ノーベル経済学者が断言!EV市場で今後「圧倒的に強くなるメーカー」とは? – ビジネスを強くする教養

トランプ大統領による突然のイラン攻撃は世界にショックを与えた。中東情勢の悪化は、石油と電気自動車(EV)のビジネスにどれほど影響を与えるのか?ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏に緊急インタビューを敢行。個人が投資をする際の判断にもなる「世界経済はこの先、どう変わるか?」について話を聞いた。

イスラエル・イラン緊張で石油価格は高騰する?→ノーベル経済学者の答えに納得感しかない – ビジネスを強くする教養

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「とても危険ですよ。底なし沼です」ヤマハの〈音〉職人がフェルさんに警告! – フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

本連載では「試乗+インタビュー」の形でいろいろなクルマを紹介していますが、クルマの乗り心地もさることながら“音の良さ”にフェルさんもAD高橋さんも撃ち抜かれてしまったクルマが三菱自動車の「アウトランダーPHEV」。このクルマの車載オーディオはヤマハと三菱の共同開発で、ヤマハの職人「サウンドマイスター」が責任を持って“音”を仕上げたというのです。サウンドマイスターってどんな仕事をする人なのか、ぜひインタビューしたい!ということで、今回は三菱自動車のみなさんと一緒にヤマハ本社を訪問してきました。

優等生ユニ・チャームが減収減益の衝撃!日本より「アジア」が病巣になった生活用品各社の事情 – ダイヤモンド 決算報

生活用品業界では長らく資生堂の経営不振が続いている。好調な花王、ユニ・チャームと対照的だったが、資生堂の四半期増収率は2四半期連続でプラスを記録。回復の兆しが出てきたのだろうか。一方、優等生だったユニ・チャームは減収減益に。生活用品の大手3社が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、現在の状況を分析した。

25万人 が熱狂した「体験」。誰一人置いていかない「CLAMP展」のつくりかた

左から電通 関俊作氏、講談社 松浦希氏、電通 南木隆助氏
左から電通 関俊作氏、講談社 松浦希氏、電通 南木隆助氏

展覧会は「鑑賞」から「体験」へ。

漫画やアニメに代表されるコンテンツファンは、「鑑賞」だけでなく「体験」を求める傾向にあり、展覧会のあり方も大きく変化しています。

そうした中、電通と電通ライブは「コンテンツの新しい体験の場」という視点で展覧会をプロデュースする「dentsu Exhibition Value Design」の提供を開始しました。

「dentsu Exhibition Value Design」広報リリース
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0207-010840.html
 

本連載では、両社が手掛けた新しい形の展覧会をご紹介していきます。今回取り上げるのは、「カードキャプターさくら展」(2018年)と「CLAMP展」(2024年)です。

東京・大阪で開催した「カードキャプターさくら展」は、東京展だけで総入場者数約14万人を記録。さらに同作の作者CLAMP(くらんぷ※)の全作品を取り扱った「CLAMP展」は国立新美術館で展開し、72日間で約25万人を動員しました。  

多くの来場者を惹きつけた「展覧会」という名の“体験”は、どのように生み出されたのか。

講談社でCLAMP作品の2次利用を統括する松浦希氏をゲストに招き、2展のプロデューサーを務めた電通の関俊作氏、空間デザインを担当した南木隆助氏に、舞台裏をお聞きしました。

※CLAMPとは

いがらし寒月、大川七瀬、猫井、もこなの女性4名で構成される創作集団。1989年「聖伝-RG VEDA-」で商業誌デビュー。以降、少女漫画、少年漫画、青年漫画と多彩なジャンルにわたり多くのヒット作を世に放つ。主な作品に「東京BABYLON」「X -エックス-」「魔法騎士レイアース」「カードキャプターさくら」「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」など。

「カードキャプターさくら展」に見る、展覧会初動時の2つのポイント
 

 

電通 出版ビジネスプロデュース局 関俊作氏
電通 出版ビジネスプロデュース局 関俊作氏
 

──皆さまの自己紹介をお願いします。

関:電通に入社以来20年以上、出版社と関わる仕事をしてきました。現在は、展覧会事業を幹事として計画するなど、投資も含めた出版社の課題解決を中心に手掛けています。展覧会事業ではプロデューサーとして、企画立ち上げ時は社内外のチーミング、会場確保、収支設計などを。企画推進時は各所全体調整役や、製作委員会のとりまとめを行っています。

南木:私はアーキテクトとして、店舗や展示などの「場を作る」仕事を中心に担当しています。「カードキャプターさくら展」「CLAMP展」は、電通のクリエイティブディレクターである中野良一から声をかけてもらい、空間デザインの担当として参加しました。私自身CLAMPさんの作品には子ども時代から親しんでいましたので、とても嬉しかったです。

松浦:講談社で作品のグッズやタイアップ、イベントなどのライツアウトを行うライツMD部とIPビジネス部を兼務しています。なので基本は漫画やアニメのグッズやコラボ・タイアップのライセンス業務を行っています。

ただ、CLAMP先生の作品に関しては少し特殊で、「CLAMPルーム」という編集部横断の組織が編成されていまして、私はルームメンバーとして、グッズに限らずイベント・アニメ・実写・舞台など、講談社で出版されているすべてのCLAMP作品の2次利用に関するプランニングを統括してプロデュースしています。

──2018年に開催された「カードキャプターさくら展」(以降「さくら展」)立ち上げの経緯を教えてください。

関:まず前段として、2014年に上野の森美術館で、講談社さんのコンテンツである「進撃の巨人展」を開催したんです。その際に当時の「カードキャプターさくら」ライツ担当の方から、同作を展覧会で盛り上げてほしいとご相談いただき、2015年には稟議書提出や会場確保等に動き出しました。

展覧会を開催する際、初動のポイントは2つあります。一つは、展覧会を通して達成したい「目的とコンセプト」を決めること。ビジネスとしての成功は目指しつつ、それとは別に「何を成し得たいのか」を明確にすることが大切です。今回もまずは講談社さんとの議論を通して「目的」を掘り下げてから、クリエイティブ側がどんな展示で見せていくかを、チーミングを含めて考えていきました。

もう1つのポイントが「会場」です。大型の展覧会の場合、会場を押さえるには開催時期の3年半くらい前から動かないと、枠が埋まってしまう。さくら展の時は、開催時期がまだ確定されていない段階から、森アーツセンターギャラリーをはじめとしていくつかの会場候補と、条件などの相談を始めました。

原画にたどり着くまでの導線も大事に。「親子でも楽しめる体験型展覧会」への挑戦

電通 フューチャークリエーティブリード室 南木隆助氏
電通 フューチャークリエーティブリード室 南木隆助氏

──さくら展の「目的とコンセプト」とはどのようなものでしたか?

関:「カードキャプターさくら」は1996年から始まった長い歴史のある作品ですが、展覧会を開催した2018年はちょうど新シリーズの連載をしているところだったので、講談社さんには、このタイミングで実施する展覧会の意味合いをどこに置くのか考えましょうと話しました。

その結果、初期からのファンは、子どもがいれば展覧会に連れてこられるくらいの年齢になっているはずなので、その層へのアプローチを目指したい。参加型のイベントにして、親子でも楽しめる体験をつくりたいとの話が出てきました。

この相談をした当時、まだ展覧会というと、学術的な雰囲気で原画をしっかり見せるイベントに捉えられがちでしたが、もう少しエンタメ性を強くして、みんながハードルを感じずに楽しめる「体験型」の展示を目指すことにしたのです。

──「親子でも楽しめる体験型」の展覧会は、それまであまりなかったと思います。クリエイティブチームとしては、このコンセプトをどう意識しましたか?

南木:CLAMP作品は世界観がとにかく素晴らしく、本展では原画もお借りできることが決まっていました。生の原画に力があるのは大前提ですので、クリエイティブ側としては原画を見るまでの体験の導線や、楽しめる要素をどう入れ込むかを大事にしようと話していました。

具体的には、「カードキャプターさくら」やCLAMP作品の社会的な意味づけを感じられる導線を設けたり、映像を見てもらったり、「花(フラワー)の部屋」という、来場者が花の形のシールを壁に貼って、自ら展示に「足せる体験」ができる要素を加えたんです。

そうした流れを構築することで、熱量の高いファンはもちろん、初めて見る方でも、同伴されたご家族でも楽しめる構成を目指しました。

苦心した「体験」の設計。指針としたのは「ファンにさくらをどう思ってほしいか」

講談社 松浦希氏
講談社 松浦希氏

──松浦さんが電通からの提案を聞いた際の、率直な感想をお聞かせください。

松浦:ご提案いただいた展示方法やアプローチが「カードキャプターさくら」の展覧会としてベストなのか、また家族連れや往年のファンの方、新連載の読者など、それぞれ求めるものが違うであろう来場者の方々にどう刺さるのか、正直想像がつかない部分がありました。というのも、企画当時は漫画作品の原画展というもの自体が少なく、「良かった展示」の事例やイメージがあまりにもなかったんです。

最終的に「魔法にかけられた美術館」というテーマを据えたことで、各ブースの展示・体験の形が具体化されていきましたが、関係者みんながイメージを共有できるテーマの設定が難しくもあり、重要でした。

──当時は珍しかった「体験」重視の展示だけに、事前にイメージするのは困難だったのですね。

松浦:例えば南木さんのお話にも出た「花の部屋」は、来場者が花のシールを壁にどんどん貼っていくことで、部屋自体の様子が変わるというコンセプトです。ただ当初は、日常生活で私と同じくらいの大人世代がシールを貼る体験はあまりないため、企画書の文字で見ただけでは、貼って楽しいのかが想像できなくて。「そのスペースがあるなら原画を飾った方がいいのでは?」と最初は反対したりもしましたね。

花の部屋

南木:提案するわれわれの側も、「本当に想定通りにシールを貼ってもらえるのか」というのはかなり大きな挑戦でした。リアリティをどう共有できるかがとても重要だと思っていましたので、さくら展では紙の企画書だけでなくて、模型なども作ってご提案をしていました。それでも「花の部屋」だけは、模型でも伝えるのが難しかったです(笑)。

松浦:私の主務であるグッズ開発では、大体の場合、色校正など実物のサンプルを確認することができ、全体像を把握できます。ところが展示となると、例えば壁のサンプルも10cm四方くらいでしか見られない。

さくら展では作中のさくらの衣装を実際にリアルクローズとして制作したのですが、生地のサンプルも5センチ四方くらいの小さいサイズです。手元の小さなサイズの紙や布では良い色だと思えても、実物大になったらやっぱり濃すぎたりするのでは……など、想像だけでさまざまなことを判断するのは非常に難しかったです。

衣装にしろ空間演出にしろ、「漫画の中にしかないもの」を実際に作るのは大変です。とにかく試行錯誤を繰り返しましたね。最終的には、「さくらをどう見せたいのか」「ファンの方に来てもらった時、どう思ってほしいのか」が作り手側でしっかりイメージできているなら大丈夫だと信じて、進めました。

──実際に完成した展示物を見た時の印象はいかがでしたか? 

松浦:衣装を展示した「包囲(シージュ)の部屋」については、企画書上で見ていた以上に実物の作り込みが素晴らしく、「クリエイティブチームはここまでのものを想像していたのか!」と良い意味で裏切られました。先生の原画がない空間が、果たして「もつ」のか不安だったのですが、杞憂(きゆう)に終わりました。特に大変だった衣装もとてもかわいくできていて、先生方にも「非常によかった」と言っていただけました。

「花の部屋」についても、来場者が貼り付けたシールでハートなどの図形が現れてきて、日々見える光景が違ってくる様子を見た時には、とても感動しました。全く想像できていなかった光景だったので、私の想像が浅かったと思いました(笑)。絵ではない形で「魅せる」ことができるのも展覧会の魅力だと分かり、私自身も「体験」というものの重要性・可能性を非常に感じました。電通さんに相談してよかったです。

さくら展からCLAMP展へ。“総合展”の難しさを打破する「コアにもライトにも届く」テーマ

左から電通 南木隆助氏、電通 関俊作氏、講談社 松浦希氏、

──さくら展から約6年後の2024年7月、今度はCLAMPの全作品を取り扱った「CLAMP展」が国立新美術館で開催されました。こちらの経緯をお聞かせください。

松浦:大阪でのさくら展が終了した時に、担当編集と私とCLAMP先生4人の計6人で打ち上げをしたのですが、その際に「またこうした展覧会をしたいね」という話になりました。さくら展がすごく良かったというお言葉はとても嬉しかったですし、もちろんまたやれたらいいなとは思ったのですが、似たような展覧会を再度開催するだけでは工夫がないなと思ったので、その場で思わず「CLAMP展はどうですか?」と言ってしまって。

言ってしまった以上は動かなくては!とすぐ関さんにご連絡したら、「CLAMP展はなかなか難しいですね」とクールな返事をいただいたのをすごく覚えています(笑)。

関:そこは純粋にビジネスサイドのお話で(笑)、イベントの世界では、総花的な“総合展”は、集客が難しいとよくいわれるんです。例えば雑誌単位の展覧会よりも、作品単体の方が人が来るというのは、私自身の経験則でもありました。作家単位のファンは、作品単位のファンよりもコアなイメージがあるので、簡単ではないと思ったんです。

それでも松浦さんの熱意を受け、私自身もさくら展の経験を基にさらなるアップデートをして、新しいチャレンジをしたい気持ちがありました。「おそらく前回と同じチームでなくてはできないし、同じチームでやりたい」と言ってくださったことがうれしくて、難しいと言いつつも断る選択肢はありませんでしたね。

──CLAMP展では、作家展でよく見られる時系列の展示ではなく、「COLOR」「LOVE」「ADVENTURE」「MAGIC」「PHRASE」と、「C」「L」「A」「M」「P」を頭文字にした5つ+2のテーマで部屋を区切り、多彩な作品を並べて見せているのが魅力的でした。こちらはどのように決まったのでしょうか?

松浦:最初は年代ごとに分けて展示する案もありました。けれど「CLAMP展」となると、全作品を読んでいる方も、一部しか読んだことがない方も来場されます。後者の方が来たときに、「自分が見たかった作品の展示は少なかったな。物足りないな」と思われてしまうのは避けたい。一方で、「CLAMP展」と作家の看板を掲げた以上、作品を絞るのも違う。結果、電通さんには「コアもライトも満足できる展示にしてほしい」という無理難題を投げかけました。そのためか、この5つのテーマに至るまでがかなり長かったですね。

南木:何案あったか分からないぐらいでしたね。半年以上をかけて資料を読み込んだり意見交換をしたりして、最終的に中野が5つのテーマで展示を区切っていく案を出しました。

松浦:本展の開催にあたっては「コアなファンも、この展覧会でCLAMP作品を知った人も、誰一人置いていかない体験にしたい」「展覧会の後に『読み直したい・知らない作品を読みたい』と思わせたい」という2つの強い希望がありました。難しいテーマでありながらも、そこに向かって全員が考え、ディスカッションを重ねた結果、素晴らしいアイデアが生まれたと思っています。

「原画の力」を信じてつくりあげた、アートとエンタメの融合

左から電通 関俊作氏、講談社 松浦希氏、電通 南木隆助氏

──国立新美術館(以降、新美と記載)での開催という点にも、ハードルがあったのではないでしょうか?

関:新美は非常に広く、天井も通常の倍以上高かったので、元々計画していた予算感だと展示がチープに見えてしまいかねない課題がありました。それに国立美術館との共催ということで、予算に厳密な上限がある中、そう思われないための工夫をいかにうまくやるかがとてもチャレンジングでしたね。

南木:全体的には、CLAMPさんの作家性と世の中にもたらした面白さをどう伝えるべきか、といった視点を大事にして展示構成を考えました。広い空間をどうしたらうまく使えるか勉強するために、CLAMP展への参加が決まって以降の新美の展覧会は、全て見に行きました(笑)。また、学芸員さんにもお話を聞きながら勉強しました。

当初は、さくら展のようにもっと体験的な企画がいいのではという意見もあったのですが、新美だからこそできる展示をと思った時に、「原画の力」を前面に打ち出す方向に振り切れました。私自身もさくら展では「原画の持つパワーをもっと生かせたのではないか」という課題を感じていたのです。

結果的に、その判断は間違っていませんでしたね。CLAMPさんからご提供いただいた描き下ろしの一枚を見た時に、「すごい、これを最後に出せるなら、いける!」と思えました。

描き下ろし原画

松浦:とはいえ、描き下ろしを展示した最後の部屋のデザインについては、最後まで難航しましたよね。最終図面では、原画の横にある白いカーテンに展示原画を拡大し出力したタペストリーが飾られていたんです。ところが、いざ設置のタイミングで南木さんと中野さんから「タペストリーはいらないのでは?」と言われて。工夫を凝らした展示を抜けたら、最後は原画1点だけという潔い展示になり、とても印象的になりました。

最後の部屋
南木:今回は最終的に腹をくくって「足さない」ことを決めた。それが非常に良い展示になり、良かったです。

松浦:今回、プロジェクトを通して、電通さんの「馬力」も感じました。中野さん・南木さんはじめ、クリエイティブチームの皆さんは、全CLAMP作品を読破して作品を読み解き、分かりやすく言語化・視覚化して、展覧会をブランディングしてくださりました。この途方もない作業を、限られた日程の中、高いクオリティでつくりあげる力に本当に驚きました。企画のテーマ設定はもちろん、キービジュアル、空間デザイン、原画の配置に至るまでこだわり抜く姿勢が素晴らしかったです。

──「さくら展」「CLAMP展」共に、来場者数もさることながら、Twitter(現X)で何度もトレンド入りするなど、ファンの満足度がかなり高かったように思います。ファンが喜ぶ体験設計ができたポイントは?

関:こうしたクリエイティブチームの組成時には、対象者や作品のファンであるメンバーを入れているのですが、一方であまり詳しくない「ニュートラル」な人間も必ずアサインしています。両方のタイプがいてこそ、ニッチにもライトになりすぎないチームになる。幅広い層にいい展示だと思ってもらうには、そのバランスが大事です。

例えば、ファンの方々の2次創作的に喜ばれるようなシチュエーションを展示で出すと、「こういうことは公式ではやってほしくない」と言われることがあります。ファンにしてみると、想像の余地も残しておいてほしい部分もあるはず。公式から押し付けることがないよう、ラインを守ることが大事だなと。この線引きは難しいのですが、ニュートラルに見られる人が意見を言ってくれて、良いバランスを保てました。

松浦:この展覧会に関わることでCLAMP作品を初めて履修したメンバーも、昔からのファンだというメンバーも同等に意見を言い合える、良い雰囲気作りができていましたよね。例えば新美の学芸員さんからは「アートとして見たときに、押しの絵ばかりだと疲れてしまうから、途中に抜きの絵も必要」といった美術視点のご意見をいただきました。結果として、全体的なコントロールと個々の熱意がうまくマッチした空間になったと思います。

鉄壁の転売対策と“品切れなし”を目指し、日々改善を続けた物販

──展覧会をビジネスとして成功させる要素の一つに、物販があると思います。CLAMP展では幅広い種類、膨大な数のグッズを展開し、転売対策もかなり徹底して、来場したファンに届けられていましたよね。

松浦:展覧会での体験を、唯一「形」として持ち帰ることができるのが、グッズですよね。さくら展の時、実は2日目で結構品切れ状態になってしまったことが、担当者として大きな反省点でした。展覧会のグッズはその時しか買えないからたくさん購入いただける一方、売れ残ったときは全て在庫になるので、制作側のリスクがかなり高いんです。とはいえ、根拠を数値化してメーカーさんを説得し十分な量を確保するのが私の仕事ですので、この点については、説得できなかった私の力量不足に尽きると思います。

さくら展の時とほぼ同じメーカーさんにグッズ開発をお願いしたのですが、メーカーさんもさくら展の品切れを反省されていました。そこで、全員が反省を生かして、今回はしっかりファンの方に届けましょうと、一丸となりました。

関:こうしたグッズは、各メーカーの商品が似通ってしまいがちです。CLAMP展では、使用する作品・アート(イラスト)をバランスよく分けながら、グッズの種類も含めて全体的なポートフォリオを組んでいた。これは相当大変な作業なので、松浦さんたちの熱意を感じました。

松浦:23作品全部を扱ってほしいという条件や、商品化のルールを細かく設定し、歴代のエンタメ展覧会で出された倍の量を作るくらいの計画を立てました。私たちライセンス側が決めていたのは、「来た人全員を取りこぼさない」こと。自分が欲しい作品のグッズがなかった……となるのは絶対避けつつ、品切れを起こさない数を用意することにも気を配りました。

物販窓口のムービックさんとは、公式サイトでのグッズ発表後にアクセス数を分析して、たくさんクリックされた熱量の高い商品は、開幕前の時点で追加生産の指示を各メーカーさんに出しました。おかげで会期途中の追加投入もかなりできましたね。

関:それと同時に、大量買いをされる熱量の高いお客さんの対応をどうするか、私自身の知見を含めて、守ってもらえるルールと告知方法、運営方法を考えました。

できるだけ多くの方にご満足いただくために、「ランダム以外の商品は1種類につき1つまで」などの個数設定や、「ショップ滞在の制限時間を設ける」「待っているときに整理券を引き換える」といったお待たせしない工夫など、細かな対応を、直前ギリギリまで検討して整えました。この点は、臨機応変に対応してくれた運営担当の力も大きかったと思います。

松浦:転売対策は、SNS上の声や現場で起こっていることを毎日キャッチアップして、関さんと連絡を取りながら日々改善していました。対応の早さは、ムービックさんと運営担当の方々、電通さんにとても助けられた部分です。

また、製作委員会で都度合意を取ると時間がかかるので、CLAMP展では大方針は製作委員会全員で策定しつつも現場の日々の判断は関さんと私に一任いただき、即断即決で動ける体制をつくりましたね。  

デジタル全盛の時代にこそ、リアルな「場」が体験価値を生み出す武器になる

──「体験×コンテンツ」という取り組みにおいて、今後の目標を教えてください。

松浦:海外にも展覧会ビジネスを広げたいです。日本で開催したままの内容ではなくても、世界に届けられたらなと。CLAMP展を開催し、改めて海外のお客さまの多さを認識しました。CLAMPさんの作品は性別・年齢を問わず、さらに国も越えてとても愛されていると、改めて実感しました。

今、出版社として、作品のファンからの「体験」へのニーズは強く感じます。イベントに限らず、出版以外の取り組みを、電通さんと一緒にチャレンジしていきたいですね。

南木:私はミュージアム(博物館)にすごく興味があります。できればCLAMPさんのような作家の、常設のミュージアムが作れるといいなと。新たな空間モデルの設計を含め、そこに行けば対象の方の作家性や、素晴らしさに触れられるような「場」を作っていきたいです。

関:僕は2つの目標を持っています。1つは南木が言ったような常設の施設で、作品やコンテンツを入れ替えながら、自分でブランディングしてキュレーションしていける場を作りたい。講談社さんのようなコンテンツホルダー含め、作品に関わる方々から喜んでもらえる場を持てたらと思います。

もう1つは、そうしたビジネスを北米・ヨーロッパに広げることです。僕が手がけてきた展覧会だけでも、アジアであれば巡回できるルートとパートナー、実績がたまっています。それを北米・ヨーロッパにまで広げ、展示会ができる現場を作れたらいいなと。こうした海外展開は、グローバル企業である電通の強みでもあります。アジアに限っても、原作原画の展覧会で巡回できている例は、ほとんどありませんから。

コンテンツの配信やオンライン上の展開が広がる中で、リアルな「場」があることは、作品に体験価値としてのプラスを生み出す武器になります。今後も展覧会の強みを追求してきたいですね。
 

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電通社員で1.47倍の効果を実証!パフォーマンスを最大化する“攻め”のメンタルケアとは?

BoostHealth

本連載では、スタートアップ企業の起業家、経営者、投資家、CMOなどが、会社や事業の成長過程で直面した課題をどのように乗り越えたのか、スタートアップ支援を行っている電通社員との対談形式でお届けします。

今回のゲストは、AIとコーチがサポートする企業向けメンタルケアプラットフォーム「BOOST」を展開する、Boost Health代表取締役CEOの芳賀彩花氏。ベンチャークライアントモデル推進の一環として、電通のスタートアップ支援組織であるスタートアップグロースパートナーズ(SGP)内でBOOSTを導入した経緯と成果、今後の展望について、電通の高井俊輔と語り合いました。

高い成果を出す人とそうでない人の違いは、ストレス対処スキルにあった!?

高井:まずは、Boost Healthがどのような会社なのか、改めてご紹介いただけますか?

芳賀:私たちは2022年創業のスタートアップ企業です。「働くココロを前向きに。会社のパフォーマンスを上向きに。」をミッションに掲げ、企業で働く社員の方々がより健康になるだけでなく、高いパフォーマンスを発揮して企業の成長につながるように支援することを目指しています。

高井:起業の経緯についてもお話しいただけますか?

芳賀:前職はコンサルファームでして、メンタルヘルスの分野と直接的な関係はありませんでした。ただ、コンサルの現場では常に高いパフォーマンスを求められ、短期間で成果を出さなければいけないプレッシャーがあります。その中で、前向きに取り組んで成果を出す人と、そうでない人の違いが何なのかをずっと考えていたんです。最初は「地頭の良さ」が決定的な差なのかと思っていましたが、次第にそうではなく、ストレスへの対処法やコンディションの整え方が、大きな差を生んでいることに気づきました。

芳賀彩花さん

高井:なるほど。確かに成果を出している人ほど、自己流でも何らかのメンタルケアをしている印象はありますね。

芳賀:そうなんです。一方で、企業側のサポートは研修やOJTくらいで、ストレスへの具体的な対処法やセルフケアのスキルは、あまり体系的に教えられているところは多くありません。それは企業にとっても本人にとっても損失です。たまたま良い上司に恵まれたから、たまたま環境が良かったから、ではなく、再現性のある形で社員を支援できるソリューションをつくりたいと考えました。

芳賀彩花

高井:その原点には、東京大学で研究されていたテーマも関係しているんですよね?

芳賀:はい。学生時代は社会心理学を専攻し、組織の中で人がどう行動するのかを研究していました。ただ、当時はそれをビジネスに生かす道があまり見つからなかったので、まずはコンサルの世界に入りました。でもやはり、自分の興味は常に「人が前向きに働くにはどうしたらいいか」にあったんです。コンサル業務でも戦略を立案するだけでなく、それを現場の社員の方々が前向きに実践できるようになるにはどうすれば良いのかをずっと考えていました。

高井:最近では、ようやく日本でも社員のエンゲージメントやウェルビーイングが注目されるようになってきましたよね。

芳賀:本当にそう思います。欧米に比べて、日本企業は人への投資が非常に少ないといわれています。すでに欧米では教育やメンタルケアにかなりの予算をかけているのに対し、日本はまだこれからという段階です。とはいえ、少子高齢化が進む中で健康に長く働き続けてもらうための支援は、どの企業にとっても必要不可欠なものになります。だからこそ今が、私たちのようなソリューションを提供するにはちょうど良いタイミングだと感じています。

高井:そのようなミッションの実現に向けて、御社が提供している「BOOST」はどのようなソリューションでしょうか?

高井俊輔

芳賀:当社の「BOOST」は、コーチングによる伴走支援と、認知行動療法をベースにしたAIツールを組み合わせたハイブリッド型のソリューションです。社員が抱えるストレスや不安を「具体的な課題」として言語化し、そこに対してどんな思考・行動の選択肢があるかを提案します。漠然とした悩みを見える化し、自ら前向きな行動を取れるようになる。そうしたストレス対処の力を育てていく仕組みです。

高井:認知行動療法とテクノロジーを組み合わせることで、より実践的でカジュアルに使える形にしているんですね。

芳賀:そうですね。認知行動療法はもともと、うつや適応障害といった臨床の場で用いられてきた手法ですが、近年は、元気な人がより前向きに働くためにも使えると注目されています。仕事をしていると大小さまざまなストレスがありますが、それにどう対処するかで受ける影響は大きく変わってきます。そこで、「受け止め方」や「対処の仕方」を変えることによって、ストレスに上手く付き合うのが認知行動療法です。BOOSTは、その考え方をベースに、ツールを通じて日常的に実践してもらえるように設計しています。

BoostHealth

不調にならないだけではなく、120%の状態に引き上げたい

高井:SGPは電通の中でも比較的新しい部署で、これまでのセオリーやマニュアルのようなものに沿ったやり方が通用しない場面が多く、新しいチャレンジを日々重ねています。前例のない状況に向き合う中で、常に高いパフォーマンスを発揮するためには当然ながらプレッシャーを感じることもあります。そんな中で、私たちはSGPにおけるDEIプロジェクトの一環として、またベンチャークライアントモデルの実践として、BOOSTの活用を検討しました。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まるチームなので、孤立を生まずに、レジリエンスを高め、前向きに働ける環境づくりが必要だと考えたのがきっかけです。

芳賀:当時、電通さんの中で新しい働き方やレジリエンスを重視する方向性が強まっていたタイミングでしたよね。BOOSTも単なる不調予防ではなく、企業の成長や社員の挑戦を支えるソリューションなので、その流れと非常に親和性があると感じていました。

高井:そうですね。いわゆるメンタルヘルス系のサービスというと、どうしても“守り”の側面が強調されがちです。でも、私たちが目指していたのは、メンタル向上によって成果を最大化すること。だからこそ、不調にならないだけではなく、パフォーマンスを高めるためのストレス対処力や、ストレスを跳ね返すレジリエンスの強化という視点に共感したんです。BOOSTの考え方は、不調予防にとどまらず、元気な人をさらに120%の状態に引き上げていくもの。そこがSGPの文化にもフィットしていました。

芳賀:企業が社員の健康に関心を持つのは当たり前になりつつありますが、そこからさらに「もっと成果を出してもらうためにどうサポートするか」という考え方は、まだまだ日本には十分に浸透していません。その点で、SGPをはじめとする電通さんが“攻め”の観点で人のパフォーマンスを高めていこうとされているのが印象的でした。

高井:極端な例かもしれませんが、私はBOOSTのソリューション内容を聞いたとき、大谷翔平選手のことを思い浮かべていました。あれだけのトップアスリートでも、フィジカル面だけでなくメンタル面も含めた優秀なコーチやサポート体制があってこそ、あの成果があるわけです。ビジネスの世界でも同じように、日々のコンディショニングや内面的なケアを大切にするべきだと。そんな考え方を体現しているのがBOOSTですよね。

芳賀:そうですね、アスリートにメンタルコーチがいるように、ビジネスパーソンにもそうした存在が必要だと感じています。

高井:実は、Boost Healthさんと出会ったときに“ビビッと”きた理由の一つは、提供しているソリューションの内容もさることながら、芳賀さんご自身の人となりでした。明るくて前向きで、すごくこのソリューションに“似合う”方だなと。心理的なケアや自己理解を深めるようなプロダクトって、人間味がすごく出るものですし、だからこそ誰がやっているかがとても大事になる。

芳賀:恐縮です(笑)。

BoostHealth

高井:ベンチャーキャピタルの方々と話すときにも「その人がやるからこそ意味があるサービスかどうか」という視点が非常に重視されます。芳賀さんの場合、コンサル時代のご経験や社会心理学のバックグラウンド、そしてお母さまが心療内科医という家庭環境など、すべてがこの事業と深くつながっていると感じました。そういう積み重ねがあってこそ、スタートアップ企業が直面するさまざまな“ハードシングス”を乗り越えていけるのだと思います。

芳賀:本当にありがたいお言葉です。私自身も、過去の経験を通じて「人がより前向きに働くには何が必要か」を突き詰めて考えてきました。BOOSTはその答えの一つとして、企業や社会に貢献していきたいと思っています。

コンディションスコア47%向上が示す、確かな手応え

芳賀:SGPの中でBOOSTのプログラムを導入していただき、異動直後など環境変化によってプレッシャーやストレスを感じやすい方を対象に13人の方にご参加いただきました。内容としては、ツールと人によるコーチングを組み合わせたプログラムで、面談を通じて「こうなりたい」「これが課題」といったテーマを明確にし、毎週、次のアクションを設定していくというプロセスを繰り返していきました。

高井:忙しい中でも多くのメンバーが積極的に取り組んでくれて、普段の業務の中ではなかなか口に出しにくいことも率直に話せる場になっていたと思います。実際にプログラムの満足度は92%と非常に高い評価を得ています。

芳賀:BOOSTは参加者自身が「受けて良かった」と感じることを最優先にしていますが、同時に企業側にとっても成果が数字で見えることが重要です。今回、参加者の「コンディションスコア」は平均で47%向上し、特にストレスが懸念された参加者のスコアが顕著に改善されました。また、ストレス対処スキルも向上し、ストレス対処スキルが高い人ほど、エンゲージメント・生産性が高いことも明らかになりました。

BoostHealth

高井:面白かったのは、ストレス対処スキルのパターンが人によってまったく違うということです。BOOSTのツールではストレス対処スキルを「情報収集」「気晴らし」「肯定的解釈」など6つの軸で可視化できるのですが、自分がどこに偏りがあるのかがよく分かる。たとえば私は「前向きな諦め」がすごく弱かったんです。確かに言われてみれば、昔から諦めることに少しネガティブな印象を抱くタイプだったと思うのですが、「どうにもならないことを手放すのも一つのスキル」とコーチからアドバイスいただいて、その視点は自分の中になかったと気づくことができました。

芳賀:素晴らしい気づきですよね。高井さん、BOOSTの講師になっていただけそうですね(笑)。

高井:いえいえ(笑)。でも本当に、「回避する」ってネガティブじゃなくて、時には最善の選択なんですよね。積極的に計画を立てる、情報を集める、ポジティブに解釈する——そういう対処法だけでは、乗り越えられない場面もあるんだなと。そうした際に回避したり切り替えて別の選択肢に目を向けるといった選択肢も、実はすごく重要だというのが勉強になりました。

芳賀:もちろん、人生はゲームのようにはいきませんがRPGに例えると分かりやすいかもしれません。草むらでモンスターが出てきたとき、プレイヤーは「戦う」「逃げる」「道具を使う」など選べますよね。自分の残りのHP(ヒットポイント)や相手の強さによって、取るべき対処は変わります。働く上での困難やチャレンジに直面したときも毎回同じ手を使うのではなく、その場に応じた最適な方法を選ぶ。それを一人一人が自ら実践できるようにするのが、BOOSTの狙いなんです。

BoostHealth

高井:それがまさに、今回の13人にとっても大きな気づきだったと思います。もちろん、プライバシー保護の観点から特定の個人がどのような結果だったかは私も分からないのですが、匿名で集計されたレポートや感想を見ていると、パフォーマンスの向上や、不安の乗り越え方に関する気づきが多数ありました。

たとえば、仕事の中でうまく乗り越えられなかったポイントに対して、第三者からの視点が加わることで「この対処方法で良いんだ」と思えたという声。あるいは、AIからのアドバイスが意外と効果的だったという声もありました。

芳賀:それはよく聞きますね。AIだからこそ言える、聞けるという感覚。人に話すと気を遣ってしまうけれど、AIなら率直に向き合える。自分が入力したことに対して、一般論としてのアドバイスが返ってくることで、妙に納得できるというのはありますね。

高井:そうなんです。「相手にこう思われるかも」などと、余計なことを考えずに対話できますし、AIの返答にも余計なフィルターがかかっていません。結果として「確かにそうかもしれない」と腑に落ちる。そうした体験を通じて、自分の思考のクセに気づけたり、行動の選択肢が広がったりする。それが、BOOSTを導入して得られた大きな価値の一つだと思います。

ベンチャークライアントモデルでの強い成功体験が、提案の説得力に

高井:今回の取り組みはベンチャークライアントモデルの実践という側面もありましたが、その視点でいうと「自分たちで実践して成果を得られた」という事実を持てたことは非常に大きいと思っています。今後電通のクライアントにも、BOOSTをご提案していきたいと思っています。やはり、自社が当事者として導入・活用した上で納得できる結果が出たことは、クライアントに提案する際にも最も説得力のある材料になります。

ベンチャークライアントモデルは本当に難しいと思っていて、必ずしも成果が出るとは限らないですし、曖昧なまま終わってしまうケースも少なくありません。でも今回に関しては、目に見える形で成果を得られた稀有な例だと感じています。

芳賀:本当にありがたいことです。まずは高井さんのように、BOOSTを信頼して伴走してくださる方と出会えたことが、大きな成功要因だったと感じています。そして、これまでの実績を振り返ってみても、電通さんとの取り組みを通じて得られた成果はかなり高い数値となっています。もともと優秀な方が多い中で、より高い成果を出そうとすると、それだけプレッシャーも強くなる。そのような環境にいる方々だからこそ、BOOSTのようなコーチングや支援を必要としていたのだと思います。

また、私たちのようなソリューションは日本ではまだ新しいため、興味はあっても様子見の企業が多いのが現状です。そうした中で、電通さんのような企業がBOOSTを活用し、明確な成果を出したという事実は、非常に大きなメッセージになります。

芳賀彩花

高井:BOOSTを単にテストして終わりではなく成功体験につなげられたのは、導入のプロセスにも要因があったと思っています。ベンチャークライアントモデルをうまく機能させるには、ソリューションが優れていることは大前提として、それだけでなく組織内でいかにコンセンサスを取り、丁寧に段階を踏んで進められるかがカギになります。

たとえば、今回はAIを活用したソリューションでもあるので、AI活用に関する社内のルールやガイドラインへの対応も不可欠でした。人事部門や関連部門にもきちんと説明し、理解してもらえるようにコミュニケーションを重ねる。そうした一つ一つの対応が重要になります。

芳賀:本当にその通りですね。どれだけソリューションが良くても、それだけでは大企業には導入していただけないというのを強く感じています。関係する一つ一つの部署に納得してもらいながら、段階を踏んで進めていく必要があります。

高井:そのようなプロセスの構築や合意形成も含めた成功体験を、クライアント企業への導入を支援する際にも役立てていきたいと思っています。

高井俊輔

成長とケアの両立を、日本のスタンダードに

高井:今回の取り組みで得られた成果をもとに、BOOSTの導入を社内でもさらに広げていこうという動きが進んでいます。すでに別部署やキャリア採用の方のオンボーディング支援への応用も検討中で、具体的な計画も始まっています。今年度もSGP内で新たにプログラムを実施する予定ですし、取り組みを聞いて声をかけてくれるメンバーも増えていて、チームとしてもワクワクしています。

今後はより上位のマネジメント層、たとえば局長レイヤーや役員クラスにも参加してもらう計画を進めており、トップ層にもBOOSTの価値を実感してもらえることを期待しています。

芳賀:私たちとしても、BOOSTを日本企業の新しいスタンダードにしていきたいという思いがあります。これまでの日本の働き方は、前時代的なハードワークを良しとしていた“攻め”の時代から、働き方改革やウェルビーイングによる“守り”のフェーズに移行してきました。でも今、求められているのは、その中間——心身の健康をケアしながらも成長を後押しするような、バランスの取れた支援の形だと感じています。

そういった意味でも、電通さんのような「高いパフォーマンスと心身のケアの両立」を目指す企業と一緒に、新しい風を起こしていけることに、私たちは強い意義を感じています。

高井:BOOSTは、私自身がずっと使い続けたいと思えるソリューションなんです。実はBOOSTのコーチに「仕事をする上で高井さんが大切にしているポリシーが、今の自分を縛っているのかもしれません」と言われたことがあって。自分では信念だと思っていたことが、実は柔軟な思考を妨げていたという気づきがありました。このようにプログラムを通じて、明らかに自分の状態が良くなったという実感があるからこそ、人にもおすすめしたいと心から思っています。

芳賀:それこそ、スタートアップ企業や新規事業に取り組む部署との相性も良いですよね。人手が足りない中で、マネジメントが行き届かない場面もありますし、BOOSTがフォローしきれない部分を支える“影の伴走者”になれるのではないかと思っています。

高井:そうですね。誰かが疲弊する前にAIやコーチがアラートを出してくれる。あるいは本人が自力で立ち直る力を養える。そんな仕組みがあると、組織全体のレジリエンスが格段に高まるはずです。

芳賀:SGPの皆さんとの取り組みは、私たちにとって大きな一歩になりました。新しい価値を提案するスタートアップにとって、最初の導入実績を積み上げることは容易ではありませんが、そんな中でファーストペンギンとして飛び込んでくださり、実際の現場での手応えや丁寧なフィードバックをいただけたことは、BOOSTの価値をさらに磨く上でも本当に大きな前進の機会でした。社内調整も含めて真摯に伴走していただいたことに、心から感謝しています。

高井:ありがとうございます。私たちとしてもBOOSTという新しい選択肢を社内に届けられたことをうれしく思いますし、これからもワンチームで一緒にソリューションをより良くしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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OpenAI、なぜ変節?意図しない成功で市場競争・政治に巻き込まれ…米国防総省から多額受注

●この記事のポイント
・OpenAI、米国防総省との間で防衛へのAI利用などについて2億ドル(約290億円)の契約を締結
・累計約2兆円もの出資を受けた米マイクロソフトを、独占禁止法違反で当局に告発することを検討か
・想定外の成功によって、公益重視の営利企業に移行するという苦渋の決断

 OpenAIの変節ぶりが注目されている。同社はこれまで利用規約で軍事関連の活動への自社のAIの利用を禁止していたが(24年に規約を変更し一部を容認)、今月、米国防総省との間で防衛へのAI利用などについて2億ドル(約290億円)の契約を締結したと発表。また、これまで累計約2兆円もの出資を受けた米マイクロソフトを、独占禁止法違反で当局に告発することを検討しているとも報じられている。こうしたOpenAIの変化の背景には何があるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

AIが強いパワーを持って国際政治・経済を動かすものに

 まず、米国国防総省と契約した背景について、エクサウィザーズ「AI新聞」編集長・湯川鶴章氏はいう。

「OpenAIの成り立ちを振り返ると、もともとは2015年にNPO(非営利団体)として研究組織的なかたちで立ち上げられたのが始まりでした。AIを一部の有力企業のものではなく、人類みんなのものにしましょうという思いでOpenAIという社名をつけたくらいです。一つには、彼ら自身が予想していなかったほど会社が成功してしまい、当初はビジネス的に大きな利益を得るつもりはなかったにもかかわらず、市場競争に巻き込まれ、AIモデルの性能を上げていくためには大量の高性能半導体を買わなければならないということで、資金が必要になってきました。NPOのままでは資金が集まらないので、昨年にはPBC(パブリック・ベネフィット・コーポレーション)と呼ばれる公益重視の営利企業に移行するという苦渋の決断をしました。

 そして今度は政治とも関係を持たざるを得なくなりました。AI開発でも軍事でも中国がどんどん米国に追い付いてきて、中国が軍事に積極的にAIを活用すれば、中国に対して民主主義国家のアメリカが不利になる可能性も出てきた。そうなると、米国企業であるOpenAIも『軍事に自社のAIは使わせません』と言っている場合ではなくなり、米国政府には協力せざるを得ないという状況になりました。こうして、自分たちが考えていた以上にAIが強いパワーを持って国際政治・経済を動かすものになり、それらの世界に入るつもりはなかったのだけれど入らざるを得なくなった、ということではないでしょうか」

マルチモデル戦略に行かざるを得ないマイクロソフト

 もともと生成AIの一スタートアップだったOpenAIが大きく成長して世界的に注目されるきっかけとなったのは、2019年からマイクロソフトから累計約2兆円もの出資を受けたことであった。マイクロソフトが初めてOpenAIに投資をしたのは19年。その金額は10億ドルにも上ったことでOpenAIは世界的に注目の的となり、マイクロソフトはOpenAIが開発するChatGPTに使用される言語モデル「GPT-3」の独占ライセンスを取得。23年にはマイクロソフトはChatGPTの技術を活用したAIアシスタントツール「Microsoft Copilot」をリリースするに至った。

 両社の戦略的パートナーシップは今後も継続される。2030年までの契約期間中、OpenAIの知的財産へのアクセス、収益配分の取り決め、OpenAIのAPIに対するマイクロソフトの独占権が継続されることが決まっている。

 そんな両者の間の隙間風がクローズアップされるきっかけとなったのが、今年4月、OpenAIがソフトバンクグループ(SBG)などから400億ドル(約6兆円)の出資を受けることで合意したことだった。両社はAI共同開発事業「Stargate Project(スターゲート・プロジェクト)」を推進するなど蜜月ぶりをみせている。

 マイクロソフトとの間の確執が顕在化しつつある背景は何か。報道によれば、OpenAIが買収を予定している米ウインドサーフのIP(知的財産)をマイクロソフトが利用することに、OpenAIが反対していることが対立を生んでいるという。マイクロソフトはOpenAIに多額の出資をする見返りに、OpenAIの所有するIPを使用する権利を持つ。また、OpenAIが5月に発表した組織再編をマイクロソフトが承認していないことも影響しているといわれている。

「世界中に大企業顧客を抱えるマイクロソフトは、顧客からクラウドサービスのAzure(アジュール)でOpenAIだけではなくてグーグルやメタ、中国のディープシークなども使いたいという要求を受けており、OpenAIだけを優遇するわけにはいかない。顧客に顔を向けたときに、さまざまな企業のAIモデルを使えるようにする必要があり、マルチモデル戦略に行かざるを得ません。

 一方、OpenAIが今、もっとも親密な関係を築いているSBGは、孫正義会長の直感に基づき、数多く存在するAIモデル開発会社のなかでOpenAIに賭けて多額の資金を出資したという側面があり、マイクロソフトとは経営の視線の先が異なります。こうしたなかでOpenAIとしては、『マイクロソフトがあんまりうるさく言ってくるなら、独禁法違反だと当局に告発しますよ』という姿勢をみせているのだと思われます」(湯川氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=湯川鶴章/エクサウィザーズ・AI新聞編集長)

安田不動産、ファーイーストと提携=英国の学生専用住宅事業に共同参画―シンガポール

【シンガポール時事】安田不動産(東京都千代田区)は26日、不動産開発大手ファーイースト・オーガニゼーションのグループ会社ファーイースト・オーチャードと共同で、英国における学生専用住宅の開発事業へ参画すると発表した。

 安田不動産は、3月にロンドンでのオフィス事業に参画したが、英国における事業としては2件目の参画で、英国の住宅市場においては初の事業参画となる。

 英国には世界的な名門大学が多く存在するが、学生専用住宅の供給は限られ、需給の逼迫(ひっぱく)が深刻な課題となっているという。

 ファーイースト・オーチャードは、英国での学生専用住宅の開発・運営で実績が豊富で、共同事業では、同社が組成・運用するファンドを通じ、英国の主要大学が立地する都市の競争力の高い開発用地を複数取得し、安田不動産と共同で開発・賃貸事業を行う。既にグラスゴーとマンチェスターで開発用地を取得済みで、今後も継続的に優良な用地の取得を進めていく予定。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/06/29-18:14)

今すぐマネできる!孫正義の仕事術/転職の面接/交渉術/会議でのNG・OK発言〈見逃し配信〉 – 見逃し配信

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「成長したがる人ほど成長できない」キャリアのプロの“直球解説”がド正論すぎて、ぐうの音も出なかった – 転職で幸せになる人、不幸になる人 丸山貴宏

「成長したい」という若いビジネスパーソンが増えた。「会社はいつ潰れてもおかしくない」と不安を刷り込まれた世代にとって、自分の能力を高めることは生存戦略だ。しかし、同時に「成長したい」と言いながらまったく成長しない若手に「口だけだな」「期待ハズレだった」と感じた人も少なくないはず。それもそのはず、「成長したい」という言葉は口にするほど成長しにくくなるというパラドックスが生じるからだ。キャリアのプロフェッショナルが詳しく解説する。