テレビの運用型広告が拡大。「PORTO tv」ができることは?

スタートアップなど、これまでテレビへの広告出稿を躊躇していた企業をターゲットに、“テレビの運用型広告”のサービスが広がっています。そんな中、CARTA HOLDINGS(以下、CARTA ※1)と電通は共同で、テレビ広告出稿用プラットフォーム「PORTO tv」を今年5月にリリースしました。

「PORTO tv」の強みは何か?テレビの運用型広告の今後は?

「PORTO tv」の事業主体である、CARTAのグループ会社VOYAGE GROUPでスタートアップと向き合ってきた土井健氏と、電通でテレビ局と向き合ってきた川瀬智博氏が、広告主に本当に提供すべきことは何なのか、語りました。

※1CARTA HOLDINGS:インターネット広告のプラットフォームやメディア運営などを幅広く手掛けるVOYAGE GROUPと、電通グループのサイバー・コミュニケーションズ(CCI)が経営統合し、2019年に誕生した持ち株会社。

 

VOYAGE  GROUP
(左)VOYAGE GROUP取締役の土井健氏。インターネット広告事業に長年携わり、現在は、「PORTO tv」の事業責任者として、本プロジェクトを統括。(右)PORTO tv事業本部 プロダクトグロース部 部長の川瀬智博氏。以前は電通のラジオテレビ局に所属し、全国の放送局と交渉してテレビ広告枠の購入を行っていた。

デジタル広告と同じ感覚でテレビ広告の出稿や効果測定ができる

─「PORTO tv」は、広告主に提供される専用のダッシュボードから、テレビ広告を出稿できるサービスです。出稿前のシミュレーションや出稿後の「効果検証」が素早くできるのも大きな特徴ですよね。

土井:広告主が、ダッシュボードの画面に予算、エリア、ターゲット(年齢・性別)を入力すると、どれくらい広告がオンエアされて、どの程度視聴されそうかなどの指標を、視聴率などのデータに基づき、自動でシミュレーションします。

川瀬:「PORTO tv」のダッシュボード上では、さまざまな指標が確認できます。ただ、テレビ広告の効果測定でよく用いられるGRP(※2)などの指標は、テレビ出稿の経験がない企業にはなじみが薄いかもしれません。

そこで、「デジタル広告の知見は豊富だけどテレビ広告は分からない」という企業のために、CPA、CPI、IMP、CPMなど(※3)、デジタル広告でおなじみの指標をダッシュボードに示すようにしました。これらの指標を確認することで、予算に対してどのくらい広告効果が見込めるか把握しやすく、出稿に向けた次のフェーズへ早く移行できます。

土井:広告主はシミュレーション結果を検討し、「PORTO tv」上からテレビ広告を発注します。注文は電通のラジオテレビ局(以下、ラテ局)が受け、広告主の希望内容をもとにテレビ局と交渉して、広告枠を確保します。また、広告クリエイティブの発注も「PORTO tv」上からできます。そして、オンエア後は、各指標の実測値をシミュレーションと比較しながら効果測定ができます。

川瀬:「出稿によってどのくらいアプリがインストールされたのか」「どの広告枠が効果的だったか」「出稿コストに対してどれくらい効果があったのか」など、これまでのテレビ広告の効果測定では掴みにくかったデータが得られます。しかも、AIなどを使い計測作業を自動化して、最短でオンエア翌日に把握できるスピード感も魅力で、PDCAを高速で回していけます。

効果測定に基づくPDCAについては、CARTAがサポートします。CARTAは、アドテクノロジー領域で優れた実績を持つVOYAGE GROUPと、電通グループのサイバー・コミュニケーションズ(CCI)が統合してできた組織。例えば、CPIがちょっと合わなかったなら広告枠の買い付けコストを下げるようにしたり、逆にCPIベースで今回のエリアより少しでも安く出稿できるエリアを探したり、広告効果がより高まるように支援します。

※2 GRP(Gross Rating Point):広告出稿回数ごとの視聴率を足した数値。例えば視聴率10%の時間帯に4回CMを流した場合は、40GRPとなる。
※3  CPA(Cost per Action):コンバージョン1回当たりのコスト。CPI(Cost per Install):1インストール当たりの広告コスト。IMP(Impression):広告を流した回数。CPM(Cost per mille):広告表示(インプレッション)1000回当たりのコスト。


川瀬智博氏




テレビ広告とデジタル広告の豊富なノウハウを掛け合わせる

─「PORTO tv」のように、簡単に出稿できる“テレビの運用型広告”のサービスが今、増えています。その中において、「PORTO tv」の強みは何でしょうか?

川瀬:ひとつは、テレビ広告に長年携わってきた電通独自のノウハウです。これは他社にないものだと自負しています。テレビへの広告出稿に慣れていない企業は、シミュレーションやオンエア後のレポーティングの内容をどう捉えて、次の出稿につなげればよいか悩むケースも多いでしょう。

電通には過去のテレビ広告の実績データや、認知度調査など、さまざまなデータが大量に蓄積されています。そうしたデータを分析する多様なツールやスタッフの知見もあります。これらをうまく組み合わせて、番組ごとの視聴者のペルソナを描くこともできます。レポーティング+αのアドアイスができることが強みですね。

さらに、電通には、何十年にもわたるテレビ広告のバイイングのノウハウもあります。ネットと違い、テレビの広告枠は数に限りがあります。どのエリアで放送したらいいか、どの年代に見てほしいかなど、広告主の希望を踏まえて、より効果が高そうな枠を押さえる必要があります。この買い付けはネットの自動取引とは違い、テレビ局との交渉が必要なため、機械任せではできません。

土井:川瀬さんが述べたテレビ広告のノウハウに加え、デジタル広告に精通していることも強みです。日本のインターネット広告費は今年、テレビメディア広告費を抜き、日本の広告費全体に占める割合が最も大きくなりました。しかし、デジタル広告に長年携わってきた私がテレビの領域に携わり感じたことは、テレビ広告の価値が企業にきちんと理解されていないのではということです。

テレビ広告は、実はCPMなどのデジタル指標に換算すると意外と安いこともありますし、番組間にCMが流れる広告フォーマットは、生活者に受容性の高いものです。効果をきちんと可視化・分析できれば、メディアプランニングにおいて、もっと存在感を発揮できるはず。われわれはデジタル広告に精通しているからこそ、デジタル広告とは違う、テレビ広告の価値がよく分かるんです。

川瀬:その通りで、「PORTO tv」には、電通が培ってきたテレビ広告の知見とVOYAGE GROUPのデジタル広告の知見の両方があります。それゆえに、デジタル広告にお金をかけているけどテレビには出稿したことがない企業や、デジタル広告の効果が薄れてきて次のステップを考えている企業に対し、テレビ広告の提案がシームレスにできると考えています。

土井健氏

テレビの運用型広告の市場はまだまだ拡大する

─「PORTO tv」、そしてテレビの運用型広告について今後の展望を聞かせてください。

土井:テレビの運用型広告市場は、これからもっと拡大していくでしょう。まずは競合他社も含めて、みんなでテレビの運用型広告の市場を大きくしていき、テレビ広告の価値を再認識してもらうことが大事です。今は市場形成のフェーズだと捉えています。

私は、これまで10年以上にわたりインターネット広告事業に携わってきました。スタートアップの経営者と話をする機会が多いのですが、スタートアップは、テレビ、ネット、音声、DOOH(Digital Out Of Home/デジタル屋外広告)など、さまざまな広告メディアの中で「絶対これしかない」という先入観は持っていません。事業や会社の成長のために、その時点で、どのメディアに広告を出すのが一番効果的かを考えてマーケティング活動をしています。

そうした企業にテレビ広告を利用してもらうためには、テレビ広告を試していただくためのハードルを下げることが大きなポイントです。「PORTO tv」を含め、テレビの運用型広告市場が広がる中で、「これまでより低料金で出稿できるようだ」ということは認知されてきたようです。そして今年からは、テレビ広告の効果を可視化して、ネットの運用型広告のようにPDCAを回していくためのサービス市場が本格的にでき始めたと感じています。

川瀬:私も同感です。この流れを加速させるためにも、「PORTO tv」をさらに使いやすく進化させたい。それと同時にテレビ局とも課題を共有して、どうすれば企業にとってテレビ広告が利用しやすくなるかを考えていくことも必要です。

土井:そうですね。「PORTO tv」はリリースして終わりではなく、サービスを充実させる余地はまだまだありそうです。例えば、「PORTO」には、radikoやDOOHなどのデジタルメディアの統合プラットフォームもありますが、将来的には、ここに「PORTO tv」を加えることで、各メディアの広告効果をシームレスに検証したり、さまざまなメディアを横断したプランニングができたり、キャンペーン効果を高められると考えています。もちろん、他の方向性も考えながら、「PORTO tv」を企業の成長に寄与できるものにしていきたいですね。

川瀬:最後に一つ。「PORTO tv」のようなデジタルプラットフォームをつくっても、すべてAIに任せて自動出稿ができるわけではありません。プラットフォームはクライアントの利便性を高めてはくれますが、本当に広告主に満足してもらうためには、結局は人の力が大きい。ですから、「PORTO tv」のチームでも、私たち営業サイドのスタッフは、相談のしやすさやクイックレスポンスを大事にしています。それぞれの企業にとって、テレビ広告がどのような価値を持つのかを真摯に伝えていくことも、われわれの大きな使命だと考えています。

大阪都構想住民投票に58億円の税金が! コロナ対策より都構想優先の吉村知事と維新 イソジン会見の裏側も発覚

 本日、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が告示された。メディアでは「都構想」と紹介され、その名称が広く浸透しているため本サイトでも以下「都構想」と述べるが、今回の住民投票の正しい名称は「大阪市廃止・特別区設置住民投票」であり、この住民投票で賛成が上回っても「大阪都...

組織はスモール、価値は“ジャイアンツ”な「すごい会社」を探せ!(関東・中部編)

日本にはまだまだ全国区で名の知れていない「すごい会社」が存在する
日本にはまだまだ全国区で名の知れていない「すごい会社」が存在する

全国各地の未来ある中小企業を発掘すべく、2018年にForbes JAPANと電通が立ち上げたプロジェクト、その名も「スモール・ジャイアンツアワード」。4年目となる本年度は、初のオンラインで開催されます。10月13日の、地方大会第一部ブロック(関東・中部)の見どころについて、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春氏による寄稿をお届けします。


「コロナ禍はモノサシを変えた」といわれている。これまで会社の価値を測るモノサシは、組織の規模、売り上げや収益の大きさ、知名度といったものが典型だった。しかし、コロナ禍で同じ業種でも会社によって明暗が分かれているように、規模の大きさなどでは測れなくなっている。将来の予測になると、もっと難しい。

「モノサシを変えよう」をテーマにしてきたのが、今年4年目となるForbesJAPANの「スモール・ジャイアンツ」アワードだ。組織は「スモール」でも、価値や影響力は「ジャイアンツ」。どんな工夫で「すごい会社」になったのか。10月13日から全国を4ブロックに分けた地方大会をオンラインで開催する。

今年4年目となるForbesJAPANの「スモール・ジャイアンツ」アワード「SMALL GIANTS AWARD 2021」の詳細はこちら

経営者たちが苦心してきた工夫に耳を傾ける前に、第一次審査を通過した企業をここに紹介しよう。目利きであるアドバイザリーボードが推薦してきた100社以上の企業から一次審査を通過した会社である。

世界に先駆けた自律型組織のパイオニアは立川にいた:株式会社メトロール(東京都立川市)

2009年に会社を継いだ2代目の松橋卓司社長は高収益を生む自立型組織をつくりあげた
2009年に会社を継いだ2代目の松橋卓司社長は高収益を生む自立型組織をつくりあげた。

工場の自動化に必要な「高精度工業用センサー」の、開発・製造・販売を行う。主力商材はロボットや工作機器の工具の先端の位置を精密に決める「精密位置決めスイッチ」というもの。約70カ国に展開していて、世界トップシェアを誇る。ただ、この会社が世界の最先端を走るのは、技術だけではなく、売り方と働き方にある。

中小企業には「黒字倒産」という事例が跡を絶たない。立場が弱く、特に海外での販売は売掛金を回収しにくいという事情がある。そこで同社は1998年頃からインターネットで海外への直接販売を開始。決済は円建ての前払いか、クレジットカードやPayPalによる電子決済で行い、キャッシュフローを安定化させている。

また、人事、総務、経理といった間接部門をデジタル化によって廃止し、社員が本業に集中できる体制にしている。さらに、役職もすべて廃した。全員が同じ立場で、プロジェクトごとにリーダーを決めて組織運営をしているのだ。まだ日本ではピラミッド型の組織が当たり前で、同社のような平等のホラクラシー型組織はほとんど浸透していない。これに近い「ティール組織」という概念が日本に上陸したのも、ここ数年のことだ。メトロールが経常利益率20%と高収益を実現した背景には、「働き方」の独自性があったわけだ。

勝負の土俵は海外。飲食料メーカーのスモール・ジャイアンツ:中央葡萄酒(山梨県甲州市) 

山梨のワイン業界の重鎮として知られている三澤茂計社長は一切の妥協を許さない
山梨のワイン業界の重鎮として知られている三澤茂計社長は一切の妥協を許さない

日本のワイナリーのほとんどが国内市場しか見ていないなか、いち早く海外展開を試みて、世界で勝負するのが「グレイス(GRACE)」ブランドだ。

2014年、「キュヴェ三澤明野甲州2013」が世界最大のワインコンクール「Decanter World Wine Awards」で日本ワイン初の金賞を受賞。以後、6年連続で何らかの受賞の栄誉に浴する。現社長の三澤茂計は山梨のワイン業界の重鎮として知られており、フランスのワイナリーで修行を積んだ娘の彩奈氏が栽培・醸造を仕切っている。三澤親子は、「日本のワインで奇跡を起こす』という著作があり、そのタイトル通り、親子での奮闘が描かれている。

同社は欧州に加え、近年は豪州やシンガポール、香港、台湾などにも進出し、約20カ国に対して年間1万5,000本を輸出。ワインの価値は受賞歴ではなく、つくり手によって決まると捉え、「風景がワインになっているか」という目線できめ細やかなワインづくりを追求している。

世界と地元を同時に底上げする、「管」の何でも屋:栃木精工(栃木県栃木市)

屋注射針用ステンレスパイプなど、医療分野を中心に高品質な製品を開発
屋注射針用ステンレスパイプなど、医療分野を中心に高品質な製品を開発。

スモール・ジャイアンツの審査基準のひとつに「地域への貢献」がある。栃木精工は雇用だけでなく、地場に技術を供与する共同開発を念頭に経営をしている。

「管(くだ)の何でも屋」を標榜し、注射針用ステンレスパイプ、OA用精密パイプ、分析機用精密パイプなどを展開。収益柱の医療機器向けには、歯科用麻酔針やカテーテル、ポンプチューブ、医療用コネクタ、内視鏡用構成部品といった管状の製品や、優れた操作性と強力な耐久性を持つブラシ関連製品などを手がけており、世界の医療現場に貢献。売り上げの4割を海外から稼ぎ出している。

製品の仕入れはほとんどが県内企業から。部門ごとの損益は全社員に公開し、各自が経営を自分ゴト化することで、組織力を高めており、業績は10年連続で伸びている。その一方で、地場の200社に技術を提供し、共同開発という形で底上げを図る。地域を支える重要な存在となっているのだ。直近では新型コロナウイルスの影響で需要増加が見込まれる呼吸器系のチューブを開発中である。

人体内部から宇宙空間まで「フィルター界の総合デパート」:富士フィルター工業(東京都中央区)

 

業種を問わずありとあらゆるフィルター製品をグローバルで展開
業種を問わずありとあらゆるフィルター製品をグローバルで展開

スモール・ジャイアンツでは中小企業でも世界中で商品やサービスを浸透させている例を取り上げてきたが、フジフィルター工業のすごさは、代理店や販売会社を通さずに、55カ国以上を独自でカバーしていることだ。

同社は、高精度の産業用フィルターとフィルターシステムの開発・設計・製造・販売を一貫して行うフィルターの総合エンジニアリング会社である。フィルター会社は特定産業に特化する場合が多いが、私たちの身の回りにあるあらゆるフィルターを手掛けている。一般化学、食品、医薬品、自動車、航空・宇宙、家電、IT、クリーンエネルギーなど、まさにフィルターのデパートのような稀な存在だ。

審査会での評価された点は、中小規模ながら、これだけの領域で世界で戦えている点と、フィルターの市場規模がは大きく、今後の発展が予測される点である。そしてもうひとつ、「世界で一番社員がHappy」という企業理念。社員を大事にする企業は、これからの日本社会でますます重要になる。

大手企業が次々と断念する研究を続け、「光学単結晶」で唯一無二の存在に:オキサイド(山梨県北杜市)

 

大手企業などから「その道一筋」の人材が結集する光学単結晶の研究者集団

大手企業などから「その道一筋」の人材が結集する光学単結晶の研究者集

スモール・ジャイアンツの企業に多く見られるのが、「どん底体験」だ。スタートアップが「ゼロイチ」といわれるアイデアや開発からスタートするのに対して、中小企業は背負うものがあり、マイナスからの逆転劇が多い。その多くは親の代の古い産業や負債を背負う話だが、2000年創業の技術系ベンチャーであるオキサイドは、審査会で「生き延びていること自体が評価できるが、さらに成長していることは賞賛に値する」と評価された。

オキサイドは物質・素材系の研究者集団である。光通信分野や光計測・加工分野、医療・バイオ分野などの産業分野で基板材料として使用される「光学単結晶」の開発・製造を行うほか、単結晶を利用したデバイスやモジュール、レーザー製品の量産などを展開している。

審査会で次のような声があった。「一般的に材料系の領域は研究成果を実用化するまでに時間がかかり、多大なコストも必要なことから小規模企業には難しい」。しかも、光学単結晶は大手企業が複数参入したが、そのほとんどが撤退している。オキサイドはそうした企業から事業を譲り受けて、経験豊富な人材を吸収するとともに技術を強化してきた。

オキサイドは総合的な結晶育成ができる世界唯一の企業である。スマートフォン向けではほとんどの半導体検査装置でオキサイドの基板材料が組み込まれている。会社の事業規模は年平均20%のペースで成長しており、コロナ禍でも好調だ。データセンターやIoT、ヘルスケアなどの領域で需要増が見込まれ、現在は半導体検査装置向けで対応が追いつかない状況という。次世代通信や自動運転、量子コンピューティングなど、需要拡大が期待できる。

経営者たちが語る熱いストーリーは、10月13日15時30分スタートのイベントで!全国の「すごい会社」からどこが勝ち抜くか。グランプリを目撃しよう。

「SMALL GIANTS AWARD 2021」の詳細はこちら

日本のものづくりで世界に通用するブランドとは?

「オリジナリティー」を持つ“元気な会社”のヒミツを、電通「カンパニーデザイン」チームが探りにゆく本連載。第5回は、ワインやコーヒーのような「スペシャリティーチョコレート」を提供することにこだわる「Minimal – Bean to Bar Chocolate –(ミニマル)」という会社です。


ミニマルは、設立からわずか6年あまりの若い企業だ。しかしながら、カカオ豆の仕入れからチョコレートになるまでの全工程を自社で手がけるというその手法には、斬新さだけではなく、どこか懐かしい日本のモノづくりの「骨太」な思想がうかがえる。効率経営が求められる昨今、あえてその逆を行く理由とは何か?板チョコ1枚が、1500円もの価格でも売れているその訳とは一体何なのか?36歳の若きリーダーに、その仕組みや背景、根底にある志を伺うことで、「元気な会社のヒミツ」を解き明かしてみたい。

シグニチャーであるBean to Bar Chocolate3種類。国際品評会で金賞他、多数受賞。
シグニチャーであるBean to Bar Chocolate3種類。国際品評会で金賞他、多数受賞。

難しくなくていい。単純に自分が、おいしい、楽しい、感動した。そう思えるものを、良いものだと認めたい。そんな山下社長のポリシーに、インタビュアーとしてとても共感した。

元々は企業の経営コンサルを手がけるサラリーマンだった山下貴嗣社長がBean to Barチョコレートに出合い、カカオ本来の風味を生かした味に感動したことからMinimalは始まった。

「チョコレートを新しくしたい」そう語る山下社長は100%フェアトレードのカカオと砂糖しか使わないチョコレートで日本のものづくりの繊細さを表現し、世界で戦おうとしている。コロナ禍をはじめ多くの困難がある今でも、いや、今だからこそ着実にファンの数が増え、売り上げを伸ばしている。そんな会社の元気なヒミツを、ぜひとも伺ってみたい。

文責:電通 第1統合ソリューション局 河瀬太樹
 
 

日本人ならではのきめ細やかさで、世界と勝負してみたい

「僕は1984年の生まれで、いわゆる日本が元気だった時代を知らないんです」。山下社長の話は、ここから始まった。「でも、景気がなかなか良くならないとは言われつつも、日本や日本人が持つ歴史とか、文化とか、技術力ってスゴイじゃないですか。そこをどうしたらアピールできるんだろう?それが、起業のきっかけです」。山下社長いわく、量の経済で勝てる時代はとっくに終わっている。これからは質で、世界に打って出る時代だ。質ということでいえば、日本の技術は世界のトップクラスにある。

ああ、これはコンサルなんかしてる場合じゃない。第三者的に関わるコンサルではなく、当事者としてモノづくりでこの国を元気にして、世界中の人を笑顔にしたい、と思った。それが、30歳で独立して起業した、最大の理由なのだと言う。
ビジネスとして単純にもうけたい、ということではない。50年、100年先の日本を豊かにしたい。そのために、自分に何ができるのか?そんなことを考えているときに、チョコレートに出合ってしまった。

チョコレートというものは「Bean(豆)to Bar(板)」で成り立っている製品だといわれる。ビーンを作っている人の多くは、発展途上国の人たち。その人たちがつくった豆を国際相場で安価に買い付け、大量生産プロセスで安価なチョコレート商品に仕立てて市場を回す。途上国の生産者にとっては価格が国際相場で決まってしまうため、選択肢がない。これって、どこか健全ではない!と思っちゃったんですよね。山下社長の弁は、俄然、熱さを増す。

毎年恒例のMinimalの周年パーティー。100人以上のお客さまが来場。(一番右が山下社長)
毎年恒例のMinimalの周年パーティー。100人以上のお客さまが来場。(一番右が山下社長)

ポイントは「引き算」による商品づくり

「最初に思ったことは、チョコレートを『引き算』の商品にできないか?ということだったんです」。山下社長のコメントは、意外な角度から始まった。チョコレートというものは、原料のカカオ豆を加工して、そこにいろんな種類の油を足して、ナッツだのフルーツだの、あれこれ足しに足して、製品にするというのがこれまでの常識。いうなれば、それが世界の常識だ。でも、日本人の味覚の常識は、ちがう。

素材の良さにこだわって、その良さをどこまでシンプルに、かつ、奥深いものとして表現できるか。これまでのチョコレートが「足し算」で成り立っていたのだとすれば、そこに「引き算」の概念を持ち込んでみたら、きっと世界が驚くものがつくれるはずだ。そんな直感が、ミニマルというブランドを生んだ。

ごまかしのない味、ということだ。どんなスイーツにも合う、どんなスイーツにも新たな可能性を提供できるチョコレート、ということだ。その発想力に、驚かされた。「山下印のチョコレート、おいしいですよ!たったの、150円!」みたいな、これまでのマーケティングではなく、チョコレートというものの魅力や本質に迫ることで、チョコレートというものの市場価値を高めていこう、という視点。「山下印」みたいなものや「価格」みたいなものは、後からついてくるものであって、行動の原点は「世の中をもっとよくできないか?」「世の中に今までになかった驚きと感動を提供できないものだろうか?」という思想にあるのだ、という点にまずハッとさせられた。

カカオの収穫の様子。
カカオの収穫の様子。

大事なことは「マインドの変化」だと思う

「マーケティングというと、世の中の最大公約数を見つけて、可能なかぎり失敗のリスクの少ないところへ投資する、みたいなイメージがあるじゃないですか?僕はそれ、違うと思うんですよね」と山下社長は言う。大事なことはマインドの変化を促すことである、と。

たとえば、板チョコなんてものは、コンビニあたりで150円くらい払えば手に入るもの、というのが常識。その板チョコに1500円ものお金を支払うなんて、どこかの大金持ちがやることでしょう、みたいな。「正直な話、ミニマルのチョコレートに、一般的なチョコレートの10倍の価値があるのかどうのなのか、は分かりません。味覚を数値化することはできませんからね」と山下社長は指摘する。

そこで重要なのが、マインドの変化。ああ、このクオリティーだったら、1500円払うだけの価値があるな、という共感。その共感を得るためだったら、あらゆる努力を惜しまない、と山下社長は言う。それは、モノづくりにしても、PR活動にしても、だ。売ってもうけるため、ではない。「これって、いいと思いません?人生を、ちょっと幸福にしてくれるものだと思いません?」ということへの気づきと共感がほしい。山下社長にとって、それがたまたまチョコレートだった、ということなのだ。

MinimalのBean to Bar Chocolateは味覚・嗅覚・視覚を使って楽しむ仕掛けが。取り外しできるレシピカードや、板チョコレートの形のUX設計など。グッドデザイン賞ベスト100および特別賞を受賞。
MinimalのBean to Bar Chocolateは味覚・嗅覚・視覚を使って楽しむ仕掛けが。取り外しできるレシピカードや、板チョコレートの形のUX設計など。グッドデザイン賞ベスト100および特別賞を受賞。

つくりたいのはチョコではなく、スペシャリティーチョコレート

「チョコレートを新しくしたい」というのが、山下社長の信念だ。チョコレートという製品の品質は、カカオの品質(産地)、焙煎、砕き方、配合するもののパーセンテージ、の大きく四つで決まるのだという。なるほど、その四つなのね。というのは、いかにも素人の考え方であって、その四つの順列組み合わせを試行錯誤すれば、それこそ天文学的な数値のパターンが生まれるはずだ。

山下社長は言う。「自分が『クール』だな、と思うものにお金を使う。今は、そんな時代なんです」と。効率とか、市場価値とか、そういうことではなく、「ああ、これはいいな」というものであればお金を使う。服でも、音楽でも、なんでもそうだ。

だからこそ、チョコレートの概念を変えたいのだ、と社長は言う。つくりたいのはプレミアムチョコレートではなく、スペシャリティーチョコレート。既存の概念の先にあるなんだか高級なチョコレートではなく、「えっ、チョコレートでこんなスイーツ、できちゃうの?」という驚きのあるチョコレート。その価値に気づけた自分が誇らしい。そんな気分になれるチョコレート。これは、なにもチョコレートに限ったことではない。世の中の商品、サービス、あらゆるものに今、求められているものだと思う。

20年6~12月に毎月300台限定で、月替わりの限定スイーツを発売するMinimalスイーツチャレンジ。開始から20分で完売するほど人気。
20年6~12月に毎月300台限定で、月替わりの限定スイーツを発売するMinimalスイーツチャレンジ。開始から20分で完売するほど人気。

ブランドづくりとは、「美しさの表面積」を広げていくこと

「電通の方々には、釈迦に説法かもしれませんが」という前置きの下、山下社長が指摘されたのは「ブランドづくりとは、表面積を広げていく作業だ」ということ。誰もが共感できる表面積を広げていく。誰もがいいな、と思えるプロダクトでつながっていく。その根幹にあるのは、もちろん「お得さ」とか「手軽さ」といったものもある。

でも、本当の共感は、そこにはない。「かわいいな」とか「いとおしいな」とか「美しいな」と感じる、そのたたずまいに人は魅せられるのであって、その根底にあるのは、伝統とか文化といった奥深いもの。創業500年の和菓子メーカーの社長からの「まだ、試作から48年程度のトライアル商品なんです」みたい話には、ものづくりの担い手としてゾクゾクするんです。そんな山下社長のコメントには、インタビューをしているこちらの方がゾクゾクさせられる。

コロナ禍での対応の速さ、社員や職人の意識改革、製造工程を一新しての無料配送、オンラインに切り替える抜本的な対応、その意味、これからの展望などを、早口で語る山下社長。1時間半の取材などではとても語り尽くせないという、沸き立つ情熱に圧倒された。

カカオホッド。カカオは品種や産地によって特徴を持った南国のフルーツ
カカオホッド。カカオは品種や産地によって特徴を持った南国のフルーツ

ミニマルのホームページは、こちら


なぜか元気な会社のヒミツ ロゴ「オリジナリティー」を持つ“元気な会社”のヒミツを、電通「カンパニーデザイン」チームが探りにゆく連載のシーズン2。第5回は、チョコレートのスペシャリティーカンパニー「Minimal – Bean to Bar Chocolate – (ミニマル)」をご紹介しました。

season1の連載は、こちら
「カンパニーデザイン」プロジェクトサイトは、こちら


【編集後記】

コンサルタントのご出身らしく、常に理路整然と話をされる山下社長に、取材終わりにあえて子どものような質問を投げかけてみた。「なぜ、チョコレートだったの?」と。山下社長の信念は一貫していて「日本の、あるいは日本人の良さを、世界に認めさせたい」というものだ。であれば、普通の感覚であるならば、和菓子だったり、日本酒だったり、着物だったり、和食器だったり、ということになるはずだ。

社長の答えは、とてもシンプルだった。ひとつは、職人との出会い。「このチョコ、オレンジか何かを混ぜていますか?」という驚きの味に対する質問に「いや、カカオ豆だけですよ」と言われたこと。なんでだ?どうしてこんな香り高い味に仕上がるんだ?ということを突き詰めた結果、カカオ豆というものは原産地で発酵させることでチョコレートの原材料になるのだ、ということを知った。これが、二つ目の理由なのだという。

発酵といえば、日本人の得意分野だ。醤油、味噌、酒、みりん、鮒寿司、くさや、日本人が誇る伝統技術の結晶といってもいい。直感的に「日本人のぼくがチョコレートを作ったら、とんでもないものができるのではないか?」という思いに突き動かされたのだという。その発想が、すごい。グローバリズムと言われると、ついつい欧米の文化や手法をまねる、みたいなことを考えがちだが、そうではない。真のグローバル化とは、自国の誇るべき文化や技術を、世界に認めさせることなのだ。

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多摩ニュータウン近辺で電話・オンライン診療を実施している医療機関をマップの形式でまとめました。

お近くの電話・オンライン診療に対応している医療機関が一目でわかるようにしました。今後新しい情報も順次追加訂正していく予定です。どうぞお役立てください。

多摩ニュータウンの電話・オンライン診療対応医療施設

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投稿 多摩ニュータウンの電話・オンライン診療対応医療施設多摩ニュータウン暮らしの情報センター|SINCE1995 多摩ニュータウンで生活する人の情報ページ に最初に表示されました。

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JRA川田将雅「競馬界が盛り上がる」京都大賞典(G2)「失われた半年」グローリーヴェイズはあの馬と酷似!? “最後の淀”で復活勝利は待ったなしか

「今年の上半期に関しては『失われた半年』という印象ですね」

 11日、京都競馬場で京都大賞典(G2)が開催される。グローリーヴェイズ(牡5歳、美浦・尾関知人厩舎)を送り込む尾関調教師にとっては、是が非でも勝ちたいレースのはずだ。

 昨年は香港ヴァーズ(G1)を制し、「ロンジンワールドベストレースホースランキング」で、日本馬としては5位のリスグラシューに次ぐ、9位タイとなる125ポンドの評価を受けたグローリーヴェイズ。これはアーモンドアイを上回る、日本馬でNo.2の格付けということになる。

 今年の始動戦はドバイシーマC(G1)を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で開催が中止。すでにドバイへ渡航していたグローリーヴェイズは、日本へとんぼ返りとなった。6月の宝塚記念(G1)でようやく初戦を迎えたが、17着に惨敗。これが尾関調教師の言う「失われた半年」である。

 グローリーヴェイズが京都大賞典を勝っておきたい理由には、今開催を以て京都競馬場が改修工事に入ることも挙げられるだろう。

「これまでグローリーヴェイズはキャリア11戦のうち、6戦を京都で出走しています。関東馬がわざわざ京都に遠征するのには、平坦コースが合っているという理由があります。次に京都開催が行われるのは2023年なので、今回の京都大賞典が最後の淀での出走になりそうです。

日経新春杯(G2)を制し、天皇賞・春(G1)で2着と好相性の舞台だけに、グローリーヴェイズにとって、しばらく京都開催がないことはかなり痛手となるのではないでしょうか。京都で有終の美を飾っておきたいところですね」(競馬記者)

 今回、復活を期すグローリーヴェイズにとって、新コンビを組む川田将雅騎手の存在は頼りになりそうだ。

 過去に京都大賞典で3勝を挙げている川田騎手。そのなかでも、サトノダイヤモンドを復活へ導いた勝利は印象的だった。

 16年の菊花賞、有馬記念とG1・2連勝を飾ったサトノダイヤモンドは、同年の最優秀3歳牡馬を受賞。4歳初戦の阪神大賞典(G2)も制し、天皇賞・春(G1)に挑むも3着に敗れた。歯車が狂ったのはここからだった……。

 秋は凱旋門賞(G1)を最大目標にフランス遠征をしたが、フォア賞(G2)で4着、凱旋門賞で15着に大敗。帰国後も調子が戻ることなく3連敗を喫して、まるで別馬のようになっていた。

 そんな状況で挑んだ5歳秋の京都大賞典は、川田将雅騎手との初コンビで出走。中団の位置取りからレースを進め、4コーナーで進出を開始すると抜群の手応えで先頭に立つ。最後は後続を振り切り、復活の勝利を挙げたのだった。サトノダイヤモンドがかつての輝きを取り戻した瞬間である。

 川田騎手は「復活してくれて競馬界が盛り上がると思います。ダイヤモンドが選んでくれた位置でレースを進めました」とコメント。馬を信頼した騎乗が復活のカギとなったようだ。

 グローリーヴェイズとサトノダイヤモンドには、偶然にも「5歳馬」「ディープインパクト産駒」「前走が宝塚記念で大敗」という共通点がある。

 今回も川田騎手が復活へ導き、競馬界を盛り上げることになるだろうか。観客が戻った競馬場に新たなドラマが生まれるかもしれない。