いよいよ競馬最大の祭典・日本ダービー ダービージョッキーが自信を持って勧める馬券?

競馬の祭典、日本ダービー

 今年も年に一度のこの季節がやってきた。競馬の祭典、第82回東京優駿(日本ダービー)である。

 優勝賞金2億円、勝てば引退後に種牡馬として数十億円の収入も見込める関係者にとって究極の一戦。過去にナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴルといった名馬が勝ち、またハイセイコーなどの人気馬が涙をのんだ、競馬ファンだけでなく日本中が注目するレースだ。

 無敗で日本ダービーに勝ち、引退後も種牡馬として活躍するディープインパクトは、現役時代に約15億円を稼ぎ、引退後も種牡馬として年間60億円以上を稼いでいる。まさに超セレブなサラブレッド。勝者が手にする報酬は莫大なものとなる。

 過去81回の歴史の中では、さまざまなドラマがあった。

 1990年、20万人が集結した東京競馬場で優勝馬アイネスフウジンの騎手である中野栄治を称えて鳴り響いたナカノコール、73年に断然人気のハイセイコーを破って大番狂わせを演じたタケホープ、07年の牝馬ウオッカの圧勝など、多くの競馬ファンの記憶に残る激闘が繰り広げられてきた。

 その81頭の優勝馬の中で、最もドラマチックな勝利といわれるのが97年、第64回日本ダービーのサニーブライアンだ。

 同馬は前哨戦となるクラシック第一戦の皐月賞に11番人気で勝利し、皐月賞・日本ダービー・菊花賞の三冠馬の権利を唯一有していたにもかかわらず、日本ダービーでは7番人気の低評価(直前に一頭出走取消があり最終的には6番人気)だった。

 しかし、その人気をあざ笑うかのように日本ダービーも皐月賞同様に逃げ切り、史上20頭目の二冠馬となった。その後、菊花賞で三冠制覇を目指すはずが日本ダービーのレース中に骨折したことが判明、屈腱炎も見つかったことで引退を余儀なくされた。

 当時、サニーブライアンのオーナーであった宮崎守保氏の所有馬は一頭のみ。その一頭が日本ダービーを制するというのは、競馬界においては奇跡と呼べる快挙であった。

 競馬ファンとしては、ダービーの楽しみ方は2つある。デビューから応援してきた馬の勝利を願うこと、そして馬券で楽しむことだ。

 空前の競馬ブームとなった今、「ダービーぐらい馬券を買ってみようか」などと考える人も少なくないだろう。そんな初心者にオススメしたいのが、『ダービージョッキー大西直宏の第82回日本ダービー 結論 穴の1点馬券』だ。

 競馬法では、騎手など現役競馬関係者による馬券購入は禁じられているが、引退した騎手は自由に馬券を購入することができる。その中で、ダービージョッキーの肩書を持ち、積極的に情報収集や発信しているのがサニーブライアンの主戦騎手であった大西直宏氏だ。

ダービージョッキーでもある大西氏

 大西氏はG1レースで3勝、通算500勝以上を達成した名ジョッキー。引退後は競馬情報サイト「ワールド」にて騎手ならではの視点による予想や、独自のルートで入手した情報を公開している。競馬ファンにとって、ダービージョッキーの馬券を知ることができる貴重な存在だ。

 今回その大西氏、そして大西氏が所属する「ワールド」に日本ダービーの話を聞いた。

ホースマン憧れのレース

--競馬関係者にとって日本ダービーとは、どのような存在でしょうか。

ワールド担当者 騎手、調教師、生産者、馬主、そして厩舎スタッフも含めたすべてのホースマンが憧れ、そして目標としているレースです。しかも、競走馬にとっても一生に一度しかチャンスがなく、出走するだけでも大変なレース、それが日本ダービーです。

 ゆえに、有馬記念などにない独特の雰囲気に包み込まれます。当日の競馬場はもちろんですが、週中のトレーニングセンターでも、いつもとは違う「ダービーならでは」の雰囲気になります。それほどホースマンにとって「特別なレース」といえるでしょう。

 数々の記録を塗り替えてきた武豊騎手でさえ、初勝利まで10年、横山典弘騎手に至っては25年もかかった悲願、ホースマンの思いが詰まったレースです。

--「ワールド」にとっての日本ダービーとは、どのようなものでしょうか。

ワールド担当者 昨年は、優勝馬ワンアンドオンリーから3連単10万3300円、一昨年は同じく優勝馬キズナから3連単5万4950円と、2年連続で3連単までの完全的中を達成している相性抜群のレースであるとともに、一年で最も多くのお客様からの期待を掛けていただいているレースでもあり、普段以上の情報収集と精査を行っております。

--レースの展望をお聞かせください。

ワールド担当者 牡馬クラシック1戦目の皐月賞ではドゥラメンテが圧勝しました。リアルスティール、サトノクラウンを含め三強とされていた勢力図は、完全にドゥラメンテの一強に塗り替えられた感があります。

 しかし、ただ強いだけでは簡単に達成できないのが、21世紀に突入してから4頭しか成し遂げていない「春二冠」の偉業です。皐月賞では苦杯を舐めたリアルスティール、サトノクラウン、そして別路線組のレーヴミストラルやサトノラーゼンらも着々と逆転に向けての策を講じており、黙ってドゥラメンテの戴冠を許すという雰囲気はありません。

 そして、ダービーのことを語るに避けて通れないのが人の物語。ダービージョッキーまで、あと一歩のところまで迫っている福永祐一騎手と蛯名正義騎手。今年が最後のダービーとなる松田博資調教師、橋口弘次郎調教師、そしてダービートレーナーに一番近い位置にいる堀宣行調教師。

 すべてのホースマン最大の憧れであるからこそ、18人のジョッキー、調教師、そしてその後ろにいる多くの関係者たちの情熱と思惑が、時に想像を超えるドラマを生むのです。決して今年は「一強」でも「二冠濃厚」でもありません。あらゆる情報と想いをつかんだ先に、驚くべき結末が待っているはずです。

 今年のダービーの情報にも、ぜひ期待してほしいですね。

--ありがとうございます。

 今年の日本ダービーは、出走馬のレベルが非常に高く、歴史に残る一戦になることは間違いないだろう。なお「ワールド」では、『ダービージョッキー大西直宏の第82回日本ダービー 結論 穴の1点馬券』を無料公開する。これは絶対に目が離せない情報だ。

 というのも、先日の皐月賞で大西氏は、1着馬2着馬の馬連1点を20万円購入し、158万円の払い戻しを獲得しているからだ。その大西氏が、この日本ダービーで再び1点馬券で300万円の払い戻しを狙うようだが、今回も「自信はありますよ」と力強いコメントを出している。

 皐月賞で大成功を収めている大西氏の1点馬券。「普段馬券は買わないけれど、今回は買ってみようかな」と考えている人に、この無料情報はうってつけだ。ダービージョッキーによるプロの視点とはどのようなものか。ぜひ忘れずにチェックしてほしい。
ワールド
(文=編集部)                    ワールド

モラル欠如の悪徳弁護士が急増!突然、企業へ滅茶苦茶な要求、銀行口座を強引に凍結

「Thinkstock」より
「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。

 国税庁の2012年度の調査によると、年収100~150万円の弁護士は585人、150~200万円が594人、200~250万円が651人、250~300万円が708人、300~400万円が1619人と、一般サラリーマンの平均年収413万円(14年度)を下回る水準の弁護士も非常に多い。また、所得が1000万円以上の弁護士は5年前から15%減少。逆に200~600万円の人が20%ほど増加しているのだ。

 難関試験を突破するために多くの時間とお金を費やしたにもかかわらず、低収入にあえぐ弁護士は多いのが現状だ。その一方で、弁護士として活動するためには、所属する地方の弁護士会へ毎月会費を支払わなければならない。金額は地域によって異なるが、年額で50~100万円に上るといわれている。

 そのような中、収入を安定させるために弁護士たちはさまざまな仕事に手を出している。中には、弁護士としてふさわしくないと思われる仕事ぶりの人物もいる。今回は、そのような質の低い弁護士たちを紹介する。

A弁護士の事例

「儲ける」「成功する」といったテーマにまつわる方法論や手法を動画やテキストにまとめ、主にインターネット経由で販売されているものは「情報商材」と呼ばれ、1件当たり数万円、高いものになると数十万円で取引されている。

 それら販売元の中には、真摯にビジネスを行っているところもある一方で、「1日たった30分○○するだけで月収100万円」「投資必勝法」「必ずモテる」など、射幸的なフレーズを打ち出して高額な教材を買わせるものの、実際には「価格に見合う価値がない」「何もサポートがない」「効果がない場合の返金保証をうたいながら、返金に応じない」といったトラブルも多数報告されており、国民生活センターなどに相談も寄せられている。

 このような「情報商材詐欺」の被害に対して、トラブル解決と返金実績をうたうのがA弁護士である。このテーマを専門に取り組んでいる弁護士は珍しいようで、インターネットで検索しても表示される法律事務所は数えるほどだ。

 いかにも弱者の味方に見えるこのA弁護士だが、実際はとんでもないブラックな実態を秘めていたのだ。

 ある日、投資情報を販売する会社にA弁護士から内容証明郵便が届いた。「貴社が販売している投資情報商材は実現可能性がないもので、購入者は内容通りに取引したが利益が上がらなかった。よって、商材の代金24万8000円の返金を求める」という内容であった。

 この商材の内容に本当に虚偽があるなら、確かに弁護士の要求は正当なものかもしれない。しかし、この申し入れの時点でA弁護士の対応に複数の重大な疑義があった。

(1)事実確認をせずに、いきなり「口座凍結要請」を行った疑い

 A弁護士はこの申し入れと時を同じくして、情報商材販売会社の「口座凍結要請」を行っていた。口座凍結とは、裁判所の審査を経ずに警察や弁護士が銀行に依頼して口座を止めるという極めて強力な手法であり、振り込め詐欺やヤミ金融被害等、「明らかな犯罪行為」に使われている口座に対する措置である。制度の運用上、弁護士側で証拠を十分に精査することが求められるのだが、本事件においては、被害者とされる人物が実際に支払った金額と、弁護士から請求された金額に齟齬があることが判明している。

 すなわち、これはA弁護士が依頼者に対して十分に事実確認を行わず、しかも客観的な資料の確認を十分に行うことなく、依頼者の言い分のみに依拠して口座凍結要請を行った可能性があることを意味する。

(2)未契約の依頼者分も、一まとめに和解交渉を行おうとした疑い

 情報販売会社の経営者は、自社の顧問であるB弁護士に交渉の代理を依頼した。するとA弁護士は、B弁護士に対して「被害者8名分一括での和解交渉」を提示。しかし、販売会社に送られた内容証明の日付と、A弁護士が和解に言及した日付を見比べると、内容証明のうち一部は「和解言及日より後」の日付になっていた。すなわち、依頼者から正式に受任していない事件について交渉を代理しようとしていた可能性があるのだ。

(3)依頼者との面談を行っていない疑い

 上記(1)の事実確認有無とも関連するが、現時点で判明しているだけでも、今回の被害者とされるA弁護士への依頼者は四国、静岡、山口と点在しており、弁護士自身が依頼者と面談を行ったか疑わしい。被害者の一部は弁護士を通さず、直接販売会社へ連絡を繰り返していたことも、この疑いの根拠の一つである。

 本事件は結果的に、返金については和解が成立したのだが、口座凍結については、販売会社側が不当と訴えているにもかかわらず、依然として解除されていない状況だ。また販売会社はA弁護士の強引な手法について、A弁護士が所属する第一東京弁護士会に訴え出たが、弁護士会側もA弁護士をかばうばかりで話し合いにならない状況であった。

C弁護士の事例

 C弁護士は、ある県の弁護士会をはじめとして、さまざまな法人の要職を歴任してきた人物である。弁護士の鏡として行動を律して範を示すべき立場のC弁護士だが、法律で規制対象となっている利益相反行為を疑われる事態となっている。

 利益相反行為とは、ある行為によって一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為のことだ。特に弁護士など、中立の立場で仕事を行わなければならない者が、自己や第三者の利益を図り、依頼者の利益を損なう可能性のある行為については、法律によって禁じられている。しかし、C弁護士は利益相反行為を行ってきたと疑いをかけられている。

 事件は、県内に本社を置く運送会社の経営者一族による遺産相続に関わるものだった。経営者が亡くなり相続が発生したのだが、経営者の妻は後妻であり結婚する際、「彼が自分より先に亡くなった場合、彼の財産のうち自宅マンションだけしかいらない」と誓い、その旨の念書も書いていた。しかし、実際に相続が発生してみると、遺言書がないこと、および事前の相続放棄は無効であることを理由に法定相続分を要求している。この件は現在、弁護士間で交渉中である。

 本件相続問題において、後妻側の代理人となったのがC弁護士なのだが、ここに利益相反の問題があるのだ。

 C弁護士は、当該運送会社が加盟し、かつ当該経営者が理事を務めたこともある社団法人の監事を務めている。法人の監事が、所属する運送会社のお家騒動の一方の代理人となって騒動に参画している状況なのだ。

 筆者は別の弁護士に当該事案について質問したところ、彼も同様に疑問を抱き、このような見解を示した。

「同法人の公的側面、弁護士に対する社会的な信頼という観点からいうと、相当問題がある。厳密には違法とまでは言えなくとも、利益相反として倫理的には避けるべきケースと言わざるを得ない」

 筆者はこの見解を受け、C弁護士に取材を申し入れたが返答を得られなかった。致し方なしに直接事務所を訪問したが、強硬な剣幕で「答えることは何もない。立ち去らないと不退去罪だ」と恫喝してくる始末であった。弁護士ならば然るべき論理で、根拠を挙げて説明してもらいたいものである。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

新田 龍(にった・りょう):株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。首都圏各大学でもキャリア正課講座を担当。

世界最大の「地図屋」、自動車産業に革命 世界中の車メーカーやIT大手が争奪戦!

ドイツの首都ベルリンに本社を構えるヒア

 フェイスブックアップル、アリババ、バイドゥ、はたまたドイツ自動車連合か……。

 Here(ヒア)――日本はもとより、海外でも一般の人には馴染みの薄いこの企業。実は、世界最大の地図メーカーだ。元々、フィンランドの電気通信機器メーカー・ノキアが、ドイツ・ベルリンで創業したベンチャー企業のゲート5とアメリカの大手地図メーカーのナブテックも買収し、社内プロジェクトとして次世代型の地図情報サービスの開発を始めたもので、その後ノキアの子会社として独立した。

 そのヒアを、いったいどの企業が買うのかと、IT業界や自動車産業界で大きな話題となっているのだ。

 世界三大地図メーカーといえば、ヒアを筆頭に、オランダのトムトム、そしてグーグルである。トムトムは簡易型カーナビのPND(パーソナルまたはポータブル・ナビゲーション・デバイス)の大手で、2007年に地図情報ベンチャーのテレアトラスを買収した。現在はアップルのスマートフォン・iPhoneに地図データを供給している。グーグルは衛星画像処理関連の企業を買収するなど、グーグルアースやグーグルマップ等の地図サービスをインターネット上で提供している。

 カーナビゲーションに関する地図では、日本や中国等の一部地域を除き、ヒアの世界市場占有率は8割以上とされる。ヒアの売り上げのうち、半分程度が自動車メーカーや自動車部品メーカーへの販売によるものだ。また、ヒアはアマゾン、ヤフー、マイクロソフトに地図情報を販売している。

ロケーションクラウドというビッグデータビジネス

ヒア本社の車載用ナビゲーション試験装置

 筆者は14年9月、情報通信関連のドキュメンタリー映像作品の企画および番組進行役として、ヒアのベルリン本社を詳しく取材した。その中で、同社がただの“地図屋”ではないことを痛感した。

 ヒアは自社の地図情報サービス事業を「ロケーションクラウド」と呼ぶ。クルマやスマートフォンを通じて収集される利用者の位置情報をビッグデータとして分析し、付加価値を持たせるのだ。

 ロケーションクラウド事業の構成は、大きく3段階に分かれている。まず実走による高精度地図の製作だ。レーダーレーザーとカメラを車体の屋根に装着した車両を約150台導入し、世界中の道を実際に走行してデータを収集している。次に、各国の行政機関等から得た交通信号、標識、道路面の表示、道路面の傾き等の基本データを、自社で構築した高精度地図の上に加えていく。

ヒア本社の中庭の壁に描かれた世界地図

 そして最後に最も重要なのが、ヒアが「ライブロード」と呼ぶ車両の走行データ解析だ。これはGPS等の通信衛星を通じた位置情報だけでなく、アクセル開度、ブレーキによる減速度、ハンドルの切れ角等、ドライバーの運転データを指す。ヒアは旧ナブテック時代を含めて、ドイツ系自動車メーカーおよびドイツの大手自動車部品メーカー・コンチネンタル等を通じて、こうした車両走行データを収集する権利を得ている。

 実際に筆者はヒア本社内でこうしたビッグデータの解析現場を見て、同部署の関係者から詳しい説明を受けている。

 ロケーションクラウドについて、同社幹部は次のように語る。

「アマゾン、マイクロソフト、グーグルと同列のクラウドビジネスだ。その上で弊社は自動車産業とのつながりが強いことを最大限に生かし、今後は自動車関連のビッグデータ事業を拡大させていく」

 なおノキアは13年、マイクロソフトに携帯電話事業を売却している。

自動車産業全体がIoTの一部に

 巨大ビジネスへと成長を続けるヒア。それが今、売りに出されているのだ。そうなれば、IoT(Internet of Things/モノのインターネット)というくくりの中、自動車関連事業者だけでなく、大手IT企業や通信インフラ企業、さらには投資ファンドがヒアへ触手を伸ばすのは当然だ。

 また、欧米経済メディアの報道では、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンによる「ドイツ自動車連合」として、ヒア買収の動きもあるという。

 株価総額で2000億円程度のヒアだが、14年売り上げは前年比6%増の約1200億円。「少なくとも株価総額の倍額での売却が妥当」(欧米経済メディア)と目されている。

 今回のヒアの争奪戦は、自動車産業全体がIoTの一部へと転換する大きなキッカケになるだろう。
(文=桃田健史/ジャーナリスト)

スゴすぎるぞトヨタのミライ!すべての面で卓越、この奇跡のクルマはいかに生まれた?

トヨタ自動車「ミライ」
 昨年12月にトヨタ自動車が発売した、世界初の市販用量産型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」。その公道試乗会が行われた。実用化は程遠いと考えられてきたFCVだけに、「本当に水素だけで走るクルマが世に出るのか」と耳を疑った人もいるのではないだろうか。かくいう筆者も最初にミライを試乗した際に、実用化が近いと確信できる完成度の高さに驚かされた。電気自動車嫌いの筆者でも「欲しい」と思った理由を、試乗会で得た印象をもとに簡単にリポートしよう。

 FCVはスタックと呼ばれる装置で水素と酸素を化学的に反応させて発電し、その電気でモーターを回して走行する。仕組みとしては電気自動車(EV)の親戚といっていい。EVはバッテリーに貯めた電気で走り、FCVは水素で発電して走る。それだけの違いだ。ただし、FCVはEVと比べて圧倒的に航続距離が長く、充填時間(70MPaの高圧水素を充填した場合)も3分程度と、ガソリン車並みの性能を誇る。水素はエネルギーキャリアとして優秀なのだ。

 ミライの心臓部ともいうべき駆動部のうち、スタックはトヨタ独自開発によるもので、センターコンソールの床下に配置される。出力はスタック(発電装置)で155ps(仏馬力)、モーターで154psを絞りだす。モーターの最大トルクは335Nm(ニュートンメートル)となる。これは3.5リッターV6エンジンに匹敵する出力だ。これらパワートレーンの物理的なサイズはV6エンジンよりもやや大きいが、スタックとモーターなどを分散してパッケージできるので、新しい自動車の設計が可能となっている。

 また、駆動はフロントタイヤが担うが、内燃機関の前輪駆動車(FWD)と違うのは、前後重量配分がフロント58%、リヤ42%であるということ。通常のFWDでは6割を超えることがほとんどだから、ミライはバランスに優れているといえる。しかも低重心なので、安定性と乗り心地のバランスは非常に良かった。

 実は、FCVの基盤技術はトヨタのハイブリッドシステムである。交差点で止まると、アイドリングストップと同じようにスタックは発電を停止する。走り始めは「プリウス」と同じように、ニッケル水素の二次バッテリーに貯められた電気を使用し、スピードが上がってくると再びスタックが発電を始める。そう、ハイブリッドシステムが下敷きなので、制動エネルギーを回収する回生ブレーキもしっかり活用できるのだ。

 ミライは確かに大出力の駆動部を持つ。しかし高圧水素タンクは約5kgの水素を充填でき、水素1kgで100km以上も走行できるので航続距離の心配はない。先日水素ステーションを取材したが、水素の料金は1kg当たり約1000円である。高速道路での走行も得意だし、航続距離も長いので、走行中ストレスを感じることはない。内燃機関がない分、エンジン音がしないこともFCVの特徴だ。試乗用のコースではロードノイズが耳に残ったが、製品版では魅力をさらに高めるべく、遮音対策を進めていることだろう。

 もう一つ気になったのは、水素スタンドの探し方だ。しかし、そこはぬかりなかった。チームジャパンの取り組みの一環として、ナビアプリやスマホアプリで検索できるようになっていたのだ。これからの課題は、水素スタンドの整備だ。そのテーマについては、次回以降詳しく見ていきたい。
(文=清水和夫/モータージャーナリスト、日本自動車研究所客員研究員)