LIXIL パラリンピック聖火ランナー 募集開始

東京2020オリンピック・パラリンピックゴールドパートナーで、パラリンピック聖火リレー プレゼンティングパートナーのLIXILは11月27日、聖火ランナーの募集開始に当たり、東京都のティアラこうとうで記者発表を行った。
ランナーへの応募は、LIXILと競技が開催される4都県(静岡、千葉、埼玉県、東京都)から可能だが、同社が先行して募集を始めた(2020年2月29日まで)。

瀬戸欣哉会長は、ランナー募集キャンペーンのテーマは「おもいやりと、おもてなしの、光をひろげよう。」で、自薦、他薦を問わないと発表。自薦の場合は、“誰もが活躍できる未来に向けて、自身が取り組んでいるおもいやり・おもてなし”について、他薦については、“誰かのために頑張っている、夢や希望を与えてくれる存在について”のエピソードを添えてほしいとした。

また「当社は、多くの人が快適な住生活を送れることを目指している」と話し、同社がパラリンピック聖火リレートーチの製造において、東日本大震災の仮設住宅のアルミ建材を再利用して素材を提供したことや、全国の小中学校で行っている「ユニバーサル・ラン スポーツ義足体験授業」、観光地の公共トイレを清掃する「おもてなし清掃」(ともに東京2020公認プログラム)などの活動に触れながら、たくさんの人にリレーに参加してほしい」と語った。

東京2020組織委の布村幸彦副事務総長は、パラリンピック聖火リレーでは、その場で初めて出会う3人が共に走る、などの新しい取り組みを説明し「より多くの応募に期待する。LIXILやランナー、沿道で応援する皆さんと力を合わせ、リレーを盛り上げていきたい」とあいさつした。

会場には、同社公式アンバサダーでプロテニスプレーヤーの錦織圭選手と、パラ陸上の佐藤圭太選手、パラバドミントンの長島理選手(同社社員)が駆けつけ、瀬戸会長と共にトークを展開した。3人のアスリートは、11月30日から放送のテレビCM「パラリンピック聖火リレー ランナー募集」編で共演している。

応募要件にちなみ、身近なヒーローを聞かれた瀬戸会長は「笑顔で支えてくれる妻」と答えた。錦織選手が「松岡修造さん」と明かすと、会場は笑いに包まれたが、錦織選手は、世界を目指すきっかけになった人であり、テニス界への貢献も大きいと、その理由を述べた。佐藤、長島両選手は“どんなヒーローでありたいか”と問われ、「障がいはネガティブに捉えられがちだが、私たちの努力や競技を見てポジティブな感情や変化を起こしてもらえたらうれしい」などと話した。

ステージでは、東京2020マスコットのソメイティと、同社オリンピック・パラリンピック推進本部長の佐竹葉子氏が加わり、本番のリレーに倣って3対3のトーチキス(聖火の受け渡し)を行った。
錦織選手は「キスが終わったら連絡先を交換して、3人で食事にでも行ってほしい」と提案し、会場を沸かせた。

公式募集サイト:
https://www.lixil.co.jp/feel_the_moment/paralympic_torch/runner/

 
関連記事:東京パラリンピック聖火リレー ランナーは約1000人で、11月27日から募集開始[2019.11.26]

 

AIはマーケティングを強くできるか

NewsPicks|AIはマーケティングを強くできるか/シバタアキラ氏(DataRobot)、有益伸一氏(電通デジタル)

電通グループが推進する「“人”基点」の統合マーケティングフレームワークPeople Driven Marketing(以下、PDM)は、人の「意識」と「行動」に着目したPDM2.0、さらに今秋スタートした3.0へと進化する。今回は、データとAIがマーケティングに取り組む企業と、その先の消費者にもたらす価値について、AI活用プラットフォームDataRobotのチーフデータサイエンティストであるシバタアキラ氏、電通デジタル デジタルイノベーショングループ マネージャーの有益伸一氏に語ってもらった。


マーケティングにおいて高まるAI・機械学習の重要性

── AIの活用が広がっていますが、マーケティング領域ではどのように有用なのでしょうか。

シバタ:AI、機械学習はデータが大量にある領域で何かを予測することに役立つテクノロジーです。マーケティングはそのひとつ。「人の行動を予測したい」というニーズがマーケティングにあるからです。

シバタアキラ氏(DataRobot)

DataRobot チーフデータサイエンティスト・物理学博士
人工知能を使ったデータ分析によるビジネス価値の創出が専門分野。 ボストンに本社を置き、世界のトップデータサイエンティストが多数在籍するDataRobot社(https://datarobot.com)の日本マーケット技術責任者。NYU研究員時代に加速器データの統計モデル構築を行い「神の素粒子」ヒッグスボゾン発見に貢献。 その後ボストン・コンサルティング・グループでコンサルタント。 ニュースキュレーションアプリ「カメリオ」を提供する白ヤギコーポレーションのFounder & CEOを経て現職。

有益:マーケティングや広告の領域で機械学習が利用されるようになったのは、2010年ごろからといわれています。デジタル広告の自動入札や一部のテキスト自動生成で使われ始めました。

その後、誰もがスマホを持つようになり、顧客とのコンタクトポイントが増えて集まるデータが飛躍的に増加しました。

人の行動パターンを認識し、広告配信や顧客管理を最適化するのに、とてもマーケターの人力だけでさばききれる状態ではなくなり、機械学習へのニーズが高まってきたのです。

有益伸一氏(電通デジタル)

電通デジタル データ/テクノロジー部門 デジタルイノベーショングループ マネージャー
M&A事業のデューデリジェンス業務や、データマーケティングを軸とした経営企画、事業推進、マーケティングコンサルティング業務を経て現職。 AI(機械学習)、MA、CRM、DMP、BI等の最新マーケティングテクノロジーを統合的に活用し、経営課題・事業課題を解決に導くことを強みとする。 また、国内外の最新デジタルツールの発掘・アライアンスも得意とし、デジタルマーケティング関連の講演・寄稿多数。

シバタ:マーケターがさばくには不可能なボリュームでも「機械学習が自動的に処理してくれるのなら」と、とにかくデータをできるだけ蓄積したくなるところです。

しかし実際には、データの容量が大きければ優れているとは限りません。

価値のあるデータとは

シバタ:人の行動という広い範囲に対して、1つの企業が捉えられるのはごく一部です。例えば、そのお店で買った情報は分かるけど、そのお客さんのお財布全部の中身がどうなっているかまでは分からない。

でも、マーケティングで本当に知りたいのは、財布の中身の内訳です。

有益:その通りですね。財布に1万円が入っていて、そのうちお店で使ってくれたのは1000円だけで、残りの9000円は別の店で使ったとしましょう。1000円だけでその人が1万円をどんなことに使っているか、といった興味の全体像を見るのは難しい。

マーケティング的な観点でいくと、それは間違った解釈につながる可能性があるということですね。

シバタ:分かりやすい表現ですね。

全体像を捉えるためには、自分たちで持つ「1stパーティー」のデータに加えて、ほかの企業が持っている「3rdパーティー」データを入手することで補完しようと考えます。

── 「1stパーティー」と「3rdパーティー」データをもう少し具体的に説明してください。

有益:例えばあるクレジットカード会社が、最終的にカードを何度も使ってくれる顧客を獲得したいと仮定しましょう。

ところがそのカード会社が持っているデータは利用履歴だけだったとします。それ自体は価値ある「1stパーティー」データですが、新規顧客の獲得に役立つでしょうか。

新規獲得のためにデジタル広告を配信するタイミングでは、広告の受け手がどのようにカードを利用しているかというデータはありません。

つまり1stパーティーデータだけでは、カードを何度も使ってくれそうな新規顧客を予測して広告配信することは簡単ではありません。

ですが、3rdパーティーデータと1stパーティーデータとが連携し利用履歴と興味関心データがひも付いたとします。そうするとAI(機械学習)が「カードを何度も使ってくれそうな新規顧客」を「興味関心のパターン」に基づいて予測し、そうしたターゲットを狙った広告配信が可能になるわけです。

もちろんこれはしっかりとカード会員からデータ利用に関する同意を受けているのが大前提です。

[3rdパーティーデータ]×[1stパーティーデータ][データ加工]>>[機械学習]>>[高LTVユーザー予測モデル]
シバタ:未来が予測できるということですよね、端的にいうと。もちろんその人が100%買うかどうか分からないものの、「メールを送る」「電話する」といった介入によって「買う」というアクションの確率を高められるわけですが、その精度を上げられる、と。

有益:そういうことですね。電通デジタルが持つ3rdパーティーデータ「People Driven DMP」と接続することで、精度を上げることができます。

LTVを最大化するデュアルファネル視点

シバタ:多くの企業は新規顧客の獲得重視で、獲得のためにいろいろなマーケティング施策に資金を投じる傾向があります。

でも今、さまざまな業態で、利益を1度だけあげるのではなく継続的にあげるビジネスに変わりつつあります。トラディショナルな組織ほど、この変化への対応に苦労している印象です。

有益:今までは新規顧客獲得を目指せばよかったマーケティング部門が、営業、製品開発やサポート部門も含めた融合に苦労しているわけですよね。

もともとマーケティングと営業は意思の疎通が難しいケースが散見されます。双方が違うKPIを追っていたりするからです。マーケティング部門はCPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)、営業部門は売り上げを追っている。

マーケティング部門が低いCPAでたくさんのリードを獲得した。ところが、実は質の良くないリードばかりで売り上げにはつながらず、営業部門は困ってしまうといったケースなどですね。

複合的にデータを活用しようとすると、今まで別々に動いていた組織の融合が不可欠。BtoBであれBtoCであれ、中長期的にその顧客がどのくらいの価値となるかの指標「LTV(=Life Time Value)」を伸ばすことを部門横断のミッションにすべきなのです。

そうすれば、LTVに関する予測モデルを機械学習で作成し、マーケティング部署はそのモデルを使って「高LTV顧客の予測」や「高LTV~低LTV顧客のアクションや属性の違いから打ち手を探索する」などといったことが可能になります。

つまり、新規顧客獲得から既存顧客管理までを統合的にに考えられる「デュアルファネル」の視点が重要なのです。

デュアルファネルTMソリューション
 
シバタ:フリーミアム(基本のサービス・製品は無料で提供し、さらに高度な機能などを導入する際に課金する仕組みのビジネス)のようなモデルはもっと分かりやすいかもしれません。

最初は無料や安価で始められて、だんだんたくさん使ってもらう。今いろんなものがサービス化しているので、顧客のエンゲージメントを高める後半を重要視する流れが起こっていますね。

DataRobotでも、このほど「AI サクセスプログラム」の提供を始めました。ライセンスを売ることに変わりないのですが、機械学習やAIを実際に使えるようにプランニングなどをサポートするのです。

先ほどのカード会社の例であれば「いい新規顧客を獲得できたか」「獲得した顧客のLTVを上げられたのか」といった顧客企業が重要視している指標を達成すれば、おのずと継続利用してもらえて利用範囲も広がり、DataRobotの売り上げが連動することになります。

AIによるセレンディピティ

シバタ:データを使って消費者のことを理解して、行動も予測できるというと、「気持ち悪い」という反応が返ってくるのは、おそらく生理的なことでしょう。

だからWin-Winの関係をどうつくるかがすごく重要です。

例えば、情報があふれる中で、自分が欲しいと思えるものを短時間で見つけられるとうれしいですよね。企業にとってもそれは購買につながる。消費者と企業のベクトルをできるだけそろえていくことが重要で、それこそがAIの提供できる価値です。

あるいは、意識的に探していたものでなくても、思ってもみなかったようなものをリコメンドされると、新鮮な驚きや出会いがある。これはもう、AIによる新しいセレンディピティ(偶発的な出会い)と言えるのではないでしょうか。

シバタアキラ氏(DataRobot)

マーケティングは理論から離れているというか、結構「人間的」な不確実な側面が強い。本来なら新しい技術が応用されるまですごく時間がかかる分野です。人間の行動を予測するとなると、だからこそ、単なる統計ではなく機械学習が役立ちます。

人の興味がどんどん細分化され、それぞれの好みもある。それに対して、実際に好みを満たせるだけモノがあふれている。たとえば、リュックを例にしても、ビジネス用なのかカジュアルなのか、ハンドルの位置は上なのか横なのか。

その結果、ほしい人といいモノをどうつなげられるかという問題が顕在化しているわけです。すると、アルゴリズムのおかげで出合えたという恩恵の幅が大きくなっているはず。

どこまでデータを使うかという「飛び越えてはいけない線」は引くべきですが、セレンディピティを提供できれば、データ活用の価値は認めてもらえるものだと思います。

AIの民主化が始まった

── 有益さんは、5年以上前からマーケティングへのAI(機械学習)活用を検討されていたとか。どんな変化を感じていますか。

有益:AIや機械学習の活用が進んできたのは、データ量がバラエティも含めて増えただけでなく、DataRobotのようなプラットフォームが出てきて、多くのことを自動化できるようになったのがブレイクスルーだと感じています。

5年前なら、例えば機械学習をマーケティングに活用しようとしたら、すごく大変だったんですよね。それがDataRobotが日本市場に出現した2017年以降、徐々に「マーケティングの領域でももっとカジュアルに機械学習が利活用できそうだね」という会話をマーケターが始めたような感触があります。まさにDataRobotの掲げる、「AIの民主化」が始まりつつあることを感じさせます。

現在は、DataRobotに投入するためのデータセットをどのように集めどう加工するかや、作成した予測モデルから得られた示唆を、実際にデジタル広告・マーケティングオートメーションやウェブサイトでどう活用するか、さらにBtoB営業のターゲティング精度向上やレコメンデーションの最適化などさまざまな領域が課題として挙がっています。

電通デジタルもDataRobotも、この間を取り持つためのコンサルテーションをしているところです。

(左から)シバタアキラ氏(DataRobot)、有益伸一氏(電通デジタル)
 
シバタ:ウェブサイトは、紙のカタログとは違って動的なコンテンツをつくれるメディアです。機械学習は、何を見せるとより満足できるコンテンツになっていくかを、どんどん先読みしていくことができるので、親和性がある技術です。

これは以前から夢のように語られていたけれど、実現できる技術力や発想を持っている事業会社は多くありません。それに対してDataRobotも、技術を提供するのが主になっています。

リアルに具体化していくには、顧客企業との関係やデータに対する深い理解で取り持つ役割が必要で、そこが電通デジタルの強いところでしょう。

AIで売れるプラモデルは作れるか?

有益:DataRobotのようなプラットフォームが進化していくと、自動化できることが増えていきます。過去のデータをもとにした広告の出し分けのような仕事は減っていくでしょうね。

それによって、セレンディピティに近い部分をいかに発想するかといったクリエイティブな領域に、マーケターの時間が割かれるようになるべきです。

シバタ:そういうコンテンツに依存するところこそ、人間にしかできない。最終的にコンテンツ力は、AIは人間にはかなわないところがあります。

有益:以前「AIで売れるプラモデルのデザインを作り出せないか?」という相談を受けたことがあります。AIが出してくれる過去のパターンに基づく示唆をアイデアの源泉にしたり、自分が持っている感覚とぶつけて新しいアイデアを生み出すのはとてもすてきです。

AIをうまく活用しながら、よりクリエイティブなマーケティングを提供していきたいと思っています。

(左から)シバタアキラ氏(DataRobot)、有益伸一氏(電通デジタル)
(制作:NewsPicks Brand Design 構成:加藤学宏 編集:久川桃子 撮影:北山宏一 デザイン:岩城ユリエ)

ブロックチェーンはメディアのマネタイズにいかに寄与するのか

btokyoカンファレンス

日本最大級のブロックチェーンカンファレンス「b.tokyo2019」が10月2、3の両日、ホテル雅叙園東京で開催された。

ブロックチェーンのような“分散型台帳技術”は、メディアビジネスにどんな影響を与え、どんなマネタイズを生むのだろうか。

3日に行われた「ブロックチェーンから始まる『メディアのマネタイズ革命』」と題したセッションでは、渡辺大和氏(電通イノベーションイニシアティブ・プロデューサー)、松原裕樹氏(Link-U代表取締役)、古田大輔氏(ジャーナリスト/メディアコラボ代表)、モデレーターとして久保田大海氏(CoinDesk Japanコンテンツプロデューサー)が登壇。

ブロックチェーン技術を応用したメディアの新たな収益化手段について、それぞれの立場から熱いディスカッションを繰り広げた。

ニュースメディアが窮地に追い込まれている理由とは

今世界中で、「インターネット時代にニュースメディアはどう生き残るのか」が議論されている。ニュースメディアは窮地に追い込まれているのだ。その要因は二つある。

一つは「信頼性の揺らぎ」。多くのニュースが発信される中でニュースメディアの信頼性は相対化され、むしろ攻撃の対象となってしまっている。

そして、もう一つが「収益性を維持することの難しさ」だ。ニュースメディアのマネタイズの厳しい現状について、朝日新聞記者とBuzzFeed Japan編集長の経歴を持つ古田氏は次のように語った。

「新聞業界全体の収入は年々縮小の一途で、そのうちデジタルでの収入はたったの1.2%(2018年)です。破竹の勢いで伸びているインターネット広告の収入は、グーグルやフェイスブックなど一部のプラットフォームが全体の7割を占め、各メディアには残りのお金しか落ちてきません。加えてメディアの競争相手の数は、20年前と比べて1万倍になりました。メディア全体のパイは増えているものの、分け合う相手が莫大に増えたため、それではお金になるわけがないという状況なのです」(古田氏)

メディアコラボ古田氏
メディアコラボ代表の古田大輔氏

そんな中、ニュースメディア界隈では、「信頼性と収益性の課題を解決する上で、ブロックチェーンは一つの鍵になるかもしれない」と言われているのだという。

参考になりそうなのが、漫画をはじめとするコンテンツビジネスだ。日本の漫画は海外でも高い人気を誇る。そして国内における漫画のデジタル市場は年々拡大傾向にあるため、ニュースよりもマネタイズは進んでいるように見える。

しかし、漫画アプリをはじめとしたウェブサービスや動画配信などを行うLink-Uの松原氏は、「今の漫画ビジネスで最も問題なのは、海外配信におけるライセンス管理」だと指摘する。

「例えば日本で配信されている動画に海外からアクセスすると、視聴できないことがよくあります。漫画でも同様に、日本語のコンテンツは基本的に日本でしか閲覧できず、権利者が自分たちの権利を守ろうとすることが、一方で海外展開を阻む要因になっています。でも、時間や国境の概念を超えてライセンスを管理できるブロックチェーンを使うことで、世界中どのエリアに配信しても、著作権を保持する企業や団体にお金が落ちる形にできるんじゃないかと思っています」(松原氏)

Link-U代表取締役の松原裕樹氏
Link-U代表取締役の松原裕樹氏

また、漫画はアニメ化された際に製作委員会が発足し、ライセンスが多岐に分散されることも特徴だ。そのため、海外企業が日本のアニメを商用利用したい場合、どこにコンタクトを取ればよいのか分からないという事態が起こっている。つまり、アニメも含め、海外向けにライセンス管理の仕組みを確立するメリットは大きいといえる。

「ブロックチェーン上でライセンスの管理がきちんとできれば、漫画やアニメに限らず、日本のコンテンツにおけるマネタイズの可能性は広がっていくでしょう」と松原氏は未来像を語った。

トレーサビリティーシステムの構築が、メディアや社会にプラスとなる

ニュースメディアの世界では今、トレーサビリティー(追跡可能性)の重要性が叫ばれている。ネット上で日常的に横行している報道写真の偽造や改ざんなどにより、ニュースへの信頼性が揺らいでいることへの危機感が発端だ。

今年7月、ニューヨーク・タイムズが「ニュース・プロビナンス・プロジェクト」を発表した。これは、メディアが発行した写真などの素材について、撮影日時や場所、撮影者、編集・掲載された方法などのメタデータをブロックチェーン上に記録し、オリジナルの写真を可視化するプロジェクト。

例え写真が改ざんされてもオリジナルの写真を簡単にトレース(追跡)できるので、すぐに不正を突き止められる。「トレースするだけなら従来の技術でも可能だが、なぜわざわざブロックチェーンなのか。そこは信頼性の話に戻ってきます」と古田氏。さらにこう続ける。

「今、アメリカ、そして日本でも社会の分断が起きていますが、ニューヨーク・タイムズを信用していない人は、ニューヨーク・タイムズが作ったプラットフォームを信用することができません。だからこそ、ブロックチェーンを使って非中央集権的なトレーサビリティーを確保することで、信頼性の担保が生まれるのではないでしょうか」(古田氏)

さらに「信頼性が高まるということは、長期的に見ると必ず収益性に結びつく」と強調。「メディアビジネスはすべて信頼に紐付いている。中長期的に見ると、トレーサビリティーの存在はメディアにも社会にもプラスになります」と希望を込めた。

CoinDesk Japanコンテンツプロデューサーの久保田大海氏
CoinDesk Japanコンテンツプロデューサーの久保田大海氏

デジタル時代における記事のコピペ問題をどう捉えるか

100ページ単位のパッケージで販売される漫画に比べて、ニュースコンテンツのマネタイズはやはり難しい。というのも、今や記者が苦心して取材・作成したニュース記事の一行だけをコピペして、感想を付け加えれば一つのコンテンツになってしまう時代だからだ。それが元の記事よりも多くのPVを稼ぎ、お金が流れてしまうことも往々にしてある。

こうしたコンテンツ無断利用に対する対抗策にも、ブロックチェーンが使えるのではないかという議論がなされている。

「これは夢物語のような話ですが、アメリカで、メディア界のフューチャリストであるエイミー・ウェブが、ブロックチェーン技術を使うことで、すべてのコンテンツのすべてのセンテンスにトレーサビリティーがつき、1次情報を取ってきた人にお金が流れ込むという、ニュースの明るい未来を提示しました。今はオリジナルの記事とそれを元に書かれた2次的な記事は、同じ1記事としてしか評価されていません。そこでトレーサビリティーを元にした傾斜配分でお金が流れる仕組みをつくり、オリジナルの記事を出した人に配分される割合を大きくすれば、1次情報を努力して取ってくる人がもっと評価される社会になるはずです」(古田氏)

こうした未来像を受けて、国内外のブロックチェーン技術の応用に詳しい電通イノベーションイニシアティブ・プロデューサーの渡辺氏は、「中国のBaidu出身者が創業したPrimasというベンチャー企業は、メディアの社内システムとして、プラットフォーム上でウェブ上にある記事を自動クロールして80%以上類似したコンテンツを発見し、それが無断転載の場合、裁判所に自動的にデジタルの内容証明が送られ、訴えることができるというブロックチェーンベースの仕組みをすでに提供しています」と発言。コンテンツ無断利用への対策において、ブロックチェーンの社会実装が進みつつあるとした。

電通イノベーションイニシアティブ・プロデューサーの渡辺大和氏
電通イノベーションイニシアティブ・プロデューサーの渡辺大和氏

引用は、要件さえ満たしていれば無料・無断でできると法律上定められている。しかし、コピペが簡単にでき、引用した人間の方がラクをして稼げるようになった今の時代にも、その法律は適応可能なのだろうか。古田氏は「トレーサビリティーシステムをつくり、例えば“引用したら一律100円”という方が現実的な社会になっていくのかもしれません」との見解を示した。

世界と戦うために、業界全体でブロックチェーンを使った革新技術の構築を

セッションの終盤は、業界全体のパイを広げるために「ブロックチェーンを使っていかに新しい価値を生み出すか」が議論の中心になった。

松原氏は漫画コンテンツについて、「ブロックチェーンを使って、プレーヤーを横断したサービスを作り、すでに活躍しているプロだけでなく、アマチュアやプロを目指している人の作品も配信・販売ができるようになれば、コンテンツ市場を広げる後押しはできるのではないでしょうか」と具体案を提示した。

古田氏は「インターネット広告の世界だけでなく、インターネット課金の世界もパイは年々広がっています」と前置きした上で、「問題は圧倒的にお金の配分」と改めて強調。

「数個の巨大プラットフォームが7割の配分を得て、何万ものコンテンツ作成事業者が残り3割を分け合うという今の仕組みでは、コンテンツ作成側は生き残れません。その配分を変えるための核になり得る技術の一つが、ブロックチェーンだと思います」と語気を強めた。利益配分を変え、真っ当なコンテンツ作成側にお金を回すことができれば市場が拡大する―。そんなポジティブな方向性が見えてきた。

渡辺氏は、「インターネット広告の枠だけがどんどん増えていっても、スクリーンの数が増えなければその価値は下がっていきます。その場合は価格帯が下がっていくか、アドフラウドが起きるかのいずれかです。そうしたアドフラウドを防ぐためにブロックチェーンを活用するという取り組みは、特にクライアント主導で行われている例があります。今後クライアント側がメディアやエージェンシーに対してこのブロックチェーンベースのツールを使ってくださいと指定し、インターネットメディア側はその条件を飲むという構図になっていくシナリオも考えられます」と述べた。ブロックチェーンによって、データのごまかしがきかなくなり、アドフラウドを防止することで信頼性が担保できるという。

コンテンツ業界の今後について、渡辺氏は「日本のコンテンツ産業は、中国やアメリカが簡単には入ってこられないような、独自の優位性を築いてきました。今こそコンテンツ・メディアという領域において、日本が世界に先んじて、ブロックチェーンを使った“価値のネットワーク”のインフラ整備をコンソーシアム型でスタートし、業界全体が協調しながら新市場を作っていくことが重要ではないでしょうか」と呼びかけた。

さらに渡辺氏は、「ブロックチェーンに関しては、スマートコントラクト(契約の自動化)も重要です。例えば、映像の二次利用の現場では使用許可を得るために、書類に判子を押してもらうだけでも時間がかかっています。一方で確かに判子を押すこと自体は経済的な価値があり、情報だけでなく判子を押す人と押される人の間の信頼の確認が発生しているという側面があります。その価値や信頼の側面を生かしたままスマートコントラクト上に乗せることで、ただの情報のやりとりではない、複層的なやりとりが会社間でこれまでよりもスピーディーに行えるようになります」と述べた。

松原氏は、「漫画は日本国内の市場が強かったために、海外へのアクセスが遅れてしまいました。世界の隅々にまでコンテンツを配信するためにも、業界のプレーヤーがコンソーシアム型で戦っていく必要はあると思います」と述べた。

メディアのデジタル化において、日本はこの20年で圧倒的に後れを取った一方、アメリカは急速な進化を遂げている。「日本も一気に革新的な技術を取り入れていくしかありません」と古田氏。「日本ほど安定的に民主主義を維持してきた国はアジアで実はそれほどなく、アジアの中で日本は核にならないといけない。業界全体で協力して新技術を取り入れ、東京から発信することが重要になってくるでしょう」と最後に展望を語った。

今回紹介したセッションの他にも、「b.tokyo」では、ブロックチェーンについて幅広い角度からさまざまな議論が交わされた。ブロックチェーンと仮想通貨の今を知るために、『ブロックチェーン白書2019』も参考にしたい。

ブロックチェーン白書2019
A4判・326頁、(冊子+PDF)180,000円+税、(PDFのみ)150,000円+税、(冊子のみ) 150,000円+税、N.Avenue発行、https://navenue.jp/white_paper/

AIはマーケティングを強くできるか

NewsPicks|AIはマーケティングを強くできるか/シバタアキラ氏(DataRobot)、有益伸一氏(電通デジタル)

電通グループが推進する「“人”基点」の統合マーケティングフレームワークPeople Driven Marketing(以下、PDM)は、人の「意識」と「行動」に着目したPDM2.0、さらに今秋スタートした3.0へと進化する。今回は、データとAIがマーケティングに取り組む企業と、その先の消費者にもたらす価値について、AI活用プラットフォームDataRobotのチーフデータサイエンティストであるシバタアキラ氏、電通デジタル デジタルイノベーショングループ マネージャーの有益伸一氏に語ってもらった。


マーケティングにおいて高まるAI・機械学習の重要性

── AIの活用が広がっていますが、マーケティング領域ではどのように有用なのでしょうか。

シバタ:AI、機械学習はデータが大量にある領域で何かを予測することに役立つテクノロジーです。マーケティングはそのひとつ。「人の行動を予測したい」というニーズがマーケティングにあるからです。

シバタアキラ氏(DataRobot)

DataRobot チーフデータサイエンティスト・物理学博士
人工知能を使ったデータ分析によるビジネス価値の創出が専門分野。 ボストンに本社を置き、世界のトップデータサイエンティストが多数在籍するDataRobot社(https://datarobot.com)の日本マーケット技術責任者。NYU研究員時代に加速器データの統計モデル構築を行い「神の素粒子」ヒッグスボゾン発見に貢献。 その後ボストン・コンサルティング・グループでコンサルタント。 ニュースキュレーションアプリ「カメリオ」を提供する白ヤギコーポレーションのFounder & CEOを経て現職。

有益:マーケティングや広告の領域で機械学習が利用されるようになったのは、2010年ごろからといわれています。デジタル広告の自動入札や一部のテキスト自動生成で使われ始めました。

その後、誰もがスマホを持つようになり、顧客とのコンタクトポイントが増えて集まるデータが飛躍的に増加しました。

人の行動パターンを認識し、広告配信や顧客管理を最適化するのに、とてもマーケターの人力だけでさばききれる状態ではなくなり、機械学習へのニーズが高まってきたのです。

有益伸一氏(電通デジタル)

電通デジタル データ/テクノロジー部門 デジタルイノベーショングループ マネージャー
M&A事業のデューデリジェンス業務や、データマーケティングを軸とした経営企画、事業推進、マーケティングコンサルティング業務を経て現職。 AI(機械学習)、MA、CRM、DMP、BI等の最新マーケティングテクノロジーを統合的に活用し、経営課題・事業課題を解決に導くことを強みとする。 また、国内外の最新デジタルツールの発掘・アライアンスも得意とし、デジタルマーケティング関連の講演・寄稿多数。

シバタ:マーケターがさばくには不可能なボリュームでも「機械学習が自動的に処理してくれるのなら」と、とにかくデータをできるだけ蓄積したくなるところです。

しかし実際には、データの容量が大きければ優れているとは限りません。

価値のあるデータとは

シバタ:人の行動という広い範囲に対して、1つの企業が捉えられるのはごく一部です。例えば、そのお店で買った情報は分かるけど、そのお客さんのお財布全部の中身がどうなっているかまでは分からない。

でも、マーケティングで本当に知りたいのは、財布の中身の内訳です。

有益:その通りですね。財布に1万円が入っていて、そのうちお店で使ってくれたのは1000円だけで、残りの9000円は別の店で使ったとしましょう。1000円だけでその人が1万円をどんなことに使っているか、といった興味の全体像を見るのは難しい。

マーケティング的な観点でいくと、それは間違った解釈につながる可能性があるということですね。

シバタ:分かりやすい表現ですね。

全体像を捉えるためには、自分たちで持つ「1stパーティー」のデータに加えて、ほかの企業が持っている「3rdパーティー」データを入手することで補完しようと考えます。

── 「1stパーティー」と「3rdパーティー」データをもう少し具体的に説明してください。

有益:例えばあるクレジットカード会社が、最終的にカードを何度も使ってくれる顧客を獲得したいと仮定しましょう。

ところがそのカード会社が持っているデータは利用履歴だけだったとします。それ自体は価値ある「1stパーティー」データですが、新規顧客の獲得に役立つでしょうか。

新規獲得のためにデジタル広告を配信するタイミングでは、広告の受け手がどのようにカードを利用しているかというデータはありません。

つまり1stパーティーデータだけでは、カードを何度も使ってくれそうな新規顧客を予測して広告配信することは簡単ではありません。

ですが、3rdパーティーデータと1stパーティーデータとが連携し利用履歴と興味関心データがひも付いたとします。そうするとAI(機械学習)が「カードを何度も使ってくれそうな新規顧客」を「興味関心のパターン」に基づいて予測し、そうしたターゲットを狙った広告配信が可能になるわけです。

もちろんこれはしっかりとカード会員からデータ利用に関する同意を受けているのが大前提です。

[3rdパーティーデータ]×[1stパーティーデータ][データ加工]>>[機械学習]>>[高LTVユーザー予測モデル]
シバタ:未来が予測できるということですよね、端的にいうと。もちろんその人が100%買うかどうか分からないものの、「メールを送る」「電話する」といった介入によって「買う」というアクションの確率を高められるわけですが、その精度を上げられる、と。

有益:そういうことですね。電通デジタルが持つ3rdパーティーデータ「People Driven DMP」と接続することで、精度を上げることができます。

LTVを最大化するデュアルファネル視点

シバタ:多くの企業は新規顧客の獲得重視で、獲得のためにいろいろなマーケティング施策に資金を投じる傾向があります。

でも今、さまざまな業態で、利益を1度だけあげるのではなく継続的にあげるビジネスに変わりつつあります。トラディショナルな組織ほど、この変化への対応に苦労している印象です。

有益:今までは新規顧客獲得を目指せばよかったマーケティング部門が、営業、製品開発やサポート部門も含めた融合に苦労しているわけですよね。

もともとマーケティングと営業は意思の疎通が難しいケースが散見されます。双方が違うKPIを追っていたりするからです。マーケティング部門はCPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)、営業部門は売り上げを追っている。

マーケティング部門が低いCPAでたくさんのリードを獲得した。ところが、実は質の良くないリードばかりで売り上げにはつながらず、営業部門は困ってしまうといったケースなどですね。

複合的にデータを活用しようとすると、今まで別々に動いていた組織の融合が不可欠。BtoBであれBtoCであれ、中長期的にその顧客がどのくらいの価値となるかの指標「LTV(=Life Time Value)」を伸ばすことを部門横断のミッションにすべきなのです。

そうすれば、LTVに関する予測モデルを機械学習で作成し、マーケティング部署はそのモデルを使って「高LTV顧客の予測」や「高LTV~低LTV顧客のアクションや属性の違いから打ち手を探索する」などといったことが可能になります。

つまり、新規顧客獲得から既存顧客管理までを統合的にに考えられる「デュアルファネル」の視点が重要なのです。

デュアルファネルTMソリューション
 
シバタ:フリーミアム(基本のサービス・製品は無料で提供し、さらに高度な機能などを導入する際に課金する仕組みのビジネス)のようなモデルはもっと分かりやすいかもしれません。

最初は無料や安価で始められて、だんだんたくさん使ってもらう。今いろんなものがサービス化しているので、顧客のエンゲージメントを高める後半を重要視する流れが起こっていますね。

DataRobotでも、このほど「AI サクセスプログラム」の提供を始めました。ライセンスを売ることに変わりないのですが、機械学習やAIを実際に使えるようにプランニングなどをサポートするのです。

先ほどのカード会社の例であれば「いい新規顧客を獲得できたか」「獲得した顧客のLTVを上げられたのか」といった顧客企業が重要視している指標を達成すれば、おのずと継続利用してもらえて利用範囲も広がり、DataRobotの売り上げが連動することになります。

AIによるセレンディピティ

シバタ:データを使って消費者のことを理解して、行動も予測できるというと、「気持ち悪い」という反応が返ってくるのは、おそらく生理的なことでしょう。

だからWin-Winの関係をどうつくるかがすごく重要です。

例えば、情報があふれる中で、自分が欲しいと思えるものを短時間で見つけられるとうれしいですよね。企業にとってもそれは購買につながる。消費者と企業のベクトルをできるだけそろえていくことが重要で、それこそがAIの提供できる価値です。

あるいは、意識的に探していたものでなくても、思ってもみなかったようなものをリコメンドされると、新鮮な驚きや出会いがある。これはもう、AIによる新しいセレンディピティ(偶発的な出会い)と言えるのではないでしょうか。

シバタアキラ氏(DataRobot)

マーケティングは理論から離れているというか、結構「人間的」な不確実な側面が強い。本来なら新しい技術が応用されるまですごく時間がかかる分野です。人間の行動を予測するとなると、だからこそ、単なる統計ではなく機械学習が役立ちます。

人の興味がどんどん細分化され、それぞれの好みもある。それに対して、実際に好みを満たせるだけモノがあふれている。たとえば、リュックを例にしても、ビジネス用なのかカジュアルなのか、ハンドルの位置は上なのか横なのか。

その結果、ほしい人といいモノをどうつなげられるかという問題が顕在化しているわけです。すると、アルゴリズムのおかげで出合えたという恩恵の幅が大きくなっているはず。

どこまでデータを使うかという「飛び越えてはいけない線」は引くべきですが、セレンディピティを提供できれば、データ活用の価値は認めてもらえるものだと思います。

AIの民主化が始まった

── 有益さんは、5年以上前からマーケティングへのAI(機械学習)活用を検討されていたとか。どんな変化を感じていますか。

有益:AIや機械学習の活用が進んできたのは、データ量がバラエティも含めて増えただけでなく、DataRobotのようなプラットフォームが出てきて、多くのことを自動化できるようになったのがブレイクスルーだと感じています。

5年前なら、例えば機械学習をマーケティングに活用しようとしたら、すごく大変だったんですよね。それがDataRobotが日本市場に出現した2017年以降、徐々に「マーケティングの領域でももっとカジュアルに機械学習が利活用できそうだね」という会話をマーケターが始めたような感触があります。まさにDataRobotの掲げる、「AIの民主化」が始まりつつあることを感じさせます。

現在は、DataRobotに投入するためのデータセットをどのように集めどう加工するかや、作成した予測モデルから得られた示唆を、実際にデジタル広告・マーケティングオートメーションやウェブサイトでどう活用するか、さらにBtoB営業のターゲティング精度向上やレコメンデーションの最適化などさまざまな領域が課題として挙がっています。

電通デジタルもDataRobotも、この間を取り持つためのコンサルテーションをしているところです。

(左から)シバタアキラ氏(DataRobot)、有益伸一氏(電通デジタル)
 
シバタ:ウェブサイトは、紙のカタログとは違って動的なコンテンツをつくれるメディアです。機械学習は、何を見せるとより満足できるコンテンツになっていくかを、どんどん先読みしていくことができるので、親和性がある技術です。

これは以前から夢のように語られていたけれど、実現できる技術力や発想を持っている事業会社は多くありません。それに対してDataRobotも、技術を提供するのが主になっています。

リアルに具体化していくには、顧客企業との関係やデータに対する深い理解で取り持つ役割が必要で、そこが電通デジタルの強いところでしょう。

AIで売れるプラモデルは作れるか?

有益:DataRobotのようなプラットフォームが進化していくと、自動化できることが増えていきます。過去のデータをもとにした広告の出し分けのような仕事は減っていくでしょうね。

それによって、セレンディピティに近い部分をいかに発想するかといったクリエイティブな領域に、マーケターの時間が割かれるようになるべきです。

シバタ:そういうコンテンツに依存するところこそ、人間にしかできない。最終的にコンテンツ力は、AIは人間にはかなわないところがあります。

有益:以前「AIで売れるプラモデルのデザインを作り出せないか?」という相談を受けたことがあります。AIが出してくれる過去のパターンに基づく示唆をアイデアの源泉にしたり、自分が持っている感覚とぶつけて新しいアイデアを生み出すのはとてもすてきです。

AIをうまく活用しながら、よりクリエイティブなマーケティングを提供していきたいと思っています。

(左から)シバタアキラ氏(DataRobot)、有益伸一氏(電通デジタル)
(制作:NewsPicks Brand Design 構成:加藤学宏 編集:久川桃子 撮影:北山宏一 デザイン:岩城ユリエ)

「桜を見る会」ジャパンライフ招待問題にマスコミが消極的なのはなぜか 田崎史郎、NHK島田敏男はじめ大手紙元政治部幹部が…

 安倍首相「桜を見る会」私物化をめぐり、悪徳マルチ「ジャパンライフ」山口隆祥会長が招待されていた問題。一昨日25日、共産党・田村智子参院議員の国会で追及したことにより一気に火がついたのだが、マスコミの出足が遅いとネットで話題になっている。  たとえば、25日の『news2...

眠らせた五感を研ぎ澄ます ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」がオープン

暗闇での体験を通して、人と人との関わりや、対話の大切さ、五感の豊かさを感じるソーシャルエンターテインメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」(主催=ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ)が日本での活動20年目を迎え、11月22日にDID初となる、大人のための体験施設「内なる美、ととのう暗闇。」を東京・新宿区の三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミアにオープンした。当日は、先行体験会も兼ねたメディア向け発表会が開催され、多くのメディアが取材に訪れた。

テーマは、施設名と同じ「内なる美、ととのう暗闇。」。神宮外苑ならではの自然や日本文化を感じながら、禅の思想をベースにした純度100%の暗闇を体験できる、日本だけのオリジナルプログラムを提供する。

発表会では、DIDの発案者であり哲学博士のアンドレアス・ハイネッケ氏や、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事の志村季世恵氏の他、プログラムを監修した身体感覚教育研究者の松田恵美子氏、曹洞宗長光寺住職の柿沼忍昭氏がDIDへの思いを語った。
日本でのDIDは過去20年にわたり、“暗闇の中で自身の感性を磨きそして多様性を理解しながら、新しい自分と出会えるコンテンツ作り”を続けてきたが、今回は異なるベクトルを持ったコンテンツを目指したという。志村氏は、「この神宮外苑に残っている美しい自然、水や光などを感じられるような内容にした」「人と対話する前に内なる自分と対話し、何を感じ、何を考え、何を伝えたいかに気付き、今の自分を大切に考えるようになった上で、新しい世界に向き合ってほしい」と熱く語った。

柿沼氏は、“型破り”と言われた自身の姿勢を引き合いに出しながら「感覚的で、禅そのもののメソッドを使った、エンターテインメントとして楽しめる空間」「禅でもマインドフルネスでもなく、自然なままでいることは、素晴らしいんだ、ということを学べる場所だと思う」と話した。
松田氏は「DIDは、感覚を研ぎ澄ますことができる暗闇の体験で、眠っている五感を呼び戻してくれる」「日本ならではの自然観を感じさせる空間になった」と述べた。

ハイネッケ氏は、「日本での活動が、シリコンバレーのように、世界への“触媒”になる」と期待を見せ、時間や五感などから解き放たれる“情報デトックス”という独自のワードを使いながら、その重要性を示した。また、今後の目標として、この活動がますます「自分の思想や考え方を評価する・鍛える場」「本当の自分と出会う可能性のある場」になり、「マインドフルネスやウェルビーイングとはどういうことなのか、を伝えていきたい」と意気込みを語った。

同施設は、“大人のための”と冠している通り、これまでのDIDとは一線を画す、ラグジュアリーで大人向けの体験を提供している。
“内に秘めた美を磨きたい、心身の美と癒しを求めている”、そんな大人にぴったりな上質な時間を、ぜひ体験してみてはいかがだろうか?

【ダイアログ・イン・ザ・ダークとは】
1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケ氏の発案によって生まれたダイアログ・イン・ザ・ダークは、これまで世界50カ国以上で開催。併せて何千人もの視覚障害者のアテンド、ファシリテーターを雇用してきた。
日本では、99年の初開催以降、21万人以上の人々が体験している。東京・浅草橋会場での企業研修プログラムや大阪の「対話のある家」も開催中。

【ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」】
三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア2階
(東京都新宿区霞ヶ丘町11番3号)
https://did.dialogue.or.jp/totonou/

眠らせた五感を研ぎ澄ます ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」がオープン

暗闇での体験を通して、人と人との関わりや、対話の大切さ、五感の豊かさを感じるソーシャルエンターテインメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」(主催=ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ)が日本での活動20年目を迎え、11月22日にDID初となる、大人のための体験施設「内なる美、ととのう暗闇。」を東京・新宿区の三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミアにオープンした。当日は、先行体験会も兼ねたメディア向け発表会が開催され、多くのメディアが取材に訪れた。

テーマは、施設名と同じ「内なる美、ととのう暗闇。」。神宮外苑ならではの自然や日本文化を感じながら、禅の思想をベースにした純度100%の暗闇を体験できる、日本だけのオリジナルプログラムを提供する。

発表会では、DIDの発案者であり哲学博士のアンドレアス・ハイネッケ氏や、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事の志村季世恵氏の他、プログラムを監修した身体感覚教育研究者の松田恵美子氏、曹洞宗長光寺住職の柿沼忍昭氏がDIDへの思いを語った。
日本でのDIDは過去20年にわたり、“暗闇の中で自身の感性を磨きそして多様性を理解しながら、新しい自分と出会えるコンテンツ作り”を続けてきたが、今回は異なるベクトルを持ったコンテンツを目指したという。志村氏は、「この神宮外苑に残っている美しい自然、水や光などを感じられるような内容にした」「人と対話する前に内なる自分と対話し、何を感じ、何を考え、何を伝えたいかに気付き、今の自分を大切に考えるようになった上で、新しい世界に向き合ってほしい」と熱く語った。

柿沼氏は、“型破り”と言われた自身の姿勢を引き合いに出しながら「感覚的で、禅そのもののメソッドを使った、エンターテインメントとして楽しめる空間」「禅でもマインドフルネスでもなく、自然なままでいることは、素晴らしいんだ、ということを学べる場所だと思う」と話した。
松田氏は「DIDは、感覚を研ぎ澄ますことができる暗闇の体験で、眠っている五感を呼び戻してくれる」「日本ならではの自然観を感じさせる空間になった」と述べた。

ハイネッケ氏は、「日本での活動が、シリコンバレーのように、世界への“触媒”になる」と期待を見せ、時間や五感などから解き放たれる“情報デトックス”という独自のワードを使いながら、その重要性を示した。また、今後の目標として、この活動がますます「自分の思想や考え方を評価する・鍛える場」「本当の自分と出会う可能性のある場」になり、「マインドフルネスやウェルビーイングとはどういうことなのか、を伝えていきたい」と意気込みを語った。

同施設は、“大人のための”と冠している通り、これまでのDIDとは一線を画す、ラグジュアリーで大人向けの体験を提供している。
“内に秘めた美を磨きたい、心身の美と癒しを求めている”、そんな大人にぴったりな上質な時間を、ぜひ体験してみてはいかがだろうか?

【ダイアログ・イン・ザ・ダークとは】
1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケ氏の発案によって生まれたダイアログ・イン・ザ・ダークは、これまで世界50カ国以上で開催。併せて何千人もの視覚障害者のアテンド、ファシリテーターを雇用してきた。
日本では、99年の初開催以降、21万人以上の人々が体験している。東京・浅草橋会場での企業研修プログラムや大阪の「対話のある家」も開催中。

【ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」】
三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア2階
(東京都新宿区霞ヶ丘町11番3号)
https://did.dialogue.or.jp/totonou/

三浦瑠麗がヘイト規制の討論で「保守速報を禁じるんならリテラも禁じるべき」 反論されると「ほとんど読んでないので」

 安倍首相主催の「桜を見る会」をめぐる一連の疑惑でも、相変わらず「メタ目線で中立的な知識人」のフリをしつつ政権を擁護している三浦瑠麗氏。最近、何か賢しく論じようとして逆に無教養と御用っぷりを晒すのがパターン化してしており、Twitterでは「またか」との失笑すらされている。...

AbemaTV×電通、社長対談。ネットが切り開く新しいテレビの形

“無料で楽しめるインターネットテレビ局”として成長を続けるAbemaTVに電通が出資を行ってから1年。両社のさらなる連携強化を目指して、10月3日、東京・汐留の電通ホールでイベント「Dentsu AbemaTV Day」を開催しました。

同イベント内で行われた、AbemaTVの藤田晋社長と電通の山本敏博社長によるトークセッションの模様をお届けします。

<目次>
テレビの新しい時代を切り開いていくのは何か?
「受け身視聴」をつくってこその広告。そこにAbemaTVの勝機がある
「新しいテレビ」的な価値を高めるハイブリッド化とは?
サイバーエージェントと電通、お互いをどう見ている!?

 

電通 山本敏博社長、AbemaTV 藤田晋社長
電通 山本社長、AbemaTV 藤田社長

テレビの新しい時代を切り開いていくのは何か?

―電通がAbemaTVに出資した経緯を教えてください。

山本:「日本のテレビの未来はどこにあるのか?」というのが、ずっと私の関心事です。日本のテレビの持つポテンシャルの高さは、世界でも類を見ない素晴らしいものです。ただ、正直に言うとこのままではダメだとも思っていまして、テレビの新しい時代を切り開いていくためにはやはりインターネットとの融合が不可欠だと常々感じています。ですから、テレビがネットの方向に向かっていく取り組みについては、そのどれも全て、電通も一緒に挑戦をしたい。「うちも入れてよ!」と言っています。当然、2016年にAbemaTVのサービスが始まるときにも同じ側に立ちたいと思って、テレビ朝日さんに「一緒にやりたい」と声を掛けさせてもらったのですが、その時は「サイバーエージェントの藤田さんが、ちょっと待ってほしいと言っている」という(笑)。

それから2年後の2018年に、藤田さんと一緒にご飯を食べる機会がありまして、AbemaTVが何をしようとしているのか、直接聞くことができました。その時やっぱり藤田さんの肌感覚みたいなものにすっかり感じ入って、「ネットによってテレビが新たな未来を切り開いていく現場で、同じ方向を向いて一緒にやりたい」と改めて強く思い、「電通も入れてくださいよ」と申し出たところ、その翌日にはもう藤田さんから電話がかかってきて。テレビ朝日とも話は済んでいるということで、非常に具体的な条件のお話をされて。お願いした翌日にですよ。「こういうところだな!」と思いましたね。

藤田:最初にちょっと待っていただいたのには理由がありまして、サービス開始当時、「ネットテレビをつくる」というベンチャーはAbemaTV以外にもたくさんありました。そのうちの一つとして出資を受けるのでは、物足りない。つまり、本気で「これは放っておけない」と思っていただいてから受けたかったんです。そこでテレビ朝日と相談して、「まず、どれだけわれわれが本気かということを感じてもらえるところまでは、自力で頑張りましょう」と決めました。

その後、電通の出資を受けることになったきっかけは、昨年私がチェアマンを務めるプロ麻雀リーグ、「Mリーグ」に電通が参戦してくれたことです。もう本当にうれしくなっちゃったんですが(笑)、そのタイミングで、ちょうど山本社長と食事をすることになりましたので、今度はすぐに出資をお願いした次第です。

電通山本社長
電通 山本社長

「受け身視聴」をつくってこその広告。そこにAbemaTVの勝機がある

―ネットの動画配信サービスが急速に増えていますが、AbemaTVの勝機はどこにあると考えていますか。

藤田:大きくは二つあって、「リニア」であることと、「無料」であることはAbemaTVの他にはない大きな強みだと思っています。

リニアである理由はいくつかありますが、一番の理由は「受け身視聴」をつくりたかったんです。私自身が広告会社をやってきて感じていたのは、ネット上でユーザーが目的を持ってクリックしていくもの、つまり能動的に見るコンテンツは、広告と相性があまり良くないということでした。やはり「受け身視聴」をつくってこその広告である、ということです。しかも、多くの人に見てもらわなければ広告にならない。

「ブランド広告はインターネットにシフトする」と以前から言われていますが、僕の体感値ではまだそれほどシフトしていません。出す場所がないんですよ。ネットでたくさんの視聴者を得ているメディアの多くがCGM(ユーザー投稿型メディア)なので、要は広告主のブランド力や好感度を上げるような出しどころというのが本当に少ない。そんな中で、ちゃんとクオリティーを管理できて、安心できるスペースをつくりたかったんです。

山本:ちょっといいでしょうか。皆さん、私は藤田さんと食事をしたときにこの話を聞いて、本当に衝撃を受けましたよ。あのサイバーエージェントの藤田晋がですよ、「広告、特にブランド広告は、やっぱりリニアで、受け身視聴でなくては効果がない」と言うんですから。あ、ごめんなさいね(笑)。

藤田:いやいや(笑)。それで、先ほど山本社長がおっしゃった日本のテレビのポテンシャルについては、僕も全く同じように考えています。だけど、今ある動画配信サービスは大半がオンデマンドで、実質的にテレビをリプレースできているものはありません。つまり、テレビのメインコンテンツである「ニュース番組」や「スポーツ中継」の流し場所というものがネット上にない。「テレビが出せるものが、ネットでは出せていない」という状況がまず頭にあったんです。

今では、「緊急ニュースがあればAbemaTVを開く」というのが、ある程度ネットユーザーに浸透してきました。スポーツでも、大相撲や格闘技などをAbemaTVで視聴する人は増えている。また、将棋に麻雀など、非常に放送時間が長い中継コンテンツを流すのに適しているのも強みですね。加えて、テレビではなかなか見られないフェンシングやフットサルなどのマイナースポーツからも大変な期待を寄せていただいています。

山本:AbemaTVをやって3年たつと、サイバーエージェントの藤田社長がこういうことを言うようになるんですよ。毎日自分たちであれだけのチャンネルを編成してやっているからですよね。つまり、「テレビ的なもの」に対して恐ろしく造詣が深くなっているんです。こんな話を聞かされてしまったら、放っておけない、絶対にそこに一緒にいないといけない(笑)。「一人では行かせないぞ!」という気持ちが大きかったですね。

藤田:ありがとうございます(笑)。次に、「無料」であることの強みについて。他社の動画配信サービスの多くは、いわゆる有料のサブスクリプションモデルなので、「同時にたくさんの人に見せる」ということが苦手です。その点、AbemaTVはリニアかつ無料ということで、大人数の同時視聴に強いんですね。

例を挙げると、アニメコンテンツ。開局以来行ってきたアニメ第1話の世界最速無料配信は、ついに200作品を超えました。アニメの「最速放送日」は、従来は東京ローカル局が一番多かったのですが、2019年の1月クールではAbemaTVが最多となりました。これは、テレビに代わって「全国区でより多くの人が視聴できる無料の場所」として、AbemaTVに期待が集まっている結果だと感じます。

この「リニア」であることと、「無料」であることが、従来の広告メディアとしてのテレビの特徴ですが、AbemaTVならではの特徴でもあります。

AbemaTV藤田社長
AbemaTV 藤田社長

「新しいテレビ」的な価値を高めるハイブリッド化とは?

―AbemaTVは進化している過程にあると思いますが、どのような方向性を目指しているのでしょうか。

藤田:現在、非常に力を入れているのは、「リニアとオンデマンドのハイブリッド化」です。というのも、自分自身がそうなんですが、AbemaTVを使い慣れれば使い慣れるほど、タイムシフトで見たかったり、追っかけ再生で見たかったりと、オンデマンド的な使い方が増えるのは避けられません。

それに合わせて、UIも大きく変えていこうとしています。AbemaTVの従来のUIは、見ている番組を横にスワイプしていくことでチャンネルを変えるというものですが、やはり見ているときが手持ち無沙汰になりがちなので、そこはYouTubeのように「次に見るもの」を探せるUIに変えようと。

そうなると、オンデマンド視聴に対しては課金サービスにしていくか、もしくはオンデマンドでも無料で出すものについてはなんらかの広告を導入すべきだと考えています。でも、これは地上波を見ていて感じる課題なのですが、オンデマンドやタイムシフト視聴では、どうしてもユーザーに広告を飛ばされてしまうんですよね。それでは収益機会がなくなってしまうので、そんな課題に対応できる新しい広告商品の適切な開発の仕方というのを、電通と一緒に取り組んでいきたいです。

ネットの歴史を見てみると、大きくなったサービスというのは、GoogleにせよFacebookにせよYouTubeにせよ、最初は何もマネタイズのことを考えていません。とにかくたくさんの人を集め、それがある日、決定的にスケールできる広告商品を生み出している。Googleであれば検索結果にリスティング広告を入れたり、Facebookならインフィード広告とリタゲを組み合わせたものだったり、YouTubeならTrueViewだったり。なので、AbemaTVもまずは多くのユーザーを集め、広告効果の高いスケールできるものを開発していきたいです。

そのためにはまず、メディアとしてユーザーに“視聴習慣”をつくってもらう必要がありますが、それには長い年月が必要だというのは改めて感じていますので、腰を据えてやっていきます。

山本:ありがとうございます。新しい広告商品の開発といった面でも、一緒に取り組んでいけたらと考えています。テレビ×ネットでいうと、地上波・ネット同時配信についてはどうお考えですか?

藤田:報道などでミスリードがあるなと思っているんですが、本当に価値があるのは、実は「同時配信」という部分ではないんですよ。同時配信をして、それを追っかけ再生もできて、かつ全ての番組がタイムシフトで見られるということを実現してこそ、テレビ的な価値をさらに高めた新しい体験になる。ユーザーにとってより便利なものとして、テレビを“再発明”していかなきゃいけないと思っています。そのためのハイブリッドです。

サイバーエージェントと電通、お互いをどう見ている!?

―お二人は、社長としてお互いの会社をどのように見ていますか?

山本:今日は「AbemaTVの藤田社長」にお越しいただきましたので、まずAbemaTVについて。最初にお話しした通り、電通も新しいテレビの可能性を一緒に切り開いていきたい、そのことが誰にとってもいいことであると考えています。

一方で、競合する広告会社としての「サイバーエージェントの藤田社長」が持つ若さと、革新さと、破天荒さは電通にとっては脅威です。しかし、そういう存在がいてくださることで、やり方は違うかもしれないけど、この人たちよりも革新性のあること、新しいこと、若いことを毎日やっていかなくてはならないのだと思えるので、とてもいい刺激になっています。ちょっと負け惜しみもありますけど(笑)。

「テレビ×ネット」という新しい舞台に対して、AbemaTVという新しい可能性のあるメディアに共に協力して取り組みつつ、その舞台ができたあかつきには、広告会社としてのサイバーエージェントと、堂々と戦えればいいなと思っています。

藤田:私にとって電通は、数少ない「こんな会社にしたい」と目標にしている会社です。社員が自由に働いているのに、結束が非常に強い。そんな会社を、優秀な人材をたくさん集めながらつくれるというのは、本当に参考にしたい部分です。

私は昔、アメーバブログの頃からメディア事業に傾倒していったのですが、その当時に電通のある方から食事に誘われ、「広告代理店、電通にできないの?」と言われたことがあります。「企業カルチャーがあるので、難しい」とお断りしたところ、「よし、じゃあこの話は終わりだ、今日は飲もう!」と(笑)。はっきりと、回りくどくなく言ってくれるところは、本当に電通の良さだなと思います。そういう、個人的に好きな会社でもあるんです。

広告会社サイバーエージェントとしては競合かもしれませんが、今後も電通とはさらなる連携を深め、「日本のテレビ」の持つポテンシャルをAbemaTVを通じて引き出していけたらと思っています。

山本:本日はありがとうございました!

電通 山本敏博社長、AbemaTV 藤田晋社長
電通ホール

生きた仕組みこそ、現場と経営の大動脈に

ビジネス誌『プレジデント』元編集長、現在はプレジデント社の社長・長坂嘉昭さんとの対談により、大企業のトップを長年にわたり眺め続けている彼の目からも、「今、現場社員に焦点を当てる」ことの重要性を確認したCDC・武藤新二。では、アカデミックな視点からは、どのような見解を伺うことができるでしょうか。武藤が続いて訪ねたのは、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授の入山章栄さん。

長坂社長との対談記事は、こちら

トップは現場で「知の探索」を。
「仕組み」づくりの好手・悪手


武藤:三菱総合研究所でメーカーや政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、博士号を取得し10年以上にわたり経営学の研究を行っている入山先生。今、元気のいい企業に共通点はありますか?

入山:うまくいっている企業のトップは、必ずといっていいほど現場を歩いていますね。ボトムアップが大切であることはもちろんですが、結局トップの意思があるからこそボトムアップが実現する。トップが現場を知った上で、社員が生き生きと働ける仕組みをつくり、情報を吸い上げられる体制を築いています。経営学ではイノベーションは「既存の知と別の既存の知の新しい組み合わせ」で生まれるとされていますが、人間の認知力には限界があるため、トップは「知の探索」、つまり意識的に遠くのものと出合う努力が非常に重要。そして、彼らにとっての“遠く”とは、海外や異業種だけでなく「現場」も含まれているのです。

早稲田大学ビジネススクール・入山章栄教授(写真右)と電通・クリエーティブディレクター・武藤新二(同右)
早稲田大学ビジネススクール・入山章栄教授(写真右)と電通・クリエーティブディレクター・武藤新二(同左)

武藤:電通の「カンパニーデザイン」プロジェクトでも、現場社員のための仕組み部分を「アクティビティー」と呼び、クリエーターならではの視点でプランニングしようと考えています。入山さんがご覧になってきた企業では、具体的にはどのような仕組みづくりがされていましたか?

入山:例えばオフィス空間を歩き回りやすくデザインする、トップが若手とLINEでつながる。失敗の報告に対しインセンティブを設定するなどさまざまです。あえて労働組合と仲良くし社員の不満に向き合うというような方法をとる企業もありました。海外でいえばファーウェイが素晴らしいですね。あの会社は世界170カ国以上の企業とコラボレーションしていますが、その現場で得たものを社内の財産にするため「シェア」に対する評価制度があります。結果、社員一人一人が、知識やスキルを抱え込まず、シェアすることが当然という企業文化が完成しています。

武藤:とても興味深いですね。逆に悪い仕組みの例はありますか?

入山:変えられない、絶対に守らなければならないマニュアルを作ってしまうパターンですね。現場の状況は刻一刻と変わるので、マニュアルも常に改変されていくべきなのですが、現場社員というのはマニュアル信仰になりがち。「マニュアルは現場の意見で変えられる」という前提をつくらないと、社員たちは責任を負わないことを優先する働き方をしてしまいます。

早稲田大学ビジネススクール・入山章栄教授

組織の個性は右脳で見つかる?
「両利きの企業経営」とは

武藤:「企業のオリジナリティー」を見つけ出すことも「カンパニーデザイン」の大きなテーマです。われわれがそれを行う上で、どんなことを大事にすべきでしょうか?

入山:組織が一丸となって歩んでいくためには「この会社って何なんだっけ?」という部分、つまりオリジナリティーが必要不可欠ですよね。人間は腹落ちしないと前に進めないんですよ。だからグローバル企業はトップがとにかくビジョンを伝え続けるのですが、日本企業の場合はそのさらに手前の「この会社は何なのか」を一言で言えないことが多い。

武藤:われわれが第三者の視点から見ることで、会社の価値を発見し、言語化するなど、そこでお力になれるのではないかと考えています。

入山:特に広告業界のクリエーターさんが持つ右脳的な直感力は、経営者に求められていると思います。ビジネス領域が多岐にわたる企業だと、左脳でロジカルに分析・整理していくだけでは「細かいことは置いといて丸っと一言で言うと、結局この会社は何?」という問いの答えが出てこないんですよ。最近、戦略コンサルティングファームがデザインファームを買収するケースが増えているのは、まさにその問題に突き当たった結果です。

武藤:入山先生が重要視されている「両利きの経営」につながるお話ですね。

「両利き経営」の図
「両利き経営」の図

入山:そうですね。最新の神経科学では左脳と右脳、つまり論理思考と直感はお互い補完し合っているという説が有力になっています。論理思考ができる人は直感も発達し、直感が発達すると論理思考が発達する。企業も同様に、論理思考力と直感力を併せ持つことで好循環サイクルに入れるはずなんです。日本企業に不足しがちな右脳的な部分を電通さんがサポートすることは、組織の活性化において大きな可能性を感じます。ので、楽しみにしています。

早稲田大学ビジネススクール・入山章栄教授(写真左)と電通・クリエーティブディレクター・武藤新二

本対談を通して得られた知見

生きた仕組みづくりの極意とは?

プレジデントの長坂社長、早稲田の入山教授の取材を経て、本格的な活動をスタートさせたカンパニーデザインチーム。「カンパニーデザイン」という考え方が世に浸透し、多くの会社で導入されていくことを目指し、実践と学びを加速させていきます。

カンパニーデザインチームの新連載「なぜか元気な会社のヒミツ」は、こちら。興味を持っていただいた方は、プロジェクトサイトも併せて、どうぞ。