「頭のいい人」だけが知っているChatGPTの「意外すぎる使い方」・ベスト1 – AIを使って考えるための全技術

AIが「使えるかどうか」は、人間側の「使い方」で決まります。 そう語るのは、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に思考・発想の研修をしてきた石井力重氏だ。そのノウハウをAIで誰でも実践できる方法をまとめた書籍『AIを使って考えるための全技術』が発売。全680ページ、2700円のいわゆる“鈍器本”ながら、「AIと、こうやって対話すればいいのか!」「値段の100倍の価値はある!」との声もあり話題になっている。思考・発想のベストセラー『考具』著者の加藤昌治氏も全面監修として協力し、「これを使えば誰でも“考える”ことの天才になれる」と太鼓判を押した同書から、AIの便利な使い方を紹介しよう。

【ゴールドマン・サックスの元トレーダーが教える】株価が暴落しても「ニヤリ」と笑える投資家の共通点 – 最後に勝つ投資術 【実践バイブル】

ゴールドマン・サックスに入社し、マネージング・ディレクターに就任、アジアのトレーディングチームを率いた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)では、投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、「オルカン」「S&P500」の“次に知るべき”ノウハウが満載!

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40代から学ぶといいこと、一流はリベラルアーツ、二流は何も学ばない。三流がやっている「最悪な学び」とは? – 人生の経営戦略

「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。じっくり人生を振り返る人も多いこの時期に、この本に込めた、著者の山口さんのメッセージを聞きました。

40代から学ぶといいこと、一流はリベラルアーツ、二流は何も学ばない。三流がやっている「最悪な学び」とは? – 人生の経営戦略

「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。じっくり人生を振り返る人も多いこの時期に、この本に込めた、著者の山口さんのメッセージを聞きました。

「日本は半導体後進国」の大間違い…キヤノンや花王、“半導体の喉元”を握る日本企業

●この記事のポイント
・「日本半導体は死んだ」は誤解だ。キヤノン、花王、レーザーテックらが装置・材料・検査で世界の製造基盤を握り、TSMCやサムスンの量産を支配している。
・半導体競争は「チップ」から「工場インフラ」へ移った。日本企業は露光・洗浄・検査・後工程の不可欠領域を押さえ、代替不能性で価格決定権を確立している。
・川下の主役は海外でも、川上の製造OSは日本が担う。日本は完成品競争から脱し、誰が勝っても必ず使われる装置・材料で“プラットフォーマー化”した。

「日本の半導体は、もはや見る影もない」――。かつて1980年代に世界市場の5割を席巻した黄金期と比べれば、そうした“敗北論”がメディアに溢れるのも無理はない。実際、生成AIブームの象徴であるNVIDIA(エヌビディア)をはじめ、世界の注目を集める主役は米国であり、最先端プロセスの覇者は台湾TSMC、韓国サムスン電子といった海外勢である。

 だが、ここに重大な錯覚がある。「半導体=最終製品(チップ)を作る企業が勝つ」という見方は、川下だけを見ている。真に“産業の喉元”を握るのは、チップそのものではなく、それを作らせるための製造装置・材料・後工程の支配である。

 もし日本企業が供給を止めたらどうなるか。最先端スマートフォンのSoCも、AIサーバーのGPUも、先端メモリも、工場から消える。なぜなら、半導体製造は「一国で完結する産業」ではなく、地球規模の超分業によって成立する“巨大工場”であり、日本企業はその工場の要所を押さえる存在だからだ。

 本稿では、「日本半導体敗北論」の裏側で静かに進んでいた、日本の装置・素材メーカーによる“インフラ支配”の全貌を解き明かす。主役は、キヤノン、花王、レーザーテック、東京エレクトロン、ディスコ、信越化学、AGC、ヤマハ発動機といった“黒衣の巨人”たちである。

●目次

半導体は「モデル」ではなく「工場」の戦いになった

 生成AIの時代、半導体産業の競争軸は大きく変わりつつある。従来は「より良い設計をする企業」「より速いチップを作る企業」が主役だった。しかし今は、微細化が極限に近づき、製造難度は指数関数的に上がった。最先端領域では、もはや設計思想よりも「工場を動かせるか」が勝敗を分ける。

 先端半導体は、単に回路を縮めれば良いわけではない。歩留まりを左右するのは、ナノ単位の微粒子、材料の純度、洗浄工程、さらには検査・計測の精度と速度だ。この“工場総合格闘技”を成立させているのが、装置と材料の蓄積である。そして、その積み上げを最も長く続けてきた国の一つが日本である。

 元半導体メーカー研究員で経済コンサルタントの岩井裕介氏はこう語る。

「日本が失ったのは“メモリで世界を取る物語”であり、“半導体産業の支配力”そのものではない。むしろ今の日本は、勝者が誰であれ“必ず上納金が入るポジション”に移った」

 川下から見れば衰退に映る。しかし川上から見れば、日本は“プラットフォーム”へと進化していたのである。

「光」ではなく「型」で勝つ――キヤノンの逆襲

 半導体製造の最前線で、圧倒的な支配力を持つ企業がある。オランダのASMLだ。同社が独占するEUV(極端紫外線)露光装置は、最先端半導体の製造に不可欠で、価格は1台数百億円ともいわれる。導入できる企業が限られるほど、EUVは“通行手形”として機能してきた。

 だが、ここに風穴を開ける可能性を秘めた技術が存在する。キヤノンのナノインプリント(NIL)である。これは従来の露光と違い、「光で回路を焼き付ける」のではなく、ハンコのように“型”を押し付ける手法だ。もし量産に適用できれば、装置のコストや消費電力を大きく下げられる可能性がある。

 キヤノンはカメラ企業のイメージが強いが、産業領域は別の顔を持つ。インダストリアル部門は売上高3565億円、営業利益率約20%と、極めて高い収益性を誇る(ドラフト記載数値)。この利益率は、「価格競争ではなく技術競争で勝てている」ことを示すシグナルでもある。

「NILの価値は、ASMLを倒すことではない。“EUVの導入が難しい領域”や、“コストと電力が障壁となる用途”に別の選択肢を出せる点にある。製造インフラは一極集中より多極化のほうが強い」(岩井氏)

 ASML一強の時代は、いつまでも続くとは限らない。キヤノンのNILは、半導体工場のルールそのものを変える“異種格闘技”の刺客になり得る。

「台所の科学」がAIチップを救う――花王の界面制御が1ナノのゴミを許さない

 日本の強みは、装置だけではない。むしろ真骨頂は“材料”にある。そして、最も意外性のあるプレイヤーが、日用品メーカーの花王だ。

「アタック」「キュキュット」で知られる花王が、半導体洗浄剤の分野で存在感を強めている。半導体は微細化が進むほど、“見えない汚れ”が致命傷になる。人間の目には存在しないレベルの微粒子が、歩留まりや信頼性を左右するからだ。

 花王の武器は、長年培った界面活性剤の知見、すなわち「汚れを落とす科学」そのものである。洗浄後に水滴を残さない、微細領域で表面を安定化させる、といった制御は、まさに界面技術の応用だ。

「半導体洗浄は、単に“強い薬品で洗う”話ではない。表面を傷つけない、異物を再付着させない、濡れ性を制御する――つまり“界面の設計”が本質になる。花王は家庭用品で、その設計力を極限まで磨いてきた」(同)

 花王は2025年に台湾で精密洗浄センターを稼働させるなど、現地での連携を強めている。製造現場の近くに拠点を置くということは、「ただ売る」ではなく「一緒に歩留まりを上げる」パートナーに踏み込むことを意味する。これは素材メーカーとしての“格上げ”である。

シェア100%の「門番」――レーザーテックが止まれば最先端は量産できない

 半導体の覇権を握るのは、露光装置だけではない。作った回路が正しいかどうか、ミスを見抜けなければ量産できない。その“最終関門”を握る企業が、日本のレーザーテックだ。

 同社はEUVマスク検査装置で世界シェア100%級ともいわれる。EUV時代のマスクは複雑で、検査が難しい。ここで欠陥を見逃せば、不良品を大量生産する“地獄の量産”が始まる。

 半導体製造では、不具合が出てから止めるのでは遅い。止めた瞬間に数百億円規模の損失が出ることもある。だからこそ検査装置は、「保険」であり「通行証」でもある。

「最先端ほど“作る”より“確かめる”が難しくなる。レーザーテックは、EUV時代の品質保証の中心にいる。彼らは装置メーカーでありながら、事実上“工場の稼働率”を握っている」(同)

 営業利益率が40%を超える水準になり得るのも、代替が効かないことの裏返しだ。

「後工程」の王者が世界を制す――ディスコと、日本の“完成工程”支配

 半導体産業は、前工程(回路形成)ばかりが注目されがちだ。しかし実際には、完成品として成立させる後工程も、技術難度が上がっている。

 ここで圧倒的な存在感を放つのがディスコだ。ウェハーを切り出すダイシング装置で世界シェア70〜80%級ともされ、「切る・削る・磨く」において他社の追随を許さない。次世代のパワー半導体(SiC)など、高硬度材料ほど加工は難しくなり、ディスコの優位性が増す。

「後工程は“成熟市場”と言われてきたが、AIと電動化で状況が変わった。高性能化が進むほど、加工精度が製品寿命に直結する。ディスコはそこで“品質を売っている”」(同)

 半導体の覇権とは、最先端だけの話ではない。大量に作り、安定して出荷し、歩留まりを上げる。その最後の工程を押さえる企業が、利益の中心に立つ。

東京エレクトロン、信越化学、AGC……「代替不能」の積層が日本の武器になる

 日本の強みが恐ろしいのは、「単独のスター企業」ではなく、代替不能な要素が積み重なっている点にある。

 例えば東京エレクトロンは、コータ・デベロッパでシェア約90%級ともされる(ドラフト記載)。前工程の中でも重要な工程を押さえ、EUV関連で存在感を増してきた。信越化学はシリコンウェハーで世界シェア1位級、AGCは合成石英ガラスなどで世界トップクラスの地位を保つ。

 そして見落とされがちだが、工場全体の自動化・搬送・実装といった領域でも、日本企業は強い。ヤマハ発動機はロボティクス領域で高速・高精度の自動化技術を提供し、工場の“稼働率”を高める役割を担う。

 重要なのは、これらが単なる部品供給ではないことだ。日本企業が提供しているのは、半導体製造という巨大産業の「機械」「材料」「検査」「自動化」を束ねた、いわば“工場OS”に近い。

「半導体サプライチェーンの脆弱性が問題になるほど、川上のプレイヤーは“国家安全保障の道具”になる。日本の装置・材料企業は、経済合理性だけでなく地政学上の価値を持ち始めている」(同)

日本は「半導体の敗者」ではない。“プラットフォーマー”へ進化した

 かつて日本はDRAMなど、完成品(チップ)で世界を取ろうとしていた。しかし完成品は価格競争に巻き込まれやすく、量産勝負の世界であり、アジア勢との消耗戦になった。

 一方、現在の日本が取っているポジションは違う。誰が勝っても必ず使われる「装置」「材料」「検査」「後工程」に特化し、産業の通行料を握る側に回った。

 GAFAやNVIDIAが「どんなチップを作るか」を考える設計者だとすれば、日本企業は「そのチップを作るためのキャンバス、筆、絵の具、工房の管理システム」を提供している。しかも、それらは簡単に置き換えが効かない。

 つまり「日本半導体敗北論」とは、川下の分かりやすい“主役”だけを見て、川上の“支配”を見落とした議論なのだ。

 もちろん、日本に課題がないわけではない。人材、研究開発、スタートアップ層、ソフトウェアとの統合、製造拠点の脆弱性など、取り組むべき論点は多い。だが少なくとも、「日本は終わった」と結論づけるのは早すぎる。むしろ今、日本の強みは“地味だが最強”という形で、世界の半導体を縛っている。

 日本は半導体の敗者ではない。主役ではなく、世界の工場を動かすプラットフォーマーへと進化したのである。

【データ解説】世界を支配する「黒衣の巨人」たちの経営実態(主要指標)

 各社の決算短信・業績予想(ドラフト記載)に基づく主要指標を見ると、装置・素材系の高収益性が際立つ。営業利益率が2桁後半〜40%級に達する企業が存在するのは、単なる効率経営ではなく、代替不能性=価格決定権を握っているためだ。

 キヤノン:ナノインプリント露光で“次の選択肢”を提示
 東京エレクトロン:前工程の要所を支配
 レーザーテック:最先端の“門番”
 ディスコ:後工程の王者
 花王:洗浄・界面という「見えない戦場」で勝つ
 信越化学:超高純度ウェハーの根幹
 ヤマハ発動機:工場自動化で稼働率を支える

 半導体の覇権は、GPU企業やファウンドリの物語だけではない。むしろその背後で「工場を止められる権力」を持つ企業こそが、最終的に最も強い。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

「日本は半導体後進国」の大間違い…キヤノンや花王、“半導体の喉元”を握る日本企業

●この記事のポイント
・「日本半導体は死んだ」は誤解だ。キヤノン、花王、レーザーテックらが装置・材料・検査で世界の製造基盤を握り、TSMCやサムスンの量産を支配している。
・半導体競争は「チップ」から「工場インフラ」へ移った。日本企業は露光・洗浄・検査・後工程の不可欠領域を押さえ、代替不能性で価格決定権を確立している。
・川下の主役は海外でも、川上の製造OSは日本が担う。日本は完成品競争から脱し、誰が勝っても必ず使われる装置・材料で“プラットフォーマー化”した。

「日本の半導体は、もはや見る影もない」――。かつて1980年代に世界市場の5割を席巻した黄金期と比べれば、そうした“敗北論”がメディアに溢れるのも無理はない。実際、生成AIブームの象徴であるNVIDIA(エヌビディア)をはじめ、世界の注目を集める主役は米国であり、最先端プロセスの覇者は台湾TSMC、韓国サムスン電子といった海外勢である。

 だが、ここに重大な錯覚がある。「半導体=最終製品(チップ)を作る企業が勝つ」という見方は、川下だけを見ている。真に“産業の喉元”を握るのは、チップそのものではなく、それを作らせるための製造装置・材料・後工程の支配である。

 もし日本企業が供給を止めたらどうなるか。最先端スマートフォンのSoCも、AIサーバーのGPUも、先端メモリも、工場から消える。なぜなら、半導体製造は「一国で完結する産業」ではなく、地球規模の超分業によって成立する“巨大工場”であり、日本企業はその工場の要所を押さえる存在だからだ。

 本稿では、「日本半導体敗北論」の裏側で静かに進んでいた、日本の装置・素材メーカーによる“インフラ支配”の全貌を解き明かす。主役は、キヤノン、花王、レーザーテック、東京エレクトロン、ディスコ、信越化学、AGC、ヤマハ発動機といった“黒衣の巨人”たちである。

●目次

半導体は「モデル」ではなく「工場」の戦いになった

 生成AIの時代、半導体産業の競争軸は大きく変わりつつある。従来は「より良い設計をする企業」「より速いチップを作る企業」が主役だった。しかし今は、微細化が極限に近づき、製造難度は指数関数的に上がった。最先端領域では、もはや設計思想よりも「工場を動かせるか」が勝敗を分ける。

 先端半導体は、単に回路を縮めれば良いわけではない。歩留まりを左右するのは、ナノ単位の微粒子、材料の純度、洗浄工程、さらには検査・計測の精度と速度だ。この“工場総合格闘技”を成立させているのが、装置と材料の蓄積である。そして、その積み上げを最も長く続けてきた国の一つが日本である。

 元半導体メーカー研究員で経済コンサルタントの岩井裕介氏はこう語る。

「日本が失ったのは“メモリで世界を取る物語”であり、“半導体産業の支配力”そのものではない。むしろ今の日本は、勝者が誰であれ“必ず上納金が入るポジション”に移った」

 川下から見れば衰退に映る。しかし川上から見れば、日本は“プラットフォーム”へと進化していたのである。

「光」ではなく「型」で勝つ――キヤノンの逆襲

 半導体製造の最前線で、圧倒的な支配力を持つ企業がある。オランダのASMLだ。同社が独占するEUV(極端紫外線)露光装置は、最先端半導体の製造に不可欠で、価格は1台数百億円ともいわれる。導入できる企業が限られるほど、EUVは“通行手形”として機能してきた。

 だが、ここに風穴を開ける可能性を秘めた技術が存在する。キヤノンのナノインプリント(NIL)である。これは従来の露光と違い、「光で回路を焼き付ける」のではなく、ハンコのように“型”を押し付ける手法だ。もし量産に適用できれば、装置のコストや消費電力を大きく下げられる可能性がある。

 キヤノンはカメラ企業のイメージが強いが、産業領域は別の顔を持つ。インダストリアル部門は売上高3565億円、営業利益率約20%と、極めて高い収益性を誇る(ドラフト記載数値)。この利益率は、「価格競争ではなく技術競争で勝てている」ことを示すシグナルでもある。

「NILの価値は、ASMLを倒すことではない。“EUVの導入が難しい領域”や、“コストと電力が障壁となる用途”に別の選択肢を出せる点にある。製造インフラは一極集中より多極化のほうが強い」(岩井氏)

 ASML一強の時代は、いつまでも続くとは限らない。キヤノンのNILは、半導体工場のルールそのものを変える“異種格闘技”の刺客になり得る。

「台所の科学」がAIチップを救う――花王の界面制御が1ナノのゴミを許さない

 日本の強みは、装置だけではない。むしろ真骨頂は“材料”にある。そして、最も意外性のあるプレイヤーが、日用品メーカーの花王だ。

「アタック」「キュキュット」で知られる花王が、半導体洗浄剤の分野で存在感を強めている。半導体は微細化が進むほど、“見えない汚れ”が致命傷になる。人間の目には存在しないレベルの微粒子が、歩留まりや信頼性を左右するからだ。

 花王の武器は、長年培った界面活性剤の知見、すなわち「汚れを落とす科学」そのものである。洗浄後に水滴を残さない、微細領域で表面を安定化させる、といった制御は、まさに界面技術の応用だ。

「半導体洗浄は、単に“強い薬品で洗う”話ではない。表面を傷つけない、異物を再付着させない、濡れ性を制御する――つまり“界面の設計”が本質になる。花王は家庭用品で、その設計力を極限まで磨いてきた」(同)

 花王は2025年に台湾で精密洗浄センターを稼働させるなど、現地での連携を強めている。製造現場の近くに拠点を置くということは、「ただ売る」ではなく「一緒に歩留まりを上げる」パートナーに踏み込むことを意味する。これは素材メーカーとしての“格上げ”である。

シェア100%の「門番」――レーザーテックが止まれば最先端は量産できない

 半導体の覇権を握るのは、露光装置だけではない。作った回路が正しいかどうか、ミスを見抜けなければ量産できない。その“最終関門”を握る企業が、日本のレーザーテックだ。

 同社はEUVマスク検査装置で世界シェア100%級ともいわれる。EUV時代のマスクは複雑で、検査が難しい。ここで欠陥を見逃せば、不良品を大量生産する“地獄の量産”が始まる。

 半導体製造では、不具合が出てから止めるのでは遅い。止めた瞬間に数百億円規模の損失が出ることもある。だからこそ検査装置は、「保険」であり「通行証」でもある。

「最先端ほど“作る”より“確かめる”が難しくなる。レーザーテックは、EUV時代の品質保証の中心にいる。彼らは装置メーカーでありながら、事実上“工場の稼働率”を握っている」(同)

 営業利益率が40%を超える水準になり得るのも、代替が効かないことの裏返しだ。

「後工程」の王者が世界を制す――ディスコと、日本の“完成工程”支配

 半導体産業は、前工程(回路形成)ばかりが注目されがちだ。しかし実際には、完成品として成立させる後工程も、技術難度が上がっている。

 ここで圧倒的な存在感を放つのがディスコだ。ウェハーを切り出すダイシング装置で世界シェア70〜80%級ともされ、「切る・削る・磨く」において他社の追随を許さない。次世代のパワー半導体(SiC)など、高硬度材料ほど加工は難しくなり、ディスコの優位性が増す。

「後工程は“成熟市場”と言われてきたが、AIと電動化で状況が変わった。高性能化が進むほど、加工精度が製品寿命に直結する。ディスコはそこで“品質を売っている”」(同)

 半導体の覇権とは、最先端だけの話ではない。大量に作り、安定して出荷し、歩留まりを上げる。その最後の工程を押さえる企業が、利益の中心に立つ。

東京エレクトロン、信越化学、AGC……「代替不能」の積層が日本の武器になる

 日本の強みが恐ろしいのは、「単独のスター企業」ではなく、代替不能な要素が積み重なっている点にある。

 例えば東京エレクトロンは、コータ・デベロッパでシェア約90%級ともされる(ドラフト記載)。前工程の中でも重要な工程を押さえ、EUV関連で存在感を増してきた。信越化学はシリコンウェハーで世界シェア1位級、AGCは合成石英ガラスなどで世界トップクラスの地位を保つ。

 そして見落とされがちだが、工場全体の自動化・搬送・実装といった領域でも、日本企業は強い。ヤマハ発動機はロボティクス領域で高速・高精度の自動化技術を提供し、工場の“稼働率”を高める役割を担う。

 重要なのは、これらが単なる部品供給ではないことだ。日本企業が提供しているのは、半導体製造という巨大産業の「機械」「材料」「検査」「自動化」を束ねた、いわば“工場OS”に近い。

「半導体サプライチェーンの脆弱性が問題になるほど、川上のプレイヤーは“国家安全保障の道具”になる。日本の装置・材料企業は、経済合理性だけでなく地政学上の価値を持ち始めている」(同)

日本は「半導体の敗者」ではない。“プラットフォーマー”へ進化した

 かつて日本はDRAMなど、完成品(チップ)で世界を取ろうとしていた。しかし完成品は価格競争に巻き込まれやすく、量産勝負の世界であり、アジア勢との消耗戦になった。

 一方、現在の日本が取っているポジションは違う。誰が勝っても必ず使われる「装置」「材料」「検査」「後工程」に特化し、産業の通行料を握る側に回った。

 GAFAやNVIDIAが「どんなチップを作るか」を考える設計者だとすれば、日本企業は「そのチップを作るためのキャンバス、筆、絵の具、工房の管理システム」を提供している。しかも、それらは簡単に置き換えが効かない。

 つまり「日本半導体敗北論」とは、川下の分かりやすい“主役”だけを見て、川上の“支配”を見落とした議論なのだ。

 もちろん、日本に課題がないわけではない。人材、研究開発、スタートアップ層、ソフトウェアとの統合、製造拠点の脆弱性など、取り組むべき論点は多い。だが少なくとも、「日本は終わった」と結論づけるのは早すぎる。むしろ今、日本の強みは“地味だが最強”という形で、世界の半導体を縛っている。

 日本は半導体の敗者ではない。主役ではなく、世界の工場を動かすプラットフォーマーへと進化したのである。

【データ解説】世界を支配する「黒衣の巨人」たちの経営実態(主要指標)

 各社の決算短信・業績予想(ドラフト記載)に基づく主要指標を見ると、装置・素材系の高収益性が際立つ。営業利益率が2桁後半〜40%級に達する企業が存在するのは、単なる効率経営ではなく、代替不能性=価格決定権を握っているためだ。

 キヤノン:ナノインプリント露光で“次の選択肢”を提示
 東京エレクトロン:前工程の要所を支配
 レーザーテック:最先端の“門番”
 ディスコ:後工程の王者
 花王:洗浄・界面という「見えない戦場」で勝つ
 信越化学:超高純度ウェハーの根幹
 ヤマハ発動機:工場自動化で稼働率を支える

 半導体の覇権は、GPU企業やファウンドリの物語だけではない。むしろその背後で「工場を止められる権力」を持つ企業こそが、最終的に最も強い。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

脱炭素の覇権は「CO2物流」が握る…政府4兆円投資で始まる“液化運搬”争奪戦

●この記事のポイント
・政府が10年で4兆円超を投じるCCSは「回収」だけでなく「液化・運搬」が勝負所だ。CO2物流が新インフラ市場になる。
・千葉・九十九里沖や苫小牧で貯留整備が進む中、CO2を液化し大量輸送する技術がCCSのボトルネックを解消する。
・CCSは処理手数料とカーボンクレジット売却の二階建て収益で事業化が進む。「運ぶ企業」がGX覇権を握る。

「脱炭素」は、もはや企業の社会的責任(CSR)だけではない。2026年の産業界で起きているのは、CO2削減を“コスト”から“資産”へと転換する、巨大な市場創造そのものだ。

 中核を担うのは、排出された二酸化炭素を回収し、地下深くへ閉じ込めるCCS(CO2回収・貯留)。再生可能エネルギーの導入が進んでも、鉄鋼、化学、セメントなどの産業部門では、工程由来のCO2をゼロにするのが難しい。そこに残された“最後の手段”として、CCSが現実味を帯びてきた。

 そして今、CCSの勝負を分けるのは、回収技術そのものだけではない。回収したCO2を「どこへ」「どうやって」運ぶのか。この“移動”の設計こそが、次世代のエネルギーインフラを決める。

 政府が今後10年間で4兆円超の官民投資を掲げるなか、キーワードとして浮上しているのがCO2の「液化(LCO2)」と、そこから派生する「運搬インフラ」、さらに削減量を“通貨化”するカーボンクレジットのマネタイズである。

●目次

2030年に「5倍」へ急拡大するCCS市場

世界の潮流は、すでに「回収」から「物流」へ動いている

 CCSが注目される最大の背景は、脱炭素が“理想論”から“現実解”へ変わった点にある。産業部門のCO2排出は、再エネ・電化だけでは削減しきれない。つまり、排出が避けられない領域に対し、「排出した分を回収し、永久隔離する」アプローチが不可欠になった。

 国際的な予測では、世界のCCS回収能力は2030年に年間約3億トン規模へ拡大し、2020年代半ばと比べて数倍の成長が見込まれる。実際、欧州では北海を中心に大規模貯留プロジェクトが立ち上がり、CO2の扱いは「処分する廃棄物」から「管理して移動させる対象」へと定義が変わりつつある。

 エネルギー資源として“燃やす”のではなく、CO2を“運ぶ”ことが産業になる。この発想の転換が、いま静かに産業構造を揺さぶっている。

「CCSは『回収できるか』よりも『運べるか』で詰まるケースが多い。CO2の発生源と貯留地が一致しない以上、輸送が成立しなければ投資は回らない。ここに“物流インフラとしての脱炭素”という巨大市場が生まれる」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)

日本政府の本気度:千葉・九十九里沖、苫小牧で貯留へ

近海が「CO2の受け皿」になるという国家構想

 日本もこの潮流を真正面から取りにいっている。経済産業省はCCSをGX(グリーントランスフォーメーション)の柱の一つに位置づけ、今後10年間で4兆円以上の官民投資を呼び込む方針を掲げる。

 象徴的なのが貯留地の確保だ。千葉県の九十九里沖では地下貯留区域の指定が進み、試掘に向けた動きが本格化している。北海道・苫小牧でも試掘・実証が進み、日本列島の近海が将来的に「CO2を受け止めるインフラ」へ変貌しようとしている。

 ここで重要なのは、CCSが単発の設備投資ではなく、国家インフラ=長期の公共性を帯びた産業になる点だ。貯留地の確保・監視・責任主体の整理は、事業者単独で完結しない。制度整備が進むほど、民間投資は動きやすくなる。

「貯留事業は“掘れば終わり”ではなく、数十年単位でのモニタリングと説明責任がセットになる。行政側のルール整備は、投資の前提条件だ。逆にいえば、制度が固まれば日本は一気に投資が進む土壌を持つ」(同)

「液化」がバリューチェーンのボトルネックを解消する

気体では運べない。CCSの勝負は“ラストワンマイル”で決まる

 CCSを事業化するうえで最大の難所は、「回収したCO2をどう運ぶか」である。気体のままでは体積が大きく、効率的な大量輸送に向かない。パイプライン整備という選択肢もあるが、敷設コスト・用地・社会受容性のハードルは高い。

 そこで浮上するのが、CO2を冷却・加圧して液体化するLCO2(液化CO2)だ。液化すれば体積は大幅に小さくなり、タンクローリーや船舶での輸送効率が一気に上がる。

 ここが重要なポイントである。CCSのバリューチェーンは「回収」「液化」「貯蔵」「運搬」「貯留」と分解できるが、事業成立の鍵を握るのは、しばしば液化・運搬という“物理インフラ領域”になる。

 つまり、CCSは“環境技術”というより、新しい物流産業として理解したほうが本質に近い。

「液化CO2は“冷やして終わり”ではない。温度・圧力管理、断熱、漏えい対策、品質管理まで含めて初めて物流商品になる。ここは日本のプラント・機械・海運が相対的に強い領域だ」(同)

荒波をリードする日本企業:川崎汽船と千代田化工の挑戦

“CO2を運ぶ船”が、次の巨大市場の入口になる

 日本企業の動きで象徴的なのが、海運業界の川崎汽船である。同社はLCO2運搬船の運航を担い、欧州の先進CCSプロジェクトに関与することで実運用の知見を積み上げている。

 CO2輸送は、既存のLNG(液化天然ガス)輸送と似ているようで異なる。CO2は燃料ではなく“回収物”であり、扱いはより厳格な管理が求められる。そこに先に踏み込んだ海運企業は、設備・運航・保険・リスク管理といった“見えないノウハウ”を蓄積する。これは参入障壁になり得る。

 エンジニアリング大手の千代田化工建設も存在感を増す。同社は回収から液化・貯蔵・輸送・貯留まで、CCS関連の工程を広く手がけることで「一気通貫モデル」を狙う。CCSは工程が複雑で、責任分界が曖昧だと投資が止まる。プロジェクト全体をまとめ上げるEPC(設計・調達・建設)能力は、金融機関や産業顧客から見て信頼材料になる。

「CCSは“誰が最後に責任を持つのか”が最大の論点になる。工程を束ねられる企業は、契約設計の主導権を持てる。結果として、収益もリスクもコントロールしやすい」(同)

装置開発から地域実証まで:広がる「CO2液化」サプライチェーン

勝者は海運だけではない。勝負は“標準化”と“量産”で決まる

 液化・運搬ビジネスは、海運やプラントだけの話ではない。むしろ裾野は広い。

 例えば、CO2液化装置の開発・販売に取り組む企業は、排出源となる工場単位で導入を狙える。排出源が全国に点在している日本では、集中型の巨大拠点だけでなく、「中規模排出源を束ねる分散型モデル」が成立し得る。

 さらに、日本特殊陶業と日立プラントサービスのように、工場由来のCO2を回収・液化し、地域での利活用(カーボンリサイクル)へつなげる実証も動く。ここには二つの意味がある。

 第一に、「貯留」だけに依存しないことで社会受容性を高めること。
 第二に、CO2を“資源”として扱うことで、地域産業と結びつけることだ。

 CCSの本命は貯留だとしても、現場では多様なモデルが混在する。そのとき、液化・輸送という共通インフラが標準化されれば、企業間連携は一気に進む。

「CO2は“どこで回収し、どこで使い、どこに貯めるか”が地域ごとに違う。だからこそ、輸送・貯蔵の規格が共通化されるほど、ビジネスはスケールする」(同)

CCSを“儲かる事業”へ変える「カーボンクレジット」収益化

削減量を「通貨」に変える時代が始まった

 CCSが単なるコストで終わらない最大の理由は、削減したCO2をカーボンクレジットとして資産化し、市場で売却できる仕組みが整いつつあることだ。

 ポイントは、CO2を埋めた事実が“経済価値”を持つことにある。これによりCCSは、「廃棄物処理」から「環境価値を生む金融商品」へ性格を変える。

1)創出:削減量を「通貨化」する仕組み

 CCS事業者がCO2を貯留すると、その量が第三者認証の対象となり、一定の基準に基づいてクレジット化される。

 国内ではJ-クレジット制度が代表例で、海外では二国間クレジット制度(JCM)の枠組みもある。特にJCMは、日本の技術や企業が関与した海外の削減を、日本側の削減実績としても取り込める可能性があり、アジア市場との接続点になる。

「クレジット市場で評価されるのは“削減量”だけではなく、追加性・恒久性・MRV(測定・報告・検証)の信頼性だ。CCSは恒久性が高いとされ、質の高いクレジットとして優位に立てる可能性がある」(同)

2)流通:誰がクレジットを買うのか

 クレジットの主な買い手は、自助努力だけでは削減が難しい「ハード・トゥ・アベート」産業である。鉄鋼・化学・セメントのように工程起因の排出が避けられない分野は、規制や取引先要求に対応するため、クレジット購入が現実的な選択肢となる。

 また、グローバル企業がサプライチェーン全体での脱炭素を掲げる中、調達網にCO2削減の圧力がかかる。日本企業にとっては「自社排出の削減」だけでなく、「取引先からの要請に耐える体質づくり」としてCCSが意味を持つ。

3)CCS特有の収益モデル:「二階建て」が事業性を押し上げる

 海外の先行事例で注目されるのが、CCSの収益が「二階建て」になり得る点だ。

 ・処理手数料(Gate Fee):排出企業からCO2を引き取る委託料
 ・クレジット売却益:貯留実績をクレジット化し市場で売却する収益
 
 つまり、単に“埋める”だけではなく、埋めた結果が“金融価値”を生む。この構造が成立すれば、CCSは補助金頼みではなく、投資として回り始める。

 加えて、JOGMECがCCSクレジットの算定・整理に関する指針を公表していることは、金融機関のリスク評価を助ける材料になる。クレジット化の透明性が上がれば、プロジェクトファイナンスが組みやすくなり、民間資金が入りやすくなる。

「金融は“不確実性の価格”を嫌う。CCSの収益がクレジット依存になるほど、算定基準と検証体制が重要だ。ルールが整えば、設備投資からインフラ投資へ格上げされる」(金融アナリストの川﨑一幸氏)

脱炭素の「ラストワンマイル」を制する者が勝つ

“CO2を運ぶ”企業が、次の産業地図を書き換える

 これまでCO2削減は、利益を圧迫する“必要経費”と見られがちだった。だが2026年、状況は変わりつつある。政府が掲げる4兆円規模の投資、貯留地の整備、そしてクレジット市場という収益化装置が揃い始めたことで、CCSは新たなインフラ産業へと姿を変えようとしている。

 回収、液化、運搬、貯留――。この一連の流れの中で、特に「液化・運搬」という物理インフラを握る企業は、脱炭素の現場で不可欠な存在となる。さらに、貯留実績をクレジットに変える金融スキームを設計できれば、CCSは“環境対策”ではなく、“儲かる産業”として自走を始める。

 脱炭素の本当の勝者は、最先端の理論を語る企業ではない。CO2という厄介な物質を、確実に、安全に、安く、運び切れる企業である。

 そして、その先にあるのは「CO2を運ぶ船」「CO2を貯める港」「CO2を管理する地下」という、かつて存在しなかった新しい社会インフラだ。脱炭素のラストワンマイルを制した者が、次の市場を制する――CCSの勝負は、いままさにそこへ移りつつある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

脱炭素の覇権は「CO2物流」が握る…政府4兆円投資で始まる“液化運搬”争奪戦

●この記事のポイント
・政府が10年で4兆円超を投じるCCSは「回収」だけでなく「液化・運搬」が勝負所だ。CO2物流が新インフラ市場になる。
・千葉・九十九里沖や苫小牧で貯留整備が進む中、CO2を液化し大量輸送する技術がCCSのボトルネックを解消する。
・CCSは処理手数料とカーボンクレジット売却の二階建て収益で事業化が進む。「運ぶ企業」がGX覇権を握る。

「脱炭素」は、もはや企業の社会的責任(CSR)だけではない。2026年の産業界で起きているのは、CO2削減を“コスト”から“資産”へと転換する、巨大な市場創造そのものだ。

 中核を担うのは、排出された二酸化炭素を回収し、地下深くへ閉じ込めるCCS(CO2回収・貯留)。再生可能エネルギーの導入が進んでも、鉄鋼、化学、セメントなどの産業部門では、工程由来のCO2をゼロにするのが難しい。そこに残された“最後の手段”として、CCSが現実味を帯びてきた。

 そして今、CCSの勝負を分けるのは、回収技術そのものだけではない。回収したCO2を「どこへ」「どうやって」運ぶのか。この“移動”の設計こそが、次世代のエネルギーインフラを決める。

 政府が今後10年間で4兆円超の官民投資を掲げるなか、キーワードとして浮上しているのがCO2の「液化(LCO2)」と、そこから派生する「運搬インフラ」、さらに削減量を“通貨化”するカーボンクレジットのマネタイズである。

●目次

2030年に「5倍」へ急拡大するCCS市場

世界の潮流は、すでに「回収」から「物流」へ動いている

 CCSが注目される最大の背景は、脱炭素が“理想論”から“現実解”へ変わった点にある。産業部門のCO2排出は、再エネ・電化だけでは削減しきれない。つまり、排出が避けられない領域に対し、「排出した分を回収し、永久隔離する」アプローチが不可欠になった。

 国際的な予測では、世界のCCS回収能力は2030年に年間約3億トン規模へ拡大し、2020年代半ばと比べて数倍の成長が見込まれる。実際、欧州では北海を中心に大規模貯留プロジェクトが立ち上がり、CO2の扱いは「処分する廃棄物」から「管理して移動させる対象」へと定義が変わりつつある。

 エネルギー資源として“燃やす”のではなく、CO2を“運ぶ”ことが産業になる。この発想の転換が、いま静かに産業構造を揺さぶっている。

「CCSは『回収できるか』よりも『運べるか』で詰まるケースが多い。CO2の発生源と貯留地が一致しない以上、輸送が成立しなければ投資は回らない。ここに“物流インフラとしての脱炭素”という巨大市場が生まれる」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)

日本政府の本気度:千葉・九十九里沖、苫小牧で貯留へ

近海が「CO2の受け皿」になるという国家構想

 日本もこの潮流を真正面から取りにいっている。経済産業省はCCSをGX(グリーントランスフォーメーション)の柱の一つに位置づけ、今後10年間で4兆円以上の官民投資を呼び込む方針を掲げる。

 象徴的なのが貯留地の確保だ。千葉県の九十九里沖では地下貯留区域の指定が進み、試掘に向けた動きが本格化している。北海道・苫小牧でも試掘・実証が進み、日本列島の近海が将来的に「CO2を受け止めるインフラ」へ変貌しようとしている。

 ここで重要なのは、CCSが単発の設備投資ではなく、国家インフラ=長期の公共性を帯びた産業になる点だ。貯留地の確保・監視・責任主体の整理は、事業者単独で完結しない。制度整備が進むほど、民間投資は動きやすくなる。

「貯留事業は“掘れば終わり”ではなく、数十年単位でのモニタリングと説明責任がセットになる。行政側のルール整備は、投資の前提条件だ。逆にいえば、制度が固まれば日本は一気に投資が進む土壌を持つ」(同)

「液化」がバリューチェーンのボトルネックを解消する

気体では運べない。CCSの勝負は“ラストワンマイル”で決まる

 CCSを事業化するうえで最大の難所は、「回収したCO2をどう運ぶか」である。気体のままでは体積が大きく、効率的な大量輸送に向かない。パイプライン整備という選択肢もあるが、敷設コスト・用地・社会受容性のハードルは高い。

 そこで浮上するのが、CO2を冷却・加圧して液体化するLCO2(液化CO2)だ。液化すれば体積は大幅に小さくなり、タンクローリーや船舶での輸送効率が一気に上がる。

 ここが重要なポイントである。CCSのバリューチェーンは「回収」「液化」「貯蔵」「運搬」「貯留」と分解できるが、事業成立の鍵を握るのは、しばしば液化・運搬という“物理インフラ領域”になる。

 つまり、CCSは“環境技術”というより、新しい物流産業として理解したほうが本質に近い。

「液化CO2は“冷やして終わり”ではない。温度・圧力管理、断熱、漏えい対策、品質管理まで含めて初めて物流商品になる。ここは日本のプラント・機械・海運が相対的に強い領域だ」(同)

荒波をリードする日本企業:川崎汽船と千代田化工の挑戦

“CO2を運ぶ船”が、次の巨大市場の入口になる

 日本企業の動きで象徴的なのが、海運業界の川崎汽船である。同社はLCO2運搬船の運航を担い、欧州の先進CCSプロジェクトに関与することで実運用の知見を積み上げている。

 CO2輸送は、既存のLNG(液化天然ガス)輸送と似ているようで異なる。CO2は燃料ではなく“回収物”であり、扱いはより厳格な管理が求められる。そこに先に踏み込んだ海運企業は、設備・運航・保険・リスク管理といった“見えないノウハウ”を蓄積する。これは参入障壁になり得る。

 エンジニアリング大手の千代田化工建設も存在感を増す。同社は回収から液化・貯蔵・輸送・貯留まで、CCS関連の工程を広く手がけることで「一気通貫モデル」を狙う。CCSは工程が複雑で、責任分界が曖昧だと投資が止まる。プロジェクト全体をまとめ上げるEPC(設計・調達・建設)能力は、金融機関や産業顧客から見て信頼材料になる。

「CCSは“誰が最後に責任を持つのか”が最大の論点になる。工程を束ねられる企業は、契約設計の主導権を持てる。結果として、収益もリスクもコントロールしやすい」(同)

装置開発から地域実証まで:広がる「CO2液化」サプライチェーン

勝者は海運だけではない。勝負は“標準化”と“量産”で決まる

 液化・運搬ビジネスは、海運やプラントだけの話ではない。むしろ裾野は広い。

 例えば、CO2液化装置の開発・販売に取り組む企業は、排出源となる工場単位で導入を狙える。排出源が全国に点在している日本では、集中型の巨大拠点だけでなく、「中規模排出源を束ねる分散型モデル」が成立し得る。

 さらに、日本特殊陶業と日立プラントサービスのように、工場由来のCO2を回収・液化し、地域での利活用(カーボンリサイクル)へつなげる実証も動く。ここには二つの意味がある。

 第一に、「貯留」だけに依存しないことで社会受容性を高めること。
 第二に、CO2を“資源”として扱うことで、地域産業と結びつけることだ。

 CCSの本命は貯留だとしても、現場では多様なモデルが混在する。そのとき、液化・輸送という共通インフラが標準化されれば、企業間連携は一気に進む。

「CO2は“どこで回収し、どこで使い、どこに貯めるか”が地域ごとに違う。だからこそ、輸送・貯蔵の規格が共通化されるほど、ビジネスはスケールする」(同)

CCSを“儲かる事業”へ変える「カーボンクレジット」収益化

削減量を「通貨」に変える時代が始まった

 CCSが単なるコストで終わらない最大の理由は、削減したCO2をカーボンクレジットとして資産化し、市場で売却できる仕組みが整いつつあることだ。

 ポイントは、CO2を埋めた事実が“経済価値”を持つことにある。これによりCCSは、「廃棄物処理」から「環境価値を生む金融商品」へ性格を変える。

1)創出:削減量を「通貨化」する仕組み

 CCS事業者がCO2を貯留すると、その量が第三者認証の対象となり、一定の基準に基づいてクレジット化される。

 国内ではJ-クレジット制度が代表例で、海外では二国間クレジット制度(JCM)の枠組みもある。特にJCMは、日本の技術や企業が関与した海外の削減を、日本側の削減実績としても取り込める可能性があり、アジア市場との接続点になる。

「クレジット市場で評価されるのは“削減量”だけではなく、追加性・恒久性・MRV(測定・報告・検証)の信頼性だ。CCSは恒久性が高いとされ、質の高いクレジットとして優位に立てる可能性がある」(同)

2)流通:誰がクレジットを買うのか

 クレジットの主な買い手は、自助努力だけでは削減が難しい「ハード・トゥ・アベート」産業である。鉄鋼・化学・セメントのように工程起因の排出が避けられない分野は、規制や取引先要求に対応するため、クレジット購入が現実的な選択肢となる。

 また、グローバル企業がサプライチェーン全体での脱炭素を掲げる中、調達網にCO2削減の圧力がかかる。日本企業にとっては「自社排出の削減」だけでなく、「取引先からの要請に耐える体質づくり」としてCCSが意味を持つ。

3)CCS特有の収益モデル:「二階建て」が事業性を押し上げる

 海外の先行事例で注目されるのが、CCSの収益が「二階建て」になり得る点だ。

 ・処理手数料(Gate Fee):排出企業からCO2を引き取る委託料
 ・クレジット売却益:貯留実績をクレジット化し市場で売却する収益
 
 つまり、単に“埋める”だけではなく、埋めた結果が“金融価値”を生む。この構造が成立すれば、CCSは補助金頼みではなく、投資として回り始める。

 加えて、JOGMECがCCSクレジットの算定・整理に関する指針を公表していることは、金融機関のリスク評価を助ける材料になる。クレジット化の透明性が上がれば、プロジェクトファイナンスが組みやすくなり、民間資金が入りやすくなる。

「金融は“不確実性の価格”を嫌う。CCSの収益がクレジット依存になるほど、算定基準と検証体制が重要だ。ルールが整えば、設備投資からインフラ投資へ格上げされる」(金融アナリストの川﨑一幸氏)

脱炭素の「ラストワンマイル」を制する者が勝つ

“CO2を運ぶ”企業が、次の産業地図を書き換える

 これまでCO2削減は、利益を圧迫する“必要経費”と見られがちだった。だが2026年、状況は変わりつつある。政府が掲げる4兆円規模の投資、貯留地の整備、そしてクレジット市場という収益化装置が揃い始めたことで、CCSは新たなインフラ産業へと姿を変えようとしている。

 回収、液化、運搬、貯留――。この一連の流れの中で、特に「液化・運搬」という物理インフラを握る企業は、脱炭素の現場で不可欠な存在となる。さらに、貯留実績をクレジットに変える金融スキームを設計できれば、CCSは“環境対策”ではなく、“儲かる産業”として自走を始める。

 脱炭素の本当の勝者は、最先端の理論を語る企業ではない。CO2という厄介な物質を、確実に、安全に、安く、運び切れる企業である。

 そして、その先にあるのは「CO2を運ぶ船」「CO2を貯める港」「CO2を管理する地下」という、かつて存在しなかった新しい社会インフラだ。脱炭素のラストワンマイルを制した者が、次の市場を制する――CCSの勝負は、いままさにそこへ移りつつある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

一体何しに日本へ?防衛省OBが警告する「友達のフリ」した外国人スパイの巧妙な手口 – 防衛省出身ジャーナリストの世界の軍事・情報戦ウォッチ

警視庁公安部が、日本の工作機械メーカーの元社員とロシアの政府関係者を書類送検した。このロシア人はスパイであり、元社員から営業機密を聞き出した疑いがある。今回の例に代表されるように、日本に潜んでいる外国人スパイは、あの手この手で標的を懐柔し、重要な情報を得ようとする。本稿では、そうしたスパイの巧妙な手口について、防衛省出身者が独自の視点で解説する。