JRA根岸S(G3)初ダート・ステルヴィオに「不安情報」が続々!? 「疾病」「仕上がり」「血統」……過度な期待は禁物「関係者」が語る現状

 31日、東京競馬場で行われる根岸S(G3)に、ステルヴィオ(牡6歳、美浦・木村哲也厩舎)が出走を予定している。

 今回が初ダートとなるステルヴィオだが、3歳時にはマイルCS(G1)を制覇するなど能力の高さは折り紙付き。芝戦線での活躍からは、今回も人気の一角を担う存在になりそうだ。

 昨年は芝短距離へと路線をシフトしたが、京王杯スプリングC(G2)、スワンS(G2)でともに2着と健闘。年が明け6歳となった同馬だが、まだまだ年齢的な衰えはないといえるだろう。

 騎乗するのは横山武史騎手で、昨年ブレイクした若手の注目株。今年も全国リーディング7位タイにつけており、既に6勝を挙げる好調ぶりだ。

 やはり、不安といえば「初ダート」ということになるだろうが、過去には芝からのダート転向で結果を出した馬も多数。中でもステルヴィオと同じくマイルG1の勝ち馬で、思い出されるのがモズアスコットだ。

 4歳で安田記念(G1)を制覇したモズアスコットが、6歳となり挑んだ初のダート戦が、今回と同じ根岸Sだった。これを制して勢いそのままにフェブラリーS(G1)に挑戦。見事、優勝を飾りダート2戦2勝で、ダート界の頂点に立っている。

 ステルヴィオにしても、それほど不安はないように思えるが、ある関係者は「期待よりも、不安の方が先立つ」という。

「捌きの硬い走法ですが、血統的には適性が特別あるとは思えないんですよね。それに慢性的な喉鳴りがありますから、走る事に対してネガティブになっている気もします。急遽このレースを使うことになったので入厩から10日での出走となりますし、坂路主体に変えるなど工夫はしているのですが……」(関係者)

 父ロードカナロア、母ラルケットともに現役時代は芝レースのみに出走。ダート向きかと問われれば、疑問符がつく血統ではある。それに加え、「疾病(喉鳴り)」「急仕上げ」……関係者の話からは、確かに不安が拭い切れない。

「モズアスコットはC.ルメール騎手でフェブラリーSを制していますが、ラスト3戦は横山武騎手が騎乗し勝利することができませんでした。横山武騎手は昨年の成績を見ても、芝の方が高い勝率を誇っています」(競馬記者)

 ダート無敗でフェブラリーSを制したモズアスコットだが、その後は勝利することなく引退。横山武騎手の昨年成績もダートレースでの成績が芝レースを下回っており、確かにプラスとはいえない状況だ。

■横山武騎手 昨年の芝・ダート別成績


56-31-39-277/403【13.9%、21.6%、31.3%】

ダート
38-25-29-233/325【11.7%、19.4%、28.3%】

 金曜日時点で、『netkeiba.com』の予想オッズでも4番人気と、多くの支持を集めそうなステルヴィオ。初ダートで未知の魅力を感じているファンも少なくはないだろうが、過度な期待は禁物といえそうだ。人気を裏切るようなら、おいしい馬券にありつけるかもしれない。

クラシックコンサート、観客が知らない舞台裏…優秀なステージマネージャーはココが違う!

 指揮者は一般会社員のように採用試験などはないので、大学卒業後、ひとまず「指揮者」という看板を上げたところで、すぐに指揮をできるわけではなく、最初のうちは多忙な先輩指揮者の代わりにアマチュア・オーケストラの練習をしたり、オペラの歌劇場で本番指揮者の補助をするアシスタント指揮者として舞台裏を走り回ることになります。

 僕が日本の音楽大学を卒業してから、オーストリア・ウィーンに留学するまでの間のことです。3~4名の集団のアシスタント指揮者にもボスのような先輩がいて、何もわからない音楽大学出たての僕も、そのボスに叱られたりしながら経験を積んでいました。あるとても寒い日、家にあった一番暖かいウールの真っ白なセーターを着こんで歌劇場に向かいました。別に派手なプリント柄があるわけでもなく、それに問題があるとはつゆほども知らなかった僕は、歌劇場に入ったとたんに、「よりにもよって、なんで白い服なんだよ」とボスに叱られました。

 オペラは日本語で「歌劇」と言うように、主役は舞台上で歌いながら劇をする歌手たちです。舞台の前面に深く掘られたようなオーケストラピットで演奏するオーケストラや指揮者が燕尾服や黒い礼服を着ているのも、できるだけ目立たないためで、照明を浴びながら、役柄に合わせた衣装を着ている歌手に観客が集中できるようにしているのです。たとえば、2人の若い男女が薄暗い夜に愛を歌っているシーンで、オーケストラメンバーが派手な衣装を着ていたとしたら、そちらのほうが目立ってしまって舞台が台無しになります。

 他方、観客から見えない舞台裏で仕事をしているアシスタント指揮者が、どんな色の服を着ても関係ないようにも思いますが、実は違う理由でダメなのです。舞台裏は、舞台上の照明に影響が出ないように、かなり薄暗くなっています。しかも、舞台転換をスムーズに行ったり、今から舞台に飛び出す歌手をサポートしたり、舞台スタッフはものすごく殺気だっています。

 そんななかで、僕は白いセーターを着て歩き回ろうとしていたわけですから、「目障りに思われて、舞台スタッフから怒鳴られるぞ。今からでもいいから、黒いシャツを買ってこい」と、ボスに怒られたのです。そう思って周りを見渡すと、歌手以外はスタッフも含めてみんな真っ黒い服を着ていました。舞台スタッフは舞台転換の真っ暗闇の中、目立たないためにも黒い服を着る必要があるのでした。今になって振り返ると、そのボスには本当にいろいろとお世話になりました。

知られざるコンサートホールの舞台裏

 ところで、最近のコンサートホールは歌劇場とは違い舞台裏がまるでホテルのロビーのように明るく、壁も落ち着いた色調の場所が多くなってきました。もし、目隠しをした状態で連れてこられ、ここで目隠しを外したら、扉ひとつ隔てたところにステージがあり、2000人の観客が待ち構えているなどとは想像もつかないでしょう。

 ホールによってはバーのようなスペースがあったりして、さすがに真面目な日本のオーケストラでは使いませんが、ヨーロッパでは出番が終わった奏者は軽く一杯飲めたりするのです。それどころか、フィンランド・ヘルシンキのフィンランディア・ホールでは、舞台裏がそのまま食事もできるカフェテリアになっています。本番後には、ステージから引き揚げてきた奏者がそのままビールを買って、みんなで乾杯しているのです。初めてヘルシンキ・フィルを指揮した時には、この光景を見て驚きました。

 そんな舞台裏ですが、指揮者は開演直前に何をしているかというと、実はまるで幼稚園児が引率の先生についていくような状態となっています。。指揮者の楽屋は、ステージに一番近い場所にあることがほとんどです。結構な年配も多い指揮者が、あまり歩かなくていいように気を遣ってもらっているのかもしれませんが、それよりもスタッフが指揮者をコントロールしやすいことがあると思います。

 開演前の指揮者は、スタッフに呼ばれるのを楽屋の中で待っています。そこにスタッフのノックが聞こえて、緊張のボルテージが上がるというのか、まな板の上の鯉になったというのか、「さあ、これからだ!」と気持ちを引き締めながら、舞台袖まで引率されます。

 とはいえ、そのままステージに向かうわけではありません。やはりスタッフのなかにもステージマネージャーというボスがいて、彼に身柄を引き渡されます。このステージマネージャーは、ステージ、一階客席、二階客席、ロビーが映っているモニターをにらみつけています。たとえば、開演する直前にもかかわらずロビーで小走りのお客様がいれば、そのお客様がいつ頃座席に着くのかまで想像しながら、客席内の観客の動きもしっかりと確認し、照明スタッフに「客電を落としてください」と指示をします。ちなみに、客電とは客席の照明ですが、最近では落とさないホールも増えてきました。

 舞台上の照明も明るくし、やっとコンサートマスターがステージに出ていくわけですが、それでも指揮者は動けません。オーケストラのチューニングのあと、ステージマネージャーは、観客席の雰囲気が落ち着いてきたのを見計らって、指揮者の顔色も見ながら、良いタイミングで重いステージドアを開けます。これは、「ステージに上がってもいいよ」との合図というより、「許可」になります。もし、それまでに無理やりステージに上がろうともがいても、しっかりと止められてしまいますから。

 意外とこのタイミングは簡単ではないようです。これが良いステージマネージャーの場合、指揮者が出たくなった瞬間を感じ取って、スッとドアを開けてくれるのが不思議です。そして、ステージに上がる寸前の目と目が合った時に、「良いコンサートを期待しているよ」との意思を、無言で感じさせてくれる存在でもあります。

 さて、無事に演奏が終わり、指揮者がお辞儀をして舞台裏に戻ってくると、まるで自動ドアのようにドアが開くわけですが、これは21世紀のテクノロジーではなく、実はものすごく原始的な方法です。それは、分厚いステージドアには、どこのホールでも小さな穴があけられており、舞台上で拍手が始まったらステージマネージャーはそこをのぞき込み、帰ってくる指揮者にドアを開けるタイミングを合わせるように計るのです。

 これも、早く開けすぎては観客の意識がドアに行ってしまいますし、遅すぎてドアが開くのを困った顔をして待っている指揮者も様になりません。観客から見たら、なんということもないようなドアの開け閉めですが、ステージマネージャーも若い時には、先輩のボスから怒鳴られながらタイミングを覚えたのでしょう。

(文=篠崎靖男/指揮者)

●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。ジャパン・アーツ所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

厚労省による人災、さらにコロナ感染拡大…頑なにPCR検査抑制、疫学調査の情報を非開示

 1月18日に召集された第204通常国会の目玉の一つが感染症法の改正だ。世間の関心は、入院拒否に対する罰金・罰則に集まっているが、もっと重要なことがある。それは、クラスター対策の見直しだ。本稿では、この問題を取り上げたい。

 厚労省がクラスター対策を新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策の中心に据えてきたのは周知の事実だ。コロナ対策本部の下に「クラスター対策班」を設置し、「データチーム」と「リスク管理チーム」を設けた(図1)。

 前者は国立感染症研究所、後者は東北大学が担当し、北海道大学や国際医療福祉大学などが協力した。押谷仁・東北大学教授をはじめとしたコロナ感染症対策分科会などのメンバーや西浦博・京都大学教授(元北海道大学教授)などは、「クラスター対策班」のメンバーとして活動し、その成果を発表してきた。日本のコロナ対策を実質的にリードしてきた組織といっていい。

「クラスター対策班」の主たる業務は、積極的疫学調査の分析だ。積極的疫学調査は、感染症法に規定された法定検査で、日本のコロナ対策は、この調査で得られた情報を元に議論されてきた。極めて重要な情報だ。感染症法の1~3類に規定された感染症が発生した場合、保健所は都道府県の関係部局と連携して、この調査を実施する。実施要綱などを作成するのは、国立感染症研究所だ。

 積極的疫学調査では、感染者を発見したら、保健所が濃厚接触者を探しだし、PCR検査を実施する。もし、感染していれば、さらに濃厚接触者を探し、芋づる式に感染者を見つける。この芋づるをクラスターと呼ぶ。昨年の第一波が収束した際、安倍晋三首相(当時)は「日本モデルの成功」と発言し話題となったが、この「成功」に大きく寄与したのが、積極的疫学調査といわれている。

 ただ、クラスター調査は、世界のどこでも実施している標準的な感染対策だ。なぜ、日本だけが「成功」するのだろう。それは日本と海外はやり方が違うからだ。海外では感染者が見つかると、その後、接触した人を洗い出し、発症するか調査するが、日本では、感染者の過去の行動を調べ、接触者を探しだし、彼らを検査する。海外と比べ、日本のクラスター調査は徹底していることになる。厚労省は、積極的疫学調査により、感染源や感染経路が判明し、「三密」のリスクをいち早く明らかにしたと言うが、宜なるかなだ。

積極的疫学調査が唯一無二のコロナ感染対策に

 日本の積極的疫学調査が、優れた「調査研究事業」であることは論を俟たない。ただ、そのために全国の保健所を動員しているのだから、そのコストは膨大だ。ところが、このことは、あまり議論されない。

 積極的疫学調査の問題は、これだけではない。私が最大の問題と考えるのは、本来、「調査研究事業」である積極的疫学調査が、いつのまにか唯一無二の「コロナ感染対策」になってしまったことだ。

 このことは関係者も公言している。コロナ感染症対策分科会の委員を務める押谷教授は、3月22日のNHKスペシャル『“パンデミック”との闘い~感染拡大は封じ込められるか~』に出演し、「すべての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」「PCRの検査を抑えているということが、日本がこういう状態で踏みとどまっている」と述べている。

 彼の発言が間違っていたことは、その後の経過をみれば一目瞭然だ。第一波の時点からPCR検査体制を強化してきた中国や韓国などの東アジア諸国が、コロナ感染を抑えこんできたのに対し、日本は全土に蔓延させてしまった。日本人はマスクやソーシャル・ディスタンスについては、政府の指示を守ってきたのだから、クラスター対策に固執し、PCR検査を抑制した彼らの責任は重い。

 関係者が積極的疫学調査について自画自賛している間に、この調査は、本来の目的から離れ、何をやってるかわからなくなってしまった。この過程を反省しなければ、日本はまた同じ失敗を繰り返す。

 繰り返すが、積極的疫学調査の目的は感染経路と感染源の「調査」だ。本来、感染経路の解明という目的のためには、接触した人は全員調べなければならない。さらに、コロナは唾液の飛沫感染だけでなく、多くはないが、エアロゾルによる空気感染により伝染することも知られている。このような可能性も調べるため、接触した人だけでなく、同じ場所にいた人もすべてPCR検査を実施すべきだ。さらに、感染経路を解明するなら、中国で報告されているように、輸入された冷凍食品などを介した感染も調査すべきだろう。

 ところが、厚労省はそのような対応はしなかった。それは、前述したように、積極的疫学調査が感染症法で規定されている法定調査だからだ。コロナの感染が拡大すると、日本全国で実施できなければならない。しかしながら、保健所の人的資源には地域格差がある。地方の保健所は、都市部ほど人的リソースはない。積極的疫学調査は、このような保健所でも実行可能なものにしなければならない。

「マスクをしていたら感染しない」という前提

 昨年4月、国立感染症研究所は実務上の観点から濃厚接触の条件を1メートル以内の距離で、マスクなしで、15分以上話した人に定義を変更した。この結果、保健所が連絡しなければならない濃厚接触者は大幅に減少した。

 この変更は、積極的疫学調査の結果の信頼性を大きく損ねることとなった。私が編集長を務めるメールマガジン「MRIC」に首都圏の保健所で働く保健師が寄稿してくれた。「濃厚接触者探し、クラスター対策の虚構~現場保健師の実体験から~」というタイトルで1月15日に配信した。この保健師の指摘は興味深い。

 保健師は『(濃厚接触者の定義として)ポイントとなるのは、マスクしているか、していないかである。その際、マスクの質は問わない。あくまで聞くのはマスクの有無のみである。調査において「マスクをして会っていましたか?」と尋ねた場合、「マスクをして会っていました」という返答だと陽性者と接触があった人であっても濃厚接触者にはならない。そして、マスクをしていた場所は感染場所にはならない」と述べている。

 マスクをしていたら感染しないという仮定は、およそ合理的でない。「正しく」マスクを装着することで、感染はかなりの割合で予防できるかもしれないが、すべてではない。また、実社会では「正しく」マスクを装着していない人も多い。

 マスクの扱い方については、保健所関係者では常識らしいが、私は知らなかった。この保健師の主張を聞けば、第三波で飲食店が標的となったのも納得できる。日常生活でマスクを外すのは食事の時と自宅だからだ。職場や訪問した場所でマスクをつけていれば、最初から濃厚接触者と見なされず、積極的疫学調査の対象から外れる。この結果、飲食店でのクラスター発生が過大評価される。これこそ、今回の緊急事態宣言で、飲食店が規制対象となった理由だ。

「東京で約6割の人が感染経路不明なんですけど、そのうちの大部分は、飲食店だと専門家の委員会の先生方が言っています」と菅義偉首相が説明し、飲食店を中心に規制するのは合理的ではない。第三波の感染経路の中心が飲食店でなければ、飲食店を規制しても、感染は抑制できない。一方で飲食店経営者が蒙る経済的被害は甚大で、その一部は税金で補填されることとなる。

 こんなことをしていると感染の実態がわからなくなる。保健師は「保育園で複数の保育士が感染しました。彼らの家族はPCR検査が陰性だったので、職場感染を疑いましたが、ずっとマスクをしていたので集団検査は実施できませんでした」という。これでは、園児を感染の危険に曝すだけだ。ますます感染は蔓延する。マスクの有無にかかわらず、広く徹底的に検査の機会を提供すべきだ。

厚労省の暴走

 今回の感染症法改正では、積極的疫学調査とPCR検査のあり方を見直すべきだが、厚労省にそのつもりはない。権限維持に汲々としている。

 1月8日、国立感染症研究所は「新型コロナウイルス感染患者に対する積極的疫学調査実施要領」を、従来の「(大流行下では)、感染経路を大きく絶つ対策が行われているため、個々の芽を摘むクラスター対策は意味をなさない場合がある」と書かれていたのを、「効果的かつ効率的に積極的疫学調査を行うことが重要になる場合がある」と訂正した。あまりに姑息なやり方だ。

 厚労省の暴走はこれだけではない。筆者が入手した改正感染症法の「法案概要」には「積極的疫学調査の実効性の確保」として、「正当な理由がなく答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は正当な理由がなく調査を拒み、妨げ若しくは忌避した場合の50万円以下の罰金を規定する」とある。そもそも調査への参加は自由意志でなければならないし、調査への参加を罰則付きで強制した場合、その結果にバイアスが生じるのは明らかだ。

 さらに、厚労省の宿痾とも言える情報開示に消極的なことは、今回の感染症法改正でも是正されなかった。積極的疫学調査の結果は「関係自治体への通報を義務化」されただけで、「HER-SYS」という電磁システムを用いて国が一元管理することになるデータを関係者で共有するようにはしなかった。厚労省関係者は「国立感染症研究所を中心とした行政機関で情報を独占し、民間研究者などに開示、二次利用させない仕組みを維持した。結果として、国民の知る権利を侵害している」と憤る。

中国と韓国の成功に学ぶべき

 では、クラスター対策の代わりに何をすべきか。それは検査体制の強化だ。これについても、厚労省は抵抗を続けている。

 コロナの特徴は感染しても、無症状の人が多く、彼らが周囲にうつすことだ。対策の肝は無症候感染者対策といっていい。ところが、厚労省はクラスター対策で充分という立場をとり続け、PCR検査を抑制し続けてきた。感染者が増え、PCR検査抑制が問題視されるようになると、「闇雲にPCR検査を増やしても意味がない」と弁明するようになった。11月25日の衆議院予算委員会で田村憲久厚労大臣は「アメリカは1億8,000万回検査しているが、毎日十数万人が感染拡大している」と答弁しているが、これも滅茶苦茶だ。

 注目すべきはPCR検査数を感染者数で除した数字だ(図2)。一人の感染者を見つけるために、どの程度のPCR検査を実施したかを示している。中国が6,262回と突出し、ニュージーランド1,592回、オーストラリア429回と続く。日本は18.9回で16位だ。米国は12.3回で日本以下である。アメリカの感染者数から推定するに、はるかに多くの無症状感染者がいる。アメリカの検査数は、このような無症状感染者を見つけるには足りないのだ。

 仮に住民の0.1%が無症状感染だとすると、一人の感染者を見つけるためには、1,000人の検査が必要となる。まさに、中国が採った戦略だ。1月5日、北京近郊の石家荘で54人の感染者が確認されると、1,100万人の検査を実施することを決めた。さらに北京で変異ウイルスの感染が確認されると、350万人の市民を対象にPCR検査を行うという。

 このような徹底的な検査体制のため、世界で唯一、中国は国内の大流行を沈静化させたあと、再燃させていない。日本が見習うべきは、このような成功モデルだ。ところが、厚労省が準備した改正感染症法の「法案概要」には、「行政検査を行うに当たって、都道府県知事等は、無症状者を含む患者の迅速な発見のため、感染症の性質、地域の感染状況、感染症が発生している施設・業務等を考慮することを明示する」としかなく、医療機関や介護施設などのエッセンシャル・ワーカーを対象としたスクリーニング検査や、昨年末からPCR検査数を増やすことに貢献した民間検査センターへの支援には言及されていない。次のパンデミックでも厚労省はPCR検査を抑制する方針を崩さないことを意味する。

 コロナ対策は、医学的に合理的でなければならない。そろそろ、積極的疫学調査のあり方をみなおし、検査体制を強化するように方向転換する時期だ。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

●上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

日本、造船業も中韓勢に敗北、存亡の危機…一地方造船所だった今治造船、国内トップへ

 国内造船最大手の今治造船(愛媛県今治市、檜垣幸人社長、非上場)と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU、神奈川県横浜市、千葉光太郎社長、非上場)の連合体が動き出した。両社が共同出資した船の設計や営業を行う新会社、日本シップヤード(NSY、東京都千代田区)が1月1日付で発足した。海外の独禁当局の承認が長引き、当初予定の20年10月1日から3カ月遅れとなった。

 資本金は1億円。今治造船が51%、JMUが49%出資し、社長にJMUの前田明徳取締役執行役員、副社長に今治造船の檜垣清志専務取締役が就任した。社員約510人は両社からの出向だが、9割は設計要員が占める。NSYは二酸化炭素などの排出を抑えた環境船に注力する。まずアンモニア燃料船の開発に取り組む。中韓勢もアンモニア燃料船などに着手し、環境対応を進めており、先行きは厳しい。

 前田社長は1月6日、東京都内で記者会見し、「環境技術で世界一といわれる会社にしたい」と抱負を語った。今治造船とJMUは、海運大手3社でつくったコンテナ船運航会社が使う世界最大級のコンテナ船6隻を受注しており、2023年~24年の完成を目指している。

 政府が国内造船業の基盤を維持するために設けた金融支援の枠組みを使い、コンテナ船の購入資金への融資に事実上、国の保証をつけることが決まっている。

今治造船がJMUに30%出資

 今治造船とJMUは20年3月27日、資本・業務提携した。JMU救済の色彩が濃かった。JMUは13年1月、日立造船・日本鋼管(現・JFEホールディングス)系のユニバーサル造船とIHI・住友重機工業系のアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドが合併して誕生した。日立造船は祖業の造船事業から撤退しておりJMUの経営から退いた。これに伴い、資本の組み換えが行われた。20年6月、JFEHDとIHIが300億円の増資を引き受け、両社の出資比率は49%に上昇、日立造船は1%とかたちだけ残した。

 今治造船は当初、20年10月1日にJMUに出資する予定だったが、欧州連合(EU)や中国など海外の独禁当局による審査に時間がかかり、遅れていた。独禁当局の審査が完了した今年1月、350億円の増資を実施した。内訳は今治造船が150億円、JFEHDとIHIが100億円ずつ引き受ける。JFEHDとIHIは議決権のない優先株などを引き受けた。JMUの新資本金は575億円。増資後の議決権ベースの出資比率は今治造船が30%、JFEHDとIHIがそれぞれ35%。日立造船は保有株をJFEHD、IHIに譲り渡した。

 JMUの20年3月期の連結決算の売上高は前期比6%減の2531億円、最終損益は390億円の赤字(前期は3億円の黒字)。最終赤字は2期ぶり。液化天然ガス(LNG)船などで中韓造船大手との激しい価格競争があり、これが響いた。舞鶴事業所(京都府舞鶴市)で新造船から撤退するのに伴い、生産設備を減損処理したことで赤字が増大した。

 20年4~9月期の連結売上高は1042億円と前年同期から16%減り、最終損益が5億円の赤字(前年同期は65億円の赤字)と2期連続で最終赤字となった。有明事業所(熊本県長洲町)で新型コロナの集団感染が発生し、造船所の操業が一時止まり、船の引き渡しが遅れたことが影響した。

国内シェア50%を握るが、それでも世界シェアの1割どまり

 共同出資した日本シップヤードが船出したが、課題が山積している。今治造船は10カ所、JMUは5カ所の造船所を持っている。決まっているのは、JMUの舞鶴事業所で21年に商船建造から撤退することぐらいだ。

 JMUの主要拠点は大型石油タンカーなどを建造する有明事業所、コンテナ船に強い呉事業所(広島県呉市)、ばら積み船がメインの津事業所(三重県津市)の3カ所。JMUは今回の増資資金を活用して津や有明などに溶接ロボットやクレーンを導入、生産効率を上げる。韓国や中国などの造船業は政府の手厚い支援を受けている。中・韓勢に対抗する武器は最新設備である。

 中国では造船首位の中国船舶工業集団(CSSC)と2位の中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合し、韓国も現代重工業と大宇造船海洋が統合を決めるなど海外勢は一段と企業規模を大きくしている。

 これに対して、中韓勢の価格攻勢で受注競争に敗れた国内勢は、事業規模の縮小を余儀なくされた。三菱重工業は長崎造船所香焼工場(長崎県長崎市)を売却する。三井E&Sホールディングス傘下の造船子会社も3月までに常石造船と資本業務提携することで最終合意する見通しだ。サノヤスホールディングスも主力のばら積み船の受注減少を背景に子会社、サノヤス造船(大阪府大阪市)を2月末に新来島どっく(東京都千代田区)に売却する。今治造船の建造量、450万総トン、JMUの建造量は236万総トン。2社を合わせると国内シェア50%を握る“メガ造船”がスタートを切ったわけだが、世界シェアで見ると、わずか1割にとどまる。

 今回、独立系で非上場の今治造船と上場会社の造船部門を結集したJMUという、これまで交わることがなかった2社が手を結んだことに意味がある。今治造船は非上場のオーナー企業ゆえに、その実態はほとんど知られてこなかった。オーナーの檜垣家は、「謎の造船一族」と呼ばれている。今治造船本体のほか、グループ・関連会社などで檜垣一族の総数100人が経営の中枢にある、といわれている。

 1980年代には三菱重工業や三井造船、石川島播磨重工業(現・ジャパンマリンユナイテッド)、日立造船といった大手造船会社が全盛で、今治造船は上場造船会社の3分の1の生産能力しかなかった。瀬戸内海に数多くある地場系造船所の1つにすぎなかった。その後の造船不況で大手がドックを削減し、新事業にシフトするなか、今治造船は経営不振の造船会社を次々と傘下に収め規模を拡大した。

 今治造船が積極路線をひた走ることができたのは、株主や株価に左右されることのない非上場のワンマン経営だったからである。今治造船は、非上場のため財務情報は開示していない。官報に掲載される決算公告が手に入る唯一の資料だ。

 2020年3月期決算(単体)は売上高が前期比3%減の3806億円、最終損益は116億円の赤字に転落した。船価の下落で穀物や鉄鉱石などを運ぶばら積み船などの採算が悪化。新型コロナウイルスの感染拡大で、保有している株式の株価が下がったことによる減損処理で収益が悪化した。

 それでもM&A攻勢はとどまることを知らない。今度はJMUがターゲットとなった。今治造船がJMUを傘下に収め、名実ともにトップの座を窺う。檜垣一族が日本の造船王になる日は近い。

(文=編集部)

接触確認アプリ「COCOA」で不具合続出…なぜ厚労省アプリは質が悪い?国民にも問題

 新型コロナウイルス対策として厚生労働省が昨年6月から提供している接触確認アプリ『COCOA』で、深刻な不具合が続発している。

 本来、アプリをインストールしていれば、新型コロナの陽性者と「おおむね1m以内の距離で15分以上の近接した場合」に通知が来る仕組みだが、なぜか情報が勝手に初期化され、陽性者と濃厚接触している人に対しても通知されない不具合が確認されている。厚労省は、この不具合を確認しており、早期に改善すると発表している。

 実は、このCOCOAについては、提供当初からさまざまな不具合が報告されている。急拡大する新型コロナ対策として、見切り発車だった感はあるにせよ、あまりにもお粗末なバグが少なくない。たとえば、陽性者との接触を知らせるプッシュ通知を受け、アプリを開いてみると接触が確認されないといった不具合があり、昨年9月にアップデートされたが、その後も同様の不具合が続いた。逆に、何度も陽性者と濃厚接触があり、それぞれにCOCOAをインストールしていたにもかかわらず、アプリ上では接触が確認されないという事例もある。

 COCOAで感染拡大を防ぐことはできないにしても、厚労省肝入りのアプリとして開発され、大臣が国民に対してインストールを呼びかけるなど、政府を挙げて推進してきた事業としては稚拙すぎないだろうか。

 また、厚労省が提供しているアプリはほかにも、『EMIS(広域災害・救急医療情報システム)』『ねんきん情報アプリ』があるが、いずれも評判はすこぶる悪い。たとえば『ねんきん情報アプリ』は、年金に関する情報を短い漫画で説明するだけで、詳細を調べようとすると厚労省などのHPに飛ぶなど、特別な機能はほとんどない。「今どき、子供でも作れるレベルで、アプリとして配布する必要性を感じない」など、インストールした人たちからは酷評されている。

 なぜ、厚労省のアプリは質が悪いのだろうか。スマホ評論家の新田ヒカル氏は、問題点は大きく2つあるという。

「まず、国に対する監視の力が弱いということが挙げられます。監視には国民の目とメディアがありますが、国民の国への監視はシビアではないですし、メディアも報道の自由度が低く、発信力は強くありません。

 また、戦後間もない頃の官僚は能力が高かったものの、高度成長期以降の官僚は保身に走り、新しいものを生み出す力が低くなっています。国民としても、“お上”に頼るメンタリティが染みつき、自分たちで問題解決を図ることができなくなっているのではないかと思います。

 そうして役所の仕事は効率やスピードが求められないため、質の高い製品を生み出さなくてはならないという危機感も持たないまま開発が進むという悪循環になっているのではないでしょうか。特にそれはITの分野で顕著に表れています」

COCOAをインストールするインセンティブが働かないワケ

 COCOAは、インストールする人が多いほど効果が高まるが、ダウンロード数は現時点で約2430万人と、十分とはいえない数だ。性能の低さ、機能の少なさ、セキュリティの甘さなどが指摘され、インストールしない人も多い。

「機能の弱さは、個人情報の保護などさまざまなことを“配慮しすぎた”結果だと思います。韓国、香港、台湾など、ある程度コロナ対策で結果を出している国・地域は、強権を背景に施策を推進しています。COCOAは中途半端になっており、インストールするインセンティブが働いていません。現実的には難しいですが、国民全員がスマホを保有してアプリをインストールするといった状況になれば、高い効果を得られるでしょう。

 また、アプリを入れている人は優先的にPCR検査やワクチンを優先的に受けられるようにするなど、インセンティブを付加することでインストールする人を増やせると思いますが、そういった施策もありません」

 COCOAのソースコードはオープンになっているため、誰でも見ることができる。日本中のプログラマーたちが結集すれば、不具合は簡単に解決できるのではないだろうか。

「もちろん、不具合を改善するだけであれば難しくはないと思いますが、そもそも国民がCOCOAにあまり期待していないのではないでしょうか。総理大臣が『これで新型コロナの感染を抑えるんだ』という強い意志を示していないので、開発者たちにも国民たちにも本気度が伝わっていないと思います」

 厚労省はCOCOAについて「利用者は、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性が分かることで、検査の受診など保健所のサポートを早く受けることができます。利用者が増えることで、感染拡大の防止につながることが期待されます」と説明しているが、利用者が増えないため、あまり感染拡大防止につながっていないのが現状だ。

 今後、政府は広報活動を活発化させるとしているが、さらにCOCOAの性能アップや陽性者が判明した後の保健所・医療機関との連携などを充実させて、感染拡大防止の効果を高めてほしい。

(文=編集部)

藤井聡太、全敗だった天敵・豊島将之に初勝利…86手目「8六歩」“絶妙の好手”を追う

 7戦目にして初勝利――。

 藤井聡太(18)が1月17日に名古屋市の名古屋国際会議場で行われた「朝日杯将棋オープン戦」本戦の準々決勝で、最も苦手としていた豊島将之二冠(30/竜王、叡王)に勝ち、2月11日に東京で渡辺明三冠(36/名人、王将、棋王)と対戦する準決勝(同日に決勝)にコマを進めた。

 藤井はプロ入り後、豊島には公式戦で6連敗し、1勝もしていなかった。現在、藤井と公式戦で3戦以上の対局をして勝ち越している棋士には、久保利明九段、大橋貴洸六段、佐々木大地五段がいるが、豊島は「最大の天敵」だった。

 2017年、18年と藤井が連覇した朝日杯は観客を入れての公開対局だ。「藤井が苦手の豊島に勝てるか」ということで、コロナ禍にもかかわらずファンが駆け付けた「7度目の対決」は、期待通りの熱戦となった。同杯は持ち時間が一人40分と短く、使い切れば一手を1分以内に指さなくてはならない「1分将棋」になる。

 豊島が先手番。序盤に角交換し、豊島がよく見かける「腰掛銀」で様子を見たのに対し、藤井は3筋と4筋(後手なので6筋と7筋)で積極的に銀を前進させる「早繰り銀」という、豊島も予期していなかった急戦に持ち込んだ。難しい将棋は、徐々に豊島が優勢になっていたようにも見えた。

 先に時間を消費してしまったのは藤井。その時点で豊島は9分残していた。この差は大きい。時計係の秒読み「……50秒、1、2、3、4、5、6、7、8」に藤井ファンはハラハラさせられる。10まで読み上げられたら敗北だ。実はプロの棋士でもたまにあり、ひふみんこと加藤一二三九段(引退)は現役時代、何度かこの「ポカ」をやっていたそうだ。

 ちなみに日本将棋連盟の規則では、秒読みに追われて慌てて指そうとして万が一、駒を落としてしまったら、指で盤面部分を押さえ、指す手を口頭ですぐに伝えれば時間内に指したとみなされる。

「相手がやったことも自分がやったこともありますが、やはり相手が認めてくれなくては駄目ですね」(今泉健司五段)

無意識に妙手を放つ

 この対局、藤井が「9」まで読まれて角で王手した場面もあった。慌てたわけではないだろうが、あまりよい手ではなかったとみられる。だがその後、藤井が86手目に放った「8六歩」の攻めが絶妙の好手となりその後、94手目で豊島が投了した。

 局後、藤井は「今まで6局やって勝てていなかったので、ホッとした気持ちはあります。しっかり集中して良い将棋をお見せできるようにしたいと思います」「強い相手と対局できるのはすごく楽しいことなので、過去の成績というのは忘れて一生懸命指そうと思っていました」などと語った。敗れた豊島は「序盤に失敗してしまって中盤あたりで難しくなったような気もしたんですけど、最後のほうに何かチャンスがあったのかもしれないですけど、ちょっとわからなかったです。8六歩がいい手でしたね」などと相手を称えた。棋士が対局後に、相手の一手を具体的に取り上げて褒めるのも珍しい。

「8六歩」について、大盤解説をしていた森内俊之九段(50/永世名人資格者)は「(藤井には)もう一枚歩があるから7八歩で『詰めよ』がつくれる。かっこいい手です」と感心していた。「詰めよ」とは、王手ではないが相手が守らなければ次の手から詰んでゆく一手のこと。「詰めろ」ともいう。

 しかし局後に藤井本人は「詰めろ、のかけ方がわからなかったので、あのあたり、まったくわかっていなかったです」と振り返った。藤井聡太は本音でもないことを言ってみせて相手を煙に巻いたり、攪乱させるような芸当ができる男ではないだろう。年齢ではなく彼の性格からそう感じる。であれば、「わかっていなかった」は本心だろうが、それならば究極の「秒読み」に追われながらも半ば無意識で相手が脱帽するような妙手が放てたわけである。やはり「不世出の天才」たるゆえんだろう。

この勝利の大きな意義

 藤井と豊島はともに愛知県出身。すでにプロ入りしていた豊島が、小学6年生だった藤井と対戦したことがある。豊島は「自分が6年生の時よりもずっと強い」と驚いていた。   

 2人の公式戦初戦は2017年の夏に行われた棋王の挑戦者決定トーナメントだった。すでにA級棋士だった豊島に、四段だった15歳の藤井は完敗し、A級という壁の高さを痛感していた。その後は力の差が縮まり、次第に接戦になってゆくが、藤井はなぜか豊島には勝てず、優勢に進めている将棋も逆転されたりした。

 とりわけ、昨年10月の王将戦の挑戦者決定リーグでは、圧倒的に優勢だった藤井が土壇場でミスから大逆転を許してしまい、「実力差なのか」としょげていた。トップクラスの棋士たちの実力は紙一重。ここで一人でも苦手な相手をつくると真のトップとして君臨してゆくことは難しくなる。その意味でも、この機に勝っておけたのは大きな意義がある。

 一方、名人戦につながる順位戦リーグでは藤井は現在、B級2組で一人だけ負けなしの8戦全勝。、師匠であり同級に在籍する杉本昌隆八段(52)を追い越してB級1組への昇級、つまり「一期抜け」の可能性が高まっている。順位戦の第9局は朝日杯の2日前である2月9日に東京の将棋会館で行われ対戦する窪田義行七段(48)に勝てば昇級決定だ。

 あれこれ書いていると忘れそうになるが、藤井はまだ高校3年生である。高校卒業までわずかの期間も、天才棋士まだまだ楽しませてくれそうだ。

(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト) 

●粟野仁雄/ジャーナリスト

1956年生まれ。兵庫県西宮市出身。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)を経て、82年から2001年まで共同通信社記者。翌年からフリーランスとなる。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌などに執筆。『サハリンに残されて−領土交渉の谷間に棄てられた残留日本人』『瓦礫の中の群像−阪神大震災 故郷を駆けた記者と被災者の声』『ナホトカ号重油事故−福井県三国の人々とボランティア』『あの日、東海村でなにが起こったか』『そして、遺されたもの−哀悼 尼崎脱線事故』『戦艦大和 最後の乗組員の遺言』『アスベスト禍−国家的不作為のツケ』『「この人。痴漢!」と言われたら』『検察に、殺される』など著書多数。神戸市在住。

我が子の学力、親による「習慣形成」が大きく左右…意思とは無関係に自然と勉強に励む

「宿題まだでしょ、ちゃんとやってから遊びなさい」

 いくら言っても机に向かわないため、

「何やってるの! 宿題やらないとダメでしょ!」

「早くやりなさい!」

と声を荒げる。そして、

「なんでウチの子はいつもこうなの。嫌になっちゃう」

と嘆く。よくみられる光景である。

 一方で、宿題を手っ取り早く済ませてから遊び始める子どももいる。何が違うのだろうか。

習慣形成の意義は、意志の力が不要になるところにある

 宿題をやらずに遊んでばかりいる子どもを見て、どうしたら宿題をちゃんとやらせられるかに頭を悩ます親が少なくない。誰だって宿題をするより遊んでいるほうが楽しいに決まっている。

 やらねばならないということは頭でわかっていても、なかなかやる気になれない。怠け心に負けてしまう。それはだれもが経験していることのはずだ。学校時代を振り返っても、試験勉強に集中しなければいけないと思っても、なかなかやる気になれず、ダラダラしてしまう、つい気晴らしに走ってしまう。そんなこともあっただろう。

 大人になってからも、似たような経験をしている人が多いはずだ。ダイエットのために毎日帰宅後に運動をしようと決め、最初の1週間くらいは続いても、

「今日は疲れてるからやめよう」

「今日はアルコールが入ってるからやめよう」

などと、「まあ、今日くらいいいだろう」といった心理が働き、ついついさぼりがちになり、ついにやらなくなってしまう。

 自己啓発本に刺激を受け、仕事力を高める自己研鑽のため、毎朝30分早く起きて勉強をしようと心に決める。わずか30分でも毎日の積み重ねは大きい。これで自分もかなり力をつけられるはず。そう思って始めるが、やはり朝は眠い。目覚まし時計が鳴っても、眠気に打ち克つことができず、「まあ、今日くらいいいだろう」と再び眠ってしまう。そんな日がしだいに増え、そのうち立ち消えになってしまう。

 このような苦い経験は、だれにもあるのではないだろうか。

 勉強でも仕事でも運動でも、何かを継続するには根気がいる。「ちゃんとやらなくちゃ」と頭では思っていても、行動がついていかない。つい怠け心に負けてさぼってしまう。どうしても安易なほうに流されがちだ。そこを踏み止まって継続するには、強靱な意志の力が必要となる。ゆえに、たいていは怠け心に負けることになる。

 そこで大切なのが習慣形成だ。早起きが習慣になっている人は、とくに意志の力を発揮しなくても、当たり前のように早起きができる。毎晩運動することが習慣になっている人は、とくに努力しなくても運動を継続することができる。毎晩夕食後に机に向かうのが習慣になっている人は、食事が終わると自然に机に向かっている。

 習慣形成のもつ意義は、まさにそこにある。いったん習慣化すると、頑張って意志の力を発揮することなしに、ほぼ自動的に望ましい行動を取ることができるのである。

まずは小さな習慣形成から

 習慣形成がいかに有効なものであるかがわかったはずだ。でも、子どもの習慣形成というと、食習慣や睡眠習慣など、生活の基本的なサイクルにかかわる習慣づくりが連想されがちだ。育児情報でも、そのような習慣をつけさせることの大切さが説かれている。

 もちろんそうした習慣形成も大切だが、教育心理学の立場からすると、本を読む習慣や机に向かう習慣を身につけることが、その後の学力向上にとって非常に重要と言わざるを得ない。

 かつては学校の先生が厳しかった。私の子ども時代には非常に厳しい先生がいた。机に向かう習慣がなかった私などは、宿題をせずに毎日遊び回っていたため、甘い先生のときは宿題忘れのグラフで首位を独走していた。ところが、転機が訪れた。メチャクチャ厳しい先生が担任になったのだ。宿題をちゃんとやらない私は毎日厳しく叱られた。容赦なかった。そのお陰で、私は放課後に遊んだ後、夕食後に宿題をちゃんとやるようになった。毎日机に向かうのが習慣になった。

 だが、今はそんな厳しい先生はいない。今どきの先生たちは、保護者のクレームを怖れ、義務を果たさなくても叱らず、良いところをほめ、子どもの気持ちを傷つけないように気をつかわなければならない。ゆえに、学校に任せていたら、子どもに望ましい習慣形成を促すことはできない。

 保護者のクレーム対応に先生たちが疲弊しているというのは、メディアを通して知っているはずだ。子どもの望ましい習慣形成を学校に任せられる時代ではなくなっているのだということを、まずは自覚しておかねばならないだろう。

 そこで、家庭においていかに望ましい習慣を身につけさせるかを工夫する必要がある。たとえわずかな時間であっても親が一緒になって本を読んだり、宿題を済ませたらテレビを見てもいいという方針を貫いたり、家庭によってやり方はさまざまだが、無軌道にならないような工夫が求められる。

 冒頭にあげた例のように、いくら親が声を上げて叫んでも、嘆いても、子どもの行動パターンが変わることはない。大事なのは、少しずつでいいから習慣形成をしていくことだ。

哲学者ジョン・ロックも強調する習慣形成の威力

 近代教育思想の確立にも大いに貢献した、著名な哲学者ジョン・ロックも、習慣形成が教育において担う役割を強調している。

「子供の精神の形成とその早期の鍛錬には大いに注意しなくてはなりません。これらのことは、いつも将来の子供の生活に影響を与えるのです」(ジョン・ロック 服部知文訳『教育に関する考察』岩波文庫、以下同書)

 このように、子ども時代に望ましい行動を習慣化することが将来の生活に大きな影響を及ぼすとするロックは、とくに克己心の大切さを強調する。

「体力は主として困難に耐えることにあるごとく、また精神力についても同様です。そしてあらゆる徳と価値の偉大な原理と基礎が置かれていますのは、人間は自己の欲望を拒み、自己の傾向性をおさえ、欲望が別の方向へ傾いても、理性が最善として示す処に純粋に従うことができるという点です」

 このように、負荷をかけることによって身体が鍛えられるのと同じく、自分の欲望を我慢することによって精神力が鍛えられるとする。そして、欲望を我慢する力は子どもの頃からの習慣によって培われる、といった視点を示している。

 その意味においても、子どもと約束して、何らかの決まりに従うように仕向けることが習慣形成の第一歩になるだろう。

「あらゆる美徳と美質の原理は、理性が認めないような自分自身の欲望を充足することを自ら斥ける力にあることは、明らかであると思われます。この力は、習慣によって得られ、増進されまた早くから実行して、わけなく身近なものにすべきです。そこで、もし耳をかしてもらえるなら、通常の方法に反して、子供はゆりかごにいる間からさえ、自分の欲望を克服し、熱望するものをもたずに我慢することに慣れるようにすべきだ、と忠告したいと思います」

 最近は、教育界でレジリエンスという言葉が重視されるようになってきつつある。自分の思い通りにならないような状況になると、すぐに落ち込んだり、かんしゃくを起こしたりする子どもたちが非常に多くなっているからだ。一方で、そんなときも冷静さを失わず、頑張り続けることができる子もいる。そこには、いわゆるレジリエンスの違いがあるのだ。

 もちろんロックの時代にはレジリエンスという概念はなかったのだが、今風に言えば、そのレジリエンスの違いをもたらすのが、幼い頃から自分の欲望のコントロールを習慣化できているかどうかだというのが、ロックの考えだと言ってよいだろう。

 ロックは、子ども時代に欲しいものを何でも与えられ我慢せずに育った者は、大人になってから酒に溺れたり女に溺れたりするが、我慢する習慣を身につけてきた者はけっしてそのようなことはないといった例をあげ、「その相違は欲望があるとかないとかいうことではなくて、その欲望のうちにあって自己を統御し、克己する力にあります。若いときに、自己の意志を他人の理性に服従させることになれていない者は、自己の理性を活用すべき年齢になっても、自分自身の理性に傾聴し従うことは、めったにないものです」とする。

 そして、そのような違いは子どもの頃のしつけに起源があるとし、「一方の子供は欲しがったり、わめいたりするものを与えられるのが習慣になっており、他方の子供はそんなものなしに我慢するのが習慣になっている」というように、どのような習慣を身につけているかで大人になってからの人生が大きく違ってくることを強調している。

 子どもの将来のためを思うなら、習慣形成の重要性をここで再認識しておく必要があるだろう。

(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)

●榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士

1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『伸びる子どもは〇〇がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』『ビジネス心理学大全』(以上、日経BP)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『教育現場は困ってるに変更』(平凡社新書)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)など多数。

東京五輪、全国から1万人の医療従事者とコロナワクチン未接種の国民を東京に集結の方針

 1月27日、河野太郎ワクチン担当相は「65歳以上の高齢者(約3600万人)へのワクチン接種は、4月1日から始め6月第3週までに終了する」という見通しを記者団に語った。ということは、65歳未満の人への接種は7月以降になるということだ。

 海外でも、ワクチン接種がなかなか進んでいないようなので、おそらく各国とも6月中には全国民に接種できないだろう。つまり、東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)が開催される予定の今年7月は、日本も含め世界中がワクチン接種の真っ最中ということになる。

 世界中がコロナと戦っている時期に、世界中から人を集め「コロナに打ち勝った証」として東京五輪が開催できるのだろうか。五輪は、スポーツの祭典ともいわれるが、要するにカーニバル(お祭り)にすぎない。世界中が一人でも多くの人に、できるだけ早くワクチンを接種しようと躍起になっている7月に、日本では「コロナに勝った証として、世界中から人を集め大騒ぎをしている」のだ。それを「微笑ましい」と思う人よりも「何を馬鹿騒ぎをしている」と思う人のほうが多いのではないだろうか。

 しかも、あとになってから「東京五輪がコロナを世界中に拡散させた」ということにでもなると、「なぜ中止しなかったのか、延期しなかったのか」という叫びが世界中から湧きあがり、日本の信用は失墜してしまうだろう。

“Go To 東京”で浮かれている場合ではない

 おそらく菅義偉首相は、東京五輪期間中とその前後には、少しでも多くの人を東京に集めようと、Go Toトラベルを大々的に実施するだろう。そうなると東京には、日本全国あるいは世界中から数十万人規模で人が集まってくる。ほかにも、選手団やボランティアの人たちも集まる。ボランティアだけで約11万人(大会ボランティア8万人、都市ボランティア3万人)、さらに、医療従事者も東京五輪のために1万人も集めるという。

 しかも、医療従事者の人たちを除いて、集まってきた人たちの多くはワクチン接種を終えていないはずだ。いくら夏場とはいえ、終息に近づいていたとしても、ワクチンを接種していない人たちを東京に大集合させることは大丈夫なのだろうか。 

 一方、その時、全国で65歳未満の人たちへのワクチン接種が始まっている。東京の街なかは、日本も含め世界中から集まった人に加え、ワクチン接種の人たちでごった返すのではないだろうか。

 そもそも、もし終息間近だったとしても、日本中がワクチン接種で大混乱しているかもしれない時期に、東京五輪の感染対策のために、1万人もの医療従事者の人たちを東京に集めていいものだろうか。

 世界中からワクチン接種が終わっていない人たちが大集合する姿を見て、世界中の人たちは「スポーツの祭典を盛り上げてくれてありがとう」と感謝するだろうか。

 いくら無観客だろうが、日本人限定だろうが、東京五輪開催中の7月は、世界中がワクチン接種を続けながらコロナと必死に戦っているはずだ。本当にコロナに打ち勝った証として祭典をしたいのなら、世界中から医療従事者の人たちを集めて、感謝の祭典を開いたほうが、世界中の人たちが喜んでくれるだろう。

 無観客だろうが日本人限定だろうが、定員の半分の人数にしようが、いずれにしてもコロナに感染することが怖いから取る措置だ。コロナに打ち勝ったわけではなく、コロナにおびえている証拠だ。とてもコロナに打ち勝った証とはいえない。菅首相は、7月23日の開会式に、世界中の人々に向けて「コロナに打ち勝った証として東京五輪を開催します」と自信をもって宣言できるのだろうか。

 東京五輪は、中止か延期するしかない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

●垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

マツキヨ、今冬のビミョ~すぎる5品…甘すぎるしょうが湯、剥がしづらすぎる絆創膏

“マツキヨ”の愛称で親しまれる「マツモトキヨシ」は、医薬品に日用品、化粧品、食品と多彩な商品ラインナップを誇る大手ドラッグストアチェーンだ。グループ全体で47都道府県に1738店舗出店(2020年9月末時点)しており、国外ではタイに31店舗、台湾に13店舗構え、今後はベトナムへの進出を予定しているという。

 そんなマツキヨでは1990年代からPB(プライベートブランド)を展開し、現在では「matsukiyo」というブランド名でさまざまな商品が発売されている。そのなかには、世界的なデザイン賞・広告賞を5つも受賞したトイレットペーパーのように絶賛を受けているアイテムがある一方で、ユーザーからの評価が芳しくないアイテムがラインナップされているのもまた事実。

 そこで、「Business Journal 買うべき・買ってはいけない調査班」では日用品を中心にmatsukiyo商品をリサーチ。「この冬、買ってはいけないアイテム」を5つピックアップした。調査班が独自に選んだ商品ではあるが、マツキヨでの買い物で損をしないため参考にしてほしい。

しょうが湯 15g×6袋/158円(税抜、以下同)

 体が芯から温まるような飲み物が恋しくなる冬。紅茶やコーヒー、ココアといった定番ドリンクだけでなく、風邪予防に効果のあるしょうが湯やかりん湯を楽しむという方も多いだろう。

 matsukiyoでもさまざまなホットドリンクが発売されており、「しょうが湯 15g×6袋」もそのひとつ。1袋分の粉末で90mlのしょうが湯が味わえる商品で、国産の生しょうがをまるごとすりおろしたというだけあって、しょうがの香りを存分に堪能できる。

 だが、肝心の味はというと、しょうがの風味は感じられるもののそれ以上に甘みが強く、しょうが湯を飲んでいるという実感をあまり抱けないドリンクとなってしまっている。味覚でもガツンとしょうがの風味を楽しみたい方や甘いドリンクが苦手な方は、別のしょうが湯を購入するべきだろう。

通気絆創膏 Mサイズ 30枚/278円

 乾燥で手荒れしやすい冬は、手先にひび割れやあかぎれなどの傷ができやすい季節。絆創膏のお世話になる機会が増えるという方も多いのではないだろうか。だが、matsukiyoの絆創膏は当たり外れが激しく、「通気絆創膏 Mサイズ 30枚」も残念ながらおすすめしづらいアイテムとなっている。

 まず、「通気絆創膏 Mサイズ 30枚」の利点は粘着剤が肌にフィットすることと、通気性に優れているためムレにくいことにある。つまり、ムレによる痒みなどを心配することなく、傷のできた部分をしっかりと外部刺激から守ることができる絆創膏というわけだ。

 ところが、肌にピッタリと貼りつく粘着力の高さが、実は最大の欠点でもある。非常に剥がしづらく、剥がすときに痛みを感じたり、粘着剤が指に残ったりしてしまうのだ。実際に使用して剥がしたみたところ、あまりの粘着力で基材であるウレタン不織布が指にくっついてしまったこともあった。付け剥がしをしやすい絆創膏を使いたい場面では使うべきではないだろう。

トイレブリーチ 500g/168円

 例年よりも家の中で過ごす時間が増えるであろうこの冬。これまではあまり意識していなかった場所の汚れが気になるようになったという方も少なくないはず。matsukiyoには多種多様な清掃グッズがラインナップされているが、「トイレブリーチ 500g」はクセが強いため、購入する際に注意が必要だ。

 便器の内側の黒ずみやカビを落とすだけでなく、便器やフタ、タンクなどの掃除も可能と、トイレ掃除全般で活用できるこのアイテム。ノズルの先端が曲がっているためフチ裏にも液をかけやすく、こすらなくともしっかりと汚れを落とすことができるのが特徴だ。

 そんな使い勝手と性能に優れていてコスパも優秀な商品なのだが、液体のニオイが強すぎるという欠点を抱えているのである。パッケージにも記載されている通りにしっかりと換気をして掃除しても、ニオイがしばらく残るため塩素系のニオイが苦手だという方は別の清掃グッズを選んだほうがいいかもしれない。

ペーパーハンドタオル 82組(164枚)/95円

 手洗い後の手拭きに使用してそのまま捨てられるペーパータオルは、今では公共の施設だけでなく家の中で使用したり、外に携帯するグッズとしても使われている。洗面台周りの拭き掃除や雑巾代わりにも活用できる利便性の高さも評価されているポイントだろう。

 Matsukiyoの「ペーパーハンドタオル 82組(164枚)」は、柔らかな肌触りが特徴。取り口が広いため中身が取り出しやすく、82組入りで95円とコスパが優秀で、簡素な包装でゴミ出しでもかさばらないと、利点が多いアイテムだ。

 しかし、ソフトな使用感を追求したために、力を入れて拭くと破けやすいという欠点も併せ持っている。場合によっては無駄に紙を使ってしまうことになりかねないので、使い方をよく考えたうえで購入してほしい。

アルコール除菌スプレー本体 400ml/278円

 アルコール除菌・消毒のためのグッズが必需品となった昨今。一時期のようにどこへ行っても品薄という状況ではなくなったため、自分の使い方やライフスタイルに合わせたグッズ選びを心がけたいところだ。

アルコール除菌スプレー本体 400ml」はスプレータイプのキッチン用除菌グッズで、まな板や包丁などの調理用具、台ふきん、三角コーナー、シンクなどの除菌、冷蔵庫などの家電や調理台、食卓の拭き掃除などで使える。天然由来の成分なので、食器にかかっても安全で除菌の際にも洗い流す必要がないことが特徴だ。

 だが、一部のユーザーからは中身のアルコールの揮発性に問題があると指摘されており、確かに実際に食卓の除菌で使用したところ、拭き跡がテーブルの上にハッキリと残ってしまっていた。また、本体にもスプレーノズルが「閉」の状態でハンドルを押すと、ノズルを切り替えたときに中身が出てしまうという問題点がある。速乾性に優れたアルコール除菌グッズが欲しいのであれば買うべきではないだろう。

 今回紹介した5アイテムは、使い方次第では値段以上に活躍してくれるだろうが、特徴を理解せずに買ってしまうと、ほとんど使わないなんてことにもなりかねない。買い物の際は価格だけでなく、どういう用途で使うのかを想像して商品を選ぶことが大事ということだろう。

(文・取材=「買うべき・買ってはいけない調査班」from A4studio)

※情報は2020年12月21日現在のものです。

木村拓哉が歌うのはSMAP曲を消し去らないため?…キムタクの音楽と役者活動の背景

 日本が誇るスター俳優のひとりとして、いまだ熱い注目を集める木村拓哉。昨年3月いっぱいで中居正広がジャニーズ事務所を退所したことにより、事務所に残った唯一の“元SMAP”となったわけだが、その活躍ぶりは相変わらず安定している。2021年正月にはスペシャルドラマ『教場2』(フジテレビ系)が2夜連続でオンエアされ、第1夜の視聴率が13.5%、第2夜が13.2%と好成績を残した(視聴率は共にビデオリサーチ調べ/関東地区)。

 あるテレビ誌の記者は次のように語る。

「キムタクが冷徹な鬼教官・風間公親(かざま・きみちか)を演じることで話題となった『教場』ですが、2020年正月にオンエアされた第1弾は視聴率15%超えを果たしていました。今回の『教場2』はそれを超えることはできなかったわけですが、どの局もお正月ならではの強力な特番を持ってくるなか、13%超えで同時間帯トップというのはさすがです。

 出演予定だった伊藤健太郎がひき逃げ事件で降板。しかも役どころが『訓練中に同級生をひいてしまう生徒役』だったというのには驚かされましたが、とにかく撮り直すしかない。コロナ禍でただでさえ撮影が困難ななか、木村さんもスタッフや共演者を鼓舞し、なんとか撮り直したそうです。若い時から主演を張り、座長役が身についてる木村さんならではのエピソードですよね。

 そんな『教場2』は、風間がなぜ右目を失い冷徹な鬼教官になったのか、そのきっかけとなる事件までさかのぼったところで幕を下ろしました。つまり1年後まで引っ張る気まんまんなわけで、スペシャルドラマでここまでクリフハンガーを作れるのはキムタクドラマしかないと思います。強烈なキャラをしっかり成立させられないと、1年間も引っ張れませんから」

タレントの映画公開に合わせて連ドラをかぶせてくるのは、ジャニーズのお家芸

 今年は大ヒット映画「マスカレード」シリーズの最新作『マスカレード・ナイト』の公開を9月に控え、現在はその撮影の真っ最中とか。前作の『マスカレード・ホテル』(2019年公開)が興行収入46億円超えを果たしているだけに、“2021年最大の注目作”との呼び声も高い。

「緊急事態宣言が発出されたため、撮影現場では当然ながら感染予防対策を徹底させてはいるものの、時間的な制約も多い。それでも木村さんはロゴ入りのオリジナルマスクを作成してスタッフや共演者に配るなど、ここでも安定の座長ぶりを発揮しているそうです。2回目の緊急事態宣言でメジャー作品の公開延期も相次いでいますが、『マスカレード・ナイト』はぜひとも無事に公開にこぎつけてほしいですね。

 今回も長澤まさみさんとの息の合ったコンビネーションが見られるでしょうし、このマスカレードシリーズの主人公である新田浩介は、原作者の東野圭吾さんが木村さんを想定して当て書きしたともいわれています。つまり、木村さんにとってはこれ以上にない“代表作”になり得る作品なわけで、いつも以上に力が入っているのかもしれません。映画公開の9月に合わせて連ドラをかぶせてくるのは、ジャニーズのお家芸。『グランメゾン東京』のような、木村さんが得意とする職業ドラマを企画進行中との噂があるので、それも楽しみですね」(前出・テレビ誌記者)

「SMAPの曲をこの世から消し去らないため」の音楽活動なのか

 今年も絶好調な滑り出しを見せた木村拓哉。2021年も順風満帆にいくのか? ジャニーズに詳しいある週刊誌記者は次のように語る。

「2019年1月にはB’zの稲葉さんや槇原敬之さんなど錚々たるメンツが参加した初のソロアルバム『Go with the Flow』を出し、SMAP時代からカウントすると約5年ぶりにライブも敢行。そこで、ソロ曲以外にもSMAP時代の『SHAKE』や『夜空ノムコウ』を歌い、ファンたちは当然ながら狂喜乱舞。

しかし、3月からコロナ禍が待ったなし状態となったため、ソロアーティストとしての話題が長く続かなかったんです。本来なら2020年はもっとアーティスト面を強化し、シンガー・木村拓哉の印象を強く残したかったはず。今はライブもなかなかしづらい状況ですが、本人はまた折を見てやりたいという思いが強くあるようです。

 というのも、事務所を退所した新しい地図の3人はSMAPの曲を原則的に歌えず、中居くんも退所してしまった以上、SMAPの歌をやれるのは木村さんのみ。もしかして木村さんは、SMAPの曲をこの世から消し去らないために、アーティスト活動を再開したのかもしれません。SMAPの再結成は絶望的に難しいと思いますが、彼らの名曲は後世に残すべきだという思いは事務所首脳陣のなかにも強くある。コロナが収まれば、仕切り直しの意味も込めて全国ツアーなども考えているようですよ」

 元メンバーが続々と事務所を離れ、孤高の存在となってしまった木村拓哉。しかし、彼が役者やアーティストとして第一線で孤軍奮闘しているからこそ、SMAPという看板は永遠に我々の脳裏から消えないのだ。

(文=藤原三星)

●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara