クラシックオーケストラ、なぜ超厳格な感染対策?ウーバーイーツで生計を維持する音楽家も

 東京2020オリンピック競技大会が開幕し、日本選手のメダルラッシュに僕も感動の毎日です。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで大会が開催されたことについて、各メダリストがインタビューの際に感謝の言葉を述べていることにも心が動かされます。

 スポーツ選手も、オリンピック開催前の中止論議のなかでトレーニングを積むのは、苦しい時間だったと思います。かく言う指揮者の僕も、特に昨年、コンサートがキャンセル続きだった頃には本当に参りました。

 開催されるかわからないコンサートのために、なんとかモチベーションを保ちながら、必死に一日中スコアを勉強する日々がずっと続き、公演ギリギリになって、マネージャーからコンサート中止の連絡が届く。僕はがっくりと肩を落として、勉強をしていたスコアを楽譜棚に戻す――。そんなことが連続しました。

 それは、ほかの指揮者や、朝から晩まで練習をしているソリスト、オーケストラの団員や歌手も同じだったと思います。

 運悪く感染してしまったら仕方がないわけですが、同じく怖いのは濃厚接触者になることです。2週間の外出自粛となり、感染していなくても仕事はすべてキャンセル。もちろん、指揮者やソリストは収入がゼロになります。そんなわけで、音楽家の感染症対策は一般の方よりもしっかりとやっているように思いますし、僕が知る限り、日本人の指揮者やソリストで新型コロナに感染した人はいません。

 これはオーケストラ楽員も同じです。それこそ本番直前になって、特に管打楽器奏者の1人でも欠けてしまったらオーケストラは演奏できなくなるだけでなく、そもそもコンサート自体も中止になってしまいます。

オーケストラの感染対策

 もちろん現在では、新型コロナ感染症への対処法もわかってきたので、オーケストラも盛んに演奏を繰り広げて多くの音楽ファンの耳を楽しませていますが、読者の皆様がオーケストラコンサートに行かれた場合、「ちゃんと感染症対策をしているの?」と疑問に感じるかもしれません。

 会場に着いた観客は、チケットの半券を自分でちぎって所定の箱に入れるだけでなく、別紙に住所や電話番号を座席番号と一緒に書いて提出し、プログラムすらも自分で取るので、ホール係員との接触はありません。入場する際の検温消毒は言うまでもなく、演奏会中もマスク着用が求められます。そんななか、ステージを見てみると、オーケストラはマスクもなく、これまで通り密集して弾いているように見えるのです。

 しかしながら、それは見た目だけです。もし、ドローンで上から眺めたとしたら、しっかりと感染症対策が施されていることに気づくでしょう。

 まず、オーケストラの場合は楽員全員が指揮者を向いて演奏しているので、楽員同士は対面しません。弦楽器や打楽器奏者であっても政府基準の1m程度の間隔をあけ、楽器に呼気を吹き込む管楽器奏者は1.5m程度の間隔を取ることが多いのです。これは通常の配置よりもかなり広げているため、演奏に支障が出るか出ないかギリギリで、最初のころは戸惑いも多くありました。オーケストラを使った実証実験では、演奏を通して、それほど飛沫が飛ばないことがわかっているのですが、やはり念には念を入れて厳しい対策をしています。

 ただ、例外は指揮者で、すべての楽員と対面することになるので、オーケストラとは2m近く距離を取ることとなり、普段よりも孤独感が増しています。

 オーケストラは一般的に、演奏会中には会話をしないためマスクを着用していないのですが、時にはマスクをしなくてはならないコンサートもあり、見ていると苦しそうです。音楽も体力勝負なのです。

 もちろんリハーサル中には、マスクをすると演奏が不可能な管楽器も、自分の出番ではない時にはできるだけマスクをします。ステージ以外では一般社会と同じようにマスク着用していることは言うまでもありません。会場入りする際の検温・消毒はもちろん、本番直前の舞台裏では、まるでスーパーマーケットのレジ前のように、楽員が間隔をあけて並んでいます。管楽器奏者はステージにタオルなどを持っていき、そのタオルで楽器にたまった水分を吸い取り、決して舞台上には落とさないくらいの徹底ぶりなのです。

 舞台スタッフも、演奏前後に楽員が使用する椅子の消毒に大忙しです。病院ほどではないにせよ、かなり厳しい基準を設けており、オーケストラ内での感染拡大の例は、日本で聞いたことがありません。そんな努力のお陰で、毎晩のように日本のどこかで大感動のオーケストラコンサートが繰り広げられているのです。

音楽家の目に見えない”報酬”

 やっと通常に戻ってきつつあるオーケストラですが、この1年間、音楽だけでなく演劇も含めた舞台芸術は大きな打撃を受け続けました。今年2月までの1年間で公演中止、入場者制限により失われた売り上げは、音楽で3800億円、演劇やミュージカルのステージでは1600億円に上ります(ぴあ総研調査)。これは大きな打撃で、音楽は90%、舞台では76%の収入が失われたことになります。

 僕も回答した昨年秋に行われた文化庁のアンケート集計では、昨年3月から8月の間、収入がまったくなくなった文化芸術関係者は40%にも上り、79.8%は「決まっていた仕事がなくなった」と回答したそうで、フリーの音楽家はウーバーイーツなどで配達をしながら、食いつないでいると聞くことがあります。

 指揮者も、基本的にはフリーの音楽家です。ソリストはそもそも独りぼっちです。音楽事務所に所属していても、そこから毎月の給料をもらうのではなく、演奏会がなければ収入はゼロ。演奏会のための楽譜代、研究費、リハーサル場レンタルなどの必要経費をどこかに請求できるわけでもありません。

 もし演奏会の準備として研究や練習時間に長い時間を費やしたとしても、その分を時給換算して報酬として得られるわけではありませんし、あくまでもコンサート出演料が唯一の収入です。つまり、コンサートがキャンセルとなることは、演奏ができないというだけでなく、収入がなくなるどころか、むしろマイナスとなるのが指揮者やソリストという職業なのです。

 給料、ボーナス、退職金などフリーの音楽家には無縁ですし、定休日や有給休暇に至ってはなんのことやら。深夜になるまで必死で練習しても、タイムカードがあるわけでもありません。仮にあったとしても、当然ながら残業代が出るわけではないのです。

 しかし、そんな大変な仕事をなぜ続けているのかといえば、目に見えない報酬があるからなのです。特に現在、なんとかコンサートを開催できたときに、これまでとは違う強い観客の反応や、なかには涙ぐむ人までいるのを見ていると、心が震えるくらい感動します。そんな観客の方々ためにも今こそがんばろうと思いますし、観客の感動が、出演料にも増して大きなご褒美であり、舞台芸術家の役得でもあります。

 それでも、ひとつだけ会社員の方をうらやましく思うことがあります。指揮者は個人事業主である以前に、そもそも定年がないので、退職金は最初から考えていませんが、一度くらいはボーナスをもらってみたいものです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。エガミ・アートオフィス所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

クラシックオーケストラ、なぜ超厳格な感染対策?ウーバーイーツで生計を維持する音楽家も

 東京2020オリンピック競技大会が開幕し、日本選手のメダルラッシュに僕も感動の毎日です。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで大会が開催されたことについて、各メダリストがインタビューの際に感謝の言葉を述べていることにも心が動かされます。

 スポーツ選手も、オリンピック開催前の中止論議のなかでトレーニングを積むのは、苦しい時間だったと思います。かく言う指揮者の僕も、特に昨年、コンサートがキャンセル続きだった頃には本当に参りました。

 開催されるかわからないコンサートのために、なんとかモチベーションを保ちながら、必死に一日中スコアを勉強する日々がずっと続き、公演ギリギリになって、マネージャーからコンサート中止の連絡が届く。僕はがっくりと肩を落として、勉強をしていたスコアを楽譜棚に戻す――。そんなことが連続しました。

 それは、ほかの指揮者や、朝から晩まで練習をしているソリスト、オーケストラの団員や歌手も同じだったと思います。

 運悪く感染してしまったら仕方がないわけですが、同じく怖いのは濃厚接触者になることです。2週間の外出自粛となり、感染していなくても仕事はすべてキャンセル。もちろん、指揮者やソリストは収入がゼロになります。そんなわけで、音楽家の感染症対策は一般の方よりもしっかりとやっているように思いますし、僕が知る限り、日本人の指揮者やソリストで新型コロナに感染した人はいません。

 これはオーケストラ楽員も同じです。それこそ本番直前になって、特に管打楽器奏者の1人でも欠けてしまったらオーケストラは演奏できなくなるだけでなく、そもそもコンサート自体も中止になってしまいます。

オーケストラの感染対策

 もちろん現在では、新型コロナ感染症への対処法もわかってきたので、オーケストラも盛んに演奏を繰り広げて多くの音楽ファンの耳を楽しませていますが、読者の皆様がオーケストラコンサートに行かれた場合、「ちゃんと感染症対策をしているの?」と疑問に感じるかもしれません。

 会場に着いた観客は、チケットの半券を自分でちぎって所定の箱に入れるだけでなく、別紙に住所や電話番号を座席番号と一緒に書いて提出し、プログラムすらも自分で取るので、ホール係員との接触はありません。入場する際の検温消毒は言うまでもなく、演奏会中もマスク着用が求められます。そんななか、ステージを見てみると、オーケストラはマスクもなく、これまで通り密集して弾いているように見えるのです。

 しかしながら、それは見た目だけです。もし、ドローンで上から眺めたとしたら、しっかりと感染症対策が施されていることに気づくでしょう。

 まず、オーケストラの場合は楽員全員が指揮者を向いて演奏しているので、楽員同士は対面しません。弦楽器や打楽器奏者であっても政府基準の1m程度の間隔をあけ、楽器に呼気を吹き込む管楽器奏者は1.5m程度の間隔を取ることが多いのです。これは通常の配置よりもかなり広げているため、演奏に支障が出るか出ないかギリギリで、最初のころは戸惑いも多くありました。オーケストラを使った実証実験では、演奏を通して、それほど飛沫が飛ばないことがわかっているのですが、やはり念には念を入れて厳しい対策をしています。

 ただ、例外は指揮者で、すべての楽員と対面することになるので、オーケストラとは2m近く距離を取ることとなり、普段よりも孤独感が増しています。

 オーケストラは一般的に、演奏会中には会話をしないためマスクを着用していないのですが、時にはマスクをしなくてはならないコンサートもあり、見ていると苦しそうです。音楽も体力勝負なのです。

 もちろんリハーサル中には、マスクをすると演奏が不可能な管楽器も、自分の出番ではない時にはできるだけマスクをします。ステージ以外では一般社会と同じようにマスク着用していることは言うまでもありません。会場入りする際の検温・消毒はもちろん、本番直前の舞台裏では、まるでスーパーマーケットのレジ前のように、楽員が間隔をあけて並んでいます。管楽器奏者はステージにタオルなどを持っていき、そのタオルで楽器にたまった水分を吸い取り、決して舞台上には落とさないくらいの徹底ぶりなのです。

 舞台スタッフも、演奏前後に楽員が使用する椅子の消毒に大忙しです。病院ほどではないにせよ、かなり厳しい基準を設けており、オーケストラ内での感染拡大の例は、日本で聞いたことがありません。そんな努力のお陰で、毎晩のように日本のどこかで大感動のオーケストラコンサートが繰り広げられているのです。

音楽家の目に見えない”報酬”

 やっと通常に戻ってきつつあるオーケストラですが、この1年間、音楽だけでなく演劇も含めた舞台芸術は大きな打撃を受け続けました。今年2月までの1年間で公演中止、入場者制限により失われた売り上げは、音楽で3800億円、演劇やミュージカルのステージでは1600億円に上ります(ぴあ総研調査)。これは大きな打撃で、音楽は90%、舞台では76%の収入が失われたことになります。

 僕も回答した昨年秋に行われた文化庁のアンケート集計では、昨年3月から8月の間、収入がまったくなくなった文化芸術関係者は40%にも上り、79.8%は「決まっていた仕事がなくなった」と回答したそうで、フリーの音楽家はウーバーイーツなどで配達をしながら、食いつないでいると聞くことがあります。

 指揮者も、基本的にはフリーの音楽家です。ソリストはそもそも独りぼっちです。音楽事務所に所属していても、そこから毎月の給料をもらうのではなく、演奏会がなければ収入はゼロ。演奏会のための楽譜代、研究費、リハーサル場レンタルなどの必要経費をどこかに請求できるわけでもありません。

 もし演奏会の準備として研究や練習時間に長い時間を費やしたとしても、その分を時給換算して報酬として得られるわけではありませんし、あくまでもコンサート出演料が唯一の収入です。つまり、コンサートがキャンセルとなることは、演奏ができないというだけでなく、収入がなくなるどころか、むしろマイナスとなるのが指揮者やソリストという職業なのです。

 給料、ボーナス、退職金などフリーの音楽家には無縁ですし、定休日や有給休暇に至ってはなんのことやら。深夜になるまで必死で練習しても、タイムカードがあるわけでもありません。仮にあったとしても、当然ながら残業代が出るわけではないのです。

 しかし、そんな大変な仕事をなぜ続けているのかといえば、目に見えない報酬があるからなのです。特に現在、なんとかコンサートを開催できたときに、これまでとは違う強い観客の反応や、なかには涙ぐむ人までいるのを見ていると、心が震えるくらい感動します。そんな観客の方々ためにも今こそがんばろうと思いますし、観客の感動が、出演料にも増して大きなご褒美であり、舞台芸術家の役得でもあります。

 それでも、ひとつだけ会社員の方をうらやましく思うことがあります。指揮者は個人事業主である以前に、そもそも定年がないので、退職金は最初から考えていませんが、一度くらいはボーナスをもらってみたいものです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。エガミ・アートオフィス所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

パチスロ初代『ミリオンゴッド』で閉店間際が“鉄火場”に!!【濱マモルの のほほんコラムVol.107~閉店間際のミリオンゴッド~】

 取り切れずヤメに関することを書いた前回のコラムは、ありがたいことにそれなりの反響があったようで、いくつかのメッセージをいただいた。

 どれも「取り切れずヤメは絶対に嫌だ」といった内容で、やはり閉店時間での強制終了は大損。つくづく夕方以降は残り時間を考慮しながら押し退きを判断しなければならないなぁと感じた次第だが、4号機時代は閉店補償をしてくれるホールもあった。

 補償のルールはホールによって様々で、足繁く通っていたホールのそれは1G純増枚数×残りATゲーム数。つまり、1G純増8.0枚のATで残りゲーム数100Gならば800枚のコインをもらえたわけで、そうなると取り切れずヤメの心配は一切なく、閉店を迎える瞬間まで迷いなく打ち続けることができた。

 それどころか、仮に閉店ギリギリで大量ATゲーム数を獲得できれば一発逆転の可能性も十分にある。むしろ、懐さえ許せば撤退の理由などないわけで、そんな中、閉店間際に圧倒的な人気を誇ったのが初代『ミリオンゴッド』であった。

 出玉増加の主軸を担うのはゴッドゲーム(GG)と呼ばれるAT機能で、主にリプレイ4連続時、或いは逆押し黄7成立時の抽選クリアで当選する。このGGは50G継続、約500枚の獲得が見込め、これがG-ZONEなどを経て連チャンすることでコインが一気に吐き出される仕組みなのだが、閉店間際に座った客が狙っていたのは無論、このGGにあらず。発動した時点でGG「500G」、約5,000枚の大量コインを得られる「プレミアムゴッドゲーム」の降臨を信じてレバーを叩いていたのである。

 理論上、1G純増は約9.65枚とされていたが、そのホールは10枚で換算。よって、首尾よく引き当てられれば閉店間際でも5,000枚が補償されるわけで、いつの間にやら、この美味しすぎる補償システムを聞きつけた客が集まるようになり、シマは連日、閉店間際とは思えぬほどの鉄火場と化したのであった。

 ただ、閉店時間が迫るとやたらAT性能が跳ね上がるのは取り切れずヤメの悲劇が背中合わせだからこその事象であり、補償という切り札を持ち合わせた場合は、これがまた面白いように引けない。

 その上、当初は数人だったシマが先述のように鉄火場と化したことで一発逆転を狙うならば閉店1時間以上前にシマへ移動しなければ座れなくなり、結果、大逆転どころか4万円以上を溶かして席を立つこともしばしば。そんなことを繰り返すうちに無駄な負債が蓄積され、変な夢を見るのはヤメようと、『ミリオンゴッド』のシマへの移動を自粛するようにしたのであった。

 ご存じの通り、現在、閉店時の補償は禁止されている。振り返れば信じられないサービスだったが、実際にGODを引き当てた猛者は少なかったし、きっとホールは大幅プラスだったように思える。

 人間、欲に駆られるとロクなことがない。そう考えると、閉店補償の禁止による取り切れずヤメのリスクは、意外と悪くないことなのかもしれない。

(文=濱マモル)

【注目記事】

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パチスロ初代『ミリオンゴッド』で閉店間際が“鉄火場”に!!【濱マモルの のほほんコラムVol.107~閉店間際のミリオンゴッド~】

 取り切れずヤメに関することを書いた前回のコラムは、ありがたいことにそれなりの反響があったようで、いくつかのメッセージをいただいた。

 どれも「取り切れずヤメは絶対に嫌だ」といった内容で、やはり閉店時間での強制終了は大損。つくづく夕方以降は残り時間を考慮しながら押し退きを判断しなければならないなぁと感じた次第だが、4号機時代は閉店補償をしてくれるホールもあった。

 補償のルールはホールによって様々で、足繁く通っていたホールのそれは1G純増枚数×残りATゲーム数。つまり、1G純増8.0枚のATで残りゲーム数100Gならば800枚のコインをもらえたわけで、そうなると取り切れずヤメの心配は一切なく、閉店を迎える瞬間まで迷いなく打ち続けることができた。

 それどころか、仮に閉店ギリギリで大量ATゲーム数を獲得できれば一発逆転の可能性も十分にある。むしろ、懐さえ許せば撤退の理由などないわけで、そんな中、閉店間際に圧倒的な人気を誇ったのが初代『ミリオンゴッド』であった。

 出玉増加の主軸を担うのはゴッドゲーム(GG)と呼ばれるAT機能で、主にリプレイ4連続時、或いは逆押し黄7成立時の抽選クリアで当選する。このGGは50G継続、約500枚の獲得が見込め、これがG-ZONEなどを経て連チャンすることでコインが一気に吐き出される仕組みなのだが、閉店間際に座った客が狙っていたのは無論、このGGにあらず。発動した時点でGG「500G」、約5,000枚の大量コインを得られる「プレミアムゴッドゲーム」の降臨を信じてレバーを叩いていたのである。

 理論上、1G純増は約9.65枚とされていたが、そのホールは10枚で換算。よって、首尾よく引き当てられれば閉店間際でも5,000枚が補償されるわけで、いつの間にやら、この美味しすぎる補償システムを聞きつけた客が集まるようになり、シマは連日、閉店間際とは思えぬほどの鉄火場と化したのであった。

 ただ、閉店時間が迫るとやたらAT性能が跳ね上がるのは取り切れずヤメの悲劇が背中合わせだからこその事象であり、補償という切り札を持ち合わせた場合は、これがまた面白いように引けない。

 その上、当初は数人だったシマが先述のように鉄火場と化したことで一発逆転を狙うならば閉店1時間以上前にシマへ移動しなければ座れなくなり、結果、大逆転どころか4万円以上を溶かして席を立つこともしばしば。そんなことを繰り返すうちに無駄な負債が蓄積され、変な夢を見るのはヤメようと、『ミリオンゴッド』のシマへの移動を自粛するようにしたのであった。

 ご存じの通り、現在、閉店時の補償は禁止されている。振り返れば信じられないサービスだったが、実際にGODを引き当てた猛者は少なかったし、きっとホールは大幅プラスだったように思える。

 人間、欲に駆られるとロクなことがない。そう考えると、閉店補償の禁止による取り切れずヤメのリスクは、意外と悪くないことなのかもしれない。

(文=濱マモル)

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パチンコは「第2のRUSH」搭載機、パチスロは「初代継承」AT機に注目! 全国パチンコ店アンケート「営業動向と8月の注目機」公開

 パチンコ業界に特化したリサーチを行うシーズリサーチはこのほど、パチスロ有利区間の上限緩和への期待やオリンピックの影響、8月に導入される新機種についての全国パチンコ店アンケート「営業動向と8月の注目機」を公開した。

 5.9号機より設けられたパチスロの有利区間。6号機では最大1,500G、もしくは純増2,400枚とされていたが、当サイトでも報じた通り、ゲーム数上限は1,500Gから3,000Gへ緩和された。

 この有利区間3,000G対応の「6.2号機」は2021年5月20日の保安通信協会型式申請分から、すでに大一商会の『パチスロ うしおととら 雷槍一閃』、コナミアミューズメントの『マジカルハロウィン~Trick or Treat!~』といったマシンがデビュー予定であり、この6.2号機については「やや期待している」との回答が45.1%で最も高かった。

「期待している」との声は12.5%で、全体の57.6%で「期待する」との結果。半数以上が有利区間の上限緩和についてプラスの印象を持っていることが分かった。

 東京オリンピック開催に対する稼働への影響については、「やや影響がある」と「あまり影響がない」がそれぞれ42.4%、43.1%と同程度の数値。ただ、「大きな影響がある」(9.7%)を含めて、全体では50%以上が「影響がある」と回答した。

 地域別で見ると、「大きな影響がある」は関東が14.8%とズバ抜けて高く、開催地域ほど高い傾向に。特に開催都市となる東京は、「少なからず影響があると考えられる」とした。

 8月導入予定の注目機種は、まずパチンコの1位はRUSH継続率約81%&右打ち中の大当りALL1,500発、第2のRUSH「覚醒HYPER」を武器とするSANKYOの『Pフィーバー機動戦士ガンダム ユニコーン』で71.6%。

 次いで、大当り後にST10回+時短20or40or90回へ突入する三洋物産の『Pまわるん大海物語4スペシャル Withアグネス・ラム119ver.』(44.7%)、同じく『海物語』シリーズでST30回+時短298回の「金富士ゾーン極」を搭載した『PAスーパー海物語 IN JAPAN 金富士99バージョン』(32.6%)となった。

 一方、パチスロの1位は初代の優秀遺伝子を進化継承させたミズホのAT機『SLOT劇場版魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語』で71.1%。

 次いで、6号機「A+AT機」の完成形と評されるサミーの『パチスロ コードギアス 反逆のルルーシュ3』(60.6%)、通常時からもRTへ突入するなど遊びやすさを追求したパオン・ディーピーの『もっと!クレアの秘宝伝 女神の歌声と太陽の子供達』(24.6%)となった。

 今年の繁忙期は、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中でオリンピックが自国開催されるなど、稼働への影響が懸念される。だが、そんな状況下においてもパチンコでは『P牙狼 月虹ノ旅人』などが高稼働を維持しており、シーズリサーチは8月の新台の中でも注目度の高い『Pフィーバー機動戦士ガンダム ユニコーン』と『SLOT劇場版魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語』などにも「期待したい」とした。

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パチンコは「第2のRUSH」搭載機、パチスロは「初代継承」AT機に注目! 全国パチンコ店アンケート「営業動向と8月の注目機」公開

 パチンコ業界に特化したリサーチを行うシーズリサーチはこのほど、パチスロ有利区間の上限緩和への期待やオリンピックの影響、8月に導入される新機種についての全国パチンコ店アンケート「営業動向と8月の注目機」を公開した。

 5.9号機より設けられたパチスロの有利区間。6号機では最大1,500G、もしくは純増2,400枚とされていたが、当サイトでも報じた通り、ゲーム数上限は1,500Gから3,000Gへ緩和された。

 この有利区間3,000G対応の「6.2号機」は2021年5月20日の保安通信協会型式申請分から、すでに大一商会の『パチスロ うしおととら 雷槍一閃』、コナミアミューズメントの『マジカルハロウィン~Trick or Treat!~』といったマシンがデビュー予定であり、この6.2号機については「やや期待している」との回答が45.1%で最も高かった。

「期待している」との声は12.5%で、全体の57.6%で「期待する」との結果。半数以上が有利区間の上限緩和についてプラスの印象を持っていることが分かった。

 東京オリンピック開催に対する稼働への影響については、「やや影響がある」と「あまり影響がない」がそれぞれ42.4%、43.1%と同程度の数値。ただ、「大きな影響がある」(9.7%)を含めて、全体では50%以上が「影響がある」と回答した。

 地域別で見ると、「大きな影響がある」は関東が14.8%とズバ抜けて高く、開催地域ほど高い傾向に。特に開催都市となる東京は、「少なからず影響があると考えられる」とした。

 8月導入予定の注目機種は、まずパチンコの1位はRUSH継続率約81%&右打ち中の大当りALL1,500発、第2のRUSH「覚醒HYPER」を武器とするSANKYOの『Pフィーバー機動戦士ガンダム ユニコーン』で71.6%。

 次いで、大当り後にST10回+時短20or40or90回へ突入する三洋物産の『Pまわるん大海物語4スペシャル Withアグネス・ラム119ver.』(44.7%)、同じく『海物語』シリーズでST30回+時短298回の「金富士ゾーン極」を搭載した『PAスーパー海物語 IN JAPAN 金富士99バージョン』(32.6%)となった。

 一方、パチスロの1位は初代の優秀遺伝子を進化継承させたミズホのAT機『SLOT劇場版魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語』で71.1%。

 次いで、6号機「A+AT機」の完成形と評されるサミーの『パチスロ コードギアス 反逆のルルーシュ3』(60.6%)、通常時からもRTへ突入するなど遊びやすさを追求したパオン・ディーピーの『もっと!クレアの秘宝伝 女神の歌声と太陽の子供達』(24.6%)となった。

 今年の繁忙期は、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中でオリンピックが自国開催されるなど、稼働への影響が懸念される。だが、そんな状況下においてもパチンコでは『P牙狼 月虹ノ旅人』などが高稼働を維持しており、シーズリサーチは8月の新台の中でも注目度の高い『Pフィーバー機動戦士ガンダム ユニコーン』と『SLOT劇場版魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語』などにも「期待したい」とした。

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「手取り15万円でキツイと思うこと」ランキング、3位イレギュラーな出費への対応、2位貯金ができない、ダントツの1位は?

生活をもっと楽しく刺激的に。 オトナライフより】

「手取り15万」と聞くと、読者のみなさんはどう感じるだろうか。特に20~30代だと、正社員でも「え、自分と同じぐらいだな」「つい最近までそれくらいだった」など、リアルな数字に感じる人も多いのでは?2021年7月、ビジネス上の問題解決を考えるメディアBiz Hitsが、「手取り15万円できついと思うことに関する意識調査」を実施した。対象は手取りが15万円の男女500人だ。

10位~5位までは、毎日の生活に密着した理由がランクイン

 10位は「生活費が足りない」。これは言葉が出ないほど切実だ。「ホントに生活が苦しい」「日々の支払いですべてなくなってしまうどころか、足りない」「子育て中なのでまったく足りない」など、読むのも切ない回答者の声が集まった。9位は「節約しているとき」。食費節約のために毎日お弁当を作らなくてはいけないとき(30代女性)など、常に節約がちらつく生活をしているのが地味に辛い。8位は「外食ができない」。確かに外食は節約の敵のようなイメージはあるが、一方で「外食した方が安い場合もある。常にどちらが得か考えながら行動している」という意見も。

 7位は「旅行に行…

続きは【オトナライフ】で読む

「手取り15万円でキツイと思うこと」ランキング、3位イレギュラーな出費への対応、2位貯金ができない、ダントツの1位は?

生活をもっと楽しく刺激的に。 オトナライフより】

「手取り15万」と聞くと、読者のみなさんはどう感じるだろうか。特に20~30代だと、正社員でも「え、自分と同じぐらいだな」「つい最近までそれくらいだった」など、リアルな数字に感じる人も多いのでは?2021年7月、ビジネス上の問題解決を考えるメディアBiz Hitsが、「手取り15万円できついと思うことに関する意識調査」を実施した。対象は手取りが15万円の男女500人だ。

10位~5位までは、毎日の生活に密着した理由がランクイン

 10位は「生活費が足りない」。これは言葉が出ないほど切実だ。「ホントに生活が苦しい」「日々の支払いですべてなくなってしまうどころか、足りない」「子育て中なのでまったく足りない」など、読むのも切ない回答者の声が集まった。9位は「節約しているとき」。食費節約のために毎日お弁当を作らなくてはいけないとき(30代女性)など、常に節約がちらつく生活をしているのが地味に辛い。8位は「外食ができない」。確かに外食は節約の敵のようなイメージはあるが、一方で「外食した方が安い場合もある。常にどちらが得か考えながら行動している」という意見も。

 7位は「旅行に行…

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死ぬ人は三日で死ぬ 過酷な漂流生活を生き抜いた男の知恵とは

 陸地の影もかたちも見当たらない大海原で、風の向くままただひたすら漂うばかり。雨をしのげるものはなく、灼熱の太陽が体力を奪っていく。頼れるものは、いつまでもつかわからない食料と、わずかな道具、そして自分のみ。


 ボートやヨットの遭難事故は歴史上何人もの犠牲者を出してきた。一方で、数十日、時には百日以上におよぶ漂流生活の末に生還した人もいる。彼らは、過酷な環境をいかに耐えたのか。

 

■陸地の見えない大海原で二カ月以上も漂流した男


 『漂流者は何を食べていたか』(新潮社刊)は無類の「漂流記マニア」である作家の椎名誠氏が、生還した漂流者たちが残した書物を読み解き、生死を分ける大きな要素である「食」に注目する。


 夫婦で漂流したケースもあれば、家族で漂流したケースもある。たった一人で大海原に取り残されたケースもあれば、極寒の北極圏で漂流したケースもある。自分がそんな目にあうのは絶対に嫌だが、どれも「体験談」として聞くには抜群におもしろい。


 椎名氏いわく、ヨットやボートが漂流するケースで多いのは、シャチなどの大型哺乳類との衝突なのだそう。その衝撃で転覆したり、船が破損してしまうのだ。


 『大西洋漂流76日間』なる漂流記の著者、スティーヴン・キャラハンのヨットのケースもそう。キャラハンはヨットセイリングのベテランだったが、カナリア諸島沖でクジラと衝突し、ヨットは沈没。非常用に積んでいたイカダでのサバイバル生活がはじまった。

 

■漂流者が多く死ぬのは漂流して三日前後


 サバイバル生活といってもテレビ番組のようなものではなく、ちょっとしたことが生死にかかわる、まさに命がけのサバイバルである。


 漂流者が一番多く死ぬのは、漂流して三日前後。水や食料が手に入らないからというよりも、自分の身に起きたことへのショックと絶望から精神的にまいってしまうことが原因になるようだ。


 キャラハンのヨットには万が一のためにそれなりの装備があったが、それでも生きて帰ることができる保証はない。実際、彼は「それなりの装備」の一つにさっそく裏切られることになった。海水を蒸留して真水を作ることができる「太陽熱蒸留器」を使って飲み水を作ろうとしたのだが、「順調にいけば一日900ccの真水を確保できる」と説明書には記されていたものの、やってみると、海上という環境からか、どうしてもできた水には塩気が混じってしまい、使い物にならなかった。


 とはいえ、漂流中の飲み水の確保をいつ降るかわからない雨に頼るのはかなりリスキーだ。


 キャラハンはタッパーの中に海水を含ませた布が入った空き缶を入れてビニールで覆って密封。太陽の熱で蒸発をした水分がタッパーの底に落ちるという仕組みを考案して、真水を得たという。自作の蒸留器である。


 水を確保する算段がついたら次は食べ物だが、幸いにして水中銃を持っていた。それに、イカダの周りには絶えず魚がつきまとってきたという。その一つがシイラなのだが、この魚は漂流物にくっついてくる性質があるようで、イカダの周りには常に数十匹が泳いでいたそう。ただ、イカダを激しくつっつくため、乗っている人間は非常にイライラするのだとか。


 そんなイライラに耐えきれなくなったキャラハンが狙いを定めずにやみくもに発砲したら、たまたま一匹のシイラに命中。イカダに引き上げてとどめを刺すための格闘が始まるのだが、うっかりモリで布製のイカダの底を突いてしまうと穴があいて一巻の終わりである。かなり神経を使う作業だったという、漂流ならではのエピソードが紹介されている。こうして捕獲したシイラやモンガラをそのまま食べたり、干物にしたりして命を繋いでいく生命力と創意工夫が圧巻である。



 手持ちのものでどうにかして食べ物や飲み物を得る、というのがこの本で紹介されている漂流者たちのエピソードの共通点だが、「ウミガメは子牛とチキンの肉にカニの肉を混ぜたような味」「人間と接触がない遠洋の鳥は、手づかみでつかまえられる」などの生々しいエピソードもあれば、「海水は飲めないが、浣腸の要領で肛門から注入することで、腸から水分を吸収させる」「魚の肉はしぼると塩気のない汁が出てくる」といった驚きの機転まで、どのエピソードも飽きさせない。


 体験するのはゴメンこうむりたい一方で大自然のロマンも感じてしまう漂流。本書を通して少しだけ味わってみてはいかがだろう。(山田洋介/新刊JP編集部)


※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

死ぬ人は三日で死ぬ 過酷な漂流生活を生き抜いた男の知恵とは

 陸地の影もかたちも見当たらない大海原で、風の向くままただひたすら漂うばかり。雨をしのげるものはなく、灼熱の太陽が体力を奪っていく。頼れるものは、いつまでもつかわからない食料と、わずかな道具、そして自分のみ。


 ボートやヨットの遭難事故は歴史上何人もの犠牲者を出してきた。一方で、数十日、時には百日以上におよぶ漂流生活の末に生還した人もいる。彼らは、過酷な環境をいかに耐えたのか。

 

■陸地の見えない大海原で二カ月以上も漂流した男


 『漂流者は何を食べていたか』(新潮社刊)は無類の「漂流記マニア」である作家の椎名誠氏が、生還した漂流者たちが残した書物を読み解き、生死を分ける大きな要素である「食」に注目する。


 夫婦で漂流したケースもあれば、家族で漂流したケースもある。たった一人で大海原に取り残されたケースもあれば、極寒の北極圏で漂流したケースもある。自分がそんな目にあうのは絶対に嫌だが、どれも「体験談」として聞くには抜群におもしろい。


 椎名氏いわく、ヨットやボートが漂流するケースで多いのは、シャチなどの大型哺乳類との衝突なのだそう。その衝撃で転覆したり、船が破損してしまうのだ。


 『大西洋漂流76日間』なる漂流記の著者、スティーヴン・キャラハンのヨットのケースもそう。キャラハンはヨットセイリングのベテランだったが、カナリア諸島沖でクジラと衝突し、ヨットは沈没。非常用に積んでいたイカダでのサバイバル生活がはじまった。

 

■漂流者が多く死ぬのは漂流して三日前後


 サバイバル生活といってもテレビ番組のようなものではなく、ちょっとしたことが生死にかかわる、まさに命がけのサバイバルである。


 漂流者が一番多く死ぬのは、漂流して三日前後。水や食料が手に入らないからというよりも、自分の身に起きたことへのショックと絶望から精神的にまいってしまうことが原因になるようだ。


 キャラハンのヨットには万が一のためにそれなりの装備があったが、それでも生きて帰ることができる保証はない。実際、彼は「それなりの装備」の一つにさっそく裏切られることになった。海水を蒸留して真水を作ることができる「太陽熱蒸留器」を使って飲み水を作ろうとしたのだが、「順調にいけば一日900ccの真水を確保できる」と説明書には記されていたものの、やってみると、海上という環境からか、どうしてもできた水には塩気が混じってしまい、使い物にならなかった。


 とはいえ、漂流中の飲み水の確保をいつ降るかわからない雨に頼るのはかなりリスキーだ。


 キャラハンはタッパーの中に海水を含ませた布が入った空き缶を入れてビニールで覆って密封。太陽の熱で蒸発をした水分がタッパーの底に落ちるという仕組みを考案して、真水を得たという。自作の蒸留器である。


 水を確保する算段がついたら次は食べ物だが、幸いにして水中銃を持っていた。それに、イカダの周りには絶えず魚がつきまとってきたという。その一つがシイラなのだが、この魚は漂流物にくっついてくる性質があるようで、イカダの周りには常に数十匹が泳いでいたそう。ただ、イカダを激しくつっつくため、乗っている人間は非常にイライラするのだとか。


 そんなイライラに耐えきれなくなったキャラハンが狙いを定めずにやみくもに発砲したら、たまたま一匹のシイラに命中。イカダに引き上げてとどめを刺すための格闘が始まるのだが、うっかりモリで布製のイカダの底を突いてしまうと穴があいて一巻の終わりである。かなり神経を使う作業だったという、漂流ならではのエピソードが紹介されている。こうして捕獲したシイラやモンガラをそのまま食べたり、干物にしたりして命を繋いでいく生命力と創意工夫が圧巻である。



 手持ちのものでどうにかして食べ物や飲み物を得る、というのがこの本で紹介されている漂流者たちのエピソードの共通点だが、「ウミガメは子牛とチキンの肉にカニの肉を混ぜたような味」「人間と接触がない遠洋の鳥は、手づかみでつかまえられる」などの生々しいエピソードもあれば、「海水は飲めないが、浣腸の要領で肛門から注入することで、腸から水分を吸収させる」「魚の肉はしぼると塩気のない汁が出てくる」といった驚きの機転まで、どのエピソードも飽きさせない。


 体験するのはゴメンこうむりたい一方で大自然のロマンも感じてしまう漂流。本書を通して少しだけ味わってみてはいかがだろう。(山田洋介/新刊JP編集部)


※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。