パチスロ「激しい連チャン性」を有した魔性の名機【レトロスロット実戦『ワイルドキャッツ』】

 アークテクニコのパチスロ3号機『ワイルドキャッツ』。

 ビッグボーナスとレギュラーのみを搭載したオーソドックスなAタイプで、リールにはRB絵柄であるイタズラ顔のクロネコがたたずんでおり、下部パネルの可愛らしい子猫のデザインが印象的なパチスロ機です。

 しかし、それは「表の顔」。その中身は愛くるしい見た目とは全く真逆の「激しい連チャン性」を秘めたパチスロ機でした。

 この子猫ちゃんは貯金が大好き。ビッグボーナスはフラグ成立ゲームで揃えなければ貯留され、放出抽選に当選しない限り連チャンはしません。しかし、フラグ成立時に777揃いとなった場合には連チャンなしの単発になるという意地の悪い性格です。

 ただし一旦放出抽選に当選すると、それまでに貯めた分を全て一気に放出。そのため、沢山貯まっていれば「大連チャンが起こる」という仕組みでした。

 って、めちゃめちゃタチが悪い。そんな性格とはつゆ知らず、ハマりばかりで退散するお客さんも後を絶たなかったのです。

 ボーナス中には《猫踏んじゃった♪》が流れるなど…「もうど~なんだい」って思ったものです。

 しかし、そのギャップもまたウケたのか様々な裏モノが乱立していた時代にも関わらずホール人気は高かった印象ですね。

 私自身も近所で唯一設置されていた「超絶ボッ〇〇リ店」と言われていたホールにてハイエナに勤しんだものでした。

 ハイエナだけが超有効なマシンだったので必然。「パチスロ必勝ガイド」が創刊されて丁度1年くらい、毎月欠かさずに買って隅々まで読み尽くしていました。その甲斐もあって、当時としては中々のパチスロ小僧だったと自負しています。

 しかし、良く考えられたシステムだったとも言えますね。それから10数年後、合法へと生まれ変わり、4号機時代に猛威を振るったストック機と変わらないようなシステムだったのですから。メーカーとは無関係の裏モノではなかったため、おそらくノーマル機も存在しなかったのかもしれません。

 その『ワイルドキャッツ』という機種名も、確信犯的なものだった可能性も考えられます。これでノーマルで退屈に感じる機械だったら「全然ワイルドではない」とも思えるでしょう。

 それでは待望のご対面。懐かしい!そして、やはり可愛いですね!

 画像はBB入賞中のものですがパネル上部の赤・黄・青の7絵柄はルーレットになっており、ボーナス終了後にいずれかの色で停止するというラッキーナンバーの役割があったのですね。

 当時はパチスロも1回交換の店が多く、赤で止まれば連続遊技、それ以外は交換、などという形式でした。

『ワイルドキャッツ』。これもまた「まごう事なき名機」でしょう。

 しかし直接この裏モノに関わった事で、厳しい処分を受けたアークテクニコは次機種をリリースする事なく消滅。この「魔性の子猫」が、最後の機械となってしまうのでした。

(文=電撃しらっち)
<著者プロフィール>
業界歴30年。遊技機販売業など様々な業種を経験し、現在はライターとしての活動にも力を入れている。レトロパチンコ・パチスロの実戦記事や、業界関係者への取材記事も担当。羽根モノや一発台を特集するなど、オールドファンにも響く内容も積極的に作成している。

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これまで、激安スーパーのOK(オーケーストア)では、PayPay、楽天ペイ、LINE Payなどのスマホ決済アプリを利用することでポイント還元を受けられるのに加え、オーケークラブ会員特典の3%割引も2重に受けることができた。しかし、2021年7月から、スマホ決済の加盟店手数料有料化に伴い、オーケーではスマホ決済による2重割引きが受けられなくなる。そこで今回は、オーケーのスマホ決済が今後どうなるのか解説しよう。

7月からスマホ決済では3%割引が受けられなくなる!

 関東を中心に120店舗以上を展開している激安スーパー「OK(オーケーストア)」(以下オーケー)。オーケーでは商品ごとにメーカーを1社に絞り、1品目を大量仕入れることで価格を抑えているのが特徴。しかも、近隣競合店の特売がオーケーの販売価格より安い場合は、対抗値下げも行っているため特売チラシはない。つまり、いつ行っても激安なのだ。  そんなオーケーでは、PayPay、楽天ペイ、LINE Pay、au PAYといったスマホ決済を利用することでポイント還元受けられるうえに、オーケークラブ会員特典の3%割引も2重に受けることが…

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 伝説の爆裂機が羽根物になって登場した。『P羽根モノ獣王GO2』である。兄弟機である『P超ハネ獣王』は「ハネ」を冠しているものの、始動チャッカー入賞の約1/10で羽根が開く権利物に近いゲーム性で、これを「羽根物」とするのは多少はばかられる。

 しかし、この『P羽根モノ獣王GO2』は始動チャッカーに入賞すれば羽根が開くようになっていて、役物やゲーム性はそのままにより羽根物の感覚でプレイできる遊びやすい仕様なのである。

 気になる役物の詳細を見てみよう。ステージの奥に樽を横にしたような回転役物が設置され、その前に前後に揺れるブリッジ役物が備わっているという構造で、これらの装置を経由してステージの手前にあるVゾーンに入賞すれば大当りとなる。

 羽根から入賞した玉は下段ステージに続く役物両脇のスロープを通って運ばれるが、このときタイミングよくブリッジ役物に乗っかればV入賞のチャンスアップ。樽型ロール役物の中央に組み込まれたポケット(赤い部分)に玉が通過すればステージをすべって大当りを誘発するようになっている。

 この樽中央からの鉄板パターンが発生しやすくなる「スペシャルルート」が用意されている。羽根入賞時に役物の左右に搭載されたダチョウギミックが玉をくちばしで突く上段ステージに移行し、上から樽中央の赤い部分を直撃すべく落下する。

 樽型ロール役物の中央に仕込まれたポケットは2つ。ただ、樽は時折小刻みに前回転・後ろ回転を発動させたり、スペシャルルートの落下穴がクルーンなので滞留時間がまちまちになるなど、簡単には予想できない攻防戦が繰り広げられるのである。

 ちなみに、今回の実戦ではこのポケットからの鉄板入賞ルートを確認できなかった。もともとのスペシャルルート突入率も低そうなうえに、ポケット入賞確率もそれほど高いものではないかもしれない。

 その分、ポケットを経由しなくてもバンバン当る。ブリッジ役物に乗りさえすれば、イレギュラーな軌道からでもVゾーンを陥れ、ノーマルルートだろうと鉄板ルートじゃなかろうと大当りを導いてくれるのである。

 新規の役物に豊富なイレギュラーパターンと羽根物としての魅力があふれたマシンではあるが、勝ちたいと願うならば、時短モードとなる「サバチャン」の力を借りなければは話にならない。

 通常時の大当りは約2/3が6ラウンド350発、約1/3が4ラウンド210発と出玉が少なく、最大出玉の10ラウンドでも約630発なうえに1%しか割り振られていないのである。よほどの優良台でなければ単純な大当りの積み重ねだけで出玉を増やすことが困難なのである。

 大量出玉を獲得できる機会の「サバチャン」は99回転の時短が発動し、大当りすれば10ラウンドとサバチャン継続が約束される激アツモード。時短の連チャンは5回のリミッターが設定されており、期待出玉は約2500発となっている。

 ただ、この「サバチャン」は通常V当りの3%でしか振り分けがない。ではどうやって引き当てるのかといえば直撃大当りである。実は始動チャッカー入賞時にも大当り抽選がなされており、規定の確率に当選すれば大当りが発生するようになっている。その直撃大当りの50%でサバチャン突入が狙えるのである。

 直撃大当り確率は6段階の設定付きで、1/299.3~1/169.8とかなりの設定差が設けられていて、高設定ほどサバチャン突入が優遇される仕組みとなっている。

 正直、これは大いに不満が残る要素で、『超ハネ獣王』と差別化を図るなら普通の羽根物のように自力大当りのみで勝ち負けを楽しめるようにしてほしかったところである。羽根物にも連チャン性が必要な時代であるとしても、直撃メインは興醒めである。それなら『スカイレーサー』のように突破型のゲーム性でよかったのではないだろうか。

 まあ、あくまでメインとなる『超ハネ獣王』の従属であるので、羽根物タイプで出してくれたことだけでもありがたいと思って然るべきかもしれないが、役物が非常に面白いだけに、少し残念である。

(文=大森町男)

<著者プロフィール>

 羽根物によってパチンコの魅力にとり憑かれ、パチンコ雑誌を製作する編集プロダクションに入社。パチンコに関する記事作りや編集業務に携わる。編集長としてファン雑誌の制作に取り組むなどの経験を活かし、その後は携帯サイトやweb、動画コンテンツなど幅広いパチンコメディアに従事。現在はフリーランスのパチンコライターとして活動。パチMaxを中心に消極的に執筆の場を広げている。

 

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JRA武豊VS川田将雅「元お手馬」対決で分かれた明暗! アドマイヤビルゴ「再登板」待望論も…… 宝塚記念(G1)アリストテレスで存在感をアピールできるか

 13日、東京競馬場で行われた古馬の中距離重賞・エムソムC(G3)は、石橋脩騎手の3番人気ザダルが優勝。同馬は5度目の挑戦で初めての重賞勝ち。秋の飛躍を感じさせる快勝だった。

 同馬の父トーセンラーはディープインパクト産駒。2着に入ったサトノフラッグ、3着ファルコニアもディープインパクト産駒ということもあり、3着以内をディープインパクトの孫と仔が独占した。

 そんな一戦で、別の意味で注目を集めたのは元お手馬同士の対決だ。

 武豊騎手はマイラプソディとアドマイヤビルゴ、川田将雅騎手はファルコニアとヴェロックスとコンビを組んでいた。レースでは武豊騎手がマイラプソディ、岩田望来騎手がアドマイヤビルゴ、川田騎手がファルコニア、浜中俊騎手がヴェロックスに騎乗した。

 当然ながら、騎乗依頼はオーナーサイドや厩舎の兼ね合いも大きいが、トップクラスのジョッキーの場合は、騎手の意思を尊重されることも珍しくはない。

 それだけに、騎手側の心理としても騎乗馬が選択しなかった馬に先着を許すことだけは避けたいところだろう。

 フルゲート18頭立ての芝1800m戦。逃げたエアアルマスが刻んだペースは、1000m通過58秒8と平均的なラップ。中団を進んだヴェロックスとマイラプソディがそれぞれ4着と11着。後方待機策を採ったファルコニアとアドマイヤビルゴがそれぞれ3着と7着という結果に終わる。

 川田騎手はファルコニアで選ばなかったヴェロックスに先着することに成功したが、武豊騎手は選ばなかったアドマイヤビルゴに先着を許してしまった。マイラプソディは武豊信者としても有名なキーファーズの所有馬、アドマイヤビルゴは故・近藤利一さんが遺言で武豊騎手を指名したといわれる縁のある馬。武豊騎手にとっても苦渋の選択だったかもしれない。

 次走でのコンビ復活を望む声も根強いが、再登板はあるだろうか。

 ただ、肝心の武豊騎手の調子がもう一つ上がってこないのは気掛かり。現在重賞で11連敗中でもあり、馬券圏内に一度も入れていない。

 宝塚記念(G1)は、アリストテレス(牡4、栗東・音無秀孝厩舎)とのコンビで出走を予定しているが、そろそろ存在感を見せたいところ。

 宝塚記念の芝2200mはこれまで3戦2勝2着1回と、アリストテレスが得意としている距離だけに、レジェンド騎手の奮起に期待したい。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

出前館、燻るウーバーイーツ買収の観測…販管費が売上高を超過し多額赤字、広告費が圧迫

 ダウンタウンの浜田雅功がスーダラ節に乗せ「出前がすいすいすい~」と歌う、料理宅配の出前館(JQ上場)のCMが話題になって久しい。このCMが昨年7月に放映されて以来、ブランド認知率は右肩上がり。今年3月上旬に認知率は84.4%まで上がった(LINE Research Platform調べ)。CM総合研究所の調査によると、20年度は前年度の20倍を超える好感度を記録し、CM好感度躍進企業ランキングで初めて2位にランクインした。出前館のCMが消費者にいかに浸透したかがうかがえる数字だ。

 業界首位のウーバーイーツ(東京・港区)などとの競争を勝ち抜くため投資を積極化した。CM効果で4月時点の加盟店舗数は7万店を突破。昨年8月末時点の2倍となった。加盟店数は大幅にアップしたが、それに見合うリターンを生み出すことができない厳しい現実に直面している。

 出前館の20年9月~21年2月期の連結売上高は前年同期比2.7倍の104億円に膨らんだ。加盟店舗数・ユーザー数の拡大によるオーダー数の増加によりサービス利用料収入が増加し、シェアリングデリバリー配達件数増に伴う配達代行手数料収入も大きく伸びた。シャアリングデリバリーとは、配達機能を持たない飲食店が出前館のデリバリーを手数料を払って利用することを指す。1年以内に1回以上サービスを利用したアクティブユーザー数は582万人と8割増えた。

 半面、営業損益は83億円の赤字(前年同期は9億円の赤字)、最終損益は96億円の赤字(同9億円の赤字)。配達業務の委託費などの売上原価や、新規ユーザー獲得に向けた広告宣伝費、人件費などが共に約4倍に急増した。広告宣伝費の実額は62億円、人件費は43億円であった。配達員などの人件費以上に広告宣伝費をつぎ込んだことがわかる。

 売上高販管費率は19年8月期は63.5%だったが、20年8月期は96.1%に上昇。20年9月~21年2月期には130.4%と売り上げを大きく上回った。これが赤字が積み上がった原因だ。

 20年2月末時点の現預金はおよそ13億円。20年3月、LINEとその親会社韓国ネイバーからの出資を受けて300億円を調達。広告宣伝費やシステム投資に充当した。

 今期(21年8月期)と来期(22年8月期)は高コスト状態が続く。21年8月期通期の連結決算の見通しは、売上高が前期比2.7倍の280億円、最終損益は130億円の赤字(前の期は41億円の赤字)。23年8月期の売上高の予測は20年8月期実績の9.4倍の970億円、120億円の営業黒字を目指す。そのためにも広告・宣伝効果を高め、シェアを拡大することが絶対に必要となる。

 同業他社との競合は激しさを増す。ウーバーイーツの加盟店数は出前館が目標とする10万店をすでに超えた。18年設立で業界3位のmenu(メニュー、東京・新宿区)は5万3000店に達し、KDDI(au)がmenuに資本参加し50億円を投下する。独料理宅配大手デリバリー・ヒーロー(DH)傘下の宅配アプリ、フードパンダは昨年秋、日本に新規参入。デリバリー・ヒーロー・ジャパン(東京・港区)が加盟店の募集を始めている。

SBGに組み込まれたLINEとウーバーイーツの統合はあるのか

 LINEが出前館を買収した意図が見えてきた。20年8月18日放送のテレビ東京の経済情報番組『ワールドビジネスサテライト』が「出前館がウーバーイーツの買収を検討している」と報じた。出前館は翌19日、買収報道を完全否定したが、出前館とウーバーイーツは「以前、お互いに買収を検討していた時期がある」(関係者)。だから、この報道を市場関係者は「さもありなん」と受け止めた。

 LINEは20年3月、業界第2位の出前館に追加出資し、出資比率を34.42%(名義はAホールディングス、21年2月末時点)に高めた。韓国ネイバーとの共同出資の未来ファンドが24.04%(同)を出資。つまり、出前館の過半数の株式を握っている。そのLINEは、21年3月をメドに、通信大手ソフトバンクグループ(SBG)傘下のZホールディングス(HD)と経営統合すると明らかにした。

 一方、ウーバーイーツは、タクシー配車サービスのウーバー・ジャパンが展開している。米国本社のウーバー・テクノロジーズにはSBGが出資。出前館とウーバーイーツはいわば、SBG内の“親戚”なのである。出前館によるウーバーイーツの買収が取り沙汰された理由はこれだ。

 21年3月、ZHDがLINEを経営統合した。出前館の親会社は、LINEからZHDに替わった。SBGは今年1月、傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を通じて保有するウーバー・テクノロジーズの株式の2割弱を売却した。売却額は約2100億円。18年に出資して以来、ウーバー株を手放すのは初めてだった。

 SVFは20年9月末時点でウーバー株式に総額76億ドルを投下してきた。4億ドル強の含み益があり保有額(時価換算)は81億ドルとなった。ウーバー株はその後も上昇し、20年の年間上昇率は7割強に達した。ウーバー株式の売却により、SVFは一定の実現益を得た。ウーバーの堅調な株価上昇を反映する未実現評価益も、当然、SBGの決算に反映された。

 これがSBGの投資手法だ。投資する上場企業の株価が上がれば、一部を売却して実現益を手にし、株価上昇に伴う未実現評価益を計上する。一口で二度果実を味わう“グリコ方式”をとる。ZHDが傘下に組み入れた出前館は赤字の膨張で株価は低迷中。年初来高値が1月4日の3560円なのに対して6月3日の終値は1844円。年初来安値は5月26日の1682円である。目減りして、株価は高値のおよそ半分になるという状況だ。

 出前館がウーバーイーツとの経営統合をテコに赤字を解消できれば、これが株価を押し上げる有力な支援材料になる。

(文=編集部)

JRAカレンモエに福永祐一ロードカナロアの「悪夢」再び!? 父は内、娘は外で敗れた函館スプリントS(G3)母カレンチャンの制したレースで明暗を分けたのは?

 13日、札幌競馬場で行われた夏のスプリント重賞・函館スプリントS(G3)は、藤岡佑介騎手の5番人気ビアンフェが優勝。重賞3勝目を飾り、サマースプリントシリーズの第1ラウンドを制した。

 一方、クビ差の2着に惜敗したのが、鮫島克駿騎手とのコンビで挑んだカレンモエ(牝5、栗東・安田隆行厩舎)だ。

 同馬の父はG1・6勝を挙げた世界のロードカナロア、母はスプリントG1・2勝のカレンチャンという血統。両親に名スプリンターを持つ背景もあって、デビューからこれまで連続して1番人気に支持されている人気馬である。

 安定感がありながらも京阪杯(G3)、オーシャンS(G3)で連続2着と勝ち切れないレースが続いていたカレンモエ。陣営としても連敗ストップ、初重賞勝利に懸ける思いは並々ならぬものがあっただろう。

 しかし、同馬にとっては結果的に、非常にもどかしいレースになってしまった。

 16頭立ての芝1200m戦。8枠16番の大外枠を感じさせないようなダッシュ力を見せたカレンモエ。ハナに立つ勢いで好スタートを決めたが、これまで逃げたことがなかっただけに、鮫島駿騎手は一旦、他馬の出方を伺う。

 これに迷うことなく競り掛けていったのが、藤岡佑騎手のビアンフェだった。出脚はつかなくとも、作戦はとにかく逃げるだけ。瞬く間にハナを奪うことに成功すると、前半3ハロン32秒8のハイラップを刻んで飛ばしていく。

 その後もペースを緩めることなく最終コーナーを回ると、ビアンフェの藤岡佑騎手は後続を待たずにゴーサイン。カレンモエも懸命に差を詰めようとするが、ライバルを捉えるまでには至らなかった。

「勝負の分かれ目となったのは、やはりハナ争いでしょうか。ただ、カレンモエが控えたからこそビアンフェが粘り込めたという見方も可能ですが、引かなければさらにハイペースになって共倒れした可能性も十分に考えられます。

鮫島駿騎手としては予想以上にビアンフェがバテなかったのは誤算だったでしょうし、藤岡佑騎手は何が何でも行く構えでした。負けてもいいからとにかく逃げたい馬と、勝ちを意識して乗った1番人気馬という立場の違いもありました」(競馬記者)

 札幌が開幕週の絶好馬場。逃げた馬に有利な条件だったことも、カレンモエには不運だったかもしれない。

 また、函館スプリントSはロードカナロアも1番人気で2着に敗れた因縁の舞台でもある。2012年のこのレースで父は1枠1番の最内枠からのスタート。最後の直線で前が塞がり、進路を探している間に、先に抜け出したドリームバレンチノを捕まえ切れず2着に敗れた。

 母カレンチャンは11年に優勝したレース。これに対し、最内枠の父ロードカナロア、大外枠の娘カレンモエは真逆の枠ながら、いずれも勝利を手にすることは出来なかった。

 敗戦を機に、父は次走で鞍上を福永祐一騎手から岩田康誠騎手にスイッチ。その後、秋のスプリンターズS(G1)で大輪の花を咲かせた。

 カレンモエにも父のようなベストパートナーとの出会いがあるのか。

 それとも、コンビ続行となるのだろうか。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

店舗とECの融合にとどまらない、未来のショッピング体験

あらゆる業界でオンラインシフトが急速に進み、生活者の価値観や購買プロセスにも大きな変化が起こっている今、オンラインとオフラインがシームレスにつながった新しい購買体験が求められています。

国内電通グループは2021年2月より、OMO(オンラインとオフラインの融合)時代の新たな「ショッピング体験」をデザインするプロジェクト「dentsu SX(エスエックス)」(※1)をスタート。SXという名称には「Shopping Transformation」と「Shopping Experience」の両義が込められており、世界有数のデザインファームであるfrog design inc.との強力なパートナーシップのもと、テクノロジーとクリエイティビティを武器に、これからの時代に合わせた新たなショッピング体験を戦略・実装・運用までワンストップで支援します。

本連載では、「コスメ」「金融」「ファッション」「日用消費財」「家電品」の5つの業界で起きている変化を捉え、今後の展望を考察します。

連載第1回は、dentsu SX立ち上げの背景にあった時代の潮流や課題感、プロジェクトが目指す未来について、電通の森直樹氏、電通ライブの神志名剛氏、電通デジタルの安田裕美子氏の3名にインタビューを行いました。

dentsuSX
※1 dentsu SX
国内電通グループ7社による、OMO時代に沿ったオンオフ統合の購買体験を顧客目線でデザインし、リテール領域において企業の事業成長に貢献するプロジェクト。電通グループのこれまでの事業蓄積と、戦略パートナーとして参画するfrog design inc.の知見を統合。電通独自の顧客行動データや、AIやクラウドなどの最新テクノロジーを活用し、顧客インサイトを掴むクリエイティビティと掛け合わせることで、顧客視点に立ったブランド独自のショッピング体験を創出する。(詳しくはリリースを参照

 


デジタルシフトの今こそ問い直される、リアルの体験価値

──はじめにプロジェクト立ち上げの経緯や、背景にあった課題意識を教えていただけますか?

森:テクノロジーの進展と共に生活者の購買体験が目まぐるしく変わる中、DXやD2Cといった新たな試みにチャレンジする企業が増えていました。その潮流に対して、電通グループにはデジタルやデータ、スペース開発、要素技術など、最先端のソリューションでアプローチできる会社がたくさんありますが、それらを統合させることで、より価値のあるショッピング体験をクライアントに提供できるのではないかと考えました。

神志名:個人的に強いインスピレーションを受けた事例があります。それは、2018年にNIKEがニューヨークにオープンした「House Of Innovation 000」。NIKE公式アプリと連動した店舗設計で、ユーザーはアプリで試着の依頼や決済などができるだけでなく、個人データに基づくパーソナライズされたハイエンドなサービスを受けることもできます。

顧客とブランドの信頼関係のもと、顧客はより良いサービスを受けるために個人データを提供し、ブランドは一人一人に合わせた高度なサービスを提供する。

OMOとは単純に店舗とECを行き来するだけにとどまらず、顧客とブランドの関係性を高め、新しい体験を生み出すポテンシャルがあるのだと確信しました。

安田:デジタルシフトが加速する一方で、改めてリアルの体験価値を問い直す企業が増えていますよね。そこで鍵となるのが、“今、ここでしか得られない体験”や、リアルだからこそ生まれる“感動”だと思うのです。OMOの考え方は少しづつ浸透してきていますが、実践できているとは言い難い現状だと思います。今こそ、デジタル/テクノロジーと人を動かすクリエイティビティを掛け合わせた顧客体験が必要になるのではないでしょうか。

ブランドとの関わりを日常化する「ショッピング体験」とは?

──「ショッピング体験」というフレーズが印象的ですが、この言葉に込められた意味をもう少し詳しく教えていただけますか?

森:コロナの影響もあってDX化が加速度的にうたわれていますが、単純にデジタル化すれば良いというものではありません。オンオフの境目がないところで、ブランディングとロイヤリティを高めていくような、購買体験そのものを刷新する必要があります。つまり、購入するという行為だけでなく、その後の関係性を深めていくことも含めての「ショッピング体験」が求められているのです。

神志名:ショッピング体験という言葉には、語感として「ワクワクする」「楽しい」「ためになる」というポジティブな印象が込められています。生活者にとっては、オンラインかオフラインかはそこまで重要ではなく、どれだけ快適に、便利で、楽しく買い物できるかがポイントです。

だからこそ、購入して終わりではなく、リピートが生まれ、ロイヤルティが高まり、最終的には生活者自身のアイデンティティにブランドが重なるぐらいの強い結び付きまで到達すべきだと思っています。

森:「日常化」はショッピング体験における重要な要素ですよね。ブランドの入り口は「新しさ」や「面白さ」かもしれませんが、そこから生活者の日常にブランド体験が定着する状態までを設計したいと考えています。

神志名:言い換えれば、短期的な利益ではなく、中長期的な企業利益をデザインするということ。新しいショッピング体験を軸に、ブランドの事業そのものを変革し、ドライブさせることを本プロジェクトでは目指しています。

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クライアントに合わせて柔軟に“最適解”を設計することが重要

──「OMOを志向する企業が多いが、まだ実践には至っていない」という話がありましたが、そういった現状の中でdentsu SXだからこそ提供できる価値とは何でしょうか?

安田:大きく3点、「ユーザー理解」「構想だけに終わらない実行力」「テクノロジーインテグレーション」が挙げられます。

電通はこれまで広告コミュニケーションを中心に「人を動かす」ことに取り組んできました。そこで培われた膨大なユーザーインサイトの知見や経験は、ショッピング体験を設計する上で非常に強力なアセットになると考えます。

また、ただ構想を描くだけでなく、実際に店舗や“場”を作ること、さらに作って終わりではなくきめ細かな施策を実行するところまで、一気通貫で提供できるところも強みだと思います。

それから、特定のテクノロジーやクラウドサービスなどに縛られることなく、提供したい体験に合わせてベストなテクノロジーを組み合わせて提案できる点もメリットではないでしょうか。

森:dentsu SXはユニークな機能を持つ企業と人材の集まりなので、クライアントの状況に応じて、提供するソリューションを柔軟に変えられる点が大きいと思っています。デジタル・テクノロジーの導入が必要な場合もあれば、コンサルティングが必要な場合、あるいはUXデザイン、クリエイティブ、スペースなど、課題解決に必要なアプローチはさまざまです。特定のフレームワークに限定せず、クライアントにとっての“最適解”を提案することができます。

神志名:これまで述べてきたように、もはや店舗とECの単純な統合だけでなく、ポップアップストアやバーチャルショップ、アプリなど新しいコンタクトポイントも含めてオールウェイズ・オンでつながる世界が始まっています。より多角的・総合的なソリューションへのニーズに対し、電通グループ各社のケイパビリティを掛け合わせ、ワンチームで対応していきたいと考えています。

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──具体的にどのような課題や悩みに対応ができそうでしょうか?

森:生活者の新しい価値観やスタイルに合わせて、いろいろなことを再構築しなければならない領域なので、その意味では「買い物」や「購買」というテーマで新しいことにチャレンジしたい企業、何かしらの課題をお持ちの企業は、気軽にお声がけいただければと思います。

安田:例えばEC以外の新たなショッピングサービスを考えたい、今ある店舗の形を大きく見直したい、新しい購買体験を模索したい、といったゼロベースのご相談からお手伝いできればと考えています。

神志名:戦略から実装・運用までのフルサービスだけでなく、目の前の小さな課題解決から始めるスモールスタートもご提案できますので、ぜひ一度ご相談いただけるとうれしいです。


dentsu SXでは、企業の皆さまからのご相談やご質問を受け付けております。興味のある方は、ぜひ公式サイトからお問い合わせください。

次回は「コスメ」業界におけるショッピング体験の変化と、これから取り組むべきアクションについてご紹介します。

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被害者が告白、男性幹部自衛官が女性隊員に性的暴行…自衛隊、組織的な問題が浮き彫り

「二度と私のような性暴力の被害者を、自衛隊から出したくないんです」――。

 筆者にこう打ち明けてくれた元自衛官で20代女性のAさんは、昨年7月に北海道の矢臼別演習場での訓練中に、40代の男性幹部自衛官(以下、B)から性的暴力を受けた。この幹部自衛官は強制性交等罪で起訴され、実刑5年の判決が今年2月に下されている。Aさんは今年3月に退官したが、「男性隊員が大多数の自衛隊では性犯罪事案に対する理解がまったくないと言ってよく、このままでは被害は繰り返されるばかりだ」と再発防止のため、思い出すのさえ辛い記憶を筆者に語ってくれた(事件説明における階級は当時)。

男性幹部自衛官、演習場内で性的暴行、「性的欲求を満たすためにやった」

 この事件の概要は、すでに今年2月に自衛隊が発表している。陸上自衛隊北部方面隊第7師団第7特科連隊に所属していたBが、昨年7月26日、訓練で訪れていた矢臼別演習場で、同連隊に所属していたAさんに性的暴行を加えた。同月中にAさんが隊に報告したことで事態が発覚し、Bは昨年11月、自衛隊内の警察である「警務隊」に逮捕され、昨年12月に強制性交等罪で起訴された。今年2月25日に実刑5年の判決が下り、懲戒免職処分を受け、現在、服役中だ。

 Bは自衛隊の調査に「自己の性的欲求を満たすために暴行してしまった」などと動機について話している。Aさんが記録していたメモや証言をもとに、実際にどのような犯行が行われたのか、明らかにする。なお、以下の内容は、Aさんが隊の調査でも証言しているものであり、公判でも事実認定されたものである。

男性自衛官、階級差で逆らえない部下の女性隊員に犯行

 事件は、昨年7月18日から31日までに矢臼別演習場で実施された訓練中の26日夜に起きた。この時、8月に異動になる隊員の送別会と隊員の士気高揚を目的としたバーベキュー形式の宴会が宿営地内で開かれていた。野外で新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を行った上で実施され、飲酒も許されていた。消灯時間が23時のため、22時半すぎに会はお開きとなり、Aさんは同僚と片付けをしていた。

 その際、Bに話し掛けられた。Aさんは先輩女性隊員と隊内でいざこざがあり、その件を聞いたBが「先輩と仲直りしないのか」と聞いてきたのだ。当時1等陸士だったAさんは、3等陸尉だったBとの面識がまったくなかった。「一般企業でいえば新人と部長くらい違う」(自衛官)ため、関わりがなかったのはむしろ自然だろう。一方のBは「隊内での働きが印象に残っていた」などと話しており、Aさんの存在はそれ以前から知っていたという。

 Aさんは幹部と話す機会もほとんどなかったため失礼があってはならないと思い、回答を曖昧にし、その場を立ち去ろうとしたが、Bに呼び止められた。Bはおもむろに「空挺団に興味はないか」などと今後の昇任について話し始めたが、消灯時間が迫っていたこともあり、女性隊員専用の宿泊テントに戻ろうとした。

 その時、いきなりBにお姫様抱っこされた。Bが酔っていることを認識し、「下ろしてください」と伝えたが、そのまますぐ近くの喫煙所まで連れて行かれた。その際、23時の消灯時間となり、街灯以外の電気がすべて消えており、月明かりで凝視してやっと相手の顔の輪郭が認識できる程度だったという。

 Bがタバコを吸い終わったタイミングで「テントに戻ります」と伝えたところ、「主任の俺と話していたと言えば怒られない。人目が気になるならアンビ(自衛隊の専用車両)に行こう」と言われた。階級差もあり、強く断ることができずにアンビに連れて行かれた。当初は再び今後のキャリアについて話し始めたBだが、話がそれて「彼氏はいないのか」と言われたため、Aさんは「そういう話になるのであれば帰ります」と伝えた。その時に怖いなという実感もあったという。以下はAさん。

「男女2人きり、上官とはいえ酔っている。階級差で断れない。消灯を過ぎていて助けが呼べない。テントはすぐ近くにあるとはいえ、助けを求めたとしても、そばの発電機の音で消される。運良く見つけてもらえたとしても陸士と幹部、立場的にも不利になるのは私だと思いました」

 そこで、「明日の訓練も早いのでテントに戻ります」と切り出したAさんだったが、Bは「ハグして解散にしよう」と答えた。「本当にハグだけですか」と聞いたところ、「本当だよ。俺は奥さんも子供もいるし。俺は主任だよ」と言われ、Aさんはテントに戻りたい一心でしぶしぶハグをしたが、Bはハグではとどまらず、力づくでAさんへの犯行に及んだ。

犯行直後の反応は被害者それぞれ

 犯行を受けたAさんはテントに戻り、演習に参加していない同期の女性隊員にLINEで被害を受けた旨を連絡。その時間が令和2年7月27日0時01分で、現場に残された体液とともに、これがのちのち裁判での決定的証拠となる。その後、翌朝の訓練に参加し、28日は夜間まで忙しかったのもあり、すぐには報告できなかった。Aさんは「演習は31日まであるので、この期間で警務隊が介入してくれば、駐屯地への帰隊が遅れてしまうかもしれないとの懸念があった。とにかく早く帰りたかった」と当時の心境を振り返る。

 Aさんが被害を受けた直後に訓練に参加していることや、帰隊時期のことまで考えて行動していることに違和感を覚える読者もいると推察する。しかし、痴漢も含めた性暴力の被害者の反応は、直後に泣き落ちて体が動かなくなる方もいれば、数日後に冷静になって振り返ってから改めて恐怖を感じる方などさまざまである。Aさんは「平気で」「普段通りに」訓練に参加したわけではないことは、特に自衛隊関係者には、ここで強調しておきたい。

犯行直後にもかかわらず、酔った男性幹部自衛官が待ち伏せて被害者を再び訪れる

 Aさんの悲劇は、まだこれで終わったわけではない。29日夜には所属する中隊での飲食をともなう慰労会が開かれた。パワハラ・セクハラ相談員の3等陸曹に場所を変えて相談し、訓練が終わったら中隊長に報告したいと伝えた。すぐに報告したほうがいいと言われたが、先ほどの通り、警務隊の介入によって駐屯地への帰隊が遅れることを懸念し、その日の報告は見送った。

 その後、なんとその慰労会には出席していないはずのBが待ち伏せしており、作戦室として設置されたテントに連れて行かれた。Bはまた酔っている様子で、そこでも同じような昇任やキャリアについての話をされた。

 帰りが遅いと心配した同期から連絡があり、AさんはLINEで「さくせんしつ」「はやくきて」と送った。陸士長の先輩からも電話があったが、Bには「俺といるって言えば大丈夫」と言われ、電話越しで雰囲気を察した先輩は電話を切った。少し前にBから被害に遭ったAさんは恐怖でいっぱいで逃げることもできなかったが、20分ほどしたあとにLINEを送った同期が駆けつけてくれたため、中隊に戻ることができた。Aさんは、またいつBが来るかわからず、早めに女性隊員専用の宿泊用のテントに戻り就寝した。

男性幹部自衛官、泥酔状態で女性専用テントに侵入

 30日午前1時ごろ、同じテントで寝ていた同僚に起こされると、なんとそこに泥酔したBがいた。このテントは女性隊員しかおらず、当然侵入するなどもってのほかだが、また昇任やキャリアについての話を始めたが、しばらくして出ていった。

 とりあえず、その日は寝ることにしたAさんたちだが、その後、テントの外から誰かが歩く音がし、音のほうへ目をやると、テントをまくって手が伸びて来た。BがAさんの寝具を外から触ってきてのだ。それを見た同僚は上官に報告し、Bを連れて行ってもらった。

 再び寝直し起床後、夜中の件を改めて隊に報告した。演習終了まであと1日だったが、女性専用のテントにまで侵入してくるBを放置していては他の女性隊員にも危害を加える可能性があると判断し、中隊長に報告、女性隊員はテント内隔離されることになった。Bも隔離されることになった。30日の夕方から警務隊が到着し31日以降、昨年11月下旬ごろまで聴取が続くことになる。

加害男性隊員、階級を利用した卑劣な犯行、泥酔状態も自衛官として失格

 この事件でBは何回も「俺は主任だ」と自分がAさんの上司であることを誇示した上で、関係を迫っており、パワーハラスメントの要素もあることは強調したい。自衛隊は階級社会であり、民間企業などに比べてより上下関係が組織の人間を強く束縛する。しかも演習場という特殊な場所での犯行であり、住宅地や繁華街などと違い、Aさんには助けを呼びにくくする心理が働いたと考えられる。

 また、いつ何時でも生命に関わる行為に従事する可能性のある自衛官である以上、慰労会のたびに泥酔状態になること自体、論外である。このBは酒に酔うと女性に言い寄る性質があるように見受けられるが、こういう男性隊員が自衛隊に存在し続ける限り、第二第三のAさんが生まれることは避けられないだろう。

個人の性質の問題でなく、防衛省、陸上自衛隊の組織全体の問題

 処分について第7特科連隊長の竹内肇一等陸佐は今年2月に「今回このような事案が発生し被害者の方には深くお詫び申し上げる。本人の自覚の欠如によるものであり判明した事実に基づき処分した。今後このようなことの無いよう隊員指導を徹底していく」と報道機関に向けたコメントを出している。

 しかし、この事件は「本人の自覚の欠如によるもの」といったB本人の性質だけに帰するものではない。筆者の取材によると、Bは事件以前にも自衛隊内でセクハラ事案を起こしており、性的暴行を女性隊員に及ぼす可能性が高い人間であることは、防衛省も陸上自衛隊の幹部も把握していたものと考えられる。にもかかわらず、野放しにしていた以上、Aさんの被害は組織全体の責任問題として取り上げるべきである。

 女性隊員に対する性暴力に対して超男性社会の自衛隊がいかに甘く、不十分な対応しかしなかったか、Aさんがいわれのない誹謗中傷にいかに苦しんだか、次回、詳述する。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)

Kyuzo Matsuoka

ジャーナリスト

記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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『オモウマい店』高視聴率を生む“常識を覆す”仕掛けとは?グルメ番組ブーム再来の裏側

 4月から火曜夜7時台で始まった『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)が好調だ。

 6月8日のオンエアは世帯視聴率12.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、個人視聴率7.1%とハイアベレージを記録。これはもちろん民放の同時間帯トップを誇っており、裏番組『オトラクション』(TBS系)の同日の個人視聴率1.6%を5ポイント以上も上回っている。

 日本全国の「オモてなしすぎでオモしろいウマい店」を探す『オモウマい店』は12年間放送されてきた『火曜サプライズ』の後番組としてスタートしたが、なぜスタート直後から人気番組となっているのだろうか。これは『火曜サプライズ』の後に同じグルメ番組を配置した日テレの勝利ともいえるが、それ以外にも、『オモウマい店』にはグルメ番組の定番を覆すさまざまな“仕掛け”があるという。

 今、再び台頭してきたグルメ番組ブームとともに総括する。

『オモウマい店』ならではの“発明”とは?

『オモウマい店』で特徴的なのは、ナレーションがほぼ皆無であるということ。店に関する必要最低限の情報については、“店内で毎日製麺”“大盛り注文の方はけんちん汁おかわり無料”など、テロップでフォローされている。民放のバラエティでここまで“ノーナレーション主義”を貫くのは珍しい。

 さらにグルメ番組といえば、まずリポーターが町を歩きながら店を見つけて入店。メニューを見て注文し、試食、という流れが一般的だが……。

「この番組は、こうした段取りをすべてすっ飛ばし、いきなり店内の映像から入っている。その上、店の場所も番組中盤になってようやく明かすという仕組みになっています。これまでのグルメ番組の“ルーティン”を外したことが、目新しさを生んでいます」(テレビ局関係者)

 さらにもうひとつ、この番組ならではの“発明”があるという。

「この『オモウマい店』では、まさにその店の様子がオンエアされている火曜当日の店内にカメラが入り、テレビに映っている自分を見て、店主がどんなリアクションをするのかを撮影。さらに、放送翌日の店にも密着し、反響まで追跡しています。どちらかといえば、日々ネタ探しに追われるテレビマンは『オンエアしたら終わり』という考えが根強い。しかし、同番組は、一度取材したキャラクターの良い店主をこうして“有効活用”していると言っても過言ではないのです」(同)

 また、同番組では取材の過程も斬新な手法を採っているという。

「飲食店への取材交渉は、えてして電話でおうかがいを立てるところから始まるものですが、『オモウマい店』ではディレクターがカメラを持って店に行き、その場で交渉していることが多い。いきなり相手の懐に飛び込むのはリスクがありますが、その場で取材OKしてくれるような店は、たいてい器が大きいし、人間的な魅力にあふれていることが多いはず、という算段でトライしているのでしょう」(同)

『火曜サプライズ』ではタレントによるアポなし取材が人気だったが、それをさらに進化させているということだろう。

 また、店を訪れるリポーターとして本田望結、トリンドル玲奈、北乃きいといった、あまり食べるイメージのない女性タレントを起用しているのも、同番組らしい仕掛けだ。さらに、新たな大食いタレントとして、どちらかといえばあまり食べそうにない「大盛のり子」というスターを登場させているのも、ポイントのひとつだろう。

テレビ界でグルメ番組が再ブームに

 そんな『オモウマい店』以外にも、今や民放各局のタイムテーブルには『満天☆青空レストラン』(日本テレビ系)、『バナナマンのせっかくグルメ!!』(TBS系)、『デカ盛りハンター』(テレビ東京系)といった食をテーマにした番組が並んでいる。

 さらに、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)も「チャレンジグルメ」と称して大食い企画を売りにしているし、日本人だからこそ知っておきたい情報を届けるはずだった『林修のニッポンドリル』(フジテレビ系)も、最近はスシロー、餃子の王将、ドミノピザなど飲食チェーンの裏側ばかり放送している。気づけば、大食い・大盛り・グルメ番組が花盛りなのだ。

「一時期はクイズ番組が花盛りでしたが、食欲という、より人間の生理に訴えかけやすいグルメ番組のほうが、そこまで手間もかからずに視聴率が見込めるという流れになってきているようです。また、飲食店に気軽に行けない、外でなかなか食べられない、という現代特有の視聴者の不満を、こうしたグルメ番組で解消している可能性もあります」(同)

 かつて、テレビ業界には「ラーメンを画面に出しておけば数字が獲れる」と言われた時期もあったというが、そうした流れが再び来ているのかもしれない。

(文=編集部)

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