石橋貴明、芸能界引退を示唆、限界を吐露…「タブーなきお笑い」が今のテレビで困難に

 一時代を築いたあの大物芸人が引退を示唆したとして、一部で話題を呼んでいるようだ――。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4~5月にかけてテレビ各局も新規の収録を避け、過去の映像の再放送や総集編などでしのぐ動きが広まり、自宅待機を余儀なくされていたタレントも多い。そんななか、お笑いタレントの石橋貴明とんねるず)は6月18日深夜放送のラジオ番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)に“突撃”出演した。

 石橋は親しいテレビディレクターで演出家のマッコイ斉藤氏から「オレがあまりにもヒマすぎて、『働け』って」と言われたと明かし、おぎやはぎの矢作兼から、石橋がこの日にTwitterアカウントを開設したことに触れられると、次のように発言した。

「まぁ、ほぼほぼね、戦力外通告だから。『最後の死に場所つくってやる』って、マッコイが言うから。この1年やってみて、ダメならまぁ引退」

 さらに今年59歳になると言った上で、「どこまで最後の自分の打撃ができるか。石橋貴明も、もうユニフォームを脱がされるのか、自分で脱ぐのか。ユニフォーム脱ぐのか、脱がされるのか、どっちかなんですよ」と心境を吐露した。

「番組内で意外だったのは、石橋が後輩の小木博明(おぎやはぎ)から『貴さんはもう戦力外通告受けてるんですよね? もう脱がされてんじゃないですか?』と言われたり、好きなコーヒー豆の話題の際にその銘柄をど忘れしていると『完全にもう引退ですね、貴さん』などと言われても、石橋がまったく気にしている様子がない点です。少し前の石橋なら、とてもじゃないけど後輩芸人にそんな発言を許す空気ではなかった。おぎやはぎとの関係が特別なのかもしれませんが、“あの石橋が、ここまで丸くなったんだな”と感慨深いものがあります」(テレビ局関係者)

タブーのなさが爆笑を呼んだ石橋のスタイル

 石橋といえば、とんねるずとしてデビュー後まもなく『オールナイトフジ』や『夕やけニャンニャン』(共にフジテレビ系)などで大ブレイクし、1990年代には『とんねるずのみなさんのおかげです』(同)や『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』(日本テレビ系)など数多くのレギュラー番組を持ち人気絶頂期を迎えた。

「『みなさんのおかげです』の後継番組である『みなさんのおかげでした』も2018年に終わり、その後に始まった『石橋貴明のたいむとんねる』(フジ)も視聴率低迷で今年3月に打ち切り。現在、石橋のレギュラーは深夜放送の『石橋、薪を焚べる』(同)の1本のみですが、こちらも数字的には苦戦しています。上の世代でいまだに現役感バリバリの明石家さんまやタモリ、ビートたけしなどに比べると、存在感の薄さは否めず、『メガネびいき』ではつい本音を漏らしてしまったのでしょう。

 ただ、1980年~90年代にかけて、とんねるずはテレビ界で一時代を築いたのは間違いなく、もうデビューから40年近くテレビに出続けているわけですから、それ自体スゴイこと。彼らの番組がその後のテレビ界の制作手法に大きな影響を与えたことは確かです。また、石橋はかつて番組1本のギャラが数百万円だった時代もあり、仕事をせずにゴルフ三昧の日々を送っても生活にはまったく困らないほどの蓄えはあるでしょうから、今後は好きな仕事だけして芸能界に残っていくのではないでしょうか」(前出と別のテレビ局関係者)

 また、別のテレビ局関係者は語る。

「石橋の持ち味は、番組内でアイドルとガチでケンカしたり泣かせたり、相手がタレントだろうが素人だろうが蹴りを入れたり海に突き落としたり、女子アナに暴言を吐いて顔をグチャグチャにしたりと、他の芸人では絶対にできないことを平気するところです。“計算をしない”“偶然からお笑いは生まれる”というポリシーで、最近主流の緻密につくられた笑いや『M-1グランプリ』など芸に点数を付けるようなことに否定的だと本人も口にしています。

 そんなタブーのなさが爆笑を呼んできたわけですが、そうした手法は今のテレビでは厳しく、いってみれば今の石橋は“両手を縛られた状態”でテレビに出なければならない状況なんです。本人は相当窮屈に感じていると思いますよ」

 再び石橋が世間から求められる日は来るのだろうか。

(文=編集部)

 

パチスロ「メダルレス化」へ!? ファン必見の「興味深い話題」

 日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)は6月12日、東京都千代田区のパレスホテルにて第40回通常総会を開催した。

 冒頭では兼次民喜理事長が登壇し、旧規則機の経過措置延長などについて言及。6月3日付でエンターライズの代表取締役社長に就任した新井聡司氏が組合加入の挨拶を行った。

 発表した事業方針は「遊技産業を取り巻く状況に適応した開発と環境整備」「健全化及びセキュリティ対策の推進」「啓蒙活動」など。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から「パチスロサミット2020」を中止する旨も伝えた。

 パチスロサミットは同組合と回胴式遊技機商業協同組合の主催によるファンイベントで、2010年7月に日本記念日協会認定のもと8月4日を「パチスロの日」に制定したことにちなんでスタート。

 2018年は6号機の適合数が少ないなどの理由から急遽中止となったが、2019年は9月28日に東京都千代田区のベルサール秋葉原で開催し、1万人超が来場した。

 会場では各メーカーが新台を出展してウルトラ試打会を実施。メインステージではV-tuberらによる機種紹介、人気パチスロライターらによる早押しクイズなどが行われた。

 新機種をいち早く打てる上に、パチスロライターとも交流できる。ファンにとっては激アツ過ぎるイベントなだけに中止は残念極まりないが、今回の総会では、これまたファンにとっては非常に興味深い話題が取り上げられたそうだ。

 その話題とは「パチスロのメダルレス化」である。かねてよりメダルレス化の話は出ていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で供給目標が当初より伸びている模様。ただ、メダルレス化は衛生的であることからコロナ禍の現状、衛生面を含めて現行機との差別化が図れるように早期の導入・普及に向けた施策等を展開すると述べたそうだ。

 現在、一部のパチンコホールではパーソナルシステム(各台計数機)を導入している。パチンコのドル箱を要塞のように積み上げる、或いはパチスロのメダルをギチギチにカチ盛る。パチンコ・パチスロにはそういった面も楽しみのひとつ、優越感に浸れる瞬間のひとつともいえるが、いざパーソナルシステムを使ってみると、意外と便利なものである。

 それだけに、この話題に関してはSNS上でも肯定的な意見が多い。今後の動向に注目したいところだ。

ミストシャワー噴射→気化熱で涼しい折りたたみ日傘が「発想が斬新すぎる」と話題に!

 これから迎える夏本番。厳しい日差しは“日傘”でなんとかしのげますが、せっかくなら“すずしい日傘”で暑さ対策をしてみませんか?

“面白くて役立つグッズ”を日々展開している「THANKO(サンコー)」では、ミストシャワー付きの傘「折り畳みミストシャワーブレラ」(5980円)を展開中。日差しをカットしながらすずしい空間をつくり出せるとあって、大きな注目を集めています。

 同商品最大のポイントは、なんと言っても4方向から噴射される“ミストシャワー”。ミストの気化熱によってすずしい空気を生み出し、自分だけの快適な空間をつくってくれるそうです。

 おまけに撥水機能も施されており、晴雨兼用で使ってもOK。折り畳めば縦260mmまで小さくなるので、バッグに入れてもあまり邪魔になりません。

 バッテリーは充電式で、最大利用時間は約2.5時間。充電残量が25%以下になると、LEDランプが赤く点滅してくれます。

 6月8日に発売されるや否や、ネット上では「傘からミストシャワーとか発想が斬新すぎる」「あの灼熱地獄を考えると、わりとほしいかもしれない」「熱中症対策になりそう」「日傘としても雨傘としても使えるのはけっこうポイント高い」といった声が続出しました。

 日差しや雨をしのげる上に“涼”を感じられる“一石三鳥の傘”。ぜひ、今年の夏は「折り畳みミストシャワーブレラ」で暑さをしのいでみてはいかが?

(文=編集部)

※商品の価格は記事作成時の実売価格です。

JRA“どん底”川田将雅「芝G1・33連敗」「重賞17連敗」脱出へ一筋の光。 宝塚記念(G1)ブラストワンピースは「5年前」の再現次第

 25日、今週末に行われる宝塚記念(G1)の枠順が発表された。過去10年で7勝している絶好枠「8枠」の行方に注目が集まった。

 そんなラッキー枠を引き当てたのはクロノジェネシス、カデナ、ブラストワンピースの3頭。その中でも、大外枠を引き当てたブラストワンピース(牡5歳、美浦・大竹正博厩舎)に期待がかかる。

 一昨年の有馬記念(G1)勝ち馬で、出走メンバーで唯一グランプリ春秋制覇の挑戦権を持っているブラストワンピース。今年は始動戦のAJCC(G2)を制し、順調な滑り出しとなったが、前走の大阪杯(G1)では行き脚がつかず後方からの競馬となり7着に敗れた。

 この敗戦について大竹調教師は「スタートで勝負がついた感じ。結果は前に行った馬で決まってしまい、不完全燃焼でした」とコメントしている。

 前走は3枠からの発走だったため、すぐに前が詰まってしまい後方の位置取りとなった。だが、2走前のAJCCはスタートが良かったわけではないが、8枠からの発走だったため前が塞がることなく、1コーナーまでに先団にとりつくことができたのだ。大外枠から発走する宝塚記念では、位置取りという課題をクリアできる可能性が高いのではないだろうか。

 また、梅雨の天気も好材料となる。これまで国内レースの良馬場以外での成績は3戦3勝と道悪を得意としている。日曜にかけて天気予報も曇りか雨マークが並んでおり、宝塚記念の当日は馬場が渋ることが予想される。稍重で制した有馬記念の再現といきたいところだ。

 そして何より川田将雅騎手に復調気配があることが好材料だ。

 現在、芝G1「33連敗中」で、JRA重賞も「17連敗中」の川田騎手。最近は大舞台でなかなか活躍することができていない。だが、24日の帝王賞(G1)をクリソベリルで制したことで、復調の兆しがあるかもしれない。

 実際に、今年のAJCCをブラストワンピースで制した3日後には、チュウワウィザードで川崎記念(G1)を勝利。さらに4日後には、アウィルアウェイでシルクロードS(G3)を優勝と8日間で重賞3勝の固め打ちをしている。今回も同じく勢いそのままに宝塚記念制覇に期待がかかる。

 また川田騎手の宝塚記念といえば、2015年のラブリーデイでの優勝が思い出される。

 ゲート内で大きく立ち上がった隣のゴールドシップをしり目に、大外の16番枠から好スタートを決めたラブリーデイ。最初の直線で2番手につけ、好位からの競馬となった。最後の直線では残り200mで先頭に立つと、後続の追撃を退けて押し切り勝ちを決めた。

 まさに今回のブラストワンピースに求められる理想のレース展開なのかもしれない。川田騎手にとってはラブリーデイの再現をできるかどうかがカギとなるはずだ。

「いい位置につけて、あとはリズムよく運ぶことができました。この馬にとっても終始いい流れでした。道中は手応えよく、馬場もこなしてくれました」

 5年前の川田騎手のコメントだ。これをもう一度、聞けることに期待がかかる。

 勝つための条件が整ったブラストワンピース。重賞の連敗脱出に一筋の光が差し込んだ川田騎手。揃って春のグランプリで復活を遂げることができるだろうか。

博報堂の神田さんは、考え抜くことで 難題を突破していた。 ~2019年「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」 W受賞記念対談

4月に発表された2019年クリエイター・オブ・ザ・イヤー(主催=日本広告業協会)は、史上初の2人選出となり、博報堂の神田祐介氏と電通の川腰和徳氏が受賞しました。これを記念して、博報堂のウェブマガジン「The Central Dot」と「ウェブ電通報」の共同企画としてインタビューを実施しました。

CMプランニングを中心に活動してきた神田氏と、アートディレクションをベースとする川腰氏。バックグラウンドの異なるお互いへの質問も交えて、取材は二人同時にリモートで行いました。図らずも、中長期的に社会全体の価値観が変化する時期を迎えている今、これから企業の期待にどう応えたいか、生活者の感じ方をどう捉えているかといった意見も聞いています。

今回は神田氏のインタビューをメインに、二人のやりとりをご紹介。「The Central Dot」掲載の川腰氏のインタビューもぜひ併せてご覧ください。

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リモート取材中の神田氏(左上など写真4点)と川腰氏(左下など写真4点)

提案を100%実現できた「連続10秒ドラマ『愛の停止線』」

──受賞おめでとうございます。この受賞はご自身にとってどのような意味を持つか、今のお気持ちを聞かせてください。

神田:歴代の受賞者の方々は、僕がずっと憧れて尊敬してきた方ばかりで、まさか自分がというのが正直な感想です。ずっと獲りたいと、でもちょっと自分には無理だろうと思っていた賞でした。

今、クリエイティブにはいろいろなスタイルが出てきていますが、自分はCMプランナーという専門技能と向き合うと決めて、映像プランニングの技術を磨いてきました。専門技能を磨き切る道には孤独も付きまとうし、苦労も多かったんですが、どんな環境下でも信念を曲げずに進んできた先に頂けた賞だったので、本当にうれしかったです。同じように悩みながら専門技能を伸ばそうとしている若い人の励みになれば、なおのことうれしいです。

──受賞理由として、「タクティー jms 連続10秒ドラマ」の開発や、テレビドラマ「きのう何食べた?」の企画監修など、新鮮でクオリティーの高いコンテンツを生み出す手法が評価されていました。ご自身の仕事でターニングポイントになったものというと、やはり連続10秒ウェブドラマですか?

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タクティーのカー用品ブランド「jms」の連続10秒ドラマ「愛の停止線」(画像をクリックすると公式YouTubeチャンネルで動画をご覧いただけます)

神田:そうですね。jms(ジェームス)のウェブドラマは、僕が入社してから初めて、自分がやろうと思ったことがほぼ100%実現できた仕事です。広告の仕事って、実現までの間にどうしてもいろいろな事情や現実的な問題が発生して、それに対応していくことが多いですよね。制約がプラスに働くこともありますが、クリエイターが正しいと思うことや貫きたいことを必ずしも実現できるわけじゃない。この仕事ではそれが100%かなって、SNSでもコアファンが多く生まれるくらい皆さんに楽しんでもらい、さらに国内外の広告賞でも評価を頂けて、とても感慨深いです。

10秒という秒数設計や、車を舞台にした大人の恋愛ドラマという内容など、ちょっと挑戦状を差し出すような提案をしましたが、クライアントさんのクリエイティブに対する理解がとても深くて。第1弾として1~7話を制作して以降、どんどん続編制作が決まり、現在28話まで公開されています。

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「愛の停止線」公式サイトより。いずれも、わずか10秒に感情の起伏と話の進展を盛り込み、フィーチャーする商品をオチに据えている。

──これは本当に、中毒性があるというか、全部見てしまう力がありますね。そもそもどのような課題から、10秒という設計に至ったのですか?

神田:ジェームスは担当して3年ほどたつのですが、最初の相談はウェブを使ったジェームスの認知獲得でした。話を聞く中で、単に認知を上げればいいのではなく、とても品ぞろえが豊富でメンテナンスメニューも多いジェームスの特徴が印象に残るようにしたいと考えました。

とはいえ、1本の長尺動画であれこれ商品を紹介してもウェブ動画としては鮮度がないので、短尺動画で商品を連発する方が今の時代は効果的なんじゃないかと考えました。短尺で、1本見たらやみつきになって続きがどんどん見たくなるような設計。狙っていたのは、動画配信サービスで連続ドラマを次々と徹夜で見てしまうサブスクリプションのコンテンツのような「一気見」です。ああいう気分を広告でもできないかな、と。

プロフェッショナルって、何だろう?

──そんな考えから、連続10秒ドラマというアイデアに着地したと。

神田:そうですね。動画の世界って、プロフェッショナルの線引きが今どんどんなくなってきていると感じています。広告としての動画より、一般の方が投稿している動画の方が、はるかに面白かったりすることもありますよね。

──ありますね。

神田:皆がどんどん動画を撮ってアップしていく世の中になった今、ではプロフェッショナルって何だろう?と、ふと考えたんです。そのとき、広告動画のプロじゃないとつくれないウェブ動画を制作できたら、新しいコンテンツに見えて埋もれずに注目を集められるんじゃないかと。では、プロとしてCMプランナーだからつくれるものは…と考えて、ちゃんと感情の起伏とストーリーを描ける最小限の秒数で、かつ毎回しっかり商品に落とし込む連続10秒ドラマというアイデアに行き着きました。

テレビCMと違って、ウェブ動画はフレームの下に残り秒数が表示されますよね。なので、広告に従事していない一般の方にも「本当に10秒だ」と分かるし、10秒にこれだけ詰まっているインパクトも伝わると考えました。プロフェッショナルの技術を体感してもらえる、ウェブ動画ならではの特性がマッチしたと思います。

──他に、印象深かった仕事はありますか?

神田:若手の頃の話ですが、博報堂クリエイティブ・ヴォックスで8年ほど、岩本恭明さんと井村光明さんの下でファンタの広告の仕事をしていました。会社に入っていちばん最初に参加したのが、ファンタの「先生シリーズ」の企画打ち合わせで。企画案が説明されるたびにみんなで腹を抱えてずっと笑っていました。

後にも先にも、そんな打ち合わせはファンタだけでしたが、そのときに「プロってこんなにレベルの高い面白さを出し続けなきゃいけないんだ」「相当努力しないと自分はCMプランナーとして通用しないんだ」と、プロで生きていくことの厳しさを痛感しました。その体験が今もすごく役立っています。

井村さんの背中を見て学んだのが、できてもできなくてもとにかく考え続ける、考え抜くことの大切さです。つくる上で、やはりいろいろと制約が出てきても、井村さんは妥協していなかった。だから僕も、クライアントに受け入れられるか分からなくても、とにかく考え抜くことは譲らずにここまで来たという感じです。

言葉やせりふがふとした瞬間に手掛かりになる

川腰:ひとつ質問してもいいですか?僕、ジェームスの作品がとても好きで、ああいうのを自分もつくりたかったという、ちょっと嫉妬にも近いうらやましさがあるんです。笑いをつくれるって、やっぱり最強です。決して有名タレントを起用しているわけじゃなくても、アイデアと技術でノンバーバルでも通用するくらいの笑いを生み出して、どんどん引き込んでいく。続けて見ていくうちに、1本ごとのクオリティーが保たれたまま大きなうねりになって、広がりが出てくる、そういう設計は本当にすごいと思っています。

お聞きしたいのは、ああいったアウトプットの一方で、インプットはどんなことをされているのかな、と。日々どんなアンテナを張っているんですか?

神田:実は、あれこれインプットしなければ、とはあまり意識していないですね。僕、昔からテレビが好きで。

川腰:あ、僕もです(笑)。

神田:そうなんですね(笑)。自粛期間中や、ふだんから休みの日とかは、ずっと家でテレビをつけています。特定の番組を見るというより、流している。その中で聞こえてくる言葉やせりふが、自分の中に蓄積していっている感じはします。企画しているときに、ふと思い出して人物のせりふのヒントになったりしますね。

でもそれ、自分では若干コンプレックスなんです。川腰さんは企画のプロセスを、アウトプットのイメージから考えていくと話されましたが(※川腰さんインタビューより) 、僕は“絵”から考えられないんですよ。言葉やせりふの語感というか、音から始まる感じですかね。

川腰:音から?なるほど。

神田:そのときどきの戦略や課題から、ある程度ロジカルに積み上げていくと、こういう設定やストーリーがいいんじゃないかというのが絞り込まれてきます。じゃあそこにどんな表現がマッチするか、分かりやすく伝わるかなと思考していく際に、せりふの流れや語感でまずは背骨をつくっていくような、そんな回路です。

企画の仕方はケースバイケースですが、商品周りの切り口と、商品とまったく関係ない自分の関心や皆が今面白がりそうなこと、両方向から情報を整理して接着させていく感じですかね。ここが全然つながらなくて、自分はなんて才能がないんだとよく思ったりもします。

どの価値を描けば今の世の中と接着できるか

──では、少しこの先のことを聞かせてください。この半年、私たちは未知の事態を経験しました。企業は広告費を含めた投資の見直しが迫られていますし、生活者の価値観が変われば広告も変わると思います。それらを今どのように捉えていますか?

神田:短期的には、大きな予算をかけずにデジタルでピンポイントに認知を獲得しようという企業が今よりも増えると思います。また、予算やチャネルがどう変わるとしても、そもそも「オリエンを受けてプレゼンする」という仕事の流れ自体が変わりそうだと感じています。生活スタイルも、価値観や感じ方も大きく変わる新しい生活様式の中では、以前の商品価値も響きにくくなったりするので、オリエンがすごく立てにくくなるんじゃないかと。

例えば今後も在宅勤務やリモート会議が浸透すると、オンタイムとオフタイムの垣根がなくなっていきますよね。その新しい生活様式では、缶コーヒーやエネルギー飲料のリフトアップ表現がたぶん、ピンとこなくなる。

──「今から気合を入れよう!」みたいな切り替え自体がなくなる?

神田:そう。だから、改めて商品のどの価値を描けば大変革の今の世の中と接着できるのか、クライアントやマーケターだけではなくクリエイターも含めて考えるようになっていくと思います。

緊急事態宣言は明けましたが、まだ不安なムードが強いですよね。しばらくは、商品の価値を世の中とロジックでつなげるより感情で接着させていく方が、生活者の気分と握手できるんじゃないでしょうか。従来のストラテジーの立て方も、たぶん通用しなくなっていくのでは。

クリエイティブの考え方も変わりそうです。CMプランナーとして、映像の観点で考えていくと、すでにアウトプットのクオリティーコントロールの仕方が変わっています。従来のマス広告がよそゆきの、オンの表現だとすると、テレビ番組やCMをリモートでつくるしかなくなった状況下では、もっと自然体で飾らないオフの表現が浸透しやすくなってきています。もちろん高いクオリティーの広告も残りますが、アウトプットのクオリティーの幅が広がっています。

今後は、予算内でクオリティーを追求するのではなく、課題に対して「そもそもアウトプットのクオリティーをどのレベルに設定するか」という部分もプランニングに含めていく、そんな思考プロセスになるんじゃないかと思います。

──ありがとうございました。最後に、これから広告やクリエイティブの仕事をしていきたい人へ、メッセージを頂けますか?

神田:広告業界や、広告の仕事の仕方が変わろうとしている中で、今回このような大変な状況が重なって、これから考え方や働き方の変革が加速していくと思います。広告会社は広告を扱うだけでなく、コミュニケーション全般を担う会社なので、さまざまな領域のトップクラスの方々から学びながら相当濃厚な経験を積めるはずです。

なので、今から広告業界に入るのは「得なことしかない」と思いますね。人生を懸けてコミュニケーションの世界にどっぷり漬かるのも、広告業界を通過点として異業種に行ったり起業したりするにしても、長いスパンで人生を考えたら絶対にプラスになると思います。

■クリエイターの横顔を探る一問一答■
せっかくの2社合同企画なので、最後に一問一答でお互いの会社についての意識プラスアルファを聞いてみました。意外な共通点も浮かび上がりました!

【神田さん編】
Q1.もし電通社員だったら、どんな仕事をしてみたい?
A1.変わらずCMプランナーかなと思いますが、今よりもう少しメディアの部分からクリエイティブに携わってみたいです。

Q2.なぜ電通に入らなかった?
A2.入れませんでした(笑)。

Q3.憧れの電通人はいますか?
A3.大好きな人が多いんですが、一人挙げるなら、CMから映画まで縦横無尽にすばらしい映像をつくられている澤本嘉光さん。作品がいつも実験的でハッとさせられます。企画で行き詰まると、澤本さんだったらどう組み立てていくかな、と考えたりします。

Q4.広告業界以外で、影響を受けたことは?
A4.漫画ですかね。いろいろ読むというより、小さいころから同じものばかり読んでいます。「ドラえもん」と「こち亀」(こちら葛飾区亀有公園前派出所)が好きです。

Q5.生まれ変わっても、今の仕事をしますか?
A5.しないかも。この仕事が大変だからとかじゃなくて、せっかく生まれ変わるなら、全然違う仕事をしてみたいです。パンが好きなので、パンを焼くかな。

レストランは食べるための場所ではなくなる!? withコロナ時代のフードエンターテインメントとは?

食生活ラボの未来食プロジェクト「食ラボ研究員が行ってみた!未来の兆し体験レポート」連載の第2回は、「レストラン・フードエンターテインメント」がテーマです。食ラボ研究員の渡辺がお届けします。

当初、3月を目標に、テクノロジーがレストランをどう進化させるのか?という視点で、都内レストランの体験レポートを書く予定でしたが、コロナウイルスの影響が大きくなり、このタイミングでの掲載となりました。

コロナの影響を受け、レストラン自体の存在が危機的な状況となっている中、レストラン・フードエンターテインメントの未来予測は大きく変わろうとしています。

今回は、体験レポートを振り返りながら、withコロナ時代におけるレストラン・フードエンターテインメントがどんな未来を迎えるのか先読みしたいと思います。

空間を拡張するテクノロジーの活用

レストランエンターテインメントの代表格といえばARやプロジェクションマッピングなどの技術を駆使し、空間を拡張させる演出で、私たちを楽しませてくれるというもの。

今では、プロジェクションマッピングはそう珍しいものではありませんが、「食」と一緒になった場合、いったいどんな感覚になるのか。食べるという行為にどんな変化や新しさをもたらしてくれるのか、実際に体験してきました。

プロジェクションマッピングを活用したレストラン
プロジェクションマッピングを活用したレストラン


頂くのは「食べ物」だけではなく、「ストーリー」

今回、都内にある二つのレストランを訪れましたが、プロジェクションマッピングで投影された空間は、まるで別世界にいるかのような感覚になります。どちらもコースメニューで提供しており、ウエルカムドリンクからデザートまで、食材の選び方、調理法や味付け、食べ方に至るまで緻密にストーリーがつくられています。

自分が空間の一部となり「ストーリーを食べる」という体験をすることができます。

ストーリーの切り口はそれぞれのお店で違うのですが、一方のお店では、食べる前から物語がスタート。案内人について暗闇の部屋に行くと、そこにはこれから始まる物語のプロローグが準備されており、世界観に没入する仕掛けを設けていました。

食事が始まるまでの導入として、別室で物語を読んだり演じたりする
食事が始まるまでの導入として、別室で物語を読んだり演じたりする

自分がストーリーの一部になった感覚で食べる料理は、まるで観劇をしているような楽しさがあります。

運ばれてくる一皿ごとに進むストーリーのおかげで、そこに込められた料理人の思いや構想が情報としてインプットされるので、より繊細に感じ取ることができました。

テクノロジーで「旬」を拡張

また、日本の四季の移り変わりを体験の軸としているお店では、お皿の料理だけではなく、テーブル、空間全体を使って味わうことになります。

風、鳥、虫の声と共に、空間いっぱいに投影される自然。
都内に居ながらにして、違う場所へと旅に出た感覚です。
インタラクティブな要素もあり、その空間との関わりに感覚が刺激されます。

お皿を置くと川の流れが変わったり、本当に水を触っているような感覚になる
お皿を置くと川の流れが変わったり、本当に水を触っているような感覚になる

食に「旬」は欠かせないものですが、環境全体を使って季節を感じることによって、自然の尊さや有難みを更に感じることができました。

このように、テクノロジーと共に進化するレストランエンターテイメントは、「おいしい!」だけではない、その先に「楽しい!」があることを実感しました。

そしてそれをつくり出すのは、お店を入った瞬間から出るまで完璧な体験設計です。空間拡張や演出もこの体験設計の上に成り立っています。

テクノロジーが可能にする近未来レストラン

体験設計に関しては、他にも事例があります。

中国では完全無人のロボットレストランが誕生しています。料理の注文から、会計、調理、配膳、サービスをロボットにより自動化し、サービス・品質を標準化した最新型レストラン。お客さんは自分のスマホアプリで、注文と同時に会計も完了できるという徹底ぶり。中国全土で着実に店舗数を増やしています。

ちなみに、今後は無人スーパー、そしてスマート物流を組み合わせることで、消費、物流、飲食業のビッグデータを活用したスマートコミュニティーの構築とスマートシティーの実現を目指しているそうです。

「便利」というエンターテインメント

これらの無人レストランでの体験を想像すると、全行程をロボットのみで対応するという近未来感があるだけはなく、レストランでありがちな、

・店員さんを待つ時間
・混雑時、料理が届くまでの長い時間
・会計をする時間

などの無駄な時間がなくなるので、ストレスも減るに違いありません。

テクノロジーの力を借りて、徹底的に無駄な時間を減らし便利にする。
未来の食事をさらに楽しくする要素として、「スムーズ」かつ「便利」に体験できるということは、エンターテインメントの大事な要素になるのではないかと思います。

withコロナ時代にレストランの未来はどうなる?

これを書いている6月現在、コロナの影響はまだゼロにはなっておらず、都内のレストランは条件付きの中で試行錯誤の営業をしています。

外食業の事業継続のためのガイドライン」(発行:日本フードサービス協会、全国生活衛生同業組合中央会)には、飲食店事業継続のためのさまざまな事項が記載されています。

例えば、飛沫感染予防のための、パーテーションの設置。さらには現金でのやりとりを避けるため、可能であれば電子マネーなどの非接触型決済を導入するなど。

今後は、withコロナ時代にマッチした対策と配慮をしながら、レストランでの体験設計を模索する必要があります。

「場」の価値はどう変わるか?

レストランという「場」の価値が大きく変わっていくことを感じさせる、こんな事象もありました。

アメリカでは宅配専門「仮想レストラン」という業態があり、コロナの影響で宅配注文が増加。実はこの仮想レストラン、大手飲食店のキッチンで作られたものを別の名義で提供したり、シェアオフィスのように他の飲食店とキッチンをシェアするというもの。なので、地元のピザ店だと思って注文したところ、実は大手チェーン店で作られたものだったと判明するということが起きています。

地元のお店の支援をしたくて頼んだのに、その実態は大手チェーン店であったことから、利用者からの批判があるものの、コロナ禍の困難に立ち向かう飲食業界にとっては、場所や土地代、給仕するスタッフの必要ないためコストを圧縮でき、今後も増えると予想されています。

仮想レストランの可能性

生活者の認識と実態がかみ合わない部分を解消する必要はありますが、「仮想レストラン」という概念、何か新たな可能性を感じませんか?

オンライン飲み会などの経験を得て、「場」にとらわれない集い方に注目が集まる中、テクノロジーの進化と普及で、自宅に居ながらにフードエンターテインメントを楽しめる可能性は一段と広がるでしょう。

オンラインでの仲間との集まり方、さらには、同じ仮想空間に集まる人同士のつながり方。食事の提供の仕方と自宅での再現性の工夫。レストランからのおもてなし、ホスピタリティーに至るまで。

料理人だけではなく、テクノロジストや演出家とのコラボレーションで、新しい体験設計の可能性は広がりますし、自宅がレストランの役割を果たす、なんてこともあるかもしれません。

一方で、それによって、レストランの「場」の価値が下がるでしょうか?

私はそうは思いません。むしろ、今以上に意味を持つことになるのではないでしょうか。今後、人が集まるような場は神殿化され、リアルでしか体験することのできない食事の幸福度は増し、貴重に、そして尊いものになっていくでしょう。

未来のレストランのニューノーマル、そして新しい体験が今後どのようなものになるのか、とても楽しみです。

最後に

タイトルにある、「レストランは食べるための場所ではなくなる!?」という問い。当初は、主に、テクノロジーによる体験の拡張の可能性を込めていましたが、withコロナ時代においては、人との結びつきを強め、確かめる場所という意味が強くなるのではないか…と思っています。

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クライアント共創の「新しいカタチ」

2018年7月から、Dentsu Lab Tokyoで客員主席研究員を兼務しています、木下です。主務は、NTT研究所の主席研究員・研究部長で、最先端技術を東京オリンピック・パラリンピックに活用し、新しいスポーツ観戦や障害者支援、混雑緩和などを目指すプロジェクトを率いています。スポーツに限らず、歌舞伎 [12] や音楽ライブ [3] 、アート [4] へのICT活用プロジェクトも推進してきました。

これまで、Dentsu Lab TokyoとNTT研究所は、共同プロジェクト[5]の一環としてさまざまなプロジェクトを共創してきました。私は、ときにクライアントとして、ときにパートナーとして、ときにその中間的な立場として、さまざまな関わりを持ちました。本記事では、そうした新しい共創のカタチについてご紹介したいと思います。

クライアント共創の新しいカタチ
クライアント共創の新しいカタチ

まず、本文の理解を助けるために、NTTグループの組織構造をご紹介します。
NTTグループは、持ち株会社である日本電信電話株式会社、その配下の主要五事業会社、NTT東・西、ドコモ、コミュニケーションズ、データ、さらにその傘下の900社以上の事業会社から構成されます。私が所属する研究所は持ち株会社に属し、主要五事業会社から預かる研究開発費を基に研究開発を行い、その成果を還元することによってグループに貢献します。すなわち、NTT研究所にとって事業会社は「クライアント」でもあるわけです。電通から見た場合、研究所も含めてNTTグループ全体がクライアントでもありますが、同じクライアントを持つパートナーという見方もできるわけです。

それでは、新しいクライアント共創の実例として、「NTTドコモ FUTURE-EXPERIMENT」をご紹介します。

クライアントの枠を超えた、「パートナー」として

本プロジェクトは、2020年代を見据えたNTTグループの最先端通信テクノロジーを活用し、これまでにない高臨場感や新体験を伴うエンターテインメントに挑戦するプロジェクトです。特徴は、従来のプロモーションとは異なり、先端技術をリアルに活用し、それをライブとして届ける一発本番タイプのプロジェクトであり、観客だけでなく、出演者、制作者全員が、真の意味での臨場感とリアリティーを体感できることです。

それが実現するまでには、さまざまな課題がありました。
まず、世の中のスポーツやライブ体験の概念を刷新するために、ドコモの5Gだけでなく、NTTグループの先端通信技術をどのように活用できるのか?また、それを単なるイメージとしてではなく、リアルに伝えるためには、先端技術を実利用し、ライブで失敗なく届ける必要があります。このリアルなテクノロジーをライブで活用するというDentsu Lab Tokyoのこだわりは、まさに通信会社の研究員である私の最も共感する部分であり、彼らと一緒に仕事をしたいという最大のモチベーションにもつながっています。

NTT研究所は、こうした課題に対し、単なる発注者とクライアントという関係性を超え、Dentsu Lab Tokyoと初期の段階から一緒に企画検討しました。どういった通信技術が使えるのか、それによって体験がどう変わるのか、実証にはどんな実装が必要か、ライブで失敗しないためにはどういったバックアップが必要か、それはNTTのプロモーションとして効果的か、など、単なるプロモーション企画を超えた、大きな共同実験プロジェクトそのものでした。また、その企画を電通と一緒にドコモに提案するなど、あるときはエージェント側の人間としても動きました。

FUTURE-EXPERIMENT 第1弾「Vol.1 距離をなくせ。」
FUTURE-EXPERIMENT 第1弾「Vol.1 距離をなくせ。」

さらに、企画だけでなく、実際のシステム構築や運用など実施面でも協業しました。FUTURE-EXPERIMENT 第1弾「Vol.1 距離をなくせ。」[6] では、Perfumeメンバーが世界3都市に分かれて、同期ライブを行いました。その、東京―ロンドン―ニューヨークの研究用国際ネットワークGEMnet2 [7] や会場アクセスネットワーク、さらに3拠点の完全同期通信を実現するAdvanced MMTシステム [8] の構築と運用は、NTT研究所メンバ自らが、Dentsu Lab Tokyoメンバーと一緒に汗をかきながら取り組んだものです。

特に、国際ネットワークの構築や会場アクセスネットワークの構築は、最短でも半年かかるところを、その半分以下の期間で構築する必要があり、米・欧州の研究用ネットワーク機関や、アクセスネットワーク業者との調整など、かなり苦労がありました。さらに、テスト期間も短く、ネットワーク品質が安定しない時もあり、本番直前のぎりぎりまで、通信パラメーターの調整が続きました。

当時は、「Perfumeのシンクロや通信技術のすごさは伝わるけど、なぜわざわざ3人をばらばらにする必要があるの?」というファンの声も頂きましたが、このコロナ禍で物理的な距離やつながりの大切さを痛感する今となっては、コミュニケーションの本質を体現し、いろいろな意味を含む作品となりました。

FUTURE-EXPERIMENT 第4弾「Vol.4 その瞬間を共有せよ。」
FUTURE-EXPERIMENT 第4弾「Vol.4 その瞬間を共有せよ。」

次に、FUTURE-EXPERIMENT 第4弾「Vol.4 その瞬間を共有せよ。」[9] では、Perfume年越しコンサートで観客1万2000人のWi-Fi同時接続によるファンアンケートを実施しました。

これだけ多人数の観客を同時一斉接続し、安定したWi-Fi通信を実現するためには、多くのWi-Fiアクセスポイント装置の設置が必要となりますが、単純に設置数を増やせばいいというものではありません。設置数が増え過ぎるとそれぞれの電波干渉が増加し、かえって接続が不安定になり、通信速度が低下してしまいます。この課題を解決する技術が、NTT研究所の高効率Wi-Fi技術です。この技術は、それぞれのアクセスポイントからの電波の出力を最適化し、干渉を最小化することによってWi-Fi接続数と通信速度を最適化します。

高効率Wi-Fi技術の適用以外にもさまざまな課題がありました。
まず、スマホを持ってない人や、古い規格のWi-Fi対応スマホしか持っていない人にも参加してもらうために、対応スマホを貸し出す必要がありました。また、Wi-Fi接続と、アンケートウェブサイトにアクセスするための手順を伝え、事前確認してもらう必要もありました。

NTT研究所は、事前に会場図などを用いて最適なWi-Fiアクセスポイントの設置台数や場所をシミュレーションし、コンサート前の数日間で、百数十基のアクセスポイントを設置、調整しました。また、電通は、1000台もの対応スマホの貸し出しや、Wi-Fi接続手順やアンケートサイトへのアクセス手順の通知と確認を徹底しました。その結果、コンサート開始前には、ほぼ1万2000人全員の事前接続が確認できました。本番では、ほとんどの方の同時一斉接続を実現できましたが、一部接続ができない方もいるなど、まだまだ技術面や運用面での改善点が見つかりました。

われわれの知る限りでは、本プロジェクトのWi-Fi同時一斉接続数は世界一だと思います。
今回、NTTの高効率Wi-Fi技術と、電通の対応スマホの準備や接続方法の徹底などの両方が組み合わされて初めて実現した共創でした。

このように、普通であれば、NTT研究所は、クライアントであるドコモの裏に控え、電通からの提案に対して、コメントやアドバイスをするだけの立場だったかもしれませんが、今回は、一緒に企画を検討し、その実装・運用にも責任を持ち、現場で最後までやり遂げました。最終的に無事成功したときの達成感は、クライアントだけのそれでもない、パートナーだけのそれでもない、両方の立場ならではの達成感でした。これこそが、真の意味でのクライアント満足であり、新しいクライアント共創のカタチだと思います。

キーワードは、「シード・クリエイティブ」

「NTTドコモ FUTURE-EXPERIMENT」の他にも、さまざまな共創事例があります。

NTT研究所とDentsu Lab Tokyoの共同展示作品:+3人称電話
NTT研究所とDentsu Lab Tokyoの共同展示作品:+3人称電話

まず、2018年10月に開催した、ICC特別展OPEN STUDIO リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC「“感じる”インフラストラクチャー 共感と多様性の社会に向けて」[10] において、両組織のメンバーが共同で作品を制作し、展示しました。共同制作を通じて、今の時代のコミュニケーションの本質や限界などを、それぞれの立場で考え、具体的な作品として表現するいい機会となりました。

Dentsu Lab Tokyo岡村氏によるスポーツ観戦の再創造展のビジュアル
Dentsu Lab Tokyo岡村氏によるスポーツ観戦の再創造展のビジュアル

次に、2019年7月に実施した、NTT研究所主催の「スポーツ観戦の再創造展」 [11]では、ビジョン構築、タイトル・ステートメントのコピー制作、ポスターやウェブサイト制作など企画面でDentsu Lab Tokyoに協力いただきました。ディスカッションを通して、NTTの思い描くビジョンやストーリーを、具体的な言葉やビジュアルとして、具体化していただいたおかげで、伝えるべき展示の価値を再認識するいい機会となりました。

新国立競技場オープニングイベント ONE RACE
新国立競技場オープニングイベント ONE RACE

最後に、2019年12月に実施した、新国立競技場オープニングイベント ONE RACE [12] においては、東京―パリ―LA間を結ぶ、国際通信ネットワークと同期通信技術に関しても協力させていただきました。NTT研究所は、Dentsu Lab Tokyoと企画段階から通信技術のフィージビリティーなどを共同検討するとともに、NTTグループ側の総合プロデュース的な立場として、ネットワークサービスを担当するNTTコミュニケーションズとの役割調整や、協賛方法などグループ全体の座組み整理も実施しました。このビッグプロジェクトを効率よく想定通りに実施できたのも、さまざまなプロジェクトを通じて築いてきた「共創」の結果だと思います。両組織には、これまでの共創を通じて、一体感や信頼感といった共創の基礎が築かれており、その上に、それぞれのビジョンや価値、得意・不得意な面、課題が既に共有されていたため、うまくいったのだと思います。

電通は、クライアントと共に事業を育てていく、クリエーションの方法論「シード・クリエイティブ」[13]を提唱しており、トヨタ自動車の「OPEN ROAD PROJECT」でも実績を上げ始めています。

「シード・クリエイティブ」は、最終段階である広告表現の領域だけでなく、初期段階の課題検討、商品企画、製造などさまざまな段階からエージェンシーも参画し、クライアントと共創する方法論です。今回、私が紹介したプロジェクトの共創は、最終段階の広告表現に関するものでしたが、次の段階としては、研究開発の企画段階から共創し、開発からビジネス化、プロモーションに至るまで、「シード・クリエイティブ」をDentsu Lab Tokyoと共創していきたいと思います。

今回、われわれは、「教科書的な共創」ではなく、いくつも実践を積み重ね、「実効的な共創」へと進化させてきました。この経験は、われわれがめざすシード・クリエイティブ的な共創、すなわち、クライアント共創の新しいカタチに必ずつながるものと信じています。


 
【参考文献】

 

[1] 木下, 南, 岡崎, 野間, 横澤, 岩城, “歌舞伎×ICTによるエンターテインメントの進化,” 電子情報通信学会誌 Vol.100 No.11 pp.1169-1175 Nov 2017. 

 

[2] NTTニュースリリース「南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」を開催」
2019.3.25

 

[3] NTTニュースリリース「SXSW2017にてイマーシブテレプレゼンス技術Kirari!®による音楽ライブショーケース“CYBER TELEPORTATION TOKYO at SXSW”を実施」2017.3.7

 

[4] NTTニュースリリース「NTTと世界的なメディアアート研究機関アルスエレクトロニカ・フューチャーラボが「ICTとアートの融合」によるユーザ体験の高度化に関する共同研究を開始」2016.9.8

 

[5] 電通ニュースリリース「Dentsu Lab TokyoとNTTの研究所、クリエーティブとテクノロジーの融合で、新たな感動体験を創造する共同プロジェクトを始動」2018.10.11

 

[6] NTTドコモ FUTURE EXPERIMENT vol.1 距離をなくせ。

 

[7] 下村, 半田, 増田, 魚瀬, 井上, 中山, “研究開発用テストベッドネットワーク「GEMnet2」,” NTT技術ジャーナル Aug. 2012

 

[8] 外村, 今中, 田中, 森住, 鈴木, ““超高臨場感ライブ体験(ILE)の標準化活動について,” ITUジャーナル,Vol.47,No.5,pp.14-17, 2017.

 

[9] NTTドコモ FUTURE EXPERIMENT vol.4 その瞬間を共有せよ。

 

[10] ICC特別展OPEN STUDIO リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC「“感じる”インフラストラクチャー 共感と多様性の社会に向けて」

 

[11] NTT研究所 スポーツ観戦の再創造展

 

[12] ONE RACE – 国立競技場オープニングイベント
 

[13] 志村, 佐々木, “カンヌで世界に発信した“Seed Creativity”とは?” 電通報, 2017.7.21