BMW 320d x-DriveツーリングMスポーツで腰痛ナシ!よいクルマはシートだ

 人によって「よいクルマ」の条件は変わるものだ。

 たくさんの人や荷物を載せたい。迫力のあるクルマがほしい、高い走行性能を持つハイパフォーマンスカーがほしい……などなど、人がクルマに求めるポイントはそれぞれ。しかし、それだけでいいのだろうか。そうした見た目や機能、パフォーマンスの能力が高いだけでは、真の意味でよいクルマというわけではないのではないか。

 そこで今回は、クルマ購入時に最も重視すべき「よいクルマ」の条件について考えてみたいと思う。

「年間8000km」以上の走行で「過走行」とされてしまうクルマ事情

 国土交通省の発表によると、自家用乗用車の年間平均走行距離は約1万575km。さらにソニー損保が2019年に発表した全国カーライフ実態調査によれば、自家用車を所有する1000人にアンケートしたところ、年間走行距離3000〜5000kmの人は31.4%、5000〜7000kmが18.8%とのこと。つまり、およそ50%の人は年間7000kmもクルマには乗っていないというわけだ。

 実はこの7000kmという数字には大きな意味がある。買取店などでマイナス査定のポイントとなる「過走行」の定義は、古いクルマを除けば、年間約8000kmとされており、この7000kmという数字に近い。新車購入して3年しか経過していないクルマでも、走行距離が3万kmを超えていると「過走行車」という扱いになってしまう。

 年間走行距離が多ければ任意保険の保険料も高くなるし、今はやりの個人リースでも、契約する年間走行距離をオーバーしてしまうと、クルマ返却の際に追加料金が発生する。

 年間8000kmというと、月間約670km。ハイブリッド車のプリウスならば、燃料満タン1回で走行できる距離だ。現在のように燃費のよいクルマが増えてくると、ガソリンスタンドが生き残れないのもよくわかろうというもの。

 そんな現代のクルマ事情のなか、筆者は取材で、4日間で約4300kmを走るというタフなロケを行った。当初は1週間の予定だった。東京から高速道路を利用して四国の高知、愛媛を経由し、瀬戸大橋を渡って九州・鹿児島へ。そして九州を高速道路で回り、東京へ戻るというプラン。しかし運悪く台風10号が発生し、まさに上陸するタイミングに当たってしまい、急遽4日間で行うことに。しかも復路は愛知や静岡ですでに雨が降り始めていたため、嵐を避けるために名神から北陸道、上信越道、関越道を経由したことでプラス200kmとなってしまった。しかし結果、雨にも降られず道も空いており大変快適に東京まで戻ってくることができた。

BMW 320d x-Drive ツーリング M Sportsで、腰痛が発生しないドライビング!

 というわけで前置きが長くなったが、4日間で約4300kmという非常識な距離を走行したからこそ、本当の意味で「よいクルマ」の条件が見えてきた、というわけなのだ。今回ドライブしたのは、BMW 320d x-Drive ツーリング M Sports。現在日本のクルマ市場においてステーションワゴン人気は下火となっているが、欧州ではこうしたステーションワゴンに荷物を詰め込み、大陸をロングドライブしてバケーションに向かうといったことも珍しくない。現代日本で人気のミニバンやSUVといったクルマは、ドライバーの目線が高く運転しやすい反面、重心が高くなるためカーブを曲がるときなどはクルマの傾きが大きくなってしまう。しかしステーションワゴンはセダン同様に重心が低いため、クルマの傾きも少なく、無駄な揺れが起きないので、乗員全員が疲れにくい。

 BMW 320d x-Drive ツーリング M Sportsの高い走行性能、そして精度の高い運転支援システムに助けられたのは間違いないが、1日12時間以上運転していると、どうしても気になるのが腰痛だ。しかし今回、これだけ長時間の運転を毎日続けていても、腰痛はまったく起きなかった。さらに後席に同乗者がいたのだが、こちらも腰痛はまったく起きず快適だったという。そう、つまり本当に「よいクルマ」というのは、結局のところどんなに乗っても腰痛が発生しない「よいイス」を装着しているクルマなのではないか、と思うにいたったのだ。

 多くの人は新車を購入する際、販売店で試乗をすると思うが、その時、主に何に注意するだろうか。エンジンのパフォーマンス、視界、ユーザーインターフェイスなどのユーティリティ……いろいろとあるだろう。しかし、限られた試乗時間で最も重視してもらいたいのは、そのクルマのシートが自分の身体にフィットするかどうか。そして違和感がないかどうかだ。

実はルノーやプジョー、シトロエンといったフランス車のシートも非常に疲れにくい

 年間200台以上のクルマに接している筆者は毎回、シートの座り心地をチェックするようにしている。ドライバーシートに座り、スライド、リクライニング、そしてステアリングの高さなどを調整して正しいドライビングポジションを作る。その際、尻や太もも、肩回り、腰などにシート面がキチンとフィットするかどうかをチェックする。この時に最も重要なのは、「本当に正しいドライビングポジション」が作れているかどうかだ。よいシートは乗員の身体を広い面で支えてくれる。そのことによって圧が均等になるため、圧倒的に疲れが出にくい。これは座ってみれば数分でわかることだし、逆に違和感を感じ「なんか落ち着かない……」という感覚が生じるのであれば、それはつまり、身体にシートがフィットしていない、要は少なくともあなたの身体には合っていないのだ。

 その点、今回ドライブしたBMWやメルセデス・ベンツといったドイツ車はしっかりと作り込まれているのが一般的だが、実はルノーやプジョー、シトロエンといったフランス車のシートも、絶品で非常に疲れにくいと感じさせられることが多い。国産車では日産のゼログラビティシートをはじめ、マツダ、スバルはシート作りにこだわっていて、ロングドライブをしても非常に疲れにくい。ちなみにこれは新車だけでなく、中古車でも同じこと。たとえもともとの形状がよかったとしても、シート内部の素材がへたっているとしっかりと身体が支えられず、結果として運転中の疲労増加へと繋がってしまう。

 期せずして苛酷なロケとなったことから、筆者はクルマシートの重要性を改めて感じることができた。もちろん運転支援システムなどの最新機能も大切だ。しかし新車を試乗する際には、そうした機能だけに飛びつくことなく、シートの座り心地もしっかりとチェックしていただきたい。それは、スペックや数値には表れにくい、クルマの「本当の性能の高さ」を表すものなのだ。

(文=萩原文博/自動車ライター)

実はあまり知られていない不動産投資の“おいしいメリット”…不労所得や税金低減も

はじめに

 はじめまして。不動産投資コンサルタントの姫野秀喜です。私の連載する「確実に成功するための不動産投資の学校」へようこそ。

 コロナ禍で会社の給与以外の収入源を求める人が増え、不動産投資に注目している人も増え続けています。この記事を読んでくださっているということは、あなたは少なくとも不動産投資に興味がある方だと思います。

 そういった皆様に向けて、確実に成功できるための知識や不動産にまつわる時事問題などをお伝えしていきます。読者の方はこの記事を読むことで不動産投資のメリットやデメリット、やるべき具体的なアクション、やってはいけないことなどを理解することができます。

第1回:なぜ不動産投資なのか?不動産投資の魅力とは?

 投資と聞いて多くの人が一番にイメージするのは「株」でしょう。それ以外にも外貨を取引する「FX」やビットコインなどの「暗号通貨(仮想通貨)」を頭に思い浮かべる人も多いでしょう。

 昨今ブームが起きていたとはいえ「不動産投資」は投資全体で見ればマイナーなカテゴリーといえます。それもそのはずです。日本で株式投資をしている人数は約2,550万人(※1)であるのに対し、不動産投資をしている人数は約53万人(※2)しかいないのです。日本人の25%が行っている株式投資と異なり、不動産投資を行っている人は日本人の1%にも満たないのです。

 不動産投資は株式投資と異なり、まとまったお金がないとスタートできないという参入障壁の高さや、パソコンで手軽に売買できない不便さなどが理由で、まだまだマニアックな一部の人の投資なのが現状なのです。

 しかし、そんなマニアックな投資ですが、それを補って余りある魅力が不動産投資にはあるのです。「不動産投資の学校」では、まず、その魅力について述べるところから始めます。不動産投資の魅力には、下記のようなものがあります。

【不動産投資の魅力】

・働かなくても良い(不労所得が手に入る)

・お金を借りて行える(元手が少なくてもできる)

・生命保険を解約できる(団体信用生命保険に入ることができる)

・税金が安くなる

・動きが遅く安定している(暴落しても逃げ出す時間がある)

・実際の土地・建物が存在する(実物資産である)

・一国一城の主になった気分になる(まぁこれは気分の問題)

働かなくても良い

 多くの方が一番にイメージする魅力は「働かなくてもよい(不労所得が手に入る)」ということだと思います。これは半分正しくて、半分は間違いです。確かにキャッシュフローがしっかりと残る優良な物件を購入することができれば、投資家である大家さんがやることはほとんどないので、不労所得といえます。

 しかし、キャッシュフローがしっかりと残る優良な物件を探し出すためには、大量に物件を見て探しまくるという行動が必要であり、その点においては労働をしているからです。キャッシュフローがしっかりと残る優良な物件は投資物件全体の1%も存在しないため、多くの場合においてすぐに売れてしまいます。ゆえに誰より早く動いて誰より早く融資を付けて購入することが重要となってきます。そのため、購入するまでは人一倍労働しなくてはならないからです。

 そうは言うものの、株やFXであれば購入後も日々株価や外貨の推移を見ておかなくてはならないのに対して、不動産は買ってしまえば、後はほったらかしにしておいても大きな問題は起きないので、やはり働かなくてもよいといえるでしょう。

お金を借りて行える

「お金を借りて行える(元手が少なくてもできる)」というのも不動産の魅力です。投資は自己資金で行うのが一般的ですが、不動産投資では物件価格の1~2割の自己資金があれば、残りは融資を使うことができるからです。FXなどを除くと自己資金にレバレッジをかけられる投資というのは、不動産投資くらいのものでしょう。

 また、不動産投資のレバレッジはFXのレバレッジに比べ安定的なのが良い点です。不動産投資のレバレッジは長期の事業性融資なので、月々の支払は固定されています。支払いが固定されているので問題なく経営できていれば安定します。

 一方、FXのレバレッジはある日突然、通貨が大暴落するとロスカットで預けていた証拠金はすべて消え失せるため、あまり安定的なレバレッジとはいえないでしょう。

生命保険を解約できる

 不動産投資ではアパートやマンションなどの物件を購入する際に、銀行が指定する団体信用生命保険(以降、団信)に加入することがあります。この団信は優れた保険で、本人が亡くなった場合や仕事ができないような障害を持ってしまった場合などに、物件の借金がゼロになるというものです。

 あまり想像したいことではありませんが、万一自分になにか不幸な出来事があったとしても安心できます。残された家族は借金が完済されたアパートやマンションを手にすることができるため、そのまま保有して月々の家賃収入で生活することも、売却して大金を手に入れることも可能だからです。そのため、今家族のために入っている「生命保険を解約できる」のです。

税金が安くなる

 高所得なサラリーマンは税金をたくさん納めていますが、不動産投資では減価償却費などを計上することで、税金を安くすることも可能です。減価償却費についてはまた別の機会に解説しますが、不動産投資家は息をするように減価償却費の使い方を身につけておかなければなりません。

動きが遅く安定している

 不動産は「動かない資産」というように非常に動きが遅いです。動きというのは、売買スピードなどを意味しています。株やFXでは1秒ごとに価格が上下し、一瞬で大暴落してしまうこともありますが、不動産ではまずありえません。

 不動産の売買は一般的には3カ月や6カ月、1年以上かかることもあり、非常に時間がかかります。逆説的ではありますが、そのため不動産は非常に動きが遅く安定しているのです。動きが遅いため、仮に暴落しはじめたとしても、逃げ出す余裕があるのです。

実際の土地・建物が存在する

 それから不動産は実際の土地・建物が存在する実物資産です。企業が倒産するとただの紙切れになってしまう(すでにデータ化され紙すら存在しない)株に対し、実際にその場所に存在する土地・建物を購入するわけですから当然です。

 実際にモノが存在するわけですから、少なくとも価値が0になることはないのです。ただし、もちろん都心の価値の高いエリアでキャッシュフローがプラスになる優良物件を購入していることが大前提です。

一国一城の主になった気分になる

 これに加え、株式やFXのようにデータではなく土地・建物が存在するため、「一国一城の主になった気分になる」ことができるというのも、ある意味で不動産投資の醍醐味といえます。まぁ、これは気分の問題ではありますが、パソコン画面に映し出された株式やFXのチャートを見るよりも、自分のアパートやマンションを見るほうがモノを保有する欲求を満たすことができるのではないでしょうか。

 このほかにも不動産投資にはさまざまな魅力が存在するわけですが、これらの魅力を手にすることができるのは、あくまで努力して成功した不動産投資家だけです。不動産投資も投資である以上、当然リスクが存在します。不動産業者の口車に乗せられてダメな物件を高値で買ってしまうなど、失敗した人はごまんといるでしょう。

 不動産投資は他の投資に比べ金額が大きいため、失敗するとリカバリーするのが非常に困難です。そのために必要なリスクについて、またそのリスクを回避する方法については今後少しずつ解説していきたいと思います。

 ということで、次回は不動産投資のリスクについて解説します。

(文=姫野秀喜/姫屋不動産コンサルティング株式会社代表)

※1:日本証券業協会による「顧客口座数」より

※2:統計局データより不動産賃貸を行っている116万世帯から、相続によるものを除いた

【プロフィール】

姫野秀喜(ひめのひでき)

姫屋不動産コンサルティング(株)代表。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で日本を代表する大企業の会計・経営コンサルティングに従事。独立・開業後、年間100件以上の実地調査から得られる詳細な情報と高い問題解決力で、一人一人に合致した戦略策定から購入、融資、賃貸経営の改善までを一貫してサポート。不動産に関する記事は週刊ダイヤモンド、週刊ビル経営、ニュースサイト等に掲載されている。発行するメルマガは2万5千部を超え、現在行っている無料相談は不動産を見極める力が身につくと評判。融資が厳しい現状でも、変わることなく1億円大家さんを多数プロデュースしている。著書に「確実に儲けを生み出す不動産投資の教科書」(明日香出版社)、「誰も教えてくれない不動産売買の教科書」(明日香出版社)、「売れない・貸せない・利益が出ない負動産スパイラル」(清文社)がある。

【書籍】

「確実に儲けを生み出す不動産投資の教科書」(明日香出版社)

「誰も教えてくれない不動産売買の教科書」(明日香出版社)

「売れない・貸せない・利益が出ない負動産スパイラル」(清文社)

原因不明の体調不良、銀歯や刺身が原因かも…重金属蓄積で免疫低下、糖尿病や認知症の恐れも

 我々は通常通りの生活を送るなかで、知らず知らずのうちに有害な重金属を摂取していることをご存じだろうか。何気ない体の不調は、重金属の毒性によるものかもしれない。また、重金属の蓄積は認知症を招くリスクにもなる。

 予防医療の意識が高まる今、蓄積した重金属による健康被害を防ぐため、キレーション治療が注目されている。

 キレーション療法とは、体内から有害な重金属や老廃物を取り除く治療のことで、血管内に薬剤を点滴して行う。キレーション治療を行う麹町皮膚科・形成外科クリニック院長、苅部淳医師に話を聞いた。

「キレーション治療は細胞外の重金属を排出することを目的とし、デトックス治療は細胞内の重金属を排出します。細胞の外に蓄積しているキレート剤が届く範囲の重金属は、腎臓を通して尿中に排出されます」

 重金属の蓄積は、後に大きな健康被害を引き起こすという。

「重金属の蓄積は血管の障害を引き起こし、高血圧、動脈硬化、心臓疾患、視力障害、肌の衰えなど、加齢に伴う変化すべてに関与します。血管の状態が若ければ、身体の若さを維持できるのです。キレーション治療によって、老化した血管を若返らせ、体に生じてくるさまざまな加齢現象の進行を遅らせることができます」

 マグロ、クジラなどの刺身を好んで食べる日本人は、水銀の蓄積量が欧米人に比べて2~6倍も高いといわれている。また、水銀は銀歯(アマルガム)、ワクチンなどからも知らず知らずのうちに体内に取り込まれている。特に妊婦に関してはマグロ類の摂取を控えるべきことは広く知られている。

「自然界に存在する無機水銀は消化管からほとんど吸収されませんが、人間がつくり出したメチル水銀は容易に吸収されます。体内に取り込まれたメチル水銀は、妊婦の胎盤を通じて胎児に移行したり、さらには血液-脳関門をも通過して脳に到達してしまいます。メチル水銀は神経系に作用し、高濃度に暴露するとヒトに神経障害や発達障害を引き起こします。胎児の発育中の脳はメチル水銀に対する感受性が高いため、比較的低濃度の暴露であってもその影響が懸念されています」

 水銀だけでなく、アルミニウム、カドミウム、ヒ素、鉛、ニッケル、ベリリウムなどの有害重金属は、食事、水、空気、日用品などから体内に取り込まれ、さまざまな不調を引き起こす。

「水銀に限らず有害重金属により、さまざまな疾患を引き起こします。たとえば、過敏性腸症候群や便秘、リーキーガット、リウマチ、骨粗鬆症、慢性疲労症候群、甲状腺ホルモン異常、副腎疲労、不妊症、自閉症、不眠、認知症、アトピー性皮膚炎、肌荒れ、免疫低下、アレルギー、糖尿病、肥満、やせすぎなど。重金属の解毒とそれぞれの疾患の治療法を併用することで、さまざまな慢性疾患の改善に役立ちます」

 原因不明の不調が続く場合は、有害重金属の蓄積を疑ってみることも必要かもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)



吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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ニューノーマル時代の店舗とは。5Gが生んだ「AR接客」

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center」(FCC)は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする70名強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

今回特集するのは、KDDIが9月26日にオープンした「GINZA 456 Created by KDDI」。銀座の一等地に位置し、5Gを体験できるコンセプトショップとして誕生しました。コロナ禍の中、体験を軸にした店舗をつくるのは、さまざまな苦労があったといいます。FCCメンバーも店舗の空間設計からPRまで多岐に関わり、そのハードルをテクノロジーとクリエイティビティーで突破しました。

ニューノーマルといわれる時代の中で、企業と人の“接点”となる店舗にはどんな工夫が求められるのでしょうか。KDDIの坂本伸一氏(コミュニケーション本部宣伝部 ブランドマネジメント室長 兼 戦略グループリーダー)と、電通のプロデューサー加藤俊文氏、FCCメンバーである電通の南木隆助氏が振り返りました。

KDDIの坂本伸一氏、電通加藤俊文氏、電通南木隆助氏
(左:電通 加藤俊文氏、中央:KDDI 坂本伸一氏、右:電通 南木隆助氏)
※この取材は、オンラインで行われました。

「見る・触れる・集まる」が厳しい中、店舗はどうあるべきか

坂本:GINZA 456 Created by KDDI(以下、GINZA 456)は、5Gを体験できるコンセプトショップです。店名の「456」は、住所の中央区銀座4丁目5番6号が由来であると同時に、4Gから5G、その先へつなぐという意味も込めています。文化の発信地である銀座で、他のauショップとは異なる空間にしました。auではなくKDDIを冠した特別な店舗です。

「GINZA 456 Created by KDDI」
「GINZA 456 Created by KDDI」

加藤:山野楽器の本店が入っているビルの、B1F、1F、2Fが使われています。 私はKDDIさんの仕事をここ数年担当しており、テナント交渉からコンセプト設計、PRまで、企画全体を統括しました。

南木:僕は店舗のデザインとその統括を担当しました。店舗の企画・構想から、店内の空間デザイン、設計、外観まで。B1Fが5Gを体験できるイベントフロアとなっており、1Fはエントランスショールーム、2Fは販売ショップとなっています。この2Fも、KDDIの旗艦店として、最上級のおもてなしをする空間というコンセプトです。とはいえ、やはりGINZA 456の目玉となるのはB1F。5Gを体験できるスペースですよね。

坂本:はい。5Gの提供がスタートしましたが、本当の意味で浸透させていくには「体験」が重要だと思っています。例えば4Gのスタート期は、スマホというデバイスが同時に普及したタイミングで、消費者がスマホを新たに買う中で自然と4Gも普及していった。しかし今は、スマホがほぼ行き渡っており、4Gのようにデバイスの買い替えから普及させるのは期待しにくいでしょう。その中で5Gを浸透させるには体験価値が重要で、多くの方にとってまだ「想像」でしかない5Gを「体験」してもらうことで魅力を感じていただく。結果、5Gを使う人が増える。そんな場所にしたいと考えました。

加藤:この場所でどんな体験を用意すべきか、時間をかけ議論を重ねていたのですが、途中からコロナの問題が深刻化し……。密や接触を避けなければならない中で、どういった体験がよいのか、そもそも店舗はどうあるべきか。かなりの難題を突きつけられました。ニューノーマルの時代に求められることと、店舗での体験は相反する要素も多いですから。

坂本:まさに「見る・触れる・集まる」が難しい中で、さあどうしましょうと。皆さんとひたすら議論する中で生まれたのが、タレントの池田エライザさんによる「AR接客」でしたね。アイデアが出たとき、これを「ニューノーマル時代の接客体験」にしようと。

池田エライザさんの「AR接客」
池田エライザさんの「AR接客」

加藤:そうですね。GINZA 456では、予約されたお客さまに入り口で5G対応スマホをお貸しします。そうして店に入ると、そのスマホのARで池田エライザさんが登場し、案内してくれるのです。「GINZA 456を案内する池田エライザです」と自己紹介するところからスタートして。

坂本:AR接客は今後につながるアイデアだと感じています。お客さまとの新しいインターフェイスが、コロナ禍での店舗を考える僕らの議論の中で生まれて実現できたのはよかった。

コロナ禍を踏まえた体験コンテンツと、展示スペースの設計

南木:B1Fの体験コンテンツも、すべてお客さまの手にある5Gスマホを通して見るものにしました。世界中の好きな場所に行ける「au XR Door」や、バーチャル空間の横浜スタジアムを歩き回れる「バーチャルハマスタ」など。

地下1階の展示スペース
地下1階の展示スペース

加藤:この状況なので、人を集めるイベントは難しいですし、実物展示には多くの人が触れる、集まるリスクがあります。であれば思い切り舵を切って、お客さまが一人でスマホを見ながら体験できるものにしようと。なるべく感染リスクを抑えた形を選びました。このあたりは、KDDIさんと一緒に議論しながら、だんだんとアイデアが膨らんできたのを覚えています。

坂本:決して形式的な議論ではなく、本当にフリーハンドで雑談しながらでしたよね(笑)。リモートワークだったので、パワーポイントで出てきたワードや図をメモしながら。未来の店舗やサービスを考えるとき、言語化できないことはたくさんあります。それをプレゼンや会議で形式的な話すと、中身がぼやけたままになりやすい。むしろ、お互い自由に思いついたことをどんどんブレストしながら、アイデアを積み上げて明確化する方が合っていると思いました。

南木:未来を見据えるという意味では、B1Fの構造もポイントですよね。壁全面をスクリーンにし、その他に可動式の壁も設置。投影するプロジェクターも、自由に設置場所を決められるよう天井を工夫しました。その結果、B1Fは「展示を自由に変えられる仕様」となっています。これは、KDDIさんが企画当初から決められていたことですよね。

地下1階の展示スペース

坂本:未来の体験をテーマにしている以上、今後予測できない変化がたくさん起こるはずです。想像すらできないテクノロジーやサービスが出てくるかもしれません。さらにコロナ禍で先が読めない今、ハードも、どこまで柔軟に変化できるかが重要になります。いろいろな未来に対応できる空間設計にしたいと強く考えていました。

サイバー世界へのゲートを示す、エントランスのファサード

南木:地下の設計以外にも、KDDIさんは企画当初から一貫して大切にしていた点がありました。それがGINZA 456という店名と、エントランス(店舗入り口)の見せ方ですよね。エントランスには、LED映像が流れるファサードを設置。このデザインも僕が担当したのですが、使用するLEDを決める際に、工場まで足を運んで、見え方の確認をしようとLEDを簡易的に組んで実験したり。KDDIさんのこだわりを強く感じました。

GINZA 456のエントランス
GINZA 456のエントランス

坂本:5Gはサイバー世界の進化であり、エントランスは、まさにリアルからサイバーへの入り口。銀座の街中を歩いていた人が、サイバーの世界に飛び込む。そのゲートとしての世界観を表す必要がありました。5Gの普及に体験が重要な中で、どれだけ気軽に敷居をまたいでもらうか。ここが鍵でした。

加藤:エントランスの非現実感がサイバー世界へのゲートになっていますよね。そうして中に入ると、未来のコンテンツ・空間が広がっている。そういう体験設計になったのはよいかなと。

南木:ですので、ファサードのデザインは工夫しました。大きなファサードを取り付ければインパクトは出ますが、店舗の外壁面積には限りがあります。そこで、ファサードを外壁からエントランス、店内までうねるようにつなげて、奥行きを出しました。これにより、外から見たときのインパクトが生まれたと思います。

一方、エントランスのサイドに展示スペースを設けることを当初提案していました。これだけの土地なので、スペースを余らせたくないという思いもあり(笑)。ですが、KDDIさんは「エントランスは象徴的に強く見せたい」と。極力モノをなくし、削ぎ落とした空間にしたいと話されました。その覚悟というか、ブレない姿勢は印象に残りましたね。

デジタル化が進むほど、接点を生む「ブランドスペース」が重要に

南木:今回の店舗のように、ブランドとしての意思を発信する空間は今後重要になると思っています。FCCではそれを「ブランドスペース」と呼んでいるのですが、KDDIのブランド戦略に携わってきた坂本さんはどう感じていますか。

坂本:リアルなスペースの役割は今後増していくと思いますね。ブランドを築く上で一番大切なのは、お客さまとの接点づくり。コミュニケーションする場や機会を生むことです。デジタル化が進むほど、その接点は簡単にはできなくなってきました。そこで、リアルの役割が重要になる。サイバー世界が進化するほど、お客さまとの接点となるリアルスペースが求められると思っています。その中でKDDIとしてのブランドを感じていただくのが大切です。

南木:僕が今回の設計で学んだのは、5Gの体験コンテンツという「ソフト」と、建物という「ハード」が絡み合った空間になっていることです。ソフトを最大限生かすためのハードになっているし、どちらかが違えばこのスペースは成立しない。高次元で融合しています。ブランドスペースは、リアルを軸にブランドを伝えていく場所ですが、今後はソフトとハードが融合した空間が増えていくのかもれません。

坂本:私たちとしても、未来の方向性は無限にあるので、変化を前提にした施設ができてよかったです。今は5Gのスマホを中心とした展示ですが、今後はスマホに限らないコンテンツや楽しみも用意したいので、どんどん入れ替えていきます。もちろん、自社だけでなくパートナー企業とコラボした体験施策も考えていきたい。最新のテクノロジーに敏感な方だけでなく、普通に銀座を歩いていた方が“ちょっと先の体験”を簡単に味わえる。そんな場所にしたいですね。

ミッション・ビジョン・バリューを、穴埋めでつくってない?

はじめまして、コピーライターの上田太規です。スタートアップのコミュニケーション支援チーム・TANTEKI の活動に参加しています。

TANTEKIはステートメント作成などを通して、経営者の思いやビジネスアイデアを社内外に「伝わる形」にデザインする仕事をしています。

突然ですが、皆さんの会社のミッション・ビジョン・バリュー(Mission・Vision・Value)って何でしょう?以下、本稿では「MVV」と略します。

これまでさまざまな企業のMVVに触れてきましたが、「ミッションとビジョンがごっちゃになっている」「社内外にちゃんと伝わっているのかな?」と感じることが少なくありませんでした。

MVVは、企業の背骨のようなものです。コロナ禍で社員の働き方や経営環境が変化する中、新たにMVVを設定する企業だけでなく、すでにあるMVVについても、これからの企業成長のために、そのMVVが本当に機能するのか確認する必要がありそうです。

そこでTANTEKIでは、さまざまな企業のMVVを採集してみました。本稿では 「伝わる、機能するMVV」について考察します。

【目次】
そもそもミッション・ビジョン・バリューってなんなんだ? 
いろんな企業を調べて見えてきた、「ミッションとバリュー、二つにしてもいい説」
伝わる、機能するミッション・ビジョン・バリューのために



 

そもそもミッション・ビジョン・バリューってなんなんだ?

MVVについて考えるに当たり、その定義をまず確認しておきましょう。

MVVは、経営学者のピーター・F・ドラッカー氏が提唱したもの。それによると、次のように定義されています(※)。 

MVV1

※ミッション・ビジョンの定義は、『ドラッカー5つの質問』(著者:山下淳一郎)から引用。


実際、MVVは多くの企業が活用しているフレームですが、なぜ必要なのでしょう? 

TANTEKIの主なクライアントであるスタートアップでは、会社が大きくなり社員が増えるにつれて、社長の考えや熱量が、社員一人一人に届きにくくなるケースが多く見られます。この問題は「30人の壁」ともいわれていますが、この壁を乗り越えるためにはMVVの設定・見直しが有効で、それを行うことで皆が同じ情熱を持ち、同じ方向に走ることができるのです。この他にもMVVは、事業判断や評価制度の指針になる、採用で求める人材を明確にできるなど、さまざまな面で効果を期待できます。

いろんな企業を調べて見えてきた、「ミッションとバリュー、二つにしてもいい説」

「伝わる、機能するMVV」を探るため、TANTEKIは、数十社のMVVを考察しました。その結果、主に「三つの型」に分類できることが分かりました。

①漢字型
MVVというフォームではなく、別の呼び名で設定しているタイプ。ミッションやビジョンに当たる経営の考えを「綱領」「社是」「宣言」などとし、バリューに当たる内容は「運営方針」や「行動方針」としてまとめ、これらを組み合わせて企業理念として設定。創業100年以上のナショナルクライアントに多い。

②MVV型 
「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を全て設定しているタイプ。

③MV型
「ビジョン」を置かずに、「ミッション」と「バリュー」の二つに絞って設定しているタイプ。スタートアップや、まだ社歴が浅い成長中の企業に多い。

ここで注目したいのは、三つ目のビジョンを置かないMV(ミッション・バリュー)型の存在です。企業が、この独自のMV型を取り入れている背景には、MVV型での「ある落とし穴」が絡んでいるのでは…と思ったのです。それが、「ビジョンのところで、再びミッションを語っている」という問題です(つまり、ミッション・ミッション・バリューになっている!)。

バリューについては、「行動指針」と役割がはっきりしていますが、ミッションとビジョンはどうも混同しがち。それでは、MVVが伝わりづらくなる「ミッションを二度語る問題」について、そのパターンを見てみましょう(下記のミッション・ビジョンは、例を示すためにTANTEKIで書いた架空のものです)。

パターンⒶ
ミッションが抽象的過ぎるせいで、ビジョンのところでも具体的なミッションを再び語ってしまう。

MVV2


パターンⒷ
ミッションが語り切れていないため、ビジョンのところで、ミッションを補足する内容を語ってしまう。

MVV3


では、ミッション・ミッション・バリューなってしまわないために、どうすればよいでしょう?

例えば、パターンⒶの場合は、具体性のあるミッションを再設定してミッションとビジョンを一本化するといいでしょう。

パターンⒷの場合は、ミッションを補足する「ミッションステートメント」を設けて、ミッションとビジョンを一本化する方法があります。

このように、混同しがちな場合には、ミッションとビジョンを一本化するMV型で整理すると、伝わりやすくなります。これが今回の考察から見えてきた「ミッションとバリュー、二つにしてもいい説」です。

伝わる、機能するミッション・ビジョン・バリューのために

前項でシンプルな「MV型」を挙げましたが、もちろんミッションとビジョンの役割分担がはっきりしていれば、「MVV型」は有効です。

ビジョンは、
「〇〇のプラットフォームになる」
「No.1◯◯カンパニー」
「◯年後に、売上◯◯億円」
など、ミッションをどの方向に発露するのか、「ミッションが実現したときの姿」になります。つまり、

・ミッション=主観的
・ビジョン=客観的

な視点が大切です。ビジョンでは中長期的にどう見られたいかを客観的に捉え、企業の輪郭をはっきりさせる。そうすることで、ミッションとの役割も整理され、伝わりやすくなります。MVV型にせよMV型にせよ、大切なのは、設定した内容が、世の中や社員に伝わるかどうかです。

MVVのフレームの中に言葉を押し込むような穴埋めが目的になると、ミッションとビジョンを混同してしまうなどして、MVVの本来の役目を果たせません。まずは、伝わるミッションを設定した上で、必要に応じてビジョンをつくるか決める、という順番がいいのかもしれません。

私たちが採集した「伝わるMVV」では、ミッションとビジョンで語る視点がはっきりしていて、それぞれの言葉が役割を果たしているものでした。

TANTEKI流にMVVを捉え直すと、以下のようになります。 

・ミッション=社会で果たしたい役割や存在意義を具体的にする
・ビジョン=ミッションが実現した時、客観的にどう見られているのか具体的にする
・バリュー=企業と社員が大切にする価値観や行動指針

経営者として熱い思いはある、だけどそれを強いミッションやビジョンという「言葉」にうまく落とし込めない…そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひTANTEKIにご相談ください!

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