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【募集告知】電通ダイレクトマーケティング 10/1オンライン開催 「CMの効果がある会社とない会社とは!? 事業視点で考えるCM活用セミナー」
電通ダイレクトマーケティングは10月1日、オンラインセミナー「CMの効果がある会社とない会社とは!? 事業視点で考えるCM活用セミナー」を開催する。講師は、同社統合コンサルティング部長・小林裕宗氏。
現在、本イベントへの参加者を募集している(9月29日締め切り)。

事務局から
近年デジタル化が進み、ますますネット広告へのシフトが加速しているなか、コロナウィルスによる在宅需要の影響で、テレビCMの存在感や影響力が増しています。
本セミナーでは、デジタル広告のみの施策で伸び悩んでいる、テレビCMを含めたオフライン広告で反応が鈍化している、などのお悩みの方に向けて、電通ダイレクトマーケティングによる独自調査をもとに、テレビCMによる広告効果改善の秘訣などをお伝えします。
イベント詳細・応募方法
「CMの効果がある会社とない会社とは⁉ 事業視点で考えるCM活用セミナー」
日時:10月 1日 13:00~14:00
講師:電通ダイレクトマーケティング 統合コンサルティング部 部長 小林 裕宗
対象:事業会社のマーケティング・広告部門担当者
※広告主を対象としておりますので、同業他社・サービス事業者・個人事業主・学生の方のご参加はお断りさせていただいております。
定員:100人(抽選)
参加費:無料
申込締切: 9月29日
申込方法:下記URLで申し込み。(メールで抽選結果をお知らせします)
申込URL: https://www.ddm-dentsu.co.jp/seminar/
【当日のプログラム】
なぜCMが有効か ニューノーマル時代の行動喚起型CMとは
CMをやるべき?やめるべき?電通ダイレクトマーケティング独自調査より
CMを成功させる2つのポテンシャルとは
CMで獲得した購買意向の向上をCVにつなげるには
質疑応答
※プログラムは予告なく変更になる可能性があります。
【講師のプロフィール】
電通ダイレクトマーケティング 統合コンサルティング部 部長 小林 裕宗 氏
通販事業主に常駐し、新規顧客獲得からCRMまでプロジェクトマネジメント。短期で数十億円を超える成長を共にする経験を持つ。
現在では事業戦略コンサルタントとして、ECからリアル店舗、オンオフ統合した戦略と「ブレークスルーする施策」を実行・改善している。
大企業を本当に変革したい人に送る「全員スター化」と「演じ分け」のススメ(後編)
前編に続き、東急グループでTokyu Accelerate Programを運営する福井崇博氏から、大企業の変革に挑戦した話を聞いていきます。確固たるビジネスモデルと伝統を築き上げた組織において、若手社員が変革を起こすためには何が必要なのでしょうか。
電通若者研究部としてONE JAPANに加盟する吉田将英が聞き手となり、「会社を変えたい」と願う若手社員へのヒントを探っていきます。
イノベーション成功の鍵は組織化と自分の中の多様性

吉田:これまで2社でアクセラレータープログラムに携わってきて、イノベーションの成果というものをどう定義し、どう評価していますか? 新規事業の場合は、売上のような従来の経営指標だけでは効果測定が難しいと思います。一方で説明責任という意味では、やはり数字が強いのも事実です。
福井:これをどう指標にするかは企業によって違うと思いますが、「組織として次のステップに進める状態をつくる」ことが成果の一つの捉え方だと思っています。
「0→1」をするためのプロジェクトであれば、いかに組織化や事業化に向けた基礎を築けるか。その土台ができているのならば、「1→10」の段階だと思いますが、そこではいかに組織や事業を完成させられるか。一口にアクセラレーターといっても、会社によってその位置づけが変わるので、成果の定義も変わるのだと思います。
また、プロジェクトの性質ごとにリーダーやメンバーに求められる資質も変わります。「0→1」ができている企業であれば、次は「1→10」ができる体制に変化することが重要です。たとえばそのプロジェクトでリーダーを務める人が「0→1」に向いているタイプとしたら、次のフェイズで引き続き「1→10」をやらせてもワークしないこともあります。
吉田:スタートアップ企業で、成長フェイズによって求める人材が変わるのと似ているかもしれませんね。福井さん自身はこれまでリーダー的な立場でチャレンジをしてきて、どのように変わりましたか?

福井:日本郵便では、私の好きなサッカーで例えると10番(司令塔)のようなポジションに徹していました。東急に入ってからは、10番の後ろでオールマイティに器用にこなす6番(ボランチ)のようなポジションを2年弱やってきました。
それはチーム内での役割だけでなく、企業内でのチームの役割にも通じると思っています。本来のアクセラレータープログラムなどのオープンイノベーション活動は、全社戦略に沿って、経営目標を達成するための手段として位置付けられるべきです。しかし最近は、アクセラレートプログラムやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を運営すること自体が目的になっているケースもあります。
なので、まず全社経営戦略に沿ったオープンイノベーションを定着させることを私も意識しています。司令塔として音頭を取るだけでなく、そうしたブレを感じたらそっと軌道修正していくような役割です。
吉田:なるほど。日本でイノベーション志向の人はとかく坂本龍馬になりたがるけど、必要なのはいわば勝海舟というわけですね。異なる利害を統べるミッドフィールダー的な役割。龍馬は最終的に殺され、代わりは誰もいなくなってしまいました。その意味だと、企業における革命児は誰か一人に属人化させるのではなく、“イズム”を会社に残すことが大事かもしれませんね。
福井:そのとおりだと思います。私は最終的に、大企業でイノベーションを産み出すための汎用的な成功モデルをつくりたいと思っています。私が東急でやっている取り組みも、その目標を実現させるためのチャレンジです。
東急のアクセラレートプログラムでいうと、私が入る前の2015~2017年は旗揚げ&ポジション確立の第1フェーズ、2018~2019年は通年応募制などによる組織化/仕組化の第2フェーズ、2020年からはそれをグループ内のより幅広い人たちに選択肢として広げていく民主化の第3フェーズだと捉えています。実はそう思えるようになったのは、司令塔であることに固執せず、「組織としていかに力を蓄積できるか」を考えながら行動した今の経験があったからなのですが。
自戒を込めて言うと、大企業のイントレプレナーは、スタートアップ企業のような売上や利益貢献としての成果が出てなくてもチヤホヤされやすい風潮があります。その結果、特定のイノベーターだけに依存する体質になってしまうし、チームとしてイノベーションを起こせない。短期的にはそれでいいかもしれません。しかし組織を本当に変革させるならば、新たに人材を雇用したり、チームを大きくしてレバレッジを効かせないと、いつまでも同じフェーズの取組みだけやり続けることになってしまいます。
吉田:大企業に入らず起業する人と、大企業でのし上がる人は、性質が違いますよね。そのバランスを取ることができると、大企業という土台がなければ成立しえないイノベーションを、起業家のようなサラリーマンによって起こすことができる。私も大企業に所属する一人として、その精神は理解できます。
福井:またサッカーのたとえになりますが、東急に来てからは、真上からグラウンドを観ているようなイメージで、ねらったところにパスが通るようにするにはどうすれば良いかを考えたり、不在のポジションを自分が補ったりするように意識できるようになったと思っています。ある時には中盤、またある時には司令塔というふうに、演じ分けるイメージです。
ただ、あまりにも長いこと10番(司令塔)を離れると鈍ってしまうので、時には意識して自ら前に出ることも必要だと痛感した2年弱でした。これもバランスですね。そういったこともあり、1年ほど前からは、アクセラレートプログラムをやりながらもそれとは別のオープンイノベーションの取組みについて、主担当者として準備を進めてきました。今の部署はプロジェクトベースでチームが組まれることが多いので、いまは10番と6番両方をさせてもらっています。また、今の時代はリモート環境やITツールなども整っていろんなことができるようになってきているので、例えば会社では調整役をしながら、ONE JAPANのような課外活動では10番のプロジェクトを進めるといったことも1つだと思います。。
吉田:能力を保つ意味でも、周りに対して多彩さをアピールする意味でも、自分の中にいろいろな顔を持っておくことが大事ですね。とはいえ、福井さんのように器用なユーティリティープレーヤーになれない、という人はどうすれば良いのでしょう?
福井:リーダーだからといって必ずしもユーティリティプレーヤーでなければいけないわけではありません。自分の良さを引き出してくれるようなユーティリティプレイヤーを味方につけておくことが大事だと思います。
大企業にいるからこそできること

吉田:先ほど課外活動の話もありましたが、今は価値観が変わってきていて、個の力や存在感が強くなってきています。あえて聞きますが、それでもなお、大企業の存在は必要なのでしょうか?
福井:大企業にしかできないことがあると思っています。たとえば日本郵便や東急のように、人々の生活を支えるインフラになっている企業などが特にそうだと思っています。また、土台としての企業があってこそ個が輝くこともあります。
同時に、そうした輝いている個があるからこそ土台も生きます。個人と組織がお互いを支え合うバランスが大事であって、どちらかが良いという二元論ではない気がします。大企業の中で、共同体感覚を持って仕事をする満足感を得ながらも、多様な働き方ができる。その両立を実現できたら理想的ですよね。
吉田:電通もそうですが、大企業だと規模の大きいチャレンジもできるし、社外で個人的なチャレンジも両立できる。起業やベンチャー企業への転職も選択肢ですが、大企業でアクションを起こすことも、ある種“両取りの”キャリア形成ができる道なのかもしれませんね。
正解のない時代を生き抜くための「プランB思考」
お互いの距離は離れていても、テクノロジーを上手に使うことで、今までよりも近くに感じられる。ちょっとした発想の転換で、まったく新たなつながりが生まれる。新型コロナをきっかけにして始まりつつある新しいライフスタイルは「リモコンライフ」(Remote Connection Life)といえるものなのかもしれません。リモコンライフは、Remote Communication Lifeであり、Remote Comfortable Lifeも生み出していく。そうした離れながらつながっていくライフスタイルの「未来図」を、雑誌の編集長と電通のクリエイターが一緒に考えていく本連載。
9回目は「週刊プレイボーイ」の編集長・松丸淳生さんに伺いました。
<目次>
▼【リモコンライフストーリー#09 人生の新しい選択肢】
▼ コロナで見えた、「安心」と「不安」の線引き
▼「何かあったらどうすんだおじさん」と「CCおばさん」
▼「プランB」思考で、難局を乗り切ろう
▼「楽しい」から「うれしい」へ
【リモコンライフストーリー#09 人生の新しい選択肢】
(ノザワ トモキ/金融会社勤務/44歳の場合)
新型コロナの感染拡大をきっかけにして、「安心と不安の線引きには驚くほど個人差がある、ということがはっきり見えた」と松丸編集長は言います。「コロナに対して不安を募らせている人は、『コロナは怖い』という情報ばかり探すんです。情報が多様化した社会では、情報によって不安が安心になったりすることはあまりなくって、情報によって不安が強化されることしかないという気がしています」
「リモコンライフ」で、人々はどうやってコロナウイルスという「リスク」と向き合うのか?コロナウイルスがもたらすさまざまな危機にどう立ち向かえばいいのか? 松丸編集長の示唆をもとに、ちょっとしたストーリーにまとめてみました。
野澤友宏(電通1CRP局)

イラストレーション: 瓜生 太郎
──会社が倒れるかもしれない。
それがうわさ以上に真実味を帯びた話として本部長から言い渡された瞬間、トモキの頭は「まさか」の3文字だった。
2021年に入ってから、中小企業への打撃がドミノ倒しのように大きくなり、大企業にも危機という文字がチラつく。しかし、まさかまさか自分が20年以上勤めた会社が……。トモキは、暗澹たる気持ちで本部長とのリモート会議から退出した。「なんで、こんなことに」とトモキは暗い画面につぶやいた。「上の連中は、一体何をしていたんだ」もっと早く知らせてもらえれば、自分のポジションからでも何かしら手が打てたのではないか……。
トモキの頭の中に、コロナ禍に入って会社が打ち出してきた数々の投資案件が渦巻いた。トモキ自身は、社内でも「慎重派」といわれ、あらゆるリスクを吟味しながら安全策をとってきた。今のポジションは出世コースでもなかったが、順調にいけば本部長、運が味方をすれば役員も狙える気がしていた。が、それも水の泡になろうとしている。
趣味で始めた「魚のさばき方」をレクチャーするYouTubeチャンネルも小遣い稼ぎにはなっていたが、本業としていくことはあり得ない。かといって、会社以外で通用するほどの資格を持っているわけでもない。トモキは、自分がいかに会社一択の人生を選んできたかを実感した。「いよいよ危ないかもしれない」
トモキが、自分のチームの中で最初に伝えたのは最年長のサワダマコトだった。40歳で子どももまだ中学生になったばかりのサワダがいちばん不安がると思っていたのだが、返ってきた答えは意外なものだった。「なんか、そういうことになる気はしていたんですよね」とサワダが白髪の交じった毛をかき上げて言った。「ノザワさんに話してなかったんですが、去年の春から学校に通ってまして。中小企業診断士の勉強をしてたんですよ」
「え?」とトモキは思わず口を挟んだ。「独立ってこと?」「いやいや、そんな具体的じゃなかったんですが、保険をかけておいた感じです。まあ、軽い気持ちで始めた割には、やることが多くて意外にキツイんですが……」
小学生の子どもを二人も抱えたヤマシタの答えも、サワダと似たようなところがあった。「将来がどうので始めたわけではないんですが……」とある団体のホームページを画面共有してみせた。「学生時代からの仲間たちと食育に関するNGOを立ち上げたんですけど、結構面白くて。会社がなくなっちゃったら、そっちに専念する感じですかねぇ。うちは妻の方が稼いでいたりもするんで、そのあたりは甘えようか、と」
会社で忙しく働き、子育ても大変なはずなのに、一体どこにそんな時間があったのか。トモキは、新たな稼ぎの選択肢をつくっていた同僚二人が頼もしくもあり、うらやましくもあった。「すごくいい会社だなと思っていたので、残念です」そう言って涙を見せたのは、コロナ禍の中で就職をしたオカムラサトミだった。彼女自身、リモート面接だけでこの会社に採用され、思っていた以上に成果を出せていることは大きな自信になっていた。リモートワークの流れはますます広がっていて、車いすの彼女が就職に関して無用のハンディキャップを負うことはもうないだろう。
しかし、サトミと同じように車いすというハンディを背負い、同じ時期に入社したタダナオコは少し事情が違っていた。「ええええ!?」とトモキからその話を聞いた直後、タダは大声を出して驚いた。「マンションを買う話が進んでるんですよー」大きな会社に入れば、それだけ大きな安心が無条件に築かれると皆が思う。その安心感に身を預けながら、一方で最悪の事態を想定できる人間がどれだけいるか。あらゆるリスクを避け、その安心感をキープし続けるリスクに気づいている人がどれだけいるだろうか。トモキは、タダの驚きに心から同情した。
独身の二人の反応も対照的で、特に、日頃から新しい学びに積極的なソウトメマキが見せた動揺はトモキにとっては意外なものだった。「うわさだとばかり思ってました……」トモキから会社の現状を告げられたソウトメは、ポツリとつぶやいてうつむいた。
「そうはいっても」と沈黙に耐えきれなくなったトモキが励ますように言った。「全員が切られると決まったわけではないし。当面は目の前の仕事を着々と進めていくしかないと思うんだよね。まあ、次のことはゆっくり考えれば……」ソウトメは小さな声で「分かりました」とつぶやき、会話が続くことはなかった。もう一人の独身でチーム最年少のクマモトシンヤは、トモキの話を聞いて「マジすか?」と明るい声を出した。「先輩たちがマジっぽい話をしてたんで覚悟はしてたんですけど、いざ聞くとビビりますね」
「なんでおまえは、なんかうれしそうなんだよ」とトモキが冗談めかして言うと、シンヤは悪びれることなく「すみません」と言ってから驚きの一言を放った。「実は、僕、内定出てたんです」「え?聞いてないよ」「すみません、ちょうど昨日出たばっかだんで、まだ親にも言えてなくて。ノザワさんに初めて言いました」内定先は、できて間もなく規模も小さいスタートアップだった。行くと確実に決めたわけではないとのことだが、この会社で大きく成長することを前提に指導してきたトモキにとっては釈然としない話だ。リモートでの人材育成の限界を感じつつ、マネジメントの至らなさをリモートのせいにしてしまいたい気持ちもないではなかった。
トモキにとっていちばん言いづらい相手である娘のセリにも、夕食後、思い切って打ち明けた。小4からの返答は、ある意味、トモキのことを理解してくれていると同時に、トモキが理解できていなかったものだった。「ちょうどよかったじゃん」と言ってセリが笑顔を向けた。「YouTubeとかやるからにはさ、もっと勉強した方がいいと思ってたんだよね。いっぺんお魚屋さんに修業に行ってちゃんと勉強した方がいいと思うよ」
先の見えない時代に、何が正解なのかを教えてくれる人は誰もいない。何がリスクになるのか、自分の頭で考えていくしかない。が、考えたところで、リスクをゼロにすることは不可能だ。リスクを避けようとし過ぎることがいちばんのリスクであることは、コロナ禍で得た教訓だった。「お魚屋さんで修業かぁ」とトモキはワクワクしながら言った。「それも、アリだなぁ」
(このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません)
コロナで見えた、「安心」と「不安」の線引き
上記の「リモコンライフストーリー」のヒントにさせていただいた「週刊プレイボーイ」編集長・松丸淳生さんのインタビュー内容を、ぜひご覧ください。
一連の新型コロナの体験で、たとえ同じ職場でさえ、安心と不安の線引きには驚くほど個人差があることが見えました。「こういう属性は、こういう価値観や感性でしょ」といったことが全然通用しないんです。コロナに不安を募らせている人は「コロナは怖い」という情報ばかり探すし、逆に「コロナなんてただの風邪」という人はそういう情報ばかり探す。自分の不安感を補強する情報は、今ネットでいくらでも無料で読めるので、週プレのコロナ記事はあえて入り口を広めに設定して、不安な人もそれほど不安に思ってない人も、それぞれの解釈で読めるようにしています。
そもそも週プレのスタッフには「読者の属性をあまり考えないようにしてほしい」と言っています。30〜40代の男性が主な読者ですが、彼らをめぐる社会情勢に光を当てて企画をつくると、どうにも世知辛くなりすぎるんです。そんなものにみんなお金を払おうとは思わないですよね?だから、「読んでいる間は読者が自分の年齢を忘れられるようなもの」でありたいなと。それにさっき申し上げたように、年齢や年収のような属性で語れないことがどんどん増えている気がしていて、それゆえ興味の最大公約数である「今、世の中で起きていること」に目を向けることを大事にしています。「今起きていることを読者と一緒に面白がる」という大喜利的なやり方がいちばん週プレらしいかなと。
「何かあったらどうすんだおじさん」と「CCおばさん」
前述のように一般的な企業の中でも、社員ごとに不安の強さというか、コロナというリスクに対する繊細さはものすごく違うことが明らかになりましたよね。ここで振り返ると、近年の「社内うつ」のような問題も、不安とか恐怖感は人によって違うことを、同じ組織内ですら共有できてないがゆえの悲劇だと思うんですね。このコロナ体験を通して、リスク感覚の個人差というものをみんなで痛感できて、全体的にもうちょっと個人個人に優しい組織が増えてほしいという期待はしています。
一方で、自分のリスクを避けようとする存在として「何かあったらどうすんだおじさん」と「CCおばさん」というのをご存じですか?(笑)いろんな会社の話を聞いていて僕が勝手にそう呼んでるんですが、現場が新しいことをやろうとすると「何かあったらどうすんだ?」って言って萎えさせちゃうおじさんはどこの会社にもいる。リスクを取らなくても市場が伸びていった90年代前半までに仕事を覚えちゃった今の管理職世代は、リスクに異常なほどビビる人が多いんです。今回、そういう人たちが「リモートワーク導入、やればできるじゃん!」と、試行錯誤しながら前進することを体験してくれたのは大きかった。ちなみに「CCおばさん」というのは、あらゆるメールのCCに大勢の人を付けてくるおばさんのことで「CCガールズ」にかけているんですが、分かりにくいですね(笑)。これはこれで、自分のリスクを分散させたいだけだと思うんです。
「プランB」思考で、難局を乗り切ろう
コロナ体験の中で「プランB」というワードが広まりました。常に最悪の事態を想定しながら、次の手段を準備しておく。そうやって新しいことに挑戦するカルチャーが日本の組織に根付いたら、コロナ体験におけるプラスとなる気がしています。稼ぎ方が一つの分野に集中している危険性も見えたので、「プランB」を考える企業や組織も増えてくるでしょう。
ただ、両方を並行してやっていくのはかなり負荷がかかる。だから今後は効率化と多様性という、本来は相反するものをハイブリッドに行える人材が会社に必要となってくると思います。個人でも「副業」を考える人は増えるかもしれませんが、普通は今の仕事をちゃんとやった方が収入は絶対伸びるはずで、だからこそ、いざとなったら「副業」ができる状態にしておく「プランB」の考え方が大切なのではないでしょうか。同じように、地方移住も、東京で何かあったら行ける場所を確保しておくとか、地方に友人をつくっておくとか備えることが大事なのであって、実際に住んで仕事をするのは想像以上に大変ですよね、きっと。
雑誌の役割として、「プランBにはこんなものがありますよ」という選択肢を見せて視野を広くすることが、さらに求められる気がします。仕事柄、各分野に専門性の高い友人がいるのですぐ聞けて助かるんですが、そういう利便性を得られるサービスやビジネスをできないものかと考えています、雑誌として。
「楽しい」から「うれしい」へ
楽しいことって世の中いっぱいあると思うんですけど、うれしいことってそんなにないんですよね(笑)。例えば、小さい子どもの笑顔とか見てると「楽しい」と「うれしい」が一緒なんだけど、大人になると分化していく。近いことを作家の三浦展さんも言われてますが、「楽しい」というのは自分の外側というか環境にあるものだけど、「うれしい」というのは自分の内側からジワッとくるもので、たぶん承認欲求や尊厳が満たされる感覚とも重なると思います。そして、これからの雑誌をつくる上でのテーマとして、いかに「うれしい」を読者に提供できるか、すごく考えます。
現時点では、その役割として商業雑誌よりSNSの方が成功しているように見えますが、これは雑誌に限ったことではなく、あらゆるところで重要なキーワードになるはずです。例えば、「仕事がリモートになったらジョブ主義や成果主義になる」という話をよく聞きますが、どれだけ社員に「うれしい」を提供できるかで、その会社の雰囲気は大きく違ってくる。個人の成果に対する評価以上に、一緒に働いていく「うれしさ」をどう与えられるかが、会社にとってますます重要になる気がします。
ですので、雑誌には「ポストSNS的なもの」が求められていくでしょうね。今の自分の価値観を補強するだけでなく視野を広げてくれ、それでいて信頼や安心感、さらには「うれしさ」を感じられる場所です。ネットをずっと見ていると自ずと悪意にさらされるわけで、そういうものとはちょっと距離を置ける場所、親しみと新しい情報の掛け算みたいな場所をいかにつくっていけるかが大事だと思っています。
【リモコンライフチームメンバーより】
松丸編集長のお話の中から見えてきた、
リモコンライフをより楽しむためのキーワードはこちらです。
◉プランB思考
◉「楽しい」から「嬉しい」へ
◉「成果主義」から「うれしいか主義」へ
◉ポストSNS
◉信頼感と安心感の両立できる場所
新型コロナウイルスで、私たちのライフスタイルはどう変わるのか──人々の暮らしの中にまぎれたささいな変化や日々の心の変化に目を向け、身近な “新常態”を未来予測し、新たな価値創造を目指したい。この連載では「リモコンライフ」という切り口で、その可能性を探っていきます。
18歳以下のCFO募集企画に見る「パーパスアクション」の重要性
電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center」(FCC)は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。
今回取り上げるのは、バイオ系ベンチャー企業のユーグレナが行い注目された「18歳以下のCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)募集」。いっときの企画ではなく、本当に18歳以下の応募者を会社の経営のために迎え入れた事例は、大きな話題となりました。
企画に携わったのが、FCCメンバーである電通の秋山貴都氏と野上賢悟氏。2人はこの企画について、ユーグレナの価値観やビジョンを、実際のアクション(行動)で示した例であり、今後このような「パーパスアクション」は重要になると考えます。事例の経緯やパーパスアクションの価値について、2人が語りました。
「未来を決めるのに、未来を生きる当事者が参加しないのはおかしい」
秋山:18歳以下のCFO募集は、2019年8月から行われた企画です。ユーグレナは、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を通じて環境や健康の社会問題に取り組んできた企業ですが、「CFO」という新しいポジションを18歳以下から募集したのです。形だけの企画ではなく、実際に採用して経営会議などにも参加するものでした。

野上:この企画が生まれるまでに、ちょっとした経緯がありました。ユーグレナでは微細藻類由来のバイオ燃料の開発・導入を行っていて、近い未来、飛行機にバイオジェット燃料を入れて飛ばすことを目指しています。そのプロモーションについて相談を受けたのが、話の始まりでした。
主に同社副社長の永田暁彦さんと話し合っていたのですが、その中の企画として、小学生への動画インタビューを行いました。「未来の大人たちに聞いてみた。」というタイトルで、2050年の地球の未来について、台本なしに永田さんが小学生にインタビューしたものです。これがCFO企画のきっかけになりましたよね。
秋山:そうですね。というのも、インタビューをする中でひとつの疑問が生まれて。「未来のことを決めるときに、未来を生きる当事者たちがその議論に参加していないのはおかしい」というものです。この疑問が企画のコンセプトとなり、18歳以下のCFO募集が誕生しました。
この連載の1回目では、FCCのセンター長を務める小布施典孝とアドバイザーを務める石川善樹さんが対談していますが、その中で「企業活動の根幹、中心概念となるコンセプト」の大切さが語られていました。そしてそのコンセプトの立て方として、「変えるべきふつう」を見つけ「新しいふつう」にシフトすることが挙げられています。インタビューで生まれた疑問は、まさにこの部分に当たるのかなと。
野上:「会社は大人のもの」という考えが「変えるべきふつう」であり、それを子どもたちも参加する「新しいふつう」に変えようと。
秋山:はい。この強いコンセプトが生まれ、それを体現するアクションとして18歳以下のCFO募集が立ち上がりました。それも一時的な企画ではなく、本当に経営会議などに関わるように。そこまでやらないと未来は変わらないとユーグレナでは考えていました。
野上:2019年8月にリリースしたのですが、多くのメディアが取り上げるなど、想像以上の反響を頂きました。それ以上に驚いたのが、実際に子どもたちから寄せられた応募の数と熱量で。
秋山:あれは感動したよね(笑)。エントリーは「1200文字の論文提出」が必須条件でしたが、500人以上から応募があって。しかもその内容もレベルが高くて……。
野上:すでに個人で環境問題を研究していたり、歯磨き文化のない国の口腔衛生を向上させたいと書く子がいたり。最終的に当時17歳の小澤杏子さんが採用されたのですが、彼女もすでに学会に論文を提出して賞をとった経歴がありました。小澤さんの他、8人の「サミットメンバー」も選出され、現在まで実際に会社にプラスチック削減などの提案をしてきましたね。
正しいことの発信があふれているからこそ「行動」が意味を持つ
秋山:この事例を通して思ったのが、ブランドの意思を「発信」するだけでなく、今回のように「行動」で示すパーパスアクションが今後重要になるのではないかなと。なぜなら今、正しい情報や発信は世の中にあふれていて、そこに特別なニュース性はない。むしろ、言っているだけでは陳腐に聞こえかねない。一方、実際の行動で示すと本気度が伝わり、賛同が集まるのではないでしょうか。しかも、その行動が企業の存在意義や本質に基づいていると、よりメッセージ性が強くなる。CFOの事例が大きく取り上げられたのも、その面があると思います。
野上:確かに今は企業のパーパス(存在意義)が重要といわれる中で、そのパーパスを基にどう行動するか。ここが世の中に受け入れてもらう境目になっています。となると、パーパスアクションが重要になるのは自然の流れかもしれない。
秋山:実際、こういった行動で示す事例は増えていますよね。例えば、2016年のカンヌライオンズで話題になった「REI」というアウトドア企業の広告。アメリカではブラックフライデー(11月の第4木曜にある「感謝祭」の翌日)と呼ばれる休日があり、多くの店で大々的なセールが行われます。
しかしこの日、REIでは店舗を閉めて「休日はアウトドアに行こう」というメッセージを発信しました。実際に店を閉めるという行動を起こしている点がパーパスアクションなのだと思います。
野上:「言うはやすし」でも、実際に行動するにはさまざまなハードルが出てきますからね。そこに本気で取り組むからこそ、メッセージ性が強くなるのかもしれません。
秋山:だからこそ、今回の取り組みは何より、実行に移したユーグレナさんが素晴らしいと思っています。パーパスに基づき、メッセージを発信するだけでなく、アクションを起こす。それには覚悟が必要ですし、超えねばならない社内外のハードルも、言うだけより格段に多い。それでも実行に踏み切ったのは本当にすごいことだと思います。
野上:そこが今回の事例で一番大事なポイントですよね。ユーグレナさんの本気の思いがアクションを通じて伝わったからこそ、これだけ話題になり、多くの方から支持の声を頂けたのだと思います。
秋山:実際、この企画も行動すると苦労がありましたもんね。本当にやろうとしてハードルを越えていく姿には、言語化以上の本気度が伝わる気がします。
野上:苦労は多かったね(笑)。法律面や報酬制度の確認、何か起きた場合の責任の所在……。だからこそ、本気度は伝わったと思います。
とはいえ、いくらアクションを起こしたとしても、その行動が企業の存在意義や事業の本質に結びついていないと、説得力は出ないのかもしれない。環境活動や社会貢献をする企業は増えていますが、企業の意義とズレていたり、場当たり的なもの、「なぜこの会社がやるのか」と思われるものはネガティブな反応も出ます。
秋山:その意味で、先ほど言ったコンセプト、「変えるべきふつう」と「新しいふつう」を企業の本質に沿ったものとして見つけることが大切なのだと思います。CFO募集は今年も行う予定ですが、根元のコンセプトが企業の本質に合致していたからこそ、継続できるのではないでしょうか。
アクションに“ひねり”をつけて、社会へのインパクトを強める
あとは、どんなアクションを取るかによって世の中へのインパクトも変わると感じましたね。行動で見せるのは大切ですが、そのアクションに“ひねり”を加えることが重要というか。
野上:今回で言えば、18歳以下が会社に加わることや、CFOという言葉の強さですかね。
秋山:そうですね。繰り返しですが「変えるべきふつう」をいかに見つけるか。その視点のユニークさが大切で、「未来のことを決めるのに未来を生きる当事者がいないのはおかしい」という発見は、この企画に強度を出したと思います。
さらに、その先のアクションをユニークにするのもポイントかなと。今回のCFOという役職・言葉は、永田さんと話す中で提案されたものですが、この言葉があったからこそひねりが生まれたのかなと。僕らとしても、こういうひねりをつくって企画の強度を出せるのがクリエイターの強みだと思っています。
野上:今回の事例でもうひとつ思ったのは、パーパスアクションが、逆に企業の本質や存在意義、ビジョンを“再定義”するきっかけになるかもしれないということ。実はユーグレナでも、CFO企画の後に企業ロゴを含めたCI(コーポレート・アイデンティティー)を刷新しました。僕たちも携わり、8月7日に発表されたのですが、CFO募集というアクションを経たからこそ、今まで持っていたユーグレナの本質やビジョンがより明確化されたと思います。行動するには、それこそ一つ一つの決定を明確に捉えないといけないので。
秋山:社員のモチベーションが上がったという声も聞かれましたし、パーパスアクションにはそういった企業価値を再定義する意味もあるのかもしれない。今後も、企業のコンセプトや本質に根付いたパーパスアクションの事例を増やしていきたいですね。
最後に、私が所属しているFuture Creative Centerでは、パーパスアクションをつくっていくプロジェクトを立ち上げました。自らもパーパスアクションの企画実施に携わってきたメンバーを中心に、まずは世界中の事例を集め、研究するところから始めています。興味を持っていただけたら、ぜひお問い合わせくださるとうれしいです。
【開催告知】街中で”アート”体験を! 「Next World ExhiVision」9月19日から全国8都市のデジタルサイネージで開催
第23回文化庁メディア芸術祭の5つのプログラムのうちのひとつである「Next World ExhiVision」が、9月19~27日に全国8都市71か所で開催される。
第23回文化庁メディア芸術祭は、日常生活の中でアート作品に触れる機会を創出し、アートを身近に楽しめるよう、メディア芸術祭の広報企画として、5つのプロジェクトを順次実施するイベント。
そのひとつである「Next World ExhiVision」では、『日本の街、そして社会を、アートの力で鮮やかに』をテーマに、東京、北海道など8都市全71か所のデジタルサイネージにて、アートショーケースを開催する。
「Next World ExhiVision」開催概要
期間: 9月19日(土) ~9月27日(日)(作品の放映時間は不定期)
場所: 8都市(東京、北海道、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、福岡)
71か所のデジタルサイネージ
企画・運営: 電通アイソバー / デビッドワッツ / LIVE BOARD
公式サイト: https://www.next-world-exhivision.com/
メッセージ
コロナ禍による緊急事態宣言当時、ステイホームの掛け声の下、多くの興行が中止を余儀なくされ、アーティストの多くは活動の場を失っていました。ニュースでは、連日、感染者数が報じられ、悲観的な空気が世の中に満ちていました。そんな中、一つのアイデアが生まれました。
“全国のデジタルサイネージを活用して、アートで日本の街を染められたら、どれだけ素晴らしいことだろうか?”
アートの力で人々の心にあるフリクションを溶かし、明るい社会に変えていく。そんなチャレンジが、今はじまります。
配信されるサイネージは、LIVE BOARDが管理する、東京、北海道、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、福岡にあるデジタルサイネージとなります。
今回は、非常に幅広い領域のアーティスト(参加アーティストは、後日、サイトにて発表)の皆様にご参加いただき、多くのアートが街中に展開されます。
詳細はこちら:電通アイソバー リリース
大企業を本当に変革したい人に送る「全員スター化」と「演じ分け」のススメ(前編)
「辞めるか、染まるか、変えるか。」と題した本連載ではここまで、大企業の変革にまつわるいくつかのテーマをもとにしたイベントのレポートを通じて、新しい「大企業の可能性」を探ってきました。第3回からは、ONE JAPANに加盟する有志団体の所属企業の中から、大企業の変革に挑戦した事例をピックアップし、その当事者へインタビューする形式で、「大企業の可能性」について考えていきます。
今回インタビュイーとして登場するのは、東急でTokyu Accelerate Programを運営する福井崇博氏。同氏は前職である日本郵便時代から、コーポレートアクセラレータープログラムの立ち上げ・運営に携わってきた人物です。
確固たるビジネスモデルと伝統を築き上げた大企業において、若手社員が変革を起こすためには何が必要なのか。
電通若者研究部としてONE JAPANに加盟する吉田将英が聞き手となり、「会社を変えたい」と願う若手社員へのヒントを探っていきます。
自分を突き動かした3つの原動力

吉田:福井さんは現在、東急でTokyu Accelerate Program の運営をされていますが、前職の日本郵便でもアクセラレータープログラムの立ち上げをされています。福井さんがアクセラレーターとしての道を歩み始めたきっかけは何だったのですか?
福井:私はこれまで、出向先を含めて3つの企業に所属してきました。新卒で日本郵便に入社し、そこから4年目に希望を出してローソンへ出向していました。そして3社目がいま在籍する東急です。きっかけとなったのはローソンにいた2年間の経験です。
ローソンでは元社長の新浪剛史氏や玉塚元一氏、現社長の竹増貞信氏をはじめとした経営陣がリーダーシップを発揮して、社員が同じ方向を向いている様子を肌で感じました。大企業って“縦割り”の組織になりがちだと思うのですが、それを超えた共創感とスピード感とがあり、私の言葉で表現すると、働いていて「チャレンジャー精神」がある会社だなと。
日本郵便に戻り、ローソンで見てきたプロ経営者や社員の方々と同じように「私も組織の壁を超えたチャレンジで会社を変えてやるんだ」と意気込んでいました。しかし、組織が違えば当然同じやり方ではうまくいかず、苦しんでいました。そんな時、地方創生とオープンイノベーションをテーマにした「まちてん」というイベントへの出展に向けたメンバーの公募があったんです。私はそのメンバーになり、それをきっかけに事業創造にもかかわるようになりました。ですが、メンバーが若手中心かつ本来の業務を抱えながらのプロジェクトだったこともあり、新たな共創案件を形にするまでには多くの時間がかかりました。
これらの経験を踏まえて、本当に会社を変えるなら、あらかじめ意思決定層を巻き込んだプログラムをつくるべきだと思い、オープンイノベーションプログラムを立ち上げました。
吉田:現状を変えたいと思った時に、福井さんのように自分で現状を変えようとする人がいる一方で、転職などによって自分のいる環境を変えようとする人もいます。出向から戻って、お話いただいた2つの“挫折”があったと思うのですが、なぜそれを乗り越えて「会社の意思決定層を全員巻き込もう」というマインドセットに至ったのでしょうか?
福井:入社以来、この会社を良くしていきたい・変えたい、という信念のようなものを形作ってくれたことが3つあります。最初は東日本大震災です。私は震災の少し後に被災地の郵便局や避難所へ派遣され、そこである郵便配達員の姿を見ました。その人は震災直後から、郵便配達に淡々といそしんでいたらしいのですが、「彼は津波で妻も子供も流されて、まだ見つかっていない」ということを一緒にいた局長から聞いたんです。それを知って、日本郵便が担っている社会的使命や存在意義とは何か、非常に考えさせられるところがあったのです。
2つめは、ローソンに出向して日本郵便を客観視できたことです。当時、私は2社共同のプロジェクトを提案し、ローソン出向期間中も日本郵便と一緒に仕事をした時期がありました。とある実証実験でいくつかの郵便局を巻き込むプロジェクトだったのですが、現場局員からすると本業ではありません。それなのに、みんなその企画にすごく協力してくれたんです。それを見て、自分が想像していた以上に「会社を良くしたい」と思っている人がたくさんいることに気づきました。この人たちとだったら会社を変えられる、変えなければならない、と思いました。
3つめは、まちてん出展に際して企画したビジネスを実現するために、ある社外の人に協業をお願いした時に言われた「大企業のオペレーションを抱えた若手がわちゃわちゃやってきて、結局何ができるんだ?」という一言です。今考えると確かにその指摘は正しくて、担当者レベルしか参加していないプロジェクトでは何も変えられない。でも、当時は反骨心を抱きました(笑)。
だから会社を動かすためにはどうしたらいいか本気で考えて、社長だけ、一部の役員だけではなく、関連する経営層全員の合意を得ることが必須だという結論に至りました。当時の社長だけでなく、郵便・物流部門と事業開発部門の全役員・全部室長にプロジェクトのメンターになってもらい、経営陣、ミドル、実務担当者までのみんなが協力してくれる、一緒に取り組んでくれる状況をつくりました。
吉田:大企業を見ていると、「うちの会社なんて」と言う卑屈病の人が多くいるように感じます。「痘痕も靨」(あばたもえくぼ。相手のことが好きであれば、あばたでさえもえくぼに見えるというたとえ)ではないですが、同じ事実であっても、捉え方は社員それぞれですよね。福井さんは会社の現状をポジティブに捉える力があって、それが周りにも伝播していったのかと思います。
福井:そのたとえで言うならば、「悔しい、変えたい」という感情を抱いた時は現状をあばたと捉え、心が折れそうなときにはえくぼだと捉えるようにしてきました。もう一つ、大事なのは、ネガティブなマインドを持った人はそもそもプロジェクトには参加させないことです。従業員数が数千人、数万人を超えるような企業であれば、多かれ少なかれ、必ず私のようなマインドの社員を「意識高い系」と揶揄する人がいます。
一つの会社という単位で見れば、生き残るために両方の考えを持った人がいること自体に意味があります。しかし、何か新しいことをやるためには、ネガティブな空気がないほうが良いと思います。
「全員スター化」で周囲を巻き込む

吉田:福井さんが日本郵便でとった戦略は、経営陣の中でも自身に共感してくれる人だけを味方につける“一本槍戦法”でもなく、いわゆる社内派閥というものにも無縁というか、超越したやり方だったと思います。どうしてそのような考えに行き着いたのですか?
福井:きっかけはまさに社内政治を目の当たりにしたことです。これも“大企業あるある”かもしれませんが、溝の深さは別にして、やはり組織である以上は方針や考え方に違いがあることは避けられません。でも一方で、私はそうしたことで自分のキャリアが左右されることには違和感があり、リスクだとも思っていました。それを解決して必要だと思うことをやり続け、会社を変えるためには、派閥や特定の人に肩入れするのではなく、関係する役員やミドルマネジメント層全員を口説くしかない、と。この考えは東急に来ても変わっていません。
吉田:人間関係の機微は非常に複雑だと思います。中には、「みんなから好かれているから気に食わない」という人もいたり……。
福井:リーダーシップには、ビジョンを示して共感を得て人を動かす変革型リーダーシップと、損得を示して人を動かす交換型リーダーシップがあるといわれています。私はそれぞれの役員に対して、その時々の状況に応じてどちらのタイプで会話をすればよいかを考えて、説明の仕方も変えていきました。
例えば、交換型で会話する人に対しては、いかにこの取組みに協力したほうが得だと思ってもらえるか。日本郵便のアクセラレートプログラムでも、当初はなかなか協力を得られない役員がいました。そこで、その役員に協力してもらう必要がある企画の説明に行った際、審査員長として社長の名前が入ったプレスリリース案を、資料に紛れ込ませてわざと目に付くようにしたり(笑)。
吉田:社長の名前が入ったプレスリリースに反対するのも勇気がいりますね。
福井:ですが、交換型だけで人を動かしていると、ちょっと情勢が変わるだけで手のひらを返されてしまいます。あくまで変革型のコミュニケーションをメインにして、「福井のことを応援するために協力する」と言っていただけるように、打ち合わせではあえてプレスリリースのことは話題にせず、その役員の管轄範囲を超えた意義などについて、粘り強く説明しました。
吉田:それぞれの役員が納得できる大義名分を個別に用意したわけですね。
福井:私もそこまでする以上、大切なのは「関わった人を勝たせてあげる」こと。一人ひとりにとっての納得感を大事にするだけでなく、自分の決断は正しかったと言ってもらえるように、プロジェクトにも全力を注ぎました。
吉田:そうした巻き込み役、あるいは調整役としての自分と、プロジェクトの企画役としての自分は、別の顔だと思います。かなり器用に使い分けているなと思いますが、どのようにバランスを保つための秘訣はありますか?
福井:「周囲を巻き込むためには企画の中身が大事」であり、「企画を成立させるには巻き込みが大事」だと思っています。以前と比較して、今はオープンイノベーションやアクセラレートプログラムなども含め、大企業イノベーションに関するノウハウがたくさん出回っています。キーパーソンを巻き込むためにどんな企画にすればいいのか、参考にできるものがたくさんあるはずです。自社なりの「WHY」を突き詰めれば企画自体も磨かれ、あとは周囲を巻き込むことに注力すれば良い状態になると思います。
吉田:そうは言っても、なかなか説得できない人も中にはいますよね。
福井:ポイントは正面突破だけじゃないということでしょうか。説得したい人がいたとき、その人が信頼する相手に協力してもらうことも実際にしました。
また、メディア露出も説得の一助となりました。私のインタビュー記事を見た上司が、「福井さんかっこいいね、応援したくなった」と言ってくれて。社外のメディアに出る際は、原稿内の表現を事前に広報部に相談して一緒に考えてもらいました。「私はちゃんと会社のことを考えながらやってますよ」ということを示しながら、同時に関係者を増やしていく活動でもあるんです。
取材でも、プロジェクトに携わったメンバーは役員やミドルも含めてできるだけ前に出てもらうようにしています。特に最初の頃は、意図的に社長の腹心といわれていたミドルたちにメディアのインタビューに出てもらうようにしていました。社内からすれば、「あの人たちが参画しているプロジェクトならしっかりしてそうだ」ということになるので、賛同者が増えることにつながります。
吉田:大企業は社内の利害関係が複雑に絡み合うので、まずは影響力のある人を味方につけるのは鉄則かもしれません。一方で、社内政治下手な人もいれば、逆に忖度ばかり優先する人もいますよね。福井さんは今お話いただいたような“寝技”と、正面突破のバランスを心得ているように感じます。
(後編へ続く)