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レアアース・ショック再来、日本製造業は再び止まる?静かに進む“脱・単一依存”
●この記事のポイント
・中国がレアアース輸出規制を強化する中、日本製造業は再び資源リスクに直面している。だが企業は分散調達、代替技術、リサイクルを進め、「脱・単一依存」へ静かに構造転換を進めてきた。
・双日やJX金属、信越化学らは、中国を通さない供給網やレアアース使用削減技術を構築。危機対応にとどまらず、日本の技術力を世界標準へ押し上げる好機が到来している。
・レアアース問題は企業努力だけでは解決しない。南鳥島の国産化構想を含め、国家がコストとリスクを引き受ける覚悟が問われている。危機は日本の産業主権を試す局面だ。
2026年、世界のサプライチェーンは再び緊張の局面に入った。中国政府が、ハイテク産業に不可欠なレアアース(希土類)の輸出規制を段階的に強化する姿勢を鮮明にしているからだ。
レアアースはEV(電気自動車)の駆動用モーター、半導体製造装置、スマートフォン、防衛装備品に至るまで、日本の基幹産業を下支えする「産業のビタミン」とも呼ばれる存在である。日本の官民備蓄量は半年から1年分程度とされ、仮に供給が大きく滞れば、生産ライン停止や投資計画の延期が連鎖しかねない。
我々は2010年、尖閣諸島問題を端緒とした中国のレアアース輸出停止で、特定国依存のリスクを痛感した。あれから15年余り。日本企業が静かに進めてきた「脱・中国依存」の取り組みが、いま改めて試されている。
●目次
「止めなくても勝てる」——中国が握る見えないカード
今回の規制は、2010年のような全面的な禁輸とは様相を異にする。
資源・国際安全保障の専門家である政治アナリスト・畠田祐一氏はこう語る。
「中国は、レアアースを“止めなくても勝てるカード”に変えた。許認可の遅延や用途制限だけで、企業の投資判断や市場心理を揺さぶれる立場にある」
中国は世界最大の産出国であるだけでなく、採掘後の分離・精製というボトルネック工程を押さえてきた。この工程を通らなければ高純度レアアースは供給できず、結果として中国依存が固定化された。
畠田氏は、日本の現状について「依存度は確実に下がっているが、完全な耐性があるわけではない」と指摘する。
「重要なのは、今回の規制を一過性の危機で終わらせず、構造転換を一気に進める政治的・企業的意思を示せるかだ」
こうした状況の中、日本の商社や素材メーカーは供給網の“書き換え”を進めてきた。
双日は、重希土類について豪州ライナス社から日本向けに直接輸入するルートを確立。採掘から分離・精製までを非中国圏で完結させる、画期的なサプライチェーンを構築した。
JX金属も、オーストラリアでの権益確保を軸に、南米、オセアニア、南アフリカといった地政学リスクの低い地域への分散投資を進めている。さらに、JOGMECと岩谷産業が仏精錬大手カレマグに出資し、欧州との精製連携を深めている点も重要だ。
これらは「脱・中国」を声高に掲げるものではない。特定国への過度な依存を避ける、現実的なリスク分散戦略である。
技術の逆襲——「持たざる国」が選んだ別解
調達網の再構築と並行して、日本企業が力を注いできたのが「技術による依存低減」だ。
プロテリアル(旧日立金属)は、EV用モーターに不可欠とされてきた重希土類を使用しない高性能磁石の量産化に成功した。かつては研究テーマにすぎなかった技術が、実用段階に入ったのである。
「レアアース・フリー磁石は、理想論ではなく現実解になりつつある。材料設計とプロセス技術で性能とコストの壁を越えてきた」(同)
一方で、畠田氏は楽観論には慎重だ。
「完全に使わないことと、使用量を減らすことは別問題だ。用途ごとに“減らす・代替する・循環させる”戦略が必要になる」
その循環戦略を体現しているのが信越化学工業である。製造工程の端材や使用済み製品からレアアースを回収し、高純度で再精製する技術を確立。資源を「輸入するもの」から「循環させるもの」へと再定義した。
「リサイクルは環境対策ではなく、供給安定性を買う技術だ」(同)
中国産レアアースが長年市場を席巻した背景には、環境対策コストの扱いがある。レアアース精製には放射性廃棄物などの処理が不可避だが、中国はそのコストを事実上内部化せず、低価格を実現してきた。
しかし、ESG投資や環境規制が強化される現在、この「汚れた安さ」は許容されなくなりつつある。米国は国家主導で補助金や政府買い上げを行い、採算が合わなくても産業基盤を維持する政策に舵を切った。
「日本は民間の努力に委ねすぎてきた。最後の壁は、国家がどこまでコストを引き受ける覚悟があるかだ」(同)
2030年、南鳥島が開く「国産化」の可能性と限界
政府が期待を寄せるのが、小笠原諸島・南鳥島沖のレアアース泥だ。2030年頃の商業化を目指し、深海から泥を吸い上げ分離・精製する技術検証が進んでいる。
もっとも、万能の切り札ではない。
「南鳥島は夢のある話だが、過度な期待は禁物だ。海外調達、技術代替、国産化を同時並行で進める国家戦略が不可欠だ」(同)
中国のレアアース輸出規制は、日本にとって明確なリスクである。しかし同時に、代替技術、循環技術、分散調達という日本の強みを世界標準へ押し上げる好機でもある。
「脱・中国」ではなく、「脱・単一依存」。その現実的な道筋を描けるかどうかが、日本製造業の競争力と産業主権の行方を左右する。
レアアースを巡る攻防は、日本が「資源を持たざる国」から「技術で資源を生み出す国」へ進化できるかを問う試金石となっている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
ECの主役がアマゾンからグーグルへ…Shopify・Visaとの連合でAIが買い物を完結
●この記事のポイント
・グーグルが本格始動させた「Agentic Commerce」は、AIが検索から決済までを代行する新たなECのOSだ。物流を握るアマゾンに対し、判断と実行を支配するAI基盤で覇権奪還を狙う。
・Geminiを起点に、ShopifyやVisaと連携するグーグルは、ECを自社に囲い込まない“強者連合”戦略を選択した。アマゾン依存からの脱却を促すこの動きは、小売業の力学を変えつつある。
・消費者の入口がECサイトからAIエージェントへ移行する時代、ブランドは「人に選ばれる」だけでは不十分になる。日本企業に突きつけられるのは、「AIに選ばれる存在」への転換だ。
長らくEC(電子商取引)の世界では、アマゾンが事実上の“標準”として君臨してきた。検索、比較、購入、決済、配送――あらゆる体験を自社のプラットフォーム内に閉じ込めることで、他を寄せ付けない強固な経済圏を築き上げたからだ。
しかし2026年、その構図が大きく揺らぎ始めている。検索の巨人・グーグルが本格始動させた「Agentic Commerce(エージェンティック・コマース)」は、単なるEC機能の拡張ではない。AIがユーザーの代わりに“意思決定し、実行まで担う”という、新しい商取引のOSを提示する試みである。
●目次
- 「検索」から「実行」へ──買い物を“考えない”時代の到来
- 決済の摩擦ゼロ、Geminiが“店舗”になる瞬間
- 小売業に現れる「バーチャル販売員」…クーポン不要の、超パーソナライズ販促
- 対アマゾン、最強の「アンチ・エージェント連合」
- ECの勝者は「物流」ではなく「判断」を制する
「検索」から「実行」へ──買い物を“考えない”時代の到来
従来のネットショッピングは、表面的には便利になったようでいて、実態は依然として「人間の労働」に依存していた。複数のサイトを開き、価格やレビューを比較し、在庫や配送日を確認し、決済情報を入力する。ユーザーは無意識のうちに、購買プロセスの大半を自ら担ってきたのである。
グーグルが描く未来は、これを根底から覆す。ChromeのAIモードやGemini上で「キャンプ用テントを、予算5万円以内で評価の高いものから選んで購入して」と指示するだけで、AIが検索、比較、最適化、決済までを一気通貫で代行する。
この思想自体は、OpenAIの「Atlas」やPerplexityのエージェント機能とも共通する。だが決定的に異なるのは、グーグルが世界最大の検索インデックスとブラウザ、決済基盤を同時に握っている点だ。
「Agentic Commerceの本質は、AIが“提案する存在”から“実行責任を負う存在”へと進化した点にある。これはUXの改善ではなく、購買行動そのものの自動化だ」(ITジャーナリスト・小平貴裕氏)
決済の摩擦ゼロ、Geminiが“店舗”になる瞬間
ユーザー体験において最も破壊的なのは、GeminiやChrome上に直接埋め込まれる購入・決済機能である。会話の流れから一切離脱することなく、Google WalletやGoogle Pay、PayPalに保存された情報を用いて即時決済が完了する。
配送状況や在庫もAIがリアルタイムで小売事業者と同期し、「いつ届くか」「在庫はあるか」を確認するために別サイトを開く必要はない。
これはECサイトが担ってきた「店舗機能」を、AIインターフェースそのものが吸収することを意味する。
「ユーザーは“どこで買うか”を意識しなくなる。意識するのは“誰に任せるか”だけであり、その座を狙っているのがGeminiだ」(同)
小売業に現れる「バーチャル販売員」…クーポン不要の、超パーソナライズ販促
Agentic Commerceは、消費者だけでなく小売事業者側の構造も変える。グーグルのAI機能を自社サイトに統合すれば、24時間稼働する高度なバーチャル販売員を常駐させることが可能になる。
AIはユーザーと直接対話し、商品説明や比較、在庫確認を行う。さらに重要なのが、リアルタイムで生成される個別最適化の販促施策だ。
従来のように、不特定多数に向けたクーポンをばら撒く必要はない。AIは「今このユーザーが、どの条件なら購入するか」を判断し、その瞬間にだけ、最小限の値引きや特典を提示する。
「これは販促の自動化ではなく、利益率の最適化エンジンだ。マーケターの役割は“施策を作る”ことから、“AIにどう判断させるか”へ変わる」(同)
対アマゾン、最強の「アンチ・エージェント連合」
グーグルの戦略が巧妙なのは、自らが在庫を持つ小売業者にならない点にある。今回の発表では、Shopify、ウォルマート、Visa、American Expressといった巨大プレイヤーとの提携が明らかにされた。
これは、物流と在庫を自社に囲い込む「アマゾンモデル」とは正反対の思想だ。グーグルはあくまで“中立的なAIハブ”に徹し、データの独占もしないと明言している。
小売側にとっては、
・アマゾンへの高い手数料
・顧客データのブラックボックス化
という長年の不満からの脱却を意味する。
「アマゾンは“市場”だが、グーグルは“OS”になろうとしている。この違いは、長期的には極めて大きい」(同)
ECの勝者は「物流」ではなく「判断」を制する
かつてグーグルは、「世界中の情報を整理する」ことで覇権を握った。いま同社が狙うのは、その次の段階――人間の行動そのものを代行することだ。
Agentic Commerceが普及すれば、消費者の入口はECサイトではなく、AIエージェントという単一の窓口に集約される。そこではブランド力よりも、「AIにどう評価されるか」が売上を左右する。
アマゾンが築いたのは「物流の帝国」だったが、グーグルが挑むのは、「判断のOS」を巡る戦いである。
この地殻変動の只中で、日本の小売業者やマーケターに残された時間は多くない。自社は“人に選ばれるブランド”である前に、“AIに選ばれる存在”か。その問いに答えられない企業は、静かに購買導線から消えていくことになるだろう。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)