野田市女児虐待死事件の母親と、私の父から20年間DVを受けた母の共通点

千葉・野田の女児死亡 虐待を訴えた心愛さんの自筆アンケート(写真:毎日新聞社/アフロ)

 野田市の小4女児虐待死事件で母親が逮捕されたことに関して、DV被害者を支援するNPO法人「全国女性シェルターネット」が2月13日、DV虐待事案として対応を求める声明を出した。そのなかの「少女の母親は、まず、保護されるべきDV被害当事者であり、決して逮捕されるべき容疑者などではない」という文言に対し、賛否両論の声が上がり、ネットを賑わせていた。

 否定的意見を一部拾うと、次の通りだ。

「普通の人だったらまったく気持ちはわからないし、両親ともに同罪だと思う」
「母親を擁護する声があるが、全然理解できない」
「DV被害者を守る活動は立派です。じゃあ、この母親が心愛ちゃんにしたことはDVではないの?」

 このような手厳しい意見を言う人は、幸いなことにDVや虐待とは無縁の人生を送ってきたのだろう。「まともな母親だったら、何があっても子どもを守るものだ」という健全な固定観念が根底にある。

 しかし、繰り返されるDVがまともな感情も判断力も奪っていくことを、私は長年自分の母親を見て思い知らされている。

DVによる後遺症で人格障害になった母


 私は父の母に対するDVが常態化した家庭で育った。子どもに害はおよばなかったものの、お酒を飲むと怪物になる父が怖くて、その般若のような顔や怒鳴り声に、寒くもないのに歯がガチガチ鳴り、体の震えが止まらなかった。私はいつも父の顔色を窺い、逆らうようなことは一切しなかった。一言でも逆らったら、今度は怒りの矛先が自分に向くのではないかという恐怖感があったからだ。

 小2のとき、同じ学校の男児が父親に殺される事件が起きた。ノイローゼを患っていた父親が母親の発した言葉に腹を立て、台所から包丁を持ち出して母親を刺殺、「やめて!」と母親をかばった息子も刺したという。

 この新聞記事を読んだとき、私は猛烈な罪悪感に襲われた。

「わが身可愛さで母親を助けようとしない自分は、身勝手な娘ではないのか」

 私はそれまで、父から母をかばったことが一度もなかった。ただただ怖くて、震えていることしかできなかった。それでいながら、「いつか父も包丁を持ち出すのではないか」という恐怖にも苛まれ、相反する思いがせめぎあい、混乱した。

 平成16年の児童虐待防止法改正により、子どもの目前で配偶者に対する暴力が行われることが心理的虐待にあたることが明確化されたように、子どもの頃の私は深く傷ついていた。

 私が高1のとき、母は突然家を出た。兄の大学受験の2週間前のことで、兄は受験に失敗したこともあり、母を許そうとしなかった。まともに考えれば、何も息子の大学受験直前に決行する必要はないのに、母は20年間のDV生活により判断力を失っていた。

 その後は父のDVから逃れたはずなのに、母の後遺症は年を追うごとに深刻になっていった。8割方満たされている状態にいるときでさえ、満たされない2割の部分しか見えないような精神状態と言ったらいいのだろうか。被害妄想がひどくなり、身近な人間は、特に手を差し伸べた人間ほど皆悪者にされた。しかも、自分の意見を言えない生活が身についてしまったせいか、本人の前では素振りも見せず、第三者にはけなげに生きるヒロインを演じながら、自分の苦境を訴えた。

 うつ病を患い、やがて人格障害の診断も受けた。DVに支配されて過ごした20年間の爪痕は大きく、母の人格はゆがんでしまったのだった。

不都合な現実に向き合う強さを


 5月16日、野田市の小4女児虐待死事件で、傷害幇助の罪に問われている母・栗原なぎさ容疑者の初公判が開かれた。検察側は、「勇一郎被告に家庭を支配されていたことを考慮しても母親としての責任を放棄し、勇一郎被告の虐待を見過ごしたことは許されることではなく、刑事責任は重大である」として懲役2年を求刑した。それに対して、弁護士側は起訴内容を認めながらも、執行猶予を求めている。

 思ったよりも軽い求刑だったのは、論点が女児を死に至らしめたことではなく傷害の幇助であることや、「暴力で支配されている状況下」ということが考慮されたからだろう。

 公判では、LINEで逐次心愛ちゃんの行動を勇一郎被告に告げ口して虐待を助長させたことや、「夫が好きだった。離婚後、自分から連絡をとった」などの新証言もあり、一般の人々のなぎさ容疑者への批判は強まったように感じる。

 私自身、DV被害者の実態は理解しているつもりだが、だからといって、「母親は保護されるべきDV被害者であり、逮捕されるべき容疑者ではない」という全国女性シェルターネットの意見には賛成しかねる。「保護されるべきDV被害者」であったのは、娘が死亡する前までの話だ。娘が虐待死したという事実に対し、まったく罪がないとするのはちょっと違うと思う。

 公判では、400人以上の傍聴希望者が押し寄せたために、私は残念ながら抽選に外れて傍聴できなかったが、なぎさ被告は終始うつむいて一度も顔を上げることはなく、声もかぼそかったそうだ。そして、「心愛ちゃんに伝えたいことはありますか」との裁判官の問いにも答えなかったという。おそらく、裁判が行われ、周囲では物事が進んでいても、本人の心がついていっていないのではないだろうか。

 私の母は自分に不都合な事実を認めたくないために、自分に都合のいい解釈をして、ときには脚色まで行い、人の同情を買おうとした。それらはすべて、弱い自分を守るためであった。

 なぎさ容疑者に感じるのも、心の弱さだ。不都合な現実と向き合うには強さと勇気が要る。彼女が現実と向き合えるようになるには、まだ時間はかかるのかもしれないが、勇一郎被告と離れたことで、少しは冷静さを取り戻すかもしれない。そして、自分の行ってきたことのどこが間違っていたのかを理解する強さを身につけてほしい。

 6月26日、判決が言い渡される。
(文=林美保子/フリーライター)

百均・キャンドゥ、大不評の買ってはいけない商品5選…逆に汚れる&面倒で本末転倒

「キャンドゥ HP」より

 手頃な価格で、毎日の便利グッズや生活品を揃えることができる100円ショップは、なにかと重宝する存在だ。なかでも「キャンドゥ」は、「ダイソー」や「セリア」といった業界大手のなかでは後進のスタートだったものの、今年3月末時点で1005店舗まで達しており、快進撃を続けている。

 キャンドゥの創業は、バブル崩壊後の1993年。翌年からフランチャイズ展開を始め、2013年の20周年イヤーには白とオレンジが映えるデザインにロゴをリニューアルし、シンプルかつモダンな印象を与えるようになった。

 奇をてらわない品揃えが支持を集めているほか、315円、525円と、価格によって取り扱い商品が異なる生活雑貨ショップも同時に展開中。キャラクターとのコラボ商品開発や、InstagramなどのSNSでの情報発信に積極的なのもキャンドゥの特徴だろう。

 しかし、そんなキャンドゥにも「これはイマイチでは?」と首をかしげてしまうような商品が紛れ込んでいるのもまた事実。今回「Business Journal 買うべき・買ってはいけない調査班」では独断と偏見で、キャンドゥの「買ってはいけないプチプラグッズ5選」をチョイスした。春の新生活シーズンで思わず「失敗した!」と後悔しなくてすむよう、参考にしてほしい。

Laundry Hanger(20ピンチ)/108円(税込、以下同)


 身も心も気分を一新したくなるこの季節、溜まった洋服を洗濯してスッキリしたいが、洗濯物を干すときにいちいちハンガーを使うのは面倒……なんてこともあるだろう。そんなときに活躍するのが、洗濯物を一度にまとめて干せる折りたたみ式のランドリーハンガーだ。ほとんどの100円ショップで取り扱っているので、馴染みの人も多いはず。

 しかしキャンドゥの「Laundry Hanger(20ピンチ)」については、少々難ありだというユーザーの声も多い。というのもこのハンガー、プラスチックの耐久性が全体的に低く、特に枠の部分は、持ってみると簡単にクニャクニャ曲がってしまう印象を受ける。これでは、水分を吸った洗濯物をたくさん干したら、すぐに壊れてしまいそうだ。

 もうひとつ、ピンチ同士が絡まりやすいというのも難点。ハンガーを広げていざ干そうというときに、絡まっているピンチをいちいちほどかなければならないのは、結構なストレスがかかる。また、プラスチック製のチェーン部分もつくりが粗く、絡まったままきちんと下を向いていない状態でうっかり干してしまうとテコの原理でパーツに負荷がかかり、思わぬ破損の原因になりかねない。避けたほうがベターなアイテムといえるだろう。

スライドアーム式コンパクトバスタオルハンガー/108円


 同じくハンガー製品で「買ってはいけない」に名を連ねるのが、「スライドアーム式コンパクトバスタオルハンガー」だ。毎日使うバスタオルをかけておくことができるお風呂場グッズなのだが、ユーザーを悩ませてしまう要素がいくつかある。

 ひとつ目は、耐久性の低さ。ハンガー系の商品に共通していえるこの課題、残念ながらこの商品もクリアできていないようだ。一見するとほかのハンガー製品よりはしっかりとしたつくりに見えるのに、実は商品名にもある“スライド式”という部分が考えもの。横にグイッと長く伸ばすことで、一般的なバスタオルであれば折りたたまずに干せるようになるのだが、こうするとスライド収納時に比べて、耐久性がガクッと落ちるという声が上がっているのだ。

 ふたつ目の問題点は、スライドを元に戻すときに発生。ストッパー部分がかなり固めで、それなりに力まないと元通りにならず、慎重に扱わないと一気に固定が外れてしまう危険性がある。まさに“行きはよいよい帰りは怖い”な、困り者ハンガーだ。

珪藻土 石けん置き 白/108円


 洗面所やキッチンといった汚れがちな水回りは、いつでも清潔に保ちたいもの。特に石けんは、使っていると水分を含んですぐにヌルヌルになってしまうのが厄介だ。そこで役立ちそうなのが「珪藻土 石けん置き 白」なのだが、かなりマズいポイントがあるという。

 そもそも珪藻土というのは、植物性プランクトンの珪藻の殻が泥と一緒に沈殿して化石化した岩のことで、超微細な穴がいくつも空いており、半永久的な調湿効果を期待できるのだそうだ。しかし“超微細な穴”という珪藻土ならではの特徴が、逆に欠点に変わってしまうケースもある模様。

 なぜなら、この商品に濡れた石けんを置いておくと、石けんが溶け出し、珪藻土の穴に染み込む可能性があるから。やがて石けんが固まり、そのまま石けん置きとがっちりくっついてしまったという事例も報告されているようなので、機能的にもビジュアル的にもガッカリといわざるを得ないだろう。

ふきんハンガー/108円


 水回りの商品でもうひとつ、「ふきんハンガー」を取り上げたい。洗い終わった食器を拭くのに使ったふきんを、このハンガーに干しておけばきれいに乾いてくれるというアイテムなのだが、デメリットも少なくないようだ。

 まずこのハンガーも、例によって耐久性に劣る。プラスチック製のアーム部分が3本ついているのだが、根元の作りが甘く、先端に行くにつれて斜めに下がってきてしまうのだ。さらに、表面がツルツルに加工されていることもあって、下手をするとふきんが滑り落ちてしまいかねない。

 また、根元の吸盤にも欠点が。商品の注意書きにも記載はあるのだが、直射日光の当たる場所では透明な吸盤がレンズと同じ役割を果たし、日光が一点に集まってしまうと、最悪そこから発火の恐れがあるというのだ。ふきんを干すなら日当たりのいいところに……と考えるのが普通だろうが、そこでわざわざ火事の心配をしなくてはならないのは致命的だといえる。

大切なお洋服のホコリをとるブラシ/108円


 最後に紹介するのが、「大切なお洋服のホコリをとるブラシ」だ。新生活シーズン、急な出張などで遠出をしなければならない場面もあるだろう。そんなとき、サッと拭いて身だしなみを整えられる携帯式のホコリ取りを持っているとよさそうだが、いったいこの商品はどこがダメなのだろうか。

 最初の残念ポイントは、“靴べらとして使用できます”と謳われているカバー部分。別段ストッパーがついているわけでもないので、本当に靴べらとして使うと、グニャグニャと曲がりすぎてしまって心もとない。結局、カバーはカバーでしかないといえそうだ。

 そしてもうひとつの残念ポイントが、本来の用途であるホコリ取りとして使うと、ブラシの赤い毛が抜けて、衣服に付着してしまいやすいということ。これはクリーナー製品として、致命的な欠点といえるだろう。実際にセーターで試してみたところ、生地にはブラシの硬質な毛がびっしり。衣服を清潔にしたかったはずが逆に汚してしまうとは、なんとも本末転倒なアイテムである。

 今回選んだ商品のなかにはプラスチック製品が目立ち、これは108円という心強い低価格を実現するためには、仕方ないことでもあるのだろう。とはいえ、ほかの大半の商品は、アイデアや素材にこだわった高品質なものばかりだ。今回の記事も踏まえ、キャンドゥなどの100円ショップでの買い物を、積極的に楽しんでみてはどうだろうか。

(文・取材=「買うべき・買ってはいけない調査班」from A4studio)

30代独身女子、マイホーム購入で注意すべき3つのリスク…銀行の無理なローン設定に要注意

「Gettyimages」より

 30代後半から40代にかけて、「もしかして、一生独身かも……」と思い始めた時、シングルが思わず考えてしまうことの一つがマイホーム購入らしい。不動産のチラシなどをみると、素敵なインテリアのラグジュアリーなマンションがズラリと並ぶ。しかも、毎月の住宅ローン返済額は、今の家賃と同じくらい。ずっと家賃を払い続けるくらいなら、住宅ローン完済後は、不動産という資産が自分のものになるわけだし、高齢になると、賃貸住宅が借りにくくなって更新などを断られるケースもあると聞けば、いっそ買ったほうが良いのでは? と、考える気持ちはよくわかる。

 しかし、とりわけ将来の不確定要素が多いシングル女子が住宅ローンを組んで安易にマイホームを購入するのは要注意! これから、その理由である、アラサー独身女子がマイホーム購入前に知っておきたい3つのリスクについて説明しよう。

 30代半ばを過ぎて独身だと「マンション買わないの?」と言われ――。37歳のマリコさん(仮名)は、都内の総合病院に薬剤師として勤務している。忙しい仕事の合間をぬって、休日ともなれば、友人たちと登山やキャンプを楽しむアウトドア派だ。

 そんなアクティブで充実した日々を送っているマリコさんだが、30代半ばを過ぎた頃から、「マンション買わないの?」と言われることが多くなってきた。

 現在、マリコさんが住むのは、家賃8万円の1DKの賃貸マンション。最寄駅に近く、周辺にはコンビニや商店街も充実していて、とにかく便利なところが気に入っている。ただ、同年代で独身の友人たちのなかには、はやばやとマンションを購入した者もいて、遊びに行くと、決して広くはないものの、自分の住まいと比べると、エントランスや間取り、内装、設備などグレードの違いを感じずにはいられない。

 購入した友人に住宅ローンの返済額を聞けば、今の家賃よりちょっと多いかなという程度。マリコさんの年収は約750万円で、勤務先は安定しているし、貯金も1,000万円以上ある。マリコさんとしては、住宅ローンを組めば、自分もマンションを購入できないわけではないとは思う。今は金利も低いらしいし、どうせ買うなら、2019年10月に消費税率がアップする前に購入しておいたほうがオトクのような気もする。

 その一方で、現在つき合っている特定の相手はいないが、これから結婚するかもしれないし、マンションを買ってしまうと、自分がもう結婚しないみたいに周囲に見られるのがなんとなくイヤだった。こんな状況のなか、マリコさんはマイホームを買うべきかどうか悩んでいる。

首都圏の新築マンション契約者の約1割はシングル


 マリコさんに限らず、以前からシングルでマイホームを購入する人は一定数いる。株式会社リクルート住まいカンパニーが首都圏の新築分譲マンション契約者を対象にした調査によると、2017年の契約者全体のうち、子どもあり世帯が45.4%と約半数を占めているのに対し、シングル世帯は9.9%(男性5.2%、女性4.8%)。

 2001年から時系列に主な契約者世帯の状況をみると、シングル世帯は最も高かった2004年の14.9%(男性7.2%、女性7.7%)に比べると減少しているものの、ここ数年は、契約者のおおむね1割程度を占めている。



シングル女性は、老後の安心のために“終の棲家”を持っておきたい


 同調査における購入理由について見てみると、契約者全体では「子供や家族のため、家を持ちたいと持ったから」(約43%)が最も多い。続いて「現在の住居費が高くてもったいないから」(約32%)、「金利が低く買い時だと思ったから」(約25%)となっている。購入理由をライフステージ別にみると、シングル世帯では「金利が低く買い時だと思ったから」「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」が全体に比べて高くなっている。

 さらに、シングル女性世帯で最も多い理由として挙げられるのは、同率首位で「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」(33%)「老後の安心のため、住まいを持ちたいと思ったから」(33%)の2つ。これらは、前年より5ポイント以上増加している点も特徴的で、とくに女性の場合、後者の理由の比率が男性より高い。

 一般的に、購入者の多くは30代以降だが、若くても老後を意識する人が増えてきたということだろうか。もしくは、仕事や恋愛、結婚など、さまざまな可能性や選択肢があるなかで、恣意的に選択でき、確実に自分の手元に残るマイホームという資産を持つことが絶対的な安心感につながっているのかもしれない。

シングル女性がマイホーム購入前に知っておきたい3つのリスク


 では、30代シングル女性がマイホームを購入する際のリスクとはなんだろうか? 筆者は、リスクが三層に重なる構造になっていると考えている。

 まず1つ目は、「持ち家リスク」だ。つまり、シングルなどライフステージにかかわらず、持ち家派と賃貸派の議論になった際に頻繁に取りあげられる論点である。

 持ち家のデメリットとして挙げられるのは、住宅ローンは家賃程度であっても、各種税金や手数料、修繕費用などで年間コストが大きな負担になること。昨今の不動産の資産価値の低下や住み替えに柔軟に対応できないことなどであろう。

 続いて2つ目は、男女問わず「シングルがマイホームを購入するリスク」である。これは大別して2つあり、基本的に住むのが一人であることと、住宅ローンを返済するのも一人であることだ。つまり、単身で住むのが前提であるため、万が一、病気やケガ、転勤などなんらかの理由でそこに住めなくなった場合、それをどうすべきか考えておく必要がある。もし賃貸に売却したりするならば、物件は駅からできるだけ近く、広さも50平方メートル以上あるなど、売却等がしやすい物件を選ぶことも重要なポイントとなる。

 そして、住宅ローンを組んで購入する場合、返済は自分一人の収入で賄わなければならない。同じく、病気やケガ等で収入が減少した場合のリスクや備えは、購入前に検討しておく必要がある。

 最後の3つ目は「女性特有のリスク」である。社会で活躍する女性が増えてきたとはいえ、相対的に男性よりも女性のほうが収入は低く、会社での立場も脆弱なことが多い。仮に、マイホーム購入後に結婚した場合、居住地や勤務状況などライフプランが配偶者次第で変わってしまうことも多々あるのが現状だ。

 実際には、結婚後に妻が購入したマンションに住むことになり、夫がこれまで住んでいたマンションが空き家になった、というケースも少なくないが、その場合も世帯全体としてダブルローンを抱えるリスクは残る。

高齢になると賃貸が借りられなくなるのはホント?


 このように、シングル女性がマイホームを購入する場合、これらの三層構造になったリスクをクリアできるかどうかをよく考えてほしい。

 別段、シングル女性はマイホームを買うべきではないなどと言うつもりはない。ただ、銀行の住宅ローン担当者から、無理な住宅ローンを組んで、個人破産やローンが債務不履行(デフォルト)に陥るシングル女性のケースが増えており、審査も厳しくなっているとも聞いている。

 ちなみに、高齢になると賃貸が借りられなくなるから持ち家のほうが安心ということに関しては、状況は変わりつつある点も知っておきたい。

 そもそも、その理由として挙げられるのは、賃貸マンションなどを借りる場合、年金以外の定期的な収入を持つ、近隣に居住する保証人が必要なことがほとんどで、高齢になると保証人を確保するのが難しいからだ。しかし、最近では保証人の代わりに保証会社を利用できる物件も増えている。そもそも、これからの日本社会は高齢者が今以上に増えるわけだから、「高齢だから貸せない」なんて言っていると誰も借り手がいなくなってしまう。

 おそらく今後、住まいを借りる際により重視されるのは、給与であれ年金であれ、キャッシュフローがあるか否かだろう。シングル女性が将来に不安を感じ、確実な安心感を求めてマイホームを購入するのなら、本当にそれが真の心の拠りどころとなるのかをよく考えてほしい。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

寿司屋で「梅」より高価な「竹」を多く売る方法…アンカリング効果の活用より検証

「Gettyimages」より

 皆さんは同じ長さの直線が矢の向きによって異なった長さに見える「ミュラー・リヤー錯視」を見たことがあるでしょう。



 これは本来、直線とは無関係な矢印の向きが、人間の知覚を惑わしているのです。多くの錯視は、物体の見え方が背景の色、影の濃淡、描写法(遠近法)などに影響される効果を狙ったものです。視覚以外の知覚も同様で、人間は一見、無関係と思われる要素に惑わされてしまうことが多くの研究からわかっています。

 マーケティングにおいてこのような例を紹介するため、まずは、ダン・アリエリーの行った「ECONOMIST」という週刊誌の年間購読の選択実験を説明しましょう。同誌の年間購読プランA、B、Cのどれを選ぶかを、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院の学生100人に訊いた結果が下の表です。

・プランA:ウェブ版「エコノミスト」の購読 59ドル - 16人
・プランB:印刷版「エコノミスト」の購読 125ドル - 0人
・プランC:印刷版およびウェブ版のセット購読 125ドル - 84人

 プランBはプランCと同じ料金ですが、ウェブ版が含まれていないため、合理的な消費者であれば、当然、プランBを選びません。次に選択肢からプランBを除いて、同じ学生100人にプランAとCのどちらを選ぶか訊いた結果が以下です。

・プランA:ウェブ版「エコノミスト」の購読 59ドル - 68人
・プランC:印刷版およびウェブ版のセット購読 125ドル - 32人

 ここで興味深いのは、選択肢がプランAかCだけの場合、より安いプランAを選ぶ人が多いのに対して、誰も選ばないまったく無意味なプランBが選択肢に加わっていると、値段の安いウェブ版よりセットのほうが選ばれたことです。プランAとCの相対的な評価が、プランBの有無に影響を受けたため、この現象はアンカリング効果(係留効果)と呼ばれています。

 この場合、出版社は、誰も選ばない印刷版のみのプランBをオトリ商品として提示することによって、より高価なセット版の販売を増やすことができます。では売り手はオトリ商品によるアンカリング効果をどのように使うかを紹介しましょう。

 ある寿司屋では2種類の盛り合わせ、高価格・高品質の「竹」と低価格・低品質の「梅」を提供していて、現状、これらの注文は半々です。売上アップのために店主は「梅」より「竹」の注文を増やしたいのですが、どのようなオトリ商品を提供するべきでしょうか? ここでは、2つの対策が考えられます。

A)「竹プラス」を出す(妥協効果)

「竹プラス」は「竹」と中身(品質)は同じですが、食器を高級にしたり「期間限定」を名乗ったりすることによって、より高額になっています。図1は、価格軸と品質軸のマップ上に3種類の盛り合わせをプロットしたものです。「竹プラス」は賢い消費者には選ばれないため、無関係な選択肢、つまりオトリ商品となります。「竹」の「梅」に対する弱みは高価格なことですが、「竹」と同品質でさらに弱みが大きい「竹プラス」が存在することで、「竹」の弱みが和らぐ効果があります。劣った属性(価格)の範囲を広げることによって、それほど悪くないと感じさせることから、妥協効果あるいはレンジ効果と呼ばれます。

図1

B)「梅プラス」を出す(魅力効果)

「梅プラス」は「梅」と中身(品質)は同じですが、食器を高級にしたり「期間限定」を名乗ったりすることによって、「竹」と同じ価格になっています。図2は、価格軸と品質軸のマップ上に3種類の盛り合わせをプロットしたものです。「梅プラス」は賢い消費者には選ばれないため、無関係な選択肢、つまりオトリ商品となります。「竹」の「梅」に対する強みは高品質なことですが、「竹」と同価格なのに品質が低い「梅プラス」が存在することで、「竹」の強みが引き立つ効果があります。優った属性(品質)に関して、より劣ったオトリを加えることで、一層魅力的に見えることから、魅力効果あるいはフリークエンシー効果と呼ばれます。

図2

C)妥協効果>魅力効果

「梅」に対する「竹」の選好を増加する妥協効果と魅力効果ですが、どちらの効果がより強いでしょうか? プロスペクト理論などで提唱されているように、人間は利得増加よりも損失回避を重視します。「梅」に対する「竹」の弱みは損失、「梅」に対する「竹」の強みは利得と解釈できるため、弱み(高価格)を和らげる妥協効果は強み(高品質)を増強させる魅力効果より強くなります。

D)妥協効果+魅力効果

 妥協効果と魅力効果の相乗効果を狙って、図3のような「竹」より高価格かつ低品質な「オトリ」商品を販売したら、「梅」に対する「竹」の販売比率をもっと増やせるのではと考える読者もいるのではないでしょうか? 両方の属性(品質と価格)の値を同時に操作した「オトリ」商品だと、人は品質の違いと価格の違いとをトレードオフにかけて、頭の中でさまざまな計算をするため、妥協効果や魅力効果が弱まってしまいます。どちらか片方の属性値のみを変えることによって、商品間の優劣がより明確となり、妥協効果あるいは魅力効果が強く出ることが実験で確認されています。
(文=阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

図3

ゾゾタウン、前澤社長の存在が経営リスク要因に…株式時価総額1兆円が消失

前澤友作社長のツイッターより

 ファッション通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ)の前澤友作社長は2月6日、自身のTwitterアカウントで「しばらくツイッターはお休みさせてください」「本業に集中します。チャレンジは続きます。必ず結果を出します」とツイートした。

 前澤社長といえば、女優・剛力彩芽との交際や、米宇宙開発ベンチャー「SpaceX(スペースX)」と契約して民間人として初めて「月に行く」と宣言したり、合計1億円の「お年玉」を贈呈する企画を実行に移したりするなどして、世間に話題を提供し続けてきた。

「前澤社長は話題づくりを株価上昇策としてきた」(中堅証券会社の新興株担当アナリスト)との辛口の批判がある。足元を見透かされたかたちで株価を大きく下げた。

 前身のスタートトゥディの株価は2018年7月18日、上場来最高値の4875円を付けた。同年10月1日に社名をZOZOに変更してからは、株価はズルズルと下がり続け、今年に入ってからも回復せず、2月8日、一時は昨年来安値の1621円まで下落した。株式時価総額は昨年7月18日の1兆5192億円から5051億円へ下落し、1兆円が消えてしまった。

目玉のゾゾスーツの失敗でPB事業は125億円の赤字


 前澤社長は1月31 日、ZOZOの19年3月期第3四半期の連結決算発表で、「申し訳なく思います」と陳謝し、通期見通しを下方修正した。売上高は従来予想の1470億円から1180億円(前期比20%増)へ、営業利益は400億円から265億円(同19%減)へ、純利益は280億円から178億円(同12%減)へ引き下げた。期末配当も従来予想の22円から10円に減配する。前期は17円だった。減益になるのは1998年の設立以来、初めてという。

 下方修正した最大の要因は、鳴り物入りではじめた「ゾゾスーツ」の無料配布だ。スマートフォンで計測したデータを基に、体型に合ったスーツやジーンズのプライベートブランド(PB)商品を購入できるというもの。しかし、顧客がゾゾスーツを取り寄せても採寸しないケースが相次いだ。中国の生産工場から商品到着まで、最大で5カ月の遅延が発生するなど誤算続きだった。そのためPB事業は125億円の赤字を計上する見込みになった。今期200億円としていたPB事業の売上目標を30億円に引き下げた。

 前澤社長はPB事業を通販と並ぶ経営の柱に育てる考えだった。ゾゾスーツが出足からつまずいたことで、生産体制を含めてPB事業のビジネスモデルの練り直しを迫られることになる。

大手出店企業の退店相次ぐ


 本業である通販事業「ゾゾタウン」でも、大手アパレルの出店停止が相次いだ。ZOZOは18年12月25日、有料会員への割引サービス「ZOZO ARIGATOメンバーシップ」を開始した。年3000円(税別)または月500円(同)を払い会員になると、月5万円(税込み)を上限に10%割引で買い物ができる。ゾゾタウンを初めて使う場合には、最初の月は30%割引となる。割引の原資はZOZOが負担する。

 出店企業にとって安売りしたくない新商品も割引の対象となる。ブランド価値が損われるとして出店を停止する企業が相次いだ。アパレル大手オンワードホールディングスは「23区」や「自由区」など百貨店などに展開する主要ブランドの出品を取りやめた。子供服大手三起商行が運営する「ミキハウス」も撤退した。ミキハウスの木村皓一社長は、「週刊新潮」(新潮社/1月24日号)で撤退した理由をこう語っている。

「あんなセールやられたらさすがにアカンわ。イメージダウンやで。1月7日の朝に担当者から報告があって、即決や。画像見てこれはアカンなって。『ブランドイメージをダメにすることだけはせんように』って担当の部長にも言ってあったから」

 宝飾ブランドを展開する4℃ホールディングスや、カジュアル衣料のライトオンも撤退すると報じられた。1255の出品企業のうち42店舗が商品の販売を見送ったという。セレクトショップ大手のユナイテッドアローズは、インターネット通販サイトの運営を「ゾゾタウン」から自社運営に切り替える。ユナイテッドアローズは出品を継続するが、ZOZOの対応次第では退店する企業がさらに増える可能性もある。

 大風呂敷を広げて株価を押し上げ事業を拡大させる手法は、米電気自動車ベンチャー、テスラのイーロン・マスクCEOと似ていることから、「前澤社長は日本のイーロン・マスク」と評せられたこともある。マスク氏はMBO(経営陣の自社株買い)をテコに上場廃止するといった動きを見せ、既存株主の反対などで、それを撤回するなどして市場(マーケット)の信用を失った。

 ちなみに前澤社長は昨年、「批判したい奴も嘲笑いたい奴もどうぞどうぞ。そんなの屁でもないわ。」とツイートして話題を呼んだが、2月にツイッターの休止宣言をすると、皮肉にもZOZOの株価は一瞬上昇した。
(文=編集部)

野田市小4虐待死は他人事ではない…自分の子を殲滅の対象にする人間の本能と家庭環境

野田市のHPより

 千葉県野田市の小4女児虐待致死事件は、本当に痛ましい事件でした。父親に暴行されるだけでなく、真夜中に立たされ、真冬に冷水を浴びせられ、最期は父親に激しい暴行を受けて亡くなったそうです。誰にも助けられることも、救われることもなく――。多くの方が無念な思いを募らせています。

 母親、学校や児童相談所をはじめ周囲の何人もの大人が事態を把握していたにもかかわらず、「誰も助けてくれない」という絶望のなかでの死です。人は愛されることで痛みから救われる生き物ですが、愛を感じられずに逝くことになった苦しみは想像を絶します。こんな事件は二度と起こってほしくありません。では、どうすれば防げたのか、ここでは父親と母親の心理学から考えてみましょう。

母親はなぜ父親の暴力を止めなかったのか?


 この事件には多くの謎がありますが、まず、なぜ母親は父親を止められなかったのかを考えてみましょう。私には母親は学習性無力感、そしてストックホルム症候群に陥っていたように見えます。学習性無力感とは、何をやってもどうにもならない体験を繰り返すことで、状況を変える気力を失って何もしなくなることです。この状態では「何もしない」が唯一のできることだと思い込んでしまいます。実際、「(父親の暴力を)止めてもどうにもならない」と周囲に漏らしていたそうです。

 そして、ストックホルム症候群とは、自分に危害を加える可能性を持つ対象に協力的になることです。加害者と長期間生活を共にするなかで陥りやすく、立てこもりの銀行強盗に人質として監禁されていた人たちが多く陥ったことで知られています。恐怖によるマインドコントロールともいえます。母親は虐待に加担したと疑われているわけですが、本当に加担していたなら父親にマインドコントロールされていたと思われます。

環境に支配される人の心


 これは他人事ではありません。心は私たち自身のものでもありますが、実はかなり環境に支配されるものなのです。米スタンフォード大学の監獄実験で看守役に同一化しすぎた学生たちが、囚人役の学生たちを虐待して心的外傷を負わせた事件はあまりにも有名です。また、アイヒマン実験と呼ばれる社会心理学の実験では、場を支配する権力者に命令された人の65%は、罪のない人に高圧電流を流す操作(実際には電流は流れない)をしてしまいました。人の心は多分に環境に支配されているのです。

 学習性無力感とストックホルム症候群の両方に陥ってしまうような状況に置かれたら、私たちも良識的に振る舞うことができないかもしれません。また、助けを求めることさえもできないかもしれません。そのような環境をつくらないことが重要です。

父親はなぜ暴力をふるってしまうのか?


 では、父親はなぜ家庭をこのような環境にしてしまったのでしょうか。いたいけな子どもに暴行してしまったのでしょうか。

 虐待の加害者心理には多くの考察がありますが、私は人の心が持つ敵を殲滅する本能、そしてその本能を刺激する環境に根本的な原因があると考えています。

 家族は母親の実家である沖縄に住んでいたこともあり、40代の父親は沖縄県関連の東京事務所の嘱託職員だと伝えられています。嘱託職員は、一概にはいえませんが身分が不安定で低収入なこともあります。職場での立場も決して良くないことも多いようです。

 現代社会は格差社会化が進み、社会に余裕がなくなるなかで、世の中の自分への待遇に不満を持つ男性が増えているといわれています。役職定年や定年退職などでそれまでの厚遇を剥奪された中高年の不満は、鉄道関連暴力の統計にも表れていますが(※)、父親も自分に対する社会的な評価になんらかの不満を抱えていたのかもしれません。

子どもが敵に、子どもが罪人に見えてしまう心理

 
 不満で機嫌が悪い状態は、敵を殲滅する本能が発動しやすい状態です。イライラしている人に不用意に近づくと八つ当たりされますよね。この状態だと、誰でも彼でも敵のように見えてしまうのです。

 子どもは自由な存在で親の所有物ではありません。親の思い通りにならないのは当然のことです。しかし、イライラが募っていると、わざと自分に嫌がらせをする敵のように見えてしまって、虐待に至るケースが多いようです。特に自分が王様になれる家庭のなかでは、王に歯向かう罪人のように見えてしまって、さらに容赦がなくなってしまうこともありえます。

 もちろん、良識を強く持つことで自分を顧みることができるのが人間です。人間らしさを失って自分を顧みることができなかった父親の人間性も事件の大きな要因ですが、敵を殲滅する本能が発動しやすい状況にあったとはいえるかもしれません。

 事件の闇を説いても被害者は蘇りません。失われた命は戻ってきません。しかし、もう二度とこのような事件を起こさないために、心を支配されるような家庭やイライラが募るような環境を生まない社会の仕組みも必要です。子どもの安全を守れる社会に向けて、親が抱えるリスクもいち早く発見して、必要な手立てを取れる社会の設計をみんなで考えられればと思います。
(文=杉山崇/神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授、臨床心理士)

【注釈】
※JR3社・日本民営鉄道協会ら(2014)「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」

メルカリで今こんなモノまで売れている!ユーザ独自ルールでトラブル多発に要注意

メルカリのアプリ起動画面

 メルカリの人気が高まっている。2018年7月時点で日本国内では7100万ダウンロード、利用者数は月間1000万人を超えている。このメルカリの普及は、若者の消費行動にも影響を与えている。

「メルカリで調べて売れるか確認してからものを買うようになった」とある女子大生は言う。「いつも、メルカリで売れ筋のものを買うようにしている。5000円のものを買っても3000円で売れれば、2000円で楽しめたことになってお得」。

 メルカリが人気の理由とトラブルにつながりやすい利用実態について解説したい。

手間も時間もかからない「メルカリ」


 メルカリが人気の背景には、いわゆる「シェアリングエコノミー」がもてはやされる時代背景がある。収入が低迷するなか、消費税も上がるので生活は苦しい。そんななか、手持ちのモノ・コト・スキルなどをシェアすることで収益を得ることに注目が集まっている。フリマサービス、カーシェア、民泊などすべてシェアリングエコノミーの一種だ。

 出品した後、梱包して発送する手間はかかるが、お金はないが時間はある主婦や学生たちに、「使っていない不要なものでお小遣い稼ぎになる」と人気が高い。

 確かに、メルカリが登場する前にも、「ヤフオク!」などの不用品を売れるサービスはあった。ところが、ヤフオクは売れるまでの時間が長いが、メルカリならすぐに売れることが多い。メルカリ社によると、出品物のうち売れるものの半分以上が24時間以内に売れているという。「待てない」といわれるスマホ世代の時間感覚とマッチしているのだ。

 またヤフオクでは、今でこそ落札された場合のみ料金がかかる「フリマ出品」ができるようになっているが、オークション出品には月額498円のYahoo!プレミアム会員費などがかかる。また、出品する際にも登録する項目が多く時間がかかる。一方、メルカリならスマホだけであっという間に出品できてしまい、手間と時間がかからないのも魅力だったのだ。

捨てるものもアイデア次第で売り物に


 もうひとつ人気の秘訣は、アイデア次第でどんなものでも売ったり買ったりできる点だろう。

 すぐに小さくなってしまう子供服や、七五三の衣装など一度しか使わないものを売ったり安く購入するのは賢い方法だ。それだけでなく、転売が行われている例も多い。たとえば、東日本では販売中止となったカールや、生産終了が発表されたチョコフレーク、休刊した「新潮45」などを定価より高額で売っている例は目立つ。最近は、野菜やフルーツなどを販売してビジネスしている農家もある。

 メルカリでは、使い古しのコスメや試供品が売れることはよく知られている。使いかけの口紅が売れるとは驚きだが、「この値段でお試しできると思えばむしろ安い。正規の値段で購入して失敗したくないから、まず使いかけを安く購入する」と前出の女子大生は言う。

「メルカリでベルマークを買った」という主婦もいる。その女性の子どもが通う幼稚園では、ベルマークを集めることになっている。たくさん集めなければならないわけではないが、クラスごとに集計されるのがプレッシャーだったという。集める手間暇とストレスを考えれば買ったほうがいいと判断したそうだ。

 このほかにも、大学生が大学の講義で提出する出席カードを販売したり、卒業後に大学卒業の証となる学位記入れを売る例もある。どちらも売るべきではないものだが、わずかなお金と引き換えに売ってしまうユーザーはいる。

独自ルールがやりづらさの原因


 一方、運営会社によって禁止されているものの、ユーザーによる独自ルールが横行しているためトラブルにつながりやすい面がある。

 たとえば、「取り置きしてほしい」は、「お金の支払いができないから後で買いたいので取り置きしておいてほしい」という意味。そのようなものに対応して「◯◯様専用ページ」などとタイトル名を変えているユーザーがいる。このようなものも他のユーザーは購入できるが、購入した場合は「横入り禁止」と抗議されてトラブルになる可能性が高いだろう。

 また、出品者によっては「プロフ必読」「即購入不可」と取引前にプロフィール欄を読んだり、「購入していいですか?」「購入希望です」というコメントを求めるユーザーもいる。これもただの独自ルールだが、従わないで購入した場合はトラブルになるかもしれない。

 インターネットリテラシーが低めのユーザーが多くて振り回されることも多く、「1万円」で出品しているものを「1000円でお願いします」などありえない値切り方をしてくるユーザーも少なくないようだ。

 ただし、やはり多くのユーザーにとって、捨てたらゴミになるものがお金に変わる魅力は大きいだろう。トラブルになっても運営会社に連絡すれば対応してくれるので、悩みすぎずに利用してみてもいいだろう。ある大学生は、「買ったものは、メルカリで売ることを考えて空き箱やタグなどをすべてとっておくようになった」と言っていた。今後の購買行動は、このようにするのが当たり前になっていくのかもしれない。
(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

中谷美紀、結婚に懸念材料? 芸術家と結婚→離婚した有名女性タレント3人

中谷美紀

 女優の中谷美紀がドイツ人の音楽家と結婚し、大きな注目を集めている。2年間の遠距離恋愛を実らせた2人に祝福の声が巻き起こっている一方で、女優と音楽家の結婚に“不安の種”を感じ取っている人もいるようだ。

 27日に中谷の所属事務所を通じて発表されたお相手は、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団のビオラ奏者であるティロ・フェヒナー氏だ。中谷はマスコミ各社に結婚を報告する直筆の文書を送ったほか、27日には自身のオフィシャルサイト内でも詳細を綴っている。結婚を機に中谷は拠点をオーストリアに移すものの、仕事についてはこれまで通りこなしていくという。

 本来なら祝福されるべき結婚だが、表現者同士の結婚という点に不安を覚える人も。夫の活動に配慮して拠点を移すとはいえ、中谷は日本での仕事を続けるため“すれ違い”を心配する声もある。

 芸能人と芸術家の夫婦が離婚に至るケースはこれまでにもあり、たとえば女優・美村里江(旧芸名:ミムラ)もそのひとり。美村は2006年に指揮者・金聖響氏と結婚したものの、“多忙によるすれ違い”が原因で2010年に離婚している。また歌手の宇多田ヒカルは、2002年に写真家で映像作家の紀里谷和明氏と結婚。宇多田のCDジャケット写真やPVを多く手がけて二人三脚の活躍を見せたが、2007年に離婚に至った。

 女優の中山美穂は、対談がきっかけで作家・ミュージシャンの辻仁成氏と2002年に結婚。2人でフランス・パリに移住して長男を授かったが、2014年に離婚が成立し親権は辻へ渡ることに。ほかにも、俳優の西村和彦は2006年に書家・國重友美さんと番組共演をきっかけに結婚。しかし2012年に國重さんが創作活動の拠点をアメリカに移し、遠距離夫婦生活が続いていた2015年に離婚している。

 別れた芸能人・芸術家夫婦がいるからといって、もちろんすべてが同じ結果になるというわけではない。“美男美女”カップルとしても話題の中谷夫婦に、ネット上では「これほど美しい日本人と外国人夫婦は見たことがない」「生まれた国が全然違うのに出会えるって凄いこと」「お互い忙しいだろうけど、幸せな家庭を築いてほしい」といった声が。2人の今後を見守っていきたい。
(文=編集部)

TBS“鉄板ドラマ”『下町ロケット』が『今日から俺は!!』に視聴率逆転負けの可能性浮上

「日曜劇場『下町ロケット』|TBSテレビ」より

 阿部寛が主演を務める連続テレビドラマ『下町ロケット』(TBS系)。11月25日に放送された第7話は、前回よりも1.1ポイント減少の12.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことがわかった。

 第7話では、帝国重工の次期社長候補・的場俊一(神田正輝)の方針によりトランスミッションとエンジンは自社で製作することが決定され、佃製作所のトランスミッション事業は頓挫。佃製作所はすでに長年取引を行ってきたヤマタニ製作所との契約も終了させていただけに、一気に経営危機が訪れてしまった。帝国重工・宇宙企画推進グループ部長・財前道生に抗議するも、的場に圧力をかけられている財前にはどうすることもできない。

 そのうえ佃製作所を切っておきながら、無人農業ロボット研究の第一人者である野木博文(森崎博之)には協力してほしいと、佃航平(阿部)に説得を依頼。佃が関わるということで帝国重工に協力することを引き受けた野木は、当然ながらその依頼を断ったが、佃は無人農業ロボットを世に出すためだと野木を説得したのだった。

 しかしその後、財前さえも的場からの圧力を受けて無人農業ロボット事業から外されてしまう。そして裏では、以前に野木から技術データを盗んだキーシン社長の戸田譲(甲本雅裕)と佃を裏切ったギアゴースト社長の伊丹大(尾上菊之助)、そしてダイダロス代表取締役の重田登志行(古館伊知郎)、北堀企画社長・北堀哲哉(モロ師岡)が怪しい会合を開いていた。

 帝国重工の的場は本格的に無人農業ロボット「アルファワン」のプロモーションを進めていったのだが、次の日にテレビで報道されていたのは「アルファワン」ではなく「ダーウィン」という無人農業ロボット。これこそが重田らが画策していた秘策であり、これには的場も怒りを露わにし、重田らが本気で帝国重工を潰しにきたことに佃も気が付いたのであった。

 帝国重工の的場からひどい仕打ちを受けてきた重田や伊丹によって、いよいよ来週からは“復讐プロジェクト”が始まるという。しかし、やり方は汚くても“復讐”という信念を持っている重田と伊丹、そして農業ビジネスに並々ならぬ熱意を注いでいた財前、無人農業ロボット開発一筋を貫いてきた野木らには、貫いている想いがあった。それに対し、佃は思い付きでトランスミッション事業に乗り出し、ギアゴーストのために利益にならない裁判に自ら足を突っ込んだかと思えば最終的に裏切られてしまう始末。帝国重工のトランスミッション事業からも梯子を外され、まさに崖っぷちの状態だ。

 そのうえ、今回も佃は夢を語っているだけで、実はまったく何もやっていないただの傍観者であった。すると視聴者からも「佃航平は何がしたいの?」「社員ばかり振り回して佃って無能なの?」などの声が噴出。悪役と対立させたいがための展開に「前作よりも面白くない」「次から次へと悪いことばかりでうんざり」「イライラするドラマだ」などの声もあがる事態となっていた。

 ただ威張っているだけの的場が「無能」という指摘は以前からあったが、ここにきて佃にも「無能」というレッテルが貼られてしまう事態が発生。人情が熱いだけでは社員たちが路頭に迷ってしまうだけに、シビアに見ている視聴者も多いようだ。

 ちなみに『下町ロケット』放送終了30分後にスタートする連ドラ『今日から俺は!!』(日本テレビ系、日曜午後10時30分~)は、回を重ねるごとに注目度が高まり、ついに25日放送の第7話では平均視聴率10.6%と初の2桁を記録。この勢いが続けば『下町ロケット』に逆転する可能性も十分にある。

 両ドラマの視聴率争いにも注目していきたいところだ。
(文=絢友ヨシカ/ライター)

私立大学、2割が破綻危機…資金繰りのため悪辣な「学校債」詐欺に走る大学も

「Gettyimages」より

 10年ほど前になるが、新エネルギーの開発を進めていると称する合同会社の社員権販売で名前を使われたことがある。もちろんつゆ知らぬことで、勧誘を受けた方々から直接電話で問い合わせを受けて、初めてその事実を知った。ほとんどが東京の多摩地域に在住の方であり、おそらくはそのエリアを担当する者が名前を騙ったのだろう。

 なかにはすでに数百万円の社員権を購入した高齢の女性もいて、事後の対応を相談されたが、どうにもならなかった。なぜなら購入後、何回か少額の配当を受けており、詐欺に該当する十分な条件を満たしていなかったからだ。

 また合同会社の社員権の販売は、証券会社でなければ許されていない未公開株の販売とは異なり、金融商品取引業者の登録は不要であり、それ自体も違法にはならない。顛末はわからないが、うやむやになってしまったのだろう。

 この件の少し後であろうか、露見したのが創造学園大学学校債を用いた詐欺だった。最終的に破産で幕を閉じた同学園が、その場しのぎの資金集めのために用いたのが、学校債の発行、販売だった。外部のセールス集団を雇って、元本保証、並外れた利率(年5%以上)を謳い文句に販売したのだから悪辣である。総発行額は1億数千万円、購入者は数十名。利子はもとより元本もほとんど返還されなかった。

 学校債の恐ろしい点は、合同会社の社員権や未公開株式、債券などと比較して信用度、イメージの面で勝る点であろう。誰しも学校にはお世話になるわけで、好悪はともかくも、その法人が発行した債券がデフォルトするとは想定しないものだ。

 しかし、もはや大学をはじめ学校が潰れない時代が終わっているのは明らかだ。今後も淘汰の波が襲う可能性が高いことは、昨年末に読売新聞がスクープした日本私立学校振興・共済事業団の実施した私立大学の経営状況の調査からも明らかだろう。

 記事によれば日本私立学校振興・共済事業団は私立大学・短大を運営する660の学校法人のうち、112法人は現状のままでは、遠からず破綻の危険があると結論づけている。要するに大学を運営する学校法人の約2割は経営難の状態にあるわけだ。

 運営資金の手当てに苦しむ学校法人が頼みとするのは、国や地方自治体からの補助金や、卒業生や保護者からの寄付金だが、特に小規模法人の場合、多くは期待できない。超低金利局面の長期化で苦境にある金融機関も、経営不振の法人に対して、そうそう良い顔はしてくれないだろう。

 その点、学校債はわずかな金利負担で4年後の償還期間まで、まとまった資金を調達できる。しかも、規制や監視もきわめて緩い。

縛りが緩い学校債


 金融証券取引法において学校債は有価証券であるか、それと見なされると、発行する学校法人は一般企業と同様の財務諸表の作成、公開などを義務づけられる。ただし、これに抵触するのは、卒業生等の利害関係者以外にも発行かつ譲渡可能、500名以上募集、発行総額1億円以上のものだ。

 確認の意味を含めて、所管する文科省私学行政課に学校債の規制について尋ねてみた。質問は次の3点である。

(1)財務内容の厳密な開示が求められる条件に募集500名・総額1億円以上とあるが、これに満たないものは法人側がフリーハンドで発行できるのか。
(2)みなし有価証券とされる条件に、一般人(卒業生等の利害関係者以外)にも発行とあるが、卒業生等の等はたとえばどのような人を示すのか。
(3)学校債の利率の上限は定められているのか(たとえば市中金利に比べて著しく高い利率は認められない等)。

 回答に窮するような質問とは思えないのだが、9月21日に電話で趣旨説明をした後、指示通りに部局宛にメールを送付したが、9月27日に「今しばらくお待ちいただきたい」との返信があったきり、再三の催促にもかかわらず11月22日現在回答は届いていない。省内トップや幹部による数々の不祥事による組織の混乱は続いているのだろうか。

 ともあれ、学校法人が発行する債券は、民間企業のそれと比較して発行に際しての縛りは緩く、容易に発行できるのは確かであろう。裏返せば創造学園大学の事例にあるように、濫用、悪用しやすい。当然、先述したような奸智に長けた輩が参入してくることは想像に難くないところだ。
(文=島野清志/評論家)