ザワついて、ほしいの

TVer

鈴木おさむさんに「テレビは今後、どこへ行く?」という仮タイトルで思いの丈を語っていただくこの企画。TVer×ウェブ電通報という、ありそうでなかった座組みで実現しました。

4/9にテレビ朝日系列にて後編が放送予定の新作ドラマ「殴り愛、炎」のお話もちょいちょい折り込んでいただきつつ、鈴木おさむ氏ならではのテレビ論を大いに語っていただきました。

ご安心ください。ウェブ電通報の編集方針として、「とどのつまりは、番宣なのだろう?」といったような凡庸なる記事にはいたしません。乞う、ご期待。

TVer
─TVer×ウェブ電通報×鈴木おさむさんという座組みで実現した本インタビュー企画。
今回も、よろしくお願いいたします。

鈴木:こちらこそ。

─今回は、ですね。鈴木おさむさん、ということで「変って、なんだ?」というテーマでお話を伺っていこうと思います。変わり者の「変」、変態の「変」、変化の「変」、本能寺の変の「変」です。おさむさんの作品を拝見していますと、「変なものをつくりたい」という気持ちが根底にあるような気がするのですが……

鈴木:結果的に「変なもの」になっているのかも知れないけれど、「変なものをつくりたい」という気持ちはないかな。でも、「世の中をザワザワさせたい」という欲望は常にあります。

─「ザワザワ」ですか?

鈴木:そう、ザワザワ。僕が思うに「変なもの=ザワつくもの」ではないんです。変が過ぎると、世の中ってザワつかないものだから。ここで、こんな変なことが起きたら世の中ザワつくだろうな、と思うことはあるけど、それは「変」ありき、ではない。

─「ザワザワ=なんだか不安でしょうがない。でも、無性に興味がそそられる」みたいなことでしょうか?

鈴木:いつハシゴを外されるんだろう、どうやって外されるんだろう、ハシゴを外すとみせかけて、ひょっとしたら最後までハシゴを外さないんじゃないだろうか、みたいな。とても平常心ではいられない。それって、ワクワクでも、ドキドキでもなくて、ザワザワなんだと思うんですよね。

─「鈴木おさむワールド」のキモの部分が、少しはわかってきました。
 

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鈴木:うまく表現できないんだけど、ザワザワっていうのは単純な裏切りじゃないんですよね。内館牧子さんのドラマが僕は大好きなんだけど、内館さんの脚本って、いい意味で性格が悪い。意地悪っていうか。僕の好きな役者さんに、そんな惨めなことさせないでー、みたいな気分にさせられちゃう。見てる側としては、もう、ザワザワしっぱなし。

─いわゆる「毒」の要素ですね。それも、中毒性のある。とても、やっかいな(笑)。

鈴木:僕の中で開眼したのは、「奪い愛、冬」(2017年にテレビ朝日系「金曜ナイトドラマ」枠で放送された鈴木おさむ氏脚本によるドラマ)かな。

番組のプロデューサーから「とにかく変なことばっかりが起きるドラマにしたいんですよ」と言われて、なるほどな、と思ったんです。当時、不倫ドラマが流行ってて、じゃあ、その方向でいくか、みたいな気持ちで始めたんだけど、水野美紀さんが、とにかく変なことばっかりする。タンスの中に隠れてたり、プレゼントにヒールの先を入れたり。

コントって、基本、変なことばっかり起きるじゃないですか。見てる側も、それを期待している。でも、ドロドロ恋愛ドラマだと思って見始めたのに、もしかしてこれ、コメディー?みたいなことが次々と起こると、視聴者としてはザワつかずにはいられないんじゃなかろうか、と。

─そこは、あえて規定しないんですね。

鈴木:そう。見る人によって、見方はいろいろあっていい。不倫モノだろうが、コメディーだろうが、それは受け手に決めてもらうこと。でも、ザワザワだけはしてほしい。僕が書くドラマの第一話に対して圧倒的に多いのが「このドラマ、どうやって見たらいいの?」というとまどいの声なんです。なので、第二話で「なるほど、こうやって見たらいいんだ」という気分にとりあえずなってもらう。でも……

─第三話で、また見方がわからなくなる。

鈴木:気がつくと、クセになってる。

─それはまた、性格が悪い(笑)。

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鈴木:一方で、とことん無視されるのが、テレビ。昔、構成に参加していた「めちゃイケ」で、これはおもしろいと思う回があって、たまたま、実家に帰っていて家族でオンエアを見たんだけど、母親は台所仕事かなんかしてて、まったくの無視。息子の自信作を、ですよ。

でも、それがテレビ。スマホをいじりながら見てても、スマホをいじるのに夢中で完全に無視されていたとしても、それがテレビ。こんなに自由なものはない。だから、楽しい。

─そういうことを言うと、だから鈴木おさむは扱いづらいんだよーとか、局の人から言われたりしません?

鈴木:でも、それがテレビなんです。CMなんかも、そうでしょ?「いい感じで、おねがいします」「はい、わかりました」でつくったCMなんか、誰も見ない。少なくとも、僕は。チャンネルを変えるか、あるいはスキップして、それで終わりだと思います。

─わかるなあ、わかります。うちの母親に「うちのサラダ油、なんでいつもコレなの?」と尋ねても、「さあ、なんとなく」という答えしか返ってこない。でも、なんかあるんですよね。クセになるなにか、が。それが値段なのか、脂肪がつきにくい成分なのか、それをうたってるCMの効果なのか、はわかりませんが。

鈴木:無視されてナンボ、と開き直ると、じゃあ無視されないためにはどうすればいいのかと考えるわけです。どう考えてもそれは、理屈じゃない。つまるところ見ているひとを、あるいは見る気もなく眺めている人を、どれだけザワザワさせられるかどうか、だと思うわけです。

(聞き手:ウェブ電通報編集部)


【編集後記】
今回は、鈴木おさむ氏に対して「変」というキーワードを投げておきさえすれば、正直、なんとかなるだろうと思っていた。ところが、である。いきなり「別に、変なものをつくろうと思ってはいないんですけど」とのカウンターパンチだ。面食らっていると、即座に「でも、ザワザワは、させたいんだよね」と来た。

仕事をしていると、いや、人生、長く生きていると、「目的」と「手段」がいつの間にか入れ替わっていることがしばしばある。あれこれ調整して、家族でやっと憧れのハワイに来ることができた。いやあ、満足だ。妻も子どもたちも、喜んでいる。ところで、ハワイに来たまではいいけど、ハワイで一体なにをすればいいんだっけ?みたいなことだ。

目的さえ見失わなければ、こんなことは起こらない。「ハワイで、最高の昼寝をすること」が目的であってもいい。そんなことは、個人の自由だ。そのために大枚をはたこうが、他人にとやかく言われることではない。

「テレビはもはや、オワコンである」。巷で噂されるそんな声に、正直、イラっとしていた。でも、こう考えるとすっきりする。「ハワイねえ。何度か行ったけど、正直もう飽きたな」などと言ってるような人に限って、ハワイの魅力を、ハワイで過ごす時間の魅力を、なにひとつ分かってはいないのだ、と。


鈴木おさむ氏が脚本を手がけた最新ドラマ「殴り愛、炎」の情報については、こちら

大丸、百貨店の常識「消化仕入れ」依存を脱却…テナント比率65%の“パルコ化”に活路

 J・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は、3月中旬から高級ブランドの婦人服のサブスクリプション(定額課金)サービスを始めた。月額1万1880円(税込)で海外ブランドなどを毎月3着まで着ることができる。小売り大手によるサブスクは初めてだ。

 まず国内外の50ブランドが参加。イタリアファッションブランドの「マルニ」、フランスのパリジェンヌの気分が味わえる「シーバイクロエ」など海外有力ブランドのほか、三陽商会の「エポカ」、TSIホールディングスの「アドーア」など百貨店向けの高価格帯のブランドが中心になる。9割以上のブランドがサブスクで取り扱われるのは国内初。大丸松坂屋が取引先から買い取り、サブスク用とする。

 利用者は専用サイトで自分好みのジャケットやブラウスなどを3着まで選び、自宅などに届けてもらう。サイズ違いに対応するため、1回の注文で1アイテムまで交換が可能。気に入った商品は会員価格で購入できる。送料、クリーニング料、補修費用は月額料金に含まれている。休会、退会も自由にできる。

 5年後に会員数3万人、売上高で年55億~60億円を目指す。大丸松坂屋が事業主体となり、配送(日立物流)、クリーニング(バレル、洗濯ブラザーズ)、リサイクル(日本環境設計)とパートナーシップを組んで実施する。

 サブスクは、動画配信の米ネットフリックスなど世界大手が日本でも利用者を増やしている。衣料品では新興勢力のエアークローゼット(東京・港区)やアパレル大手のストライプインターナショナル(岡山市)がサブスクを手がけている。ただ、高価格帯のブランドの取り扱いは多くなく、本格的な普及には至っていない。

 コロナ禍で来店客が減るなか、大丸松坂屋はモノの所有ではなく利用を促すことで稼ぐビジネスモデルの構築を模索している。ネットで注文する点も従来の百貨店ビジネスと一線を画す。J・フロントは百貨店業界のサブスクの先駆者になれるのか。

インバウンド消費の象徴「ギンザシックス」が苦戦

 J・フロントは、どこよりも早く脱百貨店に経営の舵を切った。2017年4月、松坂屋銀座店跡地に開業した「ギンザシックス」は、東京・銀座のインバウンドを象徴する都心型商業施設と評された。しかし、新型コロナウイルスによるインバウンド消費の消失で苦戦に陥った。

 今年、開業4周年を迎え、初めての大規模なリニューアルを実施した。20年12月、飲食店、アパレルショップ、化粧品など40店が一斉に退店した。代わって40店が順次出店。高級ブランド「グッチ」のジュエリー・時計の店が出た。フランスの靴ブランド「クレジュリー」などは日本初進出だ。食品ではイオン傘下の有機食品専門店「ビオセボン」が出店した。

 ギンザシックスは銀座の顔として鳴り物入りでオープンした。大理石や高級カーペットを使い、話題づくりに一役買ったが、逆に顧客が店内に入りにくい一因にもなった。観光施設として集客力は抜群だったが、商品を購入している顧客は相対的に多くはなかった。「高級ブランドばかり並んでいるので、なかなか買う気になれない」という声は、開業当初からあった。それでも、開業人気で1年目の売り上げ目標はなんとかクリアした。

 インバウンドに依存していることが、当初から懸念材料として指摘されていた。ギンザシックスの免税売上比率は30%と高かったが、外国人の消費は移ろいやすい。開業効果が薄れ、外国人客が思うように集客できなかったらどうなるのか。高い家賃を払っているテナントの動向が気になった。

 新型コロナで、この心配が現実のものとなった。インバウンドは蒸発。大量のテナントが撤退した。J・フロントの脱百貨店のビジネスモデルは、「コロナの一撃でもろくも崩れ去った。脱百貨店の成果を誇示するギンザシックスは“インバウンドバブル”の象徴となった」(関係者)。

 J・フロントの好本達也社長の使命は脱・百貨店路線の総仕上げである。大丸心斎橋店(大阪市)は大丸最大の旗艦店で、再開発に5年の歳月をかけた。J・フロントが追及してきたのは「百貨店の未来」像だ。500億円を投じ、本館を建て替え、北館にパルコを誘致した。そして、これまでの百貨店業界の常識だった「消化仕入れ」と呼ばれる仕入れ方法を見直した。

 消化仕入れの売り場では、店頭の商品は取引先の在庫である。商品が売れた時点で百貨店が仕入れたことになる。売れ残っても百貨店には損失が出ない。だから、百貨店は「場所貸し業」といわれてきた。

 19年秋に建て替えた大丸心斎橋店本館は消化仕入れの売り場を大幅に圧縮。旗艦店としては異例のテナント比率65%を達成した。消化仕入れのモデルから、テナントからの家賃収入に依存する不動産モデルに思い切ってシフトした。好本社長が次なるターゲットとして見据えているのは、松坂屋の発祥の地にある、グループ最大の旗艦店、松坂屋名古屋店(名古屋市)だろう。グループの国内百貨店は16店あるが、今後はテナント比率を急拡大し、いわゆる“パルコ化”が検討されることになる。

 脱百貨店の具体策がギンザシックスとパルコ化だったが、コロナが、このビジネスモデルを粉砕した。

21年2月期の業績予想を下方修正

 1月以降の緊急事態宣言の再発出の影響で売り上げが減少したことから、J・フロントは21年2月期の最終損益(国際会計基準)を260億円の赤字(20年同期は212億円の黒字)と、従来予想から74億円下方修正した。

 昨年9月段階で260億円の最終赤字としていた業績予想を、いったんは引き上げた。客足の回復やコスト削減が背景にあった。だが、コロナの第3波の到来で百貨店の客数は12月が前年同月より4割減り、1月も5割減と低空飛行が続く。

 総売上高は従来予想より444億円引き下げ8104億円(前期比28%減)を見込む。年商1兆円の大台を大きく割り込むことになる。賃貸収入も大きく減少し、この結果、売上高にあたる売上収益は前期比34%減の3190億円と従来予想を185億円下回ることになる。

 2月には傘下の商業ビル・パルコで津田沼店(千葉県船橋市)と新所沢店(埼玉県所沢市)の閉店を決めた。店舗閉鎖関連費用(約44億円)のほか減損損失を計上する。パルコの事業環境の悪化を受け、繰り延べ税金資産を取り崩し60億円の税金費用を計上する。

(文=編集部)

中国、発展途上国向け融資で「秘密条項」多用が明るみに…途上国の債務解消の障害に

 フランスが主導し、海上自衛隊や米国、豪州が参加するインド洋の北東部に位置するベンガル湾での海上共同訓練「ラ・ペリーズ」が4月5日に始まった。インド洋のレユニオン島などに海軍基地を持ち、南太平洋に仏領ニューカレドニアを有するフランスは、2019年からラ・ペルーズを実施しているが、今年はインドが初参加した。在インドのフランス大使館はインドの参加について「5カ国による訓練が『自由で開かれたインド太平洋』での協力を推進する機会となる」とその意義を強調した。

 ベンガル湾は中国と国境紛争を抱えるインドの戦力圏であるが、近年中国のエネルギー調達にとって重要な地域となっている。米国との対立を深める中国は、米軍が警戒を強める南シナ海を回避するため、ベンガル湾に面したミャンマーの港から原油・天然ガスを中国に運ぶパイプラインを整備したからである。

 今回の訓練は「インド太平洋地域で覇権拡大を目指す中国への明確な牽制となる」との見方があるが、中国側は「日米豪印の戦略的な枠組み(クアッド)は明らかに中国を標的にしている」と反発している(4月7日付日本経済新聞)。ラ・ペリーズが開始された5日、中国の要請で日中外相電話会談が急遽行われたが、その背景には中国側の危機感の高まりがあったと推察できる。

 そもそも「中国包囲網」ともいうべき動きが出ている原因は、中国自身の行動にある。中国は自ら引き起こした新型コロナウイルスのパンデミック下で、好戦的な「戦狼外交」を繰り広げたことから、中国周辺に限らず、国際社会全体が警戒を強めるようになったのは今や周知の事実である。しかし中国自身はこの構図にまったく気づいていないようだ。

中国、米国と緊張関係にある国々と連携図る

 3月18日に米国アラスカ州で米国の外交トップと会談した中国の王毅外相は3月24日から30日の日程で中東6カ国を歴訪した。米国と緊張関係にある国々との連携を深め「対中包囲網」にくさびを打つ狙いだといわれている。

 最初の訪問国サウジアラビアでは国政の実権を握るムハンマド皇太子と会談した。中国外務省は「サウジアラビアは新疆ウイグル自治区や香港に関わる問題での中国の正当な立場を支持すると述べた。これに対し王氏は『サウジアラビアの内政に口を出すいかなる勢力にも反対する』と応じた」という。しかしサウジアラビア側は具体的な会談内容を公表しておらず、じっさいのやりとりは不明である。

 たしかにサウジアラビアの国営石油企業であるサウジアラムコは「今後50年、中国のエネルギー需要を満たすことが我々の最優先事項である」と秋波を送っているが、サウジアラビアの安全保障に深く関与しているのは米軍である。サウジアラビアの人権問題に厳しいバイデン政権との間で微妙な舵取りが求められている時期に、中国側の「プロパガンダ」の材料にされてしまったことで、サウジ側は苦虫を噛み潰しているのではないだろうか。

 26日に訪問したイランでは、今後25年間にわたる長期の協力協定(4000億ドル規模)に署名して話題となったが、具体的な内容は明らかにされていない。イラン国内では「譲歩しすぎだ」との声が早くも上がっており、先行きは不透明である。これによりイランも中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加することになるが、一帯一路については後述するように逆風が吹き始めている。

 28日に訪問したアラブ首長国連邦(UAE)では、UAEのテック企業が中国産ワクチンの委託生産(年2億回分、中東向けに供給)を行うことで合意した。新型コロナウイルスのワクチン不足が世界的に高まるなか、中国が輸出攻勢をかけているが、「ワクチン供給を中国だけに頼れば外交リスクを抱える恐れがある」との警戒感も出てきている(4月4日付日本経済新聞)。

「一帯一路」の醜い現実

 21世紀に入り破竹の勢いで経済を拡大させてきた中国の動向について、世界は常に注目してきた。習近平政権が掲げるメッセージは「一帯一路」であるが、バラ色のビジョンが綻び始め、醜い現実が明るみになってきている。

 米国のウイリアム・アンド・メアリー大学などが3月31日、「中国が発展途上国向けに融資する際、中国にとって有利な返済条件となる『秘密条項』を多用している」とする報告書を公表した。中国が過去20年間に24カ国に対して実施した100件の融資契約書(366億ドル規模)を入手して分析した結果だが、中国優位の融資契約は「債務の罠」に陥った途上国の債務再編を困難にしている。その影響があったのだろうか、今年春に開催が予定されていた「一帯一路」の首脳会談(2017年と2019年に開催)は見送りとなった(4月2日付日本経済新聞)。

 最近の中国を見ていると、豊かになればなるほど「不寛容さ」が目立つという奇妙な現象が起きているように思えてならない。その背景には、中国の悲しい近代の歴史が関係していると筆者は考えている。「自らは世界の中心である」との幻想に浸ってきた中国は、1840年に夷敵である英国と起こしたアヘン戦争で敗北したことを契機に、その後1世紀にわたり半植民地となったという苦い記憶がある。

 昨年末、英国が太平洋地域に空母を派遣した際に中国は「またアヘン戦争でもするつもりなのか」と猛反発していた(2020年12月23日付中央日報)。一方、先日の米中外交トップ会談直後から中国国内のSNSでは「中国すごい」論が蔓延し、中国人の自尊心はこれまでになく肥大化している(4月6日付ニューズウイ-ク)。

 精神分析学者の岸田秀氏は以前から「深刻なトラウマを患う中国は被害妄想に陥る傾向が強いが、これが転じて自我が肥大化すると手に負えない『モンスター』になる」と警告を発していたが、国際社会は試練の時を迎えているのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職

「出生率」の知られざる現実…東京都の一部で出生率上昇という事実から学ぶべきこと

 厚生労働省が公表した「人口動態統計」(2021年2月22日・速報値)によると、2020年の出生数は過去最少の87万人(対前年2.5万人減)となった。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来人口推計」(平成29年推計)では出生数が80万人を割るのは2033年という予測であったが、出生数が80万人を割るのは残り数年で、もはや時間の問題だろう。

 このような状況のなか、先般(2021年4月1日)、菅義偉首相は、子育て政策等を省庁横断的に取り組む「子ども庁」創設に関する検討の指示を出した。政府もついに強い決意で子育て政策に本腰を入れる覚悟を示すようだが、合計特殊出生率(以下「出生率」という)の上昇に何が必要なのか、しっかり見定めることも重要だ。

 例えば、地方創生と出生率の関係である。現在、人口減少に歯止めをかけるため、地方創生では東京一極集中の是正が一つの目標になっているが、仮に東京の人口をゼロにしても出生率はほとんど上昇しない。

 まずは、この簡単な試算を示すため、日本全国を「東京都」と「東京都以外」の2地域に区分しよう。

 出生率はこの2地域の女性が生涯に生む子どもの数で決まるが、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」や「平成27年国勢調査 東京都区市町村町丁別報告」によると、女性人口(20―44歳)は日本全体で約1700万人、東京都は約235万人であるから、東京以外の女性人口(20-44歳)は約1465万人となる。

 2019年の東京都の出生率は1.15であり、東京以外の地域における出生率の平均をZとすると、全国平均の出生率は「1.15×235÷1700+Z×1465÷1700」(※)と表現できる。2019年における全国平均の出生率は1.36のため、これが※と一致する条件はZ=1.394となる。

 この数値が意味することは何か。それは出生率が地域に依存して決まる場合、東京の人口をゼロにしても、日本全体の出生率は1.36から1.394までしか上昇しないという事実である。すなわち、出生率の増加は0.034しかない。

 以上は女性人口(20-44歳)で試算した。適切な計算ではないと思われるが、女性人口でなく、日本全体の人口(約1.3億人)、東京都の人口(約1400万人)、東京都以外の人口(約1.16億人)で試算しても、Zは1.385にしか上昇しない。

子育てしやすい都市構造という視点が重要

 あまり知られていないが、むしろ子育てしやすい都市構造という視点が重要であり、ここ数年、東京都の一部エリアで出生率が上昇している事実のほうが重要だろう。例えば、厚生労働省「人口動態保健所・市区町村別統計」において、平成20−24年と比較し、平成25−27年の合計特殊出生率が増加した上位50の区市町村のうち,東京都内の区市が5つもランクインした。しかも、9位が東京都中央区、19位が東京都千代田区であり、各々の出生率は1.39(0.29の上昇)、1.28(0.26の上昇)となっている。

 小泉政権以降、都市再生特区の政策などにより、都心の高層ビルや湾岸部のタワーマンションが次々に建設され、ファミリー向けのマンションも供給が増加。都心4区(千代田・中央・港・江東)の人口も増加した。このため、数年前、これらエリアでの小学校や保育所の不足が話題になったが、これら政策が冒頭の中央区などの出生率増に寄与した可能性がある。この事実は、地方創生で東京一極集中の是正を行えば、出生率が上昇するという一種の「神話」に関する再検証が必要なことを意味する。

 また、育児と仕事の両立を図るためには、保育所における待機児童の解消を速やかに行う必要がある。この視点では、保育所(厚労省所管)のみでなく、幼稚園(文科省所管)や認定こども園(内閣府所管)も一体的に管理し、子育てしやすい都市構造をどう我々が創造するかということのほうが重要である。

 菅義偉首相が「子ども庁」創設の検討指示を出した今こそ、出生数の増加に向けた本当の議論が始まることを期待したい。

(文=小黒一正/法政大学教授)

●小黒一正/法政大学経済学部教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。

京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。

1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。内閣官房「革新的事業活動評価委員会」委員。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。

タリーズ、コメダのお膝元で名古屋めし発売の狙い…持ち帰りに注力、コッペパンでも大激戦

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 4月7日、タリーズコーヒージャパンから東海3県(愛知県・岐阜県・三重県)限定で興味深い商品が発売された。5月9日までの期間限定だが、まずはその一部を紹介しよう。

<ドリンク>
・「苺あんラテ」(ホット/アイス)。トールサイズのみで価格は649円(税込み/以下同)。
・「苺あんミルク」(ホット/アイス)、苺あんラテのエスプレッソなし。サイズ、価格は同上。
・「米米あんスワークル」(フローズン)。サイズ、価格は同上。

<フード>
・「あんバターコッペ」「いちごホイップあんコッペ」、各385円。
・「もっちり鬼まんじゅうパン」、352円。
・「味噌カレードーナッツ」。330円。

 ご当地の喫茶店メニューで使われる「小倉あん」や「味噌」といった食材を用い、いわゆる“名古屋めし”を思わせるメニューだ。同時にブラジル珈琲やマグカップも開発した。

喫茶王国に「レトロ喫茶型商品」を訴求

 なぜ、こうした商品を開発したのだろうか。

 タリーズコーヒージャパンでマーケティングを担当する柳生剛氏(マーケティング本部マーケティング第一グループ ビーンズ・パッケージプロダクト・プロモーションチーム)は、こう話す。

「今回の商品は『RETRO TULLYS COFFEE』の取り組みです。タリーズは『地域社会に根ざしたコミュニティカフェとなる』を経営理念のひとつに掲げ、そのプロモーションとして地域の方に親しまれる限定企画や商品を展開してきました。北海道からスタートして10回目の今回は中部エリア。特に喫茶文化の根づく東海3県を対象に『レトロな喫茶店にあるような、可愛い商品』を開発し、それに合わせたマーケティングをしています」

 さらに、こう続ける。

「平成11年のデータですが、愛知県名古屋市内には約4000店の喫茶店がありました。近年の総務省統計局調査でも、名古屋市と岐阜県岐阜市は『喫茶店に支出する額』が年間1万円を大きく超え、他の都市を圧倒しています。そんな喫茶文化にも敬意を表しつつ、商品で訴求しました」(柳生氏)

 ちなみに、喫茶店の数が全国最多は大阪府で、次が愛知県。「大阪は喫茶店数が多いが、喫茶店支出にカネを使わない地域」だ。名古屋や岐阜が喫茶店で有名なのは一般的となったが、愛知県の公式サイトでも「愛知県は喫茶店王国?」として紹介されていた。

店舗数で競う「コメダ」の本拠地に殴り込みなのか

 人口約230万人の名古屋市は、コメダ珈琲店の本拠地(本社は同市東区)でもある。

 実は、国内のカフェ店舗数で、タリーズとコメダは競い合う。長年、タリーズが上位だったが、コメダが拡大。最新の店舗数(いずれも公表数値)は、コメダが873店(2020年2月末)、タリーズが767店(2021年3月1日)だ。

 ちなみに、店舗数1位は「スターバックス コーヒー」で1628店(2020年12月末)、2位は「ドトールコーヒーショップ」の1081店(2021年2月末)。国内のカフェチェーンで1000店を超えるのはこの2ブランドだけで、コメダは3位、タリーズは4位となっている。

 そのコメダの本拠地に「タリーズが名古屋めしメニューで殴り込み」なのかと思い、聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

「競合としてのコメダさんは意識していますが、基本的な立地や客層は異なります。タリーズが出店するのは、大都市でも駅前のビルイン(ビル内店舗)がほとんどです。客層も女性客が多く、若い大学生や会社員にも多くご利用いただいています」(同)

 最近はコメダも都心型店やビルイン店が増えたが、もともとコメダが得意なのは「郊外型店」で、客層は「家族客や年配客」だ。逆に、大型駐車場を完備した一戸建てのタリーズ店舗や、新聞を広げながらタリーズ店内で飲食する年配客、の姿はイメージできない。

 ちなみに「名古屋駅、タリーズ」で検索すると「大名古屋ビルヂング店」などが出てくる。2016年3月に大型商業施設・オフィスビルとしてリニューアル開業した同ビルは、名古屋駅前の超一等地にある。ビル内にあるタリーズは、コメダ店内の雰囲気とはかなり違う。

「新たな人気商品」をつくりたい

「限定商品の狙いはそこ(対コメダ)ではない」という柳生氏に、今回の“名古屋めし”の位置づけを聞いた。

「送り手側としては、新たな人気商品を育成したいのです。これまでの『RETRO TULLYS COFFEE』では実績があります。たとえば、2015年に北海道で発売した『タリーズ スノーマン ラテ』は大ヒットし、2017年と2018年には期間限定で全国展開商品に昇格、2020年1~3月には、山陰・北陸エリアの『タリーズ スノーマン パレード ラテ』という限定商品でも販売しました」

“名古屋めし”といえば「溶き卵を敷いたナポリタンスパゲティ」も有名だが、今回の商品には入っていない。

「アフターコロナを意識して『個包装で持ち帰り』できる商品に絞りました。タリーズはパスタメニューも支持されていますが、今回はパンメニュー中心となっています」(同)

名古屋の喫茶店は「オトク」と「オマケ」も特徴

 日本のカフェ・喫茶店を生活文化の視点でも考察する筆者は、10代まで愛知県で暮らした。その経験も踏まえて感じるのが、名古屋(地域)の喫茶文化は「オトク」と「オマケ」も特徴なこと。「愛知モーニング」「名古屋モーニング」と呼ばれるモーニングサービスは、その代表例だ。朝の時間帯にドリンクを頼めば無料でつくトーストやゆで卵は、いまや全国的に有名となった。タリーズの「モーニングサービス」は何だろう。

 今度は広報担当の山口さほり氏(秘書室広報チーム チームリーダー)が、こう説明する。

「タリーズでは東海3県に限らず、朝の時間帯にモーニングセットを提供しています。また、新規開業やリニューアルした店のオープンなど、何かのイベントの際に先着限定で粗品を配るなどのサービスも行います。しかし、オマケ文化と真っ向勝負をしたいわけではなく、あくまでタリーズ流で考えています。朝の開店直後からパスタや温かいパンメニューを提供するのも、“モーニングサービス”といえるかもしれません」(同)

 名古屋市内で創業半世紀を超える、人気喫茶店の創業者(現会長)に話を聞いたことがある。昭和30年代の創業以来、名古屋にありながら「無料でつくモーニングは一切やったことがない」と断言した。「その代わり、朝の7時から自家焙煎したコーヒーを1杯ずつハンドドリップで淹れるのが、ウチのモーニングサービス」と語っていた。

競合が力を入れる「コッペパン」をどう育てるか

「北関東での地域限定から定番商品となったメニューとしては、『極厚ハムカツサンド』もあります」と話す柳生氏。今回の東海3県限定で期待する商品は何なのか。

「コッペパンですね。レトロブームでコッペパンの人気が高まっており、個人店以外に大手が運営する専門店も広がっています。具材の工夫もでき、魅力的な商品だと思います」(同)

 首都圏を中心にコッペパン店を展開する「パンの田島」という店は、ドトール日レスグループが運営する。コメダもコッペパンには力を入れる。もともと岩手県盛岡市の「福田パン」に代表される個人経営の店が人気だったが、近年は大手も熱い視線を注ぐ。

 筆者はコッペパン取材もしてきた。「大きく、惣菜系と甘いもの系と分けられ、パンの風味に加えて、具材次第でまったく違う味に変わるのが魅力」(パンの田島)だという。タリーズが、今後どう展開していくかも注目したい。

外出自粛で打撃を受けた「カフェ」に、お客が戻るのか

 経営の視点でいえば、コロナ禍での店舗休業や営業時間短縮の影響もあり、2020年度のタリーズコーヒージャパンの業績は厳しい見通しだ(同社の決算発表は5月以降)。1997年に日本1号店を開業以来、年々業績を拡大してきた同社には正念場となりそうだ。

 緊急事態宣言が解除された現在、カフェにお客が戻るのだろうか。

 筆者は戻ると考える。巣ごもり中の消費者にも話を聞いてきたが「気兼ねすることなく楽しく外食がしたい」という声が多い。店もお客も引き続き、コロナウイルスへの対策が必要だが、「手軽な価格で楽しめて」「自宅ではない雰囲気が味わえる」外食への渇望感があるのだ。

 そう考えると、喫茶メニューに対して目の肥えた東海3県の消費者が、タリーズの限定商品をどう評価するか。同社にとって「テストマーケティング」の場でもある。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
 1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。 近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

春水堂、日本上陸の舞台裏…タピオカブーム仕掛け人の苦闘

 飲食業界における一大ブームとなった「タピオカミルクティー」。アパレル業界において異例の大ヒットとなった「スーツに見える作業着」。このまったく異なる2つの分野の事業で大成功を収め、「令和のヒットメーカー」という異名を持つオアシスライフスタイルグループ代表取締役CEOの関谷有三氏の原点にあるのは、「水道屋」である。

 では、なぜ関谷氏は水道、飲食、アパレルという3つの異なる分野で、次々に事業を成功させることができたのだろうか。その成功の原理と法則がつづられた『なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?』(フォレスト出版刊)をのぞくと、関谷氏の半生は挑戦に次ぐ挑戦であり、人の心を揺さぶる強い信念を持っていることが感じられる。

 4回にわたるこの連載を通して、関谷氏の軌跡をたどる。第2回は、日本で水道事業を成功させた関谷氏が次に向かった場所、台湾からストーリーが始まる。

春水堂のタピオカミルクティーとの運命の出会い

 台湾――。日本からの旅行客も多く馴染みの深いこの地で、関谷氏は水道事業のアジア展開を進めるために何度も視察を重ねる。あるとき、帰国の便に乗るまでの間に、空港の出国カウンター近くの店のとある飲み物を口にした。

 それが、タピオカミルクティーとの運命の出会いだった。

 あまり甘いものを口にしない関谷氏だったが、飲んでみた途端、おいしさが口の中に広がり、感動が押し寄せた。そのお店の名前は「春水堂」。さっそく次の視察で台中の本店に向かい、風格で厳かな雰囲気をまとう建物に入った。その瞬間、関谷氏は衝撃を受け、頭の中にはっきりとした映像が広がった。

 それは、自分が春水堂を日本中で展開しているシーンだった。もはや、これは理屈ではない。それをするしかなかった。

 しかし、そう簡単に物事は進まない。春水堂は台湾の国民的人気カフェでありながら、サービスの質を保つために「海外には絶対に出ない」というポリシーがあった。関谷氏の魂がいくら「これをやりたい」と叫んでも、オーナーに会う手立てはなかった。

 水道事業のために訪れていた台湾だったが、月3、4回のペースで春水堂に通った。すると、同じ年頃の男性店員と仲良くなった。そして、春水堂に通い始めて1年半。さすがにそろそろ引き際かと考えた関谷氏は、ありったけの熱い想いをつづった中国語の資料を男性店員に渡した。

「これが最後のお願いです。これをオーナーに見せてほしい」

 そして、その1週間後。男性店員から1通のメールがきた。

「オーナーに見せました。関谷さんに会いたいと言っています」

ダメ出しの連続、最後にオーナーが決断したのは…

 オーナーと面会した関谷氏は、自分がまったくの飲食の素人であることを伝えた。そんな彼にオーナーは驚き、大声で笑ったが、それでも提案書を高く評価してくれた。

 本当に日本進出のパートナーとなり得る存在なのか。関谷氏は春水堂の幹部たちから大量の宿題が出され、それに立ち向かった。品質維持のオペレーション、従業員の教育計画、店舗設計プランなど、飲食業界に明るくない関谷氏にとっては難題ばかりだった。

 春水堂の幹部たちは日本進出に大反対だったが、オーナーだけが関谷氏を評価してくれている。そんな状況のまま、1年が経った。ダメ出しをされるばかりの日々だったが、決してくじけることはなかった。「春水堂を日本に進出させられるのは自分だけ」という想いが、それを支えた。

 そんなあるとき、台湾での経営会議に呼ばれた関谷氏は、その前にオーナーと2人で話す機会を設けた。その場で、関谷氏はこう語った。

「100%上手くいくという保証は、確かにありません。でも、僕には誰にも負けない情熱があります。飲食の経験はありませんが、だからこそ誰よりも素直だ。そして、日本展開は息子さんと共同でやらせてくれませんか。息子さんは飲食のプロです。サポートしてくれたら心強い」

「ただ、僕には経営の経験は多少はあります。そして息子さんと僕とは年齢も近い。仲もよいし相性もよい。息子さんにとっても海外展開は新たな成長の機会になるはずです。わたしはそのベストパートナーになれる」(p.57,58より引用)

 熱い言葉だった。「息子さん」とは、春水堂に通い始めて最初に仲良くなった男性店員のこと。実は、彼はオーナーの息子だったのだ。関谷氏の熱意は運と縁を引き寄せていた。

 心強いパートナーと一緒にやりたい。その想いを関谷氏はまっすぐに伝えた。そして、最後にこう告げた。

「ゼロからの起業。タピオカミルクティーの開発。長い歴史のあるお茶文化に革命を起こした。オーナー、あなたは真の挑戦者です」(p.58より)

 経営会議が始まり、関谷氏と組むことに反対の声が飛び交う中で、オーナーは決断をする。それは、関谷氏に任せてみるということだった。オーナーも周囲の反対を押し切って春水堂を立ち上げた。全力でやって失敗したなら、それもかまわない。そんな想いがあったのだろう。そして、関谷氏はオーナーの息子とともに日本での春水堂展開を進めることになった。

「絶対にうまくいかない」を乗り越えた先に

 春水堂、日本上陸――。

 そんな噂を知った一人の女性が、SNSで関谷氏にアクセスしてきた。彼女は世界的な経営コンサル会社の社員で、駐在していた台湾で春水堂愛に目覚め、いてもたってもいられずに関谷氏に連絡をしてきたのだった。

 春水堂への想いを持つ2人は面会し、さっそく意気投合。話はどんどん進んでいき、いつしかどのように日本展開しようかという具体的なテーマに移っていた。関谷氏は、話せば話すほど、この人と一緒にやりたいという想いが強くなったという。そして、帰り際、意を決して彼女に「コンサルとしてではなく一緒にやらないか」と誘った。

 彼女にとってみれば、それはあまりにもリスクのある選択だった。給料も下がる。うまくいくかどうかはわからない。それでも決断した。「本当によく考えました。入社させてください」。うまくいかなくとも後悔はない。想いはみな同じだった。

 関谷氏は、日本で春水堂を経営する会社「オアシスティーラウンジ」を設立。オーナーの息子は台湾にいるので、日本のスタッフは2人だけだ。2人は連日、喧嘩のようなやりとりを繰り広げた。どちらも気が強い上に、想いはそれ以上に強い。真剣だからこそぶつかった。

 ところが、立ち上げてからしばらくは苦難の状況が続いた。オープン当初こそ話題にはなったが、カフェ業界の「コーヒーがないと絶対うまくいかない」という常識が襲いかかっていた。なんとか打開しようといろいろ試したものの、迷走した。何しろ、前例もなければ答えもない世界にいるのだ。ただ、春水堂のオーナーへの責任がある。だから負けるわけにはいかない。そう自分たちに言い聞かせた。

 そんなときである。ヒットの芽は突然現れる。人気レストランを経営する友人に協力してもらい、台湾らしい麵料理を開発し、それとミルクティーをセットで売り始めた。すると、おしゃれで落ち着く店内で女性が気軽に食事できるお店としてヒットした。

 その後、本格的なお茶を使ったアレンジティーが少しずつ熱狂的なファンを生み出しながら、店舗は都内から関東、そして全国へと広がっていき、空前のタピオカミルクティーブームへとつながっていく。春水堂の日本上陸から3年が経とうとしていた。

「これをやるんだ」という強い想いから始まった飲食事業は、水道事業に続くオアシスグループのもう一つの柱となった。しかし、まだ柱が足りない。もう一つの経営の柱がなければいけない。そう考えていた矢先、関谷氏はまたまた奇想天外なアイデアにめぐり合うことになる。

(文=編集部)

※本記事はPR記事です。

ヒカル、交際女性を妊娠→堕胎させた衝撃の過去…朝倉未来、シバターと完全絶縁か

 注目度が高く、多くのファンを抱える人気YouTuberたち。彼らからどのような発信があったのか、3月26日~4月1日に話題をさらった3人を紹介しよう。

ドッキリを受けたヒカルが……

 ドッキリのターゲットになった動画を3月27日に公開したヒカル。「ファンを妊娠させてしまった」というロケマサのウソ報告を受け、ヒカルはアドバイスを伝えるなかで「俺も1回、子どもができたってなったことあったんやな実際」と明かし、視聴者を驚かせた。

 ヒカルいわく、相手は双子を育てるシングルマザーで、彼は出産を希望。しかし相手が体への負担を考えて、出産には至らなかったそう。そんなヒカルの過去を知ったファンからは、「相手の意見をちゃんと尊重してて感心した」「自分の経験を踏まえてアドバイスしてるのがいいね」といった声が寄せられている。

朝倉未来、シバターに苦言

 総合格闘家の朝倉未来は3月29日、YouTubeサブチャンネルに『シバターとは本当に終わりかもしれない』と題した動画を投稿。どうやらシバターが「RIZINに出られたのは朝倉未来のおかげだけではない」と発言したことが気に入らなかったようです。

 朝倉といえば3月10日投稿の動画の中で、「シバターのメンヘラ具合に耐えれなくなった」とコメント。「縁を切ろうかな」と語ったものの、ネット上には「完全に彼氏目線で笑った」「こういう茶番好きです」などの反応が相次いでいた。朝倉とシバターの関係は果たしてどうなるのか。

小倉優子のYouTube開設をギャル曽根も祝福!

 芸能人のYouTube参入が相次ぐなか、タレントの小倉優子も『ゆうこりんチャンネル』を開設。3月31日に1本目の動画を公開し、ゲストとして登場した友人のギャル曽根から「待ちに待ってた。ゆうこりんのYouTube」と祝福を受けました。

 小倉のYouTube開設に、ファンからは「メイク動画アップしてほしい!」「元気な姿を見られるだけで嬉しい」などの反響が続出。なお小倉は、すでに2本目の動画をアップしており、“親子で作れるフルーツゼリー”をレクチャーしている。今後もテレビで見せる表情とは違う、小倉の素顔が見られそうだ。

 衝撃の告白から新規参入まで、話題に事欠かないYouTubeの世界。次に視聴者たちから注目を浴びるのは、いったい誰か。

(文=編集部)

ゾゾタウンで買うべき花粉対策アイテム5選!着るだけ、吹きかけるだけ、高コスパ家電も

 例年、多くの人を悩ませるスギ花粉。関東地域では2月から4月いっぱいがスギ花粉のピークといわれ、7月上旬頃まで飛び続ける見込みだという。花粉症の人にとっては春から初夏まで、長い戦いを強いられるわけだ。そのため、対策グッズは取り入れやすさ、使いやすさはもちろん、コストパフォーマンスが良いものを選びたい。

 今回はファッション通販サイトの「ZOZOTOWN」で見つけた、この春に買うべき「花粉対策グッズ」を5つ紹介する。着るだけ、外出前に吹きかけるだけ、のお手軽アイテムから、1年を通して使える高コスパ家電まで幅広くチョイスしたので、ぜひ参考にしてほしい(各種情報は調査時点、価格は税込み)。

GLOBAL WORK「高機能ステンカラーコート」/1万890円

 どんな年齢、性別の人でも手に取りやすいアイテムを展開するファッションブランド・GLOBAL WORK。今回紹介する「高機能ステンカラーコート」は花粉が付着しづらい生地でつくられており、さらに付着した花粉を払い落としやすくしているという。さらに「高機能」という商品名にふさわしく、撥水、ストレッチ、裏地には抗菌防臭機能を備えるなど、花粉症ではない人にもおすすめなハイテク感のある1着だ。

 ステンカラーコートは、ビジネスシーンはもちろん、休日のカジュアルなスタイルにも合わせられる。また、ネイビー、ベージュ、ライトブルー、ダークブルーと、春らしいさわやかなカラーのラインナップなので、これからの季節にピッタリだ。

dプログラム「アレルバリア ミスト N」/1650円

 dプログラムは資生堂が展開する敏感肌向けの化粧品ブランドだ。花粉やほこりなどによる肌荒れにアプローチした商品も多く、「アレルバリア ミスト N」もそのひとつ。肌を守るオイルと保湿成分である化粧水が混ざり合ったミストで、出掛けに顔周りに吹きかけるだけで花粉をブロックすることができる。化粧水とはいえ、いちいち手に出して塗布するタイプではなく、スプレーするだけなので使いやすさもバツグンだ。

 同商品を店頭で買おうと思うと、化粧品コーナーに足を運ばなくてはならず、男性が行くとなると、少し気恥ずかしさを覚える人もいるだろう。しかし、通販ならそうした心配もいらない。まさにZOZOTOWNで買うべきアイテムといえる。

CoCo:LO「首下げ空気清浄除菌器ドーナツクリーン」/4180円

 インテリアブランドのCoCo:LOが販売する「首下げ空気清浄除菌器ドーナツクリーン」は商品名の通り、首からさげられるドーナツ型の空気清浄機だ。大量のマイナスイオンを発生することで除菌や消臭を行い、花粉、ほこり、PM2.5などを防いでくれる。

 静音かつ軽量なので、首からさげていても邪魔にならない。さらに、付属のホルダーを使えば車のエアコンへも設置できるし、デスクやベッド周りに置くことも可能だ。空気清浄機に欠かせないフィルターの交換も不要で、バッテリーも長持ちするので、こまめな手入れや充電を忘れがちな人でも使いやすい。サイズ感を含め、どこに置いても違和感のないデザインもうれしいポイントだ。

CONTROL FREAK「パターンマスク&ティッシュポーチ」/2750円

 花粉症に悩む人たちにとって、この時期は外出時の必需品が多い。鼻をかむティッシュはもちろん、目薬、内服薬、予備のマスク、鼻をかんだティッシュを入れておくゴミ袋など、こまごましたアイテムが多く、持ち運び方に悩む人もいるのではないだろうか。

 マストアイテムをひとまとめに持ち運びたい人におすすめしたいのが、雑貨やアクセサリーを販売するCONTROL FREAKの「パターンマスク&ティッシュポーチ」だ。

 この商品は、ティッシュケースとマスクケースが一体化したアイテムで、チャック式の収納スペースも付いている。ティッシュと予備のマスクは所定のポケットへ入れ、目薬やゴミ袋をチャック式の収納スペースに入れれば、使いやすさも申し分ない。

東京家具「FUWAKARA(フワカラ)」/1万2390円

 花粉が大量に飛散する春は、屋外に布団を干すと大惨事になりかねない。うっかり外干しをしてしまい、花粉が布団に付着して、就寝時にくしゃみや鼻水が止まらなくなったという経験をしたことがある人も多いだろう。天日干し以外で布団を干したい人には、布団乾燥機の使用がおすすめだ。ZOZOTOWNは家電の取り扱いも豊富で、東京家具の「FUWAKARA(フワカラ)」という乾燥機を購入することもできる。

 布団乾燥機は寝具に限らず、衣類や靴も乾燥可能だ。春が終わって梅雨の時期になると雨の日が増えるため、意外と使用シーンが多い。また、冬場も就寝前に布団を温めるなど暖房器具的な使い方ができるので、通年で活躍してくれるアイテムなのだ。少し値は張るが、一年中使えると考えればコスパも良いだろう。

 ZOZOTOWNにはファッションアイテムに限らず、雑貨、家電、コスメなども充実している。あらゆる方面から対策し、苦しい花粉シーズンを乗り切ろう。

(文=清談社)

【プロ野球人・木村拓也の原点3】親友が見た巨人コーチ抜擢の理由…キャンプで驚きの行動

 2010年4月7日、広島大学病院で一人のプロ野球人がくも膜下出血のため息を引き取った。同年、読売巨人軍の1軍内野守備走塁コーチに就任したばかりの木村拓也さん=享年37歳=である。

 1990年オフ、捕手として日本ハムファイターズにドラフト外入団。身長、わずか170cm。出場機会に恵まれず、一度は捕手失格の任意引退扱いになるも、1994年の広島東洋カープ移籍を機にスイッチヒッターへと転向し、投手と一塁手以外のすべての守備にも取り組んだ。このことが、木村さんをして球界屈指のユーティリティプレーヤーにのし上がる下地となる。

 巨人時代(2006~2009年)はリーグ3連覇、7年ぶりの日本一達成にも貢献した。中でも捕手不在の不測の事態で10年ぶりのマスクをかぶり、チームを勝利に導く好リードを見せたことは(2009年9月4日の東京ヤクルトスワローズ戦)、今も語り草になっている。

 一貫してチームプレーに徹したその野球観は、何によって育まれたのか。何よりも、「キムタク」の愛称で親しまれ、誰からも愛されたその人間性は、どこからきているのか。

 木村拓也さんの魅力を、彼の原風景の中からたどる。

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魂でプロ野球を生き抜いてきた男

「拓也は上層部に絶対媚びを売らなかった」

 木村さんが日本ハムに入団した年、同球団のスカウトから2軍バッテリーコーチに就任した淡河弘さんは、下積み時代の木村さんの姿が目に焼き付いているという。

「キャンプや遠征時の夜間練習では、みんなが素振りを始めると、拓也の姿だけが見えなくなりました。探してみると、集団から離れた田んぼの暗いところで、一人黙々とバットを振っている。『誰もいないところで集中したい』というのが、その理由でした。

 だから、僕もこう言った。『バッティングコーチに目立つようにせんといかんじゃないか』。すると、拓也が『これは、僕自身の練習ですから』。『けど、いろんなコーチがいるんだからな。俺が認めても他のコーチにも訴えかけないと、試合には出られんよ』。『それはそれで、別にかまわないっす』。拓也はね、決して大ボラを吹かない。闘志を常に胸に秘めて、『使ってくれれば、結果を出すよ』というオーラを、いつも漂わせていたんです」

 かつて広島の左のスラッガーだった山本一義さんは、広島の打撃コーチとして高橋慶彦を球界屈指のスイッチヒッターに育て、金本知憲や前田智徳などの若手を鍛え上げた実績を持つ。日本ハムから広島に移籍した木村さんにスイッチヒッター転向を持ちかけ、猛トレーニングで鍛え上げたのも山本さんだった。

「とにかく、タクには朝から深夜まで左でバットを振らせました」

 山本さんは回想している。

「掌にできたマメが潰れ、その上にまたマメができたほどです。もう掌は血だらけで、痛くてバットも握れない。それでもタクは掌にタオルを巻き付けて、素振りをやめないんです。私も試すつもりでよく聞いたものでした。『きついだろう?』。少しでも弱音を吐いたら、その時点でスイッチ転向をやめさせるつもりでした。

 しかし、タクは絶対『きつい』とは言わない。目を輝かせて、『見ちょってください。やりますから!』と言うんです。ノックの打球を捕れず、『お前、グローブあるのか!』と怒鳴ったときも、自分の胸を叩いてこう言い返してきました。『ここにあります!』。あの子は、魂でプロ野球を生き抜いてきた男なんです」

引退後、すぐに巨人のコーチに抜擢された理由

 木村さんが巨人の1軍内野守備走塁コーチに就任した2010年、宮崎南高校でバッテリーを組んでいた佐々木未応さんは、都城泉ヶ丘高校の野球部監督を務めていた。

 同年2月、佐々木さんは同じ指導者として「プロのコーチが選手にどんなことを教えているのか」――それを学ぶために、巨人がキャンプを張る宮崎県営球場に足を運んだ。

 コーチ1年目の親友が、若手選手を相手にボールを転がしていた。それを選手が素手でとって、ネットスローする。この単純動作を何度も繰り返していた。

「拓也は高校時代から基本練習と皮膚感覚を大事にしてきました。バッティングや守備でも決して手袋を使わなかったんです。自分がやってきたその地味な練習を、今度は巨人の若手にコツコツと教えている。日が陰り始めると、ナインの何人かが室内練習場に移動し、拓也もそこに向かいました。僕はそろそろ帰るつもりでしたが、拓也の姿をもう少し目に焼き付けておきたい。ふとそう思って、覗きに行きました。驚いたことに、小笠原(道大)が特打をやっている横で、拓也がノックの居残り練習を一人黙々とやっているんです。僕は幼い頃から巨人のキャンプを見てきましたが、コーチが居残りでノック練習している姿なんか、一度も見たことがない。なぜ、あいつが引退してすぐに天下の巨人のコーチに抜擢されたのか、その理由がこのときはっきりわかりました」

 恩師の清水一成さんは、木村さんの存在をこう形容した。

「努力する才能」――。

 そして、宮崎南高のバックネット裏に翻る横断幕の「苔魂」の大きな2文字は、木村さん自身が自分の代名詞としてきた言葉だという。

「俺は岩にへばりついた苔だ」

 同校の正門近くの木陰にひっそりと佇む、甲子園初出場の記念石碑。そこに刻まれた碑文の凜とした力強さは、その「苔魂」に宿った木村拓也さんの、天からの檄のようにも聞こえる。

ぼくら
ひとりひとりは
強い
一本の青い
麦だった

(文=織田淳太郎/ノンフィクション作家)

NHKが聖火リレー中継から五輪反対の声をカット! 不祥事や五輪批判は一切報じず…まるで北京五輪のような情報統制

 全国の新型コロナ新規感染者数が急激な右肩上がりとなり再拡大が進むなか、世界的パンデミックもお構いなしで強行されている東京五輪の聖火リレー。集まった人で沿道が「密」になっているという指摘は当初からなされていたが、とくに愛知県では何重もの人垣ができる混み合い具合で、丸川珠代・...