大手の副総裁に就任

 11月16日付日本経済新聞朝刊に掲載された中国・北京発の以下記事が波紋を広げている。

<中国半導体大手の紫光集団は11月15日、かつて日本の半導体大手であったエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)の坂本幸雄元社長(72)を、高級副総裁に起用すると発表した。(略)日本子会社の最高経営責任者(CEO)も兼務する。紫光は、中国の半導体産業の競争力向上を目指す中国政府の後押しを受けている。坂本氏の起用は、同氏が持つ多くの経営ノウハウや人脈を最大限活用する狙いとみられる。(略)紫光の趙偉国董事長兼CEOは「坂本氏の加入は紫光のイノベーションの力を増強することに疑いはない。グローバルでの成長と、事業の現地化戦略を体現するものだ」と強調した。坂本氏も「日本事業を全力で拡大し、紫光のグローバル成長を支援していく」とのコメントを発表した>

 この記事を書いた記者は、坂本氏がどんなことをやって、多くの人に迷惑をかけたのかを知っていたのだろうか。坂本氏がエルピーダメモリの経営危機に際して、敵前逃亡し、自殺者まで出たことをきちんと知ったうえで、この記事を書いているのだろうか。

 まず、新会社設立をめぐるドタバタ劇から再現することにする。書く側が、物忘れが上手である必要はない。

サイノキングテクノロジー社設立に関するドタバタ劇

 2012年2月に経営破綻した半導体メモリー大手、エルピーダメモリの社長だった坂本氏が、日本の技術と中国の資金を活用して先端半導体の開発・量産に乗り出す、と2016年2月に報じられた。NHKが2月20日午後6時のニュースで、続いて2月22日付日経新聞朝刊が伝えた。「本当なのか」と首をかしげる向きが少なくなかった。これまでも大ボラを吹いて、メディアを手玉にとってきた過去があるからだ。

 やっぱりというべきだった。2月24日午後1時から開催される予定だった次世代メモリー設計開発会社発足の記者会見は中止になった。中止の理由は報道に対する対応に追われているからだという。事前にメディア、それも日経新聞に情報を流して前景気を煽るのが坂本氏の常套手段だが、墓穴を掘ってしまったようだ。日経の記事はこんな内容だった。

坂本氏が社長を務める半導体設計会社はサイノキングテクノロジー。日本と台湾の技術者合計10人で立ち上げ、今後は日台と中国を中心に設計や生産技術の担当者を採用して1000人規模の技術者集団にする。新会社は中国安徽省合肥市の地方政府が進める約8000億円をかけた先端半導体工場プロジェクトに中核事業として参画する。サイノ社側が次世代メモリーを設計し生産技術を供与する。第1弾として、あらゆるものがネットワークにつながる「IoT」分野に欠かせない省電力DRAMを設計し、早ければ17年後半に量産する>

 青写真は壮大だったが、発足会見は中止に追い込まれた。日経の記事は、<サイノ社が設計・生産技術に特化し、数千億円規模の投資が必要な半導体工場の資金負担は中国に任せる国際分業の新しい形態を模索する>となっている。「模索」の段階で、坂本氏は大風呂敷を広げ過ぎたのではないのか。

「サイノキングテクノロジーリミテッド、およびサイノキングテクノロジージャパン株式会社のCEO(最高経営責任者)には、私、坂本幸雄が就任しました。サイノ=中国の、キング=王、つまり『中国で圧倒的に優れたDRAMを作っていきたい』というコンセプトのもとに生まれた会社です」

 サイノキングテクノロジージャパンのHPで、坂本氏はこう書いていた。「今後、日本と台湾とで、計二百数十名のengineerを採用していきます。このメンバーの経験と技術力を核とし、2017年中に日本、台湾、中国合わせ、1000人規模のエンジニアを有するメモリー開発会社にする計画です」と坂本氏は綴る。しかし、会社概要に資本金の記載がないのである。この一点をもってしてもケッタイな会社、不可解なプロジェクトだということがわかる。

再建請負人が倒産させたエルピーダメモリ

 坂本氏は1970年に日本体育大学体育学部を卒業し、高校野球の監督になるという夢が破れ、義兄の紹介で半導体メーカーの日本テキサス・インスツルメンツ(TI)社に入社した。体育会系で半導体に関する知識もなく、倉庫係として資材の出入庫から学び始めたというのが、自慢だ。

 徹夜もヘッチャラというタフな働きぶりが認められ、TI副社長に上り詰めた同氏は、その後、半導体事業の再建請負人となる。神戸製鋼所の半導体本部長、台湾の半導体メーカーの日本法人、日本ファウンドリー(のちのUMC JAPAN)社長を務めた。

 その手腕を買われて2002年、DRAMで世界第3位のエルピーダメモリの社長に招かれた。エルピーダは1999年に日立製作所とNECのDRAM(半導体を使用した記憶素子)事業を統合して発足。その後、三菱電機の事業も譲り受け、国内唯一のDRAMメーカーとなった。2009年に改正産業活力再生法(産活法)の適用第1号に認定され、300億円の公的資金を得た。

 だが、サムスン電子とSKハイニックスなど韓国勢とのシェア争いに敗北。市況悪化も重なり、12年2月に会社更生法を申請した。負債総額は4480億円に上った。法的処理の過程で、坂本氏は“計画倒産”を仕組んだのではないか、との悪評を買った。自ら管財人に就いて、米半導体大手マイクロン・テクノロジーにエルピーダメモリを売却した。13年7月、マイクロンによる買収が完了。エルピーダはマイクロンメモリジャパンに社名を変更した。

 倒産のあおりを受けて連鎖倒産した中小企業の経営者が自殺した。株券が紙きれになった株主は激怒。「経営破綻が予見できたのに、その直前に資金調達計画を発表。会社が存続するかのようにみせかけたのは不当だ」として、坂本氏ら旧経営陣を相手取り1億5000万円の損害賠償請求訴訟を起こした。

 しかし、坂本氏は批判なんかどこ吹く風。『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』(日本経済新聞出版社)を出版。自分の経営は間違っていなかったと自画自賛した。当然、被害者の怒りは増幅した。

エルピーダ争奪戦

 2016年1月4日放送の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)は、同番組放送開始10周年の特別番組だった。「よくも悪くもいろいろあった10年。挑戦を続けるプロたちを描く」というテーマで放送され、坂本氏が登場した。NHKは同番組で全盛期の坂本氏を取り上げていたから、エクスキューズをするために再び取り上げた、と噂された。

「日経ビジネス」(日経BP社)も坂本氏には優しかった。取材メモをひっくり返してみたら、2012年2月2日に坂本氏は2011年4~12月期決算を発表している。<坂本社長は「資金繰りに問題ない」と語った>と同誌は書いている。同じ会見に出た朝日新聞は<資金繰りは厳しい>と報道していた。まずいと思ったのだろう。日経の記者は2月27日の倒産会見で坂本氏に「決算発表では『資金繰りに問題ない』と言っていたではないか」と詰め寄った。すると坂本氏は「3月末までは大丈夫と我々は考えていたが、その先はリファイナンス(金融機関からの借り換え)が難しいとわかった。今が(会社更生法申請に)ベストタイミングだと判断した」と言ってのけた。「経営責任」の四文字が欠落しているような姿だった。日経グループは坂本氏を「名経営者、戦う経営者」と持ち上げてきた。

 会社更生法の申請にあたって主要取引銀行の三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、住友信託銀行(いずれも当時の行名)の同意を取り付けていなかった。金融団は寝耳に水だったようだ。

 エルピーダメモリには公的資金が注入されていた。2010年に会社更生法を申請した日本航空では当時の西松遙社長は引責辞任したが、坂本氏は居座った。前出『プロフェッショナル』では「最終責任を全うするために坂本は苦渋の選択をした」などと、かっこいいナレーションを彼の姿にかぶせていた。

 エルピーダは経済産業省の役人のインサイダー疑惑の舞台になった会社でもある。2012年2月27日の倒産会見で坂本氏は「(メディアが)どこかから聞いてきた話をすぐ記事にしたことが、どれだけ我々の提携環境を阻害したことか」と痛烈に批判。本来成功したはずの提携交渉が進展しなかったのはマスコミのせいだと八つ当たりし、会場に失笑が漏れた。報道によって「提携がダメになった」との批判は、天に唾するようなものだったからである。

 たしかに坂本氏はモーレツ経営者だったが、経営力には疑問符をつける向きが多かった。

「パソコン用DRAMは価格が急落したが、スマートフォン用は十分収益を挙げていた。エルピーダは旧来のパソコン用の生産ラインのまま。スマートフォン時代に取り残された。戦略ミスが倒産の最大の原因だ」(業界関係者)

 取引銀行は「実効ある再建計画を打ち出せなかった」と不信を口にした。エルピーダメモリの米マイクロンによる買収は、最初から不可解なことばかりだった。倒産したエルピーダの坂本社長が管財人となり売却先を決めたため、“出来レース”の疑惑がつきまとった。坂本社長と親密な関係にあるマイクロンを支援先に決定したことから、こうした批判が沸き起こった。

<ヘッジファンドのリンデン・アドバイザーズやオウル・クリーク・アセット・マネジメント、タコニット・キャピタル・アドバイザーなど社債権者20社は「エルピーダの企業価値は、管財人(=坂本氏)が査定した2000億円ではなく、3000億円に上る」と主張。マイクロンへの売却提案は透明性を欠いているとして、独自の再建案を東京地裁に提出した。

 社債権者グループのメンバーは、スポンサーを選定する入札手続きについて、「全くの出来レース。マイクロン以外のスポンサー候補にはデューデリジェンス(資産査定)に必要な情報が提供されなかった」と強く批判。「坂本氏はマイクロンから再建後のポストを用意されており、あらかじめ手を握っていたマイクロンに有利になるようにスポンサーの選定手続きを進めたのではないか」と“密約説”を口にした>(2012年8月28日付「日経ビジネスオンライン」記事)

 エルピーダの争奪戦には一時、東芝や韓国SKハイニックスが参戦。米中ファンド連合も伏兵として現れ、激しい駆け引きが演じられた。だが、舞台裏を追うと、支援企業は最初からマイクロンに決まっていた出来レースだったことがわかってくる。

 出来レースを可能にしたのは、2009年から導入されたDIP型と呼ばれる新しい会社更生手続きだった。DIPは「占有継続債務者」と訳されている。破綻企業の経営陣が退陣せず、更生計画に関与するのが最大の特徴である。DIP型では破綻した企業の社長が管財人になる。一人二役である。管財人は、支援企業の選定に大きな影響力をもつ。もし、公平性などない人物が管財人になれば、スポンサー選びは意のままだ。

 再建のスピードを上げるために導入されたDIP型会社更生手続きが、経営者の保身のための出来レースに悪用されることがあるなどということを、これを導入した司法官僚は考えていなかったに違いない。

裏切りの数々

 まず、株式市場を欺いた。2012年2月23日に、「3月28日に臨時株主総会を開催し、日本政策投資銀行の優先株の償還に備えるための減資などの議案を付議する」と発表した。資金不足を回避して、会社を存続させる意思表示と受け止めた株式市場に安堵感が広がった。

 ところが、取引所の営業日で数えると2日後の2月27日に会社更生法を申請した。市場はパニックに見舞われ、翌28日には、売りが殺到して売買が成立せずストップ安。29日の前場(午前中)の終盤に5円でやっと売買が成立した。直後に4円まで下げたが、その後切り返し、終値は7円。247円安、97.2%のマイナスだった。3月28日に上場廃止となり、株券はただの紙屑となった。

 次に欺かれたのが銀行団だ。2月23日、銀行団に返済期限の近づいた融資の3カ月間の繰り延べを求めるなど、自力での事業継続への意欲を見せていた。それなのに翌24日には、主要4行の口座から預金、250億円が引き出され、取引がなかった、りそな銀行に移し替えられた。融資と預金が相殺されないようにするための措置だ。資金を確保した上で、事前の調整どころか、正式な通告すらないまま、27日に更生法の申請に踏み切った。銀行には「寝耳に水」。金融機関との信頼の糸は完全に切れた。

 マスコミの信用も失った。27日の倒産会見で坂本氏は「(メディアが)どこかから聞いてきた話をすぐ記事にしたことが、どれだけ我々の提携環境を阻害したことか」と痛烈に批判。本来成功したはずの提携交渉が進展しなかったのはマスコミのせいだと八つ当たりして、失笑を買ったことはすでに書いた通りである。

 エルピーダは2009年に改正産業活力再生法(産活法)の適用第1号に認定され、300億円の公的資金を得ていた。倒産で最大277億円のツケが国民に回ったことになる。公的資金を焦げ付かせた企業のトップが続投した例は皆無である。会社更生法の申請代理人の弁護士は「半導体業界は高度の専門性が必要。(坂本氏に)再建を全うしてもらうことが経営責任につながる」と述べたが、彼にどのような高度の専門性があったのだろうか。

「日経ビジネス」(2019年12月2日号)は<元エルピーダメモリの坂本氏を起用 中国がDREM国産化に執念>という記事を載せた。

<国内のオフィスに最大100人程度の設計者を集め、中国・重慶市で量産するDRAMを設計する。日本の半導体産業の栄枯盛衰を知る坂本氏の起用からは、中国のDRAM国産化への執念が垣間見える>

 エルピーダの倒産時にメインバンクのバンカーは「坂本さんには技術の先を見る目がなかった」と吐き捨てた。同記事では<坂本氏は周囲から「会社を潰した張本人」と見られてしまう>と書かれているが、詳述したように坂本氏は会社を潰し、敵前逃亡した張本人なのである。

(文=有森隆/ジャーナリスト)

辛気臭い歌詞で200万枚! 『ちびまる子ちゃん』でお馴染みの名曲、メガヒットの理由

 あなたにとって「懐かしい」とはどんな情景でしょうか? 1970~90年代の「懐かしい」を集めたのが「ミドルエッジ」。あなたの記憶をくすぐる「懐かしい」から厳選した記事をお届けします。

 今回のテーマは、「なみだの操」。1974年に大ヒットし、90年代以降も漫画『ちびまる子ちゃん』(集英社刊)などの影響で、たびたびお茶の間に普及していた同曲について振り返っていきます。

長く日本歴代25位のセールスを記録した「なみだの操」

「違うよ、おじいちゃん。もっとニヤニヤしながら歌わなきゃ」

 これはマンガ『ちびまる子ちゃん』の中で、殿さまキングスの「なみだの操」を歌う友蔵にまる子が言い放ったセリフ。確かに映像で見ると、ボーカル・宮路オサムの顔は異常なほどニヤニヤしています。

「なみだの操」は、1973年11月にリリースされた殿様キングス4枚目のレコード。1974年の年明けから徐々に売れ始め、3月にそれまで7週連続トップだった小坂明子の「あなた」を抜いて、オリコン1位を獲得。そこから9週連続で首位の座を死守し、最終的にオリコン年間シングルランキングでも堂々の1位に輝きました。

 ちなみに、累計売上枚数は197.3万枚。これは2011年時点での日本シングル売上史上25位の記録に相当し、Mr.Childrenの「innocent world」(193万枚)、B’zの「LOVE PHANTOM」(186万枚)よりも上に当たります。

老若男女問わず愛された名曲

 「なみだの操」の特筆すべき点は、「おそばに置いてほしいのよ」「お別れするより死にたいわ」といった、辛気臭い歌詞を悲しげなメロディに乗せて歌っているにもかかわらず、まったく悲壮感が漂ってないこと。現に『ちびまる子ちゃん』の別の回では、ヒロシとまる子が風呂場で楽しそうにこの歌を大熱唱し、偶然、家の前を通りかかったたまちゃんにドン引きされるシーンがあります。

 おそらく、女性歌手が歌っていたらド直球過ぎて、もっとしんみりとした印象になっていたことでしょう。また、美男子がマイクを握ったとしても、狙い過ぎ感が出ていたかもしれません。

 ボーカル・宮路は、当時27~28歳ながら実年齢よりも老けて見えました。“とっちゃん坊や”風の宮路がニヤニヤしながら、かつ、ねっとりと絞り出すような声で切ない女心を歌い上げたからこそ、絶妙な味わいが出たのでしょう。そして、1974年の日本レコード大賞・大衆賞受賞時の前口上にて「聞いてください。お年寄りからヤングまで。みんなに愛された殿様キングス『涙の操』!」と紹介されたように、老若男女問わず親しまれる名曲となったのではないでしょうか。

 この連載では次回以降も皆さまの脳裏に「懐かしい」が蘇りそうな記事を提供して参ります。「こんな記事は?」「あのネタは?」なんてお声も、ぜひお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。

(文・構成=ミドルエッジ)

JRA有馬記念(G1)リスグラシュー×レーン騎手で名誉挽回!? 16年ぶり「特例」も思い出される「日本ダービー1番人気」の悪夢

 史上2例目の“ウルトラC”で役者が揃ったか。

 3日、年末のグランプリ有馬記念(G1)で引退を迎えるリスグラシュー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)の鞍上が「特例」でD.レーン騎手に決まった。

「ファンが一番望んでいる騎手は誰かと考えた時、レーンとともにリスグラシューを見たいのではないだろうかと思い、JRAに特例での免許の申請をした結果、承認されました」

 厩舎を支えた“女王”の最後の花道を飾るべく、矢作芳人調教師が動いた。この春、短期免許で初来日したレーン騎手は、すでに免許期間を使い果たしているが、JRAの定める「本会G1競走で2勝以上」をクリアしたことで、有馬記念当日のみ1日限定の免許交付が認められた格好だ。

「超豪華メンバーといわれている有馬記念で、続々と騎手が決まる中、1番人気が濃厚なリスグラシューの鞍上が空白のままで心配していたファンも多いと思います。矢作調教師が話している通り、リスグラシューとともに宝塚記念(G1)と豪コックスプレート(G1)を制したのはレーン騎手。これで役者が揃った感がありますね」(競馬記者)

 過去には、ネオユニヴァースが皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)のクラシック二冠を達成。秋の菊花賞(G1)を迎えるにあたって、すでに短期免許期間を終えていたM.デムーロ騎手の騎乗が特例で認められた例がある。その2003年から、約16年ぶりの“ウルトラC”というわけだ。

 世界に名を轟かす「最強コンビ」が決まったことで年末の有馬記念では、リスグラシューが“主役”を務めることが濃厚だ。

 そうなると、すでにヴィクトリアマイル、宝塚記念と日本のG1タイトルを獲得しているレーン騎手だが、「春の大きな借り」を返しておきたいところだろう。

「レーン騎手によるG1・1番人気というと、やはりサートゥルナーリアに騎乗した今年の日本ダービーを記憶している人も多いのではないでしょうか。

当時、来日してすぐにヴィクトリアマイルを勝つなど『豪州の若き天才』と日本の競馬メディアからももてはやされたレーン騎手ですが、主戦のC.ルメール騎手が騎乗停止になったことで、日本ダービーで1番人気馬に騎乗という大役が巡ってきました。

しかし、結果はスタートで後手を踏んでしまい4着……。単勝1.6倍という圧倒的な人気でしたし、レース後には『ルメール騎手が乗っていれば』とレーン騎手を批判する声も多数。レーン騎手からすれば、今回の有馬記念はある意味、名誉挽回のレースになるかもしれませんね」(別の記者)

 単純にレースの売上や注目度を見ても、日本で最も人気があるレースが有馬記念であり、その次が日本ダービーだ。また、サートゥルナーリアとリスグラシューは、同じノーザンファーム生産のキャロットファーム所属馬。周囲の期待度や注目度からも、レーン騎手の“リベンジ”に期待したい。

『結婚できない男』大コケ、原因は元乃木坂・深川“大根すぎる演技”だとフジ局内で酷評

 2006年に阿部寛主演で放送され人気作となった連続テレビドラマ『結婚できない男』(フジテレビ系)の続編で、現在放送中の『まだ結婚できない男』。前評判は高かったものの、11月26日に放送された第8話の平均視聴率が8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となるなど、苦戦している。

 同作は偏屈で独善的な独身の建築家・桑野信介(阿部)が、女性との出会いをきっかけに恋愛を意識し、結婚と真摯に向き合うまでの日常を描いた作品で、今回13年ぶりに続篇が放送されている。主演の阿部は続投の一方、女性キャスト陣は吉田羊、稲森いずみ、深川麻衣に一新された。

 なかでも深川は乃木坂46を卒業して以来、民放での本格的なドラマ出演はほとんど初めて。NHKの“朝ドラ”はすでに経験しているものの、今作ではあまり視聴者から受け入れられていないようだ。

「制作陣は『思っていたより数字が取れない』と嘆いています。前作が人気作だっただけに、肝心の女性陣の選定もかなり悩んだらしいのですが……。吉田羊はどの作品でもバランサーになってくれるので安定的に力を発揮してくれていますが、問題なのは深川。まだ演技の経験が少ないため、深川のシーンが苦痛だという視聴者も多いようです」(フジ関係者)

 インターネット上では、深川に対して「演技が下手すぎる。すごく好きなドラマだったのに、このひとが出てるシーンはイライラしてしまう」「もともと国仲涼子が良い味出していたから、受け入れるまで時間がかかりそう」「他にもっといい女優いたと思うんだけど…」と厳しい声が目立つ。

 女優業に専念するという理由で乃木坂46を卒業した深川だったが、別のフジ関係者は話す。

「深川の所属事務所には、田中麗奈や高良健吾、中条あやみなどがいますが、俳優を戦略的に売っていくことでも有名です。深川に関してはアイドル色を消すために作品もかなり選んでおり、今作を選んだのも大きな賭けで、人気を全国区にしたいという気持ちの表れだと思います。今回の抜擢は、事務所とフジの関係が影響していますが、制作陣の間では『演技が想像以上に下手』『次回は起用することはない』という評価となってしまっています。NHKの朝ドラでは素人っぽい演技が映えますが、民放の人気シリーズ作では、それでは通用しませんよ」

「局内では、深川の起用が大コケの原因だという声も出るほど」(テレビ局関係者)だというが、深川の試練は続きそうだ。

(文=編集部)

銃殺された神戸山口組幹部の葬儀日は五代目山口組組長の命日…7年の月日と山口組の激動

 神戸山口組の古川恵一幹部が、六代目山口組の元組員に射殺されて2日後となった11月29日の夜。兵庫県尼崎市内の斎場には、神戸山口組・井上邦雄組長や神戸山口組と友好関係にある他団体の首脳が姿を見せていた。

 古川幹部の通夜は、その斎場で30日に17時から業界関係者を対象に、19時から故人と親交のあった一般関係の人々を対象にと、二部制という形で粛々と執り行われた。また、葬儀は12月1日、午前10時から営まれた。

 「警察当局も、何が起こるかわからない事態と考えてのことだろう。通夜も葬儀も、周辺は相当な厳戒体制だった。近くの小学校を機動隊員らの待機場所にしていたようだ」(地元関係者)

  確かに、斎場近くに足を運んだ筆者が知り得る限りでも、覆面車両や私服警官らが斎場近くを警戒にあたっている姿が目立っていた。現在の状況を当局サイドが非常事態と捉えてのことだろう。結果、両日ともにトラブルが起きることはなかったが、業界関係者も当局側も、このままで終わるはずがないと考えていたはずだ。

 筆者も同様の思いを抱きつつ、7年前のある日のことを思い出していた。古川幹部の葬儀が営まれた12月1日は、五代目山口組・渡辺芳則組長の7回目の命日でもあったのだ。

  2012年12月1日、著者はガレージ当番のため、神戸市灘区にある六代目山口組総本部に泊まり込んでいた。通常、土、日、祝日は、近隣住民に対する配慮からも行事などは執り行わず、総本部へと出入りする車両は極めて少ない。この日も土曜日ということもあって、総本部内にはゆっくりとした時間が流れていた。それが突如、最高幹部が乗る車両が総本部内に入ったのを皮切りに、施設内が慌ただしくなったのであった。

 筆者は、奥の部屋のモニターで車の出入りを見ながら、大事が起きたことを瞬時に察することができた。すると、携帯電話が鳴った。筆者が所属した組織の親分からであった。

「まだ、ほかの者に言うなよ。五代目の親分が亡くなられた。総本部から帰ってきたら、喪服に着替えて身体を空けておいてくれ」

 2005年に引退されていた五代目・渡辺組長は、71歳で人生の幕を閉じた。通夜に参列できたのは、プラチナと呼ばれる直参の親分衆と、五代目・渡辺組長の出身母体となる山健組の執行部、幹部、古参組長らだった。そして直参組長には、ひとりの付き人が同行を許された。また翌日に行われた告別式は、親族や山健組主体のみで、山口組会館で執り行われた。

 そのため通夜には、司忍・六代目組長を筆頭に出席可能な全直参組長、そして初代岸本組・岸本才三組長、芳菱会・瀧澤孝総長といったすでに引退されていた親分衆、さらに他団体からは、稲川会の清田次郎・現総裁や内堀和也・現会長が弔問に訪れていた。

 筆者は所属する親分のお付きとして斎場に向かったのであったが、くしくも今回射殺された古川幹部の車に同乗し、山口組会館に入ったのであった。

  今でもその時のことは鮮明に覚えている。筆者ら付き人の組員らが式場の前の廊下に整列し、弔問客を迎えていたのだが、その時、山口組会館の上から降りてきた髙山清司若頭らの存在感は強烈なものがあった。髙山若頭が姿を表すと、瞬時に緊張感が漂い、式場全体の空気が引き締まったのを肌で覚えている。それは、先月10月18日、髙山若頭が府中刑務所から出所してきて、品川駅で感じた空気とまったく同じであった。

  五代目・渡辺組長のお通夜では、最後方の列に2席空白ができ、たまたま筆者がその席に座らせてもらえ、五代目・渡辺組長の眠られる棺に合掌し、焼香させてもらうことができた。筆者が五代目・渡辺組長のお姿を見たのは、これが最初で最後であった。

  あれから歳月が流れた。その間に、髙山若頭の収監があり、六代目山口組が分裂。神戸山口組が誕生し、その後、任侠山口組が誕生しようとは、誰が想像することができただろうか。そして、髙山若頭の出所。その後に続く、神戸山口組幹部たちの襲撃、古川幹部の銃殺……五代目・渡辺組長の逝去から7年の月日を経て、山口組が再び大きく動き始めている。

(文=沖田臥竜/作家・元山口組二次団体幹部)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
元山口組二次団体最高幹部。2014年、所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。

レコ大と距離置いていた故ジャニー氏へ特別賞授与&近藤真彦代理受賞にファンからも批判

 12月30日に放送される『第61回 輝く! 日本レコード大賞』(TBS系)で、「特別音楽文化賞」が新設され、故ジャニー喜多川氏に授賞されることが発表された。だが、その授賞式への登壇者をめぐって疑問の声が噴出している。

 番組公式サイトによると「『特別音楽文化賞』は、日本レコード大賞実行委員会で決まったもので、音楽文化の発展に寄与し、日本レコード大賞へ多大な貢献をもたらした方に贈られる賞として新設されたもの」と説明されている。また、放送当日はジャニーズ事務所を代表して近藤真彦が出演し、ジャニー喜多川氏に代わって受賞することが決定したという。ちなみに近藤は、過去に日本レコード大賞・最優秀新人賞・最優秀歌唱賞の三冠を獲得している。

 ジャニー氏の受賞決定と近藤の出演発表を受けて、インターネット上では「なぜ近藤真彦がジャニーズ事務所の代表なのか」という疑問の声が続出。一方で、賞を受け取る“適任者”として名前が挙げられたのが、2018年に表舞台から引退した滝沢秀明だ。

 滝沢は今年1月、ジャニーズJr.育成のためグループ会社「ジャニーズアイランド」の社長に就任。ジャニーズ事務所が9月に発表した役員人事では、同事務所の取締役副社長という大任にも就いている。そのためジャニーズファンからは、「タレントを辞めてまで裏方に徹するタッキーこそジャニーズ事務所の代表として相応しいのでは?」「ジャニーさんの遺志を受け継いだ幹部は滝沢くんなのだから、今回は例外的に滝沢くんが出演してもいいと思う」との声が多く上がっている。

 他方、ジャニーズ事務所は「日本レコード大賞」と距離を置いているとされ、ジャニーズ事務所にまつわる人物の受賞自体に否定的な意見もある。きっかけは1990年まで遡る。ジャニーズグループ・忍者が、「ポップス・ロック部門」最優秀ポップス新人賞に選出されたことが発端といわれている。ジャニーズ事務所は「歌謡曲・演歌部門」での選出を希望していたため同賞を辞退し、これ以降、同事務所所属タレントはレコ大に出演しなくなった。だが、2010年に近藤が『心ざんばら』で最優秀歌唱賞に選出されると、ジャニーズ事務所は「近藤は今のジャニーズの若いタレントたちとは違い、レコード大賞に育てられた歌手」として特例で受賞を認めた経緯がある。

 ネット上ではジャニー氏の受賞に対し、「これまで賞レースに不参加だったのに、プロデューサーが亡くなったからといって特別賞をわざわざつくって授与する必要があるのか」「場当たり的に賞を創設しても、権威の喪失を助長するだけ」と厳しい意見が続出。また「レコ大から距離を置いていたジャニーさんが話題づくりのために担ぎ出されたのは可哀想」「ここぞとばかりに視聴率稼ぎに動くTBSに不快感を覚える」といった批判も相次いでいる。

 波紋を広げているレコ大の特別音楽文化賞だが、ジャニー氏が音楽会に多大な功績を残したことは事実。壇上で近藤がどのようなコメントを残すのか注目したい。

(文=編集部)

『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』香月勝行氏他著発売

電通九州・香月勝行氏の共著『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』(光文社新書)が発売された。

売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」(書籍)
光文社新書、360ページ、940円+税
ISBN-10:4334044425
ISBN-13:978-4334044428

「差別化」がマーケティングの常識とされるこの時代に、なぜ通販会社はあえて似たような広告を作るのだろうか。答えは、もちろんその方が売れるからだ。通販広告には勝ちパターンが存在し、制作者側はそのパターンに基づいて広告を制作するのである。そして、そのような勝ちパターンが生み出されたのは九州という土地柄。もともとテレビを利用した通販広告は、地方の企業が中央の大手企業に勝つための戦略として、九州の一食品事業者から始まったものなのである。

本書では、その勝ちパターン=成功のための「鉄板法則」を7つに分け、そのあるなしでどのような差が生まれるかを明らかにするという、今までにないアプローチで実態に迫っている。

具体的には、鉄板法則を盛り込んだ広告とそうでない広告を制作し、調査にかけ、そこから得られたデータを心理学者の監修のもと、通販広告のプロが精緻に分析したのである。

【主な内容】
「売れない広告」がなぜあふれているのか
これが、現場で磨き上げられた、通販広告7つの鉄板法則だ!
鉄板法則1 「呼びかけ&問いかけ型導入」
鉄板法則2 「小公女型商品説明」
鉄板法則3 「煽り型CTA」
鉄板法則4 「トリプルリフレイン」
鉄板法則5 「答え合わせ型街頭インタビュー」
鉄板法則6 「中2でも分かる特徴紹介」
鉄板法則7 「感覚刺激型BGM&テロップ」

【著者プロフィール】
香月勝行
かつき・まさゆき 電通九州ダイレクトマーケティング部所属。クリエーティブ、マーケティングの経験を融合した「結果の出る広告企画」が得意技。

妹尾武治
せのお・たけはる 東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(心理学)。同大学IML特任研究員、日本学術振興会特別研究員(SPD)、ウーロンゴン大学客員研究員等を経て、九州大学芸術工学研究院において准教授。

分部利紘
わけべ・としひろ 東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(心理学)。同大学院医学系研究科、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、福岡女学院大学講師。

 

『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』香月勝行氏他著発売

電通九州・香月勝行氏の共著『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』(光文社新書)が発売された。

売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」(書籍)
光文社新書、360ページ、940円+税
ISBN-10:4334044425
ISBN-13:978-4334044428

「差別化」がマーケティングの常識とされるこの時代に、なぜ通販会社はあえて似たような広告を作るのだろうか。答えは、もちろんその方が売れるからだ。通販広告には勝ちパターンが存在し、制作者側はそのパターンに基づいて広告を制作するのである。そして、そのような勝ちパターンが生み出されたのは九州という土地柄。もともとテレビを利用した通販広告は、地方の企業が中央の大手企業に勝つための戦略として、九州の一食品事業者から始まったものなのである。

本書では、その勝ちパターン=成功のための「鉄板法則」を7つに分け、そのあるなしでどのような差が生まれるかを明らかにするという、今までにないアプローチで実態に迫っている。

具体的には、鉄板法則を盛り込んだ広告とそうでない広告を制作し、調査にかけ、そこから得られたデータを心理学者の監修のもと、通販広告のプロが精緻に分析したのである。

【主な内容】
「売れない広告」がなぜあふれているのか
これが、現場で磨き上げられた、通販広告7つの鉄板法則だ!
鉄板法則1 「呼びかけ&問いかけ型導入」
鉄板法則2 「小公女型商品説明」
鉄板法則3 「煽り型CTA」
鉄板法則4 「トリプルリフレイン」
鉄板法則5 「答え合わせ型街頭インタビュー」
鉄板法則6 「中2でも分かる特徴紹介」
鉄板法則7 「感覚刺激型BGM&テロップ」

【著者プロフィール】
香月勝行
かつき・まさゆき 電通九州ダイレクトマーケティング部所属。クリエーティブ、マーケティングの経験を融合した「結果の出る広告企画」が得意技。

妹尾武治
せのお・たけはる 東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(心理学)。同大学IML特任研究員、日本学術振興会特別研究員(SPD)、ウーロンゴン大学客員研究員等を経て、九州大学芸術工学研究院において准教授。

分部利紘
わけべ・としひろ 東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(心理学)。同大学院医学系研究科、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、福岡女学院大学講師。