ホンダ・トヨタ・日産、ハンズオフ運転の車が出揃う…日本で普及するのか?カギと課題
●この記事のポイント
・ホンダは「アコード」でハンズオフ運転機能を搭載したグレードを発売
・中国のハンズオフ機能は一般道と高速道路を走行して目的地まで自動運転
・日本のメーカーは安全を非常に重視しており、ハンズオフ機能の実用化には慎重
ホンダは5月、「アコード」(国内仕様)でハンズオフ(手放し)運転機能であるADAS「Honda SENSING 360+」を搭載したグレードを発売。これで、ハンズオフ運転対応の量販車種を販売する自動車メーカーはトヨタ自動車、日産自動車を含めた3社になるが、各社のハンズオフ運転技術には違いはあるのか。また、日本で今後、ハンズオフ運転対応車が広く普及する可能性はあるのか、普及に向けた課題・ハードルは何なのか。そして普及することにどのような意義があるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
中国のハンズオフ運転は「E to E(End to End)」
各社のハンズオフ運転技術には、それぞれ特徴や違いはあるのか。自動車技術のコンテンツ制作を専門とするオートインサイト株式会社代表で日経BP総研未来ラボの客員研究員を務める鶴原吉郎氏はいう。
「どのメーカーも基本的な機能としてはほぼ同じで、高速道路限定での手放し運転、車線変更支援、駐車支援のような機能などが利用できます。アクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作は自動化されていますが、人間がシステムの動作状況を監視する必要がある自動運転『レベル2』のシステムと位置づけられます。車線変更支援は、時速100kmに設定して高速道をハンズオフ走行中に、先行車が遅い速度で走っているような場合に、追い越し車線が空いているかをレーダーとカメラが確認したうえで、車線変更をドライバーに提案し、ドライバーがウインカーレバーを操作すると車線変更に同意したと認識して、車が車線変更のためのハンドル操作を支援するというものです。ちなみに車線変更する際には、ドライバーはハンドルに手を添えておく必要があります」(鶴原氏)
日本ではハンズオフ運転の機能を搭載した車は普及しているのか。
「トヨタの車種でハンドオフ機能が設定されているのはレクサスのLSであり、月間の販売台数は100台前後です。また、ハンズオフ機能は『Advanced Drive』というオプション装備の一部で、標準搭載されているものではありません。日産の車種としてはスカイライン、アリア、セレナで、量販車種のセレナは2024年度の販売台数が約8万台であり、ハンズオフ機能がついたプロパイロット2.0を搭載しているのは、そのうちの約10%にあたるルキシオンという最上級グレードのみです。ホンダは5月末に商品化したばかりなのでほとんど実績はありません。結果として、ハンズオフ機能を搭載した車は、国内では新車販売全体の1%にも満たない比率ということになります」(鶴原氏)
海外の状況をみてみると、中国で比較的普及が進んでいるという。
「日本で商品化されているハンズオフ機能は高速道路限定ですが、中国では『E to E(End to End)』といってナビゲーション上で目的地を指定すると、一般道から高速道路までシームレスに運転操作を支援してくれる機能が実用化されています。この機能は『NOA(Navigate on Autopilot)』と呼ばれ、運転操作は自動化されていますが、人間はシステムの動作状況を監視する必要がある『レベル2』のシステムなのは日本メーカーのハンズオフ機能と同様です。新車全体のうち一般道までカバーするNOAを搭載する車の比率は1%程度と言われていますが、高速道路限定のNOA機能は7%程度と、日本よりもかなり普及が進んでいます。最近ではBYDが全車種に価格を変えないままでNOAを標準装備すると発表しました。上位クラス以外の車種のハンズオフ機能は高速道路限定ですが、業界最大手のBYDが低価格の車種にもNOAを標準搭載したことで、中国におけるNOAの普及が加速しそうです。
中国で一般道までカバーするNOAが日本に先駆けて実用化された背景には、理系の大学卒業生の人数が日本に比べて圧倒的に多く、ソフトウエア技術者を確保しやすいという点があげられます。また、NOAのような機能を動作させるには高性能の半導体が必要なので、電力消費量が多いのですが、中国ではEVが普及しているので、電力を供給しやすいという面もあるでしょう」(鶴原氏)
使いやすく、誤動作が生じないようにすることが普及のカギ
日本であまり普及していない理由は何なのか。
「日本のメーカーは安全を非常に重視しており、ハンズオフで走行している車で事故が起きるとブランドが大きく棄損するので、交通状況が複雑な一般道での実用化には慎重な姿勢です。一方、中国は最新技術をめぐる競争が激しく、さらに消費者が新しい技術に比較的寛容な傾向があるため、普及が進んでいる面はあるかもしれません。ただ、先日、中国小米(シャオミ)のEVでNOAを動作中に高速道路で死亡事故が起き、中国の当局が規制を強める可能性も出てきました。NOAでは先ほども触れたように、ドライバーはシステムの動作状況を監視する義務があるのですが、メーカーが先進装備の搭載を競うあまり、そうしたことをユーザーにきちんと周知徹底してこなかったのではないかという空気が強まっています」(鶴原氏)
今後、日本でハンズオフ搭載機能の車が広く普及する可能性はあるのか。
「例えば日産は自動運転技術のベンチャー企業である英ウェイブ・テクノロジーズと協力して都市部でもハンズオフ機能を実現するADAS(運転支援機能)を2027年から実用化すると発表しています。同様にホンダも27年に都市部でハンドオフ運転ができるような運転支援機能を搭載する車を投入すると発表しています。そのためには、高い性能を持ちつつ消費電力を抑えた半導体を開発していく必要があるでしょう。また、一般道での運転支援機能を実現するには『三種の神器』として、カメラ、ミリ波レーダー、ライダー(レーザー光線を使ったセンサー)が必要と言われていますが、レーザー光線を使ったセンサーのコストが現状ではまだ高いのが過大になっています。
ただホンダは、できるだけコストを抑えて小型車クラスにもハンズオフ機能を搭載したいと説明しており、ライダーを搭載しない方向で検討しているようです。もし普及価格帯の車にも搭載されるようになれば、普及が進む可能性があります。
ハンズオフ機能のような運転支援技術が、高齢ドライバーによる事故の削減につながれば普及の意義は大きいといえます。ただ、現在の運転支援機能は操作が簡単とはいえず、高齢者が十分活用しているとは言い難いと感じます。使いやすく、かつ誤動作が生じないようにすることが普及のためには欠かせないと思います」(鶴原氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=鶴原吉郎/オートインサイト代表)
ジャイアント・キリング
むかし、むかし、ある大手食品メーカーで、圧倒的シェアを誇る調味料シリーズの商品開発プロジェクトに参加していた時のこと。
数多くのグループインタビューを実施し、定量調査やPOSデータの結果を徹底的に分析し、プロの料理人にもいろいろなレシピを教わって、数え切れないほどの試行錯誤を重ねて仕上げたサンプルを試食調査に掛けたところ、自由記入欄にも絶賛が並んで、史上最高レベルの「とてもおいしい」スコアを獲得しました。
しかし、チーム全員で大喜びしたのも束の間、聞こえてきた「正式決定」は「この商品を発売することはできません」というものでした。
なぜでしょう?
その理由は、一方で残念なことに5%を超える人が「まったくおいしくない」と答えていたから。そして「魚が腐ったような臭いを感じる」といったコメントが、いくつか並んだからでした。
実はそれには思い当たる節があって、試作品のレシピには少量の「魚醤(ぎょしょう)」を隠し味に使っていたのでした。その独特の風味が、多くの方が「コク深い」と評価する一方で、一定の方にとっては「腐ったような臭い」と答える原因となったのでしょう。

この時、「発売しない」判断をした部長さんがおっしゃったのが「もしかしたら、この商品は売れるかもしれない。でもあの企業がつくる商品は、最近腐ったような臭いがする……なんて評判が立ったら、山田さん、責任取れますか?」という言葉でした。もちろん反論などできるわけもなく、いまでもそのシーンが脳裏に焼き付いています。
実はぼくがこの経験を通じて学んだのは、トップブランドにも付け入る“スキ”はあるということでした。彼らにとっては、ちょっとした悪評も「蟻(あり)の一穴」。嫌われないことにも当然、意味があります。
一方で業界10位とか20位とかの企業であるなら、嫌われる心配をするよりも、誰かに強烈に支持してもらうことの方が大切なはず。極端に言えば、8割の人々には見向きもされなくていいから、たった5%、場合によっては1%の熱狂を徹底的に追求する覚悟が有効です。
ところが実際には、大中小規模、さまざまな企業の方々と商品開発をご一緒しましたが、皆さん共通して、嫌われることを恐れていらっしゃいました。トップブランドと同じことをしていては、業界の秩序を根底から覆すジャイアント・キリングはおろか、目先の利益確保ですら難しくなるでしょう。
戦略の要諦の一つに、競合相手の嫌がることを徹底的にやり抜く、ということがあります。自らがリードする市場で他ブランドが(たとえ一部であっても)「これはうまい!」と熱狂を生むことは、まさにトップブランドが嫌がりそうな取り組みです。今回は「魚醤」にまつわるとても小さなお話でしたが、そこには大きなヒントが隠れていると思います。
スポーツなどで、格下のチームや選手が格上に勝利する「番狂わせ」。この意味で使われている言葉「ジャイアント・キリング」が、童話「ジャックと豆の木」の原題「Jack the Giant Killer(ジャック・ザ・ジャイアント・キラー)」に由来することを知ったのは、つい最近のことでした。
お母さんが窓から捨てた「魔法の豆」からスタートする冒険譚。しかし改めて読んでみると、ジャックは大男から金貨や金の卵を産むメンドリを繰り返し泥棒しているんですよね。しかも、それに怒って追いかけてきた大男を殺しちゃうわけで。
ジャックを英雄視するストーリーには、いまひとつ釈然としないのですが、それでもやっぱり初夏の蒸し暑い夜は「ビールと豆の日」。以前にも一度ご紹介(※)しましたが、枝豆の「味変」に、ちょっと魚醤を振りかけるのもオススメです。
※コンセプトの定義(秋田のしょっつる) | ウェブ電通報
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経産省×電通対談。企業や組織にとって、なぜDEIが必要なのか?
企業にとって、なぜDEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)が必要なのか?
DEIの重要性が叫ばれる中、その「目的」が曖昧なまま、形式的に取り組んでいる企業も多いのではないでしょうか。
経済産業省は、2025年4月、「企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)」を公表しました。
同レポートでは、DEI実現による「日本企業の競争力強化」という観点を特に重視。企業の経営層をはじめ、幅広いビジネスパーソンにダイバーシティ経営の重要性を伝えるとともに、さまざまな知見を取りまとめて発信しています。
同レポートでは、ダイバーシティ経営とは以下として定義されています。
企業は、同質性が高い状態から脱却し、経営戦略実現に必要かつ多様な知・経験を持つ人材が活躍することができる環境の整備と、組織文化の醸成を行うことで、イノベーションを生み出し価値創造につなげていくことができる。
(ダイバーシティレポートP.4「経営陣へのメッセージ」より)
dentsu JapanのCDO(チーフ・ダイバーシティ・オフィサー)として、国内電通グループ全体のDEI実現に日々取り組む口羽敦子氏が、同レポートをまとめた経済産業省の経済社会政策室長・相馬知子氏に、日本企業のダイバーシティ経営推進に当たっての課題と解決策について伺いました。
<目次>
▼2025年のダイバーシティレポートは、より「競争力」にフォーカス
▼「知と経験の多様性」が企業の生き残りの鍵となる
▼トップダウンとボトムアップの両輪で企業のカルチャーを変えていく
2025年のダイバーシティレポートは、より「競争力」にフォーカス
口羽:まず、このレポートがどういうものなのか、簡単にご説明いただけますか?
相馬:昨年の秋に立ち上げた「多様性を競争力につなげる企業経営研究会」での議論を集約したものです。読み手としては、イノベーション創出をしていきたい企業、国際競争力を高めていきたい企業の経営陣を想定しています。
口羽:今も日本企業はDEIに取り組んでいますが、まだ形式的なものにとどまっている企業も多いと聞きます。そんな中で、このレポートでは「これからはもっとDEIを企業の競争力強化につなげていきましょう」という強いメッセージが一貫して出されていると感じました。2017年の「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」のときと比較して、「競争力」によりフォーカスした理由を教えてください。
相馬:経済産業省では、以前より「企業価値に繋がるダイバーシティ」という考え方のもと、さまざまな政策を行ってきています。2017年と比べると現在は、日本企業の間でも人的資本経営がかなり根付いてきていて、法律の改正もあり、DEIへの取り組みについての情報開示も進んでいます。一方で、「DEIを競争力につなげる」という目標が果たされているのか?という視点でデータを見ると日本企業の競争力は未だ高いとは言えない状況です。また、日本企業の経営者のアンケートを見ると、皆さん「人」という部分に課題を感じていらっしゃいます。
そんな背景もあり、「本来実現したいことである、競争力につなげるダイバーシティを実現するにはどうしたらいいのか?」を議論すべく、有識者を集めて研究会を立ち上げました。その研究会の成果が今回のレポートです。

口羽:レポートの中で、企業のいろんな悩みをまとめているページがありましたが、とても生々しくて共感しました(笑)。ああ、どこの企業も同じポイントで悩んでいるんだなと。経済産業省としては、DEIそのものが日本の国全体の競争力に直結すると考えていらっしゃるんですね。
相馬:そうです。ただ経済産業省だけでなく、政府全体に危機意識があります。厚生労働省をはじめさまざまな省庁が、それぞれの機能に応じて取り組んでいますが、その中で経済産業省の役割になるのが、「企業の競争力強化」というテーマです。ただ、企業は社会とつながっているものであって、企業の活動だけで課題が全て解決するということはありません。
経済産業省がこういうレポートを出すことで、グローバル企業、中小企業、あらゆる職場・職域でDEIが進み、結果として社会全体のDEIが進むとよいと考えています。
口羽:社会全体で一斉にやっていかないと進まないということは、私もDEIを推進する立場として、日々痛感しています。例えば、「仕事と子育てを両立している女性従業員」というクラスタがありますが、電通という一企業として働きかけるには限界があります。つまり、家に帰ってから先の、パートナーの働き方にまではアプローチすることは難しい。その背景には、日本人全体の意識や価値観、社会構造の影響があります。
相馬:日本だとまだ女性の家事労働の負担が大きく、政府も問題意識を持っています。解決を目指して男性の育休取得の推進なども進めていますし、経済産業省では東京証券取引所と共同で、女性の活躍を支援している上場企業を「なでしこ銘柄」として選定しています。また、「共働き・共育て」をテーマとした施策も推進しています。
口羽:女性活躍についていうと、毎年発表される「ジェンダーギャップ指数」がショッキングで。「教育」「健康」といった分野のジェンダーギャップは、日本はとても優秀で、世界でもトップレベルです。一方で「政治」「経済」ではずっと下位に沈んでいます。
相馬:まさに、その「教育」では上位というところ、ですよね。しっかりとした教育を受けた人たちが、社会で十分に活躍できていないとしたら、それは損失と言えます。
「知と経験の多様性」が企業の生き残りの鍵となる
口羽:もう一つ、2017年との大きな違いとして、「知と経験の多様性(知と経験のダイバーシティ)」という言葉を強く打ち出されていますね。
相馬:企業の競争力という観点では、性別・障害の有無といった外から見えやすい部分の多い属性のみならず、一人一人の知識や経験そのものに着目した方が、説得力があると考えました。2017年のガイドラインでもこの考え方は含まれていますが、「知と経験の多様性」というフレーズ自体は、人的資本経営の文脈で使われる言葉で、経済産業省から発信している「人材版伊藤レポート2.0」の中でも重要なキーワードになっています。そこと揃えた言葉を使うことで、よりメッセージが伝わりやすいと考えました。
ですがもちろん、「性別」「障害の有無」といった観点の多様性も大事です。それらが違えば経験していることも違うし、いろいろなものの見え方が違うので。
口羽:属性にフォーカスすると、「多様性といえば、女性や障害のある方のための取り組み」という受け取りをされることも、残念ながらまだあります。「企業の競争力を高めるための知と経験の多様性」という言い方をすることで、受け取ってもらいやすくなるのではと思いました。それが本質でもありますし。
私もグループ内で従業員に説明する際は、「私たちは、クリエイティビティやアイデアによって、今の世の中にない新しい価値を生み出すことで125年間やってきました。これからもその領域で成長し続けるには、自分と違う視点や経験を持つ人と、どれだけ掛け算できるか。それこそが競争力そのものです」という話をしています。
そして、そのための一歩として、ジェンダーを含むマイノリティ属性の多様性があるんだという話をするのですが、その2つには乖離(かいり)があると感じる方もいます。

相馬:そこは本当に難しいですね。一つあるとしたら、「インクルージョン」の観点だと思います。DEIのうち、ダイバーシティは「そもそも人は多様である」という前提ですが、インクルージョンは、「その多様な人たちみんなのもの」です。つまり、マイノリティだけのものではないんです。
属性にかかわらず、一人一人がしっかり意見を言えたり、能力を発揮していくのが、インクルージョンの本質です。この「一人一人違う」という視点は本当に重要です。例えば、「それでは、女性ならではの視点で発言してください」など、逆に属性に縛られるようなことを言われても困りますよね(笑)。
口羽:それはなんだ、となりますね(笑)。
相馬:とはいえ、属性は関係ないと言い切れるかといえば、女性と男性で社会の見え方には異なる傾向はあります。外国人従業員も日本人従業員と違う見え方があります。属性によって経験していることも違えば、不便を感じていることも違うので、日本の社会構造を考えたら、それぞれの属性に応じた対応は必要ですよね。
組織の中である程度属性がばらけていることは、知と経験の多様性を実現する上でも合理的だと思います。そもそも社会を生きる人間の半分は女性なので、その人たちがしっかり力を発揮して活躍できる環境を整えるのは、スタートラインかなと。
口羽:属性をばらけさせることが目的なのではなく、属性をばらけさせることで知と経験の多様性が必然的に生まれ、それがイノベーションにもつながるということですね。インクルージョンはみんなのもの、みんなが能力を発揮できるようにするためにはそれが大事、ということですね。
今、海外ではDEIに対する揺り戻しがありますが、そもそも多様性に富んだ国と比べたら、日本はまだ1周も回っていない状況だと思います。今回のレポートで「変わらず国としてDEIに取り組んでいく」と示していただいたのは、不安を感じながらDEI推進をしている企業にとっても、心強く、背中を押してくれるものだと感じました。
相馬:企業や国の競争力を高めようという本質は変わっていないので、そこはしっかり進めていただきたいと思っています。変化の激しい時代であり、なおかつ日本では人口減少が続いています。ビジネスのグローバル展開を進める企業も増える中で、あらゆる変化に強く、これまでにないイノベーションを生み出していくためには、組織として知と経験の多様性がないと、もはや立ち行かなくなっていくと考えています。
トップダウンとボトムアップの両輪で企業のカルチャーを変えていく
口羽:日本企業のDEIの取り組みにおける課題はどこにありますか?
相馬:どの企業もベースとなる情報開示や法律対応はしっかりやられていると思います。ですが、その情報開示も、ただ開示するに留まっている企業と、自社としてのプラスアルファを付けて開示している企業とでは、かなりの違いがあります。いろいろな属性に対する対応も、雇用数など数字の上で達成しているところは多いのですが、それが本当に競争力につながる「みんなのインクルージョン」になっているかというと、これもばらつきがあるのが現状です。
今回、レポートと同時に、企業の課題に応じた打ち手、具体的なアクションを公開しています。ですが、研究会の委員とは「このアクションを、順番にこなしていくチェックリストにはしたくないね」と話しています。1社ごとに事業環境も、事業戦略も、何もかも違うわけですから、自社の状況に応じてアクションを選択して組み合わせて進めてほしいというメッセージも書きました。
口羽:この「アクション」は、私にとって一番学びが多く、日々DEIを推進している立場として強く共感しました。いくつか掘り下げて伺いたいのですが、まずアクション2の「推進体制の構築」です。ここに「ボトムアップでの推進体制構築」ということが書かれています。
口羽:2024年の1月から今の立場でDEIを進めてきた中で、強く感じているのは「トップダウンで制度やルールを作るだけでなく、ボトムアップと両輪でないと回っていかない」ということです。
トップダウンで制度を作ったり、数値目標を積み上げていくこと自体は、実はやろうと思えばそこまで難しくありません。ですがボトムアップ、つまり一人一人の従業員にDEIをインストールして、会社の本当のカルチャーをつくっていくことが、最も大事なんです。これが実現できなければ、形式上のDEIに終わってしまうんですよね。

相馬:そうですね、多くの企業が同じ課題を抱えていると思います。
口羽:1年やってきて、私の中で一つの解は、「自社の従業員の強み」にフィットするように、DEI推進の施策をデザインすることだと思っています。私たちグループの従業員の強みは、一人一人の中にアイデアがあるし、「やってやるぜ」というパッションと実行力が内在している人がすごく多いところです。その強みを生かすために「DEIパーク」という施策をやっています。
国内電通グループの約140社から半期に1回、リーダーを選出してもらい、集まってもらいます。そこでDEIの基本知識を学びつつ、「自分の組織のDEI課題は何か」を考えてもらい、そのためのアイデア、企画、アクションを自分で練って、自分の組織で実行してもらうという取り組みです。そうすると、半期に1回、200以上の施策がボトムアップで生まれているんです!
相馬:いいですね!
口羽:それがとてもユニークな上、各組織の課題にしっかりとひもづいています。トップが「これをやりましょう」と言って一律な取り組みをやるよりも、現場で一緒に働いている人が「一緒にやろう」と言う方が、圧倒的に動かす力があるし、組織のカルチャーに与える影響も大きいと感じています。
相馬:まさにDEIは、「企業カルチャーの変革」なんですよね。組織の隅々までDEIの考え方が染み渡り、一人一人の行動が変わるということなんだと思います。お話を伺って、特にいいなと思ったのは、グループ一律ではなく、「組織ごと」に課題を見いだして、アクションを考えているところです。一つ一つの組織ごとに、現場の事情は全然違うわけですからね。
トップとボトムの話でいうと、社長や役員と従業員が意見交換する場を設けている企業もあります。そういうセッションは、経営戦略の浸透やカルチャーづくりのためにやっている場合も多いのですが、実はDEIの取り組みとかなり重なっているんです。
口羽:私たちも意見交換の場を設けていますが、DEIの冠を付けると、不満を感じている方や、疎外されていると感じている方が来てくださいます。そこで怒りや、本音をぶつけてくださるんです。私はそういうとき、「みんな見て!こういう方が私たちの組織にはいるんだよ!」と思っています。
相馬:みんなから見えていないという。
口羽:そうなんです。今まで見えていなかった方が可視化されて、そういう場で意見を出してくださることに大きな価値があると思います。特にシニア雇用に関しては、いろいろな意見がありますね。
相馬:シニア雇用もDEIの大きなテーマですね。これは「世代の多様性」が企業の競争力につながるということですが、日本の人口減が急速に進む中で、シニアの方にいかに活躍していただくかという観点は重要です。
<後編に続く>
・dentsu JapanのDEIサイトはこちら
https://www.japan.dentsu.com/jp/deandi/
米国とベトナム、関税交渉で合意 – The Wall Street Journal発
イラン、IAEAへの協力停止を表明 核施設の打撃把握が困難に – The Wall Street Journal発
ベトナム人客誘致へセミナー・商談会=日本政府観光局ハノイ事務所
【ハノイ時事】ベトナム人訪日観光客の誘致拡大に向け、日本政府観光局ハノイ事務所は2日、ハノイで訪日旅行促進に向けたセミナーと商談会を開いた。観光客を呼び込みたい日本の宿泊施設や自治体の観光部門などと、日本旅行商品をつくるベトナムの旅行会社をマッチングさせるのが狙いだ。
◇地方誘客が課題
セミナーではハノイ事務所の松本二実所長がベトナム人訪日観光客について説明。2024年の観光目的の訪日は20万人弱で、1人当たりの消費額は18万5000円ほどでショッピングに多く支出。旅行は家族や親族と一緒のケースが多く、パッケージツアー利用率が高い一方、以前よりも個人旅行の割合も増えているなどと紹介した。
松本所長はハノイ事務所として、地方宿泊客数・日数の増加に向け、「25年も地方誘客が最大の課題と捉え、プロモーションを展開する」と説明。地方周遊・地方宿泊の推進、閑散期における訪日旅行需要喚起、「大阪・関西万博2025」への誘客の3点の取り組み方針を掲げた。
在ベトナム大使館の石川勇次席公使は「大使館は30年までに日本とベトナムの相互往来を200万人以上とすることを目標に掲げている。きょうのセミナーと商談会が両国の交流のさらなる発展につながるよう強く期待している」とあいさつした。
◇商談会に56団体
商談会には日本側から25団体、ベトナム側から31団体が参加。参加団体の一つである一般財団法人神戸観光局の担当者は、さらなる経済効果拡大に向け、大阪や京都から足を伸ばして「ぜひ(神戸で)宿泊してほしい」と強調。良好な泉質で知られる有馬温泉のほか、神戸牛、灘の酒など地域の魅力を熱心にアピールした。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/02-20:45)
子どもの脳がぐんぐん育つ!食事で意識したい“たった1つのこと” – ニュースな本
森岡毅氏の刀、赤字24億円は普通で当たり前…ジャングリア沖縄の意義と高い期待感は揺るがず
●この記事のポイント
・7月25日に開業予定の「ジャングリア沖縄」、一大テーマパークが誕生するとして大きな注目
・企画を手掛ける株式会社 刀が赤字との報道、代表はUSJ復活の立役者である森岡毅氏
・未上場の規模の小さな企業が大きな投資に伴い一時的に赤字を計上することは珍しいことではない
7月25日に開業予定の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」。沖縄県北部の名護市と今帰仁村にまたがるかたちで、東京ディズニーランドを上回る約60万平方メートルの敷地面積を擁する一大テーマパークが誕生するとして、大きな注目を集めている。その企画を手掛けたのが、運営会社ジャパンエンターテイメントの筆頭株主である株式会社 刀の代表取締役CEOであり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)復活の立役者として知られているマーケター・森岡毅氏だ。その刀をめぐる報道が今、議論を呼んでいる。ニュースサイト「NewsPicks」は6月30日、『【森岡毅】最強マーケターは、大赤字を叩き出していた』と題する動画を配信。刀が過去に企画支援に携わった「西武園ゆうえんち」(運営元:西武ホールディングス)で減損が発生したり、ブランド再構築を支援した丸亀製麺などを運営するトリドールHDとの間で紛争が発生したりし、自社で手掛ける東京・お台場の「イマーシブ・フォート東京」の不振の影響で24億円の最終赤字(2024年度)となっていると報じられた。だが専門家は「イマーシブ・フォート東京が開業した24年に大きな赤字を計上するというのは当然」と指摘する。また金融機関ファンドマネージャーは「未上場企業の赤字が悪いという風潮が強まれば、新しいことに挑戦するスタートアップが出てこなくなる」という。
●目次
ジャングリア沖縄に国も期待
森岡氏は米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の日本法人などを経て2010年にUSJ運営会社のユー・エス・ジェイに入社し、映画『ハリー・ポッター』エリアの開発を成功させるなどしてUSJの来場者増加と再建を主導。17年に同社執行役員を退任し、同年に刀を創業。これまで「西武園ゆうえんち」リニューアルの支援やトリドールHDのブランド再構築を手掛け、24年には東京・お台場の「ヴィーナスフォート」跡地にテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」を自社の資金で開業した。
その同社が現在力を入れるのが、ジャングリア沖縄だ。運営元のジャパンエンターテイメントは2018年に設立され、開業に向けて7年もの歳月をかけて準備を進めてきたが、その筆頭株主でテーマパークの企画を担うのが刀だ。22年には政府系投資ファンド・クールジャパン機構から80億円の出資を受けており、1月に開かれたジャングリア沖縄の記者会見には石破茂首相も出席するなど、国からも大きな期待を寄せられている様子がうかがえる。
元ボストンコンサルティンググループ・経営コンサルタントで百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏は次のように説明する。
「私もテーマパーク関連のコンサル案件を担当した経験がありますが、西武園ゆうえんちとトリドールHDのコンサル案件と、自社で手掛けるイマーシブ・フォート東京の件は分けて考える必要があります。
あくまで報道の内容が正しいと仮定してのお話となりますが、一般論として、USJで成功した後に2件の案件でうまくいかないというのは、コンサルの世界では普通に起こり得ることです。一方、テーマパーク事業というのは初期投資が非常に大きいという特徴があるため、自社で手掛けるイマーシブ・フォート東京が開業した24年に大きな赤字を計上するというのは当然であり、普通のことであるといえます。
ちなみに大手コンサル会社が手掛けるプロジェクトでも、うまくいかないケースというのは珍しいことではなく、原因としては『コンサル会社の提案自体が間違っていた』『クライアント側がコンサル会社の提案内容の一部だけを切り取って実行した』『そもそもコンサル会社の提案が実行されなかった』といったことがあげられます」
ジャングリア沖縄の先行きを不安視する見方もある。
「開業前の段階で評価についてどうこういうのは野暮な話であり、開業後、時間がたってからではないと評価はできないでしょう。一ついえることは、アジアの富裕層もターゲットにして、冬の時期も楽しめるテーマパークというのは非常に起業家意識に富んだ取り組みであり、注目すべき事業であるということです」
刀は企画やブランド再構築の支援をするという立場
また、金融機関ファンドマネージャーはいう。
「まず、森岡氏がUSJの再建に大きく貢献したことは事実であり、その同氏がゼロから携わるジャングリア沖縄に、沖縄の経済活性化という面も含めて大きな期待が寄せられるというのは当然でしょう。また、刀が過去に携わった案件のなかに、うまくいかなかったものがあるということですが、あくまで刀は企画やブランド再構築の支援をするという立場にすぎず、主体は当事者である企業なので、うまくいかなかった原因がサポート役であった刀にあるということにはならないでしょうし、多くのステークホルダーが関与する以上は原因が一つであるということもないでしょう。
そして会社が赤字であるという点については、未上場の規模の小さな企業が大きな投資に伴い一時的に赤字を計上することは珍しいことではなく、世間的に注目されるスタートアップ企業のなかにも業績的には赤字が続いているという企業は少なくなく、赤字であるということが、ことさらに強調されることにはあまり意味がないようにも感じます。ジャングリア沖縄についても、うまくいくのかどうかは現時点では分からず、その評価は開業後、数年がたたないとできないでしょう」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表)



