パチスロ「高射幸性機」3機種が「引退」へ…7月の「撤去予定&撤去を免れたマシン」リスト

 新型コロナウイルスの猛威が収まらぬ中、気が付けば7月。今月も多くのパチスロが「従来の」認定期間満了を迎える。

 まず、7月6日はメーシーの『やじきた道中記乙』。周期抽選を主な突入契機とする1G純増約2.5枚のAT「やじきた祭」が出玉増加の主軸で、AT初期ゲーム数は登場キャラごとに獲得期待度が異なる「あっぱれチャンス」で決められる。ここで「やじ&きた」が選ばれれば平均して340Gの獲得が見込める。

 7月13日はエンターライズの『戦国BASARA3』、タイヨーエレックの『パチスロバーチャファイター』、JPSの『ドリームジャンボ 幸運のチケットを君に』の3機種で、戦国BASARA3はボーナスと1G純増約2.2枚のART「BASARA FEVER」の連鎖で出玉を増やす仕様。ボーナスは主にチャンス役、ARTは自力高確、チャンス役直撃、ボーナス中の抽選クリアなどで発動し、ART中の上乗せ性能は選択武将によって変化する。

 人気格闘ゲームのバトルを完全再現したバーチャファイターは、100日経過で突入する「チャレンジャーバトル」に勝利すれば疑似ボーナス当選(1G純増約2.5枚)。ボーナスは前半「サンクチュアリ」、後半「リアルゲージバトル」の2部構成で、最大100G継続する前半で幻球を貯めて継続率66%以上の後半に挑む流れだ。
 
 液晶非搭載機のドリームジャンボは1G純増約3.0枚のAT機能「(ドリーム)ジャンボーナス」が出玉トリガーで、1セットの継続ゲーム数は33G以上。突入時に7絵柄がダブルで揃えば初期ゲーム数は倍増され、初期ゲーム数決定時に「ファイヤー!」の掛け声が発生すれば「最大999G」までアップする「カウントダウンファイヤー」が始まる。また、最長5分のロングフリーズが発生した場合は「ドリームルーレット」に発展→「最大5000G」まで期待できる。

 7月27日はダクセルの『まじかるすいーとプリズム・ナナエース』と『ささみさん@がんばらないすろっと』、パイオニアの『ニューキングハナハナ』、ベルコの『スーパービンゴネオ』の4機種。プリズムナナ・エースはボーナス+RT機、ささみさん@がんばらないすろっとは1G純増約2.0枚の疑似ボーナス機で、どちらもボーナス中は1G連抽選が行われる。

 ハイビスカスが光ればボーナス確定のニューキングハナハナは、ビッグとREGのみで出玉を増やすシンプルな仕様。ハナハナシリーズの中ではバランス型で、高設定は高い安定感を誇る上に破壊力もある。

 お馴染みの人気シリーズ、スーパービンゴネオは1G純増約2.8枚のAT「ビンゴチャンス」が出玉増加の肝で、周期抽選、CZなどを機に当選→7絵柄揃いでデジタルに初期ゲーム数「33」が表示。ここで「Hooah!」が発生すれば111G→222G→333Gとカウントアップするだけでなく、ATラスト7Gで始まる「カウントダウンセブン」で再度7絵柄が揃えば次セット連チャンが確定するなど、既存機屈指の爆発力を秘めている。

 このうち、5月20日に決定、施行された「経過措置延長」に該当しない「高射幸性機」はやじきた道中記乙、ドリームジャンボ、スーパービンゴネオの3機種。他の機種はまだまだ設置できるが、高射幸性機と同じくホールによっては従来の期日通りに撤去される可能性もあるので、気になるマシン、思い入れのあるマシンがあれば今のうちに打っておくべきであろう。

JRA過大評価から一転して大コケ世代の仲間入り!? 総大将サートゥルナーリアもサッパリ……「牝高牡低」浮き彫りでコントレイルにも不吉な前兆?

 今年の前期G1を締めくくったグランプリ・宝塚記念(G1)を終え、G1レースの開催もひとまずは秋までお預けとなる。数多くのドラマチックなレースが展開されたと同時に、期待に応えることの出来なかった馬も目立った。

 この上半期のG1で特に鮮烈な印象を残したのは、安田記念(G1)で8冠を目論んだ女王アーモンドアイを破ったグランアレグリア、宝塚記念(G1)で2着キセキに6馬身差の圧勝を演じたクロノジェネシスの2頭だろう。

 平地のG1レースで2着馬に1秒以上の差をつける圧勝劇は、2013年有馬記念(G1)を引退レースとなったオルフェーウルが2着ウインバリアシオンを8馬身突き放して以来、7年ぶりの快挙だ。

 そして2頭に共通しているのは、グランアレグリアが桜花賞(G1)、クロノジェネシスが秋華賞(G1)と、それぞれ昨年の牝馬クラシックを勝っていることである。

 対する同じ世代の牡馬陣は惨憺たる状況といえるかもしれない。皐月賞馬サートゥルナーリアは無敗の3冠や凱旋門賞挑戦の期待まであったが、皐月賞以降にG1で馬券に絡めたのはリスグラシューに完敗した昨年の有馬記念2着のみ。1番人気に支持された宝塚記念では精彩を欠いて4着と敗れた。

 これ以外もダービー馬ロジャーバローズは右前浅屈腱炎を発症して引退、菊花賞馬ワールドプレミアは今年の春の天皇賞(G1)を体調が整わずに回避、復帰戦についてもまだ不鮮明な状況だ。さらにはクラシックで上位を賑わせたダノンキングリーもG2は勝ててもG1では力不足を露呈。ヴェロックスに至っては確勝を期した小倉大賞典(G3)で9着に惨敗してしまった。

 救いがあったのは、NHKマイルC(G1)と香港マイル(G1)で存在感を見せたアドマイヤマーズ、チャンピオンズC(G1)と帝王賞(G1)を優勝したクリソベリルだが、王道といわれる芝の中距離路線とは異なる組だった。

「アドマイヤマーズが踏ん張っていたとはいえ、安田記念でグランアレグリアに完敗していますし、やはり牡馬が劣勢といえそうです。かつてエアグルーヴが牡馬相手に天皇賞・秋を勝った頃とは時代の変化を感じます。

近年はウオッカやジェンティルドンナをはじめ、牡馬相手に牝馬がG1を勝つのも珍しいことではなくなりつつあります。一部ではもう2キロのハンデ差は必要なくなったのではないかという声すら出始めていますからね」(競馬記者)

 同世代の牝馬が強かった上に、古馬となってG1未勝利に終わったイスラボニータ、ワンアンドオンリー、トーホウジャッカルがクラシックを分け合った2014年に似た雰囲気もある。

 サートゥルナーリア世代としては、低評価が定着する前に巻き返しを期したいところだ。

 また、今年のクラシックはコントレイル、デアリングタクトがともに無敗で2冠を達成した稀有な年となった。とはいえ、近年顕著になっている「牝高牡低」の傾向を考慮すると、コントレイルも安穏としていられないかもしれない。

 いずれにしても今年の秋は楽しみなレースが多くなりそうだ。

としまえん閉園、西武園ゆうえんちはリニューアル…西武の狙い&令和のテーマパーク事情

 西武鉄道が所有する東京都練馬区の遊園地「としまえん」が8月31日で閉園する。同園は新型コロナウイルスの影響で臨時閉園していたが、6月15日に営業を再開し、今夏は閉園を惜しむ人たちでにぎわいそうだ。

 としまえんの跡地は東京都の「練馬城址公園」として整備され、一部は「ハリー・ポッター」のテーマパークが開発されるという。100年近い歴史を誇る老舗遊園地は、なぜ閉園に至ったのか。西武グループの狙いに迫る。

私鉄系遊園地として健闘していた、としまえん

 としまえんが開園したのは1926年。開園100周年を目前に控えたタイミングでの幕引きとなる。

「遊園地にはいくつかのカテゴリーがあります。西武ホールディングスが運営するとしまえんは“私鉄沿線の遊園地”です。私鉄系遊園地は、かつて阪急電鉄の創業者・小林一三氏が編み出した有名な戦略のひとつ。鉄道の沿線を中心に不動産を開発して、ターミナル駅に百貨店、郊外に遊戯施設をつくり、鉄道を中心に人が動くように街を開発する手法です」

 そう話すのは、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏。小林氏の戦略にならい、西武や小田急電鉄、近畿日本鉄道など、さまざまな鉄道会社がレジャー施設を開園した時代があった。

「当時は東京都内でも広い土地を安く入手できたので、遊園地にはうってつけでした。しかし、沿線開発が進んで住民が増えて、沿線の街が育つと、遊園地はあまり必要ではなくなり、私鉄系遊園地の多くが閉園しました。その点でいえば、としまえんは私鉄系遊園地のなかでも粘り強く続けたほうだと思います」(鈴木氏)

 としまえんの最寄り駅は西武豊島線の終点・豊島園駅。100メートルほど離れた位置に都営地下鉄大江戸線の豊島園駅もあるが、西武線の豊島園駅のほうが乗降者数が多く、としまえんと西武線の深いかかわりがうかがえる。

「少子高齢社会が深刻化しているなか、日本の遊園地はどこもジリ貧です。東京ディズニーリゾート(TDR)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)などの超勝ち組テーマパークは別格ですが、としまえんは2018年度の入場者数を前年より2割ほど増やすなど、なかなか堅調でした。中堅の遊園地のなかでも、勝ち組といえます」(同)

 多くの遊園地が苦戦を強いられるなか、としまえんはユニークな広告宣伝やタイアップなど独自の戦略が功を奏した、と鈴木氏は分析する。

 また、としまえんの特徴はその広さにあるという。浅草花やしきや東京ドームシティアトラクションズなど都内の老舗遊園地と比べてもかなり広い敷地内に、遊園地やプール、映画館、スパなどが点在し、関連施設を含めた場合の敷地面積は新宿副都心の高層ビル群がすっぽり入る広さだという。

「西武グループにも、23区内の一等地にある広い土地を“遊園地”にしておく意味はあるのか、という課題が長年あったのではないでしょうか。老舗の遊園地なので思い出が詰まっている人も多く、『閉園までしなくても』という意見もあります。ただ、経営者の視点で考えると閉園もやむなし、という印象です」(同)

西武園ゆうえんちは21年にリニューアル

 西武グループは、もうひとつの遊園地に関しても新たな施策を打ち出している。埼玉県所沢市の「西武園ゆうえんち」のリニューアルオープンだ。

「20年は西武園ゆうえんちにとって開園70周年という節目の年。としまえんの閉園と西武園ゆうえんちのリニューアルは、どちらが先に決まったのかはわかりませんが、大きな改革は同時に進めるほうが効率的といわれています」(同)

 西武園ゆうえんちのリニューアルは、USJ再建の立役者・森岡毅氏が手がける。総事業費100億円をかけて、21年に“懐かしさ”や“古さ”をコンセプトにしたテーマパークに生まれ変わる予定だ。

「1960年代の日本をコンセプトにしているようなので、高齢者向けの遊園地という切り口でも、ある程度の集客は見込めるはず。また、インバウンドの足を所沢に向かわせるきっかけにもなると思います。特に訪日客のリピーターはTDRやお台場など定番の観光地には行き尽くしているので、目新しいテーマパークとして西武園ゆうえんちに食いつく可能性もありますね」(同)

 所沢は都内からバスで2時間弱。観光ツアーに組み込めない距離ではない。西武線の拠点のひとつでもある所沢を盛り上げる意図もあるようだ。

「閉園が決まったとしまえんには、100年以上の歴史を持つメリーゴーラウンド『カルーセルエルドラド』があります。貴重な文化遺産として『機械遺産』にも選ばれている施設なので、解体される可能性は低いです。閉園を機に、メリーゴーラウンドを西武園ゆうえんちに移設してもおもしろいですよね」(同)

コロナショックも“軽症”で済んだ遊園地

 新型コロナの影響は、遊園地をはじめとするレジャー施設も直撃した。緊急事態宣言の解除を受けて営業を再開する施設が多いものの、今夏はプールの営業が危ぶまれるなど、大きな打撃が続くことは必至だ。

「確かにレジャー産業は軒並み大打撃を受けていますが、遊園地の経済的な被害は、ほかのレジャー産業に比べればまだましなほうです。個別の事情はあるものの、遊園地は自社の土地で営業をしていて、アトラクション設備の減価償却も済んでいる。毎月の賃料が発生しないという点は、ほかのアミューズメント施設よりも有利だと思います」(同)

 たとえば、商業施設のテナントとして入っているシネマコンプレックスは施設の休業に伴って臨時休館していたケースが多い。それでも、毎月の賃料は払わなければならず、無収入のまま支出がかさむという悲惨な状況に陥っていた、と鈴木氏。

「たとえ新型コロナの感染が収束しても、世界的な恐慌が起きる可能性は高いです。経済面での新型コロナの恐ろしさは“期間の長さ”にあります。長引けば長引くほど、さまざまな業界に影響が広がります。そうなれば、土地の売買や新たな施策どころではなくなるので、ある意味、すでに手を打っていた西武グループは強運だったのかもしれません」(同)

 激動の20年に西武グループが下した決断は、吉と出るか凶と出るか。今後に注目だ。

(文=真島加代/清談社)

●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
百年コンサルティング株式会社代表取締役。経営戦略コンサルタントとして活動する傍ら、雑誌、テレビをはじめ、さまざまなウェブメディアでの執筆も手がける。『格差と階級の未来 超富裕層と新下流しかいなくなる世界の生き抜き方』(講談社+α新書)など、著書多数。

●「百年コンサルティング

コロナブルーを癒やせ! ストレスケアAIチャットボット「こころコンディショナー」

2020年も半年が過ぎましたが、のちに歴史を振り返っても「新型コロナウイルスの年」として記憶されていることでしょう。

私たちの「こころコンディショナー」プロジェクトも、まさにこのコロナ禍の渦中で姿を変えました。開発半ばにして、急きょ仕様変更した「特別パイロット版」の無償提供に踏み切ったのです。

AIチャットボット「こころコンディショナー・特別パイロット版」
AIチャットボット「こころコンディショナー・特別パイロット版」
https://carechat-demo.kiku-hana.jp/ (スマートフォンでご利用ください)
<目次>
ストレスケアプロジェクトに、コロナ禍が降ってきた。
「認知行動療法」は、行き過ぎた思考から抜け出すチャレンジ。
未熟だけれど、AIだからこそ。
全国の“コロナブルー”に届けたい。

ストレスケアプロジェクトに、コロナ禍が降ってきた。

もともとコロナ禍とは関係なく、朝日新聞メディアラボ、精神科医の大野裕医師(※1)、電通の3者で開発の真っただ中だった「こころコンディショナー」は、「認知行動療法」をベースとした、会話形式のストレスケアアプリです。

※1=大野裕医師
日本認知療法・認知行動療法学会理事長。日本における認知行動療法を用いたストレスマネジメントの第一人者。

 

近年の職場環境のストレス問題を鑑み、「うつ」を予防するサービスとして開発が進んでいました。

こころコンディショナー(パイロット版)
こころコンディショナー(特別パイロット版)

 

そこへ、このコロナ禍。電通東京本社も2月末から完全リモート勤務になり、3月には全国の公立小中学校が休校になり、私自身も小学生の子ども二人と家にカンヅメ状態、高校生の長男は留学先でロックダウンという、未曾有の環境に放り出されてしまいました。

小学生たちは最初のうちこそ“休日”を楽しんでいましたが、徐々にあり余ったエネルギーを癇癪に変えて家庭内は大荒れ。大人はその嵐をくぐり抜けながらのリモート会議。休むことのない食事の準備と不自由な買い物……と、息苦しい日々を耐えることになりました。

すべての人に等しく降ってきたこの災難は、人によっては経済的打撃や孤立不安の形で、今も影を落とし続けています。

私たちプロジェクトチームも、一人一人が当事者でもありましたから、


今こそ「こころコンディショナー」を使ってもらうべき

と思いが一致。

みんなもつらい、でも自分のつらさもどうすることもできない…といったやり場のない憤りを受け止めるのは、AIのような存在が最適だと予感していたからです。


「認知行動療法」は、行き過ぎた思考から抜け出すチャレンジ。

さまざまなストレスで、人の心はつねに揺らいでいます。例えコロナ禍じゃなくたって、時にはマイナス思考が肥大化して

  • 「何をやってもうまくいかない」
  • 「どうせ自分なんて」

と、どんどん考えや行動を狭めてしまうのはだれにでもあること。

「認知行動療法」は、そうしたストレスとの付き合い方を学び、スモールステップで考えや行動を整えていく治療法です。

臨床の現場ではうつ病などの治療に用いられますが、「こころコンディショナー」は“病気レベル”に進行する手前で、手元のスマートフォンを使ってユーザー自らそれを未然に防ぐのが目的です。

「認知行動療法」で用いられる「コラム法」というメソッドでは、患者はまず、自分の身に起こったこと(=状況)、そこで抜け出せなくなってしまった思考(=自動思考)と向き合います。

そして「自動思考」とは異なる考え方をあえて捻出し(=反証)、

  • 「違う考え方もあるかもしれない」
  • 「一歩踏み出せば何か変わるかもしれない」

という別の可能性に少しずつ心と体を慣らし、行き過ぎた思考を整えていくのです(=適応的思考)。


未熟だけれど、AIだからこそ。

「こころコンディショナー」の「相談モード」では、この「コラム法」の手順に則ってAIとチャットを進めていきます。

ユーザーはAIからの質問に答える形で考えを整理していくのですが、ここが難しいところで、AIは医師が対面で理解を示したり共感したりするほど高度な“返し”はまだできません。ユーザーが思い切ってデリケートなことを相談してくれても、現在のAIが発する言葉はかえって傷つけてしまう可能性も大いにあり、自然言語処理による自律的カウンセリングには至っていないのが現状です。

こころコンディショナー

そのため私たちは、最終的には自然言語処理による会話を目指しながらも、無償公開するパイロット版においては「プリコード(あらかじめプログラム)したセリフ」をフル活用するタイプの、開発作業用のエンジンをそのまま使用することにしました。

この開発作業用エンジンでは、基本的に事前に想定したキーワードに対して決まった返事をするので、「自然言語処理に基づいた自然な会話」までは実現できません。

その代わり「コラム法」のようなメソッドとは違う、言いたいことを好きなだけぶつけてもらうための「チャットモード」も用意しました。例え解決できなくても愚痴だけ言いたい、文句が言いたい、不安な気持ちを打ち明けたい……というニーズが多くあると考えたからです。

全国の“コロナブルー”に届けたい。

こうして、「相談モード」「チャットモード」の二つの機能を大急ぎで実装し(打ち合わせや開発作業はもちろんフルリモート)、「こころコンディショナー・特別パイロット版」は5月18日に無償提供をスタートしました

こころコンディショナー

すでに多くの方にご利用いただき、うれしい反響もいくつも届いています。開発途上のものを使っていただくことに若干の迷いがなかったとはいえませんが、

  • 「思いがけず元気づけられて涙が出た」
  • 「安心して言いたいことが言える貴重な場」

などの声を聞くと、突貫で公開したことに意味はあったのだと信じることができます。

こころコンディショナー


無償提供は7月末にひとまず終了し(予定。変更の可能性があります)、私たちは「こころコンディショナー」の本開発作業へとまた戻ります。近い将来、またこの場でパワーアップした製品版を皆さんにご紹介できるよう、これからも精進したいと思います。

※「こころコンディショナー」は、電通が開発したAI 日本語自然対話サービスプラットフォーム「Kiku-Hana」で制作されています。
 
※ ニュースリリース
ストレスケアアプリ「こころコンディショナー」期間限定パイロット版
新型コロナの不安解消へのサポート 認知行動療法の大野裕医師監修で無料公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000845.000009214.html

若者にとって大事なものとは?「しなやかな集団主義」と消費意識

未来予測支援ラボの「令和 若者が望む未来調査2019」から、若者の思いを明らかにすることで、未来へのヒントを探る本連載。第1回は「社会の期待と若者の思いのすれ違い」について解説し、第2回では、確固たる自分を持ちながら周囲との協調を大切にする「しなやかな集団主義」ともいうべき、若者の社会意識を紹介いたしました。

最終回となる今回は、対人交流、消費に関する意識を通じて「しなやかな集団主義」的特徴を持つ若者たちのインサイトを深耕し、企業が若者にアプローチするヒントについて考察します。

SNSは“友人”を増やすのか?

「しなやかな集団主義」的な特徴を持つ若者たち。彼らが日常的に使っているSNSは、周囲との交流にどのように利用さているのでしょうか。図表1は、若者の友人の数についての質問結果をまとめたものです。

【図表1】

友人の数
「令和 若者が望む未来調査 2019」12月調査

友人の数は1~10人が41.5%でボリュームゾーンです。0人も含めると友人の数が、10人以内が約5割。また、ネット・SNSで知り合った友人の数を併せて質問したところ0人と答えた人が約半数を占めました。若者にとって、友人関係は、ネットではなく対面可能な周囲の人間関係が起点のようです。

リアルの人間関係は若者に行動を促す

では、彼らはリアルな対面交流と、ネットの人間関係にそれぞれどんな意識を持っているのでしょうか。さまざまな質問をした中で、「ネットの人間関係」が特に優勢だったのは、下記の三つです。

【図表2】

ネットとリアルの違い
「令和 若者が望む未来調査 2019」12月調査

「暇つぶし」「時間帯を気にしない」「気軽」といった、自分にとっての便利さをネットの人間関係に期待していることが分かります。それに対して、「実際に顔を合わせたとき」が特に優勢だったのは、下記の三つです。

【図表3】

ネットとリアルの違い
「令和 若者が望む未来調査 2019」12月調査

「思い出に残る」「気持ちが伝わる」「約束を守る」といった自分の心に生じる感情的な実感を評価しています。特に面白いのは、「約束を守る」といった行為に関わる回答が上位に来たことです。対面による感情交流は若者の行動を喚起する力があるようです。

さらに、6月の調査から発言をいくつか見てみましょう。

<10年後に望まない自分/社会像>

10年後に望まない自分/社会像
<10年後に望む自分像>

10年後に望む自分像
「令和 若者が望む未来調査 2019」6月調査

“地域の人との密接な関係”“相手の立場を考え、理解し合える関係”“人と人との直接的なコミュニケーション”“家族の存在”といった、人肌が感じられるくらいの距離感で、より深い人と人との相互理解を望んでいることが分かります。

若者はSNSで自在にネットワークを広げている印象がありますが、若者の対人交流の中心は、あくまで身の回りの人々です。対面を通じて、人と人との感情交流の実感を大切にする。「しなやかな集団主義」な若者のひとつの特徴ではないでしょうか。

若者が持つ社会への危機意識とは

そんな、若者にとって人間の価値とはどのようなものなのでしょうか。

それを知るために、下記のように2段階で質問をしました。あなたが考える「人間にとって大事な要素」を回答してもらい、選択したものの中から「世の中から、失われそう」と考える要素を答えてもらいました。その結果を散布図にしたのが図表4です。

【図表4】

若者が社会に持つ危機意識
「令和 若者が望む未来調査 2019」12月調査

横軸が「人間にとって大事」と答えた割合、縦軸が「世の中から、失われそう」と答えた割合です。読み解くために、それぞれのスコアの平均値で4象限に分割しています。

最も注目したいのは、第1象限の人間にとって「大事だが失われそう」と危機感を持っている要素の領域です。「助け合い」「思いやりホスピタリティー」といった、互助互酬の精神が高いスコアでプロットされています。「決断力」「クリエイティビティー」といった個人の能力は第4象限の「大事ではないが、失われそうにない」領域にあるのと対比的です。

まさに「しなやかな集団主義」な若者たちの面目躍如なのですが、自分たちが大事だと思う人間の価値は、世の中の趨勢ではないと感じていることが伺えます。

連載第2回では、調査データから、周囲に気を使いつつ、役に立ちたい気持ちもあるのに、“社会の中で自分の役割を見いだせない若者”について触れました。その背景には、人間の価値に関する、若者と社会のすれ違いがあるのかもしれません。

平成時代の、能力主義、成果主義的趨勢は、若者たちにとって自己実現のチャンスというより、一種のプレッシャーと捉えられているのではないでしょうか。少なくとも、「しなやかな集団主義」な若者をもっと社会に巻き込んでいくには、彼らの大切だと思う互助互酬の人間的価値を織り込んだ、未来社会像を提示していく必要があるでしょう。

若者がお金を使う理由、第1位は?

企業は「しなやかな集団主義」な若者にどのようにアプローチすればよいのでしょうか。彼らにお金を使いたい理由を質問し、トップ10をグラフにしました。

【図表5】

若者がお金を使いたい理由
「令和 若者が望む未来調査 2019」12月調査

「癒やされたい」が1位、続いて「夢やロマン」「非日常の世界」「遊び心」が続きます。第1回、第2回、そして本稿でも現れる若者と社会のすれ違いが、この1位の「癒やされたい」に表れていると思われます。

2位以降は、若者らしい好奇心や冒険心が上位にあり、若者のストレスを解消してあげられれば、前向きな消費活動につながることが期待できます。

さらに、先ほど示した散布図(図表4)の第1象限に位置する「思いやりホスピタリティー」「助け合いの心」について「大事だが失われそう」と回答した人を対象にクロス集計を行いました。「しなやかな集団主義」な若者のうちでも、特にその傾向が強いと考えられる人たちです。全体平均との差分で、彼らに特徴的な「お金を使う理由」を探してみました。(+5ポイント以上を網掛け)

【図表6】

若者がお金を使いたい理由クロス集計
「令和 若者が望む未来調査 2019」12月調査

「思いやりホスピタリティー」「助け合いの心」、それぞれの回答者で差はありますが、総じていうと、個人的欲求では、「未知のもの・目新しいものを体験したい」「安心・安全に過ごしたい」「夢やロマンを感じたい、感動を味わいたい」「探求したい」など幅広い項目で高くなりました。また、対人的欲求では、「癒やされたい」「好かれたい、愛されたい」が、社会的欲求では「人の役に立ちたい」「正しいことをしたい」が平均より高い結果となりました。

以上を総合すると、「しなやかな集団主義」な若者がお金を使うに値することは、「人への貢献」「社会的な大義」「自分の理想につながる新しいチャレンジ」、そしてそこからは「ちょっとした人の好意を得ることができる」、といったイメージが見えてきます。

“人の役に立ちたい”から始まる取り組み

コロナ禍による外出自粛で経営が苦しい地元飲食店を応援するため、墨田区在住の若者たちは今年4月、土日限定のデリバリーサービス「すみだローカルフードデリバリー 」を始めました。同サービスのSNSには、


外出自粛により途絶え始めたお店と個人の関係を取り戻したい
外になかなか出られない人のために美味しいものを届けて、みんなを幸せにしたい!
墨田区のお店と有志による地元密着デリバリー。
 

とサービスを始めた趣旨が書かれています。
きっかけは、個人的な知り合いである飲食店店主からの相談であったといいます。困っている人の役に立ちたいという一心が、このような活動につながったのです。

この活動は、前述の「しなやかな集団主義」な若者のお金を使いたい理由の特徴とよく符合します。「すみだローカルフードデリバリー」はいわゆる“消費”ではありませんが、若者に行動をコミットさせるためのさまざまなヒントにあふれています。

周囲との顔の見える人間関係、誰かの役に立ちたいという思い、活動を通じた仲間とのつながり、仲間と力を合わせて問題を解決する喜び、その結果得られる相手の笑顔が、さらなるモチベーションにつながっていく…。企業は、若者を単に消費者としてだけではなく、感情を共有し、一緒に活動する対等な仲間として捉えることが大切です。

コロナを契機に今、新しい時代の社会のあり方が問われています。個人主義的であり、集団主義的側面もある、「しなやかな集団主義」な若者たち。本連載でご覧いただいた若者の在り方には、未来の日本人の社会づくりのヒントが隠されているのではないでしょうか。
 

【調査概要】
調査名:「令和 若者が望む未来調査2019 6月調査」
実施時期:2019年6月
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国に住む15~29歳の男女(10000サンプル)
調査会社:電通マクロミルインサイト
 
調査名:「令和 若者が望む未来調査2019 12月調査」
実施時期:2019年12月
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国に住む15~29歳の男女(600サンプル)
調査会社:電通マクロミルインサイト
 
※本レポートは、新型コロナウイルスの感染拡大以前に実施した調査に基づいて作成しています。そのため現在は、本レポートと異なった新たな意識が生まれている可能性もあります。

キャリアとは、「道筋」のことである。

「アルムナイ」という取り組み(制度)を、ご存じだろうか?元々は、「卒業生/同窓生/校友」を意味する言葉で転じて、「企業のOBやOGの集まり」を意味するようになった。海外では、一度、企業を離れたアルムナイを、貴重な人的資源して有効活用することが、ごく普通に行われている。本連載では、そうした「アルムナイ」をこれからの事業戦略の核たる制度として捉えていく潮流を通じ、「キャリアデザイン」というものの本質に、迫っていきたい。
 

そもそも「キャリア」とは、何か?

「キャリア」という言葉を日本語訳してください、と言われたら、どう答えるだろう?多くの人が「経歴」「実績」と答えるに違いない。「成功」や「出世」、もしくは「社会的な地位」や「肩書(役職)」という声が上がるのかもしれない。なので、「キャリアを生かす」とか「キャリアを捨てる」という使われ方をする。「キャリアウーマン」と言われれば、社会的地位を持つ働く女性、をイメージする。「キャリアアップ」と言われれば、すなわち出世や昇進のことだ。

もちろん、英単語の「career」に、そのような意味もある。しかしながら、英和辞典を開いてみてほしい。一番上に書いてある日本語訳は、「生涯」「一生の行路」だ。「生涯を生かす」「生涯を捨てる」では、文章として成立していない。
「生涯ウーマン」「生涯アップ」に至っては、まるで意味不明だ。

そもそも「career」の語源は、ラテン語で「馬車が通った後にできる轍(わだち)」のこと。つまり、キャリアとは「道筋」のことなのだ。過去に歩んできた道のり、現在、見ている風景、感じている風景、その先に広がる未来…。そのすべてが「キャリア」ということになる。

キャリアデザインイメージ画像

その上で、昨今、社会に浸透しつつある「キャリアデザイン」という言葉ついて、考えてみたい。上記の整理によれば、「成功(や出世の方法)をデザインする」という解釈は、間違っていることに気付く。そもそも、成功や出世をデザインする方法があるのであれば、誰もが実践しているはず。

キャリアデザインとは、「人生の道筋をデザインする」ということなのだ。成功や出世をデザインするのではなく、これまで歩んできた道のりや、今現在、自身が立っている場所を正しく認識し、これから進んでいくべき道をデザインすることは、誰にもできる。もちろん、成功が約束されているわけではない。苦労も、失敗も、あるかもしれない。でも、歩みを止めるわけにはいかない。キャリアデザインを止めてしまうことは、生涯を止めてしまうことなのだから。「年功序列」や「終身雇用」が崩れつつある中、「キャリアデザイン」は、今、もっともホットで個々人が、そして、企業が、今まさに対峙すべきテーマといえる。

そもそも「人事」とは、何か?

「キャリア」同様、「人事」というワードにも、固定化したイメージがある。人事と言われて、どんなことをイメージするだろう?管理とか、支配とか、懲戒とか、評価とか、出世とか、根回しとか、左遷とかといったことを、どうしてもイメージされるのではないだろうか?でも、そもそも「人事」というコトバは、

「人事に煩う」(=人間関係に苦労する)
「人事を尽くす」(=人間に出来ることをやりきる)

という使われ方に見るように

「人間関係」(=リレーションシップ)
「人間にできること」(=マンパワー/人類の英知)

ということを表しているもの。広告的な視点で言うならば、前者は「マーケティング」であり、後者は「クリエイティビティー」ということ。これからの「人事」、これからの「キャリアデザイン」が注視すべきは、まさにその視点ではないだろうか。キャリアのタネをまく。キャリアを芽吹かせる。キャリアを育てていく。一生涯の道のりを、自らデザインする。企業はそれを、全力でサポートする。そこには、マーケティングのような冷静な分析力とクリエイティビティーあふれるワクワク感が不可欠だ。

本連載では、これからの人事やキャリアの在り方を端的に示す事例、現象としての「アルムナイ」、および、退職で終わらない個人と社会の新しい関係性の構築を目指す「電通アルムナイチーム」の取り組みを紹介しつつ、社内外のさまざまな職種、さまざまな立場の方々からさまざまな視点でコメントを寄せていただくことを通して、「キャリアデザイン」の本質と未来について、考察していきたい。

2018年に行われた電通アルムナイ・パーティの様子
2018年に行われた電通アルムナイ・パーティの様子


電通キャリア・デザイン局大門氏と、電通OB酒井章氏(クリエイティブ・ジャーニー代表)によるアルムラボでの対談記事は、こちら

教育者とは「ワクワク」のナビゲーターである

BBT大学ロゴ床面積0㎡。日本初、100%オンラインで経営が学べるBBT大学。世界110カ国に居住する在学生が、サイバースペースに集結する。その最前線で教壇に立つグローバル経営学科長の谷中修吾教授に、オンライン教育の本質と可能性について聞いた。(第4回)

ここまでの連載記事で、私がBBT大学の現場経験で得たオンライン教育の知見から、特に大切にしている視点をご紹介させていただきました。教育とは「ワクワクを思い出し、そのスイッチを入れる場」である。そのワクワクは、個人のライフストーリーに隠れている。そして、その背景を理解すると、オンライン教育のコミュニケーションが円滑になる。今回は、オンラインに特有の教育者のあり方についてお話をしてみたいと思います。

谷中先生の授業風景
谷中教授によるオンライン講義の様子。東京・麹町のスタジオから配信し、世界110カ国に居住する学生が受講。谷中教授はBBT大学の人気科目『マーケティング基礎』を教えている。


これまでの話でも明らかな通り、私にとって、教育者の最大の役割とは、「ワクワクのスイッチ」を入れることです。ワクワクとは、「つい夢中になってしまうこと」や「理屈抜きに好きなこと」。世間体とか、社会のルールとか、世の中の常識とかで考えるのではなく、とにかく自分がやりたいからやるという衝動です。人は、自分のワクワクを思い出して、スイッチが入った瞬間、勝手に動きだします。だから、ある意味、教育者はワクワクのスイッチを入れる役割さえ果たすことができればよいのです。

ただ、当然ながら、教育者が自らワクワクを熟知していなければ、ワクワクのスイッチを入れることすらできません。教育者自身が、一人の人間として、ワクワクする人生を送っているのか?要は、生き様が求められるということです。それは、リアルであろうがオンラインであろうが、自然と相手に伝わります。ワクワクする人と一緒にいるとワクワクするという、単純明快な原理です。

幸いにも、私自身は、ずっと自分なりにワクワクを求めて生きてきたため、自らが実体験に裏付けられたファクトともいえます。そうでなければ、このような記事は書きません(笑)。よくよく考えれば、ワクワクはワクワクするからワクワクして勝手に行動してしまうのであり、熟考して行動するような類のものではありません。

対面授業の風景
対面指導による授業風景

あえて言うならば、何事も面白がるスタンスは有効で、世の中のあらゆることを面白がって実践するため、必然的に経験の引き出しが膨大になります。世の中的には、それを「教養」と表現したりします。つまり、ワクワクは、生きた教養に厚みをもたらし、会話の節々に如実に表れます。そして、対話した相手にも、ワクワクが伝播していくのです。

このメカニズムは、オンライン環境においては特に重要です。リアル環境に比べて、相対的に伝わる情報の量と質が落ちるため、オンラインでは教育者の生き様が「本物」かどうかが問われます。どのような分野でも、ワクワクの情熱を持って現場経験を重ね、専門知見を持つ教育者は、オンラインでも本物感が伝わります。逆に、薄っぺらい教育者は、オンラインでは、ことさら薄っぺらさがバレます。だから、手法論の前に本物の生き様ということを肝に命じておくべきでしょう。

その上で、教育者として、オンライン特有の教育技術があります。一つは、オンラインの授業や対話を楽しませる「演出」です。話が分かりやすくて面白い。画面共有されるスライドがイケている。動画や写真で引き込まれる。テンポ感が心地よい。小ネタが楽しい。など。楽しませるということは、要は、飽きさせない。その意識と技術が必要になります。もちろん、これらはリアルの教育環境でも求められますが、それぞれ視聴環境が異なるオンラインでは、より洗練されている必要があるわけです。

もう一つは、オンライン環境を熟知した上で1対Nを華麗にさばく「オンライン・ファシリテーション」です。そもそも教育者側が、オンラインツールの特性を熟知していなければ、肝心の本編に入る前のテクニカル段階でスタックしてしまいます。例えば、一人の学生がマイクをミュートにせずに音声環境が芳しくない時に、自らツールを操作して即座に対応できるような、オペレーター機能も担える必要があります。その上で、要所で質問を投げ掛けたり、チャットを取り入れたり、自然な流れでオーディエンスを巻き込みながら進行をしていきます。バラエティー番組でいうところのMC兼オペレーターのような役割といえるでしょう。

アバター卒業式の様子
BBT大学では教授が自らワクワクをカタチにする。2020年3月、新型コロナに対応して、谷中教授が「アバター卒業式」をプロデュース。卒業生が自宅からアバターロボットを操作して、大前研一学長から卒業証書を受け取った。

このように考えると、教育者とは「ワクワク」のナビゲーターであると定義することができます。私がオンライン教育現場に立っているBBT大学では、大前研一学長を筆頭に、ワクワクで人生を切り開いている実務家教員が集結しています。そして、世界110カ国からビジネスを学んでいる在学生もまた、ワクワクに基づいて人生を切り開きたいという熱い思いを持っています。日本の教育者が、インストラクターの役割だけではなく、ワクワクナビゲーターの役割を担うようになった時、社会は大きく変わると確信しています。

“爆安”日進レンタカーを借りてみた!恥ずかし広告入り、20万キロ超、でも快適な理由

 レンタカー会社には、主に車両仕入れ時に新車だった車を中心に貸し出す大手レンタカーと、中古車を仕入れてリーズナブルに貸し出す格安レンタカーがある。前者はトヨタレンタカー(トヨタレンタリース)や日産レンタカーMMCレンタカー(旧・三菱レンタカー)などの自動車メーカー系と、ニッポンレンタカーオリックスレンタカーなどの非メーカー系がある。

 車種ラインナップは、メーカー系は当然ながらそのメーカーのモデルに限られる。非メーカー系は多様な車種がラインアップされているが、クラスは選べても特定の車種を指定できないことが多い。なお、前身が旧マツダレンタカーであるタイムズカーレンタルは、輸入車を含めて取り揃えているため、現在は非メーカー系といえる。

 格安レンタカーは、ニコニコレンタカーワンズレンタカーなど、自動車整備工場やガソリンスタンドがフランチャイズとして、副業的に店舗を運営しているケースが多い。そのため、各店によって車の仕入れはまちまち。車種も店舗によって異なるが、車種は指定できる(あるいはされている)場合が多い。ただし、現行モデルか旧型か旧々型かはわからないのが難点だ。

 別の視点で分類すると、全国展開しているチェーンと、限られた地域に数店舗~数十店舗を構える地域限定型に分けられる。ここまで述べたレンタカー会社は基本的にすべて全国展開しているもので、料金体系も基本的には全国共通だ。地域限定型のうち、特に新車仕入れ系の会社は、全国チェーンより若干価格が安いケースが多い。

ベンツのSクラス、BMWの7シリーズまでラインアップする日進レンタカー

 今回は、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城で31店舗を構える日進レンタカーで借りてみた。大手チェーン系を除けば、関東地方では規模が大きめのレンタカー会社で、首都圏ではAMラジオで流れるCMや、都営バスのラッピング広告などで、見聞きしている人も多いのではないだろうか。

 車種も軽自動車からメルセデス・ベンツのSクラス、BMWの7シリーズまでラインアップしている。商用車も軽トラから4トントラックまで、さらにはマイクロバスやキャリアカー(自動車積載車)まで揃えている幅の広さだ。

 難点といえば、とにかく駅から遠い営業所が多いことだ。都内にある6つの営業所でさえ、駅からはある程度歩く。他県の営業所はバスを使わないと厳しいところも少なくない。

 これはおそらく、商用利用が需要の多くを占めているためだろう。営業所の多くが、工業団地などの近くに立地しているのだ。むしろ都心にある営業所のほうが、同社では異質な存在なのかもしれない。

 とはいえ、個人利用に力を入れていないわけではない。前述のように広告展開には熱心だし、利用者は月ごとに決められたプレゼントがもらえる。過去にはカップラーメンやボンカレーとパックご飯のセット、ドリンクなどが用意され、今回借りた6月は今治タオルをもらった。

 さらに特徴的なサービスが、ウェブで予約すれば乗用車などが「2日間以上で1日分無料」というものだ。この場合の「1日分」とは暦日料金(0:00~24:00)のことで、8:00~翌20:00の最長36時間が、1日分の料金で利用できるのだ。

 たとえば格安レンタカーのニコニコレンタカーの場合でも、軽自動車を8:00~翌20:00の36時間借りると、6380円(ニコレンメイト価格)となる。これが日進レンタカーなら、4200円(会員料金)で済む。

 もう1つ魅力的なのが、マスコットカーという特別な車両だ。派手な黄色に青の文字という同社のイメージカラーで、ボディサイドに「日進レンタカー」とデカデカと書かれたラッピングカーで、ノーマルなカラーの同型車の半額で借りることができる。ラッピングカーをウェブ予約すれば、最長36時間を2600円~という料金で借りられる、驚異的なコラボが炸裂する。

レンタカーではまたまた見ない20万km超の初代日産ノート

 今回借りたのは、まさにその最強コラボ料金の日産・ノート(初代)だ。トヨタ・ヴィッツホンダ・フィットが市場を席巻する中、個性的なルックスだが男性ウケが悪かったマーチが取りこぼしていた需要を補うために投入された、世界戦略車のコンパクトカーだ。

 いかに新車で導入されたとはいえ、走行距離は既に20万kmを優に超えているため、外観やシートは並の中古車よりくたびれてはいる。だが機関の調子は思いのほか悪くない。エンジンの回りもいいし、異音も特に聞こえない。足回りも意外にしっかりしている。メンテナンスが行き届いているのだろう。

 高速道路には乗らず、一般道をそれなりに渋滞に巻き込まれながら150kmほど走ったが、燃費は14km/Lほどと、それほど悪くない。もともとノートはハンドリングが軽快で、ミッションがCVTの割には応答性もよく、車庫入れなどの切り返しもしやすい。乗っていて楽しく、わざわざ指定したくなるモデルだ。

 もちろん、タイヤが1本だけ銘柄が違っていたり、ETC車載器が膝が当たる位置に付けられていて邪魔だったり、真っ赤なフロアマットが半分はげかけていたりと、難点はいくつかあるが、これは走行距離の多いレンタカーにはありがちなことだ。

 評価に困るのが、やはりマスコットカーならではのカラーリングだ。とにかく目立つし、知り合いに会ったらなんか言われそうとは漠然と思う。デートや家族での旅行には向かないのはいうまでもない。

 だが1人での外出や、荷物を運ぶためなどに利用するときなら、なんの問題もない。遠方の営業所まで出向くことをいとわなければ、この抜群のコスパは間違いなく「推し」だ。

(文=渡瀬基樹)

●渡瀬基樹(わたせ・もとき)
1976年、静岡県生まれ。ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。自動車、野球、マンガ評論、神社仏閣、温泉、高速道路のSA・PAなど雑多なジャンルを扱います。

世界一達成のスパコン「富嶽」、すでに人類的課題の解決に活用…AIとDXで社会を幸福に

 前回(第6回)記事『 図らずもテレワーク普及で企業のデジタルトランスフォーメーションが一気に推進』では、NVIDIA社がたったの2100万円で5PFlopsと、あの「京」の半分の性能の超小型スーパーコンピューターを発売し、世界のAI開発を加速したことに触れました。AI開発基盤の独占という懸念を和らげてくれる良いニュースと筆者は評価しています。少し安堵するとともに日本勢が絡んでいない寂しさも感じました。

 そこへ、「京」の後継である「富嶽」が9年ぶりに日本のスーパーコンピューターとして世界一、それも4種類の評価指標で同時に1位の、世界初の四冠王となりました。4種類目は新設のAI向けの性能指標HPL-AI。これはAIの計算処理などで求められる低精度の(bit数の少ない)演算の性能で、1.421 Exa Flops。1秒に142京回と、上記NVIDIAの新製品の300倍に迫る速度です。「富嶽」は、ソフトバンクが買収したアームのプロセッサを大量に使っていることから、部品レベルまで日本のものといっていいでしょう。

 さらに、もう一冠は、いかに低消費電力で計算できるかを競うGreen500で、こちらも日本勢、プリファードネットワークスのMN-3が初の世界1位となりました。素晴らしい! 実は「富嶽」の富士通側のリーダーは筆者の高校の同級生で、理化学研究所側にも高校の後輩が関わっていて嬉しさもひとしおです。また、プリファードの西川徹社長は大学の学科の後輩ですし、東大の理工学研究科長を務めた平木敬先生(高校の先輩;拙著『人工知能が変える仕事の未来』の帯に推薦の言葉)が入社されていて、いつも力いっぱい応援したい気持ちです。

スーパーコンピューターで新型コロナウイルスと闘う

 現場に残されたガムの噛みかすの唾液中のDNAをAIが解読して、その人の顔をかなり忠実に再現するようなことができるようになりました。遺伝子やその周辺の研究により、その個人専用に、適切な効能を発揮する薬を開発する、パーソナライズド・メディシンも急速に発達しようとしています。

 新型コロナウイルスの感染の仕方、感染後の体内への拡がり方、そして、さまざまな症状を引き起こすあり方には、大きな個人差があります。その違いを遺伝子のレベルで解明するのもパーソナライズド・メディシンの役割であり、それには膨大な計算が必要です。「一刻も早く次世代スーパーコンピューターを持ってこい!」という声を東大医科学研究所などから聞きます。体内でコロナウイルスがどのように動き、「拡散」するかなどのシミュレーションにもスーパーコンピューターが必要となるでしょう。開発途上のワクチンを片端からヒトに打って危険にさらすわけにもいかないので、計算、シミュレーションで済むものは計算機に任せたいという事情もあります。

「富嶽」の優先活用テーマ

「富嶽」は、実はフルスケールで完成するより前倒しで実践に投入されました。学徒出陣みたいのようですが、非常に高い完成度、高性能で喫緊の人類的課題の解決に活用され始めています。理研の発表「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ『富岳』の優先的な試行的利用について」では、次の5つの課題を挙げています。

(1)新型コロナウイルスの性質を明らかにする課題

(2)新型コロナウイルスの治療薬となりえる物質を探索する課題

(3)新型コロナウイルス診断法や治療法を向上させうる課題

(4)新型コロナウイルスの感染拡大及びその社会経済的影響を明らかにする課題

(5)その他、新型コロナウイルスの対策に資することが想定される課題

 新型コロナウイルスの対策につながるあらゆる研究テーマの提案を受け付けているとのことです。「我こそは!」という人はぜひこのページに記載の問い合わせ先にメールを送ってみてください。

 すでに実施している研究はこのページで紹介されています。「医学的側面からの研究」として、「『富岳』による新型コロナウイルスの治療薬候補同定」他2つ、新型コロナウイルスの性質を明らかにする研究が走っています。医学的側面というのは、ヒトの1個体を相手にしますが、室内空間でのウイルスの拡散や、多人数の社会でどう感染が広がるかの研究も重要です。こちらは、「社会的側面からの研究」とされ、各1つの研究が、富嶽の膨大な計算パワーを駆使して進行中です。

 すでに進行中のテーマには、あまりAI的なものはないようです。ただ、先述のように、ビッグデータからなんらかの法則性を見いだすような役割はAIが担います。ウイルスや治療薬候補の性質を解明する手段として、AI的な手法が使われることはあるでしょう。そのようなAIが機能するためにもスーパーコンピューターは欠かせません。

AIと、DX、オープンイノベーションの関係

 時事ネタが長くなりました。人類の一大事への取り組みということでご容赦ください。今回の表題に絡めて、「AIと、DX、オープンイノベーションの関係」を簡単に整理して締めくくりたいと思います。

 まだ人類が持たざる知識を発見し、それを使って真理の探究や課題を解決するのが「研究」の役割です。一方、産業界で使われる「イノベーション」という言葉は、革新的な技術開発や、斬新なビジネスモデルの考案と実践の両面を指します。研究は必ずしも役に立たなくてもいいのですが(新型コロナウイルス関連の課題は役立つものばかりですが)、ビジネスにおける技術開発は産業上のメリットを生まなくてはなりません。

 だからといって、常に秘密裏に技術開発をすればいいというのではありません。アップルのような徹底した秘密主義の会社もありますが、世界中の知恵を結集し、データを出し合い、要素技術開発や実証評価を分担するような「オープンイノベーション」の重要性が昨今、叫ばれています。あのIBMですら、「うちの会社規模ではすべての要素技術を自社開発するわけにはいかない」と公然と唱えるくらいです。

 AIの歴史をたどってみると、その時代その時代の最先端の「怪しげな」情報関連の研究をAIと呼んでいたフシがあります。数理最適化や情報検索の技術など、のちに当たり前になった技術は初期の頃はAIと呼ばれていたりしました。大半は論文発表され、その知識がオープンに共有されていました。今日のAIも、斬新な技術開発であり、最先端知識やビッグデータに支えられていることから、オープンイノベーションの形で重要な役割を果たします。論文がWeb上に迅速に投稿される上に、AIの実態そのものであるソースコードや学習済のモデルさえもオープンに共有され、イノベーションを支えています。

 イノベーションが成功し、使われて、経済・社会に根付くには、それが使われるインフラが整備され、十分低コストで普及している必要があります。9年前の「京」でしか動かず、他のコンピュータとインターネットを介して連携できないプログラムでは、なかなか産業界で常時使われるようにはならないわけです。ネットを介して互いにいつでもデータを安全にやり取りし、加工し、ビジネスを100倍速(もっと大げさに「光速商取引(CALS=Commerce At Light Speed)」といわれたこともありました)にする。それに必要な企業内情報システム、組織体制の変革も含め、DX=デジタルトランスフォーメーションととらえる人が多いでしょう。

AIとDXによる幸福の増大を信じましょう

 B2Cのビジネスでは、AI搭載のスマホアプリに象徴されるように、個人のサービス利用の利便性を飛躍的に高めるためにAIが直接使われることがあります。一方、B2Bのビジネスでは、企業間のデータ、情報のやりとり、承認のプロセスなどのデジタル化のために、デジタルでつながるAPI (Application Programming Interfaced)を互いに公開しあうことが重要になります。そして、従来どうしても人間の判断、介入が必要だったところをAIで置き換えることができて初めて、100倍速が実現します。FAXを人が読んだり電話で聞き取ったりする作業などは、前世紀の遺物ですね。何割もの間違い、ミスが積み重なって、集計結果が10倍も狂ったりすることが現実に起きています。

 DXの結果、生産性が上がり、正確で個人に寄り添えるパーソナライズされたサービスが実現する。だから、冒頭、タイトルで「 AIとDXで社会を幸福に」と記しました。各論、たとえば金融業界のフィンテック(Fintech)など各業界の尖った技術X-techのことなど、7月2日発売の拙著『人工知能が変える仕事の未来 [新版]』をぜひご参照ください。文庫本なので税込み990円と、千円札でおつりが来ます(笑)。各産業ごとの詳細は、数年前の状況と予測にはなりますが、単行本のほうが役に立ちます。

 必ずしも全部のX-tech、DXの尖った要素がAIというわけではありませんが、AIがきめ細かく人間の判断や作業を代替したり、業務フロー自体を一新したりすることで社会の平均的幸福があがっていく。このイメージはぜひ皆さまと共有してまいりたいと思います。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

なぜ“三菱財閥”は再結集できた?愛された岩崎家当主と、遠ざけられた三井家当主の戦後史

【前編より続く】

三菱は大きくなりすぎた

 住友グループで住友吉左衛門が大株主となり、大倉喜七郎が大倉財閥の再編成を目論んでいる時、三菱グループは岩崎家の手に届かない存在になっていた。1956年当時の各グループ直系企業の株式発行総数を以下にまとめてみよう。

 三菱グループが群を抜いて大きくなっていることがわかる。三菱:三井:住友の比率が5:3:2くらいになり、大倉にいたっては住友の10分の1くらいのスケールしかない。7社合計した発行株数が、三菱グループの1社平均より少ない。規模が小さかったから、大倉喜七郎は財閥の再編を夢見ることができた(=傘下企業の急成長によりその夢が頓挫した)のだ。

・三菱 21社  10億858万1000株   (1社あたり4802万8000株)
・三井 18社    5億9715万5000株 (1社あたり3317万5000株)
・住友 14社    4億6480万株        (1社あたり3320万株)
・大倉   7社         4735万株      (1社あたり676万4000株)

 なぜこんなに三菱グループが突出して大きくなってしまったかといえば、三菱が重化学工業に重点を置いていたからだ。

 戦前の三井・三菱・住友財閥は、貿易・加工業・素材産業ですみ分けしていたという噂がある。戦時中の日本は、戦争に勝つためにまず加工業に重点的に支援し、次いで素材産業に力を入れた。三井財閥は親米的で重工業を傘下に持たないので、軍からにらまれたという。

 その結果、三菱が三井を追い抜き、住友が三井を切迫するほど急成長を遂げたのである。その上、三菱・住友はグループを大きくすることで個々の企業も成長していく戦略をとったのに対して、自由主義の三井は「みんな勝手にやったらイイ」と放任した結果、団体戦で後手に回ってしまったのだ。

三菱の本社復興構想

 それでもなお、三菱グループには「御家大事」「年功序列」の気風があふれていた。つまりは旧財閥本社のOBたちが隠然として影響力を持ち、岩崎家を尊重していたのだ。

 旧財閥本社のOBたちは、組織的に岩崎家と財閥本社役員の復帰を考え、実行した。

 三菱地所は「丸の内の大家サン」として有名だが、戦前はその半分くらいは三菱本社(財閥本社)が所有する土地だった。ところが、財閥解体で本社が解散に追い込まれたので、新たに2つの不動産会社(陽和不動産、開東[かいとう]不動産)を設立して、本社が所有する不動産を継承した。

 ところが、この不動産会社が買い占めに遭ってしまった。そこで、三菱グループがカネを出し合って、高値で株式を買い戻して事なきを得た。丸の内の土地が人手に渡ってしまっては大変と、この2つの不動産会社を三菱地所に吸収合併させた。三菱地所としては万々歳であるが、本社の土地にはいらない老人たちがくっついてきた。

 それまで三菱地所は会長職が空席だったが、会長に元三菱本社常務・石黒俊夫が就任した。ほかにも監査役に元本社常務・鈴木春之助、相談役に元三菱銀行頭取・加藤武男、元本社専務・永原伸雄、そして、取締役に弥太郎の直系の孫・岩崎彦弥太(ひこやた)が就任した。いわば、三菱地所の一角に旧財閥本社OBが間借りして、あたかも本社が復活したような構図となったのだ。

 現在、三菱グループには三菱金曜会という社長会があるのだが、その社長会をつくって初代トップ(世話人)になったのが、三菱地所会長に就任した石黒俊夫なのだ。

 しかも、石黒は人脈に恵まれていた。三菱は年功序列なので、終戦後の三菱重工業・三菱電機・三菱鉱業の社長には石黒の同期入社が揃っており、彼らの支持を得やすかった。とはいえ、企業を抑えるには、結局はカネが物を言うのだが、三菱銀行は元頭取・加藤武男が隠然たる影響力を発揮していた。石黒の入社時の配属先は銀行の京都支店だったのだが、その支店長が加藤だったので、石黒が加藤に物事を頼みやすかったのも有利に働いた。

 旧財閥本社の土地を継承した会社に岩崎家の当主を迎え、その会長が社長会を主催してグループ企業に号令する――石黒の構想はうまくいったが、石黒―加藤コンビが1964年に死去し、岩崎彦弥太が1967年に死去すると、三菱地所の特異性は忘れられてしまう。結局、人的な支配は、それを担う人間のリタイヤで終了してしまうのだ。

三井では起こらなかった財閥復活の動き

「御家大事」で再結集しようとする三菱に対して、三井にはそんな気運がまったく盛り上がらなかった。

 三井財閥のオーナー・三井一族は11家から構成されていた。三井家の事実上の祖である三井高利(たかとし)は子だくさんで、その子どもたちが分家を成し、増減を繰り返して明治以降は11家に落ち着いた。

 本家の三井八郎右衛門サンは、静かな性格の中にも日本一の財閥を背負っていこうとする責任感をたたえていたようだが、分家の方々にはそんなものはない。三井のサラリーマンのトップは、株主対策(=三井家からのクレーム対応)におおわらわ。三井を退社した後、日本銀行総裁、大蔵大臣を歴任した池田成彬(せいひん)は、三井のトップだった時は自分の力の7~8割を三井家対策に使ったと述懐している。

 そんな訳だから、財閥解体で三井家の支配力から解き放たれると、サラリーマン経営者たちは生き生きと仕事を再開した。

 一方、三井家の人々は、終戦後に創設された財産税という重税に悩まされた。岩崎さんや住友さんは、旧財閥本社OB、グループ企業のトップの支援があり、そこまでは困らなかったらしい。しかし、三井グループの経営者は一切支援の手を伸ばさなかった。三井家の窮状なんか見て見ぬふりである。

 一部で、グループ各社に、戦前に役員を務めていた三井11家の当主をそれぞれ引き取って、顧問や相談役として遇してはどうかと提案があったらしい。ところが、各社の反発が強く、大反対を受けて頓挫。三井不動産が三井八郎右衛門を相談役に迎えたくらいしか実現しなかった。

 そこで、対案として考えだしたのが、「三井」という社名(商号)、「丸に井桁(いげた)三(文字)」の商標の使用料を集めて、三井家の人々に還元しようという案である。これには、旧財閥本社OBの方々も賛同し、各社を説得に回って実現にこぎつけたという(筆者は10年くらい前に、三井グループの公益財団法人の方から、その習慣がまだ続いていると聞いたことがある)。

 こんな逸話があるくらいだから、財閥の復活はおろか、再結集もできなかった訳である。1960年代になって、三菱・住友の再編がうまくいって、三井も再結集しないと乗り遅れるとあわてて再結集に動いた次第だ。

三井は「先生抜きのゼミ同窓会」

 当時、再結集した三菱住友古河財閥はいずれも、戦前、財閥家族とサラリーマン経営者の仲が良好だった。旧財閥本社OBたちは、武家時代の忠臣のように、財閥を復活させて財閥家族に大政奉還しようと真剣に思っていたフシがある。ところが、当時の状況はそれを許さず、財閥家族抜きで企業集団に再編せざるを得なかった。サラリーマン経営者たちは財閥家族への恩義を忘れず、その子孫たちをグループ企業に就職させ、各社でヒラ取締役や監査役として遇していった。

 一方、三井安田浅野財閥は財閥家族とサラリーマン経営者の仲が良くなかったので、財閥解体後に再結集の動きが起こらなかった。

 終戦後しばらくの間は、財閥家族との関係をおざなりにしたまま、旧財閥系企業が再結集するという選択肢はなかったようだ。三井グループは、いわば「先生を呼びたくないから、ゼミの同窓会はやめようぜ」という人的なしがらみが、再結集を遅らせた一因になったのだ。

(文=菊地浩之)

●菊地浩之(きくち・ひろゆき)
1963年、北海道札幌市に生まれる。小学6年生の時に「系図マニア」となり、勉強そっちのけで系図に没頭。1982年に國學院大學経済学部に進学、歴史系サークルに入り浸る。1986年に同大同学部を卒業、ソフトウェア会社に入社。2005年、『企業集団の形成と解体』で國學院大學から経済学博士号を授与される。著者に、『日本の15大財閥 現代企業のルーツをひもとく』(平凡社新書、2009年)、『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』(角川選書、2017年)、『織田家臣団の系図』(角川新書、2019年)など多数。