パチンコ「貴重な資料」を公開! 歴史を学べる「パチンコ誕生博物館」開館

 かつては34兆円産業までのぼりつめたパチンコ。娯楽の多様化、規制によるギャンブル性の低下、パチンコ依存症の指摘などによって遊技人口は減少傾向にあるものの、それでも20兆円近い売上があり、日本を代表する娯楽産業のひとつとして多くのファンに愛されている。

 パチンコのルーツは、今から100年以上前に誕生した『ウォールマシン』といわれている。このウォールマシンが大正時代、日本に渡来。これを参考にした日本製の遊技機が誕生し、既に第2次世界大戦前には楽しまれていたという。

 そんな中、ゲームとしてではなく徐々に「お金が払い出される」マシンも登場。言うまでもなく問題視されたが、その都度、製造業者やパチンコ店経営者の創意工夫によって法律の範囲内でサービスは提供され続けた。

 1937年から終戦までの約8年間は他の娯楽と同じく禁止されたものの、終戦後にかつてパチンコ店を経営していた正村商会の正村竹一が営業再開と共に遊技機の開発にも尽力すると、新たな盤面の構成『正村ゲージ』を考案。既存機になかった視覚的演出は多くのファンを生み出し、現代パチンコの礎を築いた。

 当時のパチンコはいわゆる「手打ち式」。ハンドルを回せば連続で玉が弾き出されるものとは異なり、文字通り、玉をひとつひとつ投入口に入れて打ち出すシステムであった。

 この手打ち式パチンコは当然、今となっては歴史を知る上でもとても貴重な資料となるが、このほど、そんな貴重な遊技機を実際に見ることができる博物館が横須賀の馬堀海岸にオープンした。「パチンコ誕生博物館」である。

 6月28日に開館した同博物館は、2008年に『パチンコ誕生 シネマの世紀の大衆娯楽』を出版した杉山一夫氏のコレクション等を展示。先の手打ち式パチンコをはじめ、かつてはパチンコの元祖とされていた『コリントゲーム』の歴史についても知ることができる。

 また、他のコーナーでは「正村竹一の発明とされる『正村ゲージ』は調査の結果、正村商会よりも早く他社が製造していることが分かった」といった非常に興味深い展示もあるとのこと。正村ゲージの真実を解き明かすもので、杉山氏が直接、説明してくださるそうだ。

 開館は毎週日曜日の11時から17時までで、入館料は500円。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から当面は予約制とのことで、予約はHP上で受け付けている。

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JRA「関東のご意見番」蛯名正義の後継者にあの騎手が名乗り!? 「怪我の功名」でリーディングも現実的に

 年明け早々に落馬負傷のため、戦列から離れていた三浦皇成騎手だが、3月に復帰して以来、勝ち星を量産している。6月28日現在ですでに37勝を挙げており、関東リーディングでも4位につける活躍を見せている。

 絶好調の理由として、以前よりメリハリの利いた競馬ができていることも大きいようだ。行くときは積極的に逃げ、時には大胆な後方待機を選択するなど、騎乗の幅が広がったと、周りの騎手は分析していた。

 その一方で、これまでと違った一面も見せている。

 落馬負傷により、以前にも増して馬込みで神経を使うようになったらしい。何度も大怪我をしていることもあり、過敏になっていて、危ない騎乗をしている若手がいると、ときには周りも引くくらいの大声で注意することもあるようだ。

「山田敬士騎手や菅原明良騎手、原優介騎手なんかはよく呼ばれているようですよ。レース後に『俺が何度も声をかけているだろ。気をつけろ』と師匠の調教師の前でも叱咤することもありました。同じレースに騎乗していたほかの騎手は『ちょっと怒り過ぎじゃないか』と若手騎手に同情する声もあったみたいです」(競馬記者)

 また、パトロールビデオを確認すると、若手騎手に顔を向けて怒っている姿を見掛けることもある。このときは萎縮した若手が外へ張る感じで下がり、結果的に三浦騎手に進路を譲るような形になっていた。三浦騎手がフェアプレーを強く意識していることが伝わって来る一幕だったかもしれない。

 別のレースでも、若手騎手が放馬した馬を自ら捕まえようとしているのを目撃し、遠くから「ジョッキーは近づくんじゃねえよ。係の人に任せておけ!」と無観客の競馬場に怒号が響いた。声の主は勿論、三浦騎手だ。注意を受けた若手騎手は馬から離れて三浦騎手の元へ行って平謝りしていた。

「関東は蛯名正義騎手が以前は若手の教育係のようなポジションでしたが、今は騎乗数も少なくなったため、注意する騎手がいなくなってしまいました。横山典弘騎手や柴田善臣騎手などのベテランはあまり大声を出して言うタイプではありませんし、中堅の石橋脩騎手や津村明秀騎手も穏健派ですから。

そこでキャリア的にも実績的にも三浦騎手が後継に収まったわけです。ですが、注意している内容は決して理不尽ではなく、何度も大怪我を負った経験やジョッキーとしてのプライドがそうさせるのでしょう」(競馬記者)

 以前にも増してフェアな騎乗を心掛けるようになった三浦騎手。順調に行けば、自身初となる関東リーディング獲得の可能性も十分あるだろう。強敵となるD.レーン騎手は短期免許の期間満了もそう遠くはない。

 同じく怪我から復帰した戸崎圭太騎手も、先週は7鞍に騎乗して4勝をあげる大活躍を見せたように、復調を感じられる好成績だった。今後の関東は怪我から復帰した三浦騎手と戸崎騎手を中心に回っていきそうだ。

パチンコ「ドラマチックな大当り」が魅力!? 「激熱パターン」が用意された「奥の深いゲーム性」が特徴!!

 かつて老人が愛好する音楽といえば演歌であったが、今の若者がその歳を迎えた頃には、しまくちゃのジジイが「けど否めない~、でも離れがたい~」とか歌っているのであろうか。かくいう私もカラオケ教室で「やだねったらやだね」と歌っているとは思えないのである。

 しかし、アメリカではいまなおカントリーミュージックは人気のジャンルで、爆発的ヒットを量産する売れ線のホットな音楽だともいう。日本でもTik Tokと結びついて跳ねるみたいな偶然性に頼らずとも平場で脈々と演歌が受け継がれていきそうな気がしないでもない。知らんけど。

 そんな演歌の大御所といえば真っ先に名前が挙がるのが北島三郎であろう。ご存知「サブちゃん」の相性で親しまれ、数々の大ヒット曲を世に放った大物中の大物であるが、このサブちゃん、パチンコ・パチスロ業界的にも因縁浅からぬ人物で、オリ平と中心にさまざまな北島三郎ブランドの機種をリリースしている。

 その中でもっとも新しい機種は、羽根物『CRA祭りだ!サブちゃん』となる。回転体役物を搭載した羽根物で、ノーマルルートとスペシャルルート、期待度の異なる2つのアプローチから大当りを楽しめる内容となっている。

 羽根から入賞した玉はまず直下のシーソー役物によって左右どちらかのルートに振り分けられる。左に行けばノーマルルート、右に行けば激アツのスペシャルルートである。

 スペシャルルートは3つの回転体で構成され、歯車型の前2つの回転体によってV穴が搭載された本丸回転体に運ばれる。本丸回転体は穴が3つで大当り確率は1/3となる。

 このルート自体に手の込んだ仕掛けは一切なく、必ずこの本丸回転体まで運ばれ、最後のタイミングによって大当りの当否がわかるというシンプルにアツくなれる機構となっている。

 一方のノーマルルートは雨樋のような筒型のアクリルコースを通り、下段ステージで待ち構える8穴回転体によって物理的な大当り抽選が展開されるが、途中にはいくつかの仕掛けがある。

 まず1つめがL字型に変化するアクリルコースの手前にある滞留ポイントである。これによって流れてきた玉がそのまま通過させるのではなく、一瞬の間を作り出し、落下タイミングにランダム性を与えるのである。

 そして、アクリルコース出口には「祭」と書かれた可動体が用意されていて、出入りを繰り返すこの可動体に玉が弾かれると無事回転体での大当り抽選を受けられるようになる。玉が可動体に接触しない場合はそのままストレートに進みハズレ穴に吸い込まれる。



 さらに回転体にもひとつ工夫が施されている。回転体に刻まれた8つある穴のうち赤いポケットは大当りのVゾーンだが、その反対側に設置された緑ポケットに玉が入賞すると回転体の右横に用意されたまつりちゃんギミックが本丸回転体へと運び出してくれるようになっているのである。

 これがリプレイルートで、ノーマルルートからスペシャルルートへと昇格させてくれる逆転コースなのである。ノーマルルートでも激アツパターンが用意された奥の深いゲーム性が特徴となっている。

 ただ、構成の役物だと奇跡的なV入賞パターンは発生しない分、意外性という意味では物足りなさを覚える向きもあろうが、本機にもドラマチックな大当りは存在する。

 それは役物に2個入賞した時に発生する可能性がある。ひとつがスペシャルルート、もうひとつがノーマルルートに行くとして、基本的には期待度の高いスペシャルルートの行方を追うだろう。玉が歯車役物を2つ超え、Vの回転とタイミングはどうだと目が釘付けになり、惜しくもV手前のポケットでああ残念と天を仰ごうとしたその時、なぜか液晶画面に「V」の文字が表示されているではないか。

 どうやらノーマルルート側の玉が8つ穴回転体のほうで大当りをしたようなのであるが、ちょうど大当りのタイミングが同期した関係で、サプライズな展開となってしまった。実戦ではこういったパターンもあるので、やはり羽根物は面白いのである。

(文=大森町男)

JRA宝塚記念(G1)“ドバイの呪い”は健在……。クロノジェネシス快勝も、「ライバル」にのしかかるはブービー馬がつないだバトン

 28日、稍重の阪神芝コースで行われた春のグランプリ・宝塚記念(G1)は2番人気クロノジェネシスが2着に6馬身差をつけて優勝。さらに3着馬はそこから5馬身遅れてゴールと、まさにクロノジェネシスの独壇場のレースとなった。

 これまで良馬場以外のレースで3戦3勝の成績を誇っていた道悪巧者が、そのポテンシャルをいかんなく発揮した結果だ。4歳牝馬のニューヒロイン誕生に、海外挑戦やアーモンドアイとの国内最強決定戦に早くも期待が高まっている。

 その一方で、クロノジェネシスのライバル・カレンブーケドール(牝4歳、美浦・国枝栄厩舎)は宝塚記念の結果を受けて、評価を上げた1頭ではないだろうか。

 これまで重賞未勝利ながらも、重賞で2着4回(うちG1が3回)の好走をしているカレンブーケドール。あと一歩、勝利に届かないシルバーコレクターだが、クロノジェネシスとの対決は1勝2敗で、着順の差はすべて「1」と接戦を演じているライバルだ。

 宝塚記念は稍重の馬場を味方につけたクロノジェネシスが「6馬身差」という圧巻のパフォーマンスを見せた。カレンブーケドールは重馬場で行われた今年の京都記念(G2)で、クロノジェネシスに「2馬身半差」の2着に敗れている。単純比較はできないが、もしカレンブーケドールが宝塚記念に出走していれば、2着に入っていたのではないかという見方もできるだろう。

 クロノジェネシスと同じく、今後の活躍に期待がかかるカレンブーケドール。だが、宝塚記念の結果は同時に「不安」を増大させるものでもある。

 注目するべきはグローリーヴェイズが5番人気ながら、まさかのブービー17着に敗れた結果だ。

 今年、カレンブーケドールは2月の京都記念後、ドバイ遠征を予定していた。だが、ドバイワールドカップデーは開催中止となり、すでに現地入りしていた出走予定馬はトンボ返りとなってしまった。サウジ転戦組とは違い、1戦もすることなくドバイを後にしたトンボ返り組は帰国後の成績が不思議と奮わないのだ。

 唯一、アーモンドアイが帰国初戦のヴィクトリアマイル(G1)を勝利したが、それ以外はすべて初戦を敗れてしまっている。さらにアーモンドアイは2戦目の安田記念(G1)を圧倒的な1番人気ながら3着に敗れ、ラヴズオンリーユーも単勝1.8倍に支持された鳴尾記念(G3)で2着に敗れてしまうなど、“ドバイの呪い”ともいえる状況だ。そのため、グローリーヴェイズには状況を一変させる走りに期待がかかったが、大敗してしまった。

 どうやらこのジンクスはまだ続いているようだ。

 未だに帰国後の初戦を迎えていないカレンブーケドール。次走の予定は発表されていないが、復帰戦は宝塚記念の勝ち馬のライバルということで注目を集める一方で、宝塚記念のブービー馬がつないだ呪いの払拭にも注目が集まるだろう。

 復帰戦は悲願の重賞勝利とともにドバイ組の無念を晴らして欲しいものだ。

大阪府民を欺く関電を全力で守る“ヤメ検弁護士”のお歴々…大阪地検の刑事起訴を絶対阻止

 1987年頃から約30年にわたり、関西電力の幹部ら75人が原発の立地する福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から巨額の金品を受けていた問題で、関電は6月16日、八木誠前会長、岩根茂樹前社長ら旧経営陣5人に対し総額19億3600万円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こした。

 現役経営陣がOB経営陣を提訴する異例の事態ではあるが、電気料金を支払う消費者のためなどではない。6月25日に開かれる株主総会対策の「馴れ合いパフォーマンス」だ。これを見越した株主5人が23日、旧現経営陣と監査役計22人に対し、約92億円の損害賠償を関電に支払うよう求める株主代表訴訟を起こした。関電が訴えた被告5人に加え、現在の森本孝社長や八嶋康博常任監査役ら17人。

 訴状によると、旧経営陣らは森山氏から多額の金品を受領した問題を放置、福島第一原発事故の影響で原発稼働が停止して経営悪化し、減額した役員の報酬を秘密裏に補填し、会社の信用を損ない、損害を与えたとしている。

 大阪市内で記者会見した原告弁護団の河合弘之弁護士は「秘密補填などを知っていた現経営陣の責任も免れない。5人では責任追及の範囲が不十分。馴れ合いの和解を防ぐためにも提訴に踏み切った。責任を厳しく追及したい」などと語った。

株主に大嘘通知

 こうしたなか、注目したいのは朝日新聞のスクープである。社外取締役に就任予定の佐々木茂夫弁護士について関電が「事前にはこれらの問題(筆者注・森山氏からの金品授受)を認識しておりませんでした」と株主に虚偽の通知をしていたと報じた。実際には18年2月に金沢国税局に関電が税務調査された際、関電の社外監査役就任直前だった佐々木氏は、課税処分や刑事訴追の可能性について相談を受けていた。朝日新聞の指摘を受けて関電は「佐々木氏に関しても、(中略)その一端を知る立場にありました」と修正通知した。朝日新聞に対し佐々木氏は「全然相談を受けていないなどということは言わない」などと語っている。

 関電が森山問題を元大阪高検検事長の大物検察OBで社外監査役に就任予定だった佐々木氏に相談しないはずはない。そもそも大企業が「ヤメ検弁護士」に高給を与えて重宝するのは、こうした「有事」で働いてもらいたいからだ。それが佐々木氏について株主にシャアシャアと大嘘をついていた。

刑事起訴を阻止するために関電が敷いた布陣

 昨年秋に発覚した「ドン森山氏」による関電の金品授受問題。振り返ってみれば、最初に内部調査の報告書をつくったのは、関電のコンプライアンス委員で調査委員会の委員長だった小林敬弁護士だった。小林氏は厚労省幹部だった村木厚子氏が郵便不正の冤罪で大阪地検特捜部に起訴された際の同地検検事正である。

 関電は当初、この報告書すら黒塗りだらけにして公表し、世論の怒りを買い、当時の八木会長や岩根社長が改めて会見したが、森山氏の「強圧的な人格」に帰せしめて逃げていた。

 そして同問題の第三者委員会の委員長に関電は但木敬一元検事総長を据えた。但木氏は「第三者」の独立性を強調、今年3月の最終報告で「内向き体質」とか「コンプライアンス違反」などと糾弾して見せたが、刑事告発は見送った。しかし筆者には、もともとが刑事告発させないための第三者委員会に見えた。そして今回の佐々木氏。すべて「森山問題」で大阪地検による刑事起訴を阻止するために関電が敷いた布陣としか思えない。

 関電が提訴にあたり請求している賠償額19億円には、金品を受けた経営幹部が森山氏のかかわっていた会社へ随意に発注した工事費などについて、競争入札した場合の安い受注額との差額分が考慮されていない。関電は「算出できなかった」などとごまかしているが、これこそがもっとも重要な部分のはずだ。あえて算出しないのは、これが会社法の背任罪や贈収賄など刑事事案にかかわる根幹部分だからである。ちなみに関電幹部らは同罪で市民団体に大阪地検へ刑事告発されている。

馬鹿を見る大阪市民

 さて、関西電力の筆頭株主は大阪市である。大阪市民から見れば、福島第一原発事故で原発が停止し、値上がりした電気代を払わされ、さらに納めた市民税は関電の株購入のためにも多く使われていた。「役員報酬はカットするから値上がりにご理解を」など真っ赤なウソだった。元副社長の豊松秀己氏は退任後、エグゼクティブ・フェローとして月490万円を密かに受けていた。

 会見後、大物ヤメ検について河合弁護士は筆者に「東京電力でも経産省OBなどは組み込んでいるが、検察OBはいないのでは。関電は検察OBがよほど好きなのでしょうが、明らかに癒着というしかない」と話してくれた。

「伏魔殿・関西電力」を守り続けるのは「大物ヤメ検」たちなのだ。

(写真と文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

ファーウェイから中国共産党へ情報流出…グーグル元CEO「間違いない」発言、二重の意味

 6月18日、グーグルの元CEO(最高経営責任者)で現取締役顧問のエリック・シュミット氏が、英BBCラジオでファーウェイを通じた中国への情報流出は「間違いない」と答えたことが話題となった。

 米国防省のアドバイザリーボードを兼務するシュミット氏のこの発言には、二重の意味がある。ひとつは、ファーウェイ利用にはリスクがあるということを認めて、米当局に与するポーズを取って見せたということ。その裏では、グーグル自身が背後で中国に協力し、合法的に情報提供していることを追及された際の言い逃れに利用したいのではないかと考えられる。

 グーグルが米政府への協力を拒み、一方で中国政府の技術開発に加担してきたことは公然の事実だ。そのため昨年、フェイスブック取締役であるピーター・ティール氏から「国家反逆だ」、「FBI(連邦捜査局)によって捜査されるべきだ」とまで批判され、グーグルはリスクを避けるために、ファーウェイで共同開発していたスマートスピーカー製品の市場導入を見送るかたちで体裁を整えた。

中国政府検閲検索エンジン「ドラゴンフライ」

 もともと、グーグルは中国政府のために「ドラゴンフライ」と呼ばれる中国検閲アルゴリズムを組み込んだ検索エンジンも開発していたために、社内で従業員による反対の署名運動が高まった。中国国内の検索エンジンは、すでに中国政府によって「検閲済み」であるため、ドラゴンフライは中国「国外」向けのサービスとして中国検閲済みのサービスを中国人以外にも提供していくことを意味し、「自由世界」に憧れて入社したハッカーやエンジニアたちの反発を呼んだ。

 当初、ドラゴンフライのデータセンターは台湾に置くといわれていたが、昨年、ドラゴンフライ計画は中断されたと報じられていたので、台湾にデータセンターを追加することは断念されたかと思われていた。

 ところが、奇妙なことに「米国と台湾にあるグーグルのデータセンターの内部データ通信の需要を満たすために、米国内にあるグーグルのデータセンターを海底ケーブルで台湾に所在する同社データセンターに接続し、アジア太平洋地域全体のユーザーにサービスを提供する」と報道されている。新規の海底ケーブルを利用するということは、米台間を往来するデータ量が膨大になるということを意味するが、「なんのサービスを提供するためなのか」という疑問と、「冷却に多額の電気代がかかる亜熱帯気候の台湾を選んだ理由は何か」という疑問が浮上する。

今年4月に、グーグルはFCC(米国連邦通信委員会)から、米国と台湾の海底通信ケーブル使用の許可を取得した。米当局は国家安全保障上の懸念から、米香港間という米中を直結する初の海底ケーブルの使用許可を出さなかった一方で、台中の微妙な関係を考慮せずに、台湾に対して許可を出してしまったのだ。

米中デジタル冷戦の盲点「九二共識」

 グーグルがアジア太平洋のデータセンター拠点として選んだ台湾が、米中冷戦の盲点となっている。実は、台中関係は良好に見えないにもかかわらず、すでに台中間には海底ケーブルがつながっているのだ。

 親中派といわれた馬英九政権時代に、台湾金門島と中国厦門の間に中国通信事業3社と台湾通信事業大手中華電信によって海底ケーブルが敷設され、台湾と中国の間ではすでにデータが自由に往来している状態にあり、米台間での海底ケーブルの利用は中国に素通りになるリスクが残っている。

 以前から、台中間で検索サービスやデータセンターサービスを自由化する動きは、台湾学生による「中国の検閲を許すな」という運動で頓挫した「台中サービス貿易協定」のなかでも盛り込まれており、これを推進したのは、日本の経団連に相当する民間団体「海峡交流基金会(台湾側)」と「海峡両岸関係協会(中国側)」であった。両団体は台中経済界で重要な役割を占めており、1992年に両団体が合意した「九二共識」は国家間の合意であるかのように扱われてきた経緯がある。

 2016年、蔡英文政権に変わってからは、蔡総統は「九二共識」に対して否定的な発言を繰り返しているが、正式に九二共識を破棄するには至っていない。蔡総統は、九二共識の台湾側の代表団に参加していたので、総統となった現在なら海峡交流基金会を説得して正式に破棄することを求めることもできる立場だ。しかし、今年の再選時に九二共識には一切触れず、「台湾は既に独立国家なので独立宣言する必要がない」と巧みに独立宣言を避けたのは、大陸から来た親中派が上層部に多い台湾経済界を刺激しないためとみられる。

 米トランプ政権は、台湾半導体製造大手TSMCがファーウェイにチップを供給しているのを止めるべく蔡政権に水面下で相談してきたようだが、蔡総統も経済界への配慮があるためか結果が得られず、業を煮やした米政府が今年5月に規制を強化したことで、ようやくTSMCがファーウェイからの新規受注を止めるに至ったほどである。

 九二共識以降の台湾は、中国を脅威だと主張しながらも、ラファイエット級フリゲート艦事件やミラージュ事件のように、購入した戦艦や戦闘機の兵器や設計図面を中国に流出させてきただけでなく、米メモリ等の半導体技術を中国に移転するなどして積極的に中国の技術革新を支えてきた。本来の台湾人と大陸系の外省人で構成される台湾の二面性は米中冷戦の鍵となっている。

グーグルの狙いは44億人デジタル経済圏

 グーグルは、台湾の二面性を利用して、中国政府を支えようとしているのではないかと考えられる。米香港間の海底ケーブル利用が禁止されたなかで、中国政府が長年にわたって技術移転の入り口として利用してきた台湾の二面性を利用しようと考えないはずがない。

 グーグル自身は現在も“親中・反トランプ政権”的なスタンスを堅持しており、トランプ政権に対しては国境管理用の顔認識技術提供を拒否し、最近では人種差別を理由に警察に技術提供を拒否している。グーグルがそこまでしてトランプを叩き中国政府を支える理由は、中国政府が推進する「一帯一路」というビジネスモデルに乗ると、44億人経済圏がファーウェイ5G技術でつながることで莫大な利益が上げられることにある。拙著『米中AI戦争の真実』(扶桑社)でも言及したが、地球を網羅する中国通信インフラの上にスマートシティというプラットフォームが搭載されることで、検索サービスだけでなく顔認証やGPS情報等の監視技術、ビッグデータサービスを提供できる巨大な監視ビジネスが待っている。

 グーグルからすればトランプ政権は、「しょぼい客」ではあっても中国政府のような「上客」ではない。ところが、中国政府やファーウェイに肩入れしている様子がトランプ政権に見つかれば、国家反逆罪の対象になりかねない。そういった歯がゆい事情を抱えた末の発言が、今回のシュミット氏による「(ファーウェイを通じた中国への情報流出は)間違いない」につながっているのだろう。

 この44億人経済圏ビジネスモデルを餌にした中国の戦略は強固であり、米中デジタル冷戦の狭間に陥ろうが、コロナ禍に見舞われようが、日本の大企業が中国から離れたくないのは、単なる反日などではなく、日本政府のことを「しょぼい客」と捉えているためである。
(文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト)

深田萌絵(ふかだもえ)
ITビジネスアナリスト
早稲田大学政治経済学部卒 学生時代に株アイドルの傍らファンドでインターン、リサーチハウスでジュニア・アナリストとして調査の仕事に従事。外資系証券会社を経て、現在IT企業を経営。

花王の逆襲…「アタックZERO」圧勝で業界一変、アルコール消毒液20倍へ増産可能に

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日常生活が大きく変化した。マスク、手洗い、うがい、手指のアルコール消毒の4点セットが習慣化した。品薄状態が続いたマスクは最近、路上の出店などで、よく目にするようになった。白一色から、さまざまな色や柄のマスクが百花繚乱。スーパーやドラッグストアだけでなく飲食店や衣料品店でもマスクが並び、価格も急激に下落した。

 そんななか、「みんなで手洗い」を追い風にハンドソープは好調を維持している。ライオンの2020年1~3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高が前年同期比4.6%増の825億円、営業利益は3.1倍の187億円、純利益は3.9倍の135億円だった。本社の土地売却益に加え、ハンドソープ「キレイキレイ」が売れた。

 全社の売上高の7割弱を占める「一般用消費財事業」のうち、ハンドソープやボディーソープを含むビューティケア分野の売上高は77億円。同47.5%増だった。主力の歯ブラシや洗口液などのオーラルケア分野も新製品が好調で、10.5%増の149億円。洗濯用洗剤などのファブリックケア分野は3.5%増の135億円、台所用洗剤などのリビングケア事業は23.5%増の51億円だった。外出自粛の影響で家事をする時間が増え、台所用洗剤や洗濯用洗剤の売り上げが増加したが、ハンドソープの伸びは突出している。

「キレイキレイ」を3割増産

「キレイキレイ」はライオンの大ヒット商品である。1996年、O157が発生し、食中毒の集団感染が大きな社会問題になった。子どもたちをウイルスや菌から守るために「手洗いの習慣化」が徹底され、97年に「キレイキレイ」が誕生した。「バイ菌は怖い」という恐怖訴求型の市場に、「楽しく洗える殺菌ハンドソープ」という独自のポジションを確立。キレイキレイにするという楽しい習慣が子どもたちの間に広がっていった。2000年以降、ハンドソープ市場のNo.1ブランドとなり、ハンドソープの認知度を一気に高めた。

「8月をメドに香川県坂出市の工場に新たな製造ラインを設け、生産能力を従来の1.3倍に増強する」

 コロナ禍の影響で、ほとんどの企業が今期の見通しを「未定」、あるいは減収・減益とするなか、ライオンは20年12月期決算で増収・増益の強気の計画を打ち出している。20年12月期決算の売上高は前期比2.2%増の3550億円、営業利益は3.9%増の310億円、純利益は2.1%増の210億円を見込んでいる。「キレイキレイ」が好決算の先導役を果たす。

化粧品はインバウンド需要が消え失速

 花王の日用品セクターは、ハンドソープをはじめとする「ビオレ」シリーズが好調だった。20年1~3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高は前年同期比2.6%減の3377億円、営業利益は2.8%増の392億円、純利益は0.9%増の266億円。

 売上高の8割強を占めるコンシューマープロダクツ事業のうち、スキンケア・ヘアケア事業の売上は741億円と8.1%減った。「ビオレ」のハンドソープや手指の消毒液の売り上げは大きく伸びたが、外出制限の影響を受け、UVケア製品の売り上げが減った。欧米では店舗閉鎖を受け、ヘアサロン向けが激減した。

 ベビー用紙おむつ「メリーズ」などヒューマンヘルスケア事業は1.3%増の619億円、食器用洗剤などのファブリック&ホームケア事業は10.0%増の818億円と堅調だった。一方、化粧品事業は12.1%減の592億円、営業利益は1億円(前年同期は62億円)と大きく落ち込んだ。インバウンド需要が消えたほか、百貨店の休業が相次いだことから、口紅など化粧品の売上が急減。全体の2割弱を占める化粧品事業の落ち込みを他の部門で補いきれなかった。

花王はアルコール消毒液の生産能力を20倍に

 花王はアルコール消毒液を和歌山工場で4月下旬から増産体制に入った。昨年同期に比べて20倍以上の生産が可能になる。増産する商品は家庭向けの「ビオレu手指の消毒液」と、業務用の「ハンドスキッシュEX」の2種類だ。化粧品や紙おむつのインバウンド需要は期待できない。消毒液の大増産でインバウンド需要の落ち込みをどの程度カバーできるかが焦点だ。

 20年12月期の連結決算は、売上高が前期比0.5~1.8%増の1兆5100~1兆5300億円、営業利益は3.9~8.6%増の2200~2300億円、純利益は3.9~8.6%増の1540~1610億円を見込んでいる。20年12月期は中期経営計画の最終年度にあたる。売上高営業利益率を15%(19年12月期14.1%)に高めるのが目標だ。1~3月期の売上高営業利益率はコロナの影響で11.6%に低下した。

 19年11月に実用化した人工皮膚技術「ファインファイバー」や、肌の状態を解析する「皮脂RNAモニタリング技術」など新技術を活用した製品で利益率を向上させる。原油価格低下によるコスト削減効果が見込めるほか、経費削減を徹底して15%の売上高営業利益率を確保したいとしている。

花王は新製品「アタックZERO」がヒット

 ハンドソープ市場はライオンの「キレイキレイ」が圧勝。アルコール消毒液は花王の「ビオレ」が強い。衣料用液体洗剤では花王が独走態勢を築きつつある。花王は19年4月、液体用洗剤の新製品「アタックZERO」を発売した。新開発した洗浄基剤「バイオIOS」を使用し、「花王史上、最高の洗浄力」誇る。

 衣料用洗剤市場は三つ巴の激しい争いを繰り広げてきた。「ニュービーズ」の花王、「アリエール」のP&Gがシェア4割近くでトップの座を争ってきた。これに続く「トップ ハレタ」のライオンは2割台だった。

 花王の「アタックZERO」の投入で構図は一変した。19年5月時点のシェアは花王が43.0%と独り勝ち。P&Gは35.8%、ライオンは21.2%とシェアを落とした(ソフトブレーン・フィールド調べ)。

 ライオンは当然巻き返しを狙う。同社初のIoTデバイス「スマートハレタ」を開発した。洗濯用洗剤「トップ ハレタ」のボトルに装着する。自宅周辺の天気予報と連動し、ボトルを持ち上げると「外干し」「部屋干し」のどちらを選ぶかを光や音で知らせてくれる、優れモノだ。

(文=編集部)

創造的破壊の時代の「新しい日常」を見つけるために

この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「Design Mind」に掲載されたコンテンツを、電通エクスペリエンスデザイン部岡田憲明氏の監修でお届けします。

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コロナ危機への適応戦略が、長期的な市場変革へのカギになる


新型コロナウイルスの感染拡大は世界中の経済にただならぬ衝撃を与え、前例のない「ディスラプション(創造的破壊)」の時代をもたらしています。新しい働き方やコミュニケーション手段からビジネスモデル全体の転換まで、この感染症は世界中のあらゆるコミュニティーに多大な影響を及ぼしました。

これまで当たり前だったビジネス環境は、コロナ禍の影響によって今後数年間に否応なく形を変えていくでしょう。だとすれば、すべての人が例外なく意識変革を迫られるこの時代に、既存の企業は生き残っていくためだけでなく、今後も繁栄していくために何ができるのでしょうか?

私たちは先頃発表したインサイトレポート「The Disruptor Playbook 」の中で、消費者の要望の変化に企業が対応していくために活用できる五つの「ディスラプター(創造的破壊要因)戦略」を紹介しました。

本記事では、この前例のない時代に見られるいくつかのビジネストレンドを紹介。さらに、企業が方向転換し、社会にインパクトを与え、その結果として消費者に真の価値を提供するにはどうすればいいかを掘り下げます。

ソーシャルディスタンスが求められる中、消費者は動画や双方向プラットフォームを通じて互いにつながる方法を探している

コラボレーションプラットフォームのMicrosoft Teamsにユーザーがバーチャル(仮想)背景を設定できる新機能が追加されたとき、frogのスタッフたちは大興奮しました。では、このユーザー体験がブランド認知やブランドロイヤルティーにこれほど大きなインパクトを与えているのはなぜでしょうか。それは、消費者が自身でコントロールできる機能に価値を見いだすものだからです。ビデオ通信を利用する人が爆発的に増え、感染者数を抑えるためにリモート教育やテレワークが不可欠になる中で、ビデオ通信市場における競争は激しさを増しています。

主要プラットフォームの一つであるZoomは、参加者100人まで、ビデオ通話40分までの画面共有や録画・録音機能が無料で利用できる戦略的な販売モデルを構築しました。しかもZoomのプラットフォームはアカウントや有料登録がなくても利用できます。

入り口のハードルを下げることでユーザーがさまざまな形でZoomを体験できるようにし、会議時間無制限、クラウドストレージ、レポート機能などの追加サービスを利用できる有料登録を申し込んでもらう機会を広げたのです。

ところが、プラットフォームにZoomを選んだユーザーは多いものの、ビデオソフトウエアに関するセキュリティー上の懸念が報道される中で、競合他社が追い付き始めています。プライバシーやセキュリティー面の懸念が膨らむにつれて、ユーザーは使いやすさよりもセキュリティーを前面に打ち出したサービスを優先するようになるかもしれません。

空前の激しさを見せるストリーミング戦争

世界中の人々が巣ごもり生活とソーシャルディスタンス(人との距離をとること)を強いられている今、ストリーミングサービスは私たち自身の生活だけでなく、バーチャルな社会生活においても欠かせないものになりつつあります。イギリスのハイテク市場調査会社Omdiaの調査によれば、オンラインストリーミングサービス産業の今年の年間成長率は12%を超えると見込まれています。

ソーシャルディスタンスが世界に広がる以前も、ストリーミングコンテンツの市場はかなり競争が激しく、各社は差別化を図る手段が必要になっていました。モバイル動画サービスのQuibiなど一部の新規参入企業は、動画の視聴方法を変革しようと試みています。

しかし、NetflixやHuluなどの大手がコンテンツの幅広さと質だけを強みに、今なお競争を制しているのが現状です。コンテンツと値頃感の他に、ストリーミング分野の次の競争ポイントとして考えられるのは、使いやすさと、全体としてどんな体験ができるかです。SNSを楽しめるソーシャルウオッチングなどの新機能や、企画性の高い作品選び、ユーザーのプロフィールや視聴体験の設定機能などが、次世代の勝者を決める要因になるでしょう。

オンライン診療とデジタル診断は、なくてはならないサービスへ

ソーシャルディスタンスが新しい日常になるにつれて、新型コロナウイルス以外の理由で診療を受けるには医療用デジタルツールに頼る他はない人が多くなりつつあります。予防医療を重視したデータを活用する医療サービス会社Forward や、SnapMD 、Nutriremedyなどのディスラプター(創造的破壊)企業は、患者の治療や観察をリモートで行うためのサービスや、革新的な顧客体験モデルを開発しています。

こうした遠隔医療サービス会社は、バーチャル診断、入手しやすい処方薬、カルテ、患者受け付けなどの包括的なサービスを提供しています。このようなサービスは、ソーシャルディスタンスが求められている現在はまさに不可欠ですが、長期的な意味でもビジネス成功のカギとなるかもしれません。 

事実、新型コロナウイルスがデジタル医療産業に及ぼす影響についての最近の調査 で、回答者は今回の感染流行がデジタル医療ソリューションの加速的発展と幅広い普及につながると確信していることが分かりました。スタートアップ企業や新規参入企業が新興テクノロジーを素早く取り入れ高度化して、従来型の医療企業の一歩先を行くかもしれません。

しかし、既存の企業も、ニーズを持つ患者の一人一人に合わせた適切な顧客サービスを提供することで、将来に備えることができます。医療サービス企業にとっての戦略的な取り組みとは、話題の新テクノロジーに注目するだけでなく、現状のサービスや市場に足りない部分を把握し、患者の全般的な健康と幸福に真の付加価値を与える適切な製品やサービスでそのギャップを埋める方法を見つけることです。

創造的破壊の時代における企業の成功とは

創造的破壊の時代には、真の価値を提供するための独自の顧客体験を創造することに積極的な意思決定をする企業が、長期的な成功を手にすることになるはずです。経済情勢と消費者のニーズに基づいて革新的な手法でビジネス戦略を転換できる企業は、自らが属する産業に、そしてひょっとしたらその周辺産業にも、大きな変革を起こし続けることでしょう。

Disruptor Playbook
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既存の企業を真の「ディスラプター」へと変革させるための戦略のすべてがここに。全文をこちらからダウンロードできます。

この記事はウェブマガジン「AXIS」にも掲載されています。

氷河期世代の格差の実態…非正規社員の既婚率は公務員の7分の1、女性の“出産格差”も

 6月12日に『コロナが加速する格差消費』(朝日新書)という本を上梓した。当初は9月くらいに団塊ジュニアとゆとり世代の格差と消費についての教科書的な本を書くつもりで、原稿も3月には7割方できていたのだが、3月に入ってコロナの感染が広がり始め、最初はクルーズ船に乗っていた富裕層が感染していたのに、次第に一般人、特に介護施設などで働く人たちの感染が増えて、どうもコロナは格差問題と絡んでいると直観し、出版を早め、コロナと格差消費というテーマで書き直したのである。

 アメリカでの警官による黒人殺人事件を発端に、6月4日現在で、アメリカのみならずイギリスでも抗議デモが盛り上がっている。歴史的な黒人への差別に加えて、コロナで感染死する人が低所得者の多い黒人に多いからである。しかもアメリカは健康保険に加入していない低所得者が多く、黒人で未加入の割合が高いといわれる。トランプは国民皆保険に絶対反対の立場だから、黒人から見れば、コロナに感染しても病院に行けず死んでいく黒人が多いことに強い反発があるわけだ。

 日本でも、非正規雇用者は雇い止めにあい、親の年収が低い学生は退学を余儀なくされている。学歴による年収、階層、結婚の格差についても本書は触れているが、せっかく大学に入ったのに退学しなければならない学生は本当にかわいそうだ。

 また学生は学費、生活費を稼ぐためにアルバイトすることが普通だが、コロナはアルバイト先も激減させてしまった。女子学生は、割の良いバイトとして水商売で働くこともあるが、それなどは最も減ったバイトである。学費は親が出すが生活費は自分で稼ぐという学生は多く、ファッション、化粧品などにお金のかかる女子学生が水商売のバイトをすることもあるようだ。

 だから休業要請下でもガールズバーで完全休業したところは少ないし、それどころか、都内の某繁華街では、夜10時から朝6時まで営業し、かつ地下にあるガールズバーもあった。

 そういうガールズバーに私も取材をしてみたが、付いた女子は2人とも地方出身、離婚家庭で、父親が学費を出すが生活費は自分で稼ぐという条件で東京に出てきていた。休業がもしもっと強く強制されれば彼女たちは大学をやめて田舎に戻らなければならないだろう。学歴格差が激しい現代において、そんなことを助長する政策が正しいといえるだろうか。

 にもかかわらず政府はのんきに9月入学の可能性を検討した。幸い見送られたが、留学をする一部の学生のために、なぜ小学校からすべて9月入学にしなければならないのか。まったく理解できない。私は大学を9月入学にすること自体は賛成だが、今この時期に小学校から含めて9月入学にする意味がわからない。小学校が9月入学なら幼稚園にも保育園にも影響が及ぶのであり、その保育園も一部休園で親が困っているというのに、どうしてのんきに9月入学の可能性を検討するなどということができるのか。庶民感覚ゼロの政権の体質をまたもや暴露したといえる。

氷河期世代の格差

 本書はこうした時々刻々と変化するこうした状況を踏まえながら、まず氷河期世代の格差を検証した。氷河期世代は大卒時に正規雇用になれず、その後ずっと非正規で働いてきた人々が多いので、正規雇用になれて40代になった人と、ずっと非正規で40代になった人では収入、貯蓄などにかなりの格差がある。それを三菱総合研究所の3万人アンケートによって統計的に調べたのである。

 その結果、男性の正規雇用では階層意識が「中の上」以上が15%、「中の下」以下が44%なのに、「非正規」では「中の上」以上は5%しかなく、「中の下」以下は68%もいた。また公務員は「中の上」以上が25%もあり、「中の下」以下は24%しかなかった。さらに夫婦共に公務員である人では「中の上」以上が33%にもなる。公務員を最近「上級国民」と呼ぶ傾向があるが、この格差を見てはそれも当然と思える。

 非正規で年収が低い男性は結婚をしにくい傾向があり、そのためますます下流が増える傾向がある。たとえば男性の場合、年収が400万円以上になって既婚が半数を超える。非正規で400万円以上を稼ぐには難しいだろう。

 学歴別では4大だと既婚が半数を超えるが、短大・専門では既婚と離別を合計して52%であり、高卒以下では6割が未婚である。

 また職業別では正規雇用は64%が既婚、公務員は76%が既婚だが、非正規は86%が未婚であり、既婚は10%しかなく、離別が4%いる。14%が結婚したがそのうち3割が離婚したことになる。

 他方、女性が結婚できる条件を年収別に見ることは難しい。結婚前は高収入をとっていても結婚後は専業主婦とか非正規雇用になったりするため年収が下がる人が多いからである。

正規社員と非正規社員の出産格差

 そこで女性については、既婚以外の女性について、現在交際している異性がいるかを集計した。交際しているから結婚するとは限らないが、交際せずにいきなり結婚することは考えにくいので、交際率が結婚可能性と比例するといえるはずだ。

 いろいろ集計すると、交際率は職業別にやや差があり、正規雇用女性の28%が交際しているのに対して、非正規雇用女性は22%であるなど、正規雇用が有利である。

 それより差が付くのは出産である。25〜39歳の既婚女性について、5年以内に子供をもうけると思うかを集計した。夫婦合計年収別では600万円以上だと子供をもうけていると思う人が36〜38%と多い。

 自分の学歴では4大で38%、修士・博士で42%なのに、高卒以下では24%と格差が激しい。夫の学歴ではやはり4大で36%、修士・博士で44%と高く、高卒以下では26%と格差がある。

 自分の職業別では、公務員女性の63%が子どもをもうけていると思うと回答しておりダントツである。正規雇用は41%だが非正規雇用は26%と格差が大きい。夫の職業別では、公務員が42%で高い。長期的に安定しているからである。会社役員であることは、あまり出産には関係しない。

 このように見ると、女性も男性も4大以上の学歴で、正規雇用、できれば公務員であり、共働きで夫婦合計年収が600万円以上あれば子供をもうけやすいということである。

 出産格差ともいうべきものがここにはある。正規雇用、特に公務員だと育児休暇制度も充実しており、正規雇用でも大企業であるほど充実している。一度正規雇用となって結婚、出産すれば、長期に休暇を取りながら収入もあり、復職もできる。

 しかし非正規だと、コロナなどでいつ解雇されるかわからない上に、育児休暇もないので、働いている途中で妊娠したら離職しないといけなくなる。これで少子化が解決するはずがない。

 以上のようにアラフォーとなった氷河期世代の現段階での格差をコロナと絡めながら本書は論じている。コロナが可視化した格差の状況を客観的に理解する一助としてお読みいただければ幸いである。

(文=三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表)