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「渋渋が向いている子」と「難関男子校・女子校が向いている子」の違い【中学受験・見逃し配信】 – 見逃し配信
自販機大国ニッポンが大きく変化か…“減少ショック”の裏で進む、静かな構造改革
●この記事のポイント
・日本の自販機市場は販売低迷と人件費・燃料高騰で収益性が悪化し、コカ・コーラをはじめメーカー各社が自販機網の縮小と構造改革を進めている。
・自販機は定価販売で高利益を生む強みがあったが、ドラッグストアの台頭や生活動線の変化で売上が減少し、大規模な減損計上が不可避となった。
・今後は台数減少が続く一方、データ活用・キャッシュレス化・多機能化で「価値の高い自販機」への転換が進み、持続的なビジネスモデル再構築が焦点となる。
日本の街角から、自動販売機が静かに姿を消し始めている。かつて「自販機大国」と呼ばれ、飲料メーカーにとっては“定価販売で高収益を生む最強のチャネル”だった自販機が、今や重荷へと変わりつつあるのだ。
自販機網を最大規模で展開してきたコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(CCBJ)は、多額減損により大幅赤字に転落。背景には、販売低迷、人件費・燃料費の高騰、ドラッグストアの台頭、生活圏の変化など、多層的な構造問題がある。本稿では、戦略コンサルタントの高野輝氏に自販機ビジネスが直面する転換点と、これからの成長シナリオを読み解いてもらった。
●目次
- 「自販機大国ニッポン」に何が起きているのか
- CCBJの大幅赤字は「自販機ビジネスの転換点」
- なぜ自販機は「儲かる装置」から「重荷」になったのか
- 日本の自販機市場に起きている構造変化
- 各社は自販機をどう見直そうとしているのか
- 自販機は本当に「衰退ビジネス」なのか
- CCBJは「負の遺産一掃」で攻めに転じられるか
- 業界全体の未来予想――「台数減少」と「価値の高度化」が同時進行
- 自販機ビジネスから見える「日本企業の課題」
- 「自販機が消える日本」ではなく、「役割が変わる日本」へ
「自販機大国ニッポン」に何が起きているのか
日本は長らく、世界屈指の「自販機大国」として知られてきた。駅前、オフィス街、住宅地、山間部の集落に至るまで、24時間365日飲料や食品を供給する小売インフラとして、自販機は生活に溶け込んできた。
とりわけ飲料メーカーにとって、自販機は単なる販売チャネルではない。「定価販売ができる高収益チャネル」であり、「自社ブランドの露出拠点」であり、「物流・営業網と一体になった収益装置」でもあった。
なかでもCCBJは、自販機網の規模で他社を大きく上回ってきた。サントリー食品インターナショナルの自販機設置台数が約35万台とされるのに対し、CCBJは約65万台と、2倍近いネットワークを構築している。この巨大な自販機網こそが、同社の強みであり、利益の柱であり続けてきた。
しかし、その「強み」が、今や経営の重荷へと姿を変えつつある。
CCBJの大幅赤字は「自販機ビジネスの転換点」
CCBJは、2025年12月期連結決算で最終損益494億円の赤字見通しを公表した。前期の73億円の黒字から一転しての大幅赤字である。
注目すべきは、本業の稼ぐ力はむしろ強まっている点だ。直近の2024年度第3四半期決算では、事業利益が前年同期比66.5%増と過去最高を記録している。価格改定効果によりケース当たり納価は全チャネルで改善し、「コカ・コーラ」「紅茶花伝」などの主力ブランドが販売を支えた。
それにもかかわらず、営業利益は701億円の赤字、純利益は487億円の赤字。最大の要因が、自販機を中心とするベンディング事業で計上した約881億円の減損損失だ。
つまり、「モノは売れていて、事業利益も増えているが、自販機という資産の価値を思い切って切り下げた結果としての赤字」という構図である。
これは、単に一社の決算上のテクニカルな話にとどまらない。各社が長年「安定収益源」とみなしてきた自販機ビジネスが、構造的な見直し局面に入ったことを象徴している。
なぜ自販機は「儲かる装置」から「重荷」になったのか
自販機の収益構造を整理すると、その脆さが見えてくる。
1.売上面の逆風
・ドラッグストア、ディスカウントストア、スーパーなどで、ペットボトル飲料が自販機価格より大幅に割安で販売されるようになった。
・消費者の節約志向が強まり、「日常的な飲料は店でまとめ買いし、どうしても必要なときにだけ自販機を使う」という行動が広がっている。
・オフィス街でも、コンビニやドラッグストアが増え、「自販機で定価購入する必然性」が弱まっている。
2.コスト面の逆風
・自販機は商品補充、売上回収、機器点検などで、人件費と輸送コストがかかるビジネスである。
・近年の人件費上昇、トラックドライバー不足、燃料価格の高止まりなどが重なり、補充・回収コストがかさむ一方になっている。
・電気料金の上昇も追い打ちをかける。冷却・加温機能を持つ自販機は、常時稼働するだけに電力コストの影響が大きい。
3.台数が多いほど「固定費」が重くのしかかる構造
・自販機は設置台数が多いほど販売機会が増える半面、「眠っている機械」も増える。
・売上が伸びない場所でも、機械の減価償却やメンテナンスは発生する。
・CCBJのように他社の倍近い自販機網を持つ企業ほど、売上減少とコスト増の板挟みを強く受けやすい。
かつては「大量に設置し、定価で売るほど儲かる装置」だった自販機は、いまや「売上が伸びないのに固定費がかかる装置」へと性格を変えつつある。
CCBJによる大規模な減損は、「今後、自販機ビジネスの収益性が過去ほど期待できない」と経営が判断した結果とも読める。
日本の自販機市場に起きている構造変化
自販機減少の背景には、個別企業の事情を超えた環境変化がある。主なポイントを整理しておきたい。
① 消費チャネルのシフト
ドラッグストア、ディスカウントストアの台頭は、自販機にとって最大の逆風の一つだ。
これらの業態は薄利多売を前提に、ペットボトル飲料を自販機価格の半額近くで販売するケースも珍しくない。
また、コンビニエンスストアは、ホットスナックやコーヒーとセットで飲料を販売するなど、付加価値を上乗せした売り方で自販機から顧客を奪っている。「冷たい飲み物がほしい」というニーズだけなら自販機で足りたが、いまや「ついで買い」や「まとめ買い」が当たり前になりつつある。
② キャッシュレスとスマホの浸透
かつて自販機は、「小銭さえあればすぐ買える」手軽さが強みだった。しかしスマホ決済が普及するなかで、この優位性は薄れている。
コンビニやドラッグストアでは、交通系ICカードやQRコード決済でスムーズに支払える。
一方、自販機は長らく現金中心で、キャッシュレス対応に出遅れた側面がある。近年はキャッシュレス対応自販機も増えてきたが、機器の入れ替えや決済手数料など、新たなコストを生む側面もある。「キャッシュレス対応=即座に高収益化」とは限らないのが現実だ。
③ 人口減少と生活圏の変化
人口減少と働き方の変化も、静かに自販機需要を削っている。地方の人口減少で、路地裏や住宅街にある自販機の売上はじわじわと低下している。
コロナ禍以降、オフィスへの出社が減り、オフィスビル内やその周辺の自販機の売上も影響を受けた。深夜営業の飲食店が減ったことで、夜間の自販機需要も細っている。
自販機は「人の流れ」に依存するビジネスであり、生活動線の変化がそのまま売上の変化につながる。
各社は自販機をどう見直そうとしているのか
では、自販機ビジネスはこのまま縮小していくしかないのだろうか。メーカー各社の動きをみると、「やみくもに台数を減らす」のではなく、「質への転換」を模索している様子が見て取れる。
① 採算管理に基づく「選択と集中」
まず進んでいるのが、自販機の「選択と集中」である。
・売上が一定水準に満たないロケーションの自販機は撤去し、採算の良い立地に資源を集中する。
・同じエリアに複数台ある場合、台数を絞って補充や回収ルートを効率化する。
・老朽化した機械は更新せず、そのまま撤去するケースも増えている。
CCBJの大規模減損も、こうしたネットワークの見直しを前提にした「負の資産の一括処理」といえる。一度バランスシート上のしがらみを整理し、収益性の高いネットワークへの再編を加速させる狙いが透けて見える。
② IoT・データ活用による「スマート自販機化」
次の柱が、デジタル技術を使った高付加価値化だ。
・在庫情報や販売データをリアルタイムで取得し、補充ルートや商品構成を最適化する。
・気温や天候、時間帯に応じて売れ筋の商品を変える「ダイナミック・マーチャンダイジング」に取り組む。
・デジタルサイネージ機能を搭載し、広告メディアとしても収益化を図る。
将来的には、広告収入やデータ活用の価値を組み合わせることで、飲料販売以外の収益源を取り込む動きが強まる可能性が高い。
③ キャッシュレス・サブスクとの連携
自販機を、キャッシュレスやサブスクとの接点として活用する動きもある。
・スマホアプリと連携したポイント施策や、ドリンクチケットのバンドル販売。
・企業向けに「社員専用の割引自販機」を導入し、福利厚生と連動させるモデル。
・オフィスビルや大学などを対象とした「月額制ドリンクサービス」と自販機の組み合わせ。
「通りすがりに買う単発の自販機」から、「会員・IDに紐づく販売チャネル」へと位置づけを変えられるかどうかが、今後の収益性を左右する。
④ 飲料以外の領域への展開
自販機という仕組みを、飲料以外にも広げる試みも着実に増えている。
・冷凍食品や総菜、スイーツなどのフード系自販機。
・地域特産品や土産物を販売する観光地の自販機。
・書籍や日用品、医薬品など、ニッチなニーズに応える自販機。
飲料自販機の採算が厳しくなるなか、「箱」としての自販機をどう活用するか。ここには、メーカーだけでなく流通・外食・観光業など異業種連携の余地も大きい。
自販機は本当に「衰退ビジネス」なのか
こうして見ると、自販機市場は確かに成熟・縮小フェーズにある。しかし、それは「ビジネスとして終わり」という意味ではない。
自販機には、ほかのチャネルに代替しづらい強みがある。
1.24時間365日、無人で販売できる
人手不足が深刻化するなか、無人で回る販売チャネルである自販機は、労働集約的な店舗ビジネスの一部を代替しうる存在でもある。
2.災害時のインフラとしての役割
災害時に無料開放される「災害対応自販機」は、すでに各地で導入が進んでいる。電源や通信を工夫すれば、防災インフラとしての価値はさらに高まる。
3.インバウンド需要との相性
日本の「自販機文化」は、訪日客にとっては一種の観光資源でもある。キャッシュレスや多言語対応が進めば、インバウンド向けの収益源としてもポテンシャルは残る。
重要なのは、「台数を増やしてボリュームで押すモデル」から、「価値の高い場所に、価値の高い機能を持った自販機を配置するモデル」への転換を、どれだけ早く・徹底的に進められるかだ。
CCBJは「負の遺産一掃」で攻めに転じられるか
今回のCCBJの大幅赤字は、短期的にはインパクトが大きい。だが視点を変えれば、これは「自販機ビジネスを再成長させるための前向きなコスト」とも解釈できる。
・自販機関連の減損を一気に計上することで、将来の減価償却負担を軽くする。
・採算の悪い自販機を整理し、ネットワーク全体の収益性を底上げする。
・余力を、IoT・キャッシュレス・新サービスなど攻めの投資に振り向ける。
本業の飲料ビジネス自体は、第3四半期時点で事業利益が過去最高を更新している。つまり、「売れる商品」と「ブランド力」は依然として強い。課題は、それをどのチャネルで、どのようなコスト構造で売るかという設計にある。
価格改定で単価を引き上げただけでなく、自販機以外のチャネルでの販売拡大、商品ポートフォリオの最適化なども進めることで、「自販機依存からの脱却」を図りつつあるとみることもできる。
業界全体の未来予想――「台数減少」と「価値の高度化」が同時進行
今後の自販機業界を展望すると、次のようなシナリオが合理的だろう。
1.設置台数は緩やかに減少
採算の合わないロケーションからの撤退が進み、全体の台数は中長期的に減少傾向が続く可能性が高い。特に人口減少が激しい地方や、コンビニ・ドラッグストアが密集する都市部の“中途半端な立地”は整理対象になりやすい。
2.残る自販機の「一台あたり収益」は向上
利益の出るロケーションに絞り込むことで、一台あたりの売上・利益は逆に改善していく。キャッシュレス決済やアプリ連携でリピート率を高める工夫も進むだろう。
3.「飲料+α」を売るプラットフォーム化
飲料だけでなく、冷凍食品、軽食、健康食品、地域商品など、多様な商品を扱う「ミニ無人店舗」としての自販機が増える。デジタルサイネージによる広告収益や、データビジネスとの連携も視野に入る。
4.災害・防災インフラとしての位置づけが強化
自治体やインフラ企業との連携により、「平時は販売、非常時はインフラ」という役割を担う自販機が増える。電源・通信技術の進化によって、その重要性はむしろ高まる可能性がある。
端的に言えば、「数は減るが、残る自販機の役割と価値は高くなる」という方向に進む公算が大きい。
自販機ビジネスから見える「日本企業の課題」
自販機の急減は、一つの産業の話にとどまらない。ここには、日本企業が直面している構造的な課題も透けて見える。
・長年成功してきたビジネスモデルに固執し、環境変化への対応が後手に回るリスク。
・資産を積み上げることで強くなる一方、その資産が一気に「重荷」に変わる構造。
・人件費・燃料費などコスト構造の変化に対応した、抜本的なビジネスモデルの見直しの必要性。
CCBJが今回示したように、「負の資産を一気に処理し、次の成長に向けて身軽になる」という意思決定は、他の業界にも共通する重要な示唆を含んでいる。
「自販機が消える日本」ではなく、「役割が変わる日本」へ
「自販機が減っている」と聞くと、ついノスタルジーを感じてしまう。しかし、それを単なる衰退の物語として描いてしまうのは早計だ。
・自販機ビジネスは、量から質へ。
・定価販売の“装置”から、データとサービスを組み合わせた“プラットフォーム”へ。
・メーカーの“収益の柱”から、社会インフラとしての役割を併せ持つ“公共性の高い装置”へ。
そうした変化の入口に、日本の自販機ビジネスは立っている。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンHDの減損は、その痛みを伴う第一歩だ。自販機大国ニッポンが、どのような「次のかたち」を描いていくのか。それは飲料メーカーだけでなく、小売、物流、自治体、そして私たち消費者一人ひとりの選択がつくり出していく未来でもある。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)
地方から空の常識を変える…トキエアが“あえて”東京を経由しない旅に挑むワケ
●この記事のポイント
・新潟発の地域航空会社トキエアが、地方同士を直接結ぶ新しい航空ネットワークで「空の民主化」に挑む。低コスト構造とデータ活用で、地方航空を持続可能な産業へ転換しようとしている。
・スタートアップLANDの和田直希氏は、航空事業を“地域DXの入口”と位置づけ、チャーターアプリや観光連携など空を起点にしたプラットフォーム構想を推進。航空を体験経済の基盤に変革する。
・異業種人材の融合や安全第一の文化など、スタートアップ的思考と航空業界の価値観を掛け合わせた組織づくりも進行中。トキエアは“地域航空の第三極”として地方創生に挑むモデルケースとなりつつある。
地方から日本の空を変えようとしているスタートアップがある。新潟を拠点とする地域航空会社「トキエア」、そしてその経営に深く関わるスタートアップ「LAND」だ。両社を率いるのは、家具メーカーの経営からエンタメ、テックまで多彩な分野を渡り歩いてきた起業家・和田直希氏。
「航空をもっと身近に、誰もが空を自由に移動できる社会にしたい」と語るそのビジョンには、スタートアップ経営者にも共通する“市場の読み方”と“構想力”がある。
●目次
- 地域と地域をつなぐ、「都市を介さない」航空ネットワーク
- プロペラ機で挑む「小さな市場の最適化」
- 「空のUber」を目指す、“空の民主化”構想
- スーパーアプリ構想とデータ戦略:地域DXの中核へ
- 異業種人材の融合がもたらす、組織変革の実験
- 「東京の二番手ではなく、自らの強みで勝つ街に」
- 堀江貴文氏との連携、そして「空の次のステージ」へ
- 「地域航空の第三極」を目指して
地域と地域をつなぐ、「都市を介さない」航空ネットワーク
トキエアが運航するのは、東京を起点としない地方路線だ。新潟を中心に、名古屋(中部国際空港)、神戸、札幌(丘珠)を結び、「地域と地域を直接つなぐ」ことを主眼に置く。
「丘珠空港は札幌市内から30分。アクセスの良さが圧倒的な強みです」と和田氏は語る。
これまで地方空港は“補助線”としての位置づけにとどまりがちだった。だがトキエアは、「地方同士をダイレクトに結ぶ」という発想で需要を掘り起こしている。
「首都圏を外す戦略は大胆に見えますが、既存路線のデータを見れば合理的です。例えばセントレアと熊本を結ぶ便では、ピーク時に年間10万人超が利用していたが今年撤退しています。そこに72人乗りのターボプロップ機を1往復飛ばすのは、十分に成立する規模なんです」
この「地域間直行便」という発想は、航空ネットワークの再構築を意味する。10月度は前線搭乗率7割を超え、黒字化への道筋が見えているという。
プロペラ機で挑む「小さな市場の最適化」
和田氏がトキエアに出資を決めた理由のひとつが、ビジネスモデルの合理性だ。「航空業界は赤字のイメージが強いですが、トキエアは利益が出る構造を持っている。プロペラ機は燃料コストがジェット機の半分以下。人口減少下でも採算が取れるスケールなんです」と説明する。
黒字化の鍵は「稼働率」と「搭乗率」。1機あたりのフライト回数を1日4回から6回、最終的には8回へ増やし、搭乗率70%を目標とする。
「最大のボトルネックは人材。パイロットをはじめ運航管理、整備士など、地道に育てていく必要があります」
スタートアップ的な発想で見れば、トキエアは“ユニットエコノミクス”の設計から始まった事業だ。高コストな大規模輸送ではなく、最小限のコストで最大の接続性を生むモデルを追求している。
「空のUber」を目指す、“空の民主化”構想
和田氏が繰り返し口にするキーワードが「空の民主化」だ。「空をもっと近いものにする。誰もが気軽に利用できる空を作りたい」と語る。
トキエアでは、法人向けチャーターアプリ「SORA PASS(仮)」や「離島ホッピングツアー」、地域連携型アプリ「TOKILAND」などを展開予定だ。格安で46人(or72人)がチャーターできる「空のシェア便」も構想の一つであり、かつて一部の富裕層の特権だったチャーター体験を、誰もが手の届くものにする。
「チャーターやビジネスジェットは“富裕層専用”という前提を崩したい。スタートアップらしいディスラプションを、空の領域で実現したいんです」
この発想は単なる交通の話ではない。「フェスのチケット付き航空券」「地域体験と連動した観光パッケージ」など、航空を“体験経済”の起点にする構想もある。まさに「空のUber」と呼ぶにふさわしいサービスエコシステムを目指している。
スーパーアプリ構想とデータ戦略:地域DXの中核へ
和田氏は、航空事業を「移動プラットフォーム」ではなく、「地域DXの入口」と位置づける。「交通・宿泊・観光を統合し、誰もがスマホから旅の全体設計を完結できるようにしたい。AIや時系列データの活用で、需要予測やダイナミックプライシングも導入していく予定です」と語る。
和田氏はもともとIoT・エンタメ事業を手がけており、データ制御技術に強みを持つ。そのノウハウを航空に転用し、運航効率を上げるだけでなく、地域の観光・交通データを可視化し、自治体や地元企業への還元を目指すという。「移動データを地域経済の活性化に使うことができる」と和田氏は言う。
地方創生を“空からのDX”で進めるという発想は、全国の中小空港に新しい経済循環をもたらす可能性を秘めている。
異業種人材の融合がもたらす、組織変革の実験
トキエアの運営体制には、LANDの人材が深く関わっている。財務や管理部門のメンバーが航空事業に入り込み、オペレーション改善を進めているという。「エンタメやテック業界出身者が、航空の現場で数字を見ながら改善していく。最初は文化の違いもありましたが、良い化学反応が起きています」と和田氏。
スタートアップ出身者が持つ“数値感覚”と、航空業界が培ってきた“安全第一”の姿勢。この二つが融合することで、「スピードとリスク管理を両立する組織」への進化が始まっている。「航空業界の経営会議は、リスクに対して徹底的に議論する。スタートアップに足りない“安全に対する哲学”を学ばせてもらっている」とも語る。
異業種人材の融合は、航空に限らず多くの産業で求められるテーマだ。「規制産業にスタートアップ思考を持ち込む」その実践例としても、トキエアの挑戦は注目に値する。
「東京の二番手ではなく、自らの強みで勝つ街に」
和田氏の地方創生観は、一般的な「地域支援」とは異なる。
「“東京の便利さを享受する地方”ではなく、“東京より便利な地方”を作ることが重要。それが本当の意味での地方創生だと思います」
和田氏はインドネシアでの経営経験を持ち、現地でIT産業が急成長する様を体感してきた。「当初は不便だったけれど、ITによって“日本より便利”になった瞬間に都市が一気に伸びた。新潟でも同じことが起こせるはず」と語る。
その視線の先にあるのは、単なる航空事業の成功ではない。「空港を中心に、街のサービスを再設計する。まちづくりそのものに関わっていきたい」と意欲を見せる。すでに地元企業との共同イベント「燕三条ジャパンフェス」では50社以上が協賛。教育機関との連携も進み、地域全体を巻き込む動きが広がっている。
堀江貴文氏との連携、そして「空の次のステージ」へ
トキエアには実業家の堀江貴文氏も取締役として参画している。
「堀江さんとは毎日やり取りしています。パイロット訓練中でして、技術的な知見が非常に深い。“飛行機をどう作るか”という領域で、最前線のアドバイスをいただいています」
長期的には、個人でも操縦できる小型機(LSA)の普及を視野に入れている。「誰もが車のように飛行機を操縦できる未来を。アメリカではすでに法律が整いつつあります。「まずはアメリカでLSAを飛ばしたい」と和田氏は語る。
“空の民主化”の最終形とは、移動そのものが社会インフラになること。航空が「地域をつなぐ手段」から「新しい暮らし方の基盤」へと変わる時代を、彼は見据えている。
「地域航空の第三極」を目指して
「この10年で、地域航空=トキエア、というポジションを確立したい」
和田氏は明確に語る。既存の大手(JAL・ANA・スカイマーク)やLCC(Peach・ジェットスター)とは異なる、“第三の選択肢”を地方から生み出す挑戦だ。
それは単に航空業界の話にとどまらない。大都市への依存を断ち切り、地方から産業を再設計する動きの象徴でもある。「空の移動をもっと自由に、地方をもっと主役に」──その構想は、地方発スタートアップが国家規模の課題に挑む、新しいモデルケースになりつつある。
和田氏の言葉の根底には、「制約を前提に再設計する」という起業家の本質がある。補助金や制度に頼らず、現場の需給とデータから新しい事業構造を描く。それは、どの業界のスタートアップにも通じる発想だ。
「航空」という巨大産業に、民間発の構想力とスピードで挑むトキエアとLAND。その実験は、地方創生とスタートアップ経営の交点にある。彼らが見ているのは、“空の上”ではなく、“日本の未来”そのものだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
滑走路で飛行機がガタガタ揺れる“本当の理由”とは?風のせいではありません… – ニュースな本
採用難・情報過多の時代に「動画で課題を解く」──ファインズ・堀田部長が語る、選ばれる理由と動画表現の未来
採用難、人材不足、集客、情報発信──企業が抱える課題は尽きることがありません。
そうした悩みに対し、動画をはじめとしたさまざまなコンテンツを通じて突破口をつくり続けているのがファインズです。
今回は、ファインズの事業の中核を担う、コンテンツソリューション部 部長の堀田 快氏にインタビュー。
年間1,500本という圧倒的な制作量を可能にする体制、企業が抱える課題への向き合い方、そして動画を中心としたコンテンツ事業の未来について伺いました。
年間1,500本を可能にする、ファインズの制作体制
——コンテンツソリューション部では、年間どのくらいコンテンツ制作を行っているのですか。
動画は年間で約1,500本制作しており、そのうち視聴者が画面に触れることで内容が変化する「インタラクティブ動画」が150本ほどです。
そのほか、ホームページ制作が約300件、漫画制作が50本弱。動画制作とパッケージでご依頼いただくケースもあれば、漫画制作のみでお問い合わせいただくケースもあります。
——年間でそれだけ多くの動画を制作するにあたって、チーム体制はどのようになっているのでしょうか。
部内では大きく、お客様との打ち合わせや企画立案などを担当するディレクター職と、実際のコンテンツ制作部分を担当するエディター職に分かれて仕事をしています。
年間でこれだけの本数を制作できるのは、制作プロセスがしっかりと整備されていること、そして約8年にわたる制作実績の中でスキームが確立されていることが大きいですね。最近は社内DX化の一環としてAIの活用を推し進めることで業務効率があがってますし、編集者やカメラマンといった撮影チームも社内にいるので、だいたい8〜9割は社内で作れる体制になっています。
——ファインズでは、通常の動画と、実際に画面を触ることによって映し出されるものが変化するインタラクティブ動画が制作可能ですが、お客様はどのような基準で制作する動画を選んでいるのでしょうか。
インタラクティブ動画は、伝えたい内容にいくつか選択肢があるお客様に選ばれることが多いです。たとえば、医療機関や大学など、さまざまな職種の採用を行っている企業や団体ですね。一方、通常の動画は、伝えたい内容が比較的一本化されているケースで選ばれています。
また、「動画」と一言でいってもアニメーション動画や実写動画など、表現方法は多岐にわたります。複雑な内容や、やや堅いイメージのある情報を、噛み砕いて親しみやすく伝えたいときはアニメーション動画を採用することが多いですね。
逆に、理念やお客様の想いを「自分たちの言葉」で伝えたい場合は、実写動画のご提案が中心になります。実写動画は採用目的の動画によく使われており、働く従業員や社内の雰囲気など、求職者が知りたい情報が直感的に伝わりやすいのが特長です。
動画だけではない。「選ばれる理由」を生む複合的ソリューション
——動画制作を行う他社と比べたとき、ファインズの差別化ポイントはどこにあるのでしょうか。
一つは、年間1,500本を制作しているため、そのノウハウを活用してクオリティの高い動画をスピード感をもって制作することができることです。
コンテンツは時間をかければかけるほど作り込めますが、その間にもお客様の持つ課題はどんどん深刻化していきます。経営課題の早期解決を行うことも非常に重要です。
こうしたスピード感を実現できているのは、先ほどお話したようなスキームの確立に加え、自社内での制作が多く、ナレッジが蓄積され続けているからです。日々PDCAを回していることも大きな要因ですね。
他社と比べて制作費用が抑えられている側面もあり、納期の速さやクオリティなどに納得していただいた結果、お客様にご回答いただくアンケートでも、動画などの制作コンテンツや担当者への満足度はどちらも90%を超えています。
——スピード感とリーズナブルさ、そしてクオリティが両立されている点が、ファインズの動画が選ばれる理由なのですね。
もちろん、その点もご評価いただいていると思いますが、私たちは「ファインズの動画が選ばれている」というより、「ファインズそのものを選んでいただいている」と感じています。
多くの場合、動画制作会社の役割は納品までです。一方でファインズは、動画配信後の分析やコンサルティング、必要に応じた他ソリューションの提供まで担っています。
動画やその他のコンテンツを通じてお客様の課題解決の「手段」を提供し続ける。制作物をお渡しして終わりではなく、その後の成果までお客様と一緒に追いかけていく。そのスタンスこそが、選ばれる理由だと思っています。
実際、関東にある外装工事の企業様では、まず採用目的で動画を活用いただき、採用人数が増加しました。すると今度は案件数の拡大が課題となり、集客目的の動画活用やホームページ改修をご依頼いただくなど、目的もソリューションの枠も広げてお付き合いが続いています。
採用難・情報過多時代。変化する企業課題にどう向き合うか
——ファインズは中小企業を中心にソリューションを提供していますが、現在、官公庁や自治体からの依頼も増えているそうですね。その背景には、どのような要因があると考えていますか。
官公庁や自治体は、納期厳守が徹底されていたり、情報の取り扱いに慎重さが求められています。そうした条件の中で依頼が増えているのは、これまでの実績やスピード感から、一定の信頼を得られているからだと考えています。2022年の上場も、官公庁からの信頼度向上につながっていますね。
こういった点は大手企業からも評価されており、ご相談いただく機会も増えました。漫画制作などは、とくに大手企業からの問い合わせが多い分野です。
——官公庁と民間企業、それぞれファインズに依頼する際の課題にはどのような違いがありますか。
官公庁などの行政機関は、「情報をどうわかりやすく伝えるか」に課題を感じて、動画というソリューションを選ばれることが多いです。すでに発信したい情報自体は固まっているケースがほとんどなので、理解しやすい形に噛み砕いて動画に落とし込むことを心がけています。
一方で、とくに中小企業などの民間企業では、「打ち出したい内容が定まっていない」「そもそもの課題に気づけていない」といったケースが少なくありません。その場合は、まず今一番解決すべき課題を言語化するところから伴走していきます。
——お客様の抱える課題が、以前と比べて変化していると感じることはありますか。
以前は集客目的でファインズのソリューションをご活用いただくケースが多かったですが、最近は採用目的での活用比率が高まっていると感じます。
また、世の中の情報量が増加したことで、課題が複雑化しているように思いますね。多くの情報に晒されることでユーザーの目が肥えてきたことに起因していると考えています。課題の解決方法や、発信の方法が変化してきた、というイメージです。
こういった変化に対しても、これまで培ったナレッジを生かしながら、柔軟にアプローチしていきたいですね。
コンテンツ事業の未来 ー AI活用と組織の進化
——最後に、動画を含めたコンテンツ事業を、今後どのように発展させていきたいと考えていますか。
現在は中小企業の方々を中心にサポートさせていただいていますが、今後は大手企業やグローバル企業など、お客様となる企業の規模や業界の幅を、さらに広げていきたいと考えています。
そのためには、今のナレッジや体制のままでは不十分な部分があるのも事実です。現状から、組織のレベルを数段引き上げていく必要があります。
AIの積極的な活用や教育体制の強化に、これまで以上に投資していく必要があると考えています。
自分たちの中にある課題を積極的に見つけて解決していくことで、事業拡大に必要なナレッジも蓄積されますし、その知見をお客様に応用・還元していく「ショーケースビジネス」としても機能していくはずです。
コンテンツを制作する部署として、私たち自身がコンテンツに真剣に向き合い続けること。それが結果として、お客様が持つ良いサービスを、正しく・魅力的な形で届けていくことにつながると考えています。
ファインズにとって、動画をはじめとするコンテンツは単なる納品物ではなく、お客様に寄り添い、企業の課題に向き合うための「手段」だといいます。
課題の整理から制作、発信、成果の振り返りまで一貫して伴走する姿勢が、企業ごとの成長を確かなものにしていく。
こうした取り組みの積み重ねが、ファインズの強みを形づくっています。
※本稿はPR記事です。
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【freeeに学ぶ】AI時代の競争優位を生む「生きたナレッジ基盤」の作り方
創業期のスタートアップにとって、事業の成長速度は生命線だ。
しかし、スピード優先で場当たり的に導入されたツールが、数年後に組織の成長を阻害する原因になり得るケースは少なくない。 さらに、AI活用が企業の競争力を左右する現代において、整理されていない情報(ナレッジ)は、AIの能力を最大限に引き出す上での”最大の足かせ”となる。
そんななか、2022年以降の入社者が7割を超える急拡大の渦中で「情報の海」に溺れる危機を経験したfreeeが、パートナーとして選んだのがアトラシアンだ。同社はいかにして「情報の海」を脱し、AI時代の競争力となるナレッジ基盤を再構築したのか。
フリー株式会社 Culture&IT Produce本部 Culture部 部長 稲村 陽氏と、アトラシアン株式会社 マーケティングマネージャー 新村 剛史氏の対談から、後悔しないツール選定の実践的なヒントと、AIのポテンシャルを最大限に引き出すナレッジ基盤の重要性を探る。
freeeを襲った「情報の海」と「3ヶ月の限界」
──まずはじめに、急成長スタートアップが共通して直面する「情報共有」の課題についてお聞かせください。
新村 スタートアップは急成長に伴い、人と情報が爆発的に増加します。
まず、個人が管理できる情報量の限界を超え、ナレッジの管理体制が追いつかなくなる。さらにリモートワークではコミュニケーションが希薄になり、情報の流通も滞りがちです。
また、多くの企業がAI活用を試みていますが、情報に「コンテキスト(文脈)」がないとAIは効果的に機能しません。ナレッジマネジメントの不備そのものが、AI活用の最大の障壁になっているケースが多く見られます。
──freee社でも、2022年以降に入社した社員が70%以上と、急激な組織拡大を経験されています。当時、具体的にどのような課題意識を持っていましたか。
稲村 まさに「成長痛」と呼ぶのが相応しい状況でした。私自身も2022年の4月入社ですが、その時から比べても、すでに何倍もの社員がいる状況です。文字通り「情報の海に溺れる」といったことが、社内のそこかしこで起こっていました。
「情報がどこにあるか分からない」「誰に聞けばいいか分からない」状態が日常茶飯事で、資料が見つからずゼロから作り直す「車輪の再発明」も課題となっていました。
このまま組織拡大に比例して、こうした「検索コスト」や「問題解決コスト」が増え続ければ、事業スピードそのものを毀損してしまう。そこに強い危機感を抱いていましたね。
──そうした課題に対して、当初はどのような対応をされたのですか。
稲村 まず「誰に何を聞いたらいいか分からない」という声に応えるため、「askAny」と名付けたバックオフィスへの社内問い合わせを集約する窓口を構築しました。
スピードを最優先し、問い合わせ窓口は社内コミュニケーションツール、寄せられたQ&Aはクラウド上の管理シートに蓄積する形で、既存のツールで運用をスタートしました。
しかし、クラウド上の管理シートの情報はあくまでチーム内部向けのナレッジに留まり、社員がそれを見て自己解決するものではありません。そこで本来目指していた「ナレッジの全社活用」を実現するためにも、わずか3ヶ月ほどで本格的なツール導入の検討へと舵を切りました。
目先の利便性より「将来の拡張性」を選んだ理由
──情報基盤を再構築するにあたり、選定基準とアトラシアン製品を選んだ背景をお聞かせください。
稲村 選定基準は、当時の課題でもあった「問い合わせのスマートな処理」と「ナレッジの蓄積・活用」を両立できることでした。
その基準を満たす製品を探す中でアトラシアンに決めた理由は、大きく2点です。1つ目が「初期投資を抑えたスモールスタート」が可能なこと。2つ目が「将来の事業成長に対応できる拡張性(スケーラビリティ)」です。
まず「スモールスタート」についてですが、Jira Service Managementは、対応するメンバー(エージェント)にのみライセンス費用が発生し、質問する側の大多数の従業員は無料で利用できます。これにより、初期コストを抑えた立ち上げが可能でした。またConfluenceとの連携でナレッジを蓄積し、質問前に参考記事やマニュアルがヒットすることで、自己解決を促せる点もセットで魅力的でした。
次に「拡張性」ですが、従来の社内SNS対応では、やり取りがその場限りの情報として流れてしまい、ナレッジとして蓄積されませんでした。一方、アトラシアン製品で「チケット化」することで、Q&Aや作業履歴がすべて「データベース」として蓄積されます。
この「蓄積されたデータ」こそが、将来的な集計・分析・改善を可能にし、スケーラビリティの核になると判断しました。同時にこれが将来のAI活用に向けた基盤になったと言えます。
――アトラシアン製品は「エンジニア向け」という印象を持つ人も少なくありません。実際に導入した際の反応はいかがでしたか。
稲村 正直、私も導入当初は「多機能すぎて分かりにくい」「なんとなく武骨に感じる」といった印象を抱いていました。しかし、実際に使ってみて実感したのは、個々の機能の使いやすさ以上に、プロダクト間の「連携・統合」が非常に優れている点です。
例えば、チケット管理(Jira Service Management)、プロジェクト管理(Jira)、ナレッジ管理(Confluence)が、まるで「あたかも一つのツールのように」シームレスに利用できる。この思想は、freeeがビジョンとして掲げる「統合型経営プラットフォーム」とも強く親和性を感じました。
──個々の機能より、ツール間の「連携思想」も決め手になったと。アトラシアンの製品群は、どのような思想でこうしたニーズに応えられるよう設計されているのでしょうか。
新村 アトラシアン製品の根本思想は、「チームの力を最大化する」ことです。
単なるプロジェクトや部門レベルでの最適化ではなく、企業全体を一つの大きなチームとして捉える。それによりチームのパフォーマンスを引き出すことに重きを置いています。
具体的には、Jiraが「タスクや業務プロセス」を管理し、Confluenceが「ナレッジの管理・共有」を担います。これらのツールはチームのメンバーの役割を問わず、組織全体の仕事を効率化することができます。 加えて、特定の業務に特化したツールも提供しています。
先ほど言及していただいたJira Service Managementは、まさに依頼や問い合わせ業務に特化して効率化を実現するものです。 これらJira、Confluence、そしてJira Service Managementのようなツール群が連携して機能することで、情報がサイロ化せず、組織全体の生産性を引き上げていきます。
またAIが真価を発揮するには単なる情報(データ)ではなく「文脈(コンテキスト)」が必要ですが、我々の製品は「誰が」「どの組織で」「何の業務(Jira)」に関連して「どんな知識(Confluence)」を残したかを自動的に紐づけます。 これにより、AIの力を最大化する「生きたナレッジ基盤」の構築を実現できます。
さらに数名から数万名規模まで対応し、企業の成長に合わせて機能を追加できるスケーラビリティも特徴の一つです。
「askAnyモデル」の確立と全社展開の裏側
──実際に導入されて、どのような実感や効果がありましたか。
稲村 Jira Service ManagementとConfluenceを組み合わせた「askAny」の進化版を2023年5月頃に始動しました。実践したのは、問い合わせをチケット化してナレッジを蓄積し、社員がそれを見て「自己解決」できるモデルの構築です。
その成果は、明確にデータとして表れました。導入後、「ナレッジの閲覧件数」が右肩上がりに増加し、それに反比例して「実際の問い合わせ件数」が減少したのです。
ナレッジ閲覧数の増加に伴い、自己解決率が高まり、問い合わせ(チケット数)が減ったことが証明できました。この成功体験が社内に広がり、セキュリティチームや経理、法務など他部門もアトラシアン製品を使いたいというリクエストをくれるようになり、活用が本格化していきました。
新村 自己解決が進んで、問い合わせが減る。この具体的な成功体験があったからこそ、他のチームも「自分たちもやろう」と自律的に動き出したわけですね。
稲村 ええ。その成功体験を全社的なものにするため、経営陣のコミットメントも後押しになりました。2024年7月からの全社年間OKRに、キーワードとして「ナレッジマネジメント」が入り、「人が対応するaskの半減」「車輪の再発明ゼロ」などの目標が経営メッセージとして掲げられたのです。
新村 なるほど。今度はボトムアップの成功事例を、OKRによる仕組みで全社にスケールさせようとしたと。
稲村 おっしゃる通りです。OKR設定後も、基本操作の説明会やオンボーディングといった地道な活用推進を継続しましたが、とはいえ全社OKRに入っても皆がすぐに使うわけではありません。
やはり、使うことで「どう便利になるか」という体験を共有することが重要でした。そこで同時に、Confluenceに蓄積されたナレッジを社内のAIチャットボットが読み取り回答する仕組みを構築し、「使えば使うほどAIが賢くなり、自分たちも便利になる」という直接的なメリットを社員に分かりやすく提供しました。
この施策が活用を大きく後押しし、今ではAIチャットbotが月1万件の質問に対応。「人対応の質問半減」という全社OKRの目標も無事達成できました。さらにAIチャットbotという「現場が喜ぶ分かりやすいメリット」を、Confluenceというナレッジ基盤で両立することができました。
新村 私たちが多くのお客様を見てきた中で実感するのは、「ツールの導入はあくまでスタート地点に過ぎない」点です。
導入がうまくいかないケースは、経営陣からのトップダウンな「べき論」に終始して現場が疲弊するか、逆に現場の「草の根活動」に留まって全社的な成果にならないか、どちらかに偏りがちです。
freeeさんが見事なのは、OKRという「経営と現場をつなぐ目標」を示しつつ、AIチャットbotという「現場のメリット」を明確に提示し、そのサイクルを回せる仕組みを設計した点です。
そして何より重要なのは、稲村さんのチームが、ツールを入れて終わりではなく、現場に伴走し続けたこと。ツールの使い方を教えるだけでなく、「どう活用すれば業務の成果に還元されるか」までを一緒に考え、そのノウハウを全社に広げていった。
その「仕組み」と「伴走」の両輪があったからこそ、ツールが単なる道具から、組織の「生きた資産」へと進化したのだと強く感じます。
AI時代の競争優位は「生きたナレッジ」にあり
──今後のAI活用も見据えて、freeeとしてはどのような展望を描いていますか。
稲村 今できたのはマニュアルなどの「形式知」の基盤です。次の一手は、ハイパフォーマーのスキルやベストプラクティスといった「暗黙知」を形式知化し、より社員の成長や顧客貢献につなげることです。
またここでもAIの活用が不可欠です。私たちが今アトラシアン製品で構築した基盤は、まさにそのスタートラインだと考えています。 今までは人の手でナレッジを蓄積していましたが、これからは JiraやConfluenceの上で仕事をする中で自然とナレッジが蓄積され、AIが最適なプラクティスを提案してくれる。
そんな世界の実現にチャレンジしたいですし、アトラシアン製品がその中核としてさらに進化していくことを期待しています。
新村 ありがとうございます。私たちが掲げる「System of Work(システム・オブ・ワーク)」の考え方は、まさにその文脈を生み出すためのものです。
これは、エンジニアもビジネスサイドも、組織内の全員が同じプラットフォーム上で協働し、組織全体のパフォーマンスを最大化する。つまりテクノロジー主導の組織がどのように働くべきかを示す、我々の製品設計の哲学(フィロソフィー)そのものです。
私たちは、単なるツールの提供者ではありません。お客様がAIを活用し、その企業にしかない「暗黙知」を「本物の競争力」に変えていくための、生きたナレッジの基盤(統合プラットフォーム)として進化し続けます。
──最後にお二人から、読者へのメッセージをお願いします。
稲村 基盤作りは、「プロダクト開発」や「販売」といった直接的な領域に比べ、投資として後回しになりがちです。しかし、AIによって投資効果が非常に高まっている今、ここが最もレバレッジが効く部分です。
AI時代だからこそ、ChatGPTのような汎用AIでは生み出せない「自社独自のナレッジ」こそが、唯一無二の競争優位の源泉になります。
ナレッジの蓄積→活用→メンテナンスというサイクルの構築は早ければ早いほど良い。まずはスモールスタートで基盤づくりから着手し、そこから次の一手を考えることをお勧めします。
新村 おっしゃる通り、最初はコストと感じるかもしれません。しかし、これは明らかに未来への投資であり、AIが当たり前になる社会では必要不可欠なプラットフォームです。
アトラシアンでは、スモールチーム向けの無償のライセンスも提供しています。いきなり大きな投資をしなくても、まずスモールスタートで成功体験を積み、徐々に広げることもできます。
将来、組織が拡大した時に膨大なコストで情報を整理し直すことにならないためにも、ぜひ今から試していただけると嬉しく思います。
※本稿はPR記事です