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日本経済を躍動させる「ベンチャー×大企業」協業デザイン
昨今の大企業におけるキーワードの一つ、「スタートアップとの協業」。
スタートアップ向けファンド立ち上げやジョイントベンチャーなど、既存事業とのシナジーを標榜した、さまざまな取り組みが各社で始まっています。
── 両者がどのような組み方をすると、日本の産業が、経済が変わるのか。
“ライフワークの一環”としてこの問いに挑み続けているのが、スタートアップ企業の総合的な支援を行うデロイト トーマツ ベンチャーサポート(以下、DTVS)を立ち上げた斎藤祐馬氏です。
電通グロースデザインユニット(以下、DGDU)でも大企業とスタートアップの協業を支援する「CoNext(コネクト)」を開始。斎藤氏が率いるDTVSと共同プロジェクトも検討中です。今回はDGDUの工藤拓真が斎藤氏を訪ね、大企業とスタートアップが目指すべき関係性、それを構築する方法について語り合いました。
「経営者の参謀」になるために、自分の存在意義に向き合った学生時代
工藤:斎藤さんはデロイト トーマツ グループ入社後にDTVSを立ち上げ、Morning Pitch(※1)をはじめとするさまざまな取り組みでスタートアップ支援を行っています。これまでの活動の背景には、どのような思いがあるのでしょうか?
※1= Morning Pitch
毎週木曜朝7時から開催している、ベンチャー企業と大企業の事業提携を生み出すことを目的としたDTVS 主催のピッチイベント。
斎藤:この仕事に取り組みたいと思ったきっかけは、私が中学生の頃に父が起業したことです。酸いも甘いも“経営者のリアルな姿”を見る中、あるとき図書館で「会計士でベンチャーの参謀になる」ということが書かれた本に出会いました。
その本にすごく感化されて、「これになろう」と。大学選びも会計士になるためでしたし、公認会計士の試験をパスするにはダブルスクールがほぼ必須なのですが、そのための奨学金の試験でも「会計士になってベンチャー支援のインフラをつくる」とプレゼンしていました。17か18歳の頃ですね。
工藤:それだけ早いうちから将来を見据えていて、しかも実現させている。
斎藤:とはいえ、結局試験に合格するまで2年間の浪人生活があって、それこそDTVSを立ち上げるよりも過酷な時期でした。今でも夢に出てきますよ、「うわ、落ちてた」で目が覚めたりとか(笑)。
ただこの時期、「なぜこんな思いをしてまで会計士になりたいのか」を深く考えたのは良かったです。あと、歴史書から小説までたくさんの本を読む中で、なぜ生きているのか、自分が何をしたいのかをずっと考えていました。
工藤:斎藤さんの凄みのひとつは、その熱量が関わるすべての人に伝播していくこと。私自身、斎藤さんとのお話にはいつも奮い立たせられます。そんな“熱き漢”の原点は学生時代にあったのですね。
可燃、不燃、自燃、着火。四つのメンタリティー
斎藤:ここまで強い思いを持つに至ったのは、DTVSを立ち上げたあと、日夜たくさんの起業家に会っていたのも影響しています。熱量の高い人と長い時間を過ごすうちに、自分のビジョンのようなものがクリアになっていきました。
人にはいくつかタイプがあると思うのですが、どんな状況でもまったく燃えない人もいれば、周囲に熱い人がいると感化される人もいます。それぞれ「不燃型」「可燃型」と私は呼んでいるのですが、8割くらいの人がこのどちらかじゃないかと思います。
残りの2割には2タイプあるのですが、組織でしばしば耳にする「優秀なんだけど周囲がついてこない」という人。これは「自燃型」で、要は自分だけ燃えるタイプです。そしてもう一つが「着火型」です。周りに火をつけられる人で、起業家にはこのタイプが多い。多いというか、着火型でないといけないと思います。
実は私も、ベンチャー支援を始めたころは今のように熱量を持ったふるまいはできていませんでした。起業家という、「人生を懸けるものを持っているのが当たり前な人」に囲まれるうちに自分も感化され、いつしか着火型になった気がします。

工藤:つまりこの四つのタイプは生まれ持った気質ではなく、後天的なもので、しかもキャリアを経る中で変化していくと。僕らも単に「広告制作だけして終わり」ではなく、「中の人」として大企業やスタートアップに常駐し、ブランディング全域に関わる仕事が増えてきました。そんな中で、着火型の必要性を強く感じています。
絵を描いて終わりのコンサルティングではダメで、泥臭い活動までハンズオンで行動する。しかもそれを自分ひとりでやるのではなく、チーム全員を巻き込んで実行していかないと、事業の現場は変わらないですよね。では、メンバーを巻き込むために、リーダーがなすべきことはなんでしょうか。
斎藤:ミッションが最初から明確な人は少数で、走りながら徐々に洗練させていく人が多い。まずはこれかなと感じたものを頑張って続けることが重要です。
そうすると、周りで競争する人がだんだん減り、今度はついてくる人が出てきて、自分がやるしかないと使命感が生まれる。「やりたいことが分からない」という人は、確固たるものがないと動けないと考えがちですが、それより何となくノリでも頑張るのが先だと思います。
日本経済は、この5年が勝負
斎藤:とはいえ、着火型の人材ですら自分の火を灯し続けることは難しい。「ロマンとそろばん」と昔から言いますが、そろばんばかり気にして利益のためにロマンを見失ってしまうとその会社はだめになっていくんです。
歴史上、魂を保ち続けた人が社会を変えていて、彼らは真の経営者だと思います。本当の意味で社会を変えていくことは覚悟がないとできません。自分だけを守ろうとすると破綻をきたします。
工藤:先行きが不透明な今だからこそ、経営者にこそ、より一層ロマンに対する覚悟が試される時代ですね。一方で、以前斎藤さんが「むしろサラリーマンこそ、ロマンや志を強く抱くべきだ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
斎藤:社会を変えるためには、大企業にある資源を活用していく必要があるからです。経営資源には「人・モノ・金・情報」がありますが、スタートアップ側にはリスクマネー(※2)が流れています。これはいいことです。例えばベンチャーキャピタルであれば5社、10社に投資して、その中で一つか二つ成功すれば成り立つので、リスクをとれるわけです。
※2=リスクマネー
リスクは大きいが、成功すれば高い収益が得られる事業に投入される資金。
でも、細かい定義は置いておくとして“優秀な人”のボリュームを比べると、大企業に勤める会社員が圧倒的だと思います。
そしてモノ。例えばJR東日本もスタートアップ支援を行っていますが、同社はインフラをはじめとしたアセット(資源)をたくさん持っています。スタートアップには熱意やアイデア、技術の種自体があったとしても、アセットは大企業にあります。これを動かしていかないと社会は本質的に変わりません。
大企業ならではのアセットを生かし、強い志をもって行動すれば、この5年で日本は変わるはずです。スタートアップ単独で勝ちやすい領域は、まだまだ限られているので、スタートアップ側からも、大企業との協業を、もっと貪欲に求めていくべきです。そんな活動が当たり前になる日本をいち早く実現すべく、モデルケースとなるような取り組みを一つでも多く生み出したいですね。
工藤:なるほど。この5年が勝負。大企業の社員の立場で考えると、自社のアセットをうまく料理してくれそうなスタートアップとの協業をテコに、全社規模の変革にチャレンジすべき時、ということですね。
インターネットの黎明期から2010年ぐらいまでのスタートアップは、バーチャルな世界だけで完結できたので、大企業が関わらなくても成立していました。しかし現在のようにITと産業を掛け合わせた事業となると、アセットを持つ大企業との共創が欠かせません。
斎藤:当社が主催するMorning Pitchを見ていても、最近は大企業出身の起業家が8割以上を占めるようになってきていて、全く大企業と関係ない話ではなくなってきています。つまり大企業の人たちが、後天的に着火型の人材になってチャレンジしているのです。
新しいビジネスはビジョンからはじまる
工藤:大企業にはリソースがたくさんあり、JR東日本のようにスタートアップ支援ができている企業がある一方、なぜできていないケースもあるのか。前に向かうための課題がどこにあるのか知りたいです。

斎藤:ビジネスで新しいことをやるためには、三つのステップがあります。まずは①ビジョンを語って期待値を上げること。その次に②人材や資金といったリソースを集めること。最後に③結果を出すこと。今の日本では実績主義でコツコツと積み上げいくようなプロセスが主流ですが、この三つのステップのプロセスに変えるだけで社会は大きく変わります。そして、はじめから数字ばかりを追いかけるのではなく、ステップごとに戦略を立てる必要があると思います。
まずは「ビジョンを語る」。要は何もない状態から始めるわけなので、未来を語ることから始めていいんです。例えばメルカリもたった何年かであれだけ有名になっていますが、最初にビジョンがあって、プレゼン一つでリソースを集めて結果を出しているんですね。
次に「リソース集め」。大企業には人やアセットが潤沢ですが、リスクマネーがありません。日本が新しいことをやるためには、大企業とスタートアップ両者が持っているものを掛け合わせる必要があります。
そして最後に「結果を出す」。JR東日本の例以外にも、成功事例が増え始めています。例えば、SMBCが弁護士ドットコムと組んだジョイントベンチャーもそうです。大企業のブランドアセットに、ベンチャー的なものを組み合わせるやり方もあれば、大企業から一部の事業を独立させて、外からリスクマネーを集める流れも出てきています。
大企業が挑むべき、二つの具体策
斎藤:日本が変わる方法は大きく二つあると思うのですが、その一つが産業の新陳代謝です。米国ではグーグルやアマゾンなど、この20年ほどで出てきた会社が国のトップ企業を担っています。それまで支えていた会社が苦しくなるものの、新しい企業の台頭で全体としては伸びているわけです。
最近、私は経済同友会(※3)に加入ました。この団体が結成されたのは、戦争で50~60代のリーダー層が抜けてしまい、課長や部長だった人が急に社長になった頃。「経営者同士で助け合って社会を変えてくこと」を目的としていました。こうした大きな世代交代こそが社会を変えるための条件です。
※3=経済同友会
1946年結成の経営者団体。日本経済団体連合会、日本商工会議所と並び日本における経済三団体の一つ。経済や経営・社会問題に関する調査や研究をはじめ、他経済団体との意見交換、政策実現に向けた議論などの活動をしている。
そうした背景で、私は「2025年までに30代の大企業内社長を300人つくる」ことを掲げています。例えばAIなど、大学院などで研究を進めている中心は25歳以下です。若い世代の感覚がないとできない事業が多い状況ならば、30代ぐらいの人が経営者として立ち、50~60代の人はガバナンスの役割を果たすべきだと思います。
もう一つは大企業自体の変革です。大企業はパワーがあるので、時代に合った会社に変わっていける可能性を秘めています。その鍵は若手の抜擢人事です。
現状を見ると、多くの企業では既存事業で成果を出した人同士が何十年もレースを続けて、ようやく社長になれる構造です。そうではなく、30代から子会社やグループ会社の社長をやれるようにする。例えば最初は100人の会社を任されて、成功したら次は1000人、1万人とやっていき、最後に本体の社長になれば経営者集団ができます。子会社や社内ベンチャーをやる上でもプラスに働くはずです。
工藤:大企業の経営層と30代のスタートアップ起業家にはまだまだ接点が少ないと感じます。電通でも大企業の経営陣から、新規事業の相談が増えていますが、この数年で、自社の外とのネットワーキングを求める声が大きくなりました。私たちから、「ここにあのスタートアップを連れてきたら、どんな化学変化が起こるだろう」と妄想し、マッチメークする場も出てきています。
斎藤さんと計画させていただいている「20~30代若手経営人材×レジェンド経営者の私塾会」も、ぜひこの文脈で実現させたいですね。ジョイントベンチャーをつくる手前でも、いろんな枠組みでプロジェクト化できたりすると、面白いですよね。
斎藤:社会を変えるには、大企業とベンチャーの間にある“塀の上”を走りきらないといけないわけで、そのときに、覚悟が必要になるわけです。若い人のほうがリスクを取る覚悟を持ちやすいと思います。それより上の世代の方は、彼らをサポートする知見があります。両者が適切なフォーメーションを組むことが日本を変えるきっかけになるはずです。
大企業とスタートアップ、それぞれが抱える課題の解決策として両者のアライアンス提携が認知されてきています。アライアンス締結自体ではなく、相補的にビジネスを拡大させるという本質的な目的達成のサポート役として、DGDUでは「マッチング」「ビジネスメイキング」「ビジネスグロース」を軸にした新サービス「CoNext(コネクト)」を提供しています。
大企業×スタートアップの 協業支援サービス「CoNext(コネクト)」詳細はこちら
https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2020/0131-010012.html
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01世代~46世代、12の世代の女性の価値観とは?
第2回では、女性のデジタルサービスを概観し、デジタルサービスの中にどのようなクラスターがあるかをご紹介しました。今回はテーマを変えて、10代後半から70代前半までを5歳刻みで価値観や傾向について詳細に分析します。
女性の5歳刻みの世代別特徴
具体的には、ライフスタイルや生活の中で好きなもの、美容関連の意識、人生観、他人との関わり、社会意識関連、消費意識関連、世代ごとに影響を受けてきた雑誌や漫画など、メディア接触の状況などを調査することで世代ごとの特徴を把握することを試みました。
図表1は、今回の調査で判明した各世代の特徴の一覧です。表頭の左から、各世代の名称、各世代をあえて一言で表した時の特徴、各世代において際立った特徴と関連した事象です。

五つの世代別特徴とは?
特筆するべき五つの世代別特徴を見ていきたいと思います。
① 見たかったテレビ番組は見逃したくない01世代
01世代は「見たいテレビ番組を見逃すと悔しい気持ちになるほうだ」の<非常に当てはまる>と<やや当てはまる>の合計が78.8%で他の世代に比べて最も高く、かつTVerやNHKオンデマンドなどのテレビ番組見逃し視聴サービスに<よく触れる>と<たまに触れる>の合計が46.4%と、こちらも全ての世代の中で最も高くなりました。
特に、前者は、ここ10年ほど叫ばれ続けてきた<若者のテレビ離れ>という現象を説明できない結果といえますが、調査対象地域が関東、中部、関西だったことの影響かもしれません。しかし、実際のところは、スマホネイティブで生まれ育った01世代、すなわちキャッチアップ世代とテレビとの距離はわれわれマーケティング従事者が思うより遠くないのかもしれません。


② 96世代は、ギラギラするよりエシカル、堅実
96世代は「エシカル」と「フェアトレード」への興味が他の世代に比べて強いことが分かりました。前者は、倫理的に正しいということを意味し、エシカルに寄り添った商品サービスを利用するといった行動を取ったりします。後者は、開発途上国の生産者をサポートするためにフェアトレード認証製品を購入することなどを意味します。
96世代は、<非常に興味・関心がある>と<やや興味・関心がある>の合計が、エシカルで15.2%、フェアトレードで28.4%と全世代で最も高く、同世代は堅実なライフスタイルを実践しているエシカル世代であることが分かります。


③ 81世代は、矢沢あい作品の隠れファン?!
81世代は「矢沢あいの作品にはのめり込んだ」の<非常に当てはまる>と<やや当てはまる>の合計は43.2%となり、最もファンの多い世代であることが分かりました。81世代が小中学生の時に矢沢あいさんの作品が登場し始め、その時に読んだ体験価値がそのまま81世代の中で引き継がれていきました。
また、1999年には『NANA』が連載を開始しましたが、81世代が高校生くらいの時でした。思春期に経験したことがその後の価値観形成に大きな影響を与えるといわれています。81世代はコギャル世代の一角を占めますが、メンタリティー的には純朴な心根を持つ層が多いと当ラボでは考察しており、同世代の意識や価値観を読み解くには、矢沢あいさんの作品にヒントが隠れているかもしれません。

④ 日本経済低迷時代を乗り越えたPCネット世代
PC(パソコン)ネット世代は、大学生の頃にWindows95が発売されたため、PCインターネットに対する親和性が高く、それが故に多くのITベンチャー起業家を輩出した世代です。このPCネット世代は、就職氷河期にリクナビを使った初の世代で、その後も働き盛りの時にリーマンショック(2008年に発生。同世代が20代後半から30代前半の頃)が起きるなど、国内外の経済低迷の影響を受け続けました。こうした76年前後に生まれたナナロク世代ともいうべき層は、時代が変革していく荒波の中を生き抜いてきた世代といえます。

⑤ 紙媒体への関与が強い46世代
いわゆる団塊世代を含む46世代は、紙媒体への関与が他の世代と比べて強いことが分かりました。紙の雑誌に<よく触れる>と<たまに触れる>の合計が45.6%、紙の新聞が同じく66.8%と、全世代で最も高いスコアとなっています。46世代にリーチする際の紙媒体のポテンシャルの高さが今回の結果からうかがえることになりました。
実際の事例として、「50代からも輝く女性に」をスローガンにした雑誌『ハルメク』は2019年上半期の雑誌販売部数が24.8万部を超えて、女性誌販売部数で1位に輝きました(一般社団法人 日本ABC協会調べ)。同誌は、ウェブサイトでの情報発信の他、通販事業、リアルイベント、LINE上で公式アカウント開設など、さまざまな取り組みを行うことで読者の支持を獲得してきたことが奏功したといえるでしょう。


時代背景も加味したインサイト構築で見えてくる価値観
価値観形成は、メディア環境の変化や影響を受けた情報コンテンツの他、物心ついたときにあったものなかったものなど、森羅万象ありとあらゆる物に影響を受けます。そういった複雑な構造を分解して可視化するのは一筋縄ではいきませんが、このように年齢階層を5歳刻みで分けて、各層の生まれ育った時代背景も加味することで各世代の価値観を比較的容易に見ることができます。そうすることで、より深いインサイトを構築することができるでしょう。
次回はデジタルサービスと雑誌の親和性について解説します。
【調査概要】
●調査名:女性年齢階層12区分調査
●対象エリア:関東(東京都/神奈川県/埼玉県/千葉県)、中部(愛知県/岐阜県/三重県)、関西(大阪府/京都府/兵庫県/奈良県)
●対象条件:15~74歳女性
●サンプル数:3,000ss
●調査手法:インターネット調査
●調査期間:2019年11月1日~5日
●調査機関:ビデオリサーチ
生活様式の変化に合わせて、伝統工芸もアップデート。
2月16~29日、東京・日本橋のgalerie H(ガルリアッシュ)で電通クリエイターによるアート展「ONE CREATIVE」Vol.2を開催。

普段、広告をつくっているクリエイターが、クライアントの課題解決という形ではなく、内面から湧き出るものをカタチにしたらどうだろう、というこの企画。 シリーズ第4回では、第1CRプランニング局の若田野枝アートディレクターに話を聞きました。

手触り感や、一点ものとしての存在感。
ギャラリーに入ってすぐのところに、なにやら独特な雰囲気を醸し出しているコーナーがありました。「漆で制作」とありますが、これまでなんとなくイメージしていた漆作品とは全然違って、とてもカジュアルな感じがします。
──これらの作品を作ったきっかけを教えてください。
私は既視感のないものに触れた時、気持ちの良さを感じます。そういった観点で、「漆塗りなんだけど漆塗りらしからぬ物を見てみたい」と思ったのが始まりです。漆塗りでヘンテコリンな物があったら、面白いんじゃないかと。じゃあ、作って見よう!となりました。

──漆でも、こんなにいろいろ鮮やかな色が表現できるのですね!これまでずっと漆を使って作品を創作されてきたのでしょうか。作品のインスピレーションはどういうところからくるのでしょう?
特に決まったインスピレーションを得るパターンはありません。自分をパターン化するのが好きではない…と言うか、飽きっぽいのかもしれません。学生の頃は、与えられた課題に対して、筆で絵を描いたり、衣装を作ったり、映像を作ったり、大きな立体物を作ったり…、いろいろな素材や媒体を用い、その時々の表現をしていました。
一度作ってしまうと、もう違うことをしたくなってしまうのです。なので、パターンが生まれないんですよね。そんな性質もあり、大学4年間を通して、最後まで自分が何をしたいのか、決めることができませんでした。なので、いろいろできそうな電通に入社しました。
仕事はアートディレクションが主なので、手触り感が少なく、量産型の制作物を作り続けているのに対し、工芸品などの手触り感のある物作りや、一点物にある存在感の魅力を年々強く感じるようになりまして、ちょっと我慢ができなくなって、漆塗りの門を叩いてみた…と言うところです。
しかし、飽きっぽい性質は変わらないので、いつまで続けられるのかはわかりません。ガラスや陶芸、金属の加工にも興味があります。熟練しないうちに目移りするのが、私の悪い癖なので、漆はマイブームで終わらないように、ちょっと粘って続けていきたいです。漆は扱いがとても難しくて、簡単に技術習得できるものではないですしね。

伝統工芸に、新しいデザインを。
──広告をつくるのと、こういった工芸作品をつくるのと、同じ「物作り」でも、そういう意味では対照的なのかもしれませんね。一方をずっと作り続けていると、ときどき無性にもう一方を作ってみたくなる、というのはちょっと分かる気がします! 今回これらの作品を制作する上で、一番こだわったことはなんですか。
伝統工芸の技術の継承がされていかない現状などを見聞きしていますが、その根本にあるのは、「売れない」ということだと思うんです。では、なんで売れないのか。私が日本の伝統工芸品に度々感じるのは、「技術は素晴らしいのに、デザインがちょっとなぁ…」ということです。
ここのシェイプがもっとこうだったら色っぽいのになぁ…とか、角の丸みが野暮ったくてもったいないなぁ…とか、ここのイラストがない方がカッコイイのに…とかとか。ほんの少しのところで台無しになっているものが多くて、常々気になっています。
「伝統工芸=和風」というところから離れ、現代の生活様式に即したデザインのアップデートだったり、もっと身近に感じることができる表現にすれば、伝統工芸も敷居の高いものではなくなり、需要も保てるのではないかと思います。
漆塗りは日本の伝統工芸の中でも、「日本らしさ」が強いものだと思いますし、漆を扱ったことのない人にも、その技術習得の難しさ、素材の性質によるハードルの高さは知られています。私がデザイナーとして、伝統工芸品を現代に馴染むようにデザインできるのなら、漆が最もハードルが高いだけに、やりがいがあって面白いのではないかと。

初めは電通人らしく(?)、アートディレクターとして、熟練の職人さんとコラボして商品が作れたらいいなぁ…と考えたのですが、職人さんに対して「そのデザインだと売れないと思うんですよ」とは、なかなか言えないなぁと。
だったら、デザインから制作、パッケージングまでをワンストップで作るしかないなぁ…。そんな思考のプロセスがありました。
実際に漆を扱ってみて、技術の習得には長い時間を要するのを、身にしみて感じましたし、本当は制作とデザインは分業の方が効率良いし、良いものができるなぁとは思っています。ですが、久しぶりに木を削ったり、ヤスリがけしたり、筆を使っている時間がとても凝縮されていて心地良いので、続けたいなぁとも思っています。
──とてもいい気分転換になりそうですね。 アートディレクターとしての仕事と「アーティスト」活動。その違いなど、もう少し教えてください。
自分を「アーティスト」だと思ったことはありません。 「アーティスト」の定義もよく分からない。というのが、正直なところです。
もし自分の思いや主張を伝えるのが「アーティスト」なら、私には「アーティスト」になるほどの強い主張が無いなと。ですので、自分のことは「手芸好き」くらいに思っています。仕事においてもそうですが、「誰かを喜ばせたい」と言う気持ちが強くあります。それは、家族の為に料理をしたり、掃除や洗濯をしたり、手芸をしたりするのと、私にとっては等価値なのです。
お客さんがいて、ニーズや課題があって、それを十二分に満たすものを作って、喜んでもらいたい。その気持ちは、仕事でない制作の根底にも強くあります。「これを作りたい」と言う自分目線の思いよりも、「これを見た人がどう感じるのかな」という、他者目線の方を強く意識します。仕事では、圧倒的に後者を優先していますが、自由な制作においては、両者を意識しながらも、後者をやや優先しています。手触り感のある制作は、仕事にはない「癒やし」があり、精神的にとても良いです。

──今後の作家活動の予定があれば教えてください。
ONE CREATIVEの為の制作で浮き彫りになった課題を踏まえ、今後どうしていくのかを考えています。それがまとまりつつある現状です。
仕事と違うのは「期限がない」ことと、「テーマや課題を自分で決める」ことです。課題と期限を与えられて燃えるタチなので、今回、ONE CREATIVE に参加の機会を頂けたことは本当にありがたかったです。実際、短い制作期間にしては大きな成果物を生むことができました。
現状、次の展示などの予定はありませんので、何かしらまたチャンスがあればと思っています。それまでは、ボチボチ実験しながら自分なりの表現を探り、手触り感のある制作を楽しんでいきたいと思っています。
──ありがとうございました。
鑑賞を終えて
「誰かを喜ばせたい」と語る若田さん。今回、ピアスやブローチなど身につけるものが多く出品されていたのも、その表れなのかなと思いました。 古くから伝わるジャンルに、新しい風を吹き込む。簡単なことではないかもしれませんが、大きな可能性を感じました。
電通クリエイターは、それぞれ独自の自己表現の方法を持っています。 次回は、くぼたえみさんの作品をご紹介します。
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若年世代にとっての広告の意義とは?
メディアと広告の関係 その今後を探る
『情報メディア白書2020』と連動するこの連載も今回で最後となります。今回は若年世代にとっての広告および広告メディアの意義について展望します。
連載の第4回では、若年世代のメディア接触モチベーションの構造を調べてみました。すると、ECサイトなどネット上の“購買の場”が、同時に“メディア”となり“商品情報の認知の場”の位置を占めていることが分かりました。また、ソーシャルメディアがフィルターの役割を担い、世の中の情報の理解や咀嚼を助けていました。
テレビなど従来のメディアは、プロが組織的に取材・制作・編成したコンテンツ(番組・記事など)を提供することを通じて多くの視聴者や読者へ到達(リーチ)し、そこに生まれる広告価値を源泉として事業を循環させてきました。従来メディアは、プロフェッショナルコンテンツと広告がセットになることで、商品を最初に認知する場としてのパワーを発揮してきました。
ただ、若年世代(※)についてはどうでしょうか。台頭著しいECサイトやソーシャルメディアの利用を通じて新商品情報を得る習慣が一般化すると、従来のメディアと広告の結びつきは問い直されてくるのかもしれません。今回は、この点について考えてみます。
※この記事では15~49歳を若年世代、50歳以降を年長世代と表記しています。ただし40代については年長世代との“橋渡し世代”と捉えて調査対象者に含めています。調査結果を年長世代の観点から見ても鮮明に解釈しやすくすることを狙いとしています。
メディア接触のメリットは、「広告がある」とどう増減するか
若年世代は現在のメディア環境における広告の価値をどう捉えているのでしょうか。ここでは、連載の第4回で取り上げた27項目にわたるメディア接触の「メリット」に注目したいと思います。
図表1をご覧ください。横軸上には、メディア接触のメリット(27項目)を「感じる」と回答した人の割合をそれぞれ示しています。縦軸は「広告がある場合」に対する評価を表しています。各メリットを感じる人をそれぞれ100%としたとき、そこに広告があることでメリットが「増加する」と回答した人の割合と「低下する」と回答した人の割合の差分を表しています。
【図表1】

まず、グラフの全体を個別の項目にとらわれずに眺めてみましょう。横軸に沿ってメディア接触のメリットを感じる人の割合が大きい項目ほど、縦軸に沿って「広告があることでメリットが増加する」と感じる人のほうの割合が大きくなる傾向があります(グラフの矢印)。
つまり、より多くの人が良質だと感じるメディア接触体験であればあるほど、「広告がある」ことについて人々の許容度も高まる傾向があるといえそうです。これは、「良質なメディアでこそ広告が生きる」という広告ビジネスの基本的な原則に他なりません。若年世代の間でも、メディアと広告の関係についての評価は根本的には変わらないようです。
世の中・社会からのインプットとしての広告を歓迎
次に、どのようなメディア接触体験ならば、広告が入ることに対する許容度が高まるのかを縦軸に沿って個別に見ていきましょう。広告があるほうがメリットが「増加する」と回答した人のほうが「低下する」と回答した人より5%以上多かった項目は七つありました。
・「買い物やサービス利用を検討するうえで参考になる」
・「新しい流行やトレンドが分かる」
・「予想外の面白いものごとと出会える」
・「世の中で何が話題になっているのか分かる」
・「自分でも試してみたい、やってみたい、という刺激を受けることができる」
・「周りの友人や知人との会話や交流のきっかけができる」
・「自分になかった知識や気づきを得られる」
最初の二つは消費行動に直接関係するメディア体験ですので、当然、そこに広告が入れば歓迎されやすいといえます。さらに、残りの五つのメディア体験も含めると、上記の7項目には何か共通性がありそうです。
それを第4回でご紹介したグラフ上で確認してみましょう。この7項目のうちの多くが、左右の軸でみると左側、上下の軸でみると上側にあることが分かります(7項目には赤のマーカーで表示)。

このことから、広告は、「世の中・社会の側からのインプットの役割を果たす感性的なメディア体験」の一翼を担うものとして、若年世代からも確かに歓迎されているということが分かります。
若年世代の許容度が高いソーシャルメディア広告
年長世代の視点からみると、「世の中・社会の側からのインプットの役割を果たす感性的なメディア体験」の体験領域はこれまで圧倒的にテレビをはじめとする従来メディアによって担われてきたといえるでしょう。では若年世代にとってはどうでしょうか。
次の図表には、広告があることでメリットが高まることが示されたメディア体験(7項目)と、その体験と特に関係が強いと考えられるメディアとの対応を示したものです(詳しくは第4回の図表2を参照)。
【図表2】
この図表には、年長世代が頼りにしてきたメディアであるテレビやテレビ番組、さらには雑誌メディアが数多く登場します。つまり、メディアビジネスの視点から見ると、今後、従来メディアがインターネットを一層活用することにより、従来の伝送路では到達困難となった若年世代に対してもコンテンツと広告のセットで受容される可能性はまだまだ開かれているといえるでしょう。
ただし、同時に、同じ表には
「Q&A・口コミサイト」
「まとめサイト」
「有名人の動画チャンネル」
「友人・知人のSNS・ブログ」
など、ソーシャルメディアも同じくらい数多く登場していることに気づきます(表中の水色のマーカーを施したメディア)。このように、若年世代にとっては、広告を許容できる体験の場が従来のメディアの種別や範囲を超え、ソーシャルメディアへも広がっているといえるでしょう。
若年世代自身にとってのソーシャルメディアは、世の中や社会を間接的に映し出す場というよりもむしろ、それ自体が世の中や社会「そのもの」として体験される場となっています。その一翼に広告があると考えれば、年長世代にとって従来メディア上の広告が果たした役割と比べて、大きな違いはありません。ただし、若年世代がソーシャルメディア上の広告は、「認知する情報」としてよりも「感じる体験」としての出来栄えによりその許容度が決まるだろうと、これまでの考察から推測することができます。
第4回から最終回まで、若年世代のメディア観、社会観、そして広告に対する見方について、“意識”のレベルへと降り立って探ってみました。このようにたどってみると、若年世代の行動原理も、より見通しやすくなったように思います。
『情報メディア白書2020』の巻頭特集には、広告に限定せず若年世代にとってのメディアの本質的な役割にフォーカスを当てた分析も盛り込まれています。今後のメディア社会の行方を展望したい方々に、ぜひともご一読いただきたいと思います。
「ミニシアター・エイド基金」発足 無観客記者会見を開催
小規模映画館を支援する「ミニシアター・エイド基金」が、4月13日(月)に発足。記者会見が生配信される。
投稿 「ミニシアター・エイド基金」発足 無観客記者会見を開催 は 映画遊民 映画をもっと見たくなる! 映画ライター沢宮亘理の映画レビュー、インタビューetc に最初に表示されました。
「クライング フリー セックス」第三弾! クラウドファンディング実施中
待望のシリーズ新作「スペース クライング フリー セックス」がまもなくクランクイン。クラウドファンディングを実施中だ。
投稿 「クライング フリー セックス」第三弾! クラウドファンディング実施中 は 映画遊民 映画をもっと見たくなる! 映画ライター沢宮亘理の映画レビュー、インタビューetc に最初に表示されました。