なぜ彼らは大企業から中小企業に転職したのか?

全国各地の未来ある中小企業を発掘すべく、「Forbes JAPAN」と電通が立ち上げたプロジェクト、その名もスモール・ジャイアンツアワード。前回に引き続き、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春氏による寄稿をお届けします。

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「パナソニックを退職すると決断した時は何歳でしたか?」
「45歳で、当時は課長でした」
「その年齢と役職で退職する人、珍しくないですか?」
「あまり聞いたことがないですね。私がおかしいんですよ(笑)」

私がこんなやりとりをしたのは、2018年1月、第1回スモール・ジャイアンツの最終選考の取材をしているときだ。相手はミツフジの営業担当の社員である。他にも同社には大手企業の立派な役職を捨てて、40〜50代で転職してきた人たちがいた。

ウェアラブルIoT企業のミツフジは、導電性の高い銀メッキ繊維と社内に伝わる独自の織りによって、生体データを正確に取得・数値化できる「hamon」を製造販売している。この取材の直後、「ニッポンが誇る小さな大企業」と銘打った第一回スモール・ジャイアンツで大賞となるグランプリと、尖った技術を表彰するカッティングエッジ賞をダブルで獲得した。

ウェアラブルIoTデバイス「hamon」

翌月、社長の三寺歩氏がForbes JAPANの表紙を飾った後、テレビ東京『ガイアの夜明け』がミツフジへの密着取材を始めた。2019年にはアメリカのIBM本社が、同社をグローバルパートナーに指名。ミツフジ以外で指名されたのが、ロレアル、メルセデス・ベンツ、VISAの3社であることを考えると、いかに快挙であるかがわかるはずだ。

しかし、ここで強調したいのは、冒頭の話である。
彼らが転職を決意した時、ミツフジは世間的にはまだ知名度が高いとはいえなかった。さらにいうと、2014年、前身の「三ツ富士繊維工業」時代は経営難から土地や工場を失い、本社はプレハブだった。それでもこの小さな会社に賭けた人たちがいた。

会社を選ぶ判断基準として、企業の規模が大きいか小さいか、有名か無名かはさほど重要ではなくなってきているのではないか。実は、そう考えるようになったきっかけは、Forbes JAPANが創刊した2014年に遡る。

企業の価値はサイズで決まるのか

由紀精密のオフィス
由紀精密

2014年7月、雑誌Forbes JAPAN創刊2号の表紙に登場したのが、宇宙ゴミの除去を目指す世界初の民間会社アストロスケールの岡田光信氏だった(当時は創業して間もなく、まだ無名であった)。

その岡田氏から「どうしても一緒に来てほしい、すごい会社がある」と誘われて向かったのが、神奈川県茅ヶ崎市郊外の工業団地。教えられた住所にたどり着くと、小さな町工場の門に「由紀精密」という看板があった。

一時間半ほどの滞在だったが、ここで私は単純なことに気づかされる。世の中を見る自分のモノサシが、案外、ステレオタイプなんだなと思えたのだ。

最初の気づきは、会社の規模についてだ。

2006年、当時31歳だった大坪正人氏が社長職を父親から受け継いだ頃、由紀精密は従業員20人ほどの切削加工の会社だった。アストロスケールの岡田氏が惚れ込んだのは切削加工の精緻な技術力なのだが、大坪氏は従来型の町工場から、研究開発、企画、設計、デザインまでを行う頭脳集団に変貌させていた。

航空宇宙分野と医療機器分野という絶対的な品質を要求される狭き門に挑戦し、航空宇宙の市場が大きいヨーロッパに進出。フランスに子会社を設立するまでになっていた。

大坪氏に「下町ロケットみたいですね」と言うと、彼は一瞬、困った表情になった。

「よく言われますが、その小説は読んだことはないんです」(当時はまだテレビドラマ化されていなかった)

そして、彼はこんな違和感を口にした。

「これまで企業のサイズを軸に考えたことがありませんでした。だから、『頑張っている中小企業』みたいに言われて、なるほど、自分たちは世間では中小企業と言われるんだと初めて意識したのです」

企業を組織のサイズだけで判断するのはおかしいと、彼は感じていたという。少人数でも世界シェアを取れる会社と、社員が1万人いてもシェアを取ることができない会社がある。

そして、「大企業か中小企業か、という組織の大小のモノサシしかないのはなぜだろう」という話になった。中小企業であれば、税制などの優遇政策があるが、それは企業価値とはあまり関係がない。1998年の金融危機のあたりから、企業の明暗は規模の大小だけでは測れなくなり、未来を読むモノサシにはならなくなっている。

「新しい価値」を生み出せるかどうか。そこが重要なはずだ。

由紀精密・大坪正人氏
由紀精密・大坪正人氏(写真:アーウィン・ウォン)

「伸びしろだらけです」

2006年に大坪氏が由紀精密に入社する以前、同社はITバブル崩壊のあおりを受けて、売上げが半減するまで厳しい経営状態にあった。そんな時に、「入社したい」と手を挙げた奇特な青年が現在取締役の笠原真樹氏である。

笠原氏は大坪氏の友人であり、大学院時代に航空機に使われる複合材関連の研究で論文賞を受賞。大手メーカーに就職していた。

笠原氏に、「友達の実家とはいえ、まだ大坪さんが入る前に、なぜ転職したのですか」と聞くと、彼はこう答えた。

「遊びに行った時、改善のポイントをたくさん見たんです。つまり伸びしろだらけだと思ったのです」

当時、彼は31歳。──それから14年後の2020年。44歳になった笠原氏に再会すると、「伸びしろだらけというのは、今考えると、ずいぶん横柄な言い方でした」と笑い、こう言った。

「1の努力をした時の伸びの割合が大企業とは全然違うと思いました。大企業が80点を85点に伸ばすには大変な苦労を要します。しかし、中小企業だと大きく伸びるという面白さがあります。現場を見た時に、自分が役に立てるフィールドが見えたのです」

計測機器用の部品から食品メーカーが使う菓子製造用のノズルまで、いろんな材料を見ているうちに生産管理やシステム化の方法などアイデアが湧いてきたという。大手企業のIT分野で仕事をしていたこともあり、「中小企業×IT」の答えが頭の中で描けたのだ。

「自分が役に立てるフィールドが見えた」という笠原氏の言葉を他でもよく耳にするようになったのは、2015年頃からだ。「地方創生」という言葉が一般的になり、内閣府が「プロフェッショナル人材事業」という制度を始めた。東京の大企業で働いていたプロ人材を地方の中小企業に年間1000人送り込むものだ。実はこの制度は希望者が後を絶たず、「役に立ちたい」という人々がまだまだ控えている。

「自分が誰かの役に立てる」というヒトの本能を刺激する──。給与や安定という古いモノサシがあちこちでポキっと折れ始めたように思えてならなかった。

「役に立ちたい」という思いを受け入れる十分な「余白」をもつ中小企業。そこに「人の能力」が掛け合わされて、企業が予想外の化学変化を起こして飛躍する。
私は余白と人の掛け算を勝手に「スモール・ジャイアンツの余白率」と呼んでいる。

大きく会社を魅力的に飛躍させたのが、由紀精密であった。ある日、転職してきた社員が大坪氏にこう言った。

「パリの航空ショーに出展するのが夢なんです」

すると、大坪氏はあっさりとこう答えた。「じゃあ、調べて出展してみようか」

世間常識からいえば、町工場とパリの航空ショーは似つかわしくないように思える。しかし、大坪氏は覚悟を決めて、希望する従業員を連れて出展した。

2011年、航空宇宙機器の国際見本市・パリ航空ショーで、大坪氏は、パフォーマンスを行った。一円玉の大きさの「精密コマ」を回してみせたのだ。回転するコマはまるで静止しているようにしか見えない。切削加工の精緻な技術力をコマでPRするや、26カ国の企業が名刺交換を求めてきたのだ。

由紀精密・一円玉の大きさの「精密コマ」

「町工場はグローバル化できるんです」と、大坪氏は言う。「図面は数字とアルファベット。世界共通です。機械のプログラム言語も日本語ではありません。技術力と高品質を安定供給できれば、市場は世界に広がるのです」

注文に応じて部品を製造して納品するだけではなく、企画やデザインから開発や設計まで提案する。下請けの域から大きく飛躍し、フランスでの子会社設立に発展した。

精密コマをインターネットで知り、大量に注文してきたのが前述したアストロスケールの岡田氏だった。また、精密コマは国内の企業対抗「コマ大戦」というイベントで優勝。それを新聞記事で読んだ工業専門学校の新卒の学生が、「人工衛星をつくる仕事を一緒にしたい」と就職してきた。

また、工場で高速回転する金属が切削される音をサンプリング。DJによる音楽と機械の動画によるミュージックビデオとしてレーベル化するプロジェクト「INDUSTRIAL JP」が、2017年、カンヌライオンズでブロンズを受賞。この動画を見て、転職してきた者もいる。

2017年、由紀精密はさらなるステップに移った。高い技術力を持つ町工場11社が結集し、企業という枠組みを超えた製造業のホールディングス化。「由紀ホールディングス」を設立したのだ。

海外展開の相互支援、人材不足を補う出向や採用、資金調達、広報活動、知財などを協力し合うことで、「高い要素技術を残し、高品質の文化を守り、そして最終製品の価値を高めていく」という。この手法は日本の他の中小企業にも使えるため、日本の底上げにつながる。

「めざすのは、日本のポジショニングです」大坪氏はそう明言する。

2014年、初めて由紀精密を訪れた時、大坪氏はこう言った。

「中小企業は課題しかないけれど、理想はある。理想を描いて現実にしていくのが私の仕事だと思うんです」

古いモノサシで自己規定をしてしまい、自由な発想を縛っていないだろうか。人手不足を嘆く前に、モノサシを変えてしまえばいい。そう聞こえた。この時、「中小企業という古いモノサシ以外の呼び方はないでしょうか?」という大坪氏の問いかけが頭から離れず、たどり着いたのが「スモール・ジャイアンツ」という言葉だった。

スモール・ジャイアンツ パイオニア賞受賞の由紀精密記事はこちら

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「クボタ LOVE 水 プロジェクト」 “エビ中”が水道水への愛を熱唱!(動画あり)

クボタは“世界水の日”の3月22日、日本の水インフラを支える人々への感謝と、同社の水環境事業の思いを伝える「クボタ LOVE 水 プロジェクト」を始動し、人気アイドルグループ「私立恵比寿中学(エビ中)」が、水道水への愛を歌とダンスで表現したウェブ動画「Sweet of Sweet~君に届くまで~」(約3分40秒)をユーチューブで公開した。

 

同社は2020年に創業130周年を迎えるが、1893年には水道用鉄管の開発を始め、日本初の量産化に成功した。その後、120年以上にわたり、世界最高水準とされる日本の水インフラを、さまざまな技術や製品、サービスで支えている。

動画では、当たり前に使うことのできる水道水ゆえに、当たり前の日常を支える存在に改めて思いをはせ、感謝する大切さを、エビ中が多くのファンに支えられてきたアイドル人生と重ね合わせて表現。
また水道水は、地域で味や成分が異なるという“個性”にも注目し、全国5地域の水道水の特徴にも注目。個性あふれるメンバー5人がユニークな歌とダンスで紹介する
楽曲は音楽プロデューサーのヒャダインさん、映像演出や振り付けもカルチャーシーンを代表するクリエーターが担当し、CM動画としてではなく、アイドル作品として楽しめる仕上がりになっている。

楽曲は1コーラス目と2コーラス目が「個性のあるアイドルの成長ストーリー」と、「水道水が世の中に届くまでのストーリー」の対比になっている。歌詞の「Sweet of Sweet」は“親愛なるファンの皆”を表すワードながら、「水道水」と歌っているようにも聞こえ、ダブルミーニングを考えて制作されたことが分かる。
また、エビ中のメンバーそれぞれのキャラクターやバックストーリーを意識したパート分けも、ファンであればニヤリとしてしまう構成になっている。

公式サイト:
https://www.kubota.co.jp/loveproject/sweetofsweet/

 

 

自殺した赤木さんの妻が安倍首相の冷酷反応に「夫が生きてたら悔しくて泣いている」 ヒロミも思わず「なんだか怖い国だな」

 森友問題の決裁文書改ざんを強要され自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんが遺した遺書と手記をめぐって、安倍首相が下劣な本性を晒しつづけている。  安倍首相は、赤木さんの手記に財務省の調査報告書とはあきらかに食い違う証言があるというのに、頑として再調査を拒否。23日におこな...

「AJINOMOTO オリーブオイル」新テレビCM 嵐の大野さんが“ポパイ”に変身

J-オイルミルズは3月19日から、アイドルグループ・嵐の大野智さんが出演する、「AJINOMOTO オリーブオイル エクストラバージン」「同オリーブオイル」の新テレビCM「Let’s OLIVE!登場」編と、「Let’s OLIVE 春・夏」編(同26日から)を放送している。

キーメッセージは「あなたをシェフにするオイル!」で、1950年代終盤に日本でも放送された人気アメリカンコミック「ポパイ」とコラボした。
大野さんは、実写版キャラクター「さとしポパイ」を演じ、アニメーションの恋人・オリーブと共演。商品を使った料理のおいしさを表現する。

さとしポパイは、ポパイの特徴の極太の二の腕や衣装を再現。オリーブは、表情やプロポーション、所作も原作に忠実に描き起こされ最新技術で合成した。アニメーションは、過去にオリーブを描いた経験のあるベテランアニメーターが手掛けたという。
オリジナルのオリーブのフルネームは「オリーブオイル」といい、商品とダブルミーニングになっている他、CMでは二人の家がポパイの好物「ほうれん荘(ホウレン草)」にしてある演出も見どころ。

大野さんはインタビューで、撮影準備として「気持ちを作るため、ホウレン草を1日3食とった。撮影後も食べたい(笑)」と話し、自身のパワーが出る食べ物は「オリーブをたくさん使ったアヒージョ。一時は毎日食べていた」と答えた。
また「カレーにもオリーブオイルを入れるし、自分で釣った魚でカルパッチョをにするときもよく使う」とオリーブオイル好きをアピールした。
ブランドサイト(https://www.j-oil.com/oliveoil/)では、CMやメーキング映像が視聴できる。

 

安倍政権のコロナ経済対策が酷い! 緊急支援の目玉が観光・外食限定の「商品券」、日本は英国や米国以上の自己責任国家だ

 安倍政権は本気で国民を殺しにかかっている──。いまだ収束の目処がたたず、経済にも大きな影響を及ぼしている新型コロナの感染拡大だが、安倍首相が進めている追加経済対策では、一律の現金給付を見送る方向で調整に入ったと報じられたからだ。  なかでも、昨日24日の読売新聞朝刊は複...

スタートアップに欠かせないアートの内在化とは?

『アート・イン・ビジネス—ビジネスに効くアートの力』執筆者のひとり、美術回路(※)メンバーの上原拓真と申します。連載第1回では「アートってビジネスにどう効くの?」と題して、なぜアートがビジネスの現場で注目されているのか、アートパワーとアート効果の関係についてご紹介しました。

第2回では、アートパワーを個人が体得する考え方として、本でも頻出する「アートの内在化」についてビズリーチ(現・Visionalグループ)の事例を交えながらお話しします。

(※)美術回路:アートパワーを取り入れたビジネス創造を支援するアートユニットです。専用サイト:https://www.bijutsukairo.com/
 

 

ビジネス“パーソン”がアート“パワー”を取り入れることは意味がある

アートの内在化とは、アートパワー(アーティストの源泉である問題提起力、想像力、実践力、共創力の四つ)を自分の心の中に内在化することです。分かりやすく言い換えると、アートに触れる体験を通じてアートパワーが自分の血肉になることで、自分で物事を考えられるようになり、自分で行動ができるようになる状態のことを示しています。

四つのアートパワーと内在化
四つのアートパワーと内在化

なぜビジネスパーソンにとってアートの内在化が重要なのでしょうか。書籍の中で「ビジネスにアートを取り入れると効果がある」と仮説を提示していますが、正確には「ビジネス“パーソン”にアート“パワー”を取り入れることは意味がある」と主張したいのです。

商品パッケージにアート作品を載せたり、現代美術の作品をオフィスに飾ったりする活動は、もちろんそれはそれで素晴らしい活動です。しかしながらその前にビジネスパーソンは、自律的に創作を行うアーティストを見習うことで、自分の仕事にどう関係があるか深く内省することが大事なのです。

内在化は必ずしもアートだけに限らない

本の中では主にアーティストの思考や感性について考察しましたが、必ずしもアーティストだけがアートパワーを持っているとは限りません。本稿では狭い意味でのアート(作家や作品)だけでなく広い意味でのアート(創造行為全て)もしくはアートパワーの価値にも着目してみましょう。

アートパワーである問題提起力、想像力、実践力、共創力、このすべてを兼ね備えた人とはいったいどんな人なのでしょうか。アートやアーティストに出会う機会なんてそうそうないよ、と感じる方もいるでしょう。でも、この四つのアートパワーを兼ね備えた存在とは、社会人であれば超一流のスーパービジネスパーソン。実は、ビジネスパーソンである皆さんご存じのスタートアップを創業した経営者たちが、それに該当します。


スタートアップは、まるでアーティスト

スタートアップ企業をつくった創業者あるいは経営者たちは、なぜアートパワーを持ち得ているのでしょうか。一つずつ確認してみましょう。

まず問題提起力でいえば、自分は何をしたいのか深く掘り下げて、やりたいことと社会にとって必要なことをつなげて「世の中こうあるべき」という問題提起をしています。世の中にない概念を創造的に想像し、生み出そうと四苦八苦しています。

いろんな制約条件に悩まされながら(資金調達、人材育成、法改正など)自分がやるべきことを粛々と主体的にやり続ける実践力もあります。社内(経営陣、従業員)はもちろん、社外(株主、取引先、ユーザー、競合他社、プラットフォームなど)のさまざまなステークホルダー、さらには社会全体と相互に関わる共創力もあります。

皆さんはスタートアップの創業者や経営者と触れ合う機会はありますか。私は仕事でも個人的なお付き合いでも、アーティストやスタートアップの方々とご一緒する機会に恵まれてきました。スタートアップの方々と議論して「この人たちはまるでアーティストみたいだな」と感じたり、あるいは、アーティストと触れ合って「この人は何でこんなにビジネス感覚に長けているのだろう」と不思議に思うことがよくありました。

アーティストもスタートアップの方々も、どこか社会に問題を感じ、深く想像を深め、いろいろな苦労を伴いながら実践し、その結果としてあらゆる人たちと共創しています。彼らの溢れ出るエネルギーを浴びながら、いつしかその思いに共振し、私はいつの間にかアートパワーを自分の中に取り込めてきたような気がします。


なぜビズリーチは現代美術に協賛したか

例えば、人材採用プラットフォームなど、さまざまなインターネットサービスを運営するビズリーチ(現・Visionalグループ)は、アートの内在化を実践されているスタートアップ企業といえるかと思います。同社は2019年2月に、フランスの現代美術家ソフィ・カルの活動に共鳴し、渋谷スクランブル交差点の街頭ビジョンで彼女の映像作品「Voir la mer(海を見る)」を放映するアートワークに協賛しました。

ビズリーチは協賛した理由として

新規事業を連続的に創出するためには、世界や業界を新しい視点で捉え、そこに意味を見いだす能力が必要だ。

と説明しています。スタートアップの新規事業と、アーティストの作品制作は、まさにその根幹が通じているように思えます。

渋谷スクランブル交差点で放映した映像作品:ソフィ・カル「Voir la mer(海を見る)」
渋谷スクランブル交差点で放映した映像作品:ソフィ・カル「Voir la mer(海を見る)」

協賛を決断したのはビジョナル取締役CTO(協賛時の役職:ビズリーチ取締役CTO)の竹内真さんです。竹内さんはアーティストではありませんし、アートの教育を受けたわけでもありません。幼少から数学が大好きで数学者を目指したこともあるほどで、大学では機械工学を勉強され、新卒で勤めた会社は大手IT企業でエンジニア職だったそうです。ですが竹内さんは自分なりにアートパワーを内在化し、その思いを形にする行為としてソフィ・カルに協賛されています。私が竹内さんにお会いした時におっしゃっていた発言をご紹介します。

アートと呼べるか分からないが、幼い頃は切手が好きだったので切手を集めていたことがある。音楽も好きだったので20代からシンガーソングライターのような活動もしていた。私にとってはじめてのアート体験は、音楽活動のつながりで出合った友人の絵を5000円くらいで買ったこと。

今では竹内さんは現代美術への関心も高いそうですが、その関わりはごく最近のことで、元々はアートが身近にあったわけではないようです。しかし竹内さんは物事の捉え方や考え方がじつにアーティスト的です。

エンジニアには二つのタイプがいる。こういうものをつくってほしいといわれて、仕様書通りにつくるエンジニア。もう一つは自分がつくりたいものがあるから自分で設計してゼロからつくる想像力のあるエンジニア。後者のエンジニアに筆を持たせれば画家たるアーティストになるのではないか。

われわれが本の中で示しているアートパワーを内在化したビジネスパーソンとは、まさに竹内さんが定義してくれたように、自分の心の中を深掘りし、自分がやりたいことを明確にしてビジネスの世界で実践する人のことを意味しています。

さらに竹内さんの話で興味深いのは、実家の1階でご両親が経営されていた飲食店のお話でした。

子供の頃からお店に来るお客さんの出入りを見て今日は日販いくらだな、などビジネスの肌感覚が培われた。

など、ビジネスパーソンの教育(?)を幼少から自然と受けてきたそうです。そして竹内さんは数学と切手集めから、プログラミングや音楽に熱中する青年となりました。

竹内さんは子どもの頃からずっと、広い意味でのアートとビジネスの両方を体感してきたからこそ、結果として彼はビジネスの中でアートパワーを実践できているのかもしれません。アートとビジネスを結びつけるというよりも、日常のビジネスの中に隠されたアートパワーを見いだして形にしていく。私はその姿勢にこそアート・イン・ビジネスの本質があるのではないかと考えています。


ビジネスパーソンはアーティストになる

私は自分自身も悩めるビジネスパーソンなので、自分と同じような思いを持つビジネスパーソンたちに向けてメッセージを伝えたいと思って本を書きました。皆さんからは「そうはいっても仕事の中で好きなことなんてできないよ」「そもそも自分のやりたいことなんてあったかどうか忘れちゃった」といった声が聞こえてきそうです。

そう感じた人がいたら、私を参考にしてもらいたいです。私は大学でこそ美術を少し勉強しましたが、就職してからはいわゆるアートとは無縁になりましたし、今はデータ分析の仕事をしており、同僚は美術館に行ったことない人がたくさんいます。竹内さんも似たような経歴ですごく共感しました。

美術館に飾った作品、ミュージシャンの演奏、あるいは映像や演劇だけがアートではありません。私はありふれた仕事や日常の中にもアートが隠されていると考えています。あなたが「本当はこうだったら楽しいのに」「自分がひそかに思っていることで言いにくいんだけど」といった本音を、正しく仕事につなげてほしい、そう願ってこの本を書きました。

本の帯に「ビジネスパーソンはアーティストになる」という標語を掲げてみました。この標語には、皆さん一人一人のビジネスを会社のため、社会のため、自分のために具体的に実践してほしい、という思いを込めています。もしあなたが私のように悩めるビジネスパーソンであるとしたら。まずは竹内さんのような、広い意味でのアーティスティックなビジネスパーソンに、自分の悩みを共有してみることから始めてみることをお勧めします。ぜひアートパワーを内在化し、自分らしいビジネスを実践してみてください。

『アート・イン・ビジネス』の概要

大企業は本当に変われるのか? 企業が「人と社会の間に立つ意味」を考える

イノベーション。
この言葉はいまや、聞かない日はないといっても過言ではないくらい、あらゆる業界や組織に浸透しています。

ところが、現状を見渡すと「新しいことをやってはいけない」「イノベーションを起こせない」という“空気”を感じている人は少なくありません。そうした日々の“モヤモヤ”にあらがい、組織に革新をもたらすべく、各社で若手社員が中心となって組織した「有志団体」が活動しています。

そんな中、「辞めるか、染まるか、変えるか。」を合言葉に、大企業の若手・中堅社員を中心とした50の企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」が2016年に発足しました。

電通からも「電通若者研究部(ワカモン)」が加盟し、ONE JAPANが掲げる「若手・中堅社員主導の大企業変革やイノベーション実現」に向けて、同じ志を持った大企業の若手社員と共にさまざまな活動を行っています。

遅ればせながら、私はこの電通若者研究部としてONE JAPANに所属している吉田と申します。もう一つのわらじである電通ビジネスデザインスクエアのメンバーとしての活動も踏まえ、日々の研究成果を元に、若手世代と年長世代の関係性をよりよくする企業の変革プロジェクトを手がけています。

さて、話をONE JAPANに戻します。
加盟する大企業の現場社員の視点と、大企業の変革に伴走してきた電通の視点。「クライアントと代理店」という関係性をリセットして、この2つの視点を混ぜ合わせることで、新しい「大企業の可能性」を見いせるのではないか── そんな仮説をもとに、「ONE JAPAN in DENTSU 辞めるか、染まるか、変えるか。」と題したディスカッションを連載形式でお届けします。

今回のテーマは「大企業は本当に変われるのか?」。
まずはONE JAPAN共同代表の山本将裕氏を迎え、2019年10月に電通で開催した、同テーマのイベントの模様を振り返ってみたいと思います。

 

ONE JAPAN in DENTSU 「辞めるか、染まるか、変えるか。」第1回/イラスト01ONE JAPAN in DENTSU 「辞めるか、染まるか、変えるか。」第1回/イラスト02ONE JAPAN in DENTSU 「辞めるか、染まるか、変えるか。」第1回/イラスト03
ONE JAPAN in DENTSU 「辞めるか、染まるか、変えるか。」第1回/イラスト04
グラフィックレコーディング:中尾仁士

受発注の関係から、オープンな議論が生まれる共創関係に

イベントを終えて、山本氏が抱いた思いを聞きました。

「これまでは有志団体だからできる強みを追求してきましたが、今回のイベントで改めて『個人が直接、企業や団体、社外の同志とつながることができる時代』の到来を感じました。

『クライアントと広告会社』あるいは『依頼する側とされる側』という関係性には、当事者だけでなく第三者の視点が入るメリットもあります。現在の日本の大企業に求められているのは『立場を超えた共創関係』と、それによるイノベーションの促進。こうした場で企業の垣根を越えてオープンな議論が生まれることは、非常に有意義だと思います」

“直結”の時代、企業は「打席の提供者」になることが価値

日頃、「関係性のデザイン」を標榜してさまざまな案件に携わっている身として、今回のキーワードは「直結化」だと感じました。

テクノロジーの発展によって、「企業を介さずに社会と直結する個人」「エージェンシーを介さずにメディアやクリエイターに直結する企業」など、あらゆるシーンで直結が起こりやすい社会になりました。そんな中で、個人は、企業は、どう変われるのでしょうか。

個人はどんどん「社会と直結できる場」を増やして、社会との直結を自ら体感していくのがポイントになるでしょう。SDGsに象徴されるように、「企業と社会のつながり方」を抜本的に見直す機運が高まる今、「企業を介してしか社会とつながっていない個人」は2つの意味でリスクが高いといえます。

企業が気づいていない、社会との新しい繋がり方を提案できなければ、人材としての価値が今後下がっていく懸念が一つです。そして、所属する企業が社会との繋がり方を間違ってしまっている場合、共倒れ的に自分も社会との繋がりを誤ってしまう可能性も考えられます。

自分はこの社会でどうありたいのか、何をしたいのか。

その視点を持つことが、社会とのつながり方を模索する企業に対して「社会との新しいつながり方を提言できる、価値ある個人」になれるかどうかの分かれ目になるはずです。

企業の立場で考えれば、「個人が社会と直結できる時代」になっても「個人と社会の間に、企業が介在する価値」を生み出すことがポイントです。

現在は、特に大きい組織であるほど、「遅い」「回りくどい」「政治が大変」といった企業であることの負の側面が目立ちやすい時代です。なぜなら、多くの場合は「直結化が前提ではなかった時代」の組織のあり方が引き継がれているからです。

不確実性が高まり未来が読めない時代において、企業に属することは必ずしも正解だと断言できない人も増えています。そのため、個人にとっての企業の価値は「人生のリスクを低減するセーフティネット」から、「人生のやりがいやチャンスを拡張してくれるバッターボックス」へと、シフトが起こっていくはずです。

シンプルに言えば「そこにいることが、面白いかどうか」。それぞれの個人にとってライフワークだといえる仕事が、大企業というバッターボックスからどれだけ生み出せるか。企業に伴走する立場である電通としても、時代に合った大企業のあり方を一緒に模索していきたいと思います。

吉村洋文知事がリテラへの反論ツイートで馬脚! 「大阪・兵庫間の往来自粛」が厚労省文書の誤読でないなら、もっと悪質な意図的歪曲だ

 吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長が19日午後に唐突に発表、両府県民をおおいに戸惑わせた「大阪・兵庫間の往来自粛」。この問題をめぐって、なんと吉村知事が本サイト記事をあげつらうツイートをした。 「新型コロナと必死で闘っている」と強調する割に、知事自らメディア攻撃と...