政治DX・「800億円の聖域」をこじ開ける…公職選挙法の隙間を突くルールメイキング

●この記事のポイント
800億円規模の政治広告市場に挑むキャピトルシンク・松井亜里香氏の戦略を詳解。公職選挙法の規制を「参入障壁」という武器に変えるルールメイキング手法や、政治家の地域網をデジタルサイネージで資産化する投資型モデル、落選議員の採用による専門性確保など、レガシー領域を突破する経営戦略を深掘りする。

「政治の世界は、あまりにもアナログだ」――。

 選挙のたびに街中に溢れる紙のポスター、住宅街を低速で走り抜ける街宣車、そして膨大な人力を投じて一軒一軒配られるポスティング。デジタル化が叫ばれて久しい現代において、政治領域だけは依然として昭和の景色が色濃く残る。

 この「負」が凝縮された超レガシー領域に、テクノロジーと“ルールメイキング”を武器に斬り込むスタートアップがある。株式会社キャピトルシンクだ。代表の松井亜里香氏は、自ら国会議員秘書を務めた経験を持ち、公職選挙法という「複雑怪奇な壁」を逆手に取った独自のプラットフォーム戦略を展開する。

 大手広告代理店こそ参入しづらかった「政治×広告のDX」の領域で、彼女はいかにして戦場を設計したのか。その軌跡は、規制に縛られた日本で新たな市場を創出せんとする全経営者への金言に満ちている。

●目次

800億円の「消えない市場」と、巨人が踏み込めない空白地帯

 松井氏が着目したのは、選挙に関連して動く膨大な予算と、その「リカーリング(継続)性」だ。

「この国が民主主義である限り、選挙は絶対になくなりません。国政選挙1回で約800億円もの公費が動くとされており、さらに地方選挙を含めれば、日本中のどこかで一年中選挙が行われている。これほど巨大で、かつ景気に左右されない安定した市場は他にありません」

 しかし、これまでこの領域にITスタートアップや大手広告代理店が浸透してこなかったのには、構造的な理由がある。一つは「政治をタブー視する」日本企業の風潮、そしてもう一つが、専門家ですら見解が分かれる「公職選挙法」という法的リスクだ。

「最大手の広告代理店には、長年の付き合いの中で『色』がついてしまっています。特定の政党と深く結びついているため、全政党をフラットに扱う『中立的なプラットフォーム』を構築することが構造的に難しかったのです。一方、広告を受け入れる側の企業は色が付くのを嫌がります。私たちはスタートアップとして、どの政党にも属さないインフラを目指すことで、既存のパワーバランスを上手く調整して進めています」

 松井氏は、政治家(議員・候補者)、地元企業(スポンサー)、そして有権者を結ぶ「設置型デジタルサイネージ」を主軸に据えた。キャピトルシンク社が政治家の地元の店舗や街頭にサイネージを置き、そこで政治家の政策広告を流すとともに、地元の企業の広告も流すことで広告収入を得る。

 このビジネスモデルは実はとある大臣経験もある大物政治家による一言で生まれたという。

「僕たちは日々血反吐を吐きながらポスターを貼っているんだよ。君にこの大変さが分かる?」と。

「私は議員秘書の経験があるので、ポスター貼りの大変さを知っていました。政治家や秘書が暑い日も寒い日もポスターを貼ったり剥がしたりしていて非効率的だったので、だからこそ、もっと政策にリソースが使えるようにサポートできるサービスを作りたかったのです。ですが実際の政治家側のニーズは違いました。なのでサービスをピボットしたのです」

 政治家が一枚一枚地元の人たちにポスターを貼るためにお願いしたこのネットワークこそが『アセット』であると定義し、紙のポスターをサイネージにすることで他の広告主も広告を入稿し収入源にできるようにしたのだ。政治家の「地域ネットワーク」をデジタル資産化するこのモデルは、これまでの「貼っても1円にもならなかった使い捨てのポスター」とは一線を画す。地元密着型のサイネージメディアとして一気に導入を進めることができる。

“ルールメイキング”を事業の核に据える――「守る」から「作る」へ

 スタートアップが規制の厳しい領域で勝つために、松井氏が取った戦略は「既存のルールに従う」ことだけではなかった。

「公職選挙法は、1950年に制定された古い法律です。インターネットやデジタルサイネージといった概念がない時代のルールを現代に適用しようとすると、どうしてもグレーゾーンが生じます。そこで私たちは、ルールを後から守るのではなく、ルールを自ら作る側へ回ることにしました」

 松井氏は「政策広報DX協会」を立ち上げ、管轄庁である総務省との対話を重ねた。デジタルサイネージを政治活動に利用する際のガイドラインを策定し、法的な位置づけを明確化していったのだ。これは、かつてAirbnbやLuupが、既存の法律(旅館業法や道路交通法)に対して取ったアプローチと同じ「ルールメイキング戦略」である。

 私は投資家から「お前は政治領域で起業しろ」と言われていたため、「規制があるからできない、と諦める選択肢はありませんでした。規制があるからこそ、それをクリアしたプレイヤーだけが先行的に市場を独占できる。しかしせっかく民間の知見で政治を変えようとしても政治の経験がない人たちにとっては公職選挙法は複雑怪奇な上、法律だけではなく政治を理解していないと攻めと守りのバランスが非常に難しく、選挙の度に違反者・逮捕者が出てしまうのはとても残念に思います。私たちは徹底的な守りを固めるために、精緻な『公職選挙法チェックリスト』を作成しました。何がアウトで何がセーフか。役所と詰め切ったこのノウハウ自体が、後発企業に対する強力な参入障壁(MOAT)になるのです」

「ファーストペンギンとして市場を切り拓いていくのは簡単なことではありません。特に全く文化も常識も違う政治側と民間側の連携が必須の事業では、双方にハッタリを利かせて進めざるを得ないこともあります。偉い人たちを多く巻き込んでしまっている中で、選挙というテーマ上どうしても話が大きくならざるを得ないため、双方の進むスピードの違いや度重なる選挙の混乱で心臓がえぐれるような経験も何度かありました。まさに絶体絶命でしたが、その時確信したのです。大手がここまでリスクを恐れる領域だからこそ、ここを突破できれば、我々がこの市場を支配できる、と」

政治家の「負」を解決する――落選議員のセカンドキャリア支援

 松井氏の視線は、サイネージという「道具」の先にある、政治業界全体の構造改革に向けられている。その象徴的な取り組みが、落選議員や政治家志望で民間企業や政府を辞めた方々の積極採用だ。

「『猿は木から落ちても猿だが、政治家は選挙に落ちればただの人だ』という有名な言葉があります。政治家は落選した瞬間、収入を失い、世間からも冷たい目で見られる。しかし、彼らが持つ地域の課題解決能力や、複雑な利害関係を調整するスキルは、ビジネスの世界でも極めて価値が高いはずです」

 キャピトルシンクでは、現在多くの元議員や政治家を目指す元官僚を雇用してきた。彼らは「政治の現場」を知り尽くしているため、顧客である現職議員への提案力が極めて高い。同時に、彼らが「もし落選しても、キャピトルシンクのような受け皿がある」と思えるようになれば、志のある若者が政治家を目指す心理的ハードルも下がる。

「私たちは、政治を志す人がリスクなく挑戦できるエコシステムを作りたい。それが、巡り巡って日本の民主主義の質を高めることに繋がると信じています」

データの利活用が拓く、新しい民主主義の形

 キャピトルシンクが目指すのは、単なる広告会社ではない。議員の政策立案や政策提言をサポートするシンクタンク機能も担う。

 DX化によって更に意見が集まっていき、どの地域の、どの年代が、どんな政策に反応しているのか。それがリアルタイムで可視化されれば、政治家は「声の大きい少数派」だけでなく、「物言わぬ多数派」のニーズに基づいた政策立案が可能になる。今まで霞ヶ関が巨大なシンクタンクとして機能してきましたが、民間でないと作れない政策の可能性はまだまだ無限大だと思っています。

「デジタルサイネージは入り口にすぎません。私たちの本質は、政治領域における政策広報のプラットフォームです。これまで政治家を志す優秀な方々が矛盾だらけのルールの中で非効率な政治活動を続けることが美徳とされてきた政治活動を効率化し、国民とのコミュニケーションの手段を透明性を増やす。それが、私たちが掲げる『政治DX』の真のゴールです」

経営者に求められる「覚悟」の質

 取材の終盤、松井氏はこう締めくくった。

「10年後、20年後に、まだ政治家が紙のポスターを一枚一枚手作業で貼っている世界があるでしょうか? 答えは『NO』です。誰かがいつか必ずこの領域をアップデートするんです。ネット選挙解禁も民間主導で行われました。既存の仕組みを変えようとする人は覚悟が必要。刺されることもある。大変だからこそ、それをやるのは私たちでありたい」

 松井氏の歩みは、既存のアナログな枠組みに代替案を提示し、自らルールを書き換えていくスタートアップの本来の姿を体現している。

 ビジネスパーソンが得られる教訓は多い。「規制は壁ではなく、参入障壁という武器であること」「大手企業のリスク回避を逆手に取ること」、そして何より「時代の不可逆な流れ(デジタル化)を信じ抜くこと」だ。

「政治DX」という、日本で最も難攻不落な市場に挑むキャピトルシンク。彼女たちがこじ開けた風穴は、やがてこの国の民主主義そのものをアップデートする大風へと変わるかもしれない。

 松井亜里香氏は、国会議員秘書としての実務経験を持ち、政治現場のペインポイントを身をもって体験している「専門性(Expertise)」の高い経営者である。また、自ら協会を設立し、省庁と連携してルールメイキングを行う姿勢は、単なる一企業の利益を超えた「権威性(Authoritativeness)」と「信頼性(Trustworthiness)」を感じさせる。レガシー領域に挑む全てのビジネスリーダーにとって、彼女の戦略は一つのバイブルとなるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

訪問介護「崩壊」の真因…外国人材解禁・有効求人倍率15倍でも人手不足は解消せず

●この記事のポイント
日本の訪問介護が深刻な人手不足に直面している。ホームヘルパーの有効求人倍率は地域によって15倍を超え、2024年度上半期の訪問介護事業者の倒産は過去最多の46件を記録した。政府は外国人材の受け入れを解禁したが、実際に申請した事業者は全国約3万5000事業所のうち500未満にとどまる。背景には同行義務や事務負担など制度上の高い参入障壁、さらに2024年度介護報酬改定による減収がある。訪問介護崩壊を防ぐために必要な制度改革と、外国人材活用の課題を分析する。

 日本の在宅介護が確実に崩壊へ向かっているーー。

 東京商工リサーチによれば、2024年度上半期(4~9月)の訪問介護事業者の倒産は46件に達し、同期として過去最多を記録した。一見すれば数字は小さいようにも見える。しかし、問題の本質は「倒産件数」ではない。現場で起きているのは、事業所の撤退や休業、サービス縮小といった“静かな撤退”の連鎖である。

 背景にある最大の要因は、深刻な人手不足だ。厚生労働省のデータによれば、介護職全体の有効求人倍率は約3.8倍。これでも極めて高い水準だが、訪問介護員(ホームヘルパー)に限れば、地域によっては15倍を超える。つまり、1人のヘルパーを15事業所が奪い合う異常な市場が形成されているのである。

 この危機を打開する「切り札」として期待されたのが、外国人材の活用だった。政府は2024年4月、訪問介護分野において「技能実習」と「特定技能」の在留資格を正式に解禁。慢性的な人手不足に対する起死回生の制度改革として注目された。

 しかし制度開始から1年近くが経過した現在、現場の実態は驚くほど冷え込んでいる。入管庁への申請状況を集計すると、外国人ヘルパーの受け入れ申請を行った訪問介護事業者は全国で500事業者未満にとどまる。
全国に約3万5000カ所ある訪問介護事業所のうち、わずか1.4%程度にすぎない。鳴り物入りで始まった制度は、現場では事実上「門前払い」に近い状況に陥っている。

●目次

「善意の制度」が現場を締め付ける

 なぜ、これほどまでに制度利用が進まないのか。最大の理由は、外国人材を受け入れるための管理コストの高さにある。

 制度上、訪問介護事業者は外国人ヘルパーを受け入れる際、次のような要件を満たさなければならない。

 OJT同行義務:研修期間中は責任者などが常に同行する必要がある
 キャリア形成計画の策定:中長期的な育成計画の提出が義務
 ハラスメント相談窓口の整備:専門窓口の設置など管理体制の構築
 生活支援・相談体制の確保:住居・生活相談などのサポート義務

 制度設計の目的は明確だ。外国人労働者の権利保護である。

 しかし現場では、この「善意の制度」が逆に参入障壁として機能している。特に問題なのが、同行義務だ。訪問介護は本来、ヘルパーが単独で利用者宅を訪問するサービスである。しかし外国人材の場合、一定期間は日本人スタッフが同行しなければならない。

 つまり、人手不足を解消するために雇う人材の教育のために、既存スタッフの稼働時間がさらに削られるという矛盾が生じる。社会保障の専門家で社会福祉士の高山健氏はこう指摘する。

「訪問介護はもともと薄利のビジネスです。職員10人未満の小規模事業所が約8割を占める業界で、外国人材の管理体制を整備する余力がある事業者は極めて限られています。
制度自体は必要ですが、現在の設計では小規模事業者ほど利用できない“逆進的制度”になっている」

追い打ちをかけた介護報酬改定

 さらに、事業者の体力を奪ったのが2024年度の介護報酬改定だ。政府は今回の改定を「全体で1.59%のプラス改定」と説明した。しかし訪問介護の現場では、むしろ逆風となった。主な理由は、基本報酬の引き下げである。

 項目      改定内容
 基本報酬    身体介護・生活援助ともに約2〜3%引き下げ
 収益への影響  離島・中山間地域では58.7%が減収
 補填策     処遇改善加算を拡充

 厚生労働省の調査(2025年公表)では、改定後に減収となった訪問介護事業所は5割〜6割弱に達した。政府が基本報酬を引き下げた根拠は、訪問介護の収支差率7.8%というデータだった。しかしこの数字には、訪問介護特有のコストが十分に反映されていないという指摘が多い。

 例えば、以下のような費用である。
・利用者宅への移動時間
・採用コストの高騰
・ヘルパー確保のための賃金引き上げ
・空き時間(待機時間)

「訪問介護は、施設介護とはコスト構造がまったく異なるサービスです。移動時間やキャンセル対応など、表面の利益率では見えない負担が非常に大きい。基本報酬を下げた結果、事業者の投資余力が失われ、人材確保がさらに難しくなるという悪循環に入っています」(高山氏)

「密室介護」という構造的リスク

 外国人材導入を阻むもう一つの壁が、訪問介護特有の業務構造だ。施設介護の場合、複数のスタッフが同じ場所で働く。問題が起きても周囲の職員がフォローできる。

 しかし訪問介護は違う。ヘルパーは利用者宅という密室空間で、1対1の介護を行う。この構造が、外国人材の導入をためらわせている。言語の壁、文化の違い、緊急時の判断、利用者とのトラブルーー。万が一事故が起きれば、事業所は行政指導や営業停止など重大なリスクを負う。

 ある訪問介護事業所の経営者はこう語る。

「外国人材を雇いたい気持ちはあります。しかし、もし訪問先で事故が起きたら、責任を取るのは事業所です。現場を1人で任せるのは、正直かなり勇気がいる」

 つまり訪問介護では、人手不足の問題と安全管理の問題が直結しているのである。

「介護離職」が拡大する懸念

 訪問介護の崩壊は、単なる業界問題ではない。日本社会全体に深刻な影響を与える。

 最も懸念されているのが介護離職の増加だ。家族の介護のために仕事を辞める人は、すでに年間約10万人に達している。さらに政府試算では、2040年には介護人材が約69万人不足すると見込まれている。在宅介護サービスが縮小すれば、家族が介護を担うしかなくなる。その結果、労働力人口の減少と経済成長の停滞を招く可能性が高い。

 では、この危機をどう乗り越えるのか。専門家の多くが指摘するのは、制度の抜本的な再設計である。

 具体的には、次の3つが重要だ。

(1)同行義務のICT代替
ウェアラブルカメラや遠隔通話システムを活用し、遠隔監督を「同行」とみなす制度改革が必要だ。

(2)基本報酬の再評価
加算だらけの複雑な制度を整理し、訪問単価そのものを引き上げることが求められる。

(3)共同受入れモデル
小規模事業者が単独で外国人材を管理するのではなく、地域連携法人や介護事業者コンソーシアムなどを通じて管理機能を共同化する仕組みが必要だ。

外国人材は「調整弁」ではない

 重要なのは、外国人材を単なる労働力として扱わないことだ。介護人材の国際獲得競争は、すでに激化している。日本、韓国、台湾、シンガポール、ドイツ、これらの国が同じ人材を奪い合っている。

 人材サービス会社のアジア事業責任者はこう語る。

「もはや外国人材は“安価な労働力”ではありません。給与や待遇、教育体制、キャリアパスを含めた総合的な魅力がなければ、日本は選ばれない国になります」

 訪問介護の崩壊は、まだ「静かな危機」にすぎない。しかし制度改革が遅れれば、その危機はやがて社会全体を揺るがす問題へと発展する。

 外国人材は、日本の介護を救う“切り札”になり得る。だが、それは制度が現場に寄り添った形で設計された場合に限られる。今、日本の在宅介護は重大な分岐点に立っているのである。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高山健/社会福祉士)

映画レビュー「蒸発」

失踪者は、消えてしまいたいのではない。安心できる場所があれば、そこで暮らしたい。失踪は生き直すためのリセット作業なのだ。

投稿 映画レビュー「蒸発」映画遊民 映画をもっと見たくなる! 映画ライター沢宮亘理の映画レビュー、インタビューetc に最初に表示されました。

「いきなりそんな事を言われて…」余命1カ月半の女性が涙した厳しすぎる“アドバイス”【マンガ】 – ブラックジャックによろしく

佐藤秀峰の人気マンガ『ブラックジャックによろしく』の69話を掲載!若き研修医・斉藤英二郎が、過酷な研修の中で、医療現場の矛盾やさまざまな問題に直面し、悩みながらも成長していく。

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太陽光パネルの“大量廃棄時代”を見据えて──リクシアが創る“循環型再エネ”の新モデル

太陽光発電が社会に根づく一方で、その裏側では「役目を終えたパネルをどう扱うのか」という課題が静かに迫っています。発電設備としての寿命を迎えた太陽光パネルを、単に廃棄するのか、それとも次の価値へとつなげていくのか。再生可能エネルギーが“主力電源”として定着していくためには、発電後の姿まで見据えた仕組みづくりが欠かせません。

こうした課題に、国内でも早い段階から向き合ってきたのが、総合商社・丸紅株式会社と、太陽光パネルリサイクルの先駆者である株式会社浜田の合弁会社として2023年に設立されたリクシア株式会社です。

今回は、リクシアで取締役を務める芦川裕也氏に、リクシア誕生の背景と、リユース・リサイクルを軸とした循環型エネルギー産業の未来について、レジル株式会社の安藤圭祐氏が伺いました。

使えるのに廃棄される——リクシアが捉えた太陽光の課題


安藤:リクシア株式会社を創立された背景を教えてください。

芦川:丸紅は2002年から国内の発電事業に参画していますが、2019年ごろから、太陽光パネルの処理に関わる課題に着目するようになりました。そこで2020年から太陽光パネルのリユースやリサイクル事業の検討を本格的に進めてきました。


一方、共にリクシアを創業することになった浜田は、10年ほど前から、将来的に起こりうる太陽光パネルの大量廃棄に着目し、リサイクル事業に取り組んできた企業です。国内でも早い段階から、フレーム、ガラス、発電シートを分離する高度なリサイクル技術の研究・開発を進めてきました。

丸紅は発電事業の知見を多く持っていましたが、いわゆる“静脈側”にあたるリサイクル分野の知見は十分とは言えませんでした。そこで、環境省の実証実験でパートナーとして参加していただいていた浜田に声をかけ、2023年4月にリクシア株式会社が誕生したのです。

安藤:そもそも、なぜリユースやリサイクルの分野に着目されたのでしょうか。

芦川:リユースに着目したきっかけは、新品パネルの価格と、パネルの買い替え頻度に課題を感じたからです。現在は新品パネルの価格がワットあたり15円程度まで下がってきていますが、当時は40円ほどと高額でした。コスト面から見て、リユースパネルには一定の需要があると考えました。

加えて、まだ十分に使えるパネルが廃棄されてしまうケースも多く見られました。

たとえばメガソーラーでは、自然災害などの可能性に備えて保険がかけられています。一部に被害が出ただけでも、保険の対象としてすべてのパネルが撤去され、使用可能なものまで廃棄されてしまうことがあるのです。また、店舗や事業所を構えて太陽光発電を導入したものの、数年で本業から撤退し、パネルが不要になるケースもあります。

それであればまだ使えるパネルを、必要としている場所にもう一度届ける仕組みをつくれないか。そう考えたのがリユースの出発点でした。

ただし、リユースには限界もあります。日本全体で太陽光パネルの設置量が増え続ける中で、いずれは必ず処理のタイミングが訪れます。そこで着目したのがリサイクルです。単に解体して埋め立てるのではなく、資源として再び活用する流れが、将来的には必要になると考えました。

リクシアのソリューションが提供する社会的価値とは


安藤:リクシアが展開している、太陽光パネルを「買う」「売る」「処分する」ことで循環させる事業について、詳しく教えてください。

芦川:リユースでは、まだ使用可能なパネルを当社が買い取り、厳格な検査を行ったうえで品質を担保し、3年保証を付けて販売しています。

リユース品とはいえ、太陽光パネルは安価な設備ではありません。品質が保証されていなければ、購入の判断は難しいと考えています。現在は3年保証ですが、将来的には10年保証などへの延長も検討を始めています。

リサイクルについては、太陽光パネル専用の設備を持つリサイクル事業者と連携し、排出事業者との間をつなぎながら、契約や物流、マニフェスト(産業廃棄物管理票)交付支援など、フロント業務全体を一体で担っています。

安藤:現状では、リサイクル費用よりも廃棄費用の方が安価になるため、リサイクルされるケースは少ないと耳にしますが、リサイクルのメリットはどのような点でしょうか。

芦川:環境配慮という側面はもちろんですが、市場の需要という点でも意義は大きいと考えています。

たとえば、パネルの外枠であるアルミは、そのまま有価物として売却できます。また、発電シートには銀や銅、シリコンといった需要の高い素材が含まれており、適切に抽出することで再資源として活用できます。

一方で、課題が残るのがガラスです。太陽光パネルのガラスは高い透明度を確保するために特殊な原料が使われており、再資源化が容易ではありません。現在は、成分を分離して再利用する技術の検討に加え、「リサイクルされたパネルガラス」であること自体を付加価値として活かすなど、業界全体で模索が進んでいます。

安藤:リクシアのリユースは、どのような事業者が利用しているのでしょうか。

芦川:買い取りの中心は発電事業者です。自然災害の補償に伴って撤去したパネルや、事業撤退によって不要になったパネルを売却したいというニーズが多いですね。また、小売電気事業者から買い取りの相談を受けるケースもあります。

販売先としては、新たに発電事業を始める方だけでなく、メンテナンス事業者や既存の発電事業者も多いです。太陽光パネルは、一定の確率で経年故障が発生するため、同一型式のパネルを予備として確保しておく必要があるからです。

安藤:そのように需要があるとはいえ、中古という点で抵抗感を持つ事業者もいるのではないでしょうか?

芦川:そこで私たちは、リユースパネルで発電した電気に、「リユース電気」という付加価値をつける提案を行っています。

需要家にとっては、使用感は新品と変わりませんし、価格競争に陥りがちな電気に環境価値を付けられる点を評価していただいています。このリユース電気のスキームを組み込むことで、リユースパネルに対する需要も徐々に上がっているように感じます。

安藤:電気に付加価値をつける、ということは差別化しずらい電力を扱う小売電気事業者として重要なポイントです。

芦川:ブランディングやCSRを重視する企業の場合、リユース電気のような付加価値がある電気に関心を持つことも多いと思います。実際、中部電力ミライズが電力供給を行う名古屋のIGアリーナでは、リユースパネルを活用したモデルケースとしてリユース電気が使われています。

安藤:リサイクルでは、現在どのような発電事業者が活用しているのでしょうか。

芦川:FIT開始から10年ほどが経過し、設備の更新期を迎える発電事業者が増えています。

まだ使用できるものの出力が落ちてきたパネルを、より高性能で効率化されたパネルへと入れ替える、いわゆるリパワリングを進める動きですね。そうした事業者が、寿命に達していないものの出力が低下したパネルの処理方法として、リサイクルを検討するケースが多くなっています。

安藤:最新のパネルは、従来の半分ほどの面積でも同程度の発電ができてしまうので、リパワリングにより生み出したスペースを蓄電池等で有効活用する話も聞きますね。

環境配慮や持続可能な発電事業を考え、廃棄ではなくリサイクルを選択したいと考える事業者にとって、有効な選択肢と言えそうです。

リクシアのリユースパネルやリサイクルの取り組みに対して、ユーザーはどのような価値を感じているのでしょうか?

芦川:リユースに関しては、「新品同様に使える」という点に価値を感じていただくケースが多い印象です。これは、リクシアがリユースパネルに対して厳格な検査基準を設けていることが大きいと考えています。

リユースパネルの検査は大きな手間がかかるため、簡易検査のみで販売する事業者も多く存在します。しかし当社では、すべてのパネルを1枚ずつシミュレーターにかけ、複数項目にわたって検査を行っています。

一方で、リサイクルについては、現時点で「すぐに効果が見える」というよりも、「今後、確実に必要になるからこそ、今から取り組んでおきたい」という声に応えていく段階だと捉えています。実際、リサイクルにはまだ課題も残っています。

リサイクルの課題を生むコスト高


安藤:リサイクルにおける課題とは、どのような点でしょうか。

芦川:最大の課題はコストです。

廃棄の場合は、パネルを粉砕して埋め立てる処理となり、ほかの産業廃棄物と同じ方法で対応できるため、専用設備を必要としません。一方、リサイクルでは専用の設備が必要となり、現状では廃棄に比べて2〜3倍のコストがかかっています。

安藤:再エネの急速な普及に伴い、運転終了後の準備は進めるべき一方で、廃棄のコストの安さが、リサイクルの普及を妨げているようにも感じます。

芦川:おっしゃる通りです。短期的にこのコスト差を埋めるのは難しいのが現状です。

ただ、環境省などでも課題は認識されており、法制度化に向けた議論も進み始めています。

重要なのは、単に義務化へと進めてしまわないことです。高いコストを発電事業者に一方的に押し付ける形になれば、産業としてのバランスが崩れてしまいます。まずは「促進」という方向性で事業者の意識を高めつつ、10年後に訪れるとされる大量廃棄のタイミングに備えていく。そうした段階的なアプローチが現実的だと考えています。

もう一つの課題が、太陽光パネルの輸出です。本来であれば、コストをかけて廃棄やリサイクルをすべき経年劣化したパネルが、アフリカや中東などへ輸出され、結果的に利益を生んでいるケースもあります。

一部の国には「使えればよい」という需要がありますが、日本において有価物とみなされないものを輸出する行為は、バーゼル条約に抵触する可能性があります。

ただ、発電事業者や解体業者等もリサイクルコストを踏まえた上での判断であり、好んで輸出を選択しているわけではありません。

安藤:輸出の出口を法や制度により塞ぐのか、リサイクルに意識が向くよう補助制度を設けるのか、慎重な議論が必要になりそうですね。一気にどちらかに振り切ってしまうと、結果的に需要家に負担が及ぶ懸念もあります。

芦川:そうですね。リサイクルにかかるコストを適正なものとして捉えつつ、複数の選択肢を段階的に進めていく。そのバランスが重要だと考えています。

社会の“あるべき姿”実現に向けて


安藤:リクシアの取り組みは、発電事業者や小売事業者の環境問題への選択肢を広げていると感じます。これがビジネスとして普及することで、事業者の意識やビジネスモデルにも変化が生まれていくのではないでしょうか。

今後、再生可能エネルギーの普及や、循環型エネルギー産業の形成に向けて、リクシアが果たす役割や、展望を教えてください。

芦川:リクシアの強みは、太陽光パネルのリユースとリサイクルを一体で提供できる点にあります。この両方を成立させる事業モデルは日本国内はもちろん、世界的にも珍しいのではないでしょうか。

「使えるものはもう一度使う」「使えないものは資源として再利用する」

そうした“あるべき姿”を理念で終わらせるのではなく、事業として成立させて、社会に提供していきたいと考えています。

もちろん、事業としては経済合理性も欠かせません。国の支援制度との連携や、市場・需要家・発電事業者など、多様なステークホルダーと丁寧に目線を合わせながら、再エネ分野における“静脈産業”としてのリユースやリサイクルを拡大していく。それがリクシアのミッションだと考えています。


リクシアは、まだ顕在化しきっていない太陽光パネルの大量廃棄の課題に先回りし、リユースとリサイクルの両輪で備える選択肢を社会に提示しています。

発電を「つくる」だけでなく、「使い切る」ところまでを見据えた循環型の再生可能エネルギーモデルは、今後のエネルギー産業にとって、一度立ち止まって向き合うべき課題ではないでしょうか。

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