ITの力で“関係人口”を増やせ!郡上市のシビックテック事例

シビックテックとは、地域の課題を住民自身がテクノロジーで解決すること。しかし、必ずしも「そこに住むプロのエンジニアが、地域のために新たなシステムやツールを開発する」だけがシビックテックの全てではありません。

本連載では、SNSやスマホアプリなど、すでに世の中にあるIT/ICTサービスを住民が活用することで地域活性化を図る、いわば「広義のシビックテック」の事例を中心に紹介していきます。

今回は、岐阜県郡上市で行われた「IT活用により“関係人口”を増やす取り組み」を、地域施策を数多く手掛ける電通デジタルの加形拓也が紹介します。

<目次>
郡上市の課題:“交流人口”を“関係人口”につなげられない
データ管理とコミュニティーで郡上ファンのつながりをつくる
関係人口を生み出すために「四つのフェーズ」を連携させる
小中学校にもテレビ電話を導入。身近なIT化がもたらすメリット

 

郡上市の課題:“交流人口”を“関係人口”につなげられない

岐阜県のほぼ中央に位置する郡上市は、観光客が非常に多い地域です。日本三大民踊の“郡上おどり”や、江戸時代の城下町の面影が残る“郡上八幡”の街並みが有名。さらに、ラフティング(ラフトを使用した川下り)などの自然を使ったアクティビティーも人気ですし、踊り文化によって根付いた下駄や染物など、工芸品も盛んです。

日本三大民踊の一つ“郡上おどり”のために、市外、さらには県外からも多くの人が訪れる。
日本三大民踊の一つ“郡上おどり”のために、市外、さらには県外からも多くの人が訪れる。

郡上市の総人口は4万人弱ですが、年間に訪れる観光客は600万人に迫るほど。この数字からも、いかに多くの人がこの街に足を運ぶか分かるでしょう。

郡上市はベンチャービジネスも活発ですし、「徹夜踊り」で名高い郡上おどりの伝説的な歌い手や、夜の川に潜って漁をする名人、自然農法の達人など、全国にファンを持つカリスマ的な人がたくさんいます。

また、漫画家のさくらももこさんが生前に足しげく通い、郡上への愛着から「GJ8マン」というキャラクターを自主的に誕生させるなど、文化人との縁も深い。地域としての観光資源はとても豊かな場所です。

しかし、郡上市には悩みがありました。観光客のような“交流人口”は多くても、その人たちの訪問は単発で終わってしまい、長期的に地域と関わる“関係人口”(※)に発展させることができていなかったのです。

※ 関係人口=移住した“定住人口”でも、観光という一時的な“交流人口”でもない、地域外の人が持続的に地域と関わり続けるケースのこと。地域と外部の接触点を増やし、地域づくりの担い手になることが期待される。


それに郡上市自体、2004年に7町村が合併しましたが、人口は年々減少。いっときの観光にとどまらない、関係人口を増やすことが急務となっていました。

そこで実施されたのが、電通がお手伝いさせていただいた「郡上縁つなぎプロジェクト」です。

データ管理とコミュニティーで郡上ファンのつながりをつくる

プロジェクトの発端は、電通の「地方創生室」に所属する岡野春樹からの相談です。岡野は総務省の「地域おこし企業人」という制度を活用して、郡上市に出向していました。

彼から「郡上市の関係人口を増やしたい」と相談され、二人で話し合う中でこのプロジェクトが生まれました。

目指したのは、お祭りやアクティビティーなど郡上市でのイベントに参加してくれた人たちを“横につなげる”ことです。これまで、それぞれの目的でたくさんの“郡上ファン”が訪れていましたが、イベント同士は相互に連携せず、完全なタテ割りになっていました。

しかし、例えばラフティング目的で郡上を訪れる人を、ラフティングと相関性の高い自然体験や他のアクティビティーに関するイベントにも勧誘できれば、より深く、長期的に地域と関わってもらうことができます。

あるいは郡上踊りに来た観光客に対しても、郡上踊りに関係する工芸品や他のイベントに案内できれば、これまで年1回だった来訪が2回、3回と増えるかもしれません。

郡上市には魅力的な工芸品もたくさんある。
郡上市には魅力的な工芸品もたくさんある。

そこで、イベント同士の横のつながりをつくるために活用したのが、CRM(顧客管理)システム大手のSalesforceです。主に企業が顧客管理や営業支援に使うサービスですが、これを郡上市という“地域”に導入したのです。

もともと店舗や組織ごとでそれぞれ顧客管理をしていたものを、「郡上市」という大きなくくりの顧客データとして、Salesforce上で一元管理することに。蓄積されたデータを元に、各個人に興味のありそうな関連イベントや、昨年来訪したイベントの告知などをDMで送付するようにしました。

ただし、DMを見ていない人もいます。そこで、もう一つの顧客接点としてFacebook上に郡上市のグループを作成。郡上市を訪れた方たちのためのコミュニティーをつくりました。このコミュニティーでは、郡上市で行われるさまざまなイベントを発信。自分の興味あるイベントしか知らなかった郡上ファンたちが、「他にこんなイベントがあるんだ」と、新たな発見をするようになりました。

従来は、各イベントが独自で情報発信、集客、参加者管理を行っていた。しかしこれでは関係を深めている人が誰なのかが見えてこないし、他のイベントがさらにコンタクトする手段がない。
そこで各イベントが共通で使える情報発信、集客、参加者管理の仕組みを既存のITサービスで構築。郡上市全体で関係人口になりそうな人を把握し、継続的にコンタクトできる状態をつくりだした。

これら「郡上縁つなぎプロジェクト」の運営は、HUB GUJOという地元のコワーキングスペースを営む団体に依頼。行政の施策にせず、あくまでも民間の方が関わる形です。

特にポイントとなったのは、SalesforceのDMや、Facebookコミュニティーでのトピック投稿、参加者とのコメントのやりとりです。運営自体はHUB GUJOですが、実際にDMを作成したりFacebook上で郡上ファンとコミュニケーションしたりする「縁つなぎサポーター」の役割は、地元の主婦の方々に依頼しました。

コミュニティー内で誰か郡上ファンがコメントすると、サポーターが積極的に返信し、会話を活発化。やがて、面識のない郡上ファン同士が新たに知り合うケースが増えていき、タテ割りだった郡上ファンやイベントが横につながる流れができたのです。

こうして横のつながりが生まれると、郡上を訪れる回数、関わる機会は増えていきます。それは“関係人口”につながります。

地域課題解決のために専用システムをゼロから開発するのではなく、SalesforceやFacebookという “こなれた技術”を使い、“市民”である民間組織や地元の主婦が携わる。そういった「広義のシビックテック」が実践された実例だと思います。

最後に、電通から郡上市に出向して奮闘してきた岡野と、実際にプロジェクトを運営するHUB GUJOの代表者からのコメントをご紹介しましょう。

関係人口を生み出すために「四つのフェーズ」を連携させる

電通 地方創生室の岡野春樹氏
電通 地方創生室の岡野春樹氏

電通 地方創生室の岡野です。私は郡上市に出向してから、住民と外部の人が一緒になって“根っこのある”プロジェクトを生み出すローカルインキュベーション事業「郡上カンパニー」を立ち上げるなど、さまざまな人がこの地と関われるような機会を企画・創出してきました。「郡上縁つなぎプロジェクト」もそのひとつです。

地域の関係人口を増やすためには、以下の四つのフェーズがあると思います。

  1. 交流フェーズ(観光などで地域を訪れる)
  2. 関係継続フェーズ(DM、Facebookなどで関係を継続する)
  3. プロジェクトフェーズ(地域の取り組みに参加するようになる)
  4. 担い手フェーズ(地域に関わり続けるようになる)

郡上は、観光という交流フェーズ(1)で止まるケースが多かったのですが、そこで途切れずにDMやFacebookで郡上ファンとコミュニケーションをとることで、関係継続フェーズ(2)に移行できます。さらにここで関係性が増すと、地域の取り組みなどに関わるプロジェクトフェーズ(3)、そして年間を通じて関わり続ける担い手フェーズ(4)へと移っていきます。この流れをスムーズにつくることが、関係人口創出のポイントです。

大切なのは、四つのフェーズを連携させる仕組みづくり。縁つなぎプロジェクトでは、官民で力を合わせ、ITを活用することで、それを実現できたと思います。

小中学校にもテレビ電話を導入。身近なIT化がもたらすメリット

NPO法人 HUB GUJO理事長・赤塚良成氏
NPO法人 HUB GUJO理事長・赤塚良成氏

HUB GUJOの赤塚です。「郡上縁つなぎプロジェクト」の運営団体は私たちHUB GUJOですが、DMの作成やFacebookでのやりとりは、郡上に住む主婦の方2人に「縁つなぎサポーター」として担当していただきました。郡上には若い女性が結婚を機に移住してくるケースも多く、彼女らはSNSやITに親しみがあります。そのような方が、自宅で子育てしながらスキルを生かせる形にしました。

郡上にはもともと多数のイノベーターがおり、それぞれのコミュニティーは活気がありましたが、コミュニティー同士の横のつながりはできにくかったといえます。私たちがHUB GUJOというコワーキングスペースを運営しているのは、いろんな人たちが郡上と“つながる場所”をつくりたかったから。そのためにテレビ会議などのITシステムを充実させ、市内や遠方の人がつながれる空間としました。

ちなみに郡上市では、公立の小中学校でもテレビ会議のシステムを導入しています。少子化に加え、山間部で学校同士が離れており、子どもたちの孤立化が課題でしたが、テレビ会議で交流や合同授業が可能になり、新たな形で友達が増えています。ITの活用は、地域の維持を考える上で欠かせないと強く思います。

郡上のコミュニティー同士、あるいは郡上と外部の人たちのハブとなる空間として設計されたHUB GUJO。
郡上のコミュニティー同士、あるいは郡上と外部の人たちのハブとなる空間として設計されたHUB GUJO。

ITの力で“関係人口”を増やせ!郡上市のシビックテック事例

シビックテックとは、地域の課題を住民自身がテクノロジーで解決すること。しかし、必ずしも「そこに住むプロのエンジニアが、地域のために新たなシステムやツールを開発する」だけがシビックテックの全てではありません。

本連載では、SNSやスマホアプリなど、すでに世の中にあるIT/ICTサービスを住民が活用することで地域活性化を図る、いわば「広義のシビックテック」の事例を中心に紹介していきます。

今回は、岐阜県郡上市で行われた「IT活用により“関係人口”を増やす取り組み」を、地域施策を数多く手掛ける電通デジタルの加形拓也が紹介します。

<目次>
郡上市の課題:“交流人口”を“関係人口”につなげられない
データ管理とコミュニティーで郡上ファンのつながりをつくる
関係人口を生み出すために「四つのフェーズ」を連携させる
小中学校にもテレビ電話を導入。身近なIT化がもたらすメリット

 

郡上市の課題:“交流人口”を“関係人口”につなげられない

岐阜県のほぼ中央に位置する郡上市は、観光客が非常に多い地域です。日本三大民踊の“郡上おどり”や、江戸時代の城下町の面影が残る“郡上八幡”の街並みが有名。さらに、ラフティング(ラフトを使用した川下り)などの自然を使ったアクティビティーも人気ですし、踊り文化によって根付いた下駄や染物など、工芸品も盛んです。

日本三大民踊の一つ“郡上おどり”のために、市外、さらには県外からも多くの人が訪れる。
日本三大民踊の一つ“郡上おどり”のために、市外、さらには県外からも多くの人が訪れる。

郡上市の総人口は4万人弱ですが、年間に訪れる観光客は600万人に迫るほど。この数字からも、いかに多くの人がこの街に足を運ぶか分かるでしょう。

郡上市はベンチャービジネスも活発ですし、「徹夜踊り」で名高い郡上おどりの伝説的な歌い手や、夜の川に潜って漁をする名人、自然農法の達人など、全国にファンを持つカリスマ的な人がたくさんいます。

また、漫画家のさくらももこさんが生前に足しげく通い、郡上への愛着から「GJ8マン」というキャラクターを自主的に誕生させるなど、文化人との縁も深い。地域としての観光資源はとても豊かな場所です。

しかし、郡上市には悩みがありました。観光客のような“交流人口”は多くても、その人たちの訪問は単発で終わってしまい、長期的に地域と関わる“関係人口”(※)に発展させることができていなかったのです。

※ 関係人口=移住した“定住人口”でも、観光という一時的な“交流人口”でもない、地域外の人が持続的に地域と関わり続けるケースのこと。地域と外部の接触点を増やし、地域づくりの担い手になることが期待される。


それに郡上市自体、2004年に7町村が合併しましたが、人口は年々減少。いっときの観光にとどまらない、関係人口を増やすことが急務となっていました。

そこで実施されたのが、電通がお手伝いさせていただいた「郡上縁つなぎプロジェクト」です。

データ管理とコミュニティーで郡上ファンのつながりをつくる

プロジェクトの発端は、電通の「地方創生室」に所属する岡野春樹からの相談です。岡野は総務省の「地域おこし企業人」という制度を活用して、郡上市に出向していました。

彼から「郡上市の関係人口を増やしたい」と相談され、二人で話し合う中でこのプロジェクトが生まれました。

目指したのは、お祭りやアクティビティーなど郡上市でのイベントに参加してくれた人たちを“横につなげる”ことです。これまで、それぞれの目的でたくさんの“郡上ファン”が訪れていましたが、イベント同士は相互に連携せず、完全なタテ割りになっていました。

しかし、例えばラフティング目的で郡上を訪れる人を、ラフティングと相関性の高い自然体験や他のアクティビティーに関するイベントにも勧誘できれば、より深く、長期的に地域と関わってもらうことができます。

あるいは郡上踊りに来た観光客に対しても、郡上踊りに関係する工芸品や他のイベントに案内できれば、これまで年1回だった来訪が2回、3回と増えるかもしれません。

郡上市には魅力的な工芸品もたくさんある。
郡上市には魅力的な工芸品もたくさんある。

そこで、イベント同士の横のつながりをつくるために活用したのが、CRM(顧客管理)システム大手のSalesforceです。主に企業が顧客管理や営業支援に使うサービスですが、これを郡上市という“地域”に導入したのです。

もともと店舗や組織ごとでそれぞれ顧客管理をしていたものを、「郡上市」という大きなくくりの顧客データとして、Salesforce上で一元管理することに。蓄積されたデータを元に、各個人に興味のありそうな関連イベントや、昨年来訪したイベントの告知などをDMで送付するようにしました。

ただし、DMを見ていない人もいます。そこで、もう一つの顧客接点としてFacebook上に郡上市のグループを作成。郡上市を訪れた方たちのためのコミュニティーをつくりました。このコミュニティーでは、郡上市で行われるさまざまなイベントを発信。自分の興味あるイベントしか知らなかった郡上ファンたちが、「他にこんなイベントがあるんだ」と、新たな発見をするようになりました。

従来は、各イベントが独自で情報発信、集客、参加者管理を行っていた。しかしこれでは関係を深めている人が誰なのかが見えてこないし、他のイベントがさらにコンタクトする手段がない。
そこで各イベントが共通で使える情報発信、集客、参加者管理の仕組みを既存のITサービスで構築。郡上市全体で関係人口になりそうな人を把握し、継続的にコンタクトできる状態をつくりだした。

これら「郡上縁つなぎプロジェクト」の運営は、HUB GUJOという地元のコワーキングスペースを営む団体に依頼。行政の施策にせず、あくまでも民間の方が関わる形です。

特にポイントとなったのは、SalesforceのDMや、Facebookコミュニティーでのトピック投稿、参加者とのコメントのやりとりです。運営自体はHUB GUJOですが、実際にDMを作成したりFacebook上で郡上ファンとコミュニケーションしたりする「縁つなぎサポーター」の役割は、地元の主婦の方々に依頼しました。

コミュニティー内で誰か郡上ファンがコメントすると、サポーターが積極的に返信し、会話を活発化。やがて、面識のない郡上ファン同士が新たに知り合うケースが増えていき、タテ割りだった郡上ファンやイベントが横につながる流れができたのです。

こうして横のつながりが生まれると、郡上を訪れる回数、関わる機会は増えていきます。それは“関係人口”につながります。

地域課題解決のために専用システムをゼロから開発するのではなく、SalesforceやFacebookという “こなれた技術”を使い、“市民”である民間組織や地元の主婦が携わる。そういった「広義のシビックテック」が実践された実例だと思います。

最後に、電通から郡上市に出向して奮闘してきた岡野と、実際にプロジェクトを運営するHUB GUJOの代表者からのコメントをご紹介しましょう。

関係人口を生み出すために「四つのフェーズ」を連携させる

電通 地方創生室の岡野春樹氏
電通 地方創生室の岡野春樹氏

電通 地方創生室の岡野です。私は郡上市に出向してから、住民と外部の人が一緒になって“根っこのある”プロジェクトを生み出すローカルインキュベーション事業「郡上カンパニー」を立ち上げるなど、さまざまな人がこの地と関われるような機会を企画・創出してきました。「郡上縁つなぎプロジェクト」もそのひとつです。

地域の関係人口を増やすためには、以下の四つのフェーズがあると思います。

  1. 交流フェーズ(観光などで地域を訪れる)
  2. 関係継続フェーズ(DM、Facebookなどで関係を継続する)
  3. プロジェクトフェーズ(地域の取り組みに参加するようになる)
  4. 担い手フェーズ(地域に関わり続けるようになる)

郡上は、観光という交流フェーズ(1)で止まるケースが多かったのですが、そこで途切れずにDMやFacebookで郡上ファンとコミュニケーションをとることで、関係継続フェーズ(2)に移行できます。さらにここで関係性が増すと、地域の取り組みなどに関わるプロジェクトフェーズ(3)、そして年間を通じて関わり続ける担い手フェーズ(4)へと移っていきます。この流れをスムーズにつくることが、関係人口創出のポイントです。

大切なのは、四つのフェーズを連携させる仕組みづくり。縁つなぎプロジェクトでは、官民で力を合わせ、ITを活用することで、それを実現できたと思います。

小中学校にもテレビ電話を導入。身近なIT化がもたらすメリット

NPO法人 HUB GUJO理事長・赤塚良成氏
NPO法人 HUB GUJO理事長・赤塚良成氏

HUB GUJOの赤塚です。「郡上縁つなぎプロジェクト」の運営団体は私たちHUB GUJOですが、DMの作成やFacebookでのやりとりは、郡上に住む主婦の方2人に「縁つなぎサポーター」として担当していただきました。郡上には若い女性が結婚を機に移住してくるケースも多く、彼女らはSNSやITに親しみがあります。そのような方が、自宅で子育てしながらスキルを生かせる形にしました。

郡上にはもともと多数のイノベーターがおり、それぞれのコミュニティーは活気がありましたが、コミュニティー同士の横のつながりはできにくかったといえます。私たちがHUB GUJOというコワーキングスペースを運営しているのは、いろんな人たちが郡上と“つながる場所”をつくりたかったから。そのためにテレビ会議などのITシステムを充実させ、市内や遠方の人がつながれる空間としました。

ちなみに郡上市では、公立の小中学校でもテレビ会議のシステムを導入しています。少子化に加え、山間部で学校同士が離れており、子どもたちの孤立化が課題でしたが、テレビ会議で交流や合同授業が可能になり、新たな形で友達が増えています。ITの活用は、地域の維持を考える上で欠かせないと強く思います。

郡上のコミュニティー同士、あるいは郡上と外部の人たちのハブとなる空間として設計されたHUB GUJO。
郡上のコミュニティー同士、あるいは郡上と外部の人たちのハブとなる空間として設計されたHUB GUJO。

ジャパンライフ山口会長を「桜を見る会」に招待したのは安倍首相か! 首相推薦枠1000人も大嘘、「総理、長官等で3400人」の証拠

「桜を見る会」問題で安倍首相をめぐる新たな疑惑が浮上した。それは、磁気ネックレスの預託商法などを展開し、悪徳マルチ商法としてこれまでにもたびたび社会問題化してきたジャパンライフ社の創業者で元会長である山口隆祥氏を「桜を見る会」に招待したのは、安倍首相なのではないか、という疑...

「沢尻逮捕は桜を見る会から話題をそらすため」は陰謀論か? 拙速逮捕の組対5課とあの“安倍官邸忖度”警察官僚の関係

 なんなんだ、この程度の低さは。ほかでもない、沢尻エリカ逮捕をめぐる「陰謀論」論議のことだ。 「桜を見る会」追及のさなかに沢尻が逮捕されたことで、ネットで報道潰しではないかという見方が広がり、ラサール石井が〈まただよ。政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が...

Made in JAPANは強みになるか?~日本ブランドの今とこれから~

本連載の第3回で、日本でやりたいことの上位に「ショッピング」がランクインしていることを紹介しました。銀座を歩けばショッピングに興じる大勢の外国人観光客に出会いますし、ガチャガチャが話題になったり、日本の包丁や扇子がお土産に人気だという話も聞きます。

かつて世界を席巻したMade in JAPANですが、訪日や越境ECで購入する機会が増えた今、世界からどのように評価されているのでしょうか? 

2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回は「Made in JAPAN」に焦点を当て、深掘りしたいと思います。

「日本の製品は優れている」という人が8割超え!圧倒的なMade in JAPANへの評価

日本の製品は優れているグラフ

第2回でも紹介しましたが、日本の印象について、「日本の製品は優れていると思うかどうか」を聞いたところ、20カ国・地域全体では82.3%の人が「優れていると思う」と回答しました。

特にASEANエリアではスコアが9割を超え、圧倒的な評価を得ていることが分かります。また欧州でも8割の人が評価。日本製品が多く流通するアジアだけでなく、世界的に評価されていることが分かりました。

では、具体的にはどのような人が評価しているのでしょうか?詳しく見ていくと、訪日経験のある人の評価が高い傾向がありました。実際に日本を訪れて日本製品を体験し、気に入ったため購入して帰る、という人も多く、一時期爆買いで話題になった温水洗浄便座もその一つです。

また、日本の「食」や「伝統」について、「優れている」「興味がある」と回答した人たちでも評価が高くなっています。カップラーメンやお菓子、浴衣や扇子などもお土産として人気になってきていますが、日本の食品や伝統的なデザインを経験する機会が増えたことも、日本の製品への評価に影響しているのかもしれません。

Made in JAPANのイメージは、“最先端”から“品質”へ

Made in JAPANイメージ トップ3

Made in JAPANのイメージを聞いてみると、全体では「ハイテク」がトップ。次いで「高性能」「信頼できる」という結果になりました。

エリアによってややイメージに差があり、特に東アジアエリアでは「丁寧に作られていそう」「繊細な/細やかな」「信頼できる」と他のエリアとは異なった印象になっています。

また、欧米エリアでは「ハイテク」「高性能」「信頼できる」となり、全体の傾向と同じですが、全体的にスコアが低く、日本製品に対するイメージが乏しいことがうかがえます。

これは日本製品の流通量や製品内容に関係していると思われますが、幅広く日本のものが浸透している東アジアで、“技術”ではなく“ものづくりの姿勢”とそれに裏打ちされた“品質”が評価されていることが印象的です。

また2015年の調査と比較すると、2015年は1位の「ハイテク」が2位の「高性能」よりも10ポイント以上高いスコアとなっており、5.5ポイントしか差がない今と比較して“最先端”イメージが非常に強かったことが分かります。

“最先端”のイメージが弱まったのは、韓国や中国をはじめとしたアジア諸国の技術力の向上といった、外部的な要因もあると考えられます。

競合との比較、という視点で見ると、Made in JAPANブランドは性能や品質における評価は高いのですが、「おしゃれな印象」については評価が低い、という結果も出ています。日本製品は世界から評価されていますが、より多くの人に使ってもらうためには、まだまだ課題がありそうです。

今後ポテンシャルが高い製品カテゴリーは「健康食品」と「ジュエリー」?

日本のブランドの製品カテゴリー

では、どのカテゴリーで日本の製品が求められているのでしょうか?経験や興味のスコアが高いものは、やはり従来強い分野である「TV、オーディオなどのAV機器」「自動車、バイクなどの輸送機器」。それを追いかけるのが「ラーメンなどのインスタント食品」「化粧品」です。それ以外のカテゴリーは経験が3割にも届かず、まだ少ないことが分かります。

一方、今後ポテンシャルがあると思われる(興味が経験を上回る)製品カテゴリーは、「健康食品・飲料」と「ジュエリー」でした。国・地域別で見ると、「健康食品・飲料」のスコアが高いのは台湾(63.3%)、「ジュエリー」はフィリピン(30.0%)となっています。

また、別の視点として今後の意向(=今自国にはあまりない・まったくないが、これからもっと自国で日本のブランドのものが買えるようになったらいいと思う製品カテゴリー)を聞いてみると、国・地域によって傾向が異なりました。

例えば、欧米エリアなど、従来日本製が強い分野である「AV機器」や「輸送機器」をトップに挙げる国々も多い一方、東アジアの国・地域とベトナムでは「医薬品」がトップ。

また、シンガポールでは「インスタント食品」、タイでは「菓子」、インドネシアでは「アパレル・ファッション」、イタリアでは「化粧品」、ロシアでは「健康食品・飲料」がトップという結果でした。約半数の国・地域では従来日本が強かった「AV機器」や「輸送機器」とは違う多様なカテゴリーへの需要が生まれていることが分かり、今まで以上に幅広い日本製品のポテンシャルを感じさせる結果となりました。

かつて世界を席巻したジャパンブランドですが、外部環境の変化や日本製品の体験が増えることによってそのイメージは変わり、品質への信頼という強みがある半面、まだ経験の幅が狭く、おしゃれなイメージで競合に負けているといった課題も見える結果となりました。

このようなさまざまな日本製品に対する興味が訪日観光客をさらに増やし、インバウンドによる日本製品の体験の多様化がさらにジャパンブランドのイメージに影響していくと考えられます。

変わっていくジャパンブランド、そしてインバウンドとの関係性に、今後も注目していきたいと思います。


ジャパンブランド調査2019の概要
・目的:食や観光、日本産品など「ジャパンブランド」全般に関する海外消費者の意識と実態を把握する
・対象エリア:20カ国・地域
中国(グループA=北京、上海、広州、グループB=深圳、天津、重慶、蘇州、武漢、成都、杭州、大連、西安、青島)、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ(北東部・中西部・南部・西部)、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ
※今回は、過去の調査の推移で変化の少なかったブラジルを除外し、インバウンドで注目が高まるトルコを追加しました。
・調査手法:インターネット調査
・対象者条件:20~59歳の男女 *中間所得層以上
 *「中間所得者層」の定義(収入条件):OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定
・サンプル数:中国はA・B300名ずつで計600名、アメリカは600名、それ以外の地域は各300名の計6,600名
・調査期間:2018年12月
・調査機関:株式会社ビデオリサーチ
 

北欧発デザインスクールに、世界中の経営者が殺到するわけ。

電通ビジネスデザインスクエア(以下、BDS)では、デンマーク・コペンハーゲンの教育機関「CIID」(Copenhagen Institute of Interaction Design)と連携し、デザインの手法やアプローチを学ぶことができる「CIID Winter School」を2020年2月に日本で開催します。

今回は、BDSビジネスデザイナーの齋藤陽介氏が登場。コペンハーゲンで開催された「CIID Summer School」経験者の視点から、CIID の魅力やBDSと連携する意義について語ってもらいました。

新しい知恵が生まれる、壮大な実験場

CIIDは2006年にコペンハーゲンで創立されたデザイン教育機関です。「クリエーティブな発想からソーシャルインパクトを創造し、ビジネスにつなげていくこと」が、CIIDの目指す姿。

コペンハーゲンで毎年開催されるサマースクールには、「People Centered Research」や「Design for Sustainability」「Designing Interactive Spaces」など、デザインに関するさまざまなプログラムが用意されています。

カリキュラムは参加者主体のグループワークが中心で、参加者は数名のチームに分かれ、5日間を通して与えられた社会的な課題に対してデザインの手法を実践。最終日に向けて作品やアイデアなどのアウトプットを完成させ、同時期に開講している他のコースの参加者も含めて全体で発表を行います。

欧米では非常に有名な学校で、私自身、2016年にロンドンのデザインスクールに留学していた時、よく名前を耳にしていました。しかし当時はUXデザイナーやエンジニア向けのインタラクションデザインの学校だと、彼らの取り組みを狭い視点でしか捉えていませんでした。

しかし、実際にサマースクールに参加してみて感じたことは、CIIDはデザインという共通言語を通して新しい知恵を生み出す「壮大な実験場」だということです。

各プログラムの講師は、NASAの研究所でリサーチャーとして活躍する方や、Spotifyのシニアプロダクトデザイナー、WeWorkのデザインディレクターなど産業界のトップランナーばかり。彼らは、一方的に知識を教えるのではなく、いわば“ファシリテーター”の役割を担います。つまり、参加者同士が自由に意見を交わす環境をつくり、時折、最新のセオリーや知見をエッセンスとして加えていきます。

トップランナーたちの最先端の知見に触れられる機会とあって、世界中のトップ企業から多種多様な人材が集まってきます。私がサマースクールで参加したコース「People-Centered Research」でも、UI/UXデザイナーらデザインに直接関係する職種の人だけではなく、経営者や建築家、考古学者など、さまざまな人材が13カ国から集まりました。

そうした異なる国籍・バックグラウンドを持つ参加者から出る意見が集積することによって、新しい知恵が生み出される。本当にワクワクする体験でした。

「People-Centered Research」コースの集合写真
「People-Centered Research」コースの集合写真

5日間で「デザインアプローチ」を身につけ、ビジネスの武器にする

大量生産・大量消費の時代は、「データ」を重視するマーケティングを行うことで人々のニーズを捉えられていました。例えば、「20代男性のうち、〇%の人たちがこういう価値観を持っている。だからこういうものを欲している」という考え方です。

しかし、これからの時代は、人々が求めるものや行動パターンがさらに多様化し、データだけで人々の本質的なニーズをとらえるのが困難になっていくことが予測されます。

そこで、世界の有力企業が経営に取り入れているのが、
共感→定義→アイデア開発→プロトタイプ→テスト
を基本とするデザインアプローチです。

「デザイン」は「人」に深くフォーカスします。例えば、同じ20代の男性でも、子煩悩な父親、大学院で研究に没頭する人など、立場はいろいろ。フィールド調査やユーザー観察などを通して、人のリアルなストーリーや文脈を掘り下げていきます。

デザインリサーチにおいて中でも重要な要素の一つが、「すべてを見える化」すること。調査で得た情報を付箋などに書き出すなどして壁一面に張り、それを見ながら情報を統合していきます。そして、拡散と収束のプロセスを繰り返しながら、ソリューションのアイデアを導き出します。思い付きではなく、「リサーチ→インサイトを発見→問いの設定→事業機会の特定」と、体系化されたプロセスはデザインアプローチならではです。

また、「プロトタイピング」を頻繁にすることもデザインの良いところです。アイデアを実際に紙などでつくりながら進めることで、スピード感をもってアイデアを磨き上げていくことができます。

失敗を恐れがちで、初めから完成度の高いアイデアを出そうとする傾向がある日本では、こうしたデザインの考え方を現場レベルで実践しているのはまだ珍しいのではないでしょうか。手を動かして失敗から学び、多様なメンバーでコラボレーションしながら、実践的に新しいアイデアを形作っていくアプローチを伝え、このスクールを、日本企業のマインドセットや視点の変化、そして未来に対するアクションを促す機会にしていくこと。そこにCIIDとBDSが連携する意義があると考えています。

2020年2月に開講の「CIID Winter School」は、8種類のカリキュラムを設けています。

・People-Centered Research
・Service Design
・Intro to Interaction Design
・Prototyping as a Process
・Designing for Impact & Inclusion
・Designing Interactive Spaces
・Change Management through Design
・Future Casting
<各コースの詳細はこちら> 

CIIDが提示する20種類以上のカリキュラムの中から、日本人に合いそうなものやニーズが高いと思われるカリキュラムをBDSがピックアップしました。新規事業を生み出すためのブレイクスルーを得たい人、既存事業を別のアプローチ方法で見つめ直したい人など、誰もがビジネスに役立つ武器を身につけられる5日間になるでしょう。

コペンハーゲンで行われたサマースクールのオープニング
コペンハーゲンで行われたサマースクールのオープニング

地球規模でサービスを考える「サーキュラーエコノミー」がグローバルスタンダード

CIIDで学べるデザイン思考は、「人」にフォーカスするだけにとどまりません。同機関が提唱するのは「相互に作用するデザイン」。ユーザー1人ではなく、その人を取り巻くコミュニティーや地球環境にまで価値がある仕組みをつくって初めて、よい製品やサービスが生まれるという考えです。CIIDでは“Life-Centered Design”とも表現されています。

カリキュラムは、ジェンダー平等、気候変動、持続可能な生産消費といったSDGs(持続可能な開発目標)で掲げられているテーマに沿って構成されています。CIID自体、国連と提携をしている教育機関なので、社会課題と向き合う姿勢にブレがありません。

デンマークをはじめ北欧諸国では「サーキュラーエコノミー」という考え方が広く産業界で実践されています。「作って、使って、捨てる」という直線的な「リニア型エコノミー」ではなく、廃棄物を出さずに価値を循環させていく、大量生産・大量消費モデルに変わる環境負荷の低い新しい経済の仕組みです。「地球環境が持続可能でなければ人間は生き残れない」という強い認識が、日常レベルで息づいていると感じています。

CIIDが提唱する「相互に作用するデザイン」とも非常にマッチする「サーキュラーエコノミー」の考え方をもとに、上記の国々ではどんどん新しいサービスが生まれ、イノベーションを起こすパイオニアとなっています。すでにグローバルスタンダードとなりつつあり、近い将来、必ず日本企業にも必要になってくるでしょう。

しかし現在のところ、日本で「サーキュラーエコノミー」が浸透している企業はまだ多くありません。その根底には、「地球環境保護はできれば達成した方がいいけど、それは自社のビジネスとは関係ない社会貢献活動である」という発想があるのではないでしょうか。そうではなく「事業を成功させるために欠かせない考え方である」と認識しなければ、世界から取り残されてしまうでしょう。

その一方で、「サーキュラーエコノミー」と密接に関わるSDGsの考え方が日本社会にも浸透してきており、企業も積極的に取り入れるようになってきています。しかし、大切なのは、企業が社会貢献活動としてSDGsにある項目を個別にピックアップして対応することではなく、「自社が世の中にどのような価値を提供する存在なのか」「社会にどんなインパクトを与えるか」といった本質的な議論をし、実践をしていくことです。

SDGsは共通のアジェンダではありますが、SDGsのどのゴールに軸足を置いて事業を展開するのかを決めるだけでは、その先行き詰まってしまいます。自分たちの掲げるビジョン対して向き合っていく視点や姿勢、マインドセットを身につけ、行動していくためにCIIDの考え方やツールは非常に有効だと思います。

ぜひこのCIID Winter Schoolで、多くの人に体感していただきたいと考えています。

コペンハーゲンで行われたサマースクールの授業の様子
コペンハーゲンで行われたサマースクールの授業の様子

「CIID Winter School」インフォメーション

北欧発デザインスクールに、世界中の経営者が殺到するわけ。

電通ビジネスデザインスクエア(以下、BDS)では、デンマーク・コペンハーゲンの教育機関「CIID」(Copenhagen Institute of Interaction Design)と連携し、デザインの手法やアプローチを学ぶことができる「CIID Winter School」を2020年2月に日本で開催します。

今回は、BDSビジネスデザイナーの齋藤陽介氏が登場。コペンハーゲンで開催された「CIID Summer School」経験者の視点から、CIID の魅力やBDSと連携する意義について語ってもらいました。

新しい知恵が生まれる、壮大な実験場

CIIDは2006年にコペンハーゲンで創立されたデザイン教育機関です。「クリエーティブな発想からソーシャルインパクトを創造し、ビジネスにつなげていくこと」が、CIIDの目指す姿。

コペンハーゲンで毎年開催されるサマースクールには、「People Centered Research」や「Design for Sustainability」「Designing Interactive Spaces」など、デザインに関するさまざまなプログラムが用意されています。

カリキュラムは参加者主体のグループワークが中心で、参加者は数名のチームに分かれ、5日間を通して与えられた社会的な課題に対してデザインの手法を実践。最終日に向けて作品やアイデアなどのアウトプットを完成させ、同時期に開講している他のコースの参加者も含めて全体で発表を行います。

欧米では非常に有名な学校で、私自身、2016年にロンドンのデザインスクールに留学していた時、よく名前を耳にしていました。しかし当時はUXデザイナーやエンジニア向けのインタラクションデザインの学校だと、彼らの取り組みを狭い視点でしか捉えていませんでした。

しかし、実際にサマースクールに参加してみて感じたことは、CIIDはデザインという共通言語を通して新しい知恵を生み出す「壮大な実験場」だということです。

各プログラムの講師は、NASAの研究所でリサーチャーとして活躍する方や、Spotifyのシニアプロダクトデザイナー、WeWorkのデザインディレクターなど産業界のトップランナーばかり。彼らは、一方的に知識を教えるのではなく、いわば“ファシリテーター”の役割を担います。つまり、参加者同士が自由に意見を交わす環境をつくり、時折、最新のセオリーや知見をエッセンスとして加えていきます。

トップランナーたちの最先端の知見に触れられる機会とあって、世界中のトップ企業から多種多様な人材が集まってきます。私がサマースクールで参加したコース「People-Centered Research」でも、UI/UXデザイナーらデザインに直接関係する職種の人だけではなく、経営者や建築家、考古学者など、さまざまな人材が13カ国から集まりました。

そうした異なる国籍・バックグラウンドを持つ参加者から出る意見が集積することによって、新しい知恵が生み出される。本当にワクワクする体験でした。

「People-Centered Research」コースの集合写真
「People-Centered Research」コースの集合写真

5日間で「デザインアプローチ」を身につけ、ビジネスの武器にする

大量生産・大量消費の時代は、「データ」を重視するマーケティングを行うことで人々のニーズを捉えられていました。例えば、「20代男性のうち、〇%の人たちがこういう価値観を持っている。だからこういうものを欲している」という考え方です。

しかし、これからの時代は、人々が求めるものや行動パターンがさらに多様化し、データだけで人々の本質的なニーズをとらえるのが困難になっていくことが予測されます。

そこで、世界の有力企業が経営に取り入れているのが、
共感→定義→アイデア開発→プロトタイプ→テスト
を基本とするデザインアプローチです。

「デザイン」は「人」に深くフォーカスします。例えば、同じ20代の男性でも、子煩悩な父親、大学院で研究に没頭する人など、立場はいろいろ。フィールド調査やユーザー観察などを通して、人のリアルなストーリーや文脈を掘り下げていきます。

デザインリサーチにおいて中でも重要な要素の一つが、「すべてを見える化」すること。調査で得た情報を付箋などに書き出すなどして壁一面に張り、それを見ながら情報を統合していきます。そして、拡散と収束のプロセスを繰り返しながら、ソリューションのアイデアを導き出します。思い付きではなく、「リサーチ→インサイトを発見→問いの設定→事業機会の特定」と、体系化されたプロセスはデザインアプローチならではです。

また、「プロトタイピング」を頻繁にすることもデザインの良いところです。アイデアを実際に紙などでつくりながら進めることで、スピード感をもってアイデアを磨き上げていくことができます。

失敗を恐れがちで、初めから完成度の高いアイデアを出そうとする傾向がある日本では、こうしたデザインの考え方を現場レベルで実践しているのはまだ珍しいのではないでしょうか。手を動かして失敗から学び、多様なメンバーでコラボレーションしながら、実践的に新しいアイデアを形作っていくアプローチを伝え、このスクールを、日本企業のマインドセットや視点の変化、そして未来に対するアクションを促す機会にしていくこと。そこにCIIDとBDSが連携する意義があると考えています。

2020年2月に開講の「CIID Winter School」は、8種類のカリキュラムを設けています。

・People-Centered Research
・Service Design
・Intro to Interaction Design
・Prototyping as a Process
・Designing for Impact & Inclusion
・Designing Interactive Spaces
・Change Management through Design
・Future Casting
<各コースの詳細はこちら> 

CIIDが提示する20種類以上のカリキュラムの中から、日本人に合いそうなものやニーズが高いと思われるカリキュラムをBDSがピックアップしました。新規事業を生み出すためのブレイクスルーを得たい人、既存事業を別のアプローチ方法で見つめ直したい人など、誰もがビジネスに役立つ武器を身につけられる5日間になるでしょう。

コペンハーゲンで行われたサマースクールのオープニング
コペンハーゲンで行われたサマースクールのオープニング

地球規模でサービスを考える「サーキュラーエコノミー」がグローバルスタンダード

CIIDで学べるデザイン思考は、「人」にフォーカスするだけにとどまりません。同機関が提唱するのは「相互に作用するデザイン」。ユーザー1人ではなく、その人を取り巻くコミュニティーや地球環境にまで価値がある仕組みをつくって初めて、よい製品やサービスが生まれるという考えです。CIIDでは“Life-Centered Design”とも表現されています。

カリキュラムは、ジェンダー平等、気候変動、持続可能な生産消費といったSDGs(持続可能な開発目標)で掲げられているテーマに沿って構成されています。CIID自体、国連と提携をしている教育機関なので、社会課題と向き合う姿勢にブレがありません。

デンマークをはじめ北欧諸国では「サーキュラーエコノミー」という考え方が広く産業界で実践されています。「作って、使って、捨てる」という直線的な「リニア型エコノミー」ではなく、廃棄物を出さずに価値を循環させていく、大量生産・大量消費モデルに変わる環境負荷の低い新しい経済の仕組みです。「地球環境が持続可能でなければ人間は生き残れない」という強い認識が、日常レベルで息づいていると感じています。

CIIDが提唱する「相互に作用するデザイン」とも非常にマッチする「サーキュラーエコノミー」の考え方をもとに、上記の国々ではどんどん新しいサービスが生まれ、イノベーションを起こすパイオニアとなっています。すでにグローバルスタンダードとなりつつあり、近い将来、必ず日本企業にも必要になってくるでしょう。

しかし現在のところ、日本で「サーキュラーエコノミー」が浸透している企業はまだ多くありません。その根底には、「地球環境保護はできれば達成した方がいいけど、それは自社のビジネスとは関係ない社会貢献活動である」という発想があるのではないでしょうか。そうではなく「事業を成功させるために欠かせない考え方である」と認識しなければ、世界から取り残されてしまうでしょう。

その一方で、「サーキュラーエコノミー」と密接に関わるSDGsの考え方が日本社会にも浸透してきており、企業も積極的に取り入れるようになってきています。しかし、大切なのは、企業が社会貢献活動としてSDGsにある項目を個別にピックアップして対応することではなく、「自社が世の中にどのような価値を提供する存在なのか」「社会にどんなインパクトを与えるか」といった本質的な議論をし、実践をしていくことです。

SDGsは共通のアジェンダではありますが、SDGsのどのゴールに軸足を置いて事業を展開するのかを決めるだけでは、その先行き詰まってしまいます。自分たちの掲げるビジョン対して向き合っていく視点や姿勢、マインドセットを身につけ、行動していくためにCIIDの考え方やツールは非常に有効だと思います。

ぜひこのCIID Winter Schoolで、多くの人に体感していただきたいと考えています。

コペンハーゲンで行われたサマースクールの授業の様子
コペンハーゲンで行われたサマースクールの授業の様子

「CIID Winter School」インフォメーション

松本人志が安倍首相との食事会で主張した「割り勘」は嘘だった! 東野が今頃「フジと向こうで折半」「我々は一銭も払ってない」

「桜を見る会」をめぐってみっともない言い訳をしているのは安倍首相だけではないらしい。この問題は、出席していた芸能人にとっても黒歴史化。ワイドショーや情報番組では、出席経験者はバツが悪いのか、出席したことのない芸能人も出席した者を表立って批判したくないのか、「出席した芸能人が...

令和初「年末ジャンボ宝くじ」 高額賞金に“買わない、という選択肢は ないやろう!“

令和初の「年末ジャンボ宝くじ」「年末ジャンボミニ」が11月20日、全国で発売された。
ジャンボ宝くじは1等・前後賞合わせて10億円、ジャンボミニは1等・前後賞合わせて5000万円の高額賞金で、10万円以上の当せん本数は、2つ合わせて約10万9000本と、チャンスが多いのが魅力。

高額当せんが多く出ることで知られる東京・中央区の西銀座チャンスセンターでは、宝くじ幸運の女神・近藤綾さんの発声で売り場窓口がオープン。早朝から列を作っていた多くの宝くじファンが、年末ジャンボを買い求めた。

同日、売り場前の特設ステージで行われた発売記念イベントには、ジャンボ宝くじCMキャラクターの笑福亭鶴瓶さんと佐藤健さん、新テレビCM「年末ショーで宝くじ」編で共演するタレントの西野七瀬さんが駆け付けた。

CMでは、舞台上の鶴瓶さんが「令和元年、最後にはきっといい事があると信じましょう。だから…」と観客に語り掛ける。客席の佐藤さんが「まさか…」とつぶやくと、背後から西野さんが登場し、宝くじ券で作られれた“令和”の文字を掲げる。
鶴瓶さんは「買わない、という選択肢はないやろう!」とキメぜりふ。同時に暗幕が開くと、そこにはベートーヴェン“第9”のメロディーで「10億10億~ 10億ラ~ララ~」と熱唱する合唱団が。合唱団には、俳優の片桐仁さんの顔も見える。豪快にタクトを振る鶴瓶さんの姿に、佐藤さんは「年末だな~」と感慨深げ。

鶴瓶さんは撮影について、「指揮者役が初めてで、どう演じたらいいか分からなかった。テスト撮影の代役の人に経験があったので習った」とエピソードを披露。
佐藤さんは「これまでは師匠と一緒だったが、初の別撮りだったので寂しかった。でも、同時撮影だったら、タクトを振る姿に笑ってしまい芝居にならなかったと思う」と会場を沸かせた。
西野さんは「いつも見ていたCMに出演できてうれしい。“令和”の額縁が予想外に重く、次の日に筋肉痛になった」と明かした。

「今年を表す一文字」を聞かれた佐藤さんは、私服のカラーコーディネートを考えるのが面倒で、ほぼ毎日黒い服を着続けたので「黒」。鶴瓶さんは、10年ぶりに映画の主役を務めるなど、再び何かをやる機会が多かったことから「再」と発表し「先日、知らない女性に“再ブレークしましたね”と声を掛けられた。このテレビCMはいいですよね」と笑みを見せた。西野さんは、乃木坂46を卒業して新しいことに挑戦し続けたので「新」だと話した。

ステージに10億円に見立てた山が登場すると、3人は圧倒的なボリュームに驚きの表情。「もし10億円を手に入れたら」の問いに、佐藤さんは「黒以外の服を買う」、西野さんは「当せん記念に、地元に碑を建てたい」、鶴瓶さんは「地価の高い銀座の真ん中に、日本建築の自宅を」とそれぞれの夢を語った。
両ジャンボの発売期間は12月21日までで、抽せん会は年末31日に東京オペラシティ コンサートホールで行われる。

公式サイト:
https://www.takarakuji-official.jp/special/nj2019/

社内の当たり前、ふつうはスルーですよね?

「会社の正解」を得るのが難しい時代の中、オリジナリティーを発揮する元気の良い会社があります。その秘訣(ひけつ)とは一体何でしょうか? 電通「カンパニーデザイン」チームがそれぞれの会社のキーパーソンに伺った話をご紹介する本連載コラム。1回目は、兵庫県の東田ドライのケースです。

ウェブ電通報「カンパニーデザイン」連載記事は、こちらから。
 
 

東田ドライ
「おせっかい」なクリーニングで、業績V字回復

宅配クリーニング「リナビス」を展開し、首都圏を中心に全国から注文が殺到する東田ドライ。その躍進の陰には、「おせっかい」という現場力を企業のオリジナリティーに据えた経営があった。

話し手:東田伸哉氏(東田ドライCEO 社長)
聞き手:後藤一臣氏(電通 第1統合ソリューション局)
 
東田ドライ 1961年創業。元々は兵庫県西脇市を拠点とする町のクリーニング屋さん。2014年からインターネットを使った宅配クリーニングサービス「リナビス」をスタート。
東田ドライ
1961年創業。元々は兵庫県西脇市を拠点とする町のクリーニング屋さん。2014年からインターネットを使った宅配クリーニングサービス「リナビス」をスタート。
「リビナス生産工場」内部の様子
「リビナス生産工場」内部の様子

高品質宅配のブルーオーシャンを開拓した「おばちゃんのおせっかい」

「単純にショックでした」。大学を卒業して家業を継いだ時、東田氏は初めて事業が赤字であることを知ったという。受注量を増やすために宅配サービスを始め、「安さ」「早さ」を訴求したウェブ広告を出稿したが、1年しても効果が表れなかった。そこでふと思い出したのが、母親の「おせっかい」だった。「寒い冬の夜に、取りに来るのを忘れたお客さまにわざわざ届けに行くんですよ」。そこから東田氏は「消費者がクリーニングに望んでいるものは『誰に頼みたいか』なのではないか」という発想に至り、職人のおばちゃんたちが勝手にやっていたボタン直しやシミ抜きなどの「無料のおせっかい」を、サービス品質の価値としてアピールした。すると、広告の反応率は3倍に跳ね上がったのだ。

ただいま、「おせっかい」作業中。
ただいま、「おせっかい」作業中。
作業が終わると、このような手紙が添えられる。一つ一つ
作業が終わると、このような手紙が一つ一つ添えられる。

現場が自分たちで考える余白をつくる経営術

「おせっかい」という価値を生み出す現場を、どのように東田氏が運営しているのか尋ねてみると、「ふわっとしたルールだけをつくるようにしている」とのこと。「端から端まで決まっているとそれしか生まれない」という考え方で、現場が自分で考える余白を残しているのだという。具体的には、期間における生産量とおせっかいサービスの実施を指示する程度で、八つある「無料のおせっかい」からどれを適用するかも職人自ら考えてもらっているそうだ。「技術のことは職人に任せて口を出さず、いつも現場をふらふらしています」と謙遜気味に語ったが、自分の目で現場を観察し、疑問に思ったことは素直に質問する東田氏の姿勢こそが、会社の業績と職場の良好な雰囲気につながっていると感じた。

東田ドライCEO 社長・東田伸哉氏(写真右)と電通 第1統合ソリューション局・後藤一臣氏(同左)。「東田氏は、クリーニングサービスを通して「日本人の思いやり」を世の中に再提示しているのかもしれないですね(後藤氏)」
東田ドライCEO 社長・東田伸哉氏(写真右)と電通 第1統合ソリューション局・後藤一臣氏(同左)。「東田氏は、クリーニングサービスを通して「日本人の思いやり」を世の中に再提示しているのかもしれないですね」(後藤氏)

編集部が見た「カンパニーデザイン術」#01

東田社長の印象を端的に言うと、マーケティングの本質を知っている人、ということだ。顕在的な事象に捉われることなく、潜在的なニーズを掘り下げる。奇抜なサービスを提供するのではなく、誰に、何を頼みたいのか、を徹底的に調べ尽くす。その結果、クリーニング店に求められているのは「自分では洗えないくらい大事なものを、信頼できる誰かに預ける」という期待にこそあるのだ、ということに気付く。

その期待に「おせっかい」というネーミングをすることで、お客さまの期待を、見える化する。社員のやる気を、喚起する。その様が、そのまま広報のソースとなる。広報のソースは、ポジティブなことばかりではない。卓越した技術を誇る現場のチカラをもってしても「できなかったこと」の説明を、きちんと行う。そうした姿勢が、オンリーワンの信頼につながっているのだと思う。

東田社長によれば、努力とは「やった結果、いい方向に向かう」こと。やった結果、疲れただけやな、というのはただ単に苦労しただけ、なのだという。その姿勢は広報や広告にも現れていて、「伝えた」ということと「伝わった」ということには、天地の開きがあるのだそう。「早い、安い、安心」など、どの店でも掲げているメッセージを、どれだけ演出したところで、今の時代、お客さまの心には響かない。その先にある「東田ドライならではの価値」を、とことん突き詰める。その姿勢にこそ、人の心を揺さぶるヒミツがあるのだと、改めて学ばされた。

「カンパニーデザイン」のプロジェクトサイトは、こちら