尊厳死宣言はムダだった?終活で尊厳死を宣言した女性の「寝たきり」「胃ろう」介護の現実

 中野ヨシさん(71歳、女性)は、特別養護老人ホームに入所して丸3年が経過した。脳出血から肢体麻痺になり、要介護度5の寝たきり状態で自発的な動作は一切できない。現在は胃ろうを造設し、毎日ほぼ決まった時間に起きて、管から栄養を補給し、おむつ交換、臥床等、ルーティーンを繰り返している。

 最近は嚥下状態が改善し、口からゼリー状の食べ物を摂取できるようになった。時折見せる笑顔のなかで、かすれた声で「苦しい」「つらい」という言葉を口にする。

葬儀はしなくていい、夫の実家のお墓は「墓じまい」

 ヨシさんが終活を意識するようになったのは、65歳を過ぎたあたりからだという。5人きょうだいのうち、長男・長女と立て続けに亡くなったことがきっかけで、「葬儀やお墓のこと、相続のこととか考えておかなきゃね」とエンディングノートを買ったり、終活セミナーに足を運んでいたりした。夫と一緒に遺影撮影会に参加したこともある。

「葬儀はしなくていい。家族だけで火葬できたらそれでいい」

「お墓もいらない。遺骨は、亡き夫の遺骨と一緒に散骨でいい。ただし、亡き夫は長男なので、四国にある先祖代々の墓を墓じまいする必要がある」

 これが、ヨシさんがエンディングノートに書いた葬儀やお墓の希望だ。子どもは娘ひとりのみ、孫はいるものの、その代まで四国のお墓を守っていくことは難しいと考えている。夫とも「四国の先祖代々のお墓は、自分たちの代でなんとかしなくてはいけないね」と話していた。しかしそんな矢先、夫は先に他界してしまった。

 墓じまいするにしても、しないという選択をするにしても、四国のお墓については自分がなんとかしなければいけないとヨシさんは考えていたのだった。

延命治療は必要なし、「尊厳死」を表明

 一連の終活のなかで、ヨシさんが明確に表明したことがある。

「助かる見込みのない状態になったら過剰な治療はしない。死期を引き延ばすだけの治療はしたくない」

 一般的に「尊厳死」といわれている考え方だ。

 尊厳死とは、避けられない死が迫ってきたときに、延命だけを目的とする治療をやめて穏やかに死を迎えようとする考え方。似た言葉として安楽死という言葉もあるが、これは、自分自身の意思と判断で人為的に死を早めるもので、日本では基本的に認められていない。

 ヨシさんは、尊厳死の啓蒙を呼びかける団体に入会し、尊厳死の意思表明をしていた。

 尊厳死の意思を示したからといって、必ずしも実現できるとは限らないことはリサーチ済みだ。医師の判断にもよるし、救急の場合は救急隊員が自己判断で救命処置をやめるわけにはいかない。それを承知のうえで、意思を示しておくことにより家族が少しでも楽になれば、という思いだったのだろう。

 また、エンディングノートには、終末期医療について、そして介護についてもこう記してあった。

「認知症になったら施設へ入所」「ガンだったら自宅で療養」

 これは夫の看取りの経験によるところが大きい。

 5歳年上の夫は、ヨシさんが倒れる1年前にガンで亡くなった。闘病生活は負担が大きかったが、最期は自宅で看取ることができた。気分のよい日は散歩に出かけたり、好きなお酒も我慢することなく口にすることができた。

「父らしい最期を迎えることができた。母も、自分もあのような形で送られたいと思っていたのでしょう」とひとり娘は語る。

 ヨシさんが胃ろうを造設したのは、特別養護老人ホームに入所して3年目に入った頃だった。誤嚥性肺炎をたびたび発症、特養と病院を行ったり来たりするようになり、医師から娘に迫られたのが「胃ろう」だった。娘の考えはこうだ。

「母はまだ若い。もう少し生きていてほしいので、胃ろうにしてほしい」

 状態が落ち着けば、また口から食べ物を摂取できる可能性がある、という医師のアドバイスもあり、娘はヨシさんの胃ろうを選択したのであった。実際、現在は状況が改善し口から少し食べられるようになったが、これがヨシさんの望みであったのかは定かではない。

「墓じまい」は手つかずのまま

 娘は、ヨシさんの胃ろうを選択したことを機に、お墓のことを考えるようになった。すでに亡くなっている父、そして将来ヨシさんが入るであろうお墓を都内近郊に持ち、そこに夫婦2人の遺骨を一緒に納めたいと思っている。

「母はエンディングノートに『墓は不要』と書いているが、それは私たちに迷惑をかけたくないという配慮によるもので、本心で不要だと思っているわけではないと思う。私はお墓を通じて父を供養していきたいし、そういう姿を子どもたちに見せていきたいと思っている」

 と、さまざまなタイプの墓を見学し、結局都内にある納骨堂を購入した。ここは跡継ぎなしでも購入でき、継ぐ人がいなくなったら永代供養として寺院で遺骨を管理・供養してくれるシステムを採用している。

 しかし、四国にある先祖代々の墓については、未だ手つかずの状態だ。

「先祖代々となると、親戚に筋を通さなければいけないと思うし、住職にも挨拶に行く必要がある。事務手続きも必要になるので、まとまった時間とお金がなければ、なかなか着手するのは難しい」と頭を抱えていた。

胃ろう、墓の購入…彼女の終活は無駄だったのか?

 ヨシさんが元気なときに終活としてプランニングしていたことは、どれだけ実行できたのだろうか。お墓は不要といっていたヨシさんだったが、娘はお墓を購入した。

 3年にわたる特養での寝たきり状態も想定していなかっただろう。「胃ろう」の造設も本意であるのかどうか、本人の意思は確認できていない。

 エンディングノートに記した希望は実現できなかったことも多いが、だからといってエンディングノートに書いたことが無駄になったわけではない。

 せっせとセミナーに足を運び、聞いたり調べたりしたことで、自分の思いをエンディングノートにまとめることができた。少なくとも家族はそれを指南書として、医療や介護を考えることができたはずだ。

「エンディングノートには、預貯金やスマートフォンの暗証番号等、大切なことも記録されていた。何より母の軌跡がまとめられて、私たちが知らない母の姿を知ることができた。これも終活してくれたおかげだと思う」

 家族が面会に行くと、色白でハリのある顔に笑みがこぼれ、かすかに笑い声も聞かれる。しかし「つらい」「苦しい」という発語がなくなることはなく、何が本人にとってベストな方法なのかわからないまま模索している。

(文=吉川美津子)

【プライバシーに配慮しすべて仮名とし、個人や施設が特定されないように一部変更して紹介しています。】

●吉川美津子(きっかわ・みつこ)
社会福祉士。葬送・終活支援ソーシャルワーカー。葬祭業者、仏壇・墓石販売業者などで勤務後、独立。コンサルタントとして活躍するかたわら、介護&福祉の現場でも活動中。著作に『お墓の大問題』(小学館)、『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)、共著に『死後離婚』(洋泉社)などがある。葬儀ビジネス研究所主宰、葬送儀礼マナー普及協会理事、供養コンシェルジュ協会理事、全国環境マネジメント協会顧問などを務める。<Twitter@mk7jp

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パチスロ『サンダー』シリーズの爆裂AT機!「スーパー」突入で最大7000G継続【4号機爆裂AT時代~サンダーV2編~】 

 なかなかヒット機種が生まれない6号機。そんな状況下で、アクロスの『サンダーVライトニング』がじわじわと人気を集めている。

 リリースのアナウンスが流れた時から、サンダーVマニアたちはざわついていた。これらマニアが稼働率を高めることは想定内だったが…。

「革新と伝統」をコンセプトとしたシリーズ最新作はライトユーザーも楽しめるようにリール配列を改良しつつ、新システム「RIZIN ZONE」を採用。それでいて打ち込むほどに味わいも深まる出目演出を実現しているのだから、アクロスの本気をまざまざと見せ付けられた格好だ。

 初代『サンダーV』が発売されたのは4号機時代の1997年。演出といえばリーチ目がメインであった時代に、音と光を駆使したチャンス予告を搭載。文字通り、リールの後ろが光る「バックライトフラッシュ」はセンセーションを巻き起こし、瞬く間にヒット機種への仲間入りを果たした。

 以降、このサンダーシリーズは硬派なボーナスタイプとしてファンの間で定着しているが、1機種だけATを搭載したマシンがある。4号機が隆盛を極めた2001年、メーシーより誕生した『サンダーV2』である。

 初代のゲーム性を発展的に継承した本機は、「イナズマラッシュ」と銘打たれたAT機能が出玉増加の主軸。イナズマラッシュへは上部ランプ点滅の「チャンスゾーン」中に払い出し枚数が22枚を超えたら突入する仕組みで、主にベル3回入賞でこの条件を満たすことができる。

 チャンスゾーンへはビッグ消化後やスイカ成立後などに突入し、前者は8or9G、後者は1or4G継続。「ボーナス非成立時のゲームでの抽選」もあり、10G継続するこちらの当選率は高設定ほど顕著に優遇されている。

 イナズマラッシュは基本50G継続で、この間に指定された小役を成立させられれば次のステップへ進行。50G、5G、5Gと3回連続でミッションをクリアできれば「スーパーイナズマラッシュ」へ突入し、最低でも500G、最大で7000Gもの間、押し順ナビに従うだけで出玉を激増させることができる。

 イナズマラッシュ1回(50G)での獲得枚数は約150枚。「スーパーイナズマラッシュ」で7000Gが選ばれた場合は単純計算で28000枚が約束されるわけで、これにボーナスの出玉が加わることを考えれば一撃性の高さは歴代AT機の中でも屈指といえるであろう。

 もちろん、イナズマラッシュには連続性があり、その連チャン振り分けは「演出モード」によって変化する点も大きな特徴のひとつ。

 初代のゲーム性を再現した「Vモード」は単発がない代わりに2or3連が選ばれやすい、発展型演出を楽しめる「V2モード」は奇数連が主体、完全告知の「30モード」は一発逆転型といった傾向があり、好みや状況に応じてプレイヤーは演出モードを選択したものである。

 天井はビッグ間1200G、2400G、3600Gハマリで、それぞれ到達後のチャンスゾーン突入でイナズマラッシュ発動。1200G天井は2連以上、2400G天井は10連以上、3600G連上は100連が約束される。 

【SGオーシャンカップ】優勝戦予想! 瓜生正義が準優12R快勝で連覇へ王手……準優10Rは今年の”ベストバウト”当確!

 ボートピア鳴門で開催されている「SGオーシャンカップ」は25日、注目の準優勝戦3レースが行われた。

 最終12Rで瓜生正義(44・福岡)が貫禄のイン逃げを決め、”ポールポジション”の優勝戦1号艇を奪取。オーシャンカップ連覇が現実味を帯びてきた。10Rは茅原悠紀(33・岡山)、11Rは山口剛(37・広島)が勝ち、準優は1号艇のイン逃げ3連発だった。

 全く隙のないレースとは、このことだろう。準優12R。瓜生はインからコンマ08のトップスタートを決めると、他を寄せ付けない完ぺきなターンでイン逃げを決めた。超スローの映像で見ると、全く乗艇姿勢にブレがないから驚きだ。これぞ天才・瓜生の真骨頂と言える。

 1マークでは、3コースから握ってくる磯部を軽く張って、福岡の後輩・枝尾が2コースから差すスペースを残す王者のターン。彦坂郁雄や野中和夫が活躍した”競艇”時代ならいざしらず、昨今のボートレースでは死語になっている”鉄板”という言葉を使いたくなるほど、負ける要素が全くない圧勝劇だった。

 準優3個レースで最大の修羅場は10R。エンジン劣勢のイン茅原が、2、4コースから伸びた峰、西山のダブル差しを封じる絶妙なターンでイン逃げ快勝。そこから、往年の”競艇”を彷彿(ほうふつ)とさせる壮絶な死闘が待っていた。

 1周バックで桐生が内から峰に艇を合わせると、峰は強力に締め込んで抵抗。名手・桐生が巧ターンで2マークを先取りしたが、2周2マークでターンマークを外す、まさかの甘いターン。わずかなミスを見逃さないのがSGレースで、西山が桐生の内を差し、さらに西山の懐を峰がターンマークぎりぎりに差し込むと、西山と桐生の艇が浮く壮絶バトルに。3周1マークで今度は西山が突進気味に峰の懐を突くが、峰が強ターンで西山を引き波に沈めて2着を確保する。桐生もその隙を見逃さず3着に浮上だ。

 意地とプライドが激突する、一進一退の白熱バトルに、”競艇”と呼ばれた昭和~平成初期のボートレースを思い出したファンも少なくないことだろう。イン茅原の劣勢パワーを補う1マークの芸術的なターン。艇界屈指のスピードを誇る峰と桐生の技の応酬。これに根性と気迫で戦うファイター・西山が加わり、今年の”ベストバウト”と呼ぶにふさわしい、壮絶なレースが生まれた。”水上の格闘技”と言われるボートレースの魅力が詰め込まれた、語り継がれる一戦になったに違いない。


 それでは優勝戦の予想に入ろう。

優勝戦
1号艇 瓜生正義(44・福岡)
2号艇 山口 剛(37・広島)
3号艇 茅原悠紀(33・岡山)
4号艇 峰 竜太(35・佐賀)
5号艇 枝尾 賢(38・福岡)
6号艇 高野哲史(31・兵庫)

 予想から綿密に戦略をたて、青写真通りに”ポールポジション”を獲得した瓜生で本命は動かない。準優を見ても分かる通り、的確なスタートに精密なターンで隙がない。過去SGを10勝しているが、1号艇では負けなしの6勝。ここ5回のSG優勝は、すべて1号艇でのイン逃げだ。「しっかりスタート行って、しっかり回りたい」。王者は冷静に11度目のSG制覇を見据えている。

 怖いのは4号艇に座る峰。準優10Rでイン茅原に対し、半艇身以上も伸びた足色なら、優勝戦カド受けの茅原を振り切り、カドからまくり一撃態勢に持ち込むことも可能。逆転の芽もある。

 茅原がカドの峰をスリットで抑え切れば、先攻めから2着十分。カド伸びる峰マークの枝尾を抑えれば万全だろう。

 舟券は1=4-35本線に、1-3-45が抑え。

パチスロ新台「ハイスピードAT」を「ハイエナ」!「絶大な威力」を実感!!

 大松の「パチスロ」ハイエナ実戦。今回は期待の新台『BLACK LAGOON4』について書いていきたい。

 本機は純増9枚のハイスピードAT「ラグーンラッシュ」を搭載したマシン。直撃時は40Gスタートとなるが、CZ「デスペラードバトル」を突破した場合は特化ゾーン「ヘブンズラッシュ」から開始となる。

 この特化ゾーンは非常に強力で、100G以上の上乗せが射程範囲。純増枚数を考慮すれば一撃で完走を狙えることも有り得る。

 AT中はレア役に加えて、特定のベル入賞でゲージが蓄積。ゲージがMAXとなればモードアップや上乗せ、特化ゾーンなどの抽選が行われる。

 ATのメイン契機は強レア役での直撃とCZの成功だ。直撃には設定差が設けられているようだが、低設定においても直撃の割合は低くない。

 CZ「デスペラードバトル」は敵とのバトルに勝利すればATに当選。敵によって撃破期待度が異なり、「ブリッツ」が選択されれば大チャンスだ。

 CZへの主な契機はレア役とポイント抽選。ポイントは液晶左の「BLACK LAGOON」の文字が全て点灯すればMAXとなる。

 強レア役ならばCZやATの直撃に期待ができる上、弱レア役でもポイント高確率「レヴィチャージ」の抽選が行われるため、本機はレア役が非常に重要な役割を持つ。

 本機の狙い目は「天井狙い」である。「約670G+ 前兆」が天井といわれており、300Gほどから狙っていけるだろう。

 加えて注目したい点は「チャンス弾丸」であり、これは前兆や演出失敗時に獲得できる可能性があるアイテムだ。


 このアイテムがあるほどCZ突破期待度が上昇するため、可能であれば1つ以上獲得した状態の台が望ましい。

 今回座った台は266G、チャンス弾丸1つを保有している台。打っていくと580Gに強チェリーから「デスペラードバトル」に当選した。

 相手は中期待度の「銀次」だったが、チャンス弾丸により「双子」に昇格。撃破率60%だったが無事に突破に成功した。

 初期の特化ゾーンでは75Gからスタート。途中、再度ヘブンズラッシュに突入し50Gの上乗せに成功する。

 もう一つ波があれば完走も視野に入る展開であったが、結果は1495枚と、本機ATの威力は非常に高いことを実感できた実戦となった。

 狙い目台を発見した際は是非挑戦してみてはいかがだろうか。

(文=大松)

JRA今年は異例の2場開催がカギ! 「キャリーオーバー」WIN5攻略の糸口を過去の傾向から探る! 難関レース「突破」に光が差す!?

 先週末、函館競馬場で行われた函館記念(G3)は15番人気アドマイヤジャスタが優勝した。その結果、3連単の配当は300万円超えの大波乱。そして、阪神競馬場で行われた中京記念(G3)では18番人気メイケイダイハードが勝利し、こちらも3連単で300万円超えの高配当が飛び出した。

 この時点で、WIN5の残り的中票数はわずか1票。最後のメインレースである福島テレビオープン(OP)は2番人気トゥラヴェスーラが制したものの、WIN5は的中者なしでキャリーオーバーとなった。そのため、今週の日曜は多くの競馬ファンがぎらついた眼差しで、WIN5対象レースを、固唾を飲んで見届けることになるのではないだろうか。

 WIN5の予想をする際、昨年のアイビスサマーダッシュ(G3)週の傾向をもとに検討するのも一つの手である。だが、今年は新潟、札幌の2場開催のため、昨年とはWIN5対象レースが異なる。そこで、今年のWIN5対象レースごとに過去の傾向をもとに、ハナビ杉崎が完全的中に挑戦する。(競走条件が変わっているレースもあるが、あくまでもレース名での傾向を参考にする)

 1レース目:新潟9R糸魚川特別(2勝クラス)芝1800m

 過去10年で1番人気が2勝、2番人気が5勝、それ以外もすべて5番人気以内の馬が勝利している。堅い決着傾向のあるレースだが、昨年まで芝2000mで行われていたのが芝1800mに変更されている点は注意が必要だ。しかし、過去10年の1番人気馬の新潟芝コースでの勝率を確認すると、芝2000mが28.6%に対して、芝1800mは39.3%。後者のほうが本命をより信頼できるレースとなっている。

「アップライトスピン」同レースを過去10年で3勝している福永祐一騎手が手綱を取る。前走は東京芝1800mで2着に入っており、これまでの2勝はすべて同条件でのもの。左回りの芝1800mはベスト条件だ。

「カントル」半兄にワグネリアンを持つ良血馬。なかなか2勝クラスを抜け出せていないが、素質の高さはメンバー随一だろう。

「レイパパレ」こちらも母シェルズレイの良血馬である。「無敗馬は負けるまで買え」と言われるように、2戦2勝の無敗馬を買わないわけにはいかない。


 2レース目:札幌10R知床特別(2勝クラス)芝1200m

 函館開催を含む過去10年で1、3、4番人気が2勝ずつしている。だが、最低人気での勝利は8番人気、また6番人気が3勝と中穴の活躍が目立つレースだ。ちなみに、昨年までは芝2000mで行われていたが、今年は1200mと大きく条件が異なる。レース名の力を信じて、中穴狙いで候補を検討したい。

「ニシノドレッシー」前走は函館芝1200m(1勝クラス)を2馬身半差で勝利。昨年、札幌コースで9番人気ながら4着に好走していることから、洋芝適性が感じられる。今回も先行して、開幕週の馬場を味方につけることに期待したい。

「コスモアンジュ」こちらも昇級初戦。2走前の函館での敗戦は、休み明けが響いてか逃げられなかったことだろう。今回は逃げ残りに注意が必要だ。

「フォレブルート」上位人気が予想される1頭。函館、札幌での成績は【1,2,0,0】と圧倒的な洋芝適性である。近走不甲斐ない走りが続いているが、得意の舞台で息を吹き返すか。


 3レース目:新潟10R苗場特別(2勝クラス)ダート1800m

 過去10年で1~3番人気が5勝している一方で、12番人気が2勝しているレースだ。ただ、こちらも昨年までダート1200mで行われていたレース条件が1800mに変更となっている。思わぬ穴馬も抑えつつ、人気どころで勝負したい。

「ヴィアメント」前走、初のダートで3馬身半差の圧勝。まずまずのスタートから無理せずに位置取りを上げて、向こう正面で先頭に。そのまま後続を抑え込んだ内容は2勝クラスでも通用するはずだ。

「ツブラナヒトミ」2走前に同条件のレースでクビ差の2着。今回、松山弘平騎手に乗り替わりとなることが吉と出ることに期待したい。

「コンボルブルス」地方からの再転入初戦で1勝クラスを勝利したが、2勝クラスでは凡走続き。久々の左回りで復活があるかもしれない。抑えておきたい穴馬だ。


 4レース目:札幌11R報知杯大雪ハンデキャップ(3勝クラス)ダート1700m

 今回のWIN5のカギとなりそうなハンデ戦。過去10年で1番人気はわずか2勝で、5番人気以下が5勝を挙げている荒れるレースだ。勝ち馬の最低人気は12番人気で、近2年は7番人気、6番人気が勝利している。ハンデ戦だが、軽ハンデ馬の勝利は14年の51キロぐらい。それ以外はすべて54キロ以上、さらに55キロのハンデ馬が現在4連勝中。軽ハンデ馬を狙うのは得策でないかもしれない。

「ライジングドラゴン」近走、二桁着順が続いているが、昨年は札幌コースで2勝している。そして55キロという斤量もプラス材料だ。

「ソリストサンダー」こちらも斤量55キロ。連闘で昇級初戦に挑むわけだが、前走みせた好位抜けしの強い勝ち方は圧巻だった。同じ昇級初戦のダンツキャッスルが56キロを背負うことを考えれば、斤量にも恵まれているはずだ。函館リーディングに輝いた横山武史騎手とのコンビ2戦目も心強い。

「グトルフォス」1400mでなかなか勝つことが出来なかったが、久々の1600m戦で前走勝利を飾った。不良馬場での勝利だったことは気になるが、距離延長で能力が開花した可能性を買いたい。

「タイキダイヤモンド」前走10着に大敗しているのは、東京ダート2100mという条件が合わなかったため。これまでの勝ち星は中山、福島と小回りコースを得意としていることから、札幌コースで改めて見直したい。


 5レース目:新潟11Rアイビスサマーダッシュ(G3)芝1000m

 予想の詳細については別記事にて公開中。買い目は「ライオンボス」「ダイメイプリンセス」「ナランフレグ」の3頭だ。

 最終的な買い目は以下の通り。

新潟9R:「アップライトスピン」「カントル」「レイパパレ」 3頭
札幌10R:「ニシノドレッシー」「コスモアンジュ」「フォレブルート」 3頭
新潟10R:「ヴィアメント」「ツブラナヒトミ」「コンボルブルス」 3頭
札幌11R:「ライジングドラゴン」「ソリストサンダー」「グトルフォス」「タイキダイヤモンド」 4頭
新潟11R:「ライオンボス」「ダイメイプリンセス」「ナランフレグ」 3頭
計324点

 是非ともキャリーオーバーの恩恵を受けたいところだ。

(文=ハナビ杉崎)

JRAライオンボスに並ぶ「鉄板級」軸馬発見!? アイビスサマーダッシュ(G3)は「堅い軸」と「激走穴馬」で高配当も!? 激アツ情報をもとに「3点」勝負!

 26日、新潟競馬場でアイビスサマーダッシュ(G3)が開催される。新潟名物「千直」で行われる唯一の重賞は「外枠有利」という定説があるように、過去10年で8枠が4勝と圧倒的な成績を残している。だが、2枠は勝利こそないものの複勝率では8枠を上回っていることからも、内枠の軽視は禁物だ。

 また、過去10年で1番人気が7勝しており、3連単の配当が10万円を超えたのは1度だけと、比較的堅い決着傾向にある。軸馬をしっかり見定めることが馬券攻略に繋がるだろう。今回、「強力現場ネタ」からアイビスサマーダッシュをハナビ杉崎が攻略する。


 まず、「◎」はライオンボス(牡5歳、美浦・和田正一厩舎)だ。

 直線競馬のスペシャリストである前年王者が2連覇を目論む。千直で【4,1,0,0】と抜群の成績を残していることからも、堅い軸として見逃すことはできないだろう。前走の韋駄天S(OP)はトップハンデの57.5キロを背負いながらも勝利しており、57キロとなる今回は“確勝級”と呼べるかもしれない。

「前走は斤量差がある中、2番手からのレースでねじ伏せるような強い勝ち方でした。陣営は『不安らしい不安はない。ここまでの調整も至って順調』と自信に溢れています。自分の走りさえできれば、勝ち負け間違いなしと言えそうですね」(競馬記者)

 昨年は6枠11番から勝利。今年はそれより外枠となる7枠13番を引き当てた。前走でハナを切らなくても問題ないことを証明した千直の“ボス”は死角なしといったところだろうか。

 次に、「〇」はダイメイプリンセス(牝7歳、栗東・森田直行厩舎)だ。

 こちらは一昨年のチャンピオン。前走の韋駄天Sではライオンボスとタイム差0秒1の3着に好走し、改めて千直適性を示した。今回、同レース2着のジョーカナチャンとの斤量差が1キロ埋まるため、逆転は十分にあるはずだ。

「夏馬らしく体調は上向き。毛ヅヤや馬体の張りも良くなっているし、いい感じでレースを迎えられそうです」(厩舎関係者)

「前走は本調子でないにもかかわらず好走しました。年齢的な衰えは感じられませんし、舞台も合っています。秋山真一郎騎手は『明らかに前走から1段階良くなっている』と状態面に太鼓判を押しています」(競馬記者)

 6着に敗れた昨年は1枠2番からの発走に加えて、スタートで遅れたことが敗因。今年は4枠8番と真ん中の枠を引き当てたため、昨年より期待が持てそうだ。ライオンボスに次ぐ、堅い軸として対抗に指名する。

「▲」はナランフラグ(牡4歳、美浦・宗像義忠厩舎)だ。

 末脚が魅力の1頭。オープン入り後、初めての千直競馬となった前走の韋駄天Sは5着に敗れたが、上がり3ハロンは最速の31秒6を記録した。打倒ライオンボスを目論むライバル達によって、前が激流になった場合に浮上する怖い存在だ。

「千直は1勝クラスで勝利していますし、前走でも終いはいつも通りしっかり伸びています。2走連続での直線競馬となるため、馬もコース慣れして前走以上に期待できそうですね。もう少しテンについて行ければ、勝ち負けしてもおかしくないと思いますよ」(競馬記者)

 3枠5番と内目の枠を引き当てたが、末脚自慢のナランフラグにとっては大きな問題ではないはずだ。むしろ、外枠で先行馬に前を塞がれるよりも、いい枠と言えるだろう。

「△」はジョーカナチャン(牝5歳、栗東・松下武士厩舎)だ。

 前走の韋駄天Sではハナを奪い、ライオンボスとアタマ差の2着にまで迫った快速馬。千直では【2,1,0,1】と高い適性を示しており、外すわけにはいかない1頭だ。

「スタート、加速力どちらも抜群です。ピッチ走法で一気にトップギアに入るので、直線コースの適性がありますね。状態面に関しても、いい気合い乗りで、ボリュームのある馬体には好感が持てます。あとは、『天気と枠順』次第。外枠とパンパンの良馬場という条件が揃えば押し切りも可能だと思いますよ」(厩舎関係者)

 陣営の願いむなしく、5枠9番と真ん中からの発走となる。前走は7枠14番からの2着、さらにライオンボスとの斤量差が1.5キロ埋まることも割引材料となりそうだ。また、天気も怪しく、パンパンの良馬場とはいかない可能性があることもマイナスだろう。

「☆」はカッパツハッチ(牝5歳、美浦・矢野英一)だ。

 昨年の2着馬だが、近走は同条件でも掲示板にすら入れない不振。さらに2枠4番と内枠で買いづらい存在だが、波乱の使者として狙いたい。

「爪の状態に関して言えば、昨年よりいいくらいです。しかし、前走の敗因がわからないのが不安です。昨秋の千直(ルミエールオータムダッシュ(L))の時はモタれて競馬にならなかったですし、精神面に問題があるのかもしれません。中間からチークピーシーズを着けたら集中できていたので、これでメンタル面もケアできればと思っています。まともに走れば差のない競馬もできるはずなので……」(厩舎関係者)

 陣営が施す馬具の工夫が実を結ぶだろうか。一変した走りに警戒が必要かもしれない。

 CBC賞(G3)の勝ち馬で、藤田菜七子騎手とのコンビで注目を集めるラブカンプーは、斤量5キロ増と1枠2番が割引材料。また、初の芝レースとなった前走を5馬身差で勝利したアユツリオヤジは展開と条件が向いての勝利と見て、2頭とも「消し」とする。

 買い目は以下の通り。

 3連複 2頭軸流し 3点

 軸[8,13]  相手[4,5,9]

 圧倒的な人気を集めることが予想されるライオンボスが勝った場合、3連単のうま味が少ないと見て、3連複の小点数勝負で挑む。

(文=ハナビ杉崎)

世界スーツ業界の総本山、ブルックス・ブラザーズ倒産…旗艦店跡地にユニクロ出店の意味

ブルックス・ブラザーズの店舗(「Wikipedia」より)

 米国でもっとも歴史がありアメリカントラッドの総本山と呼ばれてきたブルックス・ブラザーズが7月8日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。米国歴代大統領45人のなか、大統領としてはオバマ氏が39番目の顧客であった。1865年にリンカーン大統領がフォード劇場で暗殺された際の上着や、ポップアーティストのアンディ・ウォーホルの左右色違いのソックスなどもブルックス・ブラザーズだった。

 米国富裕層の成功の象徴であるファッション企業でさえ破綻してしまった。デラウェア破産裁判所に提出された資料によれば、同社の資産および負債額は5億~10億ドル(約535~1070億円)。1818年以来、常に革新的ながら米国独特のスタイルを保ち続けてきた企業の輝かしい歴史を振り返ってみたい。

 コロナ禍が引き金になったとはいえ、ウォール街の紳士たちを上顧客としてきたブルックス・ブラザーズのスーツスタイルは、時代の中で消えてゆくのであろうか。ブルックス・ブラザーズのニューヨーク5番街の旗艦店跡地にオープンしたのは、ユニクロだったが、象徴的な出来事といえるだろう。

1.1818年創業の歴史

 ブルックス・ブラザーズの200年を超える社史は、非常に素晴らしいものである。1861年に開戦した南北戦争、1920年代末からの世界大恐慌、第二次世界大戦時の物資不足など大きな社会的危機を乗り越えてきた。明治政府が樹立した1868年よりさかのぼること50年、1818年4月7日、45歳のヘンリー・サンズ・ブルックスがニューヨークで製造と販売を兼業する会社として創業。すでに製販一体体制で完璧な最高品質を絶対の理念としていた。

 1849年にアメリカで最初にスーツの既製服を販売し、一攫千金を狙う多くの開拓者が購入して西部に向かった。急成長する事業を息子たちに引き継ぎ、1850年に社名をブルックス・ブラザーズに改め、ロゴにファインウールのシンボルであるゴールデンフリースを採用し今日に至る。

 ちなみにニューヨーク・タイムズの創刊は1851年、ニューヨークに初の地下鉄が開通したのは1904年、瓶詰のコカ・コーラが販売されたのが1894年であり、いかにブルックス・ブラザーズの歴史が古いかがわかる。

 1896年、ブルックス・ブラザーズの定番ポロカラー(ボタンダウン)シャツをブルックスの孫、ジョン・E・ブルックスが発表し、以降、アメリカントラッドの象徴となる。1900年代に入り、英国発祥のハリスツィード、サマーシーズンのレジャーウエアとしてのマドラス、シェトランドセーター、No.1サックスーツと名付けられた段返り3つボタン、ナチュラルショルダー、ダーツのないフロントのスーツが20世紀初頭から60年間、アメリカ東部のエリートビジネスマンの制服となり、アメリカントラッドとなった。

 そのスタイルが1960年代、石津謙介氏によりアイビー・スタイルとして日本に紹介され、VANの一大ブームが起こった。英国軍服であったレジメンタルタイの縞模様を反対にして、普段に着用できるレップタイと名付けて商品化。ブルックス・ブラザーズは1909年にはニューヨークから車で3時間半、ボストンから車で1時間半のニューポートに季節限定店をオープンしている。ゴールデンエイジと呼ばれた時代の富豪たちが豪華な別荘を競って建てた夏の別荘地である。現在でも有名な豪邸が現存し、立派な観光資源となっている。

 ブルックス・ブラザーズは1915年にグランド・セントラル・ステーションの完成後に現在も本店があるマディソン街346番地に移転。1917年から始まった第一次世界大戦で海外派遣される軍隊の軍服の準備に関わる。1920年代に『グレート・ギャツビー』の著者F・スコット・フィッツジェラルドが愛用し、ブルックス・ブラザーズは東部のエスタブリッシュメント(支配層)に浸透したブランドとして地位を確立してゆく。1935年にはシアサッカーのスーツをフロリダ州の高級別荘地のパームビーチから名をとり、パームビーチ・スーツとして紹介した。

2.戦後の発展と急激なビジネススタイルの変化

 第二次世界大戦のヤルタ会談でフランクリン・ルーズベルト米大統領が羽織る大型ケープは、ブルックス・ブラザーズ製であった。戦後すぐにブルックリンに注文服工場、隣のニュージャージー州のパターソンにメンズシャツ工場を新設し、1950~60年代にはアメリカの繁栄と共に業容は拡大していく。そして1979年、海外1号店として日本初の青山本店がオープンする。

 1980年にはノースキャロライナ州ガーランドにシャツ工場を新設。1998年にはノンアイロンシャツを発表。そして2001年9月11日の同時多発テロ事件後にイタリアの世界最大の眼鏡製造卸企業グループ、ルクソティカ・グループの御曹司クラウディオ・デル・ヴェッキオに買い取られた。彼は従来の経営手法を刷新し、2006年にはアメリカントラッドのシルエットに加え「リージェントフィット」や「ミラノフィット」を加えた。ほかにも、2007年に新進デザイナーのトム・ブラウンを迎え、ファッショナブルなトラディショナルライン「ブラック フリース バイ ブルックス・ブラザーズ」をスタートさせている。

 生産面でも2008年に70年の歴史ある製造会社を買収。2009年には最新設備の工場をマサチューセッツ州ハーバーヒルに建設。その後も「レッドフリース」のライン発表や弱いレディス部門のクリエイティブ・ディレクターにザック・ボーゼンを就任させて強化を図った。2018年には創業200周年を迎え、世界数カ所でランウエイショーとアーカイブ展を公開し、日本でも大きな話題を呼んだ。業界でもアメリカントラッドをベースに変容してゆくブルックス・ブラザーズには期待が寄せられていた。

 今回の破産申請には海外店舗は含まれていないが、海外法人であり昨年40周年を迎えたブルックス・ブラザーズ・ジャパンは、米国本社からの出資は60%で、残り40%はダイドーリミッテドが所有する。日本人のアメリカントラッド好きもあり、非常に健全な財務内容となっている。8月末にビルの再開発でクローズする青山本店に代わって、9月4日には表参道店を予定通りオープンさせる。海外約250店舗のうち約80店舗が日本で、世界で2番目の売上を誇る。すでに重衣料はダイドー側にて生産されており、事業継続には安心感はある。事件以前から国内でも10店舗の追加閉店、約60名の退職が発表された。原点に戻りアウトレット売上比率も含め姿勢を正す良い機会にしていただきたい。

 米国のブルックス・ブラザーズの買い手候補もすでに数グループあり、約250店を適正な規模に改めれば、再建の可能性は高い。このブランドがアメリカの象徴として蘇ることを熱望する。

まとめ“Crisis brings opportunity.”

 夢想と呼べる私見であるが、ブルックス・ブラザーズの敗因のひとつに、メンズの売上が80%を占めていたことが挙げられる。需要が縮小するスーツがその中心であったことも、売上減の最大の要因である。

 であるならば、重衣料の市場に弱くポートフォリオとして高級市場が欠けている超優良大企業と組み、世界最高の歴史と現代の素材開発力と最新マーケティング力をひとつにすれば世界で充分戦える。

 ニューヨークの旗艦店跡地に出店した企業との日米合作はどうだろうか。過去に検討されたバーニーズやグループ内の現海外ブランドよりはるかに価値とポテンシャルは大きく、新しいビジネススタイルの開発も可能であると著者は考える。

 そんな夢を見た真夏の夜であった。

(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)

フォロワー数を買うのは当然、リア充演出で多額借金…インフルエンサーの闇

 最近、小中学生女子のなかに「インフルエンサーになりたい」という子が出てきた。「有名で人気者になれるし、洋服とかただでもらえるんだって。写真を投稿するだけでいいなんて楽だよね」と言う。

 インフルエンサーとは、多くの人に対して影響力を与える人のことを指し、最近ではSNS上での発信を通じて情報発信することで購買を促進する「インフルエンサーマーケティング」も注目されている。すっかり憧れの存在となったインフルエンサーだが、実はさまざまな問題を抱えている。インフルエンサーが抱える問題について見ていきたい。

フォロワーを買うのは当たり前、影響力はお金に

「友だちがフォロワーを買っていたと思う」とある20代女性は言う。その友だちは読者モデルなどを務めたこともある女性で、今も企業にコスメなどをもらってInstagramに写真を投稿している。

「フォロワーは数千名いるけど、投稿への『いいね』が少ないし、フォロワーが外国人とか投稿なしの人も多くて」と、疑った理由を教えてくれた。「それから、フォロワーも急に増えた気がする」。その友だちが本当にフォロワーを買ったかどうかはわからないが、SNSのフォロワーは安価に購入できる。

 フォロワー販売サービスのほか、オークションサイト、Twitterでもフォロワーや「いいね」は当たり前のように売っている。販売するものは、Instagram、Twitter、TikTokなどのフォロワーや「いいね」、YouTubeの再生数など、さまざまなものが対象だ。フォロワー一人あたり5円程度の値段で売れ、オークションサイトを見るとすでに売れているものも多数ある状態だ。

 インフルエンサーの場合、試供品をもらったりイベントなどに招待される以外に、広告主である企業から謝礼を受け取ることも多い。受け取る謝礼は案件によっても変わるが、数万円から数十万円になることもある。

 影響力の指標の一つとされるのがフォロワー数だが、たとえばフォロワー数が1万人の大台に乗せると謝礼の額や仕事内容が変わるため、有料でもフォロワーを増やすことには意味があるのだ。

 アカウントは日本人のものだと高くなり、安価なものでは外国人ばかりのことが多い。実在アカウントが乗っ取られてフォローさせられているケース、架空のアカウントでフォローしているケースなどがある。

 しかし当然、Instagramなどでは規約でフォロワーの販売、購入は禁止されている。第三機関のサービスを使ってフォロワー獲得を図るとアカウントに規制がかかる可能性があり、買うべきではない。

対策として世界中で「いいね」数非表示に

 問題はそれだけではない。英国の王立公衆衛生協会の調査では、5つの主要なソーシャル・ネットワーキングサービスのなかで、Instagramが若者の心にもっとも有害なSNSとされた。自分を他人と比べて落ち込んだり、「いいね」数を競って危険行為に手を染めるユーザーがあとを絶たないため、批判を浴びたのだ。

 その結果、自分以外の「いいね」数は非表示とするテストが開始され、好評だったためテスト対象の国は拡大し続けている。フォロワー数や「いいね」数で競っていたインフルエンサーとしては非常にやりづらい状態となってしまった。

 なお、これまで「いいね」数非表示とした国では、フォロワー数と関係なく、インフルエンサーの「いいね」数が一律に減っているという。すべての国で、フォロワー数が5000人〜2万人のインフルエンサーは「いいね」が3〜15%も減少したのだ。ただし日本だけは結果が異なっている。フォロワー数が1000〜5000人と、10万〜100万のインフルエンサーは、このテスト以降「いいね」が約6%増えたのだ。逆にブラジルでは、インフルエンサーの「いいね」数が一番減少した。

 テスト対象は拡大しており、とうとう本国である米国でも「いいね」数非表示テストが始まっている。Instagramは、自分のいいと思うものに「いいね」をさせようとする原点回帰を狙っているのだ。今後運営会社は、インフルエンサーには新しい収益源を考えているという。

借金漬けになるインフルエンサーも

 インフルエンサーの問題は、その他にもある。インフルエンサーといえばキラキラしたリア充写真で知られるが、身の丈を超えて無理してまでそういう生活を装う人も少なくない。たとえばリゼッタ・カルヴェイロさんという女性は、インフルエンサーに憧れ、インスタ映えする服やグッズ、旅行などにお金をかける生活を3年間続けた結果、110万円の借金を背負うことになったという。

 日本でも、おしゃれなInstagram投稿で人気となったGENKINGさんが、月収20万円程度だったにもかかわらず、ローンを重ねて借金が1000万円に膨れ上がっていたことをのちに告白している。ブランド品を買っては撮影、投稿し、質屋に売ることを繰り返す生活をしていたというのだ。

 2018年には、吉本興業所属の人気漫才コンビ「ミキ」のツイートが、ステルスマーケティング、通称「ステマ」ではないかという疑惑が起きたこともある。「大好きな京都の町並み!!京都を愛する人なら誰でも,京都市を応援できるんやって!詳しくはここから!」とハッシュタグ「#京都市盛り上げ隊」「#京都国際映画祭2018」「#京都市ふるさと納税」を付けて、京都市のふるさと納税のページのURLとともにツイートしていた。

 このツイートは京都市から依頼されたもので、Twitterなどで20万人のフォロワーを持つタレントが2回ツイートする契約で、一回50万円、計100万円が支払われていた。明らかなPR投稿だったが、「PR」などの広告ということを示す表記は含まれていなかったことが問題視されたのだ。

 Instagramのキラキラしたリア充写真には多くの人が憧れを持つが、裏ではお金が支払われていたり、インフルエンサー自身が無理していたりすることも少なくない。誰にでも見られる媒体が失われつつあるなか、SNSでの発信力が宣伝として使われることはある意味当然といえるだろう。しかし、インフルエンサービジネスはまだまだ過渡期であり、問題が山積みだ。インフルエンサーの情報を受け取る側の我々のリテラシーが求められているのを忘れてはならないだろう。

(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)