一企業の悩みを 「社会課題」アプローチで解決する

あらゆる業界が大きく変化している時代。何が起こるか、先が見えない時代。
広告業界でも、新しい職種がいろいろ生まれています。

今回はその中から、電通のグループ内でも注目の職種「ビジネスプロデューサー」をご紹介。
顧客企業のビジネスをいかに豊かなものにしていくか。それぞれのやり方で、あの手この手で取り組んでいます。
どんな仕事をしているのか、この先どんな世界を目指していくのか、聞いてみました。

連載第2回は、萩原利幸さんを紹介します。


共存社会実現のために、マナー啓発から“自分ゴト化”を目指す

メディア部門で新聞社を11年半担当した後、ここ10年は営業担当、そしてビジネスプロデューサーとして、たばこメーカーを担当しています。

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たばこメーカーはテレビなどマスメディアで製品広告を出せないなど、業界で厳格な自主規準が設定されており、生活者とのコミュニケーションで工夫が必要とされます。その中でチャレンジしてきた取り組みは、他のカテゴリー企業のコミュニケーション活動にも生かしていけるのではないでしょうか。

大きなテーマとして「たばこを吸う人と吸わない人が共存し、心地よく暮らせる社会の実現」へ挑戦してきました。このような共存社会の実現により、愛煙家が気兼ねなくたばこを嗜め、たばこに対する愛着が維持されることを目指して。

実現へ向けたキーは、喫煙マナーや分煙の推進です。特に、喫煙マナーに関しては「吸う人の吸わない人への配慮」(迷惑をかけないこと)が大前提になります。

ポイントは、たばこを吸わない人にも喫煙マナーの取り組みを伝えること。喫煙者へのマナー啓発を推進する一方で、吸わない人にも喫煙者のマナー向上の様子を知ってもらうことで、吸わない人の喫煙者に対するイメージが上がり、理解も増します。

とはいえ、“たばこの”マナー啓発とうたえば吸わない人は関心を持ちません。そこで、さまざまなマナーを啓発するプロジェクトを立ち上げました。「社会課題」といえる規模のマナーに視点を高めることで、皆に自分ゴト化してもらえるように。

社会課題を軸とするアイデアの出口設計

まずは社団法人を設立し、多様なマナー課題と直面している企業・団体の賛同を募りました。そして、2016年9月、東京(日本)をより心地よい街にするために、日常や街の中にあるグッドマナーを取り上げるという趣旨で「Tokyo Good Manners Project」をローンチ。日本人のマナーは外国から高く評価されており、日本や東京のブランディングにもつながるはずだと。現在も活動を続けており、多くの企業がパートナーとして参画しています。

ある課題を一企業だけのものにせず、多くの人を巻き込む企画で課題解決の流れをつくった点は意義深かったと思います。社会課題を軸とする出口設計は新聞社担当の頃に培われたのかもしれません。

この経験を今後も生かしていきたいし、アイデアをクライアント企業とその場で話せる、すぐに返答できる「壁打ち相手」になりたいですね。「持ち帰ります」ではなく、その場でアイデアを出せるプロデューサーを目指したいです。

『デジ単』重版出来記念!デジタル用語が分かりづらい理由を、1冊の本をつくりながら考えた

※書籍「『デジ単』デジタルマーケティングの単語帳 イメージでつかむ重要ワード365」(発行:翔泳社)の重版出来を記念して、 翔泳社の編集者・秦和宏さんに本書ができあがる裏側のお話をおまとめいただきました 。


「デジタルマーケティングの用語は分かりにくい!」

マーケティング・広告・ウェブ業界で仕事をしている方なら、誰もが感じたことがあるのではないでしょうか。

そんな悩みを解決するべく、1冊の書籍をつくりました。今回はそれを紹介しながら、デジタル用語が難解な原因と、その対策を探っていきたいと思います。

言葉を覚えるなら「単語帳」

紹介するのは『デジタルマーケティングの単語帳「デジ単」』という本です。英単語帳のデジタルマーケ版、と考えていただくと分かりやすいかと思います。

左側のページに単語とその意味が書いてあり、右側のページは単語に対応したイラスト図解になっています。イラストはすべて、「ポンタ」「ナナナ」「キメゾー」などの有名キャラクターを手がけた糸乘健太郎さん(電通デジタル)に描き下ろしていただきました。

デジ単

英単語帳も同じですが、単語帳の良さは「シンプル」「分かりやすい」「使える」といった点で、効率的・反復的な学習に向いています。後述しますが、パラパラめくっているだけでも、きっと仕事に役立つはずです。

新人もベテランも悩むデジタル時代の「言葉の壁」

この本は実は、まったく別の企画会議から生まれたものです。当初は「デジタル広告の教科書をつくりたい」と、著者の村山亮太さん(VOYAGE GROUP)や企画協力の高田了さん(電通デジタル)にオファーしていました。

その打ち合わせの際、「デジタル広告で分かりにくいのは、なんといっても単語だ」という話題になりました。

「単語は新しいものが次々出てくるし、アルファベット3文字の略語やカタカナの似たような言葉が多くて、今でも混乱する」

そんなご本人たちの苦労話から、「単語帳にまとめたら新人にもベテランにも便利だろう」という企画がぽんと浮かんできたのです。

このとき、「業界の中心で長く活躍しているこの二人が困っているなら、単語で困らない人なんてこの世にいないんじゃないか」と思ったのを覚えています。

デジタルマーケティング用語がやっかいな二つの原因

多くの人が抱える課題を解決するために、「どうすれば理解しやすい『単語帳』ができるか」ということを、内容面や、書籍表現の面で考えていきました。

デジタルマーケティング用語がやっかいな理由は、主に二つあると思います。

  1. 略語やカタカナ語ばかりで、パッと見てイメージがつかみにくい
  2. ただでさえ分かりにくいのに、相互に関係して絡み合っている

例えば、下の単語を見てください。

デジ単

もう「クローリング」はおなじみかもしれませんが、私は初めて聞いたとき、さっぱり意味が分かりませんでした。仕事の会話で何度か聞いているうちに、なんとなくイメージがつかめてきて、なんとなく自分でも使い始めるという調子で、おそらく多くの人が似たような経験をしているのではないでしょうか。

では、次のイラストを見てみてください。

デジ単

何をしているのか一目瞭然です。

イメージが頭に浮かぶか否かが理解度に与える影響というのは、書籍づくりをしていると身に染みて感じます。また、次々新しい言葉が出てくるデジタルマーケティングの世界では、目で見て「パッと」=「すぐ」理解することも重要です。一つ一つの単語を丁寧に咀嚼している時間は、ほとんどの人にはありません。

そしてもう一つやっかいなのが、それぞれの単語が絡み合っている点です。「CVとCVR」「KPIとKGI」などはまだ関係性が分かりやすいですが、さらに媒体用語やSEO用語、マーケティング理論などの違うステージにあるような言葉まで俯瞰して、つなげて理解するのは難しい。

デジタル化がマーケティングの世界にもたらした大きな変化として、マーケティング・オートメーションなどのツールで顧客行動を一連の流れに落とし込めるようになり、カスタマージャーニーといった考え方も広まりました。しかし、リード獲得から受注までの間が一つの部署で完結することはあまりないでしょう。

流れでいえば「マーケティング部門から営業部門へ」という順番ですが、そこにウェブ制作部門、広告部門、外注先、媒体が絡みます。そして、顧客の行動や態度変容などの考え方が一連の流れの根底にあります。

つまり、ある単語のイメージが浮かぶだけでなく、さらに「全体像」としてのイメージもとらえないと、自身の仕事への理解が深まらないということです。

デジ単

この図では、概念的なファネルから実務的なマーケティングツールまで、一つの視界に収められます。

著者の村山さんとイラストレーターの糸乘さんには、最後の最後まで、内容と表現を磨いていただきました(単語の掲載順や、イラストの色の付け方も)。その結果、絡み合ったデジタル用語が解きほぐされて、広い視野で見られるようにまとまったと感じています。

「言葉のひとり歩き」をさせない共通言語づくり

ビジネス現場の用語は、「なんとなく」理解しているケースが非常に多いと感じています。打ち合わせの場で繰り返し出てくる言葉の意味を文脈から想像して、同じような場面で自分でも使ってみる、という習得の仕方です。

言語の習得法としては実地的でまっとうですが、これでは少しずつ認識のズレが出てきてもおかしくありません。

しかも、これまでになかったようなコラボレーションや共創が会社や業界をまたいで実現する時代。最近はチャットによるコミュニケーションも増えてニュアンスが欠落しやすく、「なんとなく」では済まないシーンが増えてきているのではないでしょうか。

そこで、「デジ単」をプロジェクトメンバー全員で買って認識を揃えよう!…とまでは言いませんが、困ったときに参照できるものがあると、それをテコに「この場ではこの意味」という共通言語の形成ができます。「言葉」というコミュニケーションの土台にあるものだからこそ、さまざまな使い方ができる懐の深さがあると思っています。

このように、1冊の中に著者やイラストレーターのこだわりが詰まった本になっています。おかげさまで、発売1カ月で重版も決まりました。書店で見かけた方はパラパラとめくってみていただけると嬉しいです(電子書籍版もあります)。

【本書のポイント】
・デジタルマーケティングの頻出単語をシンプルに解説
・イラストを見るだけでもイメージがつかめる
・似た単語の意味の違いや、使い分け方もフォロー
・索引つきで単語や同義語を探しやすい
・英語表記もあるので、海外サイトを読むときや出張にも便利

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購買のカギ「右脳」は、どうすれば攻略できる?

通販広告と心理学、異色タッグのプロジェクトチームが、3年かけて通販広告のデータを解析。その成果をまとめた『売れる広告 7つの法則』(光文社新書)より、全7回シリーズでトピックスをご紹介します。

人間の体にある臓器で、右と左があるものといえば、肺や腎臓。内部が左右に分かれているという意味では、心臓もそうだといえるかもしれません。いずれも人体にとって重要な臓器ですが、その左右の働きの違いについては、実はあまり知られてないのではないかと思います。

そんな中、多くの人が右と左の働きを即答できる稀有な臓器があります。それが、脳。左脳といえば理性で、右脳と言えば感情、というのは、もはや常識であるかのよう。これほどまでに右脳と左脳のことが知られているのは、理性と感情が人間にとっては別物であり、誰しもその志向の違いに困らされることがあるからでしょう。

今回は、そんな理性と感情が、ヒトの買い物行動にどのように影響しているのか、というテーマについて書きたいと思います。

あ、ちなみに、左脳が理性で右脳が感情という話には、実はとんでもない裏があるのだそうです。気になるその話は、本コラムの最後にて。

「理性」で選び、「感情」で決める、それが現代人の“お買い物” 

購買において、理性と感情は、全く別物として機能しています。商品が自身のニーズを満たしているかを「理性」を使って検討しながら、同時に、商品が自分の世界に入ってくることを許せるかを「感情」や「感覚」で審査する、それが現代人の買い物行動なのです。そのことを示す事例は、たくさん存在しています。

例えば、どう考えてもスペック的には微妙なのに、かわいいからこっちを買っちゃった、という「乙女型」の消費。これは、理性での検討結果を、感情が無視した結果生まれる購買行動です。

そして、俺はこのブランド以外は買わない、と特定ブランドを選び続ける、大人の男性に見られがちな「こだわりオヤジ型」消費。こちらは、理性では他の商品の価値を理解できていても、選ぶことは感情が許さないという、完全に感情が主導権を握った購買行動だといえます。

理性が勝つか、感情が勝つかは、人により、また買うものにより変わってきますが、総じて感情が勝つことの方が多い気がします。私個人の感覚でいえば、理性の判断に感情がハンコを押して、初めて買う許可が出る、という感じでしょうか。

いずれにせよ購買のステップにおいては、理性的な検討をする段階と、感覚・感情の面で気に入るかどうかを判断する段階は、別物として存在すると考えていいでしょう。

「理性」と「感情」に着目した、新しい購買心理モデル

そんな「理性」と「感覚・感情」の働きに着目して生まれたのが、私たちが提唱する購買心理モデル「A・I・D・E・A(×3)」モデルです。
 

AIDEA×3図


前回のコラムで紹介した第3ステップ「Discussion(対話)」は、心の中で商品の価値を自問自答するステップであり、まさに「理性」による検討のステップと位置付けられます。

そしてその直後に置かれているのが、第4ステップの「Emotion(感情・感覚)」。こちらは、商品が気に入るかどうかを、まさに理屈抜きに判断するステップとなります。

これまでの購買心理モデルでは、この理性と感情という観点はほとんど考慮されていなかったように思います。理性と感情の双方からの品定めを、例えば「検討」や「調べる」といった、理性を意味する一つのステップに押し込めているものばかりだったのです。

ですが、実際の購買行動においては、この二つは並行して機能しながら購買の決断を左右します。だからこそ私たちのモデルでは、あえて「感情」のステップを「理性」から独立させ、それぞれ別のステップとしたのです。

「感情」に訴えたら、購入者はなんと1.7倍増に。

「Emotion(感情・感覚)」は、独立したステップにするほど大事な要素である、と確信したのにはもちろん理由があります。それが、研究の過程で、次のような実験データが得られたからでした。ちょっと複雑な内容なので、頑張って説明します。

行ったのは、ざっくりいうと「理性的な情報だけを伝えた通販広告」と「理性的な情報に加え、感情・感覚を刺激する演出を盛り込んだ通販広告」の比較実験(ABテスト)です。

実は、通販広告において、感情や感覚を攻略する鉄板手法とされるのが、下図の通りのBGMとテロップの有効活用です。ポジティブなシーンでは活気のある明るい曲と上品な書体のテロップを、ネガティブなシーンではどんよりした曲と弱々しいテロップデザインを、といった具合に、BGMとテロップデザインに大幅な変化をつけた方がレスポンスが高まる、というのがこの手法です。
 

通販広告表1


実験では、この手法を取り入れ、同じ商品のテレビショッピング番組において、BGMやテロップデザインに上図のような変化をつけたもの(こちらをパターンAとします)と、BGMやテロップデザインがほぼ一定の単調なもの(こちらをパターンBとします)の二つを制作。双方を実際に放送して、それぞれ何件の受注が得られるかを計測しました。
 

通販広告表2


二つの番組は、BGMとテロップ以外の要素、すなわち商品やセールスポイントの説明の仕方、あるいは出演者やそのコメントは、ほとんどが同じものを使用しています。つまり、「理性」に関わる情報は同じであり、音楽や文字のデザインなどの「感情」や「感覚」に関わる部分のみが違うわけです。したがって、2番組の結果の差は、そのまま、「Emotion(感情・感覚)」の働きによる差を示すものと受け取ることができます。

さて、気になる結果は、次の通りとなりました。
 

受注件数グラフ

ごらんの通り、「Emotion(感情・感覚)」に働き掛けたパターンAと、そうでないパターンBの受注数の差は、なんと1.7倍に及びました。「Emotion(感情・感覚)」に働き掛けるか否かで、販促効果に1.7倍もの差が出ることが分かったのです。購買行動においていかに「右脳」が大事かが、非常によく分かる結果です。

「Emotion」の攻略は、これからのビジネスのカギのひとつ

通販において、広告以上に重要な役割を握るのがコールセンターです。私も仕事柄、コールセンターの方々とお話しすることも多いのですが、そこでセールスの成績が上位の方に話を伺うと、皆さん共通して、次のようなことをおっしゃいます。セールスの際に心掛けるコツは、「相手の頭の中に絵が浮かぶようなトークをすること」だというのです。似た話は、小売業での販売上手の方のノウハウ本などでもしばしば出てきます。

こういったことを踏まえても、現代人の購買行動において、「感情」や「感覚」、すなわち頭の中を良いイメージで埋め、ポジティブな気持ちをつくり出すことが、買ってもらう上でとても重要な役割を果たしているのは疑いようのない事実だといえます。今回ご紹介した「Emotion(感情・感覚)」は、まさにそうした役割を担うステップなのです。

競争が激しく、商品のコモディティー化が進む今の時代、商品のスペックで勝とうとすると、膨大な開発・製造コストが掛かります。そう考えると、これからの競争に勝つためには、モノづくりだけでなく、売り方づくりにも力を注ぐことが、ひとつのカギになるのかもしれません。いかにして感覚を刺激し、いかにして感情を満たすか。それができた商品が勝つ可能性が高いのです。私も、広告人として、より「Emotion」を刺激できる広告を開発できるよう、これからも頭をひねっていきたいと思います。

ちなみに余談ですが、今回の心理学者との共同研究で私が知った最大のトピックス、それが、冒頭でも触れた右脳と左脳に関する真実です。実は、「右脳=感情・感覚」「左脳=理性・理論」というのは、科学的な根拠のない、全くのエセ科学なんだそうです。脳科学的には、それぞれの機能は大脳の片側の半球に偏っているわけではない、という事実が判明しているとのこと。

にもかかわらず多くの方が、右脳と左脳の話をすんなり信じてしまうのは、やはりそれだけ皆が、理性と感覚が別ものだと感じることが多いからなんでしょうね。

うまくいっているときに、変える勇気。 CARTA宇佐美会長に聞くインターネットビジネスの心得

国内電通グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させると期待されているのが、2019年に誕生した新会社CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)です。同社の会長には、広告事業からメディア運営まで幅広く手掛けるVOYAGE GROUP創業者・CEOの宇佐美進典氏が就任しました。

本連載では、新たに国内電通グループに加わったCARTAってどんな会社?宇佐美さんってどんな人?という疑問に答えるべく、宇佐美氏にインタビュー。文字通り日本のインターネット史と共に会社を成長させてきた宇佐美氏のビジネス思考に迫っていきます。

学生結婚から就職、転職。
2度にわたる起業。
サイバーエージェントの取締役就任とMBO。
そしてマザーズ、東証1部への上場。

社名(VOYAGE=航海)をはじめ、グループの営みを海洋冒険に例える希代の起業家・宇佐美氏は、デジタル系ベンチャーの “船長”としてどんな舵取りをしてきたのでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長
CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長

人生に敷かれた「レール」を降りて見えた光景

――宇佐美会長のこれまでの歩みを時系列で伺っていきます。まず出発点として学生時代のお話から聞きたいのですが、大学時代に持っていた将来へのビジョンはどんなものでしたか?

宇佐美:1992年に大学入学したのですが、まだバブルの残り香がある時代で、入学時には「これから楽しい大学生活が送れる」としか考えていませんでしたね。高校時代も、どちらかというと青春を謳歌する系の、リア充的な高校生活を送っていた気がします(笑)。どこにでもいる普通の学生で、将来の仕事のイメージは正直持っていませんでした。

でも、大学1年生の時に学生結婚をし、子どもができたことがきっかけで、自分の人生をどういうふうに生きていくのか考えるようになりました。それまでなんとなく思っていた人生とは、「大学に入り、良い会社に入って、仕事を頑張る」という、敷かれたレールの上をいかにまっすぐ走っていくかというものでした。それが、学生結婚を経て、目の前にレールがなくなった気がして、自分で進む道を切り開いていくしかないと決心したんです。

早稲田大学在学中に学生結婚し、第1子が誕生。子育てと並行して学生生活を行ったことをきっかけに、レールの敷かれた人生ではなく自ら切り開いていく人生を考え始めた。
早稲田大学在学中に学生結婚し、第1子が誕生。子育てと並行して学生生活を行ったことをきっかけに、レールの敷かれた人生ではなく自ら切り開いていく人生を考え始めた。

――1年生だと、同級生はまだ将来のことを考えるような時期ではないかもしれません。そんな中で宇佐美さんは、どう生きていくかということを真剣に考えることになった。

宇佐美:はい。そこからはアルバイトや子育てをしながらの大学生活です。子どもを自転車で保育園に送ってから授業に出ていました。そして90年代前半というのは日本のインターネットの黎明期で、大学にコンピュータールームがあってインターネットができたんです。私の周りでも、ウェブ制作事業を学生ベンチャーとして立ち上げるような人が出てきました。私はその時点では、興味はありつつも、今の自分ではできないなと思っていましたが。

―――ただ、起業という道があるということは、頭には入ったということですね。

宇佐美:はい。まだ漠然とですが、自分で会社をつくって生きていく道を考えるようになり、会計の勉強をしたりしていました。それで就職活動の際に、浅はかですけど、コンサルティング会社に行けば起業に結びつくような、経営に近い経験ができると考え、トーマツ コンサルティング(現デロイト トーマツ コンサルティング)に入社しました。

――トーマツに入社されて、「ちゃんとした企業に就職できた、これでもうレールに戻れた」みたいなことは考えなかったのでしょうか。

宇佐美:「戻れた」というよりも、「戻ってしまった」という感じですね。入社してしばらくたったあるとき「レールから外れて、ジャングルの中で生きていく道を選んだはずなのに、気づいたらレールの上にいる」という自分に気づいて「おかしい」と(笑)。そこで、今度ははっきりと自分の意志でレールから降りて、道なき道に入っていこうと思い、転職を決めました。トーマツには結局2年間勤めました。

――2年で転職することになり、周囲の反応は?

宇佐美:転職先はまだ3~4年目のベンチャーだったので、元の会社の人たちからは止められました。でも妻は「いいんじゃないの、あなたがやりたければ」と。学生結婚にしても、転職にしてもそうなのですが、道なき道に入るのってすごく怖いじゃないですか?何があるか分からないし。でも、思い切ってジャングルに入ってみると、意外と水もあるし、食べ物も取れるんです。外から見るほどのリスクはないし、得られるものがたくさんあるなというのが実感です。

――転職先は、コンサルの経験を生かせるような仕事だったのでしょうか。

宇佐美:いえ、業務的には全く関係ありません(笑)。トーマツでは大手金融機関の業務改善プロジェクトやシステム化プロジェクトにコンサルタントとして関わっていたのですが、転職先は小さなソフトウエア会社で、そこに在籍していた友人から「うちに来てマーケティング関係のことをやってほしい」と言われていたんです。

今でいうAdobe Acrobatみたいなソフトウェアを開発している会社で、入社初日に社長から「わが社はこういうソフトで世の中を変えたいんだ。このソフトではあんなこともこんなこともできる」と熱く語られました。私が「それで、このソフトは誰が使うんですか?」と聞いたら、「それを考えるのは君の仕事だ」と。完全にプロダクトアウトの思考で「誰に、どう売るのか」が欠けたまま走っていたんですね。

結局その会社には1年いたのですが、そのソフトウェアのコア機能の一つが海外企業からライセンスを受けていて、その交渉のために、ラスベガスで行われるコムデックスという展示会に行ったのがその後の起業のきっかけになりました。コムデックスでは当時のアメリカのインターネット企業がいくつも出展していて、「アメリカではインターネットは来ているぞ」と目の当たりにしたんです。

最初の起業は失敗。「熱量のあるチーム」でなければビジネスは成功しないと知った

CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長

――アメリカが先駆けて、インターネットビジネスを生み始めたタイミングだったのですね。

宇佐美:一方で、自社のソフトウエアは売れなかったのですが、技術的にはXMLというマークアップ言語を使っていたので、XMLをもう少しインターネットのビジネス寄りに活用できないか考えるようになりました。それを最初の起業につなげたのですが、XMLを使った求人情報検索エンジンのビジネスです。

――90年代当時と今では起業家を取り巻く環境は全く違うと思いますが、起業時の目標はどんなものでしたか。

宇佐美:実は会社を将来的にどうするかは考えていませんでしたね。最初に起業した1998年頃は、IPOという言葉もまだ一般的でなかったですし。また、当時はいわゆる独立系のベンチャーキャピタルがほぼなくて、金融系しかいない状況で、実績のない状態では資金調達が難しかったんです。そこで、思い切って国に助成金を申請しました。求人情報検索エンジンの事業化に向けて、ベンチャー経営者何人かに声をかけてコンソーシアムをつくり、「こういう新しい技術分野におけるサービスをつくります」と申請したところ、1億円くらいの助成金が下りました。

しかしそこからが大変でした。もともとコンソーシアムという形を取っていたので、構成する各企業がそれぞれ「ここはうちが得意だから担当します」という感じで、なんとなくみんなで一緒にやろうという空気だったんです。それが、実際に1億円という助成金が出てくると、「うちの会社でここまでやるからいくら欲しい」とか「この権利はうちが持っているから」みたいなことになってきて。ビジネスを成功させるためにどうすればいいかではなく、目の前のお金と権利をそれぞれが取り合うようになってしまいました。検索エンジンの開発自体は完成までこぎつけたものの、サービスをリリースすることはありませんでした。

――最初の起業では、サービスの事業化までは至らなかったと。

宇佐美:物だけつくっておしまいみたいな。この経験があったので、次に自分が起業するときは、みんなで一つのゴールに向かって、どうすればそのゴールが実現するのかをみんなが考え、熱狂の中でビジネスをつくっていく、そんな熱量の高い「チーム」をつくろうと考えるようになりました。その後、友人と一緒に立ち上げることになった会社がアクシブドットコム、後のVOYAGE GROUPです。

前列中央が宇佐美氏(当時)。インターネットが黎明期だった1990年代に起業家人生をスタートした。のちに東証1部上場を成し遂げることになるが、それはまだ先のお話。
前列中央が宇佐美氏(当時)。インターネットが黎明期だった1990年代に起業家人生をスタートした。のちに東証1部上場を成し遂げることになるが、それはまだ先のお話。

――最初の起業で、一つのゴールをみんなで目指すチームにできなかったことが、宇佐美さんのその後の経営に反映されているのですね。2度目の起業時に意識したことはありますか。

宇佐美:当たり前ですが、一人でビジネスはできないので、自分にない経験や能力を持っている人たちとチームをつくること。また、インターネットのマーケティング領域にフォーカスをしてビジネスをしていくこと。そして今度は明確な目標として上場を目指そうということを、最初にはっきりと決めましたね。

「うまくいっているのに、なんで変えるんですか?」

CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長

――多くのスタートアップは、何か一つのテクノロジーやアイデアを軸に、1事業に集中するケースが多いと思います。宇佐美さんの場合、これから伸びる領域を見つけて、そこに旗を立てるような起業の仕方だったのでしょうか。

宇佐美:そうですね。正直、いまだにそうですが、事業の中身にはそこまでこだわりはないんです。ただ、やるからには「すごいこと」をやりたいじゃないですか。世界を変えるようなすごいことをやりたくて、その上で興味のある分野や伸びそうな分野というのを調べていきます。そして当時は「インターネットを使ったマーケティング領域がこれから伸びる」と。

それが1999年だったのですが、これからインターネットを使う人が増えて、物の売り買いが発生していくとしたら…例えばアメリカの開拓時代に、ゴールドラッシュで人がどんどん集まってきたところで、鉱山労働者にジーンズなどを売って成功したリーバイスみたいなイメージですね。インターネットが現代のゴールドラッシュだとして、人が集まってきたとき、何がこの時代のリーバイスなんだろうと考えたら、マーケティングだろうという結論に至りました。

――確かに、今のVOYAGE GROUPの事業も広くマーケティング関連が中心になっています。最初に立ち上げられたのは懸賞サイト「MyID」ですね。懸賞サイトをやろうと決めた経緯は?

宇佐美:実は、懸賞サイトをやろうと思ってつくったわけではないんです。そもそもやろうとしていたのは、「一つのIDであらゆるサービスを使える」というアイデア。今、FacebookやGoogleのIDを持っていれば、いろんな他社のサービスにもサインインして使えるじゃないですか。それと同じように、「一つのIDをつくると、それでいろんな企業のサービスが使えるようになったら、いちいちたくさんのアカウントをつくって管理せずに済むし、便利じゃないか」というコンセプトでした。だからサービス名も「MyID」なんです。

でも、「御社のサービスをMyIDでも使えるようにしてください」とお願いしても、相手の会社にしてみれば使う必要性がありませんよね。今でいうAPIの考え方もなかったし。これが仮にMyIDユーザーが100万人いれば、先方にも使うメリットが出てきますから、まずMyID単体で魅力のあるものにしなきゃいけない。

そこで、MyIDに付随するコンテンツとして、懸賞サイトを企画しました。そこに行けばお得なインターネットキャンペーン情報や懸賞情報があるよというものです。それでユーザーが増えれば、将来的には他社サービスに連携できる便利なものとして広げていけるだろうと。

――ちなみにこの時代のインターネットのサービスは、どういうものが主流だったのでしょうか。まだ音声や動画のようなリッチなコンテンツは乗せられなかったと思います。

宇佐美:テキストサイトなんかが流行していましたが、当時は普通の人がパソコンを買って何を最初にやるかというと、あまりやることがなかったんです(笑)。そんな中で懸賞サイトだったら、ユーザーがURLを貼って「応募したらデジカメもらえるらしいぞ」みたいに他の人に分かりやすく伝えられるので、比較的使われやすいだろうと。

――なるほど。その時代からインターネット関連産業は急速に進化していきますが、宇佐美さんは常に時代に先んじて、積極的に事業のピボットをしたり、幅広く新規事業の立ち上げを行ってきたのがユニークな点だと思います。多くのスタートアップが一つの事業にこだわる中、それが可能だったのはなぜですか? 

宇佐美:理由は先ほども話しましたが、「やるからには世界を変えるようなすごいことをやりたい」という思いがまず中心にあって、これを逆に言うと、その事業で世の中を良い方向に変えられるという実感を持てるのであれば、事業の中身は「なんでもいい」わけです。

そしてテクノロジーの最先端だったインターネットは、まさに世の中を変えるようなことが次々と起こりやすい領域でした。日本でもアメリカでも、世の中を変えるようなサービスをつくり、会社を大きくしていく人たちが同世代にたくさんいたことが、いつも刺激になっていましたね。

――その後、会社が成長していく中で、2001年にサイバーエージェントの連結子会社になり、宇佐美さんがサイバーエージェントの取締役に就任することになりました。この経緯は?

宇佐美:より良いサービスを実現するために、他社と組むことは常に模索していたんです。大手ポータルサイトをはじめ、複数の会社から「一緒にならないか」というお声がけを頂いて検討していたのですが、どれも最終的には完全吸収というスキームだったので、チームで話し合って、すべてお断りしたんです。それらの会社のいちメディアとして自分たちが取り込まれる形だったので。

一方で、懸賞サイトの収益源は、やはり広告なので、ネット事業系の広告会社としてのサイバーエージェントは取引先の一つだったのですが、実はサイバーエージェントとは企業文化的に近いものがあったんです。特に強く感じていたのが、「広告」というより「インターネット」が好きな人がたくさんいる会社だということ。「インターネットで新しい産業をつくっていくんだ」という、根っこの部分にある志に共感しました。

われわれからすると、自分たちの手でサービスを大きくしていきたいという思いを実現できて、かつお互いの事業の連携も強く、さらに価値観も合う会社は、サイバーエージェントであろうと。

――とはいえ、子会社化からしばらくはサイバーエージェント本体に宇佐美さんが直接関わることはなく、MyIDの事業に注力し続けていたんですよね。

宇佐美:はい。でも2002年ごろから競合の懸賞サイトもたくさん出てきて、広告枠をいかに安く売るかという競争が始まったんですね。その様子を見ていて、私としては「懸賞サイトはそろそろ潮時だろう」と感じたんです。2004年にサイトのコンセプトも名前もガラッと変えて、ショッピングでポイントが貯まる価格比較サイト「ECナビ」になりました。翌年、社名もECナビに変更しています。

当時は競合が出てきたとはいえ、懸賞サイトの中ではトップを争う売り上げがあったので、社内からは「成功しているのに、なんで変えるんですか?」という反対の声もありました。しかし、私自身ビジネスを続ける中で、「インターネット業界のビジネスサイクルは3~4年だ」と実感していました。ドッグイヤーというように、普通のビジネスと比べてインターネットビジネスは10倍くらいのスピード感で進むので、成長も速いけど、下がるときは急激に下がります。

――人間の心理として、どうしても変化を好まないというのはあると思います。宇佐美さんはその点、常に早い段階で「次の手」を打ち続けてきましたよね。

宇佐美:一つの山しか見えていないと「この山がもっとずっと続くんじゃないか」と考えてしまいがちなんですよね。そこで社員たちには「上がり調子の時に次の一手を考えてそっちに舵を切っていかないと、会社に未来はない。下がってから次の一手を考えるのはつらいよ」と徹底的に説明し、納得してもらったんです。この姿勢があったので、社員たちもどんどん新しい事業のアイデアを考えてくれるようになっていきましたね。

VOYAGE GROUP本社オフィスで。背後にある多数のロゴは、VOYAGE GROUPから生まれたさまざまなサービスと企業たちだ。
VOYAGE GROUP本社オフィスで。背後にある多数のロゴは、VOYAGE GROUPから生まれたさまざまなサービスと企業たちだ。

<※次回はサイバーエージェントでのお話、VOYAGE GROUPの特徴である事業部制の話、そしてMBOから株式上場までのお話を伺います。>

フジ『テラハ』BPO審議入りか…やらせ疑惑、木村花さんバッシング助長行為の可能性

 23日に亡くなった女子プロレスラー、木村花さん(22)の自宅から遺書が見つかり、警視庁は自殺を図ったとみて捜査を続けていると報じられている。

 木村さんはフジテレビの恋愛リアリティー番組『テラスハウス』に出演していたが、Netflixなどで3月31日に先行配信された『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』の第38話で、木村さんが大切にしていたプロレスのコスチュームを共演者が間違った方法で洗濯・乾燥し、縮んでしまうトラブルが発生。その共演者に激怒する木村さんの様子が放送された。これを受け、SNS上では木村さんへのバッシングが沸き起こる事態に発展。さらに番組の公式YouTubeではこのコスチュームをめぐるトラブルを取り上げた動画を3本公開していた。

 木村さんは亡くなった当日に自身のTwitter上に「毎日100件近く率直な意見。傷付いたのは否定できなかったから。死ね、気持ち悪い、消えろ、今までずっと私が1番私に思ってました。お母さん産んでくれてありがとう。愛されたかった人生でした。側で支えてくれたみんなありがとう。大好きです。弱い私でごめんなさい」と投稿しており、バッシングに心を痛めていた様子がうかがえる。

『テラハ』といえば過去に何度となく“やらせ疑惑”が浮上してきた。たとえば2014年に週刊誌「FLASH」(光文社)は、共同生活を送る出演者たちに毎月ギャラが支払われており、さらに告白やキスなど番組を盛り上げる行動をとった際には別途報酬が支払われていると報じた。その直後に「週刊文春」(文藝春秋)も、出演者たちが制作スタッフの意向に従って行動し、展開が決められていると報じた。このほかにも15年には、映画版『テラスハウス クロージング・ドア』に出演していた女性が、自身のブログで“やらせ”やセクハラを示唆する投稿をして波紋を呼んだこともあった。

『テラハ』では毎回冒頭で「台本は一切ございません」と説明されているが、テレビ局関係者が語る。

「過去に同じくフジの恋愛リアリティ番組『あいのり』で出演者が“やらせ”を暴露した事件があるだけに、さすがに出演者に台本というかたちでシナリオのようなものを渡すことは、していないでしょう。そもそも共同生活を送る出演者たちの多くは、芸能事務所に所属している事実上の“半タレント”で、容姿をみても“ただの一般人”でないことは明らか。『テラハ』を足掛かりに人気を得て今後の芸能活動や自身の活動につなげていきたいという、なんらかの目的を持っている人ばかり。番組内で目立たなければ出演する意味はなく、そうなると必然的に制作サイドの求める展開になるよう“演じる”でしょうし、バラエティ番組である以上、スタッフサイドからまったくディレクションめいたものがないというのは考えにくい。“なんにも起きませんでした”では、番組として成立しませんから。

テラハ』のつくり方として、それまでの展開を受けて新たなシーンを設定し、そこに恋愛に発展しそうな男女や険悪な雰囲気の共演者同士、三角関係っぽい男女など、ふさわしいキャストが選ばれて、カメラが配置されたところで撮影されるわけですで、そうなると誰でも“番組的に自分が求められている振る舞いや言動”をしてしまいますよね。程度の問題もあると思いますが、それを演出ととらえるか“やらせ”ととらえるかということです。そうした見えないプレッシャーが積み重なり、出演者たちに強いキャラを演じさせたりして苦しめることもあるでしょう。

 また、今の10~20代の視聴者に顕著なのは、バラエティ番組やリアリティ番組の内容を見て“やらせ”などの可能性を疑わずに、ストレートに真に受けてしまう。そうした視聴者の特徴も、木村さんへのバッシングが沸き起こった背景にはあるのではないでしょうか」

フジが恐れるBPO審議と損害賠償要求

 そしてフジが今恐れていることがあると、別のテレビ局関係者はいう。

「番組が原因で出演者が亡くなったという事実がある限り、BPO(放送倫理・番組向上機構)の審査対象になるのは免れないでしょう。ひとつは、『テラハ』人気がSNS上での盛り上がりに支えられているという性格上、今回のような不幸な事態を防ぐために制作サイドとしてなんらかの対策を講じていたのかという点。炎上が始まって番組の公式Youtubeではコスチューム問題をめぐる動画を公開していますが、これはバッシングを助長する動きとも受け止められかねません。さらに木村さんへの誹謗中傷を助長するかのような演出上の内容があったのかも焦点となるでしょう。

 もうひとつは、“やらせ”があったのはどうか、そしてそれが木村さんを追い込んだのではないかという点も、議論の遡上に上るでしょう。

 また、木村さんが亡くなったことを受けて、現在、そして過去の出演者が番組の内情を告発したり、精神的な損害を被ったとして賠償を要求する動きが出てくる可能性もあり、その点もフジは警戒しているでしょう」

『テラハ』は25日深夜にフジで放送予定だった「39thWEEK」、Netflixで26日から配信予定だった「43rdWEEK」などの休止を発表しており、今後については協議中だという。

(文=編集部)

 

「兎味ペロリナ」にも誹謗中傷⁉ 有名ライターも意見様々


 今月23日、Twitterでは「誹謗中傷」がトレンドに上がった。これは「ある事件」がきっかけとなり、広がった現象だ。

 これを機に一般ユーザーのみならず、様々な有名人も「誹謗中傷」に関してツイート。日本中が自らの発言を見直す機会となった。

 多くのTwitterユーザーが「誹謗中傷」に関する想いを呟く中、パチンコ業界の著名人にも同様の発言が存在する。

 大物パチンコライターの大崎一万発は「私は中傷に慣れているが、気にしてしまう人は辛いよな」という旨のツイートを発信。同情を隠せない様子だ。

 パチンコ業界は、これまで批判の的になりやすい傾向があり、時には誹謗中傷を浴びるケースも存在していた印象がある。

 それは緊急事態宣言下の「休業問題」により、一層表面化した形になったが、パチンコ業界が何年も抱えてきた現象だ。

 そして、その矛先は「パチンコ業界」に留まらず、パチンコ・パチスロライターや動画演者個人に向けられる場面も見受けられる。

 ScooP! tvの七瀬なつみは「一人の誹謗中傷が何万人の声援をも上回ることもある」という内容の発言をし、スターならではの視点で憤った。

 称賛のみが与えられるスターは極々少数であり、大半の有名人は批判と隣り合わせで活動せねばならない。名が広まればファンも批判者も増加してしまうのだ。

 インフルエンサーとしての宿命なのかもしれないが、誹謗中傷を受けた経験を想像させるだけに、説得力は強い。

 また、同じくスター的存在の兎味ペロリナも憤りを露わにした。兎味は「言葉には責任を持つべきだ」という旨の内容をツイート。その文章には荒々しく感情が籠もっている印象を受ける。

 さらに、このツイートのリプライに対して、過去に自身が誹謗中傷を受けていたことを告白。以前は中傷に立ち向かっていったが、現在は可能な限り無視を心掛けているという。

 個人差はあれど、文章を読む上で感情は動いてしまうものだ。それが自分に向けられた言葉であるなら尚更であろう。

 かつてナポレオン・ボナパルトは「四つの敵意ある新聞のほうが千の銃剣よりも恐ろしい」との格言を残した。我々は「言葉」が「武器」に成り得ることを自覚すべきかもしれない。

JRAデアリングタクト無敗の三冠に「黄色信号」!? 「ダービー参戦」先輩ミスオンワードが63年前に歩んだ末路とは……

 24日、東京競馬場で牝馬クラシック第2戦・オークス(G1)が行われデアリングタクト(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)が優勝した。

 無敗のオークス馬は史上6頭目、デビューから4戦目でのオークス制覇はカワカミプリンセス、ラヴズオンリーユーと並んでキャリア最少タイの記録。さらに無敗の2冠達成はミスオンワード以来「63年ぶり」の快挙で、記録づくめの勝利となった。

 デアリングタクトの次走は秋華賞(G1)を目標にしており、近日中に放牧に出される予定となっている。アーモンドアイ、ジェンティルドンナといった名牝ですら達成することができなかった偉業を成し遂げたデアリングタクトには、史上初の無敗の牝馬3冠達成が期待される。

 ここで気になるのが、63年前に無敗の牝馬2冠を達成したミスオンワードのオークス後に歩んだ道のりだろう。

 持ち込み馬として日本に輸入されたミスオンワードは、3歳(現2歳)の10月に京都でデビュー戦を迎える。初陣を飾ると、その後も牡馬相手に連勝を重ねて4戦4勝で3歳シーズンを終え、最優秀3歳牝馬に選出された。

 年明け3月の4歳(現3歳)始動戦も勝利すると、桜花賞では単勝支持率75.4%という圧倒的な人気を集める。見事人気に応え、2着に1馬身3/4差をつける勝利で無敗の桜花賞馬となった。その後、ステップレースを勝利してオークスに挑み、ここでも危なげない走りで快勝して無傷の「8連勝」で2冠達成となった。

 ミスオンワードはオークスの時点で、デアリングタクトの倍のレース数をこなして、すべて勝利しているのだ。時代背景、レースの違いもあり単純比較はできないが、現役最強馬アーモンドアイですら最高連勝記録は「7」ということを考えれば、当時のミスオンワードがいかに最強牝馬だったか理解できるだろう。

 無敗の2冠馬となったミスオンワードだが、次走に選んだレースはなんと日本ダービーだった。圧倒的な強さからファンや関係者の間でダービー参戦を熱望する声が上がり、陣営は難色を示すも世論に押し切られる格好となり、「連闘」でダービー参戦となったのだ。

 その日本ダービーでは3番人気に支持されるも、17着に敗れて無敗記録はストップしてしまった。

 当時、牝馬のレース体系が整備されていなかったことから、ミスオンワードは秋の目標を菊花賞に定める。前哨戦の神戸盃(現・神戸新聞杯)を優勝するも、本番では10着に大敗。その後、現在の重賞にあたるレースでは1年以上も勝ちきることができなかった。

 だが、5歳(現4歳)時にキャリア26戦目となる目黒記念を勝利、続く天皇賞・秋で2着と復調の気配を見せる。そして同年の有馬記念の7着を最後に、通算成績28戦14勝で現役生活に幕を閉じた。

 ミスオンワードの時代には秋華賞もなければ、エリザベス女王杯もヴィクトリアマイルもない。そのため、秋以降は一線級の牡馬相手の戦いとなり、思うような結果を残すことができなかった。幸い、現在は牝馬の重賞レースが整備されたこともあり、秋華賞を目標にしているデアリングタクトはミスオンワードと同じ道をたどることはないだろう。

 63年前にミスオンワードがオークス以降に低迷した轍を踏むことなく、史上初の牝馬3冠をデアリングタクトには期待したい。ミスオンワードはダービー出走を熱望されたが、デアリングタクトはアーモンドアイとの最強牝馬対決実現がファンの最も期待するところだろう。

 ミスオンワードと別の道を歩むデアリングタクトの今後を楽しみにしたい。

安倍首相「黒川検事長の“訓告”は検事総長の判断」はやはり嘘だった! 法務省の“懲戒”判断を官邸が拒否したことを法務省関係者が告発

 この期に及んで、この国の総理大臣はまたも国民に大嘘をついていた──。「賭けマージャン」問題で辞職した黒川弘務・前東京高検検事長の処分を「訓告」としたのは、事実上、安倍官邸だったと、きょう共同通信がスクープしたからだ。  安倍首相は一体、国民にどう説明していたか。22日に...

JRA日本ダービー(G1)「波乱の前触れ」!? 福永祐一、レーン、武豊が揃ってオークス(G1)見せ場なし! 「惨敗トリオ」が抱えるそれぞれの不安

 24日、日曜東京で行われたオークス(G1)は単勝1.6倍に支持された松山弘平騎手のデアリングタクトが勝利。3歳牝馬の頂点に立ち、無敗の2冠達成を成し遂げた。

 内枠を引いたこともあり、好位からの競馬を試みるも厳しいマークが集中し、腹を決めて後方待機からの差し切りを決めた松山騎手の好判断も光る勝利だったといえる。

 これに対し、D.レーン騎手の2番人気デゼルは11着、武豊騎手の4番人気ミヤマザクラは7着、福永祐一騎手の6番人気リリーピュアハートは9着と見せ場なく敗れている。日本ダービー(G1)ではそれぞれサリオス、サトノフラッグ、コントレイルの騎乗を予定している。

 ダービーはオークスと同じ東京・芝2400mのレースだ。いずれも有力馬に騎乗する騎手だけにこの敗戦は、不安材料にもなり得る可能性がある。

 レーン騎手が手綱を取ったデゼルは最内から徐々に外に持ち出したものの、スイートピーS(OP)で繰り出した強烈な末脚は不発に終わり、キャリアの浅さが浮き彫りとなったかもしれない。

 ただ、少々気になるのはレーン騎手の今年の好成績が芝1400~1800mに集中していることである。コース成績については中山よりも東京が上回っており問題はなさそうだが、2000mを越えてから成績が急落しているように、マイル前後が得意距離といえそうだ。

 距離延長を懸念する声もあるサリオス同様、レーン騎手にとっても不安要素となる可能性があるかもしれない。

 武豊騎手は福永騎手から乗り替わったミヤマザクラに騎乗した。オークスでは絶好のスタートを決めながらも中団待機策を取ったが、上がりの速い競馬に対応できないまま、9着に終わっている。

 前走の桜花賞(G1)で同馬に騎乗した福永騎手が3番手につけながら、雨で渋った馬場にノメってポジションを悪くしてしまったことを敗因にあげていたことから、良馬場での開催となったオークスでも積極策が期待された。クイーンC(G3)の勝利も逃げたのは想定外だったとはいえ、強い勝ち方をしたことも確かだった。

 外枠から果敢な積極策で7番人気のウインマリリンを2着に導いた横山典弘騎手の好騎乗が冴えていただけに、武豊騎手が残した「いいポジションでやりたいレースはできた」というコメントには少なからず物足りなさを感じてしまう。

 春G1の不振が目立っているだけにダービー最多5勝を誇る手腕でどう巻き返して来るだろうか。

 福永騎手のリリーピュアハートは管理する藤原英昭調教師が「将来的に長い距離で牡馬相手に勝ち負けできると確信しているので、大事に育てていきたい」と大きな期待を寄せている馬だった。

 確実に出走できるミヤマザクラではなく、抽選突破のリスクもあったリリーピュアハートの騎乗には手応えを感じての選択だっただろう。ところが、スタートでの大きく出遅れが災いしたこともあり、後方から差を詰めただけの結果に終わった。

 レース後のコメントで「今日のレースはそれがすべてです」と福永騎手は悔やんだが、1週前に行われたヴィクトリアマイル(G1)でもビーチサンバで出遅れている。スタートの上手さに定評がある福永騎手がG1の大舞台で2週連続の失態を犯したのは心配である。

 皐月賞のコントレイルは後方待機となったとはいえ、これは出遅れではなく馬が進んでいかなかったため、結果的に後ろからの競馬となったに過ぎない。出遅れが原因による後方からの競馬とは一線を画するものだといえるだろう。

 昨年のダービーでも無敗の2冠達成が濃厚と見られていたサートゥルナーリアが、出遅れで敗れたのは記憶に新しい。まさかの3週連続の出遅れがないことを祈るばかりだ。

 上位人気確実の3頭がそれぞれに不安を抱えるダービーだが、果たしてどのような結果が待っているだろうか。