グローバルのコミュニケーション戦略ってどこから手を付ければいいですか?

世界的なマーケティングテクノロジー企業Amobee, Inc(以下アモビー)と電通が協業し、海外展開を目指すクライアントを対象に、「ブランド・インテリジェンス分析」(BI分析)に基づくデジタルマーケティングサービスの提供をスタートしました。

電通、米マーケティングテクノロジー会社「アモビー社」とブランド・インテリジェンス分析を活用したサービス開発で協業
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/0123-009740.html

 

BI分析とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、いわば「ブランドの健康診断」に活用できる技術で、ブランドをグローバル展開する際には非常に役立ちます。

BI分析の有用性とは?ソーシャルリスニングとの違いは?電通グローバル・ビジネス・センターの丸山博之が解説します。

<目次>
海外にブランド展開するクライアントがぶつかるさまざまな「壁」
生データを提供するのではなく、ブランドに寄り添った「ストーリー」を抽出する
あらゆる企業が日本から世界へキャンペーンを展開する時代に

 

海外にブランド展開するクライアントがぶつかるさまざまな「壁」

企業やブランドの海外展開は多くの場合、特定の国のマーケットだけではなく、複数以上のエリアに及びます。それぞれのエリア戦略があるため、複雑です。

各エリアの消費者を理解した上での戦略立案が必要ですが、そのためにイチからマーケット調査やブランド調査を行うとなると、時間もコストもかかります。「調査以前に、最初の方向感をざっくりと知る方法はないか」と多くのクライアントが感じているのではないでしょうか?

筆者は多くの日本のクライアントの海外キャンペーンに携わってきましたが、特に多かった課題は以下のようなものです。

  • 海外におけるブランドメッセージの開発をすることになったが、何から着手していいのか分からない。
  • クリエーティブ主導でブランドメッセージの開発を進めてきたが、今後の改善方向の示唆が欲しい。
  • ブランド調査をすることになったが、対象マーケットが大きく、調査だけでも莫大な金額と時間がかかる。
  • 国内の経験則とブランドとしてのアイデンティティーでメッセージ開発をしてきて、海外拠点の評判も良いが、消費者やターゲットのフィードバックがないので、グローバルでどう受け入れられているのか、不安だ。
  • 社内を説得する上で参考となるデータを増やしたい。

BI分析は、まさにこうしたニーズに応えるものです。さまざまな「ウェブコンテンツ消費データ」を、AIを用いて収集・分析し、あるブランドや競合ブランドに対するコンシューマーインサイトを見いだすことができる、特許取得済みの技術です。

ウェブコンテンツ消費データとは、ソーシャルメディア上の投稿、コメント、いいね、シェアなどのアクションデータに加えて、ウェブページや文章、動画、画像等の閲覧数なども対象です。

ウェブコンテンツ消費データ

コンテンツが発信された国・エリア、掲載メディアや情報量、時系列の変化も含め、1日あたり600億以上のウェブコンテンツ消費データを収集できます。AIが整理したデータを、さらにアモビーのデータサイエンティストが相関分析、クラスター分析などの統計手法を用いて可視化します。

BI分析の大きな特長は、いわゆる「サイレントマジョリティー」のインサイトをも把握できることです。

企業のコミュニケーション分析ではソーシャルリスニングも活用されますが、それで取得できるのは主にソーシャルメディア上で積極的に意見を発信するタイプの生活者(マーケティングでいうイノベーターやアーリーアダプター)の声です。

その点、BI分析なら、「意見を外にはあまり発しないが、コンテンツやキャンペーンに触れている生活者」、つまり大多数のサイレントマジョリティーのインサイトも把握できます。SNSだけでなくあらゆるコンテンツを対象としているので、偏りのないフラットな視点で生活者のコンテンツ消費状況を可視化できるのです。

ソーシャルインサイトとBI分析

なお、BI分析はあくまでも「ある時点のウェブコンテンツ消費状況」を切り取ったデータ分析なので、永続的に機能するものというよりイニシャルプランニングに寄与し、マーケッター、戦略プランナーに示唆を与えてくれるでしょう。

まとめると、ブランド活動のグローバル戦略策定から実施計画まで一連の設計に、各国・各言語圏のコンシューマーインサイトを活用できるようになるというのが、BI分析の概要となります。

BI分析でできること

デジタル×グローバル領域におけるデータ分析は、今やマーケティングに欠かせません。世界的に有名な映画シリーズの新作のチケット販売総額を事前に予測したり、アメフトのスーパーボウルに関連して注目されているブランド名をリアルタイムに把握するなど、さまざまなブランド、キャンペーンでのデータ分析活用が進んでいます。

生データを提供するのではなく、ブランドに寄り添った「ストーリー」を抽出する

アモビーと電通がクライアントに提供するのは、BI分析の結果に基づいた「ブランドコミュニケーション戦略立案」であり、実際に提供するアウトプットは、「レポート」という形になります。

クライアントと何度かやりとりをしながら、注目すべきデータと、そこから導き出されたターゲットや戦略を盛り込んだレポートを仕上げていきます。

もしクライアントの中で課題感やビジョンが定まっていない場合でも、とりあえず自社と競合ブランドの「今」の状況を把握し、分析することで、そこからブランドストーリーを組み上げていくアプローチが可能です。ターゲットが明確でない場合でも、コンテンツ分析の過程でターゲットを発見できます。

また、アモビーのBI分析では不要なデータをクレンジングして必要なデータのみを収集できますが、データはあくまでもデータでしかありません。プランニングに役立てるには、クライアントにフィットしたコンテンツを見る力や、それを解釈してストーリーをつくる力が必要です。

ここにクライアントのマーケティング戦略を理解する電通が入ることで、クライアントの商品・サービスとその課題をよく理解した上で、膨大なデータから価値ある消費者インサイトを発見し、マーケティングに活用可能なシナリオを“ブランドストーリー”として抽出していきます。BI分析を用いたブランド戦略をリードするため、電通が果たせる役割は大きいと考えています。

さまざまな分析視点からデータを表示可能

さまざまな分析視点
BI分析のダッシュボードでは、必要に応じてさまざまな分析視点からデータを表示できる。

海外では、ブランドに対する生活者のインサイトを大まかに知ることができるアモビーのBI分析を、生活者の行動を定期的に把握するために活用するクライアントが増えているようです。

例えば、フィンテック業界や自動車業界など、業界ごとの注目キーワード、その注目度の大きさ、増減率などを見ることもできます。もちろん自社の商品・サービス名に特化して調べることも可能です。

フィンテック業界の分析例
自動車業界の分析例

ちなみに、BI分析に基づいたキャンペーンプランニングに加えて、そのターゲットをそのまま引き継いだデジタル広告運用も提供可能です。広告配信後のオーディエンスデータを活用した効果検証(キャンペーン分析やブランドリフト分析等)などマーケティング活動のPDCAが、今回の提携でさらにシームレスに実現できるようになりました。

今後もアモビーと電通は、BI分析をベースにしたサービスの体系化・深化を図り、顧客企業のマーケティング活動の高度化に資するサービスを開発・提供していきます。

あらゆる企業が日本から世界へキャンペーンを展開する時代に

最後に、日本企業のグローバルキャンペーンが増えている背景を考えてみます。

ここ数年の日本企業の傾向を見ていると、近く開催される国際的なスポーツ大会や国民的な関心イベントをきっかけに、中長期計画の策定や、グローバルブランドとしての再構築を行うといった話をよく聞きます。また、クロスボーダー型のM&Aにより、海外の新しいサービス、ブランドを傘下に入れる企業が増え、リブランディングしたいという問い合わせも増えています。

そして何よりも大きいのが、メディアプラットフォーム側の進化です。GoogleやFacebookなどのグローバルな広告プラットフォーマーだけでなく、アモビーをはじめとするグローバルDSPが世界中をカバーするようになり、リアルタイムでのデジタル出稿が容易になりました。

デジタルなので日本からワンストップで管理しやすく、どの国でも同じバイイング指標で展開し、結果のKPIも同一指標で見ることができるため、PDCAがしやすいという運用上の利点もあります。

各国企業のM&Aに伴うサービスや商品ラインアップの強化、エリアの拡大化が進み、グローバル展開を目指す企業は世界中に増えてきています。ボーダレスな時代だからこそ、電通は新しいテクノロジーやサービスを活用し、クライアントの優れたブランドに寄り添ったグローバル展開をお手伝いしていきたいと考えます。

堺雅人『半沢直樹』続編決定報道……7年振りの「倍返し」TBSとの"軋轢"が原因か

堺雅人『半沢直樹』続編ほぼ決定報道......7年振りの「倍返し」TBSとの軋轢が原因かの画像1

 今週発売の「週刊女性」(主婦と生活社)が、TBSの大ヒットドラマ『半沢直樹』の"続編が決定したと報じ、大きな話題となっている。

 2013年に放送された本ドラマは、主演の俳優・堺雅人をはじめとする超豪華出演陣が集結し、最高視聴率は平成トップクラスの約42%を記録。作中に出てくる「倍返し」というセリフはその年の流行語大賞に選出されるなど、『半沢直樹』を知らない人の方が少ないだろう。

 そんなビッグコンテンツの続編決定?というニュースに、ファンからは「ようやくか」「楽しみに待っていた!」と早くも歓喜の声が殺到中だ。ちなみに、放送予定日は東京五輪直前の「来年4月」を予定しているという。

 実に7年振りの続編となりそうなのだが、何故ここまで時間が掛かってしまったのか。過去、堺サイドとTBSの間で"軋轢"があったようで......。

「最高視聴率40%オーバーというとんでもない記録を叩き出した作品だけに、TBS自身も含め誰もが続編に期待していたと思います。実際、放送終了を迎える前から『続編が決定!』と各メディアが報じていましたし、TBSサイドもその意向であるとスクープされていましたしね。

そんなTBSの身勝手な行動?に堺サイドが『激怒した』とされ、それから両者の間に深い溝が生まれとか。このことが原因で続編が"白紙状態"だったと囁かれていました。ですが、現在はその軋轢は解消され、今回の報道に至ったと思われます」(記者)

『半沢直樹』を機に俳優としてのランクを上げた堺。その後もNHK大河ドラマ『真田丸』の主演に抜擢され、再び高視聴率を獲得した。業界内での地位を確固たるものにしている。

 また、『半沢直樹』が放送された「日曜劇場」といえば、『下町ロケット』『陸王』といった大ヒット作が生まれるゴールデン枠でもある。

 ただ、最近は不調気味で、常磐貴子主演の『THE GOOD WIFE / グッドワイフ』、現在放送中の福山雅治主演ドラマ『集団左遷!!』が、視聴率"ヒト桁"台を立て続けに連発。かつての高視聴率枠を復活させる"起爆剤"という意味でも、『半沢直樹』の続編にアツい視線が注がれるに違いない。

維新の参院選候補・長谷川豊が「プロ、犯罪の」と部落差別発言! 丸山穂高、長谷川を公認する維新の反人権体質

 丸山穂高議員による「戦争しないとどうしようもない」発言が飛び出した日本維新の会に、またも「暴言」問題が浮上した。今夏におこなわれる予定の参院選で維新から公認を受けている候補者である元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏が、講演会で差別発言をおこなっていたのだ。  問題とな...

『ラジエーションハウス』では描かれない日本のCT・MRI“異常過多”の危険性

「Getty Images」より

 放射線技師や放射線科医の苦悩と葛藤を描く連続テレビドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)が4月8日にスタートして以来、注目を浴びている。レントゲンやCT(コンピューター断層診断)で病変を撮像し、病気の原因を探る放射線技師と、病変の有無を診断(読影)する放射線科医たちの葛藤を描く医療ドラマだ。

 実は日本は、がんや重篤な生活習慣病などの早期発見・早期治療に欠かせないCTやMRI(磁気共鳴画像)などの高額医療機器の保有台数が、国際的に見て異常といえるほど多い。一方で、放射線診断専門医が圧倒的に不足しているというアンバランスがある。『ラジエーションハウス』を視聴しているだけでは、こうした現実は見えてこない。

過剰な画像診断は被爆と無駄な医療費の原因となる

 国際的に突出したCT・MRI大国である日本に対しては、かなり前からその危険性を指摘する報告がいくつかなされている。問題は大きく分けて、「被曝のリスク」と「医療費が膨大なものになる」という2点だ。

 画像診断の発達は、医学に驚異のイノベーションをもたらした。だが、CTや放射性医薬品による検査で使用する電離放射線量は、胸部X線撮影やマンモグラフィーなどの標準的なX線検査のおよそ50~500倍以上の高線量だ。高線量の放射線が広範囲に照射され、検査回数が増加すれば、低レベルでも発がんリスクが高まることは予想に難くない。

 米国では、放射線技師や放射線科医などが受ける業務上の被曝の実効線量は、5年間で100ミリシーベルト(mSv)(年間平均20mSvかつ1年間の上限50mSv)に制限される。

 エモリー大学医学部のレザ・フェイゼル博士らの研究チームは、毎年1000人中約194人が中線量(3~20mSv)を、1000人中約19人は高線量(20~50mSv)を、1000人中約2人は非常に高線量(50mSv超)をそれぞれ被曝し、毎年およそ4万人が年間20mSv以上の放射線を被曝したと報告した(「The New England Journal of Medicine」2009年8月号)。

 また、フレッド・メトラー博士は、画像診断による1人当たりの実効線量が10~15年で倍増、26年間で被曝量が約6倍、56年間で放射線または放射性医薬品を用いた年間の診断回数は約15倍に増加したと発表した(「Radiology」2009年11月号)。

 米国をはじめとする先進国では、放射線診断件数はやはり急増しており、スミス・バインドマン氏らはCTが同種にもかかわらず、同一施設内および異なる施設間でもCT検査の種類ごとの線量の最大値と最小値間に平均13倍の差があった事実を報告した。

 バインドマン氏は「同種のCT検査を異なる施設の医師らが異なった技術パラメーターを用いたからだ」と説明。「CT検査の種類に応じた許容線量の基準がなく、許容できない線量になる。被曝量を30~50%軽減するための規制はない」と指摘する(「Archives of Internal Medicine」<2009 年 12 月号スミス・バインドマン氏らの研究>より)。

 こうした米国の状況に対して、コロンビア大学・内科医学と放射線医学のアンドリュー・アインシュタイン博士は「検査の正当化、検査法の最適化、診断基準レベルの平準化という放射線防護の3原則を徹底しなければならない」と主張する(「Archives of Internal Medicine」<2009 年 12 月号>)。

なぜ日本には多くのCTやMRIが導入されているのか

 十数年前のものだが、日本では画像診断によってがんが3.2%(年間7587件)増える可能性があると指摘する論文が医学雑誌「ランセット」に掲載されている(Amy Berrington de Gonzalez, Sarah Darby: Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries. Lancet 363:345-351, 2004/2004年3月10日)。

 ゴンザレス博士らは画像診断の被曝による放射線で誘発される9種類のがん(食道、胃、結腸、肝臓、肺、甲状腺、乳房、膀胱、白血病)が75歳までに発症する確率を、英国と先進14カ国について比較した。

 ただ、画像診断による低線量被ばくによる発がんの可能性や発がん率は定説がないので、明確なエビデンスはいまだ不明だ。画像診断による「がんの発生と死亡率」に関して、さまざまな果敢な研究が米国で続いている。その成果は必ず実を結ぶだろう。
 
 むしろ、ゴンザレス博士らの論文が指摘した重要なことは、日本の画像診断による検査数やCTの保有台数が非常に多い点だ。

 厚労省『医療機器の配置及び安全管理の状況等について』(2016年7月15日)と「OECD health Statistics 2015」から、OECD(経済協力開発機構)諸国と比較した日本のCTとMRIの保有台数を見てみる。
 
 CTの保有台数(100万人当たり)は、日本は101.3台で、2位以下のオーストラリア53.7台、米国43.5台、アイスランド40.5台、デンマーク37.8台から大きく飛び抜けている。MRIの保有台数(100万人当たり)でも、日本は45.9台で、2位以下の米国35.5台、イタリア24.6台 、韓国24.5台、ギリシャ24.3台と比べて、やはり群を抜いて多い。

 CTとMRIの保有台数は、それぞれOECD平均の4.1倍、3.27倍に達している。日本のCT保有台数は、1万人に約1台という高率だ。

 なぜこれほどまでに、CTやMRIなどの診断機器の保有台数が異常に多い国になっているのか。それは、CTやMRIなどの診断機器の設置基準が明確でない上に、医療従事者や患者の医療被曝への意識が低く、国民が公的健康保険制度による低費用の検査に依存している状況にあるからだといわれる。

 さらに、国内の医療施設で働く放射線科医は6587名と少ない(「平成28年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より)。1人の放射線科医当たりの検査回数は年間約5000回となり、その負担はかなり大きい。『ラジエーションハウス』でも、あまりの読影件数の多さに疲弊する放射線科医の姿が描かれている。

大病院よりクリニックに多いCT、MRIは無駄?

 さらに日本の保有施設数はCTが診療所5001(43%)、病院6627(57%)、MRIが診療所1669(33%)、病院3466(67%)と、CT、MRIともクリニックレベルにも多く設置されている特徴がある(厚労省『医療機器の配置及び安全管理の状況等について』<2016年7月15日>)。

 CTやMRIなどの高額医療機器が大病院だけではなく、市中の小規模な病院や診療所に分散しているこうした状況に対しては、医療機器の非効率的な運用が行われ、患者の健康維持より医療機器の維持と利益確保のために活用されている傾向があり、その結果として無駄で危険な医療被曝と医療費の高騰につながっていると批判される。

 もちろん、解決策がまったくないわけではない。それは、次のようなものだ。

・欧米のようにCTやMRIなどの高額医療機器に厳しい施設基準を設ける
・都市部に高額医療機器を集約し、より効率的かつ高レベルの医療を実現する
・専任する放射線科医、放射線技師の雇用を義務づけ、品質管理を徹底する
(「京都府立医科大学雑誌」120(12),943〜951,2011 特集「放射線と健康」米国発,医用画像の過剰使用問題は我が国へも波及するか~山田惠)

超過剰画像診断大国の未来はどこにあるのか

 過剰な画像診断による医療被曝、医療費の高騰、放射線科医の不足と過剰労働、さらにそれによる誤診や病気の見逃しのリスク、こうした問題を抑制できる道は開けるのか。

 CTやMRIの豊富な医用画像データを生かすために、AI(人工知能)のディープラーニングやクラウドソーシング(画像の遠隔読影など)を活用はそのひとつだろう。

 ちなみに、乳腺マンモグラフィーと胸部X線単純撮影は5年以内に、CT、MRI、超音波診断は10~20年以内に、AIによる画像診断に置き換わるとする報告がある(米医用画像情報学会(SIIM)「Conference on Machine Intelligence in Medical Imaging」<2016年9月号>より)。

 10年後に『ラジエーションハウス』がつくられれば、ずいぶん違った内容になるだろう。
(文=ヘルスプレス編集部)

尿検査で屈辱感を抱く選手も…競泳藤森選手だけじゃない、厳しすぎるドーピング検査の功罪

2018年12月、中国・杭州で開催された世界短水路選手権において、男子200メートル個人メドレーで銅メダルを獲得して微笑む藤森太将。しかしこの大会のドーピング検査において、のちに陽性反応が出てしまう。(写真:AP/アフロ)

「手の打ちようがない」――。

 日本水泳連盟幹部によるこの言葉に衝撃を受けたのは、日本競泳陣だけではない。東京五輪を戦うほかの競技団体の役員たちも恐怖を覚えたのではないだろうか。日本の競泳陣を牽引してきた池江璃花子も、きっと心を痛めていたことだろう。

 東京辰巳国際水泳場・日本選手権に、東京五輪のメダル候補の姿はなかった(4月8日閉幕)。2016年リオデジャネイロ五輪の競泳男子200m個人メドレーで4位入賞した藤森太将選手が、ドーピング検査に引っかかったのだ。同大会は東京五輪出場の選考レースでもあった。正式な処分は今後開かれる国際水連(FINA)による聞き取り調査後に決まるが、藤森と日本水連は“争う姿勢”を見せている。今回のドーピング検査は、他競技団体にも影響を及ぼしそうだ。

「昨年12月、中国・杭州で開催された世界選手権に出場した際のドーピング検査で引っかかったんです。その後、再検査もされたんですが、藤森の体から禁止物質の『メチルエフェドリン』が検出された事実は変わりませんでした」(体育協会詰め記者)

 藤森たちが争うのは、検査結果についてではない。そうではなく、「意図的に摂取したのではない」という主張をするのだ。「メチルエフェドリン」には興奮作用があるとされている。

「メチルエフェドリンは、市販の風邪薬にも含まれていることの多い物質です。藤森と水連は『つい、うっかり』で服用してしまったのではないかとしており、悪意がなかった旨を訴えていくつもりです」(前出・同)

“屈辱的”なドーピング検査

 ドーピング検査について、少し説明しておきたい。1960年ローマ五輪で、興奮剤を投与した自転車競技選手の死亡事故が発生した。それを受け、1968年のグルノーブル冬季五輪、同年・メキシコ夏季五輪から正式に禁止薬物を使用していないかどうかの検査が実施されるようになった。当時は麻薬や覚醒剤さえ使用されていたような時代だが、その後、筋肉増強剤のステロイドなど従来の検査では見つけにくい薬物も広まった。国際オリンピック委員会と世界アンチ・ドーピング機構(以下、WADA)は検査方法を改め、より厳しいペナルティも科すなどして禁止薬物の撲滅に努めてきた。

 WADAが薬物の使用を絶対に許さないのは、フェアプレー精神と人体に及ぼす悪影響を防ぐためだ。

「検査を抜き打ちで行うなどしてきましたが、禁止薬物の使用者はゼロにはなっていません。2016年のリオ五輪直前、ロシアによる組織的な使用の隠蔽疑惑が出て、WADAはさらに厳しい検査をするようになりました」(前出・同)

 ドーピング検査とは、具体的には尿と血液の検査である。競技本番を終えた選手は必ず調べられる。尿摂取は検査員が見ている前でやらなければならず、女子選手も例外ではない。検査員は、「摂取容器にちゃんと自分の尿を入れているのかどうか、覗き込むようにして見ている」という。当然、屈辱的な思いを抱える選手や怒りに震える選手もいるが、これがロシアの組織的な隠蔽疑惑以降、さらに厳しくなったそうだ。

 先の藤森を始め、日本の五輪選手団は当然、禁止薬物撲滅、フェアプレー精神には賛同しているわけだが、「ちょっとやりすぎでは?」の声もないわけではない。

「リオ五輪400mリレーのメンバーだった古賀淳也も、2018年3月の検査で『クロ』と認定されました(同年5月に通達)。古賀も意図的に服用した覚えはないと強く反論しましたが、出場停止4年の処分は変わりませんでした。仮に間違って禁止薬物成分を摂取してしまったことが証明できていたとしても、出場停止の期間が2年に縮まるだけ。無意識で服用してしまったことを証明するのは、相当にハードルが高いようですね」(テレビ局スポーツ部員)

東京五輪“ホスト国”のメンツ

 2018年1月にも、禁止薬物を巡る事件が国内で起きている。カヌーの日本代表候補だった鈴木康大選手が、同じく日本代表候補である小松正治選手の飲み物に禁止薬物を混入させていたことが発覚したのだ。東京五輪出場を確実にするため、ライバルを陥れようとしたのである。最後は鈴木選手が自ら罪を告白したことがせめてもの救いだが、日本オリンピック委員会、加盟各競技団体は、東京五輪の「ホスト国のメンツ」に懸けて、これ以上の薬物違反者は出さないよう再三の注意を払っている。各競技団体とも講習会を開いてきたし、先のメチルエフェドリンのように、「無意識のうちに摂取しかねない禁止薬物が市販薬に含まれていること」の説明もして、その確認・相談の窓口も設置した。

「日本人の気質でしょうかね。クスリに対する強い抵抗感もあって、どの選手もマジメに取り組んでいました」(前出・同)

 そんなときに飛び込んできたのが、冒頭で挙げた競泳・藤森の陽性反応だった。藤森の母校である日本体育大学・同大学院の関係者がこう語る。

「藤森の性格はマジメ。お父さんは田島寧子らを育てた競泳のコーチで、現在も指導を続けています。親子で東京五輪出場とメダル獲得を目指して頑張ってきました。薬物に手を染めるようなことは絶対にないと思う」

 日本水連は、会見というかたちで藤森の陽性反応を発表した。自ら公表したということは、「やましいことはない。無意識のうちに摂取してしまったのだ」と“潔白”を訴える意味もあったのだろう。しかし、そのときに思わず飛び出てしまったのが、冒頭に挙げた「手の打ちようがない」という日本水連幹部の言葉であった。同幹部は再発防止にいっそう力を注ぐとも語ってはいるが、「指導は徹底している。今後、どこに気をつけたらいいのか」ともこぼしていた。

「リオ五輪前、ロシアによる組織的な隠蔽疑惑をWADAは立証できず、一部選手に出場停止を言い渡すだけでした。近年では、体内に薬物の痕跡が残らず、すぐに消えるものもあるそうです。もはや、取り締まる側と不正をする者とののイタチゴッコですよね」(特派記者)

 水泳の藤森は、より厳しくなった検査の犠牲になったともいえなくはないだろう。無意識による摂取の訴えをあきらめてしまった古賀のような例もある。第二、第三の藤森が現れないという保証は、どこにもないのだ。
(文=美山和也)

野田市女児虐待死事件の母親と、私の父から20年間DVを受けた母の共通点

千葉・野田の女児死亡 虐待を訴えた心愛さんの自筆アンケート(写真:毎日新聞社/アフロ)

 野田市の小4女児虐待死事件で母親が逮捕されたことに関して、DV被害者を支援するNPO法人「全国女性シェルターネット」が2月13日、DV虐待事案として対応を求める声明を出した。そのなかの「少女の母親は、まず、保護されるべきDV被害当事者であり、決して逮捕されるべき容疑者などではない」という文言に対し、賛否両論の声が上がり、ネットを賑わせていた。

 否定的意見を一部拾うと、次の通りだ。

「普通の人だったらまったく気持ちはわからないし、両親ともに同罪だと思う」
「母親を擁護する声があるが、全然理解できない」
「DV被害者を守る活動は立派です。じゃあ、この母親が心愛ちゃんにしたことはDVではないの?」

 このような手厳しい意見を言う人は、幸いなことにDVや虐待とは無縁の人生を送ってきたのだろう。「まともな母親だったら、何があっても子どもを守るものだ」という健全な固定観念が根底にある。

 しかし、繰り返されるDVがまともな感情も判断力も奪っていくことを、私は長年自分の母親を見て思い知らされている。

DVによる後遺症で人格障害になった母


 私は父の母に対するDVが常態化した家庭で育った。子どもに害はおよばなかったものの、お酒を飲むと怪物になる父が怖くて、その般若のような顔や怒鳴り声に、寒くもないのに歯がガチガチ鳴り、体の震えが止まらなかった。私はいつも父の顔色を窺い、逆らうようなことは一切しなかった。一言でも逆らったら、今度は怒りの矛先が自分に向くのではないかという恐怖感があったからだ。

 小2のとき、同じ学校の男児が父親に殺される事件が起きた。ノイローゼを患っていた父親が母親の発した言葉に腹を立て、台所から包丁を持ち出して母親を刺殺、「やめて!」と母親をかばった息子も刺したという。

 この新聞記事を読んだとき、私は猛烈な罪悪感に襲われた。

「わが身可愛さで母親を助けようとしない自分は、身勝手な娘ではないのか」

 私はそれまで、父から母をかばったことが一度もなかった。ただただ怖くて、震えていることしかできなかった。それでいながら、「いつか父も包丁を持ち出すのではないか」という恐怖にも苛まれ、相反する思いがせめぎあい、混乱した。

 平成16年の児童虐待防止法改正により、子どもの目前で配偶者に対する暴力が行われることが心理的虐待にあたることが明確化されたように、子どもの頃の私は深く傷ついていた。

 私が高1のとき、母は突然家を出た。兄の大学受験の2週間前のことで、兄は受験に失敗したこともあり、母を許そうとしなかった。まともに考えれば、何も息子の大学受験直前に決行する必要はないのに、母は20年間のDV生活により判断力を失っていた。

 その後は父のDVから逃れたはずなのに、母の後遺症は年を追うごとに深刻になっていった。8割方満たされている状態にいるときでさえ、満たされない2割の部分しか見えないような精神状態と言ったらいいのだろうか。被害妄想がひどくなり、身近な人間は、特に手を差し伸べた人間ほど皆悪者にされた。しかも、自分の意見を言えない生活が身についてしまったせいか、本人の前では素振りも見せず、第三者にはけなげに生きるヒロインを演じながら、自分の苦境を訴えた。

 うつ病を患い、やがて人格障害の診断も受けた。DVに支配されて過ごした20年間の爪痕は大きく、母の人格はゆがんでしまったのだった。

不都合な現実に向き合う強さを


 5月16日、野田市の小4女児虐待死事件で、傷害幇助の罪に問われている母・栗原なぎさ容疑者の初公判が開かれた。検察側は、「勇一郎被告に家庭を支配されていたことを考慮しても母親としての責任を放棄し、勇一郎被告の虐待を見過ごしたことは許されることではなく、刑事責任は重大である」として懲役2年を求刑した。それに対して、弁護士側は起訴内容を認めながらも、執行猶予を求めている。

 思ったよりも軽い求刑だったのは、論点が女児を死に至らしめたことではなく傷害の幇助であることや、「暴力で支配されている状況下」ということが考慮されたからだろう。

 公判では、LINEで逐次心愛ちゃんの行動を勇一郎被告に告げ口して虐待を助長させたことや、「夫が好きだった。離婚後、自分から連絡をとった」などの新証言もあり、一般の人々のなぎさ容疑者への批判は強まったように感じる。

 私自身、DV被害者の実態は理解しているつもりだが、だからといって、「母親は保護されるべきDV被害者であり、逮捕されるべき容疑者ではない」という全国女性シェルターネットの意見には賛成しかねる。「保護されるべきDV被害者」であったのは、娘が死亡する前までの話だ。娘が虐待死したという事実に対し、まったく罪がないとするのはちょっと違うと思う。

 公判では、400人以上の傍聴希望者が押し寄せたために、私は残念ながら抽選に外れて傍聴できなかったが、なぎさ被告は終始うつむいて一度も顔を上げることはなく、声もかぼそかったそうだ。そして、「心愛ちゃんに伝えたいことはありますか」との裁判官の問いにも答えなかったという。おそらく、裁判が行われ、周囲では物事が進んでいても、本人の心がついていっていないのではないだろうか。

 私の母は自分に不都合な事実を認めたくないために、自分に都合のいい解釈をして、ときには脚色まで行い、人の同情を買おうとした。それらはすべて、弱い自分を守るためであった。

 なぎさ容疑者に感じるのも、心の弱さだ。不都合な現実と向き合うには強さと勇気が要る。彼女が現実と向き合えるようになるには、まだ時間はかかるのかもしれないが、勇一郎被告と離れたことで、少しは冷静さを取り戻すかもしれない。そして、自分の行ってきたことのどこが間違っていたのかを理解する強さを身につけてほしい。

 6月26日、判決が言い渡される。
(文=林美保子/フリーライター)

上原浩治が引退、高校時代は補欠だった…巨人次期監督レースに“大番狂わせ”

現役時代の上原浩治投手(「Wikipedia」より/Ship1231)

 プロ野球・読売ジャイアンツ(巨人)の上原浩治投手が5月20日に現役引退を表明した。メジャーリーグでも活躍した名選手だけに、国内外から惜別の声が寄せられている。

 異例となる“シーズン中の現役引退”を報じたスポーツ報知によると、実力の限界を感じた上原投手が今月に入って球団に引退の意向を報告。慰留する球団に対し、上原投手は「自分の代わりに若手にチャンスを与えてほしい」と申し出たという。報道を受けて上原投手はツイッターを更新し、「今朝の新聞の通り、今日で引退となります。長い間、応援ありがとうございました。まだ心の中、頭の中がごちゃごちゃしてますので、とりあえずはご報告まで…」とつづった。

 1998年のドラフト会議で巨人から1位指名を受けた上原投手は、99年にプロ1年目ながら20勝を上げて最多勝、最多奪三振などのタイトルを獲得する活躍を見せ、新人賞と沢村賞を同時受賞した。また、自身を例えた「雑草魂」というフレーズに注目が集まり、同年の「流行語大賞」にも輝いている。

 2008年にフリーエージェント宣言を行った上原投手は、メジャーのボルティモア・オリオールズに入団。その後、18年に日本球界復帰を果たすまで、テキサス・レンジャーズ、ボストン・レッドソックスと活躍の場を移していく。なお、レッドソックス時代の13年にはクローザーとして大活躍を見せ、世界一を決めるワールドシリーズにも登板。第6戦で最後の打者を空振り三振に仕留め、日本人初の“胴上げ投手”として世界一に輝いた。

 巨人に復帰した18年は36試合に登板して0勝5敗という成績に終わり、今季は1軍登板のないまま引退を迎えた上原投手。インターネット上はねぎらいの声であふれ返り、福岡ソフトバンクホークス・石川柊太投手は「憧れの選手でした。お疲れ様でした」とメッセージを送っている。また、公式ツイッターで引退表明に触れたレッドソックスからは「Wish him nothing but the best to the Red Sox Ninja!(レッドソックス・忍者に心から幸せを願っています)」とのエールが。

 ファンからもメッセージが殺到しており、「イチローに続いて、また球界人気を支えた名選手がマウンドを去るのか。本当にさびしくなる」「エリート集団の巨人にあって、上原投手は異質な存在だった。まさに“雑草魂”という言葉を具現化した名投手だと思う」「『若手にチャンスを与えてほしい』とは、苦労を積んできた上原投手らしい言葉。最後まで感動させてくれる素晴らしい選手ですね」といった声が上がっている。

 一方で、議論されているのが「名球会入り」についてだ。上原投手の成績は、日米通算134勝、128セーブ、104ホールド。「100勝・100セーブ・100ホールド」達成は日本人初の快挙で世界でも2人目となるが、名球会の入会資格である「200勝」「250セーブ」「2000本安打」(いずれも日米通算)のいずれもクリアしていない。そのため、上原投手が前述の「トリプル100」を達成した昨年11月には名球会総会で資格見直しについて議論されたが、結論は先送りとなった。

 ファンの間でも、かねて「そもそもピッチャーの入会基準のハードルが高すぎる」「これほどのレジェンドが入れないのであれば、もはや名球会など不要。もう少し柔軟に対応すべき」などの声が上がっている。そもそも、任意団体である名球会の存在意義については以前から疑問視する声も少なくなく、1995年に2000本安打を達成した巨人(当時)の落合博満氏は「名球会を目指してきたわけじゃない」と入会を辞退している。

 また、上原投手の引退によって、「巨人の次期監督レースにも変化が生まれそうだ」(スポーツライター)という。

「巨人は強引に高橋由伸を引退させて監督に据えたものの、成績不振から交代せざるを得なくなり、候補者不足が露呈。現在の原辰徳は松井秀喜や阿部慎之助など次世代の人材、あるいは高橋再登板に向けての“つなぎ”であることは明白です。上原は国内では巨人一筋で、実績も人気も申し分ない。高校時代は補欠で、一浪して大学に入った苦労人が巨人でエースとして花開いたというストーリー性も持ち合わせており、イメージも良い。ただでさえなり手の少ない巨人監督の有力候補に上がってきてもおかしくないでしょう」(同)

 引退後の上原投手は、どのような道に進むのか。後進の育成を望むファンも多いはずだ。
(文=編集部)

『いだてん』第19話、またも壮大な肩透かし…箱根駅伝誕生秘話をあえて盛り上げない謎脚本

『いだてん~東京オリムピック噺~』公式サイトより

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第19話が19日に放送され、平均視聴率は前回と同じ8.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 今回は、現代でも絶大な人気を誇る箱根駅伝の誕生について描く内容だと予告されていた。日本人初のオリンピック選手としてマラソン競技に出場した金栗四三が箱根駅伝の創設に深くかかわった事実はあまり知られていないが、大河ドラマとしては格好のネタである。盛り上がりに欠けたここ最近の回を我慢して見ていた視聴者も、箱根駅伝誕生の過程を描く回ならさぞかしドラマチックな内容になるだろうと期待していたはずだ。

 ところが結論から言うと、その期待は大いに外れた。どうやら脚本の宮藤官九郎は、箱根駅伝誕生のいきさつを波乱万丈な成功物語に仕立てることには、まったく興味がなかったらしい。アメリカのロッキー山脈を越える駅伝の予選会を開くにあたり、平地より高地がいいだろうという金栗の発案で箱根駅伝が生まれた――という誕生秘話は、アバンタイトルの冒頭であっさり終了。肩透かしも甚だしい。

 ちなみに前回も、ゴム底のマラソン足袋誕生というドラマにするのに格好のエピソードをあっさりスルー。金栗(中村勘九郎)が「足袋の底をゴムにしてほしい」と突然言い出し、足袋屋の黒坂辛作(三宅弘城)が後日完成品を持ってきた――という描写だけで終わらせてしまった。こうなると、なんの意地を張っているのかわからないが、クドカンは誕生秘話や開発秘話など、「紆余曲折の末に成功に至る汗と涙のエピソード」を描くのを意図的に避けているとしか思えない。つまり、ドラマとして盛り上がりそうなベタな展開を回避しているという意味だ。

 もちろん、ベタな展開を避ける脚本が悪いわけではない。『踊る大捜査線』(フジテレビ系)の制作陣がそれまでの刑事ドラマの王道であった『太陽にほえろ!』を徹底的に研究し、その「王道展開」をことごとく避ける手法を採って大成功したことはドラマファンの間ではよく知られている。だが、前回の『いだてん』第18話は、「ゴム底のマラソン足袋誕生」というベタな盛り上がりポイントをあえて回避したものの、代わりになる軸のストーリーが存在しない、いわばヤマもオチもない回のまま終わった。

 では、今回はどうだったのだろうか。視聴者の声は、賛否両論かなり割れている。「あえてわかりにくくしている」「視聴者を突き放している」といった批判がある一方で、「久しぶりにおもしろかった」「今回は落語が邪魔しなかった」「駅伝と落語がちゃんとかかっていて、よく練られていた」と称賛する声もかなり多い。

「わかりにくい」との意見は初回からずっと出ているが、今回、さらに一部視聴者を混乱させたのは事実だ。何しろ、古今亭志ん生(ビートたけし)の若き日・美濃部孝蔵を演じる森山未來が、突然志ん生の前に姿を現したのだ。「まさかのタイムトラベル?」と思った人も少なくなかったようだ。種を明かせば、この回で森山が演じたのは志ん生の若き日の姿ではなく、やはり落語家として活躍している志ん生の2人の息子たち。息子が父の若い頃に似ているのは当たり前なのだから、キャスティングとしておかしくはないが、かなりトリッキーだったことは否めない。

 とはいえ、森山がこの回に限って、志ん生の息子を演じたことは字幕でも台詞でもしっかりと説明されており、これをわかりにくいと感じるようなら、ドラマを見るのをやめたほうがいいレベルである。

 むしろこの場面については、森山の演技を絶賛する声が圧倒的に多かった。森山をここで起用したのは演出担当の大根仁の案だというが、これに応えた森山もすごかった。破天荒な孝蔵とは見た目も雰囲気も話し方も全然違うのはもちろんのこと、流ちょうで聞きほれるような語り口で2人の落語家をしっかりと演じ分けてみせた。「美しい」という言葉がぴったりである。視聴者からも「本当にすごい役者さんだと思う」「天才がいた」「とんでもないものを見せられた」「あれはバケモノだ」などと絶賛が相次いだ。箱根駅伝誕生秘話をあっさりスルーした分の代わりとなるヤマ場がこんなところに用意されていたとは、思いもよらなかった。

 落語パート自体も、五りん(神木隆之介)が書いたネタをもとに第1回箱根駅伝の様子を振り返るというもので、本編としっかり絡んでいた。いつもは金栗を中心とした日本マラソン界の歴史をたどる物語をぶつ切りにして落語パートが入ってくることが多いが、これなら逆にストーリーが整理されて見やすくなる。

 ここに、「駅伝の噺だから落語家がリレー方式で演じる」というネタをねじ込んできたのはクドカンらしいが、それによってこの第19話全体が、志ん生による即興のサゲ「マラソンのないオリンピックなんて、黒豆のないおせち料理みたいなもんです」できれいにまとまった。志ん生はこの回で何度もおせちに黒豆が入っていないことに不満を呈していたが、それが伏線だったというわけだ。ここまで見せ場たっぷりの落語パートを見せられては、箱根駅伝誕生秘話をあっさり終わらせたのも納得がいく。クドカンが描きたかったのはそこではなく、落語パートだったのだとはっきりわかるからだ。

 駅伝の結末についても興味深い描き方がなされた。焦点が当たったのは優勝者ではなく、ゴール目前で転倒し、足をひきずりながら決死の表情でゴールを目指す2位の選手。昨年、骨折した駅伝選手が這ってたすきをつなぎ、賛否両論が沸き起こった出来事をほうふつとさせる。だが、劇中では四三をはじめ関係者も観客たちも、誰ひとりとして選手の体を心配しない。むしろ大声援を送り、ゴールの瞬間は皆で歓喜する。嘉納治五郎(役所広司)にブレーキを掛ける役回りだった岸清一(岩松了)ですらすっかり長距離競技のとりこになり、「こんな感動的なレースなら絶対(オリンピックで)やるべきです!」と嘉納に進言した。スポーツの持つ魔力に観客がいとも簡単に熱狂させられる様を、一歩引いたところから見事に表現したといえよう。

 さて、次回は金栗が2度目のオリンピックに参加するものの、またもや結果を出すことができなかったところまでを一気に描くようだ。これまでの傾向から予想すると、金栗がマラソンを走る場面自体はヤマではないと思われる。クドカンはその代わりにどんな見せ場を用意しようとしているのか、大いに気になる。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

『ロンハー』深夜枠に降格後も評判最悪…ロンブーは以前のアナーキーさを取り戻すべき

2013年9月によしもとアール・アンド・シーより発売された『ロンハー』DVD版である『ロンドンハーツ vol.7』

 この4月から放送時間帯が深夜枠に変更となった、ロンドンブーツ1号2号がMCを務めるバラエティ番組『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)。2001年から長らくゴールデン帯で放送されていた同番組だが、ここ数年は低視聴率にあえいでいたため、深夜帯への事実上の降格となった形だ。とはいえ芸人バラエティの“最後の牙城”ともいわれ、足掛け20年にも及ぶ長寿番組のリニューアルである。その結果は功を奏しているのか? 人気番組を多数抱えるある放送作家は、次のように分析する。

「業界内でも注目度の高かった今回のリニューアルですが、やってることは前身番組の『金曜 ロンドンハーツ』と一緒。ドッキリ企画や芸人格付けなど、既視感ばりばりの企画をほぼ同じメンツでやってます。このリニューアルには、相当肩透かしを食らいましたね。ロンハーが久々に深夜枠に移るということで、『イナズマ! ロンドンハーツ』時代のような“素人いじり”をメインとした番組になるのではないかともいわれてましたが、やはり難しかったんでしょう。コンプライアンスが叫ばれて久しい昨今、素人をメインに据えることほど面倒くさいものはありませんから。

 でも、有吉弘行、ザキヤマ(山崎弘也)、狩野英孝など、ギャラがそんなに安くはない人気芸人を相変わらず出演させているのは『さすがは“元人気番組”』ともいえますが、当然ゴールデン帯時代ほどの予算があるわけではないので、編集が妙に粗いのが気になりますね。予算が潤沢なバラエティにはよく使われる効果音や面白テロップなどがかなり少なくなり、安っぽくなっているのも気になります。視聴率20%を超え、ドッキリ企画のために数千万円を使って家を建てたりもしていた『ロンハー』の黄金期を知ってる僕らからすると、今回のマイナーチェンジはかなり悲しい気持ちになってしまいます。深夜2時からというド深夜でありますが、同じスタッフチームで作られている『テレビ千鳥』のほうが、まったくの低予算ながら、攻めに攻めまくっていて面白いですよ」

本当はアナーキーなロンブー

 3月に行われた説明会で、テレビ朝日の赤津一彦編成部長は『ロンドンハーツ』の深夜枠への移動に対して、「撤退とは考えていません。若者がターゲットなので、プライム帯よりも番組の将来性がある。今よりもアグレッシブに攻める企画ばかりになる」とコメント。しかし実際は、「さほど攻めてはいない」との評価を受けているようである。

「23時20分から始まる『ネオバラ枠』はテレ朝が長らく力を入れている深夜枠であり、今までも『ココリコA級伝説』『オーラの泉』『お試しかっ!』など、ネオバラ枠で人気に火が着いてゴールデン帯へと昇格した番組がたくさんあります。しかし現在のラインナップは、ロンハーと同じくゴールデン帯から降格した『陸海空 こんなところでヤバイバル』、今もゴールデンでたびたび特番が組まれる『アメトーーク!』のように、有吉とマツコ・デラックスの『かりそめ天国』以外はすべてゴールデン帯を経験済み。つまり、ネオバラ枠の持つ意味合いがすでに変化してしまったのだということであり、『ゴールデン昇格』というのが、そもそも目標として機能しなくなりつつあります。今後はより若者向けにシフトし、AbemaTVとの連動企画を増やして、さらなる独自路線を突き進むといわれてますね」(前出の放送作家)

 となると、『ロンハー』の巻き返しをまだまだ期待していいということなのか? ある制作会社のディレクターは次のように語る。

「テレ朝に20年も貢献してきたロンブーをまだ切るわけにはいかない、ということなんだと思いますが、同時にここからの淳さんの巻き返しに期待しているのも事実です。もともとはアナーキーな芸人さんですから、再び深夜にフィールドを移せば、AbemaTVとの連動も含め、彼なりの持ち味をもっと出せるはず。今はまだゴールデン時代の遺産でなんとか成立してますが、今後はより攻めた企画にしないと、視聴者はもっと離れていくに違いありません。

 ただ、今の淳さんは娘さんの子育てにかなりはまっており、『昔ほど攻めまくる芸人ではなくなった』と周囲のスタッフからもいわれているようです。なんなら、キングコングの西野亮廣さんやオリエンタルラジオの中田敦彦さんのほうが、ネットを駆使して素人ともうまく融合し、話題を振りまいてますよね。もちろん子育ても大切だと思いますが、いまはロンブーにとっても正念場。この1年で結果を出さないと、番組だけではなくロンブー自体が終わってしまう可能性もあると思いますよ」

 若者から根強い人気を誇り、熾烈を極めるバラエティ業界で長らくトップに君臨し続けてきたロンドンブーツ1号2号。彼らの原点である深夜帯で、果たして人気芸人の面目躍如なるか? これらかも注目していきたい。
(文=藤原三星)

藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara

「SGボートレースオールスター」ドリーム戦展望 峰竜太が悲願達成に全力を懸ける

「SGボートレースオールスター」ドリーム戦展望 峰竜太が悲願達成に全力を懸けるの画像1

 第46回ボートレースオールスターが福岡ボートレースで開催される。ファン投票で選ばれた52人が令和初のSGに臨む。初日ドリーム戦はファン投票上位6名が選出される。

1号艇 峰 竜太(佐賀 4320)
2号艇 毒島 誠(群馬 4238)
3号艇 桐生順平(埼玉 4444)
4号艇 大山千広(福岡 4885)
5号艇 井口佳典(三重 4024)
6号艇 小野生奈(福岡 4530)

 峰竜太は2位以下に1万票の差をつけてファン投票1位に選ばれ、3年連続のファン投票1位という快挙を成し遂げた。

 昨年のオールスターでは準決勝敗退、一昨年は予選落ちと人気に応える活躍が出来なかった峰が三度目の正直と出来るだろうか。

 ファン投票1位での優勝はオールスター46年の歴史で僅か2人のみという超難関。並々ならぬプレッシャーを跳ね除けて優勝を果たしてファンに恩返しをしたい。

「やはり峰が優勝候補でしょう。SGでは10連続で予選突破しており、優勝戦線には必ず絡んできています。福岡は3月の一般戦に出走して試走済みなので走りやすいはず。以前は大事な場面でのやらかしが目立ちましたが、グランプリ制覇後はそのようなところは少なく、今回こそオールスター優勝できるのでは」(関係者)

 2号艇毒島もここから勢いづきたい。今年も好成績を残してはいるが、未優勝と物足りない。ボートレースクラシックでのドリーム戦では2号艇ながら不発もあった。だが昨年の大活躍は夏頃からだっただけに上半期の成績よりは実戦足を見ていきたい。

 3号艇は桐生。今年は正月戦で2度目となる完全優勝、2月の平和島地区戦も優勝を果たした。オールスターは8度の出場中4度の優出と高相性なのも見逃せない。福岡ボートレース場は3コースの入着率が全国トップなだけに峰、毒島は警戒が必要だ。

 ファン投票4位に選ばれたのは大山千広(福岡 4885)。さすがにこのメンバー相手に勝つのは難しいが、経験を積むための舞台と思って、堂々と立ち回ってもらいたいところだ。

 しかし大山はここぞの場面で常にドラマチックな勝利を飾ってきており、初SGドリーム戦という大舞台でも華々しい結果を残せるのではと期待もかかる。

「大山のモーター29号機はエース機以上の足があると選手間で噂になっていました。スリット数値がかなりいいので、軽量の大山にはベストなモーターでしょう。こういった場面での活躍が目立ちますし、4枠からのカド捲りは充分に有り得るのではないでしょうか」(関係者)

 井口は5号艇での3連対率68%の高い数字を誇っており、どんな状況でも展開をついてくる。しかし福岡水面での実績はいまひとつのため、過信はできない。

 ドリーム戦6枠は地元の小野生奈(福岡 4530)。ドリーム戦に女子が二名出場することもこれまでに例がなく、昨今の女子レーサーの人気ぶりが伺える。

 一昨年のオールスターでは準決勝出場の好成績を残し、昨年は女子賞金王に輝いている。今年も好ペースを落とさず、今年も2度の優勝と結果を残してきており、今回こそは史上初の女子SG優勝を目指す。

【展望】

 福岡ボートレースはインコース勝率50%と全国的にもインコース信頼度はかなり低い。1マークが外に向かっているため、他艇よりスタートが遅れてしまうと挽回するのが難しくなってしまう。

 更に福岡ボートの特徴である「うねり」が1マークに潜む。「うねり」の発生は風や潮の影響によるものだが博多埠頭から発着する船舶の影響でも発生するので注意が必要だ。

「うねり」は目視では判断が出来ず、選手らも1マーク直前まではっきりとはわからない。そのためインコースの選手は思い切って全速ターンが出来ず、1マーク前にレバーを落とすこととなる。その状況でアウトコースから全速で捲りがくると対応ができない。

 アウトコースも「うねり」が発生しているときは、船が外に流れてしまうため力のないモーターでは捲りにいけず不発に終わることも多い。「うねり」によって難水面となるので、走り慣れている地元勢や水面相性の良い選手から狙っていきたい。

 中心はやはり峰竜太。当地水面は過去にSG、G1優出、3月の当地一般戦でも優出と実戦足は信頼できる。得意の1コースから逃げ切りをはかる。

 前検後は「直線足が気に入りました。あとは出足をちょっと調整するだけ。優勝できそう」と自信を伺わせ、さらに「大山千広ちゃんが勝つとおもしろいよね。ただレースなんで僕が上だと見せつけます」と余裕の発言まで飛び出していた。

 毒島は「全体的に今ひとつ」という感想通りに前検時計も目立ったところはない。狙うなら峰の懐だが、現状では展開待ちに期待をかけるほかない。

 桐生は前検時計トップを叩き出したが本人は不満気味。伸び足がいいモーターなので出足を求める桐生としては納得いかないようだが、本番までには出足も仕上げてくる。

 また当地は展示タイムトップをマークした選手が船券に絡みやすいので、前検タイムトップの桐生は峰の対抗として注意したい。

 大山のモーターは隠れたエース機だが、大山自身は「行き足」が重たいとコメント。モーターの近況を見るとかなり上向きの良機と思われるが、プロペラ次第なところもあり大山の調整力次第。なんとか行き足を仕上げて、カドから憧れの峰に襲いかかりたい。

 井口、小野の両者は「このままでなにもしない」とモーターに自信あり。前検時計は目立たないが、前検から本番まで微調整で済むのはメンタル的に有利だ。

 大山の全速捲りでも桐生と峰の争いでも、井口、小野は差しに入る。特に小野は地元水面だけに差しの入り方は熟知しており、狙いは定まっているだろう。小野の差し切りは必ず抑えておきたい。

【買い目】
(本命)
①-③⑤-②③⑤⑥
③-④⑤-①④⑤⑥
(穴)
⑤⑥-⑤⑥-①②③④