三菱「エクリプスクロスPHEV」、驚異的な安定感の秘密…ランエボ譲りの前後駆動配分

 三菱自動車工業の電動化技術には、目を見張るものがある。世界初の量産EV(電気自動車)である「i-MiEV」を開発。内燃機関であるガソリンエンジンと、純粋な電気自動車であるEVをひとつのプラットフォームで成立させるという離れ技をやってのけた。

 ガソリンをリアに搭載するというRR駆動方式でありながら、ひとたびEVになればバッテリーを低く薄くフロア下に敷き詰める。汎用性のある変幻自在なプラットフォームの開発で、独特の手腕を発揮するのだ。

 そしてさらに、PHEV(プラグインハイブリッド)技術にも冴えをみせる。「アウトランダー」でPHEVを投入、ミドルサイズのSUV(スポーツ用多目的車)ながら高級モデルとたがわぬ上質な乗り味を披露した。EV技術は言うに及ばず、高い評価を得ている。

 その一方で、三菱自は類まれなる4輪制御技術を備えている。かつての「ランサー・エボリシューション」で完成させた4輪制御技術を、電動化モデルに注ぎ込んだのである。

 そう、それが今回姿を現した「エクリプスクロスPHEV」である。2年前に誕生したエクリプスクロスは、エンジンのみの搭載だった。だが2年後の今年、ガソリンエンジンに加えて2基のモーターを搭載するなどして、PHEVとして誕生した。内燃機関のプラットフォームをEVと共有するのは、i-MiEVで培った技術の応用だろう。

 ガソンリモデルより全長が140mmも伸びた。その内訳は、フロントのオーバーハング35mmと、リアのオーバーハング105mmである。リアセクションを大きく延長することによって、視覚的なスタイリッシュを狙ったばかりか、モーターやインバーターをリアに搭載しても荷室が犠牲にならないように工夫したのだ。その応用技には目を見張る。

 エクリプスクロスPHEVは、2基のモーターを自由自在に操る。通常走行はEVとして振る舞う。搭載するエンジンは発電機として機能、バッテリーに蓄電し、その電力を引き出してモーターを駆動させる「シリーズ走行モード」でいる。それでいて力が必要になれば、エンジンの動力をフロントタイヤに直接伝達し、「パラレル走行モード」として機能する。さらにモーターだけで駆動する「EV走行モード」もこなす。ごく一般的なハイブリッドであり、EVであり、日産自動車の「e-POWER」でもある。変幻自在な制御は、三菱自の得意とするところだ。

 さらに特徴的なのは、4輪制御技術を生かしていることだ。前後のモーターは互いに連携し合い、常に最適な駆動配分をこなす。ステアリングの操作に連動して、絶えずコントロールしているのだ。走行中、たとえ直進していても絶えず微小なステアリング操作をしているはずだ。そんなわずかなステアリング補舵にさえ、前後のモーターは最適値で反応しているのである。だから、滲み出るような安定感がある。

 そしてもちろん、ランエボ譲りの前後駆動配分は、ドライブモードを「ターマック」に設定した瞬間に真価を発揮する。といっても、ランエボのような競技仕様ではないし、限界ギリギリの操縦性という意味でもない。ややハイペースでワインディングを走り始めると、胸のすくような爽快な操縦性を披露するのである。

 エクリプスクロスにPHEVが加わった。その情報を得たとき、にわかに経済性オンリーのSUVであろうと想像してしまったが、実態はそれとはそぐわない、元気に走るモデルだった。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

菅内閣、不妊治療の保険適用に期待の声…高額な治療費、100万円超の治療も

 新型コロナウイルスの感染拡大への対策の遅れ等により支持率が大幅に低下している菅義偉首相であるが、その一方で期待が高まるのが不妊治療に対する「保険適用の拡大」である。

 菅首相は自民党「不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟」からの「不妊治療への公的保険適用までの間、体外受精や顕微授精に対し3回までは40万円を給付するなど助成を拡大する」という申し入れに対し、「最優先で取り組む」と応じた。これを受け、2022年4月の保険適用を目指す方針だ。

 昨今、不妊症は増加傾向にあり、経済的負担の軽減は不妊治療に取り組む夫婦にとって朗報となるだろう。しかしながら長期的に見て、不妊症の増加を食い止めるには「不妊症」「不妊治療」について広く認知されることが必要だと感じる。不妊症治療に取り組む三軒茶屋ARTレディースクリニック院長、坂口健一郎医師に話を聞いた。

 一般的に避妊をせず自然に任せた状態で2年間、妊娠しなければ不妊症といわれたが、それは20代前半が結婚適齢期とされていた時代の目安である。晩婚化が進んでいる現代、2019年の婚姻時の平均年齢は男性31.1歳、女性29.4歳というデータもある。仮に29歳で結婚した場合、そこから2年間、自然に任せてから判断するのでは、妊娠のチャンスをさらに低下させる可能性もある。

「現代での不妊症の定義は、1年以上たっても妊娠に至らない場合を指します。不妊原因が検査で判明するのはわずか半数のため、不妊症は不妊期間を1年と区切って定義しています」

 不妊の確定診断よりも、「治療開始時期」が重要だという。

「女性が35歳未満では1年以上たっても妊娠しないとき、35歳以上では半年以上たっても妊娠しないときが治療を開始すべきタイミングと推奨しています」

 また、不妊症には、着床しても流産を繰り返す「不育症」もあり、原因を知り治療することで、正常な妊娠をすることも可能となるケースも多いという。

検査の重要性

 不妊治療といっても、さまざまであり、自然妊娠から人工授精まで患者によって希望は異なる。不妊治療には医師の治療方針と患者のニーズが一致することが成功への近道でもある。坂口医師は、不妊治療を希望する患者のため、定期的に説明会を行っている。

「不妊治療を希望する人の多くは『早く結果を出したい』と思っています。そのためにも、まずは今の状態を知る必要があり、スクリーニング検査が必須となります。不妊治療に伴う検査の必要性や不妊治療について説明し、理解していただいた上で治療を開始するかどうかを決めていただいています」

 スクリーニング検査(感染症・末梢血・肝機能腎機能・血液型・甲状腺・クラミジア抗体・凝固機能・抗精子抗体)は、不妊治療を始めるにあたって健康状態や不妊の原因となる疾患を調べるために不可欠なものである。

「血液凝固機能に異常があれば、妊娠しても流産を繰り返してしまうし、甲状腺疾患が不妊の原因である場合も多く、治療により妊娠の確率が上がることもあります。また、抗精子抗体があれば体外受精をすることになります」

 抗精子抗体とは、精子の動きを止めたり受精能力を消失させ、精子が子宮内に侵入することを阻止する物質のことをいう。不妊症に悩む女性の約3%が抗精子抗体を持つというデータもある。

 また、現代では結婚までに恋愛を重ねることも珍しくはないが、性感染症には注意が必要だ。

「性感染症のクラミジアは自覚症状がないため、感染に気づきにくい。長期間気づかずにいると、おなかの中で炎症を起こし癒着して卵管が詰まってしまうなど、不妊の原因となります」

高齢出産のリスク

「50代で出産した」などというニュースは、高齢になっても出産を望む女性にとっては、希望を感じることだろう。

「自分もそうなると思ってしまう患者さんも少なくありません。しかし、そういったニュースに登場する女性の背景などはわからないわけです。私は、高齢出産を否定はしませんが、年齢を重ねると共に妊娠する確率が低くなることは事実です」

 女性は月経周期ごとに排卵をするが、その排卵については意外に知られていない。

「排卵するその卵子の元となる卵母細胞は、一生で約200万個と決まっています。そして月経のたびにその卵母細胞は1000個消費されます。一人の女性が排卵する回数には限りがあるのです」

 また、高齢出産にはダウン症などのリスクが伴うことも否定できず、坂口医師は高齢出産を希望する患者に対して、その点も十分に説明し、それでも不妊治療を望む患者には、治療を行うという。

「高齢出産となる不妊症治療では、必ず『治療を止める時期』を決めてもらいます。なかには、医師に言われるがままに不妊治療を続け、自分自身で何をしているかが見えなくなっている患者さんもいます。複数のクリニックを渡り歩き、『不妊治療難民』となっているケースもあります。私は、患者さんのためにもそういったことが起きないように十分に話をするようにしています」

 排卵する回数や卵子の数に限りがあるとわかれば、女性がライフプランを考える上での優先順位も変わってくるかもしれない。

保険適用に期待

 坂口医師のもとを訪れる患者の多くは、「早く妊娠したい」という希望を持っている。なかには、自然妊娠が可能と思われる場合でも、妊娠の確率を高めるために排卵誘発剤を使用するケースもあるという。

「排卵誘発剤を使用することで妊娠の確率は、単純に2倍になると考えることができます。それでダメな場合は、人工授精、体外受精とステップを踏んで治療を行います」

 しかし、そういった不妊治療には、治療開始前のスクリーニング検査だけでも2万円程度かかり、その後不妊治療を進めれば、治療方法によっては100万円を超える高額な医療費が必要となるケースもある。これまで、経済的理由で不妊治療を諦めていた女性にとって「不妊治療の保険適用」は希望に満ちた政策といえる。コロナ禍で支持率が落ちた菅政権のリップサービスに終わらないことを期待したい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)



吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

工藤会トップ・野村総裁に「推認で死刑求刑」の裏事情…検察&警察による“ヤクザ罪”とは

 1月14日に福岡地裁(足立勉裁判長)で開かれた特定危険指定暴力団・五代目工藤會野村悟総裁と田上文雄会長に対する論告求刑公判で、検察側が野村総裁に死刑を求刑したことが注目されている(田上会長には無期懲役と罰金2000万円を求刑)。指定暴力団トップに死刑が求刑されるのは、史上初の事態だ。

 前編に続き、以前から工藤會関係者の冤罪事件を取材し、四代目工藤會の溝下秀男総裁(故人)との共著もある、作家の宮崎学さんに聞いた。

「推認だけで死刑」への疑問

 報道などによると、検察側の論告では「推認」という言葉が目立ち、野村総裁らの事件の関与を裏付けるような証言や証拠は挙げられていない。一方で、一審の無罪判決が二審で懲役20年の逆転有罪判決となった山口組関係者の事件の判例が参照され、「組長が絶対的トップとして君臨する暴力団組織特有の構造」が引き合いに出されたという。

 この裁判は、2007年に起こった六代目山口組直系団体である山健組系列の多三郎一家組長の刺殺事件をめぐる組織犯罪処罰法違反(組織的殺人)の事件で、2014年2月に大阪高裁で逆転有罪、15年6月に最高裁で有罪が確定している。

 この事件では、兵庫県警が山口組関係者を50人以上逮捕し、携帯電話の通話記録などを分析して「組織的な犯行」と位置づけたことも注目されたが、裁判員裁判の一審神戸地裁は「被告の指揮に基づいた犯行かは合理的な疑いが残る」として、無罪としている。

 これに対して、二審大阪高裁では、組織による犯罪と認定した理由を「経験則上、特段の事情がない限り、組長の指揮命令に基づいて行われたと推認すべき」と判示しており、今回の裁判でも「推認」が適用されたのだ。

 宮崎さんは、「そもそも、今回の裁判は野村さんたちの逮捕から初公判まで5年もかかっています。ということは、『とにかく有罪にできそうな証拠を集めてこい』と指示を出しまくっていたのでしょう」と指摘する。

「ところが、ロクなものが出てこなかった。証人も数が多いだけで、いずれも野村さんたちの指示が明らかになる証言や証拠は出てきませんでした。そこで、検察は『ヤクザは親分の思いを忖度して行動するのは当然だ』とか『親分なんだから子分の行動はすべて把握しているはずだ』という論理を組み立てています」(宮崎さん)

 いわゆる「ヤクザの行動原理」である。

「明確な指示がなくても、『ヤクザとはそういうもんだ』ということで、これまでも多くの親分が逮捕、起訴されてきました。まさに『ヤクザ罪』です。すでに前例が積み上げられてきたわけですが、推認だけで死刑を求刑するとは、さすがに今までもなかったのではないでしょうか。ヤクザの裁判も来るところまで来たな、という印象です」(同)

高裁では減刑の可能性も?

 この裁判は、3月に弁護側の最終弁論、8月に判決が予定されている。

「足立裁判長は他にも工藤會関係者の裁判を担当していますが、それらの判例を見ても、求刑通りの判決になると思います」と宮崎さん。

「足立裁判長は、元漁業組合長の事件以外の3件は、すでに実行犯の組員の裁判で野村さんの関与を認定しているんです。これでは、最初から予断をもって審理されるのは明らか。弁護団は、刑事訴訟法第21条で定める忌避理由である『不公平な裁判をする虞れ』を指摘し、憲法37条1項の『公平な裁判所の裁判を受ける権利』が保障されないと抗議しましたが、裁判長の交代はなかったと聞いています」(同)

 では、死刑は免れないということだろうか。

「地裁はダメでしたが、高裁は少しはマシかもしれません。かつて、モンロー米大統領が『ヨーロッパの干渉は受けない』と宣言したように、九州の裁判所は『九州モンロー主義』ともいわれています。要するに、中央には素直に従わないんですね。だから、ひょっとすると高裁で『間接証拠だけで死刑にしろ』という検察庁や警察庁の意向に沿わない可能性もなくはない、と私は考えています。いずれにしても、この裁判は暴力団捜査や裁判のあり方、報道の質から裁判官の矜持まで、問われていることは多い。歴史的な裁判といえますね」(同)

 この裁判が、今後のヤクザ裁判のあり方を変えることになるのだろうか。今後も目が離せない。

(文=編集部)

蓮舫の菅首相演説事前公開はルール違反じゃない! 政府の情報隠蔽をスルーし「知る権利」に資する情報公開を攻撃するテレビとネット 

 18日におこなわれた菅義偉首相による施政方針演説。「あらゆる主体」と言うべきところを「あらゆる全体」、「徹底的」を「限定的」、さらには「出産」を「生産」と読み間違えるなど、またもそのポンコツぶりをあらわにしただけではなく、  だが、問題はその中身のほうだ。菅首相は冒頭か...

演じて、感じて、考える。「かくれた思い込み」を「意識」する体験型研修

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誰もが無意識のうちに心に抱いている、“かくれた思い込み”。それが「アンコンシャス・バイアス」です。

ダイバーシティ&インクルージョン対応を専門とする電通ダイバーシティラボ(以下DDL)は、アンコンシャス・バイアスとのより良い向き合い方を広めるため、体験型企業研修プログラム「アンバス・ダイアログ」を開発しました。

企業ではセクハラやパワハラ同様に「いけないもの」「なくすべきもの」として扱われることが多いアンコンシャス・バイアス。しかし、DDLではこの扱いに疑問を抱き、

「アンコンシャス・バイアスは、なくせるようなものではないし、単純に悪いものでもない」

「ただ、その存在を認識して、しっかりと向き合うべきものなのではないか」

と考えました。

研修の開発に当たり、パートナーとなってくれたのが、ミュージカルカンパニーの「音楽座ミュージカル」と、企業研修を多く手掛ける「日本マンパワー」です。

音楽座ミュージカルが提案する舞台演出メソッドを取り入れ、座学ではない「体験型」にすることで、より記憶に残りやすい研修になっています。

今回は、音楽座ミュージカルの俳優として大いに存在感を発揮しながら、さまざまなワークショップのファシリテーターとしても活躍する、藤田将範氏をゲストにご招待。

電通入社1年目でDDLメンバーとなった海東彩加氏が、実際の研修に参加した感想も交えながら、アンコンシャス・バイアスに対するプラスの考え方や、アンバス・ダイアログ開発の道のりについて語り合いました。

 

 

<目次> 
ロールプレイで浮き彫りになる、自分も持っていた“思い込み”
体験を「持ち帰る」。研修後の生活や人生を見据えたプログラム
国内電通グループ1年生200人がアンバス・ダイアログを体験!
アンコンシャス・バイアスと向き合って、毎日が少し楽になる

ロールプレイで浮き彫りになる、自分も持っていた“思い込み”

海東:藤田さん、本日はよろしくお願いいたします。私は2019年に新卒で入社して、チームに加わった時点ではすでにDDLのアンコンシャス・バイアスに対する考え方、向き合い方はある程度出来上がってきていました(前回記事参照)。ただ、その「発信方法」を悩んでいたんですね。そんなとき、

「音楽座ミュージカルというミュージカルカンパニーが、シアターラーニングという舞台演出メソッドを用いた独自の研修を行っているらしい」

という話が飛び込んできたんです。

ミュージカル×研修とは、シアターラーニングとは、一体どういうものなのか…それですぐに、私のトレーナーが連絡を取りました。ミュージカルカンパニーが「研修」を提供しているのは、珍しいケースですよね?

藤田:「研修をやろう」といって始めたわけではないんです。成り立ちから話すと、音楽座ミュージカルは1987年から活動している、オリジナルミュージカルだけを創作・上演しているカンパニーです。

メンバーの主体性を大切にした作品づくりが特徴で、音楽座ミュージカル独自の創作システム「ワームホールプロジェクト」(※)で創作されていきます。誰かが決めた脚本や演出ではなく、関わる全員が話し合い、何度もトライ&エラーを繰り返すことで作品が出来上がるんです。

※ワームホールプロジェクト
音楽座ミュージカルでは作品創造のプロセスで、プロデューサー、俳優、スタッフ、プランナーなど作品にかかわる全員が当事者となり、立場を超えて意見を掛け合わせていく。この独自の創作演出システムは、音楽座ミュージカルの創立者である相川レイ子によりつくられ、「ワームホールプロジェクト」と命名された。


ですから、俳優にも臆せずアイデアを出したり、積極的にコミュニケーションをとったり、“殻を破って自分を表現する”ことが求められます。それは決して簡単なことではなくて、グループワークで信頼関係を築いたり、息を合わせてロールプレイをしたり、いろんな工程が必要です。試行錯誤を繰り返すうちに、徐々に方法が確立されました。

そのうち、この表現手法を「新しいものを生み出すコミュニケーションのメソッド」として、俳優以外の人にも体感してもらったら面白いのではないかと考え、ミュージカルのお客さまを対象にワークショップを開催したんです。それが大変好評で、そこから企業や組織向けの研修プログラム「シアターラーニング」の開発に発展していきました。

研修は、オーダーメイドでさまざまな課題解決を目指します。例えば「リーダーシップを身につけてほしい」「チームワークを高めたい」などの課題に対し、「学校」や「会社」など風景や日常のワンシーンをピックアップして、ロールプレイに活用したりします。

海東:それで、私たちも打ち合わせの時間を頂いて、話を聞きに行ったんですよね。

藤田:アンコンシャス・バイアスの話をする前に、1時間半くらいかけて、一方的に音楽座ミュージカルの活動についてバーッとお話をさせていただきました(笑)。そのときに、音楽座ミュージカルの作品が持つテーマ性と、DDLのアンコンシャス・バイアスへの考え方に、共通するものがあると分かったんです。

海東:あの時に藤田さんにお話しいただいたサン=テグジュペリ『星の王子さま』の一節が、すごく印象に残っています。その

たいせつなことは、目に見えない

という言葉を、音楽座ミュージカルがとても大事にされているというお話で。アンコンシャス・バイアスが原因で起こる問題も、本当の思いが目に見えないから、すれ違いが生じてしまう。重なる部分が多いように感じて、ぜひ一緒につくっていきたいと強く思いました。

音楽座ミュージカルとの打ち合わせは毎回とても楽しみで、私自身1年目として働く中での実体験と重ね合わせながら、新しい発見や気付きを得ながら制作できました。

藤田:『星の王子さま』の、“本当に大事なものって、目には見えないところに存在しているんじゃないか?”というテーマは、音楽座ミュージカルの中に常に存在しています。そこでお互いの話がすとんと腹落ちしたのかなと。

体験を「持ち帰る」。研修後の生活や人生を見据えたプログラム

海東:そこから一緒に研修の開発を始めたんですね。研修開発に当たってDDLが懸念していたのは、座学ベースで「こういうものです」と説明したとして、その場で「理解した」と思ってもらえても、その後の生活に残らないことでした。

アンコンシャス・バイアスは、あくまでも「他人との関わりやコミュニケーション」の中で発覚することなので、双方向のコミュニケーションがないと実感できないんじゃないかと。

そこで、「アンコンシャス・バイアスを実体験できる研修」にすれば、その後の生活や人生に何かが残っていくのではないか。ということで、シアターラーニングで使われている「ロールプレイ」の要素を取り入れることになりました。

藤田:そこに至るまでには、お互いディスカッションを重ねて、いろんな案が出たんですよね。その中で一番マッチしたのが、参加者が「与えられた役」を演じるロールプレイの手法でした。

海東:まず音楽座ミュージカルのプロの俳優たちが、あるシチュエーションを実際に演じてくれて、それを参考に研修参加者が与えられた役を演じてみる、というプログラムですね。このロールプレイが「アンバス・ダイアログ」の大きな鍵となりました。

さまざまな立場にある「自分以外の人」をアドリブで演じることで、その人が何を考え、何を思って発言や行動しているのか、瞬発的に考えなければいけない。座学よりもリアルな感覚を心に残せる研修になったと思います。

リモート版「アンバス・ダイアログ」。音楽座ミュージカルの俳優たちによる実演中の様子。
リモート版「アンバス・ダイアログ」。音楽座ミュージカルの俳優たちによる実演中の様子。

藤田:「研修時の体験を“持ち帰る”要素が欲しい」というのがDDLの要望でした。他者とロールプレイによるコミュニケーションをすることで、リアルな感覚を持ち帰ってもらえたら、研修後の生活の中でもその感覚を思い起こせるのではないかと。

もう一つ、体験を持ち帰るための工夫として、「アンバスNote」があります。音楽座ミュージカルでは、普段から稽古やワークの振り返りのために「フィールノート」というツールを使っています。「アクション」「フィール」「ロジック」「ネクストステップ」という四つの項目に分けて、

  • 「アクション」にワークでやったことを、
  • 「フィール」にワークで何を感じたかを、
  • 「ロジック」になぜそれを感じたのかを、

それぞれ書き記します。これを書くことで、「こういうときには、こういう感情になる」というのが、視覚的に構造化されるのです。

最後に「ネクストステップ」の枠に、「気付いたことを、どういう場面で使っていくか、活用していくか」を書きます。

このフィールノートの話をしたところ、DDLの皆さんがアンバス・ダイアログに最適な形にカスタマイズしてくださって。結果「アンバスNote」というものが出来上がりました。

アンバスNote

アンバスNote
研修「アンコンシャス・バイアス」の体験を持ち帰るために制作された「アンバスNote」。相手の言動に対して自分の抱いた印象と、「振り返り」で教えてもらった相手の本心を比較することで「人の内面は、本人にしか分からない」ということを確認できる(A、B)。

海東:アンバスNoteは、フィールノートをベースにしつつ、「IN」「OUT」という項目を設けて、人の「内面」と「外面」について考えられるノートになっています。

日常生活の中で、なんとなく「今、コミュニケーションの行き違いがあったな」と違和感を覚えることはよくあると思います。でも、「どうしてそうなってしまったのか」を理解して、その後に生かすことって難しいですよね。

そこで、コミュニケーションの行き違いが生まれる過程を可視化して、感覚でも頭でも理解しやすくするのが、アンバスNoteの狙いです。

アンバス・ダイアログでは、ロールプレイの後に「実はこういう意図でああいう発言をしていたんだよ」という“振り返り”をみんなでやります。そこでの気づきをアンバスNote上で言語化することで、「自分にはこういうバイアスがあるんだ」と知り、研修後の生活でも自分たちで使えるように工夫されています。

国内電通グループ1年生200人がアンバス・ダイアログを体験!

トライアル版「アンバス・ダイアログ」

トライアル版「アンバス・ダイアログ」
2020年2月に電通で実施されたトライアル版「アンバス・ダイアログ」の様子。設定シーンは「4人の教師による、学校行事の打ち合わせ」。プロの俳優が演じた四つの特徴的な役を参加者がそれぞれ割り振られ、アドリブで演じる。

藤田:2020年2月に実施した、国内電通グループの1年目社員を対象にしたトライアル版の研修には、海東さんも実際に参加されました。感想はいかがでしたか?
 
海東:グループ会社も合わせて、入社からほぼ1年の社員200人が参加したのですが、かなり思い出深い研修になりました!

1年間働いていると、少しずつ会社に慣れつつも、先輩に対して、「きっとこう思われているんだろうな」と決めつけてしまっていたり、周囲に対するいろんな“思い込み”ができてくるんですよね。

あの人はニコニコしているけど、本当はどう思っているんだろうとか、今先輩を怒らせちゃったかな、とか。私も、いろいろ勝手に思っていたことがあったんですけど。

アンバス・ダイアログでは、ロールプレイの後にみんなで“振り返り”をするのですが、そこで同じチームでロールプレイを行った同期に

「ここは、本当はもっとはっきり言ってほしかった」
「答えを求めているっていうよりも、意見が欲しかったんだよ」

とフィードバックをされたときに、自分の勝手な思い込みがあったことに気付いて、

「あ、今まで私が先輩や周りの人に対して勝手に抱いていたイメージも、思い込みだったんだ」

と考えられるようになりました。

アンコンシャス・バイアスという言葉を初めて聞いたときに「自分はそんなに“思い込み”なんて持っていないだろう」と思っていたのですが、私の先輩や同僚に対する思いや印象にもアンコンシャス・バイアスがあったんです。

あの研修以来、「この人はこういう思いがあって指摘をしてくれたのかも」ということを少しずつ考えられるようになり、もし誰かに対して不安に思うことがあれば、自分から真意を聞くことができるようになりました。

藤田:アンバス・ダイアログには台本がないから、リアルの生活と同じように「こういうつもりでしゃべったけど、こう誤解されてしまった」ということが起こるし、それを“振り返り”の時間に、お互い確認できるんですよね。

海東:しかも、200人の中からランダムに組み合わせが決まるので、いきなりなんの脈絡もない4人で、役割を演じ合わないといけない状況がとても新鮮でした(笑)。仲のいい人と一緒にいると、自分のキャラクターや立ち位置を気にしてしまうけれど、ほとんどしゃべったこともない人とロールプレイをすることで解放的になれたと思います。

同期からの評判もすごく良かったです。研修後に仲のいい子たちとランチに行き、「今までの研修と違って新鮮で楽しかったね!」と盛り上がりました(笑)。会社の研修って「役に立ったね」という感想はあっても、「楽しかったね」はあまりないので、そういう意味でも印象に残る研修になりました。

藤田:そう言ってもらえるとうれしいです。電通での研修はトライアルということで、とにかくいろいろ試してみようと、3時間弱の長いプログラムとなりました。その結果を受けて、改めて「必須な要素」「短縮すべき要素」を精査し、より洗練した内容が、先日リリースしたアンバス・ダイアログです。

また、2月のトライアル時は、全員が一つの会場に集まって行いましたが、その後のコロナ禍で、オンライン対応への仕様変更も行っていきましたね。

海東:オンライン版の仕様が全体的に固まってきた7月くらいに、人材開発事業などを行っている日本マンパワーに加わってもらいました。

藤田:音楽座ミュージカルでは、研修を直接販売もしますが、多くの場合は日本マンパワーにお願いして、全国の企業に営業をかけていただいているんです。実は日本マンパワーでもアンコンシャス・バイアスというテーマにすごく興味があったようで、声をかけたときはとても喜んでもらえました。

アンコンシャス・バイアスと向き合って、毎日が少し楽になる

海東:それで9月に、今度は日本マンパワーの社員50人を対象に、オンライン版の体験会を実施しましたね。

藤田:日本マンパワーの皆さんにも楽しんでいただけましたね。フィードバックで多かったのは「アンコンシャス・バイアスに対する考え方に驚いた」というものです。「どうやってアンコンシャス・バイアスをなくすか」という研修かと思って受けてみたら、そうではなかったと。誰の中にもかくれた思い込みが存在することを認め、それを踏まえた上でどう行動するか、というDDLのアプローチがすごく新鮮だったのですね。

その反応を見て、アンコンシャス・バイアスを「いけないこと」として扱うことが世の中では主流なんだと改めて感じました。でも、アンコンシャス・バイアスって、人間が誰しも抱えているもので、なくすことなんてできない。ただ、「自分にもバイアスがあるんだ」と存在を認識して、コントロールできていれば、コミュニケーションの発展につながるんです。

単に「いけないこと」としてしまうと、かえって自覚できなくなってしまう。そうではなく素直に自分の中のバイアスと向き合えば、気付きや成長がある。そういうことが、研修を通して広く伝わるといいなと思います。

海東:DDLだけでは、座学で「バイアスの存在に気付こう」みたいなハウツーを説明する研修になっていたと思います。藤田さんたちのおかげで「コミュニケーションって難しいな」ではなく「コミュニケーションって本来は面白いものなんだな」ということを伝えられる研修になりました。アンコンシャス・バイアスを自覚できると、毎日が少し楽になるんですよね。改めて、どうもありがとうございました!

藤田:こちらこそ、ありがとうございます!これからアンバス・ダイアログがいろんな企業に普及していくのが、とても楽しみです。

菅首相が「明るい話聞いた」相手は「コロナはインフル並み」「日本で死者増えない」が持論の医師 安倍首相も集団免疫論にハマって…

 昨日18日、ようやく開会した通常国会で施政方針演説に挑んだ菅義偉首相。しかし、その演説はやっぱり覇気もなく原稿をただ読み上げるだけ、しかも読み間違いを連発する緊張感のないシロモノだった上、見通しも立てられないほどの世界中で感染拡大の最中だというのに、東京五輪の開催や「新型...

スポーツとクリエイティビティーを融合するNewsPicksとのコラボ番組「WORLD SPORTS CREATIVITY SESSIONS」をオンラインで配信

World Sports Creativity Sessions 実行委員会は、1月23 、24の両日、NewsPicksとのコラボ番組「WORLD SPORTS CREATIVITY SESSIONS」をオンラインで配信する。

NewsPicksとのコラボ番組「WORLD SPORTS CREATIVITY SESSIONS」

同WSCSは「UNITE」をテーマに、東京2020大会に向けて、スポーツと人の創造性が融合することで生まれる新しい価値について、スポーツとデザイン、アート、建築、テクノロジー、ビジネスなど幅広いクリエイティブ分野を代表するトッププレーヤーたちが集い、議論し、発信する、国際カンファレンス・イベント。

スポーツ庁の室伏広治長官がオープニングセッションに登場し、21年のスポーツ庁の取り組みを語る他、海外からもオリンピックで10 個のメダルを獲得した元陸上競技選手のカール・ルイス氏や、海外の現役選手からのメッセージが予定されている。

「WORLD SPORTS CREATIVITY SESSIONS」出演者(一部)
左から、室伏広治氏、中村英正氏、カール・ルイス氏、廣瀬俊朗氏、太田雄貴氏

【出演者】(一部、敬称略)
・室伏 広治 (スポーツ庁長官)
・中村 英正(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会GDO)
・カール・ルイス(元陸上選手・現陸上コーチ)※VTR出演
・廣瀬 俊朗(一般社団法人スポーツを止めるな共同代表/株式会社HiRAKU 代表取締役)
・太田 雄貴(公益社団法人日本フェンシング協会会長/国際フェンシング連盟副会長)

【セッションテーマ】
■1月23日配信セッション
① 20時/Opening Session -オープニングセッション-
② 20時30分頃/Giving Back to Sports -次世代に投資・奉仕するトップアスリートたち-
③ 21時頃/The Modern Arena -スポーツを包み込む「場」のこれから-
④ 21時30分頃/Fan Engagement -スポーツにおけるファンエンゲージメント-
⑤ 22時頃/How Sports Inspire Artists -感性を刺激するスポーツの力-

■1月24日配信セッション
⑥ 20時頃/What Business Can Learn from Sports -ビジネスがスポーツから学べること-
⑦ 20時30分頃/Connecting Audiences Through Technology -テクノロジーが変えるスポーツ観戦の未来-
⑧ 21時15分頃/Inclusivity on and off the Field -スポーツを通じた「共生社会」の実現-
⑨ 22時頃/Closing Session -クロージングセッション-

イベントの詳細、セッション・登壇者情報、視聴方法などは公式サイトをご覧ください。
■WORLD SPORTS CREATIVITY SESSIONS
公式WEBサイト:https://wscs.tokyo


【開催概要】
主催    :World Sports Creativity Sessions 実行委員会
共催    :国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
協力    :(公財) 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
       (公財) 日本オリンピック委員会
              (公財) 日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会
協賛    :Presenting Partner
         東武タワースカイツリー株式会社
         Supporting Partner
         日本電気株式会社(NEC)/日清食品ホールディングス株式会社
         日本航空株式会社/ヤフー株式会社
放送日    :2021年1月23日、1月24日
配信主体:NewsPicks Studios Twitterアカウント
          https://twitter.com/newspicksstudio?lang=en

クリエイティブが、「データ×ブランド体験」を実現する

電通による“人”基点のマーケティング「People Driven Marketing(※)」(ピープル・ドリブン・マーケティング)も、4年目を迎え、「PDM4.0」として大きく進化しました。 

本連載では、電通人と企業のゲストたちが、マーケティングとデータの未来を語った「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」3日間の模様を、ダイジェストでレポートします。

今回は、データテクノロジーをベースに顧客にとって有益なブランド体験をどう提供すればよいか。クリエイティブの重要性を具体事例とともに示した、三つのセッションをレポートします。

※People Driven Marketing
https://www.dentsu.co.jp/business/pdm/
電通が提唱する、データ&デジタル時代に対応した“人”基点の統合マーケティング・フレームワーク。課題を人(People)基点で捉え直し、電通グループが持つ最先端のマーケティング手法を統合して、顧客の持続的な成長を支援していく。
 
Dosolutionsサイトへのリンク
※課題解決マーケティング情報サイト「Do!Solutions」でも、本ウェビナーの特集ページを開設しています。より詳細なレポートはこちらへ。

Google×PDMで広がる「データテクノロジー×クリエイティビティー」の可能性
 

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020
本セッションでは、GoogleのData Strategy Leadを務める姜哲浩(カン・チョルホ)氏、電通デジタルのData Management Consultantである福島ゆかり氏、電通プランニングディレクターの谷澤正文氏が登壇。各社の立場からデータテクノロジー×クリエイティビティーの現在地と未来を語り合いました。

まず姜氏が、テクノロジー技術とクリエイティビティーを掛け合わせた近年の事例を紹介しました。YouTubeのリップスティックの広告コンテンツでは、動画の下に「TRY IT ON(試してみる)」というボタンが出現。クリックするとユーザーの顔が表示され、リップの色がリアルタイムで変わります。

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020
「顔認識技術を用いることで、まるで自分の唇にリップを塗っているような表現を可能にします」と姜氏。他にも、スマートフォンのGoogle Lens (※)を本にかざすと、その本に関連するコンテンツがスマホ上で表現されるクリエイティブ事例も紹介。

「3DやVR、ジャイロセンサーといったテクノロジー技術を活用することで、広告の自由度はどんどん高まっていくでしょう」と姜氏は予測しました。

※Google Lens:Googleのアプリ。調べたいものにスマートフォンのカメラをかざすと、情報を検索し、表示してくれる。 


しかし、どんなに広告が進化しても、ユーザーと適切なコミュニケーションを取れなければ購買には至りません。そこでGoogleが活用しているのが「バタフライサーキット」というコミュニケーションプランニング方法。ユーザーの行動パターンを蝶の飛び方に見立てた上で、

「バタフライサーキット全体に網を張り、必要なタイミングで捕まえる」
「クリエイティブの力でユーザーの動機を誘導し、ブランド理解を深めていく」
「購買を後押しするようなセレンディピティー」

の3点が重要だと姜氏は述べました。

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020
続いて電通デジタルの福島氏が、データ基盤を開発・実装するために重要となるポイントを整理しました。会員・購買などの自社データとユーザーのウェブ行動履歴、外部データなどは「Google Cloud Platform」のようなカスタマーデータプラットフォーム(CDP)で統合・分析し、そのデータを活用した施策・運用はマーケティング担当が中心となって行います。

その際、検討しなければならないことを福島氏は「収集/統合/分析/活用」の4フェーズに分類し、下記の六つのポイントにまとめました。

■収集
①「データの用途を決めてからCDPを作る」「全データをCDPに収集して、用途は後で考える」の2パターンから、進め方を検討する

②実現可否にかかわらずKPIを設定し、「何をするのか」を定める

■統合
③データ統合に必要な固有IDの有無確認

■分析
④データ分析の方針、機械学習の有無など設計を検討する

■活用
⑤施策・運用が可能なツールの選定

⑥構築したCDPへの外部データ追加の検討

最後に、谷澤氏と姜氏がデータテクノロジー×クリエイティビティーの未来について展望を示しました。

姜氏はGoogleの広告キャンペーンを調査したところ、「成果の70%がクリエイティブにかかっていることが明らかになりました」と、クリエイティブの価値を強調。アメリカのGoogle本社では、プランニングの段階からメディア専門家、データサイエンティスト、アナリストに加えてクリエイティブの専門家が参加していることを紹介し、「スペシャリストが集まるところからストーリーが始まる。こうした動きが日本でも定着していくと、もっと面白くなると思います」と見解を述べました。

谷澤氏も姜氏の意見に同調した上で、「チームのつくり方、意思決定のスピード感が今後大きく変わる」と予測。

「ウェブサイトのデザインやメルマガのコンテンツなど、表に見える部分はもちろんのこと、その裏にある見えない部分のデータテクノロジー×クリエイティビティーが成果に大きな影響を及ぼすことになります」と谷澤氏は述べました。

「Do!Solutions」の記事はこちら

 

OMO時代の顧客体験はどのように向上させるべきか?

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020
次のセッションでは、積水ハウス広告宣伝部の竹原賢一氏と、電通データドリブン・クリエーティブ・センター長の並河進氏が登壇。オンラインとオフラインを統合するマーケティング手法「OMO」(Online Merges Offline)がトレンドになる中、積水ハウスが実施した「おうちで住まいづくり」の事例をもとに、OMOで目指すべき「顧客体験」を探りました。

「おうちで住まいづくり」は、住まいづくりのウェブ打ち合わせをはじめ、オンラインで展示場の接客を擬似体験できるYouTube動画や、展示場を体験できるVRゴーグルのプレゼントなどを行うキャンペーンです。

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020
「コロナ禍で住宅展示場の来場者数が激減し、既存顧客との折衝も中断。新規顧客へのアプローチも困難になりました。こうした課題を解決するためにキャンペーンを立ち上げることにしたのです」と、竹原氏はプロジェクト発足の経緯を説明しました。

1日の遅れがチャンスロスにつながるため、電通はオリエンテーションから2週間で専用サイトを構築し、キャンペーンを開始。少人数で撮影を行い、全国各地の展示場で横展開できるように、スタッフが自分たちだけで撮影するためのマニュアルも作成しました。

ローンチ後、資料請求が前年比約200%と急増し、早々にテレビCMの制作が決定。リモートで撮影し、キックオフから2週間で納品という、これまたスピーディーな対応を行ったとのこと。

結果、8月の受注数は前年比116%に伸長。「当社の代表をはじめ、営業メンバーも含めた社員全員が、危機的状況を乗り切るために同じベクトルを向けた。スピード感を持って実行したことが、成果に結びついたのだと思います」と竹原氏は振り返りました。

続いて、並河氏の「オンラインとオフラインの顧客体験を、それぞれどのように位置づけているのか?」という質問に対し、竹原氏は「当社の情報を収集していただく際に、いかにお客さまの状況に合わせられるかが重要です。オンラインとオフラインを切り分けるのではなく、どのチャネルでもお客さまの体験にきっちりコミットし、トータルで当社の魅力を伝えていけるようにしたい」と述べました。

並河氏は、「これまでは住宅展示場に足を運んだときが勝負でしたが、今後はお客さまがオンラインで情報収集する段階も勝負になりそうですね」と、コロナ禍以降の顧客接点の変化について言及。「営業の場だけでなく、企業が提供している場所やモノ、すべてが顧客接点になる。そのように発想を変えると、可能性がすごく広がります」と述べました。

竹原氏もその意見に同調し、「リアルでもバーチャルでも、顧客接点を増やすことが重要です。当社の事業はオフィスビルやマンション、賃貸住宅、海外輸出など幅広いので、実はここにも積水ハウスがあるんだという発見も含めて、上質な体験をお届けしたい」と語りました。

最後に竹原氏は、現場の魅力をデジタルで顧客に擬似体験してもらうことの重要性を述べました。

「当社の強みは、社員の“人としての魅力”と、建物へのこだわりです。こうしたリアルの魅力をバーチャルで体験していただき、さらにリアルでも体験していただく。当社のイメージを一気通貫でいかに伝えられるかが大事で、それこそがクリエイティブが担う大事な役割になるでしょう」(竹原氏)

並河氏も「リアリティーの世界とイメージの世界。両方とも組み立てて一貫したクリエイティブをつくっていく。そこが、どのような企業においてもOMOを成功させる上で重要なポイントになると思います」との見解を示しました。

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データとクリエイティブの着眼点
 

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020

最後のセッションは、電通クリエイティブディレクターの池田一彦氏と志村和広氏、ソリューションディレクターの大島聡氏が登壇。テーマは、「データの未来、クリエーティビティで社会と事業を変えていく」。

冒頭、大島氏は、多様化・複雑化するデータについて「ビジネスが良くなるためには、これまでとデータの見方やアプローチを変え、本当に見るべきデータは何かを捉えることが大事」と述べ、クリエイティブに対しては「表現領域にとどまるものではなく、社会と事業変革につながる『着眼点』そのものだ」と語りました。その具体事例としてセッションでは、電通の二つの新しい取り組みを紹介。

一つは、池田氏が手掛けた、オーダーメードペットフードのサブスクリプションサービス「BODY CALL」です。池田氏は、肥満やアレルギーなどと関連することから“第二の脳”と呼ばれる腸内フローラのデータに着目。データをパーソナライズし、顧客の愛犬に最適なペットフードを一生にわたって提供するサービスを構築しました。

サービスを思いついた経緯について池田氏は、「ペットのマーケットは全て飼い主による代理購買です。買ったものをワンちゃんが本当に満足しているかは誰にも分かりません。ワンちゃんと会話ができないなら、体の声を聞いてあげることがすごく重要だと思いました。さまざまな生体データの中でも、食事の影響を受けやすいという理由で腸内フローラに着目しました」と述べました。

もう一つの事例は志村氏による、マグロ目利き職人のAI「TUNA SCOPE」。大量のマグロの尾の断面画像を解析して、目利き職人の“暗黙知”を習得することで、アプリで簡単にマグロの品質判定ができるサービスです。焼津や三崎の工場、中国・大連の大きな工場に導入されたことで大量のデータが蓄積され、近年はTUNA SCOPEで検品した最高ランクのマグロを商品化する動きにも進展しています。

People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020
このサービスを思いついたきっかけについて志村氏は、「もともとは、マグロの断面のデータをなんとかしようということから始まっていません。自分が普段食べるマグロの当たり外れをなんとかできないかと思っていたところ、たまたまテレビでマグロの仲買人を見て、アイデアが生まれました。そういう意味では、『マグロの断面』という、初めはデータではなかったものをデータ化したといえます」。

大島氏は、二人の話に共通するポイントとして、「データを“手段のひとつ”としていること」を挙げ、「実現したい未来や目的が最初にあって、そこに向かうときに“こういうデータが必要なんじゃないか?”という発想が生まれている」と述べました。

最後に大島氏は、マーケティングを進化させるために、これからデータとの向き合う中で大切にするべきポイントを挙げました。

・データを活用する目的や意義を考えること
・データ化されていないものを開拓する精神
・データを活用することに対する顧客の共感
・パートナー企業との連携とデータの共有

まとめとして、自社だけのためではなく、社会の課題解決、より良い社会の実現のためにどのようにデータを活用できるかが大事であり、着眼点ひとつでビジネスのスケールは大きくなっていくと述べました。

「Do!Solutions」の記事はこちら

※本ウェビナーのより詳細なレポートは、「Do!Solutions」の特集ページをご覧ください!

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【参加者受け付け中】「スコップ・スクール」説明会とプログラム体験会を順次実施

子どもが、これからの不確実な社会を自分らしく生き抜くために必要な「実践的創造力」を育てる「SCHOP SCHOOL(スコップ・スクール)」(運営=スコップ)は、2021年4月からのオンラインでの開校に先立ち、1月24日からスクール説明会とプログラム体験会を実施する。現在参加者を受け付けている。

SCOP SCHOOL 2021年4月開校

スコップ・スクールは、これまで2018~20年に短期スクールを実施し、20年11月2日には、電通・TBSホールディングス・エデュソルが共同で株式会社スコップを設立。21月4月から小学生のための次世代スクール「スコップ・スクール」をオンラインで開校する。

このスクールの目的は、これからの不確実な社会を自分らしく生きていくために必要な「実践的創造力」を掘り起こし、育てていくこと。社会の一線で活躍するクリエイティブ分野と教育分野のプロフェッショナルな教師により、世界のさまざまな教育理論を基に独自設計したメソッドに沿って学びと成長を実現していく。

スコップ・スクール 概要

1月24日から順次開始されるオンライン説明会では、スクールのメソッドやコースコンセプトと共に、レギュラースクールの受講料や開催曜日などの詳細が説明される。また体験プログラムに参加を希望される方も、説明会への参加が推奨されている。
スコップ・スクール コース概要


【スコップ・スクール概要】
開校日 2021年4月1日
コース :ソーシャルクリエーティブコース / アート&デザインコース / プログラミング&クリエーティブコース
受講環境 : 各コースとも、Zoomによるオンライン受講(※パソコンの用意が必要になります)
コンテンツ:各コースとも、オンライン受講(1回90分・隔週/年24回実施)
+ 継続的自宅ミッション

説明会の詳細・お申し込みは「スコップ・スクール」の公式サイトからお願いします。
https://schopschool.com/