日本企業の低生産性は「OS」の欠如が原因…起業とM&Aを経て見えてきた、組織を動かす本質

●この記事のポイント
・日本の労働生産性はOECD38カ国中32位 。原因は「専門スキル」ではなく「物事を前に進める力(OS)」の欠如だと勅使川原氏は指摘する 。
・4度の起業とM&Aを経験した同氏は、「即戦力採用」の失敗を経て「育てる採用」へ転換 。30代以降に無能と思われることを恐れ、素直さを失う構造的問題を分析する 。
・新会社THUNDERでは、OSを29タスクに体系化した研修プログラムを提供。「AIを使いこなすにもOSが必要」と、スキル偏重の日本企業に警鐘を鳴らす 。

 OECD加盟38カ国中32位(2023年公開データ)——。これが、日本の労働生産性の現実だ。しかもその要因は、製造現場ではなく「ホワイトカラー」にある。

 株式会社THUNDER代表取締役社長の勅使川原晃司氏は、この問題の本質を「OS(推進力)の欠如」と断言する。アクセンチュアでの経験、4度の起業とM&A、そして組織拡大を経て見えてきた日本企業の構造的欠陥とは何か。

●目次

代理店・クライアントとの接点で気づいた「専門性」の限界

「専門知識があっても、仕事が全然進まない人が山ほどいました」 ——勅使川原氏がOSの重要性に気づいたのは、広告代理店時代、外注先やクライアントなど多くの企業と関わる中でのことだった。

「ブランディングやデジタルマーケティングの知識が深い人は多かったんです。しかし、専門的な知識のある人がプロジェクトを強力に前に進められるかというと、必ずしもそうではなかった。逆に、前職のニッセン時代の先輩たちは、特定の専門知識に頼らずとも、物事を完遂させる力を持っていました。『結局、何が優秀さの源なんだろう』と、その頃に考え始めました」

 専門性と成果は、必ずしも比例しない。むしろ、物事を前に進める力——それこそが本質的な能力(OS)なのではないか、という仮説が生まれた。

アクセンチュアで確信した「OS」という概念

 その仮説は、アクセンチュア入社後に確信へと変わった。

「私自身、マーケティングやデータ分析に自信があり、当時は少し排他的な態度をとっていました。内容を理解できない営業の先輩に対し、『なぜわからないんですか』と詰め寄るようなこともあったんです」

 しかし、代理店時代の経験だが、案件が炎上した際にその営業の先輩がクライアントを完全に見事にグリップし、事態を収拾する姿を目の当たりにしたことがあった。

「専門知識がなくても、必要な情報をインプットして実行すれば状況は変えられる。専門知識はショートカットの手段に過ぎず、仕事のクオリティを決定づけるのはOSなのだと痛感しました」

 一方で、優秀なプレイヤーほど他者との協働に苦戦する側面もある。

「学生時代は価値観の近い仲間とうまくやれていても、社会に出ると自分の至らなさに直面します。当時は後輩からも信頼されておらず、組織で動くためのOSが自分にも欠けていたのだと思います」

「即戦力採用」の落とし穴

 2018年の独立以降、4度の起業を経験する中で 、勅使川原氏は「採用」という壁に直面した。

「当初は事業拡大を優先し、履歴書が立派な『即戦力』を重視していました。しかし、大手コンサルファーム出身で面接も完璧だった人材が、入社後に周囲のアドバイスを拒絶したり、マネジメント面で大きな摩擦を起こしたりするケースが続いたんです」

 即戦力のはずが、価値観のズレによって組織を停滞させてしまう。

「面接だけで本質を見抜くのは非常に困難です。そのため現在は、チーム全員の目で価値観を見極めるようにしています。誰か一人でも違和感を抱けば、採用は見送る。今の基準はシンプルに『この人を育てたいと思えるか』。スキルは後付けできますが、価値観のズレは埋められません」

30代で「素直さ」を失う構造的問題

 なぜ、経験豊富な人材が適応に苦しむのか。勅使川原氏は、そこには「構造的な問題」があると言う。

「30歳を過ぎて自分の非を認めると、評価や給与に響くと恐れ、無意識に『理解できている振り』をしてしまう。自分を守るために素直さが失われていくのは、ある種、生物学的な反応のようにも見えます」

 一方で、未経験者は変なプライドがなく、失敗を恐れずに挑戦できる強さがある。

「OSが不足していると、自分の至らなさを指摘されるのを極端に嫌がります。一つひとつの仕事を最後までやり抜く経験を積んでいれば、自然とOS(推進力)が身につき、自信と責任感が生まれるはずです」

M&Aによる急成長と、組織変化の痛み

 採用の壁を突破するため、勅使川原氏が選んだのがM&Aによる上場企業グループ入りだった。

「上場企業の知名度と資本力により、案件獲得前でも先行して人を採用できる体制が整いました。これにより組織は急拡大しました」

 また、M&A直前のコロナ禍は、無駄の削減という気付きもあった。対面会議の移動時間を削減し、リモートを駆使することで、1人の生産性を極限まで高められることを痛感したという

 しかし、急成長と効率化の裏で1年目に多くのメンバーが退職するという事態も招いた。

「最大の要因は、リモート環境下でのコミュニケーション不足でした。経営陣が多忙になり、現場の新人へのフォローが不十分で、たまに厳しいフィードバックだけが飛ぶ。特に未経験者にとっては、孤立感を感じやすい過酷な状況を作ってしまったと反省しています」

日本型組織が抱える構造的課題「責任感の欠如」

 日本のホワイトカラーの生産性が低い理由について、勅使川原氏は「責任感のあり方」に注目している。

「多くの日本のサラリーマンは、上司の判断を仰ぐことに終始しがちです。承認を取りに行くことが、時に『自分で決める責任』からの回避になっていないでしょうか」

 この背景には「失敗への恐れ」と、それに対する「説明能力の不足」があると分析する。

「日本では、キャリアを会社に委ねる傾向が強く、新卒時から『何をやればいいか』を待つ姿勢が染み付いています 。例えばアメリカのように、若いうちから自分の専門性やポジションを能動的に獲得しに行く姿勢との差は、非常に大きいと感じます」

THUNDERが目指す「OS革命」

 こうした課題を解決すべく2025年6月、株式会社THUNDERを設立した。提供するのは、PowerOS(推進力)を体系化した研修プログラムだ。「考える」「実行する」「人を動かす」を軸に29のタスクに整理。ロールプレイ中心の実務直結型トレーニングを通じて、属人的だった推進力を再現可能なスキルへと昇華させる。

「営業を開始して数カ月ですが、企業規模を問わず、OS(推進力)に対する課題感は想像以上に強いと感じています 。すでに大手や地方企業からも多くの引き合いをいただいています」

 勅使川原氏は、国のリスキリング施策にもOSの概念を取り入れるべく、行政への働きかけも行っている。

「現在のリスキリング補助金は、プログラミングなどの『アプリケーション(専門スキル)』が中心ですが、それを活かすためのOSこそが土台であるべきです。採用の場でも、趣味や特技以上に、こうしたOS能力が可視化される仕組みを作りたいと考えています」

AI時代こそ、本質的な「推進力」が問われる

 生成AIが普及する今、OSの重要性はさらに増している。

「OSが強ければ、新しい技術も自ら学び、使いこなせます。逆に専門知識だけに頼っていると、技術の陳腐化に対応できません。物事を前に進める力は、時代を超えて普遍的な価値を持ち続けます」

 会議のあり方を見直す、婉曲な言い回しをやめる、過度な承認プロセスを減らす。こうした小さな「OSの改善」の積み重ねが、日本企業の生産性を大きく引き上げるはずだ。

「出世し、成果を出し続ける人は、必ずどこかでこのOSに向き合っています。専門スキルを磨く方が一見近道に見えるかもしれませんが、人生をより豊かにし、経済的な成果をもたらすのは、本質的な推進力であるOSの側なのです」

 スキル偏重からの脱却。それが、日本企業が再び世界で戦うための第一歩となる。

(取材・文=昼間たかし)

※本稿はPR記事です。

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