長友佑都の盟友が明かすビジネス術 #02

ベンチャー、スタートアップ、さらには企業内起業、という言葉が使われ始めて久しい。「働き方改革」の潮流の中、大手企業も、いや、大手企業ほど、人事制度や評価制度の抜本的な見直しが迫られている。しかしながらその実態は、まだまだ手探りが続いていることも事実。この連載では、長友佑都氏と「二人三脚」で株式会社クオーレを運営する津村洋太氏に、その本質について、3回の連載で大いに語っていただきます。

協力:白石幸平(電通CDC)

「長友佑都=超人」では、決してない

前回もお話ししましたが、長友佑都は決して超人ではない。しかしながら、普通の人と比べて傑出していることがあって、それは「探究心」だと僕は思っています。

探究心とは、どれだけ深く掘り下げられるか、ということで、長友の場合、まず「他人と自分を比較する」ことはしない。「できない自分を責めて、くよくよすること」もない。メディアや取材を受ける時以外は「他人の目」も一切、気にしない。「こうなりたい」の元にあるのは好奇心、もっといえば夢とかロマンとかだと思うのですが、長友の場合は非常に、冷静です。全力でやった先には成長しかないと考えていますし、後悔はしたくないと思っているので、なにをすればいいのか、なにをしてはいけないのか、とことん冷静に分析を重ね、探求し続ける。そこが、彼の最大の強みだと、僕は思っています。

会社立ち上げ直後、サン・シーロで同社設立当時の日テレ番組「Another sky」収録時に撮影した1枚。左が現在、長友佑都のマネージャーを務める近藤慎吾(明治大学サッカー部で長友と同級生)で、3人とも同級生。
会社立ち上げ直後、サン・シーロで同社設立当時の日テレ番組「Another sky」収録時に撮影した1枚。左が現在、長友佑都のマネージャーを務める近藤慎吾(明治大学サッカー部で長友と同級生)で、3人とも同級生。

スタートアップの鍵は、自身の「ストロングポイント」を見極めること

長友佑都と共に起業するに当たっては、まず、彼の持っている「ストロングポイント」をとことん見極めることから始めました。彼個人の精神論とか、方法論に、いかに汎用性を持たせられるか、ということです。そこに、例えば「健康ブーム」といった時代が掛け算される。長友を中心とした「ストーリー」が、そこに生まれる。

企業内起業、といったことも全く同じだと思います。突飛なアイデアで走りだすのではなく、社内の、当たり前のように転がっているリソースを改めて見つめ直してみる。そこには発見が、必ずある。

パートナーとの組み方にもそれは現れていて、僕の場合、「長友のストーリーに合うパートナーなのか?」ということを第一義に考えています。この人と、この会社と組めば、ビジネスが広がっていきそうだな、という視点ではなく、長友のストーリーが広がっていくのか、どうなのか、を基準にパートナーを選ぶようにしています。

そして、Cuoreという会社は長友の体験や視界を具現化する会社でもあるので、必然的に彼と事業パートナーとしても協業ができますし、プロモーション時にも通常は膨大な費用と時間のかかるのを効率化できます。もちろん、当社が世に出す商品やサービス自体に価値がないと続かないものなので、そこは仲間と挑戦しているところでもあります。

長友さんと加藤シェフの2ショット写真
長友さんと加藤シェフの2ショット写真。長友佑都のインテル・ミラノ在籍時はミラノに住んでサポートに従事。現在は、ガラタサライへの移籍に合わせてトルコのイスタンブールに移り住み、2018~19シーズンの長友佑都の2連覇と2冠に貢献。昨今では日本含め、イギリス、フランス、ベルギー、オーストラリアなどを行き来しながら、サッカーのみならずさまざまな競技のトップアスリートへの食事指導を開始している。


(関連サイト)

ファットアダプト食事法の献立レシピサイトは、こちら
FLOWINのサイトは、こちら
CUORE ONEオンラインフィットネスサイトは、こちら
長友佑都氏のオフィシャルサイトは、こちら
加藤超也氏のInstagramは、こちら

 

とまどいの社会学もどかしさの経営学 #02

社会はいま「とまどい」の中にある。そうした「とまどい」の下、経営はかつてない「もどかしさ」を抱えている。先行きは、不透明で、不確実なことだらけ。得体の知れない不安が広がっている。

杉浦先生

不安にかられると、人も企業も社会も、ついつい思考を停止してしまう。「考えるほどに、不安はつのる。ならばいっそ、考えるのをやめてしまおう」。そうした意識が、ビジネスを停滞させ、失速させているのではないだろうか。

本コラムでは「とまどい」や「もどかしさ」の正体を解き明かすことで、「不確実な時代のビジネスのあり方」について、考察を深めていきたいと思う。


不確実な世界とは、なにか?

私たちはいま、「不確実な世界」を生きている。これは、誰もが実感していることだと思います。「不確実な世界」の正体がわからないから、不安にかられる。その正体を見極めるには、まずは「確実な世界」「確実な時代」というものを、きちんと定義しなければなりません。

「確実な時代」とはなにか?それは、文化が支えてきた時代と言える。いままでの積み重ねの先に、未来がある。だから、みんなが安心して、前に進める。江戸の世の260年などは、まさにそれですよね?積み重ねてきた文化の上に、新たな文化を重ねていく。明治に入っても、それは変わらない。黒船が来ようが、蒸気機関が入ってこようが、街灯がともろうが、重ねてきた文化の上に、文化を上書きしてきただけのこと。日本人は、この「上書き」する力が、群を抜いて優れている。だから、敗戦にも、度重なる災害にも、めげることはなく前を向ける。

ところが、「不確実な時代」に、文化は通用しない。「上書き」は、一切通用しない。上書きができないとなると、途端にわれわれは不安になる。その不安こそが、本コラムのタイトルでもある「とまどいの社会学/もどかしさの経営学」の本質なのです。

『不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方 幸運学』杉浦正和著 企業の幹部候補生が数多く通うという「早稲田大学ビジネススクール」の教授が「運」の正体について解き明かす。運の良い人と悪い人は何が違うのか?自分でコントロールできる運と、コントロールできない運をどう扱うか?開運財布を買うよりも、冷凍餃子をおいしく焼けるほうが幸運に恵まれる?「運の教科書」で、人生を賢く強化。日経BP
『不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方 幸運学』杉浦正和著
企業の幹部候補生が数多く通うという「早稲田大学ビジネススクール」の教授が「運」の正体について解き明かす。運の良い人と悪い人は何が違うのか?自分でコントロールできる運と、コントロールできない運をどう扱うか?開運財布を買うよりも、冷凍餃子をおいしく焼けるほうが幸運に恵まれる?「運の教科書」で、人生を賢く強化。日経BP

グローバル化とは、なにか?

新型コロナウイルスは「グローバル」とは何か?ということを改めて浮き彫りにしました。「グローバル」というコトバには二つの意味があります。一つは「広がり」ということ。もう一つは、「塊(かたまり)」ということです。後者は、中国語では「全球的」と表現しますが、全世界での画一化が、一気に進む。これが、グローバルの本質なのです。

もうお分かりでしょう?新型コロナウイルスが、全世界の姿を「全球的」に変えてしまっているいまの状況そのものが「グローバル」なのです。

そもそも世界の歴史は、感染症がつくってきたといっても過言ではない。ペストでも、コレラでも、なんでもそう。人間とは愚かなもので、それらに打ち勝った瞬間、グローバル(全球的)の本質を、忘れてしまう。そもそも人類そのものが、感染症の病原体であるのかもしれないという意識を持てなくなってしまう。だから、国際紛争が後を絶たない。戦争だって繰り返してしまう。そのメカニズムについて、そろそろわれわれは本気で向き合うべきだと私は考えています。

ゼミで講義中の写真
ゼミで講義中の写真

リニアの時代は、もう終わっている

文化の時代にあっては、社会も経済も、直線的(リニア的)に推移していきます。右肩上がりであろうが、右肩下がりであろうが、です。ところが、不確実な時代にあっては、ものごとが「指数的」に変化していく。新型コロナウイルスのことを解説したグラフに見るように、直線的な変化ではなく、ぐいんと、爆発的に増幅するのです。それも、全世界的に。

ビジネスの世界でも、それは同じです。緩やかな右肩上がり、の時代はみんながみんな、のほほんと富を享受できた。しかしながら、指数的に膨れ上がる経済の下では、そうはいきません。莫大な富を獲得する人(企業)が出てくる一方で、その変化についていけない人(企業)は、あっという間に没落してしまう。「働き方改革」といったことを標榜し、行動する前に、まずはそのことに、私たちは気付くべきなのです。
 

Bチームに見た 「愛」こそ全てのアイデアの源

趣味を超えた趣味、副業を超えた副業、特殊過ぎる前職など、本業(=A面)と全く異なる「B面」を持った電通社員によって結成されたクリエイティブチーム、その名も電通Bチーム。結成6年目にして、このBチームに着目した出版社・編集者たちの手により、偶然にも(!)同時期に2冊の本が発売されました。

なかなかこんな機会もないだろうということで、今回は、出来上がったばかりの書籍を手に、翔泳社の書籍を企画した編集者・渡邊康治氏、コンセプト採集の連載を共につくってきたForbes JAPAN編集長藤吉雅春氏、そしてBチームをつくった男・倉成英俊氏が「なぜ今、Bチームが必要なのか?」を、(リモート会議で)熱く語り合いました。

2020年7月某日、Microsoft Teams上に集合し、鼎談を行った3人の男たち。左上からBチーム倉成氏、Forbes JAPAN藤吉氏、翔泳社渡邊氏。
2020年7月某日、Microsoft Teams上に集合し、鼎談を行った3人の男たち。
左からBチーム倉成氏、Forbes JAPAN藤吉氏、翔泳社・渡邊氏。

自分のアイデンティティーが見えてくる『仕事に「好き」を、混ぜていく。』

倉成:Bチームの本が2冊同時期に発売されましたが、双方の編集者に、互いの本を読んだ感想を聞いてみたいです。まず、Forbes JAPAN編集長の藤吉さんは、翔泳社の「仕事に『好き』を、混ぜていく。」を読んだ感想はどうでしたか?

藤吉:自分のB面の見つけ方みたいなことも書いてあるんですが、読んでいて「自分のアイデンティティーとは何か?」と問われているような感覚になりましたね。B面というのは、A面があってこそ成り立つものだと思ってしまうんですが、実は陰と陽のようにAとBのバランスをとりながら人間は成り立っているんだなと気づかされました。

普段はA面に多くの時間を費やしているタイプの人も、自分のB面を深く知ることで「私って何?」というアイデンティティーが明確になる。それによって、人生の目標がシャープになるし、逆にやらなくてもいいこととか、人生の余裕が見えてくる。「私ってなんだろう?」って思わざるを得ないくらいのところまで考えさせられる本だなと思いました。

発売されたばかりの翔泳社版・Bチーム本をがっつり読みこんできた藤吉氏。
発売されたばかりの翔泳社版・Bチーム本をがっつり読み込んできた藤吉氏。

渡邊:企画した以上のところまで読み込んでくださってありがとうございます。「私って何だろうって思わざるを得ない」って、もう哲学書の域ですね。読む人が読むと、そこまで深く読んでいただける本になったんだなというのは、驚きと共にうれしいです。

藤吉:それと、本の中に「Bチームを作ろう」という内容があるんですが、組織を動かす側の立場で読んでも、この本に書いてあることは染みるほど役に立ちますね。

例えば組織を改編するとき、管理職はついスタッフの表面的な成績で「1軍」「2軍」みたいな考え方をするのですが、それをやると回らなくなるときが必ず来てしまいます。でも、そこでその人の趣味とか、いわゆる「B面」も考慮しながら、バランスを持たせて組織をつくっていくと、実はうまくいくんじゃないかと思ったんです。

例えば今副業ってよく言いますけど、副業というと、「本業があってこそ」という見方をするんですが、Bチームの考え方を組織に当てはめたとき、これまでとは違う組織のつくり方、軸のつくり方があるのではないかとも感じました。

倉成:ああ、そうですね。Bチームはまさに、「A面とB面の組み合わせ」で新しい解を出そうとしている革命部隊なんです。A面はA面、B面はB面とどちらかだけで考えてしまいがちですが、あくまでも「A面とB面を組み合わせて新しいことをつくっていく」組織だということは、なかなか世の中に理解してもらいにくいところです。

藤吉:それで、B面を持った人たちで構成されたBチームは、それ自体がプロジェクトを起こすためのプロセスなんですよね。どういうことかというと、僕はよく「桃太郎」で例えるのですが、「鬼ケ島」という壮大な目標に向かって、「桃から生まれた」というアイデンティティーを持った桃太郎のきびだんごにつられて、イヌやサルやキジといった仲間が集まってくる。このストーリーラインと、Bチームは一緒だなと思っているんです。

倉成:それ、面白い考え方ですね(笑)。自分の才能を生かす場であるBチームが、さながらメンバーにとっての「きびだんご」ですね。そこに、それぞれアイデンティティーを持ったDJが集まり、建築家が集まり、インスタグラマーが集まり、チームができたというのは、確かにその通りかもしれません。さて、そこまで読み込まれている藤吉さんが、「仕事に『好き』を混ぜていく。」を読んで好きなパートはどこですか?

藤吉:113ページの「受注や相談に応える」というのが、非常に参考になりました。つまり、Bチーム流の仕事の「請け方」ですね。私の所属するリンクタイズという会社では、Forbes JAPANという雑誌と、そのウェブ版の他にも、企業のプロモーション支援などいろいろやっています。さまざまな仕事が舞い込むたびに社内がいつも混乱に陥っているのですが(笑)、BチームではB面を生かした仕事のパターンをいくつか用意してある。それをBチーム側から「こういうことできますよ」と提案しています。

本来はこの流れが当たり前のことかもしれませんが、「うちはなぜできていないんだろう?」と気づかされました。ここに書いてあるBチームのやり方、「まず会う」「適任者を組み合わせて最強チームを一瞬でつくる」など、このプロセスが非常に具体的に参考になりました。

倉成:この本では、渡邊さんに乗せられて、だいぶ僕の秘密だったり、チームの秘密だったりをばらしちゃいましたからね(笑)。

渡邊:いえいえ(笑)。

藤吉:まだありまして、チーム運営のコツのところに、特別な「名前をつける」とありますよね。これ、すごく重要なことだよなと思いました。実は僕らも去年、Forbes JAPANのウェブ編集者全員に「あだ名」を付けるということをしたんですよ。それであだ名を付けるって、その人の本質というか、アイデンティティーを見抜いてないとできないんですよね。しかもあだ名だから、面白くなきゃいけないんです(笑)。

渡邊:編集者全員って、何人ぐらいいたんですか?

藤吉:飲み会の席だったんですけど、5~6人かな。そしたら翌日、ウェブ編集長が「あだ名を付けるのって、重要だ」って真面目にメールを送ってきたんです。そういう、日々僕らが悩んでいることの解決策が、この本にはいくつもさらりと書いてあったんです(笑)。

Bチームのワークショップでは、参加者からBチームに対して「アイデアを発想するためにはどうしたらいいでしょう」という質問がよくありますよね。ワークショップに参加する皆さん、きっと「ものすごく考えなきゃいけない」ってプレッシャーに感じているのでしょうね。でも実は、ここに書いてある、「名前を付ける」が良い例ですが、一見当たり前のことに思えるようなチーム運営の仕方をやっていくと、意外とアイデアって生まれるんですよね。

書店に行くと、組織運営に関する書籍はたくさんありますが、この本のすごいところは、本当に「今日からできること」が書いてあること。しかもそれが重要なことばかりというのが、すばらしいなと思いました。一つ一つはすごく真っ当なことが書いてあるんだけど、「よくこうやって整理できたな」って、感心しました。

倉成:それも渡邊さんの熱意の賜物ですね(笑)。根気強く、何度も「もっとないですか!」「もっとないですか!」と、渡邊さんに促されるままに、書けてしまいました。この本に書いてあることは、僕を含めてBチームみんなでやってきたことなので、まず「うそ」がないんですよね。

本をつくるとなって最初に、渡邊さんが「悩める若者から、Bチームへの質問集」というアンケートをつくってくれたんですよ。「あなたのB面は何ですか?」「いつから始まったんですか?」「Bチームに入ってどう変わりましたか?」などの問いに、メンバー56人全員が回答したんです。

渡邊:このBチームの皆さんの「生の回答」が随所に入ることで、フレンドリーな印象を持つ本になったと思いました。

倉成:アンケートでいろんな面から切り込んでくれたから、56人のせりふにリアリティーがある。例えば、インスタグラマーとしても活動している美容担当リサーチャーの山田茜は、アンケートへの回答で、「好きなことの尺度」を聞かれて、

「なんでこんな無駄なことに時間を使っているんだ私は‼」と自分ではっと気づき、突っ込みたくなるようなこと。その一見「無駄なこと」も、B面に育つ可能性が非常に高いです。

と答えていて。「いつの間にか自分が時間をかけてしまっていることがB面かも」という言い方がいいなと(笑)。

一方で、ダイバーシティー担当リサーチャーの阿佐見綾香は、「本業とB面をどうやって混ぜるか」という質問に対して、

本業をまずは頑張る。

ただ自分の好きな仕事をしていればいいということではなく、周りから応援してもらうには条件があると思っています。それはベースになる本業をちゃんとやれていることです。

と回答していて。それは彼女自身の体験から出た回答でリアリティーがある。

この、渡邊さんの考えた「若者」の疑問に、56人がそれぞれ回答するという形にできたことが、「実用的でうそのない」内容にできた理由かと思いますね。

すぐに人生で使えるコンセプトが集まった見本帳『ニューコンセプト大全』

倉成:じゃあ次は渡邊さんに。そもそも渡邊さんは、藤吉さんたちが編集していたForbes JAPANの連載「NEW CONCEPT採集」をめちゃくちゃ読み込んで、Bチームに連絡をくださったんですよね。だから載っているBチームのコンセプトはどれもご存じだとは思いますが、こうして改めて一冊の書籍になったものを読んだ感想はいかがですか?

渡邊:思えば、「NEW CONCEPT採集」を出力した紙の束を持って、倉成さんに会いに行きましたね(笑)。連載の時から楽しみにしていたものだったので、このKADOKAWAさんの書籍版には二つの意味で楽しみがありました。一つは編集者としてあの連載がどういう一冊になるんだろうという作り手視点の楽しみ。もう一つは単純にあのコンセプトが集まったらどんな体験ができるんだろうという楽しみです。

一つ目の、「編集者としての視点」では、自分では持っていなかった軸を用意されていたのが面白かったですね。全部で50のコンセプトを、

  • 「『個人的』が生む」
  • 「『壁』を越える&壊す」
  • 「『逆』を行く」
  • 「『既存』を最高に生かす」

と4カテゴリーに分類されているのがよかったです。自分は今何がしたいのかなって取っ掛かりになるので、興味あるコンセプトにたどり着きやすいデザインになっているなと。

そしてもう一つ、書籍という形でコンセプトの「集合」に触れると、どんな体験があるのかという点です。読んでみて、僕はこの本は「コンセプトの見本帳だな」と感じました。自分が今考えている仕事の案件やアイデアを、Bチームの一つ一つのコンセプトにくぐらせると、どんな化学反応が起こるのか?頭の中でそれぞれのコンセプトでどんどん検証をしていくのが楽しいなと(笑)。一つのアイデアでくぐらせて、何か思いつき、また別のアイデアでもやってみようという形で、何度でも読める本になっていると思います。

Bチームのコンセプトを通すことで、自分の悩みや課題がどうアウトプットされるのかが面白いと力説する翔泳社渡邊氏。
Bチームのコンセプトを通すことで、自分の悩みや課題がどうアウトプットされるのかが面白いと力説する翔泳社・渡邊氏。

倉成:まさに、Forbes JAPANでの連載を始めるときに藤吉さんと目指したのはそこでしたね。実学・実業ですぐに応用できるコンセプトを出そうということと、連載だけで終わらせず、連載を起点に、読者が立体的に活性化するコンセプトにしようとルールを決めたんです。

生まれたコンセプトをトークセッションやワークショップとして企業に提供したり、読者が応用しくれて実際にモノが生まれたり。今、イノベーションを求めている企業は多いので、「アイデア発想の手伝いをしてほしい」といわれることが多いです。そういうときに、「Forbes JAPANに載せたコンセプトがこのぐらいあるんですが、どれでやります?」と言って、実際にそのコンセプトから新しい企画や商品が生まれています。

藤吉:これ、僕の中では画期的な連載だなって思っていたんです。ジャーナリズムの世界は、「発信して終わり」ということも少なくありません。でもBチームの連載は、「社会実装」するためのもので、ここに掲載したコンセプトをたたき台として「コト」を起こしていかなければならない。つまり、読者がただ読んで終わりじゃなくて、読者にコンセプトを“実体験”させるものなので、始めるときは「責任重大だな」と思いました。

Bチームのコンセプトにきちんと名前を付けて世の中に提供して、その設計図を基にコトを起こす人がいるわけですから、安易なことはできないですよね。でも始まってみたら予想以上に多くの人に実践してもらえて。おそらく、アイデア発想の場を求めるという意味で、広告業界とのコラボレーションだったから、これができたんだろうなという気がしています。

倉成:もともとForbes JAPANの愛読者だった渡邊さんから見て、『ニューコンセプト大全』のトップ3コンセプトは何ですか?

渡邊:「Prototype for One」「あたりまえメソッド」「4次元オープンイノベーション」が好きですね。「Prototype for One」は、ものすごく素直なコンセプトなのがいいです。一人のためにという、これほど熱量をかけられるものづくりのやり方はないなと思いました。

「あたりまえメソッド」は、ナンセンス的な面白さがすごく共感できました。僕は個人的な“B面”で俳句をやっているのですが、波多野爽波の

鳥の巣に鳥が入つてゆくところ

という俳句がすごく好きなんですね。「あたりまえメソッド」に通ずるものがある句だと思いませんか。「鳥の巣に鳥が入つてゆくところ」。当たり前がゆえにだれも言語化しなかったものですが、陳腐さはありませんよね。「あたりまえメソッド」は、その、誰も注目していなかったところにある王道感がいいなと思いました。

4次元オープンイノベーション」は、“過去とのコラボレーション”というのが、盲点だったなとハッとさせられました。ネーミングの面白さもありますよね。レガシー的なものを引き継ぐみたいな言葉だとそのままなのですが、「過去」とか「歴史」ではなく「4次元」という表現がとても引きがあるなと感じました。何よりこの手法からは、実は身の回りにはコンセプトを編み出すヒントがめちゃくちゃあるということを知りました。

倉成:なかなか、いいチョイスですね。「Prototype for One」はたくさんの企業に依頼されてワークショップを開催し、実はそこからすでに新商品が多数生まれています。「4次元オープンイノベーション」も結構ファンが多く、実践例が生まれてきています。「あたりまえメソッド」はこれからですね。何かできるといいなと思ってます。

渡邊:この本は、企画職の人が読むと特に面白いだろうなと思いますね。掲載されているコンセプトは、Bチームの皆さんによって、実際に社会とのつながりがあることがすでに証明されている手法なので、企画の仮想実験をするために抜群の一冊だと思います。

Bチームの根幹にあるのは、誰かを思う気持ち、つまり愛!

倉成:チームの書籍が、同時期に2冊発売されるって、なかなかこういうことはないなと思ったんですが、今、実際に「うちにもBチームをつくりたい」という企業が増えて、相談も多くなってきているんですよ。

特にこのコロナ禍で、皆さん家に籠る時間が多かったですよね。そこで新しく自分が好きなことを見つけたり、もともと好きだったことを突き詰めたりしている人が確実に増えています。そのB面を、さて本業に生かすぞ、という時期に来たのでしょうね。お二人は、何か「今この本たちが出る」ことについて思うことはありますか?

藤吉:良いコンセプト収集ができて、それをKADOKAWAさんから本として出すことができたので、日本中に広まればいいなと思っています。そうすると世の中は変わるんじゃないかと、本気で思っています。Bチームには従来のマーケティングには希薄な、「誰のためにものづくりをするのか」という「愛」の部分がありますよね。思いやりとか優しさって、一見ビジネスとは関係なさそうに見えますが、そういう気持ちが芽生えるようになると日本は変わるんじゃないでしょうか。そもそもB面って、愛なんですよ。これが広まって、優しい豊かさがある社会になったら面白いですよね。

Forbesの連載をカテゴリ分けした書籍として再構築したKADOKAWAの編集者、谷内さん(左下)もリモート観覧にいらっしゃいました。
Forbes JAPANの連載をカテゴリー分けした書籍として再構築したKADOKAWAの編集者、谷内さん(左下)もリモート観覧にいらっしゃいました。

渡邊:そうですね。Bチームの良いところは、自分の日々の行いがちょっとご機嫌になることだと思います(笑)。そういうものを僕も求めていたし、求められているのかなと。

倉成:僕は5年前に大病をしたのですが、死ぬ確率を目の当たりにしたときに「何のために仕事をしているんだっけ?」と感じたんです。お金や地位や名誉はあの世には持っていけない。でも、「世の中的にはメジャーではなかったけど、あのメンバーで仕事ができてよかったな」みたいな思い出は天国に持っていけるよなって思ったんです。

だからこそ、自分のポジションとか自社の稼ぎばかり考えて、人類の宝である「才能」を生かそうとしないことに憤りを感じることがありました。そこで自分のミッションは、できるだけみんなにバッターボックスに立ってもらうことだと。電通社内で、例えば本業で壁にぶち当たってるけど良いB面を持っているなと思う人がいたときにはBチームで鍛錬してもらったり、いろんなA面とB面の組み合わせで新しいコンセプトを世の中に提供したり。それが今のBチームになったんです。
 

2冊の本づくりを通じて、「Bチームとは何か」を改めて考えたという倉成氏。その結果もっともこだわったのは、著者は「Bチームメンバー全員」にすることだったという。
2冊の本づくりを通じて、「Bチームとは何か」を改めて考えたという倉成氏。その結果、最もこだわったのは、著者は「Bチームメンバー全員」にすることだったという。

倉成:「Bチームをつくりたいんですけど」っていろんな企業が来たり、まねしてみたけどダメでしたという声もありますが、成功するかどうかのコツは一つだけです。仲間のためにバッターボックスを譲ったり、チャンスをつくってあげることがお互いにできるかどうかってことです。電通Bチームは他人の才能をちゃんと認めて、自分が一歩下がってバッターボックスを用意することができる56人で成り立っています。

そういうことを、この方向性の違う2冊の本をほぼ同時につくることで、再確認できたかなと思っています。ありがとうございました!

藤吉渡邊:ありがとうございました!


ウェブ電通報連載「電通Bチームのオルタナティブアプローチ」
https://dentsu-ho.com/booklets/301

ポスト安倍に復活の菅官房長官が櫻井よしこに「なぜアベノマスクをつけない」と迫られ「布マスク暑いから」と答える醜態

このところ安倍首相との関係が修復し、「ポスト安倍」候補にも復活したとされる菅義偉官房長官。ところが、8月7日、櫻井よしこ氏のネット番組『言論テレビ』に出演して他のポスト安倍候補に対する評価を聞かれた際、石破茂氏についてだけ言及したとして、一部のマスコミが「石破氏と連携し...

【募集告知】ハイキュー!!×V.LEAGUE SPECIAL MATCHで「リモート観戦のニューノーマル」を一足先に体験 <応募受け付け中>

V.LEAGUE(日本バレーボールリーグ機構)は、人気マンガ「ハイキュー!!」とのコラボレーション企画として、DIVISION1 MENの全10チームから選出された選手が作品内に登場する「シュヴァイデンアドラーズ」と「MSBYブラックジャッカル」のユニホームを着用して行うエキシビションマッチを8月16日(日)に開催する。

本イベントは新型コロナウイルス感染症対策としてリモートマッチとなったが、Vリーグの動画配信サービス「V.TV」では、「Watch Party企画」を実施し、リモート観戦ならではの楽しみ方を提供していく。

企画では、現役のVリーグ選手や、バレーボール界のレジェント、ハイキュー!!好きのタレントなどがライブストリーマー(ライバー)として、それぞれのコンセプトに合わせてグループ視聴ができる部屋を展開。参加者は、自分が好きな部屋にチェックインをして、チャットや応援機能などのリモート観戦に特化したツールを用いて、ライバーや他の視聴者とコミュニケーションを取りながら試合観戦に参加することが可能だ。

ライブ配信を受動的に視聴するだけではなく、スポーツ観戦本来の魅力である、ファン一人一人の応援が重なり熱狂のベクトルが一つになる共体験をオンライン上で最適な形で提供し、スポーツ観戦のニューノーマルとして定着していくことを目指す。

Vリーグ
Vリーグ

【企画概要】

・イベント    :ハイキュー!!×V.LEAGUE SPECIAL MATCH 2020 Watch Party
・配信日時    :2020年8月16日 16:00〜(開始予定)
・対象デバイス:PCのみ(スマートフォンやタブレットは非対応となります)
・企画定員    :約300名
・申込方法    :下記のURLから申し込み。
      応募者多数の場合は抽選後、メールで参加に必要な情報を送付。 
・応募ページ : https://vleague-event.watch-party.tv/
         (※お申し込みにはV.TVの会員登録(無料)が必要です。)
・応募受付    :2020年8月13日(木) 23:59迄

※その他、企画詳細や利用規約等については、応募ページをご確認ください。
 

「仲間」と、生きていきたい。映画監督・河瀬直美氏の思いとは?

河瀬監督の作品や日常には、一貫して「生きる」というテーマがあるように思う。生きるとは、自然体であるということ。生きるとは、普遍的な価値を慈しむこと。めでること。生きるとは、刹那の喜びと、重ねた歳月の重みをリスペクトするということ。その思いを、広く世の中と、そして世界の人と共有するために映像と、真摯に向き合う。作品を通して、人と深くつながりたいと願う。

そうした彼女のスタンスは、ビジネスの世界にも通じるものがあるはずだ。「見えないものこそを、大切に撮りたい」と、彼女は言う。自分でも見過ごしがちな微かな感情の揺らぎであったり、なにげない日常の中にある、素朴な喜びや深い哀しみであったり。その先に祖母が遺した「この世界は、美しい」という言葉の意味を読み解く何かがあると信じているからだ。

毎月の新月と満月の日に、彼女は決まって今は亡き祖母の墓前に赴く。月の満ち欠けのハザマで、彼女は「生きること」と向き合い続けている。10月23日に公開予定の最新作「朝が来る」に続いて、2021年の東京2020オリンピック競技大会の公式映画の監督も務める 河瀬監督に「この時代を生きることの意味」を、シリーズで尋ねてみたい。


映画製作は、チームワーク

映画監督という仕事に流れ着いたというか、たどり着いたきっかけはものすごく単純で、それは「自分一人でやる仕事ではなくて、みんなで何かをつくり上げてみたい」という18歳の頃の思いが原点なんです。編集者でもいいし、テレビの仕事でもいい。みんなで集まって、みんなでワイワイと意見を寄せ合って、なにかが形になった瞬間って、最高じゃないですか。

14年前、奈良市東部山間地、田原地区で撮影しカンヌ映画祭でグランプリをいただいた『殯の森』(もがりのもり)は、美しい茶畑がもうひとつの主人公でした。さて…担い手がおらず、あの美しい茶畑の風景が失われていたところに、有志が集まり手入れをしました!チームワークで成し遂げた半端ない達成感!!
14年前、奈良市東部山間地、田原地区で撮影しカンヌ映画祭でグランプリをいただいた『殯の森』(もがりのもり)は、美しい茶畑がもうひとつの主人公でした。さて…担い手がおらず、あの美しい茶畑の風景が失われていたところに、有志が集まり手入れをしました!チームワークで成し遂げた半端ない達成感!!
 

なにもそれは、映像世界だけのことじゃない。メーカーでも、金融業でも、どんな仕事であれ、そこがダイナミズムというか、最もワクワクすることだと思うんです。その原点は、やっぱり高校時代にあるような気がします。

原点は、奈良の高校時代

分かりやすいエピソードからお話しするなら、私、ずっとバスケ部にいたんですね。バスケって、当たり前の話ですがチームプレーじゃないですか。みんなで、ゴールを目指しパスを回すストーリーを組み上げていく、みたいなあのドキドキ感を、大人になっても味わってみたい、と単純に思ったんです。加えて、私が通っていた奈良の高校では、文化祭と体育祭が同時開催されるんですね。体育祭の方は、クラスとは関係なく四つのカラーに分かれていて、それぞれに応援団がいる。私は副応援団長だったんですけど、なんだろう、仲間にエールを送るって、こんなにワクワクすることなんだ、と思っていました。

バスケットボールに明け暮れた高校時代(写真中央)
バスケットボールに明け暮れた高校時代(写真中央)

一方、同時開催される文化祭は、クラスごとに露店を出して、仕入れから販促プランまでを生徒だけで仕切って、その売り上げを競うみたいな体験をさせられるんです。世の中というのは、チームワークとビジネスメソッドの掛け算で成り立っているんだ、ということに、なんだかものすごくときめいちゃったんです(笑)。

ビジネスメソッドとは、つまり「読み、書き、ソロバン」ということ

私は経営者ではないし、経営学にも疎いのですが、ソロバンは重要だと思いますね。私が思うソロバンとは「お金もうけ」のことでも「財務体制の強化」といったことでもないんです。

どうしたら愛するチーム全員がハッピーになれるのだろうか。いい作品をつくったからといって、それが必ずしもビジネスとして成立するわけではない。この作品に社会的な価値をつけるにはどうしたらいいのだろう?表現と同時に、常にそのことは考えています。

忙しい中でも、一息つける時間を大切に
忙しい中でも、一息つける時間を大切に

河瀬直美氏のインスタグラムは、こちら
月満ち欠けに合わせ、新月→上弦→満月→下弦の日の朝8時より新作映画「朝が来る」のオンライントークを配信中。

最新作「朝が来る」公式HPは、こちら
 

メディアの進化とSNS時代のアイドル

本連載のテーマはアイドルです。

筆者が好きだからという理由(だけ)ではもちろんなく、SNSやそこでのコミュニケーションについてのリサーチやオピニオンを発信する立場から、アイドルというテーマを通じてメディアやコミュニケーション、さらにはエンターテインメントの在り方を考えていくことで、それぞれの現在地と未来とをユニークに描くことができるのではないかと思っているからです。

そのための切り口を3点にまとめてみました。それぞれ連載内で触れることになります。

①世の中・生活者から見たアイドル(社会の視点)
今、私たちにとってアイドルとは何でしょうか。個別のアイドルの好き嫌いといった一人一人の嗜好の問題を超えた視座において、アイドルそのものがこの社会においてどのように受容され、どんなところに私たちは価値を感じているのでしょうか。

②広告プロモーターから見たアイドル(マーケティングの視点)
アイドルはファン、そして一般の人々の注目を集め、さらには人を動かす力を持っています。そして、人が動くところには商流も生まれます。昨今では、事業会社のマーケティング活動でもアイドルと協業することが増えています。そのとき、アイドル、生活者、広告主、それぞれにメリットがある“三方良し”が実現されるコミュニケーションの設計のあり方とはどんなものでしょうか。

③メディアから見たアイドル(エンターテインメント事業の視点)
メディアにとって、アイドルは番組やそれに付随するコンテンツ企画をつくっていくための重要なパートナーとなります。さらにSNSの時代には、一人一人のアイドルが発信力を持っているということ自体も欠かせない視点です。エンターテインメント分野における「アイドル」の今は、これまでと比較してどのように変わってきているのでしょうか。

今回は、本連載の後半につながるような議論の下地を上記①の社会的な視点から考察することを目指します。いくつかのメディア研究をひもときながら、現代的なアイドルのかたちの在り方についてのキーワードを提起したいと思います(参考資料は文末をご覧ください)。

メディアの進化とアイドルの誕生

アイドルとは、メディアを通じて私たちの前に現れるものである、と本稿では定義します。もちろん、「クラスのアイドル」といった対面的な関係性でも使われる一般的な言葉ですが、それも上記を前提にした比喩表現だと考えられます。

“メディアを通じて現れる”という、その「距離」が重要である。私たちとアイドルとの関係性を分析する上で、そう仮定するならば、私たちはまずメディアの進化を考える必要があることに気づきます。

いくつかのアイドル研究/アイドル論の流れでは、映画からテレビへというメディア環境の進展が、アイドルの誕生に決定的な意味合いを持ったと語られています。かつての「銀幕のスター」という言葉の通り、一般の人々は映画作品を通じてスターを仰ぎ見るような関係性にありました。しかしテレビの時代に移行するにしたがって、その距離は近接してきたといえるでしょう。

スターは映画会社に所属しており、映画の外に出されなかったからこそ、テレビ側が視聴者を引き付けるアイコンを必要としたという実利的な背景もあったようです。スターに代わる時代のアイコンが要請される中で、テレビで活躍する「タレント」というポジションが確立され、その中の一部が突出的に進化して「アイドル」というポジションを獲得していきました。

このような商慣習的な面の他に、スターとタレントの立ち位置の違いは、メディア理論的にアプローチしても読み解くことができます。

スターは、既に完成されたフィルム=映画の中に登場する人物として、私たちの前に現れます。それは「過去」のものです。この隔たりこそが、私たちとは異なるステージにいる人であるという威光(プレステージ)をもたらしています。

対照的に、今起こっていることを広く伝えるという使命を持つテレビは、現在性の強いメディアであると対置できます。ライブ性、生放送性と言い換えることもできるでしょう。そこに要請される形象こそが、スターではなくタレントであり、映画のスターは観客と同期しないこと、つまり時差をともなって(遅れを持って)いることに価値があるのに対して、タレントは「同期」していることに価値があるといえます。そして、威光よりも親しみ、重く含蓄のあるせりふよりも軽やかで分かりやすいコメントこそが求められるのです。

もちろんテレビにもドラマなどの例外はあります。ドラマは、既に完成されたものを放送するという意味では「過去」に属するものです。ただし、メディア研究家のマクルーハンが「新しいメディアが生まれると、古いメディアはその新しいメディアのコンテンツになる」と述べた通り、ドラマは映画的なものなのです。また、テレビでは生放送でドラマを放送したことがある点も付記しておきます(その反対に「生放送の映画」は原理的にあり得ません)。

このようなメディア的な進化の中で、「アイドル」が歌番組の中から生まれていきます(テレビというメディアにとって、歌番組は黎明期からキラーコンテンツでした)。

日本のアイドルの始祖は(諸説ありますが)、1971年の南沙織さんのデビューに見ることができるようです。そして80年代のいわゆるアイドル黄金時代を迎え、さらには松田聖子さんや小泉今日子さん(キョンキョン)のような時代を代表するアイコンがテレビをにぎわせるようになりました。

先ほどスターは過去、タレントは現在と位置付けました。ではアイドルはどうかといえば、ここではそれを「未来(的)」であると述べておきたいと思います。未来ではなく未来(的)と述べたのは、現在に足場がありながらも未来の方に向かう構えがあることを示しているためであり、現在よりもこれから先により大きな価値が期待されることを含意しているからです。

アイドルとは往々にして若いものです。もちろんそれは年齢的な若さだけではありません。これからの成長の可能性や将来の飛躍への期待のようなものを、多くの人がそこに見て取るような、つまりスターのように完成していないことが、価値になっています。だからこそ未来(的)と表現されるのです。

日本のアイドル史において非常に重要な転機として数えられるのが、85年のおニャン子クラブです。派生グループの成立、さらにはメンバーの卒業やソロ活動といった、今アイドルと聞いて私たちが思い浮かべる仕組みがこのあたりから実装されていったことに気づきます。ここに見られる特性は、アイドルの非完成性に他なりません。完成しきらず変化し続けることに価値が宿ります。

実際に、AKB48をはじめ、さまざまなアイドルグループにおいても、卒業ソングは一つの山場を構成していて、ライブのハイライトに位置づけられることも多くあります。さらにはAKB48などの「オーディション」「人気投票/選挙」や「サプライズ人事」のようなものも、何が起こるか分からないというハプニング性をファンに共有する未来志向の仕掛けに他ならないのです。

SNSのつながりがアイドルとファンを前進させる

未来は原理的に不確かなものだからこそ、そこにコミットする意志が問われます。「オーディション」「人気投票/選挙」や「選抜バトル」のような現代的な仕組みも手伝って、私たちはアイドルの未来に主体的に関わって応援する─それを通じてアイドルの未来に貢献することを体験するようになりました。

いつの時代にもアイドルは「憧れ」を提供してきましたが、上記のような仕掛けによって、現代は「共感」の色合いがより濃くなってきたのは間違いないでしょう。私たちは、誰かが壁にぶつかり、そこで悩み苦しみながらも乗り越えようとするポジティブな力に、自分を重ねて共感するからです。

また、現代のアイドルはSNSを駆使して、ステージの外でもファンとつながり合うことに積極的です。それもまた親しみに起因する共感の度合いを深めることに寄与しています。

実際に、ラストアイドル (テレビ朝日系列で放送されていたオーディション番組から誕生したアイドルグループで、2017年12月デビュー)のメンバーの方と話す機会がありましたが、「ステージも、握手会も、そしてSNS上でのコミュニケーションも、ファンとつながる場として重要。ファンとのコミュニケーションの中では、特に(選抜のバトルに)負けたときの反応がとても熱かった」という発言を印象深く覚えています。

一方、現在のメディアもまた、アイドルと同様に、共感を軸に動くようになってきています。

メディア研究の文脈では、メディアのメタファーとして「窓」が想定されます。遠く離れた世界の出来事を、目の前に映し出して知らせてくれるスクリーン(ないしは紙面なども含めた平面媒体)としての窓。それは、メディアが情報を伝達する装置であることを意味します。

しかしながら、現代のメディアは「窓」から「鏡」へとシフトしているのだという議論があります。鏡であるということは、つまりオーディエンス=私たち自身を映しているということを意味します。実は、私たちが見たいと思うものを見ていること、私たちがそうありたいと願うシーンがそこに映し出されていること、その投影の原理こそが、生活者からの強い共感を生む構造になっていると見立てることができるでしょう。それがファンコミュニティーの熱狂につながっているのです。

なぜ今、マーケティング活動においてアイドルの重要性は高まっているのか

SNSを通じてアイドルのファン同士がつながり合い、熱量が高まっていくプロセスが生まれ、またSNSを通じてその応援の盛り上がりが可視化されてさらに盛り上がっていく、という循環がさまざまな場で起こっています。詳細は連載第2回に譲りますが、SNSではそのようなバズが頻繁に起こっていることをデータでも確認することができます。

また、現在は自分が応援したい人を「推す」と表現し、さらには「推し活」「推しごと」のような言い方で、若年層の消費における重要なアクティビティーになっていることも要注目のポイントです。本論で述べてきたアイドルの未来(的)なる性質を踏まえて言うのであれば、消費というより「投資」に近いものです。いまそのようなかたちで、アイドルとファンコミュニティーの結びつきは非常に強いものになっているのです。

さらには、アイドルは未来(的)であるというキーワードでいえば、この先行きが見通せない時代において、アイドルを推すことの価値は視野を前に向き直させてくれることにもあるように思います。

そのようなアイドルの持つ社会的な効果を踏まえることで、いわゆるタイアップだけにとどまらない、さまざまなコミュニケーション施策の可能性が思案できるように思います。アイドルとそのファンコミュニティーへのアクセスが、ブランドやメディアの抱える課題にとってのソリューションにつながっていく時代が到来しているのです。

※本記事の執筆においては、アイドルについての先行研究として、以下の文献を参照しました。
・境真良氏『アイドル国富論: 聖子・明菜の時代からAKB・ももクロ時代までを解く』(2014年、東洋経済新報社)
・西兼志氏『アイドル/メディア論講義』(2017年、東京大学出版会)

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世界初のチャレンジ「KIBO 宇宙放送局」開局特番は、8月12日(水) 19:45から

インタラクティブ・クリエイティブ・カンパニーのバスキュールは国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟内に、双方向番組スタジオ「KIBO 宇宙放送局」(The Space Frontier Studio KIBO)を開設。スカパーJSATと共に宇宙メディア事業の創出に向けた活動を開始している。新たな発想の宇宙関連事業を目指すJAXA(宇宙航空研究開発機構)の共創型研究開発プログラムJ-SPARCの一環だ。

その実証実験として2020年8月12日(水)19:45~22:00、「KIBO宇宙放送局開局特番〜WE ARE KIBO CREW~」の第1回が生配信・放送される。先導役は中村倫也さんと菅田将暉さん。

このプログラムは、「きぼう」公式サイト、BSスカパー!(BS241/プレミアムサービス579)、YouTubeで視聴できる。

KIBO宇宙放送局開局特番〜WE ARE KIBO CREW~ 第1回案内

KIBO宇宙放送局開局特番〜WE ARE KIBO CREW~ 番組案内2

番組配信日となる8月12日は、三大流星群のひとつ「ペルセウス座流星群」が地球に訪れる夜。願いがかなう星降る夜こそ世界初のチャレンジにふさわしいと、この日に設定されたという。

地上400キロ、秒速8キロの速さで地球を周回しているISSにスタジオが開設される歴史的瞬間に立ち会いたい。

【番組概要】
番組タイトル:KIBO宇宙放送局開局特番~WE ARE KIBO CREW~
配信・放送日時:第1回放送 8月12日(水)19:45~22:00(予定)
企画制作:バスキュール、AX-ON
出演者:中村倫也、菅田将暉、山崎直子(元JAXA宇宙飛行士)、田中みな実(司会進行)他
音楽協力:RADWIMPS
ステーションID:辻川幸一郎、Cornelius

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