新しい暮らし方を提案する「不動産屋」ならぬ「移動産屋」とは?

未来商店街スケッチは、「消費する」だけでなく「生み出す」ことを価値とする、これからの新しい暮らし方・生き方を模索するプロジェクト。未来潮流を踏まえて「こんなお店があったらいいな」というプランを、電通のプランナーと外部有識者たちが共創していきます。

今回のテーマは「キャンピングカー」。ライフスタイルが多様化する中、キャンピングカーのような移動する不動産、“移動産”にはどんな可能性があるのでしょうか。育休中にキャンピングカーで日本一周の旅(2019年6月~9月)をした電通・池田一彦氏、茅ケ崎でキャンピングカー事業を行うネイティブキャラバン代表取締役の滝島大介氏、滝島氏とプロジェクトを企画するシェアエックス株式会社 Founder&CEOの中川亮氏を招き、小布施典孝(電通 Future Creaitive Center)と小柴尊昭(電通ビジネスデザインスクエア)と共に「未来にあったらいい、キャンピングカーのお店」を考案。一枚のスケッチにまとめました。

リモート取材
ディスカッションのメンバー。左上から滝島大介氏(Native Caraban)、左下中川亮氏(シェアエックス㈱ Founder&CEO)、右上池田一彦氏(電通)、小布施典孝(電通)、撮影は小柴尊昭(電通)

100日間、キャンピングカーで日本一周した「育休キャラバン」

小布施:多拠点生活や、アドレスホッパーと呼ばれるような、家を持たない生活が近年注目されてきました。その中で、キャンピングカーはこれからもっと利用したい人が増える気がしています。そこで今回、キャンピングカーのお店を考えてみることにしました。

池田さんは、100日間の育休中にキャンピングカーで日本一周する「育休キャラバン」をしたんですよね。お子さんと奥さまと一緒に。

池田:そうですね。子どもが2人いるのですが、もともと1人目が生まれたときに、3カ月の育休を取ったんです。ただ、意外とその3カ月がゆったりしていて、ちょっとヒマなときもあったくらいで(笑)。もし2人目が生まれて育休を取るときは「何か面白いことをしたいなあ」と思っていて。

で、上の子が6歳のときに2人目が生まれて。これは「旅に出られるぞ」と(笑)。上の子が学校に通い始めたら行けませんから、ベストのタイミング。それで、家族と長期で旅に出ようと思ったんです。最近は育休が“義務”の風潮になりつつありますが、実はすごく楽しい時間のはず。それなら、思いっきり楽しもうと。

撮影  大塚 光紀

小布施:そこからなぜキャンピングカーを?

池田:家族4人で100日間旅すると、やっぱりお金がかかる(笑)。毎日2〜3万のホテルに泊まったら200〜300万くらい。それならキャンピングカーがいいと思って計画したんです。

小柴:やってみてどうでしたか? 実は池田さんの話を聞いて「やってみたい」と思っている人は電通内にもたくさんいるのですが(笑)。

池田:結論から言うと、もう最高でした。キャンピングカーはコスパだけじゃなくて、圧倒的に自由なんです。海の見える場所に止めれば、そこがオーシャンビューのホテルに早変わりするし。ルートもざっくりと決めるだけでいいし。

何より、小さな子どもがいる旅は、むしろキャンピングカーが便利なんですよね。子どもが寝た後に移動できますから。旅って、子どもが眠くなったりグズったりするとストップしますよね。その不安がない。どこでも寝させられるし、オムツ替えもできる(笑)。キャンピングカーの子連れ旅、しかも長期旅は本当にオススメですよ。

不安定な時代には、いざというときに動ける「移動産」が価値になる

小布施:そのキャンピングカーはレンタルで?

池田:そうです。今日来てもらったネイティブキャラバンの滝島さんは、僕と同じ茅ケ崎に住んでいて、キャンピングカーのレンタル事業をしているんです。他にもキャンピングカーを使った企画をいろいろ行っていますよね。

滝島:はい。キャンピングカーは「動く家」のような存在なので、使う人次第でいくらでも可能性があるんです。例えば以前企画したのが、企業の採用面接をキャンピングカーで行う「採用キャラバン」。九州などの広いエリアを対象に採用活動をする場合、どこか一箇所でしか説明会ができないことがありますよね。企業からすれば「他の地域にも面白い人がたくさんいるはず」と。そこで、企業側がキャンピングカーで採用面接の旅をしました。現在地をツイッターでリアルタイムに表示して、希望者がいれば近くの大学に行って即席の採用面接をしたり。

池田:面白い企画ですよね。

滝島:あとは「キャラバンワーク」といって、企業にワークスペースとしてのキャンピングカーを貸し出すサービスも始めています。パートナーやクライアントと街中で打ち合わせしたり、チームのメンバーと大自然の中に行って、リフレッシュと仕事の両方を味わったり。中川さんと一緒にこういった企画を考えていますね。

中川:僕自身も今までスタートアップを5社立ち上げていて、シェアリングエコノミーや渋谷のコワーキングスペース事業などに携わってきました。その中で、今後は不動産の対照として、動く“移動産”の可能性を感じていて。例えば移動中にテレビ会議ができたり、働く場所がさらに自由になったり。そう考えて、滝島くんといろいろ企画してきました。

池田:しかも3人とも茅ケ崎在住で、近所なんだよね(笑)。それで気が合って。

小布施:そうなんですか(笑)。中川さんが話した「移動産」という考えは面白いですね。定住しない価値観が広まり、さらにオフィスの在り方も大きく変わっていくであろう時代の中で、すごく重要かも。

中川:ビジネスもそうですが、動けることは一種のリスクマネジメントでもあるんですよね。経済や社会が安定しているときは動かなくてよいかもしれませんが、ベースが大きく変動する時代には、むしろタイヤがついて動ける方がいいかもしれない。コロナはまさにそういう状況を生んでしまったので、これからは安定の概念が変わる可能性もありますよね。

小布施:止まっていることが安定ではなく、動いている方がリスクヘッジの意味で安定するということですね。

「旅するように暮らす」。その装置としてのキャンピングカー

滝島:個人的な話ですが、私もこれまでいろいろな場所を転々と移り住んできて、妻とも「暮らすこと自体が旅だよね」と。最初の出会いも、オーストラリアの同じキャンピングカー場を訪れていたのがきっかけなんですね。向こうはキャンピングカーで旅しながら暮らしている人も多くて、設備や文化も充実している。日本もいずれそうなればいいなと。

池田:滝島さんの言う「旅するように暮らす」というのは憧れだったけど、育休キャラバンを経て「実現できるんだ」と思いましたね。今までは、会社と家を往復する毎日がマインドセットとしてデフォルトだったけど、それだけじゃないと。

小布施:もしかすると、その装置としてキャンピングカーがあるのかもしれませんね。

池田:実際、日本にも旅するように暮らしている人はたくさんいるんですよね。キャラバン中には、ティピという大きなテントを持ってキャンプ場を転々としている人とも会いましたし。

小布施:ちなみに、育休キャラバンで「旅のような暮らし」を実践してみて、一番の魅力ってどこに感じましたか。

池田:出会う人の多様性ですね。全国には本当にいろんな人がいる。電通も多様性のある会社だと思いますが、それどころじゃない(笑)。たとえば北海道で出会ったのは、パーマカルチャー的に自給自足生活をする家族で。その家に伺うと、出迎えた子どもたちが「昨日トイレに電気がついたんだよ!」と目をキラキラさせて言うんです。これだけトイレの電気で喜ぶ子が日本にどれだけいるのかなと。

普通の旅では出会えないけど、キャンピングカーで旅と暮らしを一体化させたから、これだけ多様な人や価値観に触れられる。旅するように暮らすことのおみやげかもしれませんね。

中川:さらに今後は、ライフスタイルの変化や自由度が間違いなく加速しますよね。コロナによってリモートワークが普及しましたし。僕自身、「沖縄に住みたいな」と思ってますから(笑)。

キャンプ場

物件のような“モノ”だけでなく、何をするかの“コト”まで提案

小布施:今までの話を基に、未来のお店を考えてみましょう。皆さんが「あったらいいな」と思う、キャンピングカーをテーマにしたお店はありますか。

池田:今日の話を聞いていると、キャンピングカーは暮らしを提案する意味ですごく可能性があるなと。例えば、旅するように暮らしたい人に向けたプロデュースショップとか。おそらくそういう価値観の人はこれから増えると思うので、そんな人に向けて、旅と暮らしが一体化したものを提案する店があれば。

小布施:不動産屋さんは、たくさんの物件を紹介していますよね。それはある意味、不動産での“暮らし”を提案している。一方、今日の話を聞くと街の「移動産屋」があったら面白いかもしれないですね。不動産の物件のような位置付けで、キャンピングカーが並んでいるような。

池田:物理的なハードとしては、みな同じキャンピングカーだけど、何をするかは本当に幅広いですよね。働く場所として使ってもいいし、休みに家族と全国を旅する用でもいい。

滝島:お客さまの中には、スタジオとしてキャンピングカーを借りたカメラマンもいます。スタジオ自体が移動するので、それがいろいろな展開になる。あとは、ある有名な美容師夫妻がキャンピングカーを借りて、普段お店に来られない遠方のお客さまの髪を切りながら旅したり。

小柴:不動産屋には物件情報がずらっと並んでいますが、移動産屋では、キャンピングカーという“モノ”が並ぶだけでなく、その車内で何をするかという“コト”まで提案されている。そんなお店だと面白そうですね。

小布施:オフィスに美容院にスタジオ、カフェ、八百屋さんでもいい。いろいろありますね。

小柴:小さい子どものいる家族は、純粋にキャラバン旅をしたくて見に来るかもしれないし、それ以外でも変化したい人、例えばずっと仕事を頑張ってきたけど、新しい何かにチャレンジしたい。そのときに気づきを得られる場所として、キャンピングカーと、その中でやっている“コト”を見に来るかもしれない。

中川:特にお店をやりたい人はいいですよね。お店がある場所で固定されているというのが今までの「固定観念」でしたが、タイヤがついたお店があってもおかしくない。屋台もそうですし、動けることはリスクヘッジになる。それを体現できるのがキャンピングカーですから。いろいろな“コト”の選択肢を提示する移動産屋があればいいですね。

池田:むしろ移動できるお店が増えたら、商店街自体が移動式になるかもしれませんよね(笑)。そういう未来も見えてくる。

滝島:実際、アメリカのポートランドは、人出の多い公園にクルマ型のお店が集まっています。そういう文化が定着していくかもしれません。

小布施:商店街に人が集まるのではなく、人が集まるところに商店街が移動してやってくるような。いいですね。この「街の移動産屋」は、“これからの生き方”を選べるお店。そんなお店があったら人気が出そうです。

そして座談会から生まれたスケッチは・・・!

イラスト/スケッチ 中尾仁士(電通クリエーティブX)
スケッチ 中尾仁士(電通クリエーティブX)

新しい暮らし方を提案する「不動産屋」ならぬ「移動産屋」とは?

未来商店街スケッチは、「消費する」だけでなく「生み出す」ことを価値とする、これからの新しい暮らし方・生き方を模索するプロジェクト。未来潮流を踏まえて「こんなお店があったらいいな」というプランを、電通のプランナーと外部有識者たちが共創していきます。

今回のテーマは「キャンピングカー」。ライフスタイルが多様化する中、キャンピングカーのような移動する不動産、“移動産”にはどんな可能性があるのでしょうか。育休中にキャンピングカーで日本一周の旅(2019年6月~9月)をした電通・池田一彦氏、茅ケ崎でキャンピングカー事業を行うネイティブキャラバン代表取締役の滝島大介氏、滝島氏とプロジェクトを企画するシェアエックス株式会社 Founder&CEOの中川亮氏を招き、小布施典孝(電通 Future Creaitive Center)と小柴尊昭(電通ビジネスデザインスクエア)と共に「未来にあったらいい、キャンピングカーのお店」を考案。一枚のスケッチにまとめました。

リモート取材
ディスカッションのメンバー。左上から滝島大介氏(Native Caraban)、左下中川亮氏(シェアエックス㈱ Founder&CEO)、右上池田一彦氏(電通)、小布施典孝(電通)、撮影は小柴尊昭(電通)

100日間、キャンピングカーで日本一周した「育休キャラバン」

小布施:多拠点生活や、アドレスホッパーと呼ばれるような、家を持たない生活が近年注目されてきました。その中で、キャンピングカーはこれからもっと利用したい人が増える気がしています。そこで今回、キャンピングカーのお店を考えてみることにしました。

池田さんは、100日間の育休中にキャンピングカーで日本一周する「育休キャラバン」をしたんですよね。お子さんと奥さまと一緒に。

池田:そうですね。子どもが2人いるのですが、もともと1人目が生まれたときに、3カ月の育休を取ったんです。ただ、意外とその3カ月がゆったりしていて、ちょっとヒマなときもあったくらいで(笑)。もし2人目が生まれて育休を取るときは「何か面白いことをしたいなあ」と思っていて。

で、上の子が6歳のときに2人目が生まれて。これは「旅に出られるぞ」と(笑)。上の子が学校に通い始めたら行けませんから、ベストのタイミング。それで、家族と長期で旅に出ようと思ったんです。最近は育休が“義務”の風潮になりつつありますが、実はすごく楽しい時間のはず。それなら、思いっきり楽しもうと。

撮影  大塚 光紀

小布施:そこからなぜキャンピングカーを?

池田:家族4人で100日間旅すると、やっぱりお金がかかる(笑)。毎日2〜3万のホテルに泊まったら200〜300万くらい。それならキャンピングカーがいいと思って計画したんです。

小柴:やってみてどうでしたか? 実は池田さんの話を聞いて「やってみたい」と思っている人は電通内にもたくさんいるのですが(笑)。

池田:結論から言うと、もう最高でした。キャンピングカーはコスパだけじゃなくて、圧倒的に自由なんです。海の見える場所に止めれば、そこがオーシャンビューのホテルに早変わりするし。ルートもざっくりと決めるだけでいいし。

何より、小さな子どもがいる旅は、むしろキャンピングカーが便利なんですよね。子どもが寝た後に移動できますから。旅って、子どもが眠くなったりグズったりするとストップしますよね。その不安がない。どこでも寝させられるし、オムツ替えもできる(笑)。キャンピングカーの子連れ旅、しかも長期旅は本当にオススメですよ。

不安定な時代には、いざというときに動ける「移動産」が価値になる

小布施:そのキャンピングカーはレンタルで?

池田:そうです。今日来てもらったネイティブキャラバンの滝島さんは、僕と同じ茅ケ崎に住んでいて、キャンピングカーのレンタル事業をしているんです。他にもキャンピングカーを使った企画をいろいろ行っていますよね。

滝島:はい。キャンピングカーは「動く家」のような存在なので、使う人次第でいくらでも可能性があるんです。例えば以前企画したのが、企業の採用面接をキャンピングカーで行う「採用キャラバン」。九州などの広いエリアを対象に採用活動をする場合、どこか一箇所でしか説明会ができないことがありますよね。企業からすれば「他の地域にも面白い人がたくさんいるはず」と。そこで、企業側がキャンピングカーで採用面接の旅をしました。現在地をツイッターでリアルタイムに表示して、希望者がいれば近くの大学に行って即席の採用面接をしたり。

池田:面白い企画ですよね。

滝島:あとは「キャラバンワーク」といって、企業にワークスペースとしてのキャンピングカーを貸し出すサービスも始めています。パートナーやクライアントと街中で打ち合わせしたり、チームのメンバーと大自然の中に行って、リフレッシュと仕事の両方を味わったり。中川さんと一緒にこういった企画を考えていますね。

中川:僕自身も今までスタートアップを5社立ち上げていて、シェアリングエコノミーや渋谷のコワーキングスペース事業などに携わってきました。その中で、今後は不動産の対照として、動く“移動産”の可能性を感じていて。例えば移動中にテレビ会議ができたり、働く場所がさらに自由になったり。そう考えて、滝島くんといろいろ企画してきました。

池田:しかも3人とも茅ケ崎在住で、近所なんだよね(笑)。それで気が合って。

小布施:そうなんですか(笑)。中川さんが話した「移動産」という考えは面白いですね。定住しない価値観が広まり、さらにオフィスの在り方も大きく変わっていくであろう時代の中で、すごく重要かも。

中川:ビジネスもそうですが、動けることは一種のリスクマネジメントでもあるんですよね。経済や社会が安定しているときは動かなくてよいかもしれませんが、ベースが大きく変動する時代には、むしろタイヤがついて動ける方がいいかもしれない。コロナはまさにそういう状況を生んでしまったので、これからは安定の概念が変わる可能性もありますよね。

小布施:止まっていることが安定ではなく、動いている方がリスクヘッジの意味で安定するということですね。

「旅するように暮らす」。その装置としてのキャンピングカー

滝島:個人的な話ですが、私もこれまでいろいろな場所を転々と移り住んできて、妻とも「暮らすこと自体が旅だよね」と。最初の出会いも、オーストラリアの同じキャンピングカー場を訪れていたのがきっかけなんですね。向こうはキャンピングカーで旅しながら暮らしている人も多くて、設備や文化も充実している。日本もいずれそうなればいいなと。

池田:滝島さんの言う「旅するように暮らす」というのは憧れだったけど、育休キャラバンを経て「実現できるんだ」と思いましたね。今までは、会社と家を往復する毎日がマインドセットとしてデフォルトだったけど、それだけじゃないと。

小布施:もしかすると、その装置としてキャンピングカーがあるのかもしれませんね。

池田:実際、日本にも旅するように暮らしている人はたくさんいるんですよね。キャラバン中には、ティピという大きなテントを持ってキャンプ場を転々としている人とも会いましたし。

小布施:ちなみに、育休キャラバンで「旅のような暮らし」を実践してみて、一番の魅力ってどこに感じましたか。

池田:出会う人の多様性ですね。全国には本当にいろんな人がいる。電通も多様性のある会社だと思いますが、それどころじゃない(笑)。たとえば北海道で出会ったのは、パーマカルチャー的に自給自足生活をする家族で。その家に伺うと、出迎えた子どもたちが「昨日トイレに電気がついたんだよ!」と目をキラキラさせて言うんです。これだけトイレの電気で喜ぶ子が日本にどれだけいるのかなと。

普通の旅では出会えないけど、キャンピングカーで旅と暮らしを一体化させたから、これだけ多様な人や価値観に触れられる。旅するように暮らすことのおみやげかもしれませんね。

中川:さらに今後は、ライフスタイルの変化や自由度が間違いなく加速しますよね。コロナによってリモートワークが普及しましたし。僕自身、「沖縄に住みたいな」と思ってますから(笑)。

キャンプ場

物件のような“モノ”だけでなく、何をするかの“コト”まで提案

小布施:今までの話を基に、未来のお店を考えてみましょう。皆さんが「あったらいいな」と思う、キャンピングカーをテーマにしたお店はありますか。

池田:今日の話を聞いていると、キャンピングカーは暮らしを提案する意味ですごく可能性があるなと。例えば、旅するように暮らしたい人に向けたプロデュースショップとか。おそらくそういう価値観の人はこれから増えると思うので、そんな人に向けて、旅と暮らしが一体化したものを提案する店があれば。

小布施:不動産屋さんは、たくさんの物件を紹介していますよね。それはある意味、不動産での“暮らし”を提案している。一方、今日の話を聞くと街の「移動産屋」があったら面白いかもしれないですね。不動産の物件のような位置付けで、キャンピングカーが並んでいるような。

池田:物理的なハードとしては、みな同じキャンピングカーだけど、何をするかは本当に幅広いですよね。働く場所として使ってもいいし、休みに家族と全国を旅する用でもいい。

滝島:お客さまの中には、スタジオとしてキャンピングカーを借りたカメラマンもいます。スタジオ自体が移動するので、それがいろいろな展開になる。あとは、ある有名な美容師夫妻がキャンピングカーを借りて、普段お店に来られない遠方のお客さまの髪を切りながら旅したり。

小柴:不動産屋には物件情報がずらっと並んでいますが、移動産屋では、キャンピングカーという“モノ”が並ぶだけでなく、その車内で何をするかという“コト”まで提案されている。そんなお店だと面白そうですね。

小布施:オフィスに美容院にスタジオ、カフェ、八百屋さんでもいい。いろいろありますね。

小柴:小さい子どものいる家族は、純粋にキャラバン旅をしたくて見に来るかもしれないし、それ以外でも変化したい人、例えばずっと仕事を頑張ってきたけど、新しい何かにチャレンジしたい。そのときに気づきを得られる場所として、キャンピングカーと、その中でやっている“コト”を見に来るかもしれない。

中川:特にお店をやりたい人はいいですよね。お店がある場所で固定されているというのが今までの「固定観念」でしたが、タイヤがついたお店があってもおかしくない。屋台もそうですし、動けることはリスクヘッジになる。それを体現できるのがキャンピングカーですから。いろいろな“コト”の選択肢を提示する移動産屋があればいいですね。

池田:むしろ移動できるお店が増えたら、商店街自体が移動式になるかもしれませんよね(笑)。そういう未来も見えてくる。

滝島:実際、アメリカのポートランドは、人出の多い公園にクルマ型のお店が集まっています。そういう文化が定着していくかもしれません。

小布施:商店街に人が集まるのではなく、人が集まるところに商店街が移動してやってくるような。いいですね。この「街の移動産屋」は、“これからの生き方”を選べるお店。そんなお店があったら人気が出そうです。

そして座談会から生まれたスケッチは・・・!

イラスト/スケッチ 中尾仁士(電通クリエーティブX)
スケッチ 中尾仁士(電通クリエーティブX)

菅官房長官がコロナでも沖縄県イジメで非難が殺到! GoTo強行で感染拡大・ホテル不足なのに「沖縄県がホテルを確保してない」

 憲法に基づいた国会召集要求さえ放棄している安倍政権の無為無策によって新型コロナが全国規模で感染拡大しているが、とりわけ心配なのが沖縄県だ。昨日4日には新規感染者数が過去最多となる83人となり、人口10万人あたりの新規感染者数が昨日までの1週間で27.9人となり、全国で唯一...

ニューノーマルで日本はどう変わる?生活者調査から導く未来の姿 ~「コロナ時代のマーケティングソリューション」レポート(前編)~

6月30日、「Dentsu Solution Webinar~第1弾~」を開催しました。一歩先のニューノーマルスタイル実現のために、onコロナ・withコロナの巣ごもり消費をチャンスに変えていくヒントを集めたソリューションウェビナーです。
SNSデータ分析や電通オリジナル調査から見いだした消費者変化や未来予測、また次なるマーケティング課題に対するソリューションを紹介したウェビナー内容をレポートします。

<目次>
「Twitterと独自調査から読み解くさまざまな生活者意識」(電通 谷内宏行氏)
▼「未来予想とマーケティングソリューション」(1)未来予測とAfterコロナの見通しについて(電通 澁川修一氏)
「未来予想とマーケティングソリューション」(2)生活者の行動/意識変化から読み解くニューノーマル時代の価値創造(電通 杉田和香氏)
 

 

「Twitterと独自調査から読み解くさまざまな生活者意識」(電通 谷内宏行氏)

コロナ禍において、日本の生活者はどう変化したか。谷内氏は、電通で実施したさまざまな調査データをひも解き、これからの日本には、「三つのお直し」が必要だと解説しました。

コロナに関するツイート量推移と、東洋経済オンラインでの感染者数(PCR検査陽性者数)の推移を重ねたグラフを見てみると、非常に大きなバズのピークがあるのは3月30日。それはちょうど、志村けんさんの訃報が伝えられたタイミングです。

コロナ感染者数とつぶやき数の推移

半年前から「日本の日常」は少しずつ変化していきました。最初の異変は1月末。マスクが一斉になくなった「マスク騒動」から。やがて、消毒液やトイレットペーパーまでもが消えました。3月になると「休校要請」が出て、企業も「在宅勤務」に移行する割合が増えました。ですが、桜の開花の頃には少し「ゆるみ」が見られ、少なからぬ人々が花見へと繰り出しました。「また、すぐに生活に戻れるのではないか」と安堵していた直後、伝えられたのが「志村けんさんの訃報」でした。このショックこそ、日本の生活者に本当の危機意識をもたらしたものだった、と谷内氏は解説します。

3月30日以降も「緊急事態宣言」や「ステイホーム」「東京アラート」などの自粛や規制が波状的に展開される中で、次第に日本の生活者・企業は、元の生活ではなく「ニューノーマル」への移行を強いられていった、と谷内氏。自粛生活の末に起きてしまったのは、「萎縮する日本」の姿です。コロナ禍を乗り切り、新たな日常に変化していくために必要なのは
・自粛からの萎縮状態を → 温め直す
・旧社会慣習の違和感を → 編み直す
・ワークライフの比重を → 見つめ直す
ことだと提唱しました。

三つのお直し

「緊急事態宣言」が発令された頃のツイートをバズ解析すると、かなり多かった発言は「声を掛け合って頑張ろう」という互助だったことも紹介。ネットは、非難や中傷など悪い文脈のイメージが強いですが、Twitter上には「みんなで励まし合う動きが顕著だった」ことをデータで提示していました。

Twitter解析

また、「日本とアメリカのコロナに対する意識・行動調査」からもいくつかデータを紹介。「コロナが心配」という不安度がアメリカで73%なのに対し、日本は15ポイントも高い88%という結果や、「危険だから今やめていること」は、食料品の買い出し以外の全項目にわたって日本の方が高いという調査結果を報告し、日本の生活者の「自律的に自粛=ガマン」する国民性が分かると話しました。

アメリカと日本の比較

「コロナ禍 生活者ディープインサイト調査」からは、「“明るい兆しが社会に見え始めている”と感じている人はまだ10%にも満たない」という結果に触れ、今、日本社会にはやはり「温め直し」が必須になっていると語りました。

そして、在宅勤務・リモートワークの急増によって、人々がその利便性に気づいたこと、満員電車などさまざまな旧習慣に対して、コロナ禍を契機に違和感が生まれていることをデータで紹介し、社会のあり方を「編み直し」することも必要だと強調していました。

さらに、在宅開始当初には「コロナ離婚」という言葉が出ていたものの、家族との密着生活が続いた時期を経て、今はお互いが気遣い合うことに慣れてきた時期であること、健康第一で、仕事優先ではない生き方を優先する考えが上位を占めてきていること表すデータなどから、家族を含めたワークライフバランスを「見つめ直す」時であることも読み解けると語りました。

バズウォッチ最後に、コロナ期にバズったCMが、「大塚製薬・ポカリスエットのネオ合唱」や「ゼスプリのキウイ」「サントリーのBOSS」であったことを示し、「自粛に疲れた生活者にとって、今は温かなメッセージが響く時。『三つのお直し』をクライアントと共に実行していきたい」と述べました。
 

「未来予想とマーケティングソリューション」(1)未来予測とAfterコロナの見通しについて(電通 澁川修一氏)

「未来予測支援ラボ」でクライアント企業の未来を考える澁川氏の元には、クライアントから「afterコロナはどうなるのか?」という相談が後を絶ちません。未来予測支援ラボとは、電通の統合ソリューション(マーケティング)部門を母体に、クリエイティブ、メディア、テクノロジーなどさまざまな領域の経験を積んだ電通社員が集結したビジョンメーキング集団です。未来の社会について、電通らしい生活者の視点から発想しています。

未来予測カレンダー

未来予測支援ラボでは、すでに政府決定がされているワクチン開発への支援や5Gの早期展開などを踏まえ、ニューノーマル、そしてその先に向けた未来予測カレンダーを作成。そこからいつ、何を始めればいいのかを考えると、「もうすでにニューノーマルは始まっている」と澁川氏は言います。2022年のニューノーマル元年に向けて、今年の下半期から来年にかけてどれだけ準備ができるかが企業の競争力に影響するだろう、というのが未来予測支援ラボの見解です。

では、ニューノーマルに向けていいスタートダッシュを切るために、社会の変化をどのように把握すればいいのでしょうか。澁川氏は、今起きている社会変化を大きく四つに分けて解説します。

一つ目の変化は、できる限り「接触しない」社会となり、DXが大幅に進展するということ。政府の政策会議でも「対面でもデジタル」と掲げられているように、マイナンバーの普及促進も含め、紙・捺印に代表される事務作業のデジタル化を官民で加速度的に進めるという方針を例に挙げ、DXが浸透し自動化が進んだ結果、多様なデータがたまる社会になると説明。

次に挙げられる変化は、「接触」「密」「移動」が極めて貴重な機会となること。これまで抑えていたことを、「思いっきり楽しみたい」という生活者ニーズが膨らみ、旅、イベント、スポーツの価値が再認識されると予測。また、接触確認アプリなど、安心して「接触」するためのテクノロジー開発が進むと解説し、それらのテクノロジーを実装してプロトタイピングする場として2021年開催の「東京2020」が活用されるのであれば、社会や世界に対しての良い影響が期待されるとも述べました。

三つ目の変化は、社会の多重化。これまで当たり前だった効率重視志向が、社会全体で見直される可能性が高くなります。また、多拠点志向や居住エリアの嗜好の変化、働き方改革が進展することも社会の多重化のひとつです。数年単位の長期戦が予想されるコロナと付き合いながら、柔軟性がある企業経営が求められる時代に向かうだろうと話しました。

また四つ目として、グローバル経済と国際関係の変質に言及。人の移動が激減している中、ここ数年の日本経済の成長ドライバーになっていたインバウンドに大きな影響が出ています。先ほどのテクノロジーも活用しつつ、インバウンドを立て直し、日本ブランドの再構築を図るとともに日本の製品のクオリティーを世界に知らしめるチャンスと捉えるべきであると述べました。

こうした社会変化を受けて、ニューノーマル社会のトレンドはどう変わるのでしょうか。これまで予測されていた11の生活者トレンドを挙げ、今後の盛り上がり具合を矢印で表現しました。例えば、コロナ以前からのトレンドとされていた「所有から利用への移行」は、接触感染の恐れから下向きの影響を受けることになると予測する一方で、信頼できる製品を購入したいニーズなどから「透明性・真正性・本物志向」は追い風が吹くと予測しています。

Afterコロナ=New Normalの社会のトレンド

このようにトレンド予測をする中で、5G/IoT関連を中心にDXはおよそ5年早まり、2025年以降だと思われていた「全てがつながる社会」は、思っているより早く来ると強調。例えばすべてが電子チケットに変わったとしたら、エンターテインメントやスポーツはどう変化するのか?そういった発想を、DXを前提に考えていくことが、自分たちのビジネスをどうするべきかのヒントになると話しました。

他方で、生産年齢人口の減少や過疎化といった、2020年に直面する日本の社会課題自体はコロナ後も変わらないと澁川氏。未来予測支援ラボでは2030年、そしてその先の社会を見つめて、クライアントとともにやるべきことを考えていきたい、と述べました。

「未来予想とマーケティングソリューション」(2)生活者の行動/意識変化から読み解くニューノーマル時代の価値創造(電通 杉田和香氏)

「禍」という文字が使われるコロナ禍は、人の努力で防ぐことができるものだとする杉田氏。震災のような防ぎようのない天災の場合、被災者と応援者がいて復興に励みます。しかしコロナ禍は、「一億総被禍者」。みんなで防ぐために法やシステムを変え、それによって行動や価値観が新しくなっていくと述べます。

それゆえに、これから行っていくことは復興ではなく、「再構築」。生活者が再構築をしていく中で、企業も提供すべき価値やスタンスの再構築が迫られていると言います。生活者に起きた再構築はどんなものなのかを見極めるために、「どんな変化が起きたのか」「収束後どうしたいのか」の2軸で生活者に調査を実施。6月1日からの3日間、全国20~70代の男女2000人を対象に行った調査を報告しました。

生活者の生活領域における意識や行動に関する各90項目の調査結果を、コロナを契機とした「増減実態」と、収束後の「増減意向」の2軸4象限で分析。これからのチャンスの芽を見つけていきたいという思いからこの4象限分析を、「チャンスポートフォリオ」と名付けました。

チャンスポートフォリオ

この4象限マップを見ることで、収束後まで何が残り、何が回復していくのかなど、生活者の再構築のあり方が一目瞭然。コロナ禍を経たこれからの価値観、その下で消費を動かすドライバー欲求、そして各生活のテーマやカテゴリーにおけるカテゴリーヒントを発見することができると解説しました。

チャンスポートフォリオから発見した価値観と消費のドライバー欲求を、行動マップと意識マップと共に見てみると、「自然に触れ合うことは人間にとって大切である」「家族友人との暮らしを大切にしたい」といった意識・行動は定着ゾーンに位置。また「好きな人には直接会いたい」、それに伴い「おしゃれを楽しみたい」という意識・行動は回復ゾーンにあります。この結果から、人間本来の欲求に忠実な“人間性の回帰”がデフォルトとなることを予測しています。

チャンスポートフォリオ1

一方で、「残業や通勤」「儀礼的な接待」などの仕事関連、「国や大きな組織に頼っていれば安泰だ」という意識は消滅ゾーンに入っていることに注目。他力に頼ってはいられないと、自分の身は自分で守る、リスクに備えるといった意識が定着しつつあるという結果を紹介しました。つまりこれは、自分の力で生きていく自律意識・サバイバル意識が覚醒していることを意味しており、生活者はこれまでの慣習ではなく、自分の意志やルールで要・不要をジャッジするように再構築されている様子がうかがえると説明。これらの調査から、これからの消費を動かす六つのドライバー欲求を提示しました。

チャンスポートフォリオ2
6つのドライバー欲求

また、各生活・テーマにおける「消費の風向きと動かすヒント」を示す、「カテゴリーヒント」について言及。健康・食・美容などの10カテゴリーを、チャンスポートフォリオ分析。その中から「ホーム」(家族・家事・住まい)についての見解を紹介しました。

消費の風向きと動かすヒント

こうした生活者の再構築に対して、企業は何を再構築していくべきなのでしょうか。これまで人は、コストに対する価値が高い時に価値を感じていました。しかし、コロナを機にそれは変化。コストに加えて、感染などの「物理的リスク」、世間にNOと言われたくないという「心理的リスク」も含めて価値を図るようになっていると言います。

また、消費を促すにはリスクの低減と同時に対価の魅力づけも重要だとし、その分かりやすい例として、「応援消費」を挙げます。応援という大義が心理的リスクを下げ、かつ消費することで自分の欲求を満たす。「応援消費」はごく一例ですが、この両立が、今後必要になっていくと話しました。また、対価の提供は、リアルな刺激に飢えている中で、リアル体験、バーチャル体験、その融合であるニューリアル体験など、どんな体験方法で提供するのか、生活者の期待への応え方の設計も重要であると述べました。

企業価値が再構築すべき事項はいろいろあるが、その出発点は、社会や生活者にとってその企業にどんな存在価値があるのかを見直すことだと杉田氏。価値観や欲求、企業への期待といった生活者のニーズと、企業が持っている資産や思いとの接合点こそが存在意義であり提供すべき価値。そこを改めて見直し、再規定して、広告に限らない各種ソリューションのお手伝いをしていきたいと語りました。

再構築の出発点は存在意義の見直し

ニューノーマルで日本はどう変わる?生活者調査から導く未来の姿 ~「コロナ時代のマーケティングソリューション」レポート(前編)~

6月30日、「Dentsu Solution Webinar~第1弾~」を開催しました。一歩先のニューノーマルスタイル実現のために、onコロナ・withコロナの巣ごもり消費をチャンスに変えていくヒントを集めたソリューションウェビナーです。
SNSデータ分析や電通オリジナル調査から見いだした消費者変化や未来予測、また次なるマーケティング課題に対するソリューションを紹介したウェビナー内容をレポートします。

<目次>
「Twitterと独自調査から読み解くさまざまな生活者意識」(電通 谷内宏行氏)
▼「未来予想とマーケティングソリューション」(1)未来予測とAfterコロナの見通しについて(電通 澁川修一氏)
「未来予想とマーケティングソリューション」(2)生活者の行動/意識変化から読み解くニューノーマル時代の価値創造(電通 杉田和香氏)
 

 

「Twitterと独自調査から読み解くさまざまな生活者意識」(電通 谷内宏行氏)

コロナ禍において、日本の生活者はどう変化したか。谷内氏は、電通で実施したさまざまな調査データをひも解き、これからの日本には、「三つのお直し」が必要だと解説しました。

コロナに関するツイート量推移と、東洋経済オンラインでの感染者数(PCR検査陽性者数)の推移を重ねたグラフを見てみると、非常に大きなバズのピークがあるのは3月30日。それはちょうど、志村けんさんの訃報が伝えられたタイミングです。

コロナ感染者数とつぶやき数の推移

半年前から「日本の日常」は少しずつ変化していきました。最初の異変は1月末。マスクが一斉になくなった「マスク騒動」から。やがて、消毒液やトイレットペーパーまでもが消えました。3月になると「休校要請」が出て、企業も「在宅勤務」に移行する割合が増えました。ですが、桜の開花の頃には少し「ゆるみ」が見られ、少なからぬ人々が花見へと繰り出しました。「また、すぐに生活に戻れるのではないか」と安堵していた直後、伝えられたのが「志村けんさんの訃報」でした。このショックこそ、日本の生活者に本当の危機意識をもたらしたものだった、と谷内氏は解説します。

3月30日以降も「緊急事態宣言」や「ステイホーム」「東京アラート」などの自粛や規制が波状的に展開される中で、次第に日本の生活者・企業は、元の生活ではなく「ニューノーマル」への移行を強いられていった、と谷内氏。自粛生活の末に起きてしまったのは、「萎縮する日本」の姿です。コロナ禍を乗り切り、新たな日常に変化していくために必要なのは
・自粛からの萎縮状態を → 温め直す
・旧社会慣習の違和感を → 編み直す
・ワークライフの比重を → 見つめ直す
ことだと提唱しました。

三つのお直し

「緊急事態宣言」が発令された頃のツイートをバズ解析すると、かなり多かった発言は「声を掛け合って頑張ろう」という互助だったことも紹介。ネットは、非難や中傷など悪い文脈のイメージが強いですが、Twitter上には「みんなで励まし合う動きが顕著だった」ことをデータで提示していました。

Twitter解析

また、「日本とアメリカのコロナに対する意識・行動調査」からもいくつかデータを紹介。「コロナが心配」という不安度がアメリカで73%なのに対し、日本は15ポイントも高い88%という結果や、「危険だから今やめていること」は、食料品の買い出し以外の全項目にわたって日本の方が高いという調査結果を報告し、日本の生活者の「自律的に自粛=ガマン」する国民性が分かると話しました。

アメリカと日本の比較

「コロナ禍 生活者ディープインサイト調査」からは、「“明るい兆しが社会に見え始めている”と感じている人はまだ10%にも満たない」という結果に触れ、今、日本社会にはやはり「温め直し」が必須になっていると語りました。

そして、在宅勤務・リモートワークの急増によって、人々がその利便性に気づいたこと、満員電車などさまざまな旧習慣に対して、コロナ禍を契機に違和感が生まれていることをデータで紹介し、社会のあり方を「編み直し」することも必要だと強調していました。

さらに、在宅開始当初には「コロナ離婚」という言葉が出ていたものの、家族との密着生活が続いた時期を経て、今はお互いが気遣い合うことに慣れてきた時期であること、健康第一で、仕事優先ではない生き方を優先する考えが上位を占めてきていること表すデータなどから、家族を含めたワークライフバランスを「見つめ直す」時であることも読み解けると語りました。

バズウォッチ最後に、コロナ期にバズったCMが、「大塚製薬・ポカリスエットのネオ合唱」や「ゼスプリのキウイ」「サントリーのBOSS」であったことを示し、「自粛に疲れた生活者にとって、今は温かなメッセージが響く時。『三つのお直し』をクライアントと共に実行していきたい」と述べました。
 

「未来予想とマーケティングソリューション」(1)未来予測とAfterコロナの見通しについて(電通 澁川修一氏)

「未来予測支援ラボ」でクライアント企業の未来を考える澁川氏の元には、クライアントから「afterコロナはどうなるのか?」という相談が後を絶ちません。未来予測支援ラボとは、電通の統合ソリューション(マーケティング)部門を母体に、クリエイティブ、メディア、テクノロジーなどさまざまな領域の経験を積んだ電通社員が集結したビジョンメーキング集団です。未来の社会について、電通らしい生活者の視点から発想しています。

未来予測カレンダー

未来予測支援ラボでは、すでに政府決定がされているワクチン開発への支援や5Gの早期展開などを踏まえ、ニューノーマル、そしてその先に向けた未来予測カレンダーを作成。そこからいつ、何を始めればいいのかを考えると、「もうすでにニューノーマルは始まっている」と澁川氏は言います。2022年のニューノーマル元年に向けて、今年の下半期から来年にかけてどれだけ準備ができるかが企業の競争力に影響するだろう、というのが未来予測支援ラボの見解です。

では、ニューノーマルに向けていいスタートダッシュを切るために、社会の変化をどのように把握すればいいのでしょうか。澁川氏は、今起きている社会変化を大きく四つに分けて解説します。

一つ目の変化は、できる限り「接触しない」社会となり、DXが大幅に進展するということ。政府の政策会議でも「対面でもデジタル」と掲げられているように、マイナンバーの普及促進も含め、紙・捺印に代表される事務作業のデジタル化を官民で加速度的に進めるという方針を例に挙げ、DXが浸透し自動化が進んだ結果、多様なデータがたまる社会になると説明。

次に挙げられる変化は、「接触」「密」「移動」が極めて貴重な機会となること。これまで抑えていたことを、「思いっきり楽しみたい」という生活者ニーズが膨らみ、旅、イベント、スポーツの価値が再認識されると予測。また、接触確認アプリなど、安心して「接触」するためのテクノロジー開発が進むと解説し、それらのテクノロジーを実装してプロトタイピングする場として2021年開催の「東京2020」が活用されるのであれば、社会や世界に対しての良い影響が期待されるとも述べました。

三つ目の変化は、社会の多重化。これまで当たり前だった効率重視志向が、社会全体で見直される可能性が高くなります。また、多拠点志向や居住エリアの嗜好の変化、働き方改革が進展することも社会の多重化のひとつです。数年単位の長期戦が予想されるコロナと付き合いながら、柔軟性がある企業経営が求められる時代に向かうだろうと話しました。

また四つ目として、グローバル経済と国際関係の変質に言及。人の移動が激減している中、ここ数年の日本経済の成長ドライバーになっていたインバウンドに大きな影響が出ています。先ほどのテクノロジーも活用しつつ、インバウンドを立て直し、日本ブランドの再構築を図るとともに日本の製品のクオリティーを世界に知らしめるチャンスと捉えるべきであると述べました。

こうした社会変化を受けて、ニューノーマル社会のトレンドはどう変わるのでしょうか。これまで予測されていた11の生活者トレンドを挙げ、今後の盛り上がり具合を矢印で表現しました。例えば、コロナ以前からのトレンドとされていた「所有から利用への移行」は、接触感染の恐れから下向きの影響を受けることになると予測する一方で、信頼できる製品を購入したいニーズなどから「透明性・真正性・本物志向」は追い風が吹くと予測しています。

Afterコロナ=New Normalの社会のトレンド

このようにトレンド予測をする中で、5G/IoT関連を中心にDXはおよそ5年早まり、2025年以降だと思われていた「全てがつながる社会」は、思っているより早く来ると強調。例えばすべてが電子チケットに変わったとしたら、エンターテインメントやスポーツはどう変化するのか?そういった発想を、DXを前提に考えていくことが、自分たちのビジネスをどうするべきかのヒントになると話しました。

他方で、生産年齢人口の減少や過疎化といった、2020年に直面する日本の社会課題自体はコロナ後も変わらないと澁川氏。未来予測支援ラボでは2030年、そしてその先の社会を見つめて、クライアントとともにやるべきことを考えていきたい、と述べました。

「未来予想とマーケティングソリューション」(2)生活者の行動/意識変化から読み解くニューノーマル時代の価値創造(電通 杉田和香氏)

「禍」という文字が使われるコロナ禍は、人の努力で防ぐことができるものだとする杉田氏。震災のような防ぎようのない天災の場合、被災者と応援者がいて復興に励みます。しかしコロナ禍は、「一億総被禍者」。みんなで防ぐために法やシステムを変え、それによって行動や価値観が新しくなっていくと述べます。

それゆえに、これから行っていくことは復興ではなく、「再構築」。生活者が再構築をしていく中で、企業も提供すべき価値やスタンスの再構築が迫られていると言います。生活者に起きた再構築はどんなものなのかを見極めるために、「どんな変化が起きたのか」「収束後どうしたいのか」の2軸で生活者に調査を実施。6月1日からの3日間、全国20~70代の男女2000人を対象に行った調査を報告しました。

生活者の生活領域における意識や行動に関する各90項目の調査結果を、コロナを契機とした「増減実態」と、収束後の「増減意向」の2軸4象限で分析。これからのチャンスの芽を見つけていきたいという思いからこの4象限分析を、「チャンスポートフォリオ」と名付けました。

チャンスポートフォリオ

この4象限マップを見ることで、収束後まで何が残り、何が回復していくのかなど、生活者の再構築のあり方が一目瞭然。コロナ禍を経たこれからの価値観、その下で消費を動かすドライバー欲求、そして各生活のテーマやカテゴリーにおけるカテゴリーヒントを発見することができると解説しました。

チャンスポートフォリオから発見した価値観と消費のドライバー欲求を、行動マップと意識マップと共に見てみると、「自然に触れ合うことは人間にとって大切である」「家族友人との暮らしを大切にしたい」といった意識・行動は定着ゾーンに位置。また「好きな人には直接会いたい」、それに伴い「おしゃれを楽しみたい」という意識・行動は回復ゾーンにあります。この結果から、人間本来の欲求に忠実な“人間性の回帰”がデフォルトとなることを予測しています。

チャンスポートフォリオ1

一方で、「残業や通勤」「儀礼的な接待」などの仕事関連、「国や大きな組織に頼っていれば安泰だ」という意識は消滅ゾーンに入っていることに注目。他力に頼ってはいられないと、自分の身は自分で守る、リスクに備えるといった意識が定着しつつあるという結果を紹介しました。つまりこれは、自分の力で生きていく自律意識・サバイバル意識が覚醒していることを意味しており、生活者はこれまでの慣習ではなく、自分の意志やルールで要・不要をジャッジするように再構築されている様子がうかがえると説明。これらの調査から、これからの消費を動かす六つのドライバー欲求を提示しました。

チャンスポートフォリオ2
6つのドライバー欲求

また、各生活・テーマにおける「消費の風向きと動かすヒント」を示す、「カテゴリーヒント」について言及。健康・食・美容などの10カテゴリーを、チャンスポートフォリオ分析。その中から「ホーム」(家族・家事・住まい)についての見解を紹介しました。

消費の風向きと動かすヒント

こうした生活者の再構築に対して、企業は何を再構築していくべきなのでしょうか。これまで人は、コストに対する価値が高い時に価値を感じていました。しかし、コロナを機にそれは変化。コストに加えて、感染などの「物理的リスク」、世間にNOと言われたくないという「心理的リスク」も含めて価値を図るようになっていると言います。

また、消費を促すにはリスクの低減と同時に対価の魅力づけも重要だとし、その分かりやすい例として、「応援消費」を挙げます。応援という大義が心理的リスクを下げ、かつ消費することで自分の欲求を満たす。「応援消費」はごく一例ですが、この両立が、今後必要になっていくと話しました。また、対価の提供は、リアルな刺激に飢えている中で、リアル体験、バーチャル体験、その融合であるニューリアル体験など、どんな体験方法で提供するのか、生活者の期待への応え方の設計も重要であると述べました。

企業価値が再構築すべき事項はいろいろあるが、その出発点は、社会や生活者にとってその企業にどんな存在価値があるのかを見直すことだと杉田氏。価値観や欲求、企業への期待といった生活者のニーズと、企業が持っている資産や思いとの接合点こそが存在意義であり提供すべき価値。そこを改めて見直し、再規定して、広告に限らない各種ソリューションのお手伝いをしていきたいと語りました。

再構築の出発点は存在意義の見直し

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【募集告知】Funds×電通ウェビナー「ファンづくりの新時代〜業界の第一人者が語る、実践的ファンづくり〜」8/25開催

「ファンづくりの新時代〜業界の第一人者が語る、実践的ファンづくり〜」

貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」を運営するファンズと電通は、個人と企業がつながる新たなファンコミュニティ施策の一環として、8月25日に開催するウェビナー「ファンづくりの新時代〜業界の第一人者が語る、実践的ファンづくり〜」の参加者を募集している。
資本業務提携を行った両社は、ファンズが運営する貸付投資プラットフォームと個人投資家ネットワークを活用し、貸付型ファンドを通じて、個人と企業がつながる新たなファンコミュニティ施策“FinCommunity Marketing(フィンコミュニティマーケティング)”を開発、8月より本格展開している。

FinCommunity Marketingとは】 
Finance(ファイナンス)とファンコミュニティを組み合わせたファン形成のための新しいマーケティング手法。投資をきっかけとした企業と個人のファンコミュニティを形成。個人は投資を通じて、運用期間中に分配を得られるとともにお得なクーポンや商品開発者との食事会などさまざまな投資家限定イベントに参加することができる。企業側は取り組みを通じて理念や商品へのこだわりなどを伝えることができ、また意見・要望を受けとる機会を得られる。新規事業を展開する際にあらかじめファン顧客を得た状態でサービスを開始することなども期待できる。

 

【概要】

ファンづくりやコミュニティづくりに課題を感じつつも、何から始めればよいか悩んでいる経営者、マーケティング担当者の方に向けて、本セミナーではファンづくりの第一線で実績のある大手企業の元CMOや広告会社のクリエイティブディレクターが、過去事例や最新の業界動向などを交えながら、新しい時代のファンづくりについて語る。ファイナンスを用いた新しいファンづくりの仕組みFinCommunity Marketingについても詳細を解説する。

「ファンづくりの新時代 〜業界の第一人者が語る、実践的ファンづくり〜」
日時:8月25日(火)13:00〜14:50
会場:オンライン
費用:無料
主催:ファンズ
後援:電通
申し込みURL: https://funds-b2b-2020-08-25.peatix.com/

【対象者】

・事業を長期的に応援してくれるファン、株主をつくりたい企業経営者 
・ファンづくりに頭を悩ませているマーケティング担当者
・ファンに愛されるプロダクトを作りたい商品開発担当者
・FinCommunity Marketingについて詳しく知りたい方

【プログラム】

1.Opening speech 
2. 〈トークセッション〉成功事例に学ぶ、ファンづくりのエッセンス
  佐久間 崇氏  電通デジタル ECD/ACRCセンター長/執行役員
  中田 華寿子氏 アクチュアリ代表取締役
  (スターバックスCJ、ライフネット生命等役員歴任)
  仲村 亮氏   カゴメ 財務経理部IRグループ 
  藤田 雄一郎氏   ファンズ代表取締役
3.佐藤尚之氏が語る、これからの時代に必要なファンベースという考え方
  佐藤 尚之氏  コミュニケーション・ディレクター 
4.ファイナンスを用いた新しいファンづくりFinCommunity Marketingとは  
  藤田 雄一郎氏  ファンズ代表取締役 
5.〈トークセッション〉大阪王将とFundsが実践する新しいファンづくり  
  松本 吉浩氏   イートアンド マーケティング戦略部ゼネラルマネジャー
  新才 博善氏     ファンズ事業開発部副部長
6.Closing speech 

【登壇者紹介】

佐久間 崇 氏
電通デジタル エグゼクティブクリエーティブディレクター/アドバンストクリエーティブセンター長/執行役員
モットー:あらゆる企業、すべてのブランドにはこの世に存在する意味がある。私の仕事はその存在意義が存分に発揮される状態にしてあげることです。
受賞歴:カンヌライオンズ銀賞×2/アドフェスト金賞/クリオ銀賞/スパイクス銅賞/ACC賞グランプリ/ギャラクシー賞グランプリ/広告電通賞グランプリ/他多数。

中田 華寿子 氏
アクチュアリ代表取締役アクチュアリ代表取締役
広告代理店を経て、スターバックスコーヒージャパン(執行役員として日本市場での立上げ)、GABA(マーケティング部門長・常務執行役員)、ライフネット生命(常務取締役兼チーフコミュニケーションオフィサー)を歴任。現在はアクチュアリの代表取締役としてスタートアップ企業、金融機関等さまざまな業界のインキュベーション事業、マーケティング、PR等のコンサルタント業務を行う。著書「10万人に愛されるブランドを作る!」(2012年東洋経済新報社)。

仲村 亮 氏
カゴメ 財務経理部IRグループ
2000年に同社へ新卒入社し、2010年より広報・IRを担当。
2015年からIR専任で主に個人株主とのコミュニケーションを担当している。
公益社団法人 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。

佐藤 尚之 氏
コミュニケーション・ディレクター
ファンベースカンパニー取締役会長。ツナグ代表。4th代表。復興庁復興推進参与。大阪芸術大学客員教授。一般社団法人助けあいジャパン代表理事。さとなおオープンラボ主宰。
1985年電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・ディレクターとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立しツナグ設立。「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。2015年にはコミュニティ運営の会社4thも立ち上げる。2019年、野村HDとアライド・アーキテクツと佐藤尚之の三者での合弁でファンベースカンパニーを設立。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。他に「明日の広告」(アスキー新書)。「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)。「明日のプランニング」(講談社現代新書)。

松本 吉浩氏
イートアンド マーケティング戦略部ゼネラルマネジャー
1971年 大阪生まれ、48歳。神戸大学経営学部卒業。2003年イートアンド入社。大阪王将、太陽のトマト麺、アールベイカーなどの外食事業および、「大阪王将 羽根つき餃子」など量販店向け食品事業におけるマーケティングプロセスを推進。「日本一の食のライフプランニングカンパニー」を目指し、お客さまの生活課題解決、人生の彩りの提供に日々取り組んでいる。一般社団法人ブランド戦略研究所理事。

藤田 雄一郎 氏
ファンズ 代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、サイバーエージェントに入社。2007年にウェブ構築、マーケティング支援事業を行う企業を創業し、2012年に上場企業に売却。2013年に大手融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)サービスを立上げ、2016年11月にファンズを創業。
貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」を2019年1月から開始。企業に新たな資金調達の仕組みを提示するだけにとどまらず、ファイナンスとマーケティングを掛け合わせたファン形成のための新たな手法を考案。IVS Summer 2019 LaunchPad グランプリなど多数受賞。
    
新才 博善 氏
ファンズ 事業開発部副部長
慶應義塾大学商学部卒業後、野村證券に入社。3年間リテールで個人・法人向けの営業を経験したのち、本社にて債券マーケティングに従事。債券を中心とした、顧客向けセミナーや社内向け研修の企画、講師を経験。

【Fundsについて】

Fundsは、個人が1円から上場企業グループへ貸付投資ができるオンラインプラットフォームを提供。これまで上場企業を中心とした12社が組成する約30のファンドを募集。(2020年7月末日現在)。
ファンズHP:https://funds.jp/
参考URL:https://funds.jp/lp/fin-community-marketing/

「ファンづくりの新時代〜業界の第一人者が語る、実践的ファンづくり〜」

コロナショックで起きた、決済意識のパラダイムシフト

キャッシュレスにも変革(トランスフォーム)が求められつつあります。

世界で新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るう中、電通キャッシュレスプロジェクトは「コロナショックとキャッシュレス意識の変化」というテーマで、「キャッシュレスに関する意識調査」を実施しました。コロナショックで生活者の決済手段がどのように変化し、今後何が主流になるのか。今回は調査結果をベースに、生活者のキャッシュレスに対する意識の変化を明らかにします。

緊急事態宣言以降、「キャッシュレス決済の比率は増えた」は約5割

緊急事態宣言が発令されて以降、「支払いや買い物でキャッシュレス決済の比率が増えた」という生活者は46.7%となり、キャッシュレス決済の利用割合が高まっていることが分かりました。

「キャッシュレス派」のキャッシュレス比率が高まっているのは想定の範囲内ですが、「これまで現金が多かったが、キャッシュレス比率が増えた」という層が10.2%と、「現金派」の中にもキャッシュレスの増えた人がいることは注目に値します。

キャッシュレス比率は増えたか

キャッシュレス決済が増えた理由は、「スピード」や「衛生面」が上位に

では、コロナショック後に生活者のキャッシュレスが増えている理由は何でしょうか。 

キャッシュレス決済が増えた主な理由を聞くと、

「ポイントやキャッシュバックが魅力的だから」(76.8%)
「レジでの決済スピードが速いから」(54.5%)
「清潔だから/衛生的だから」(44.2%)
「オンラインでの買い物、注文が増えたらから」(34.0%)

の順で高い結果となりました。

生活者が、「ポイントやキャッシュバック」という“お得感”に加えて、「スピード」や「衛生面」を理由にキャッシュレスを活用していることが分かります。

宣言後、キャッシュレスが増えた理由

ウイルス感染対策でキーワードになっているのが、「ソーシャル・ディスタンシング」(対人距離の確保)。上位に挙げられた「スピード」や「衛生面」からは、まさにこの、生活者の安全面への意識の高まりがうかがえます。

ソーシャル・ディスタンシングと非接触

こうした中、よりスピーディかつ清潔なキャッシュレス決済手段として、世界的に注目を集めているのが、非接触決済(カード、電子マネー、モバイルなどのタッチ式決済)です。

大手クレジットカード会社による最新の調査結果(※)によると、世界では、生活必需品の購入で79%が非接触決済を利用しており、全体の82%の人が他の決済手段にくらべて清潔だと感じています。

※Mastercard Global Consumer Study
世界19カ国17,000人を対象にしたオンライン調査。日本は調査対象外。調査期間は4月10〜12日。


非接触決済について、今回の調査の中で「今後、使う回数が増えると思いますか」と聞いたところ、「増えると思う」という回答が71.2%を占め、約3人に1人は、「とても増えると思う」(33.0%)と回答しました。

非接触イラスト

非接触決済

急速にキャッシュレスが推進されているものの、いまだ海外と比較すると低水準と評される日本。その日本においても、ソーシャル・ディスタンシングを背景に、生活者の非接触決済へのニーズが急速に増大していることがうかがえます。

決済だけにとどまらない、非接触サービスの動向

「ソーシャル・ディスタンシング」を背景に脚光を浴びているのは、決済だけではありません。外出の自粛などでフードデリバリーを使う人が増えています。

そこで注目されているのがモバイルオーダー。商品をスマートフォンで注文し、事前に支払いを済ませて店頭で商品を受け取ったり、デリバリーしてもらったりするサービスです。店員との接触を減らせる上に現金のやりとりをする必要もありません。

このモバイルオーダーについても、全体の4人に1人(23.9%)が「利用している」と回答。「今後利用してみたい」という回答を含めると、全体の約7割を占めました。

モバイルオーダーイラスト
モバイルオーダーグラフ

こうしたモバイルオーダーの利用意向も、モバイル決済を中心としたキャッシュレス促進の追い風になると考えられます。

非接触は、キャッシュレス社会の推進ドライバーになり得るか

今回の調査結果から、コロナショック後の日本のキャッシュレスは着実に増えていることが明らかになりました。

その背景に、コロナによる「ソーシャル・ディスタンシング」があり、決済に「スピード」や「清潔」といった安全性を求める生活者が増えていることも分かりました。非接触という決済サービスに対するニーズ変化、モバイルオーダーのような消費スタイルの変化も伴って、キャッシュレス意識にパラダイムシフトの兆しが見えてきたともいえます。

今後もコロナショックにより、生活者のライフスタイルは変化し続けると思われます。そうした中、非接触決済は、今後の日本のキャッシュレス社会の成長ドライバーとなるのか。加えて、コロナショックのソリューションとして、奏功し続けるか、今後も見ていきたいと思います。


【調査概要】
◇調査手法:インターネット調査
◇調査時期:2020年5月30~31日
◇調査エリア:全国
◇調査対象:① 一般生活者、② 中小企業※経営者
 20~69歳男女1000人(人口構成に基づきウェイトバック集計を実施)