ミニバン、危険でお金を払う価値なし?ワースト1位はトヨタ「エスティマ」?

トヨタの「エスティマ」(「トヨタ エスティマ | トヨタ自動車WEBサイト」より)

 1980年代まで、ファミリーカーの主役はセダンだった。しかし、1994年に発売されたホンダの「オデッセイ」が大ヒット。それを機にミニバンの新型車が続々と登場し、以降20年間にわたってミニバンはファミリーカーの王座に君臨してきた。

 室内空間が広く大人数が乗ることができ、シートアレンジが多彩で使いやすい。さらに、電動スライドドアの採用など高級感のある車種も多い。そうした事情から、「ミニバンを持つことが父親のステータス」ともいわれたほどだ。

 ところが、近年はミニバンの凋落が顕著になっている。よく指摘されるのは「人気のSUV(スポーツ用多目的車)に取って代わられている」というものだが、それだけではない。実は、その原因はミニバン自体にもあるのだ。自動車に詳しいライターの呉尾律波氏に、人気凋落を招いた「ミニバンのワースト3」を挙げてもらった。

各メーカーが次々と生産終了、マツダは撤退


 昨年1年間でもっとも売れたミニバンは日産自動車の「セレナ」。販売台数は約10万台で、全乗用車のなかでも4位に食い込んでいる。ほかにも、トヨタ自動車の「シエンタ」が5位、同じくトヨタの「ヴォクシー」が6位と、トップ10に3台のミニバンがランクインしている。

 一方で、近年は各メーカーでミニバンの生産終了が相次いでいる。トヨタ「ウィッシュ」「アイシス」「イプサム」、ホンダ「ストリーム」「エリシオン」、日産「プレサージュ」「ラフェスタ」、さらにマツダ「プレマシー」「ビアンテ」、三菱自動車「グランディス」、スバル「エクシーガ」など、10車種以上が生産終了となっているのだ。

 また、「中古車市場でもミニバンの凋落が見て取れる」と呉尾氏は指摘する。

「昨年のはじめくらいから、ミニバンの中古車が値崩れしています。2、3年前までは強気な価格設定でしたが、おそらく中古車がだぶついているのでしょう。これは新車としての需要も下がってきていることの表れです」(呉尾氏)

 実際、各メーカーの新型車もここ数年はSUVが目立つ。マツダに至っては一昨年にミニバンそのものから撤退し、ミニバンのような3列目シートを持つ7人乗りの大型クロスオーバーSUV「CX-8」を発売した。これは、明らかにミニバンのユーザー層をターゲットにしたモデルだ。

「近年は各メーカーからミニバンのニューモデルが発売されておらず、マイナーチェンジばかりを繰り返しています。ミニバンブームが過ぎ去り新顔も出てこないとなると、販売台数は徐々に減少していくでしょう。マツダに続き、撤退するメーカーが出てきてもおかしくはありません」(同)

ミニバン凋落の原因はトヨタ・エスティマ?


 なぜミニバン人気は低下したのだろうか。それは、SUVの台頭に加えて「ミニバン自体が抱える多くの問題が関係している」と呉尾氏は話す。

「ミニバン凋落のきっかけをつくったのはトヨタ『エスティマ』です。初代は過剰品質と思えるくらい、しっかりとしたクルマでした。しかし、ミニバンという金脈を発見したトヨタは、2代目『エスティマ』から外装だけを先進的にし、各部のコストをごっそり削ぎ落としてしまった。その商法をほかのメーカーが追随し、少しずつ個性を出し合っていたのが、かつてのミニバンブーム。その結果、ハリボテのようなクルマが大量生産されてしまったのです」(同)

 そうしたコストカットのなかでも、特に目に余るのが安全面の問題だという。

ミニバンは室内空間が広いことが最大の売りです。しかし、コストをかけずに室内を広くしようと思ったら、車両の内側をギリギリまで削るしかない。そうなると、当然ながらボディの衝突安全性は著しく低下します。さらに、2列目シートのフットスペースを確保するために3列目も後方に移動させたので、リアのクラッシャブルゾーンが極端に小さくなり、追突にも弱い。はっきり言って、今のミニバンは全方位で危険極まりないボディのクルマばかりです」(同)

 コストを抑えた開発の悪影響は足回りにも及んでいる。「そのひとつが、トーションビーム式サスペンションです」と呉尾氏は指摘する。トーションビーム式サスペンションは、主に軽トラックや商用車などに採用されるサスペンション構造のひとつ。独立懸架式サスペンションに比べて構造が簡単なため、製造コストを低く抑えられるが、その半面、走行性に難点があるという。

「トーションビーム式サスペンションは低コストであるだけでなく、下部にメカ類が設置されるので、その分空いたスペースにバッテリーなどを置くことができます。安くつくれて室内を広くできるので、メーカーとしては一石二鳥なのですが、路面への追従性が悪いので走行中にバタつきます。走りの安定性という意味では、とてもおすすめできるサスペンションではありません」(同)

 トーションビーム式サスペンションを採用しているミニバンは、「エスティマ」をはじめ、日産「セレナ(二駆)」、ホンダ「ステップワゴン」、トヨタ「ヴォクシー」「ノア」などの車種だ。これらのミニバンが猛スピードで走る光景を目にすることもあるが、走行性能に難があることを考えると危険な運転といえる。

「ファミリーカーという幻想と高級感にだまされてミニバンを購入し、後になって問題点に気づいて後悔するユーザーも多いと聞きます。国産ミニバンの価格帯は200万円弱から400万円台半ばといったところですが、そのお金を出す価値はありません。それでもあえてミニバンを選ぶなら、おすすめは三菱『デリカD:5』。ボディの強度が比較的高く、オフロードを走れるほど走行性能も良いからです」(同)

コストカットしすぎ?ミニバンのワースト3


 これらの情報を踏まえて、「ミニバンのワースト3」を紹介しよう。

【3位】
ホンダ「ステップワゴン」(車両価格245万5920円~)

「走り出しが弱く、パワーが非力すぎる。ご多分に漏れずボディもペラペラで、もっとも割り切ってコストカットしているミニバンといえます。ただ、ミニバンでは唯一、シートがフルフラットになるため“動かない秘密基地”としては最高です」(同)

【2位】
日産「セレナ」(車両価格244万800円~)

「内装と建て付けが最悪。シートアレンジがカチッと決まらず、走っていると『半ドアかな』と思うほどカタカタ音が鳴るので怖い。ディーゼル車もラインナップされていますが、エンジン音が車内に響いてうるさいくらいです。『売るために無理をしてつくっているのでは?』と思わざるを得ません」(同)

【1位】
トヨタ「エスティマ」(車両価格327万1418円~)

「ミニバンのコストカットモデルの元凶です。ドアがすごく薄くて、パネルを外して内側を見るとサビがある場合も。安全面ではもっとも危険なのではないでしょうか。『売れればいい』という悪謀を象徴しているようなクルマで、2019年に生産中止が噂されています」(同)

 ミニバンのみならず、今後はSUVでも低コストで外観だけをそれらしくしたモデルが多数を占めるようになるかもしれない。購入する際には熟考したほうがよさそうだ。
(文=沼澤典史/清談社)

上原浩治が引退、高校時代は補欠だった…巨人次期監督レースに“大番狂わせ”

現役時代の上原浩治投手(「Wikipedia」より/Ship1231)

 プロ野球・読売ジャイアンツ(巨人)の上原浩治投手が5月20日に現役引退を表明した。メジャーリーグでも活躍した名選手だけに、国内外から惜別の声が寄せられている。

 異例となる“シーズン中の現役引退”を報じたスポーツ報知によると、実力の限界を感じた上原投手が今月に入って球団に引退の意向を報告。慰留する球団に対し、上原投手は「自分の代わりに若手にチャンスを与えてほしい」と申し出たという。報道を受けて上原投手はツイッターを更新し、「今朝の新聞の通り、今日で引退となります。長い間、応援ありがとうございました。まだ心の中、頭の中がごちゃごちゃしてますので、とりあえずはご報告まで…」とつづった。

 1998年のドラフト会議で巨人から1位指名を受けた上原投手は、99年にプロ1年目ながら20勝を上げて最多勝、最多奪三振などのタイトルを獲得する活躍を見せ、新人賞と沢村賞を同時受賞した。また、自身を例えた「雑草魂」というフレーズに注目が集まり、同年の「流行語大賞」にも輝いている。

 2008年にフリーエージェント宣言を行った上原投手は、メジャーのボルティモア・オリオールズに入団。その後、18年に日本球界復帰を果たすまで、テキサス・レンジャーズ、ボストン・レッドソックスと活躍の場を移していく。なお、レッドソックス時代の13年にはクローザーとして大活躍を見せ、世界一を決めるワールドシリーズにも登板。第6戦で最後の打者を空振り三振に仕留め、日本人初の“胴上げ投手”として世界一に輝いた。

 巨人に復帰した18年は36試合に登板して0勝5敗という成績に終わり、今季は1軍登板のないまま引退を迎えた上原投手。インターネット上はねぎらいの声であふれ返り、福岡ソフトバンクホークス・石川柊太投手は「憧れの選手でした。お疲れ様でした」とメッセージを送っている。また、公式ツイッターで引退表明に触れたレッドソックスからは「Wish him nothing but the best to the Red Sox Ninja!(レッドソックス・忍者に心から幸せを願っています)」とのエールが。

 ファンからもメッセージが殺到しており、「イチローに続いて、また球界人気を支えた名選手がマウンドを去るのか。本当にさびしくなる」「エリート集団の巨人にあって、上原投手は異質な存在だった。まさに“雑草魂”という言葉を具現化した名投手だと思う」「『若手にチャンスを与えてほしい』とは、苦労を積んできた上原投手らしい言葉。最後まで感動させてくれる素晴らしい選手ですね」といった声が上がっている。

 一方で、議論されているのが「名球会入り」についてだ。上原投手の成績は、日米通算134勝、128セーブ、104ホールド。「100勝・100セーブ・100ホールド」達成は日本人初の快挙で世界でも2人目となるが、名球会の入会資格である「200勝」「250セーブ」「2000本安打」(いずれも日米通算)のいずれもクリアしていない。そのため、上原投手が前述の「トリプル100」を達成した昨年11月には名球会総会で資格見直しについて議論されたが、結論は先送りとなった。

 ファンの間でも、かねて「そもそもピッチャーの入会基準のハードルが高すぎる」「これほどのレジェンドが入れないのであれば、もはや名球会など不要。もう少し柔軟に対応すべき」などの声が上がっている。そもそも、任意団体である名球会の存在意義については以前から疑問視する声も少なくなく、1995年に2000本安打を達成した巨人(当時)の落合博満氏は「名球会を目指してきたわけじゃない」と入会を辞退している。

 また、上原投手の引退によって、「巨人の次期監督レースにも変化が生まれそうだ」(スポーツライター)という。

「巨人は強引に高橋由伸を引退させて監督に据えたものの、成績不振から交代せざるを得なくなり、候補者不足が露呈。現在の原辰徳は松井秀喜や阿部慎之助など次世代の人材、あるいは高橋再登板に向けての“つなぎ”であることは明白です。上原は国内では巨人一筋で、実績も人気も申し分ない。高校時代は補欠で、一浪して大学に入った苦労人が巨人でエースとして花開いたというストーリー性も持ち合わせており、イメージも良い。ただでさえなり手の少ない巨人監督の有力候補に上がってきてもおかしくないでしょう」(同)

 引退後の上原投手は、どのような道に進むのか。後進の育成を望むファンも多いはずだ。
(文=編集部)

『あなたの番です』が陥った“低視聴率でも2クール放送し続けなければならない”地獄

あなたの番です|日本テレビ - 日テレ」より

 日本テレビで25年ぶりの“2クールまたぎ”となる連続テレビドラマあなたの番です』。5月19日に第6話が放送され、平均視聴率6.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録した。

 原田知世と田中圭がW主演を務める同作は、とあるマンションの住民たちが「交換殺人ゲーム」に巻き込まれていくというミステリードラマ。これまでの自己最高視聴率は初回の8.3%、最低は第3話の6.4%となっていたが、今回は前週第5話でマークした6.5%から0.2ポイント後退し、自己最低を更新してしまった。

“新婚夫婦”としてマンションに引っ越してきたデザイナー・手塚菜奈(原田)とスポーツジムのインストラクター・翔太(田中)、そして翔太の客でありながら菜奈の周囲をうろつく細川朝男(野間口徹)の関係性にも注目が集まるなか、迎えた第6話。マンションでは、「交換殺人ゲーム」の際に“死んでほしい人”として俳優の“袴田吉彦”と書いた101号室の住人・久住譲(袴田)が、実際に袴田が殺害されてしまったことに責任を感じていた。

 そんな久住がゲームで引いた紙に書かれていたのは“細川朝男”……。菜奈は久住に、“細川朝男”と書いたのは自分だと明かし、「殺さないでください。もし誰かに脅されたら相談してください」とお願いする。そして、翔太に対しては、自分が婚姻届を出せずにいたことと、細川が関係していることを告白。実は、細川と菜奈は夫婦関係にあり、細川が離婚に応じないまま現在に至るのだという。翔太は菜奈の話を受け止めた上で、「交換殺人ゲーム」に巻き込まれる可能性が高い細川のことも心配する。

 一方、102号室の児嶋佳世(片岡礼子)は、夫の俊明(我が家・坪倉由幸)との関係が冷え切った日々のなか、マンション内の子どもに声をかけては“自分の子ども”のように接していた。304号室のシングルマザー・北川澄香(真飛聖)は、5歳の息子・そら(田中レイ)に危害が及ぶのではないかと恐れ、「交換殺人ゲーム」で“児嶋佳世”の名前を書いてしまったと菜奈たちに打ち明ける。そんななか、佳世に会社宛てでゴルフバッグを送らせた俊明。バッグの中からは、殺された佳世の足が発見される……という展開だった。

 同ドラマについて、インターネット上では近頃「おもしろくなってきた」との声が増えてきている。しかし、最初の段階で「怖すぎる」「日曜の夜に見るには疲れそう」といった印象を受け、「見るのをやめよう」と早々にリタイヤ宣言する視聴者も多かった。また、ミステリー作品という特性上、ほかのドラマよりも「途中から見てみよう」とはなりにくい。逆に、最初から見ていてもどこかで1回見逃せば、今度は「もういいや」となりやすい。このあたりが視聴率低迷の原因といえるのではないか。

 ところで、当初は「ぶりっこすぎる」と不評を買っていた翔太のキャラクターだが、最近は「もしかして底抜けにいいヤツなだけ?」という指摘も。前回までにも、菜奈のことを第一に考えて行動している様子が強調され、今回はさらに、細川との婚姻関係を黙っていた菜奈の“苦悩”に気づけなかったとして、「ごめん」と謝る一幕まであった。

 実は、翔太がいいヤツすぎるがゆえに「絶対“裏の顔”ありそう」「翔太“サイコパス説”あるよね」といった意見も根強いのだが、ドラマには“翔太が何を考えているのか”がわかる描写も組み込まれている。彼がひとりでいるときでさえ、“菜奈ちゃんはどういう気持ちなのか?”を考える姿を見せられていると、普段ぶりっこなのも計算ではなく天然で、ピュアで、本気でいいヤツなのかもしれない……と思えてくるのだ。

 ただ、ドラマはあと4カ月ほど続くので、今後翔太が豹変するという大どんでん返しもあるだろうか。5月10日発売の「フライデー」(講談社)によれば、売れっ子の田中のスケジュールの都合上、ドラマ後半が彼のメインとなるようだが、果たして……。
(文=美神サチコ/コラムニスト)

新社会人必見!5年後、一流になるために「今すべきこと」はこれだ!チャンスのつかみ方編

『マンガでわかる 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人はここが違う!』(集英社/紫垣樹郎、秋内常良、三輪亮介)

 新社会人として企業で働き始めた人は、慣れない仕事に四苦八苦しつつも、会社勤めのペースをつかみ始めている時期かもしれない。

 入社初日からバリバリ仕事をこなせる新人はいないが、だからといって漫然と頼まれた仕事をこなすだけでは成長は望めない。やがて「伸びる新人」と「伸びない新人」の違いは仕事力、さらには給料の違いとなって表面化する。

マンガでわかる 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人はここが違う!』(集英社/紫垣樹郎、秋内常良、三輪亮介)によると、両者には新卒時代に明確な違いがある。

 とにかく目の前の仕事をスムーズにこなせるようになりたいという新人も、いずれ大きな仕事にかかわりたいという野心のある新人も、いつか自分でビジネスを起こしたいという新人も、必要なのは、どんなビジネスパーソンも避けては通れない「仕事ができる人の鉄則」を理解することだ。

「100%の出来」では不合格!?…伸びる新人に共通する心得


 学生時代と社会人生活の大きな違いは、「チャンスが平等に与えられるわけではない」という点にある。「こいつは使える」と思われればより多くのチャンスを与えられ、そのチャンスを糧にどんどん成長していく。そうではない新人には、チャンスがなかなか訪れない。この違いは数年後、取り返しのつかない能力差となって現れる。

『マンガでわかる 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人はここが違う!』(集英社/紫垣樹郎、秋内常良、三輪亮介)
 となると、新人にとって大事なのは「いかにチャンスを与えられるようになるか」、そして「そのチャンスをどうものにするか」なのだ。このポイントについて、本書では「101%」という言葉を使って説明している。

 新人のうちからひとつの案件を任されることなど、ほぼないだろう。基本的に、回ってくる仕事は雑用的なものが多い。ただし、雑用だからといっていい加減な気持ちでやっているとチャンスを逃す。

 たとえコピーや会議室の予約でも、任せる側には「これくらいはやってくれるだろう」という期待値がある。その期待値を「100%」としたら、それを1%でも上回るようにやり遂げようと心がけるのが「伸びる新人」だ。

 雑用をそんなに一生懸命やっても仕方ないと思うかもしれないが、「相手の期待を超えよう」という試みには、「相手が何を求めているか」に想像をめぐらせるという作業がある。これは、ビジネスの世界で、おそらく何よりも大切なことだ。

 そして、もし相手の期待を少しでも超える成果を出せたなら、それはあなたが相手にとっての「価値」を生み出したということ。当然、相手は喜び、次の仕事も任せようとする。それも「101%」で応じる。「こいつは期待以上のことをやってくれる奴だ」というイメージができれば、いずれ雑用ではない仕事も回ってくるようになる。頼まれ仕事にすべて「101%」で応じることで、「伸びる新人」は成長の循環に入っていくのだ。

◇ ◇ ◇

『マンガでわかる 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人はここが違う!』では、失敗は新人に許される特権だとしている。ならば、失敗を恐れて尻込みするのはもったいないこと。とりあえず手を挙げて、相手の期待を超えられるように、今持っているすべてを出し尽くせばいい。

 一方で、積極的で意欲的なだけでは不十分という現実もある。「伸びる新人」に共通するほかのポイントについては、次回以降に紹介していく。
(文=編集部)

※本記事はPR記事です。

『あなたの番です』が犯した痛恨のミス…異例の“2クールのミステリー”に挑んだ弊害

あなたの番です|日本テレビ - 日テレ」より

 今春スタートのドラマで「賛否両論」という言葉がもっとも当てはまるのは、『あなたの番です』(日本テレビ系)で間違いないだろう。

 人気者の田中圭を主演に起用したほか、30人超のキャストを揃え、2クールにわたる本格ミステリーに挑戦。同枠で放送されていた前期『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』と前々期『今日から俺は!!』が連続ヒットしたことも踏まえ、放送前の期待値は最高レベルにあった。

 序盤の否定的な意見は、そんな期待値の裏返しともいえるが、そこに「企画・原案 秋元康」の名前に食いついた人々が加勢。ドラマを見ていないであろう人々も含めて、批判の声が増えていった。

 しかし、その一方で「ほかにはないサスペンス&ミステリーで犯人を予想するのが楽しい」「いろいろ謎めいてきて続きが気になる」などの称賛も、少しずつ上がり始めている。いまだ批判のほうが圧倒的に多いが、『3年A組』『今日から俺は!!』がそうだったように、中盤以降、右肩上がりに称賛を集めていく可能性はあるのか? さまざまな角度から考えていきたい。

死体の描写はエスカレートする一方


 当作最大のテーマである“交換殺人”は30人超の大量キャストあってのものだけに、まずは「登場人物をどのように見せて理解してもらうか?」が重要だった。

 そこで制作サイドが利用したのは住民会。これを初回から何度も行い、しかも話し合いのシーンを長めに取ることで、登場人物の理解を促そうとしている。ところが、「ひとつの場所に一同が集まる」この方法では、視聴者に登場人物の名前と特徴を覚えさせ、魅力を感じてもらうのは難しい。

 実際、「いっぺんに見せられても、誰がどんな名前で、どういう人なのか、わからない」「キャラをつかめず、特徴も魅力もわからないまま物語が進んでしまう」という戸惑いで早期離脱した人は少なくなかった。

 たとえば、プロレスには“時間差バトルロイヤル”という試合形式があり、それは一定時間ごとに新しい選手を次々に登場させることで、観客が名前と特徴をつかみ、魅力を引き出そうとしているが、当作の第1話もそういう配慮が必要だったのではないか。このあたりは、「“2クールのミステリー”という、慣れない上に難易度の高いことに挑んだ弊害が出ている」と言われても仕方がないだろう。

 次に、“交換殺人”のミステリーは、まだほとんど解明されていない半面、凄惨なカットは回を追うごとにエスカレートしていて、これが賛否を分ける大きな要因となっている。

 ここまでは直接的な殺人のシーンこそないが、窓の外から吊るされる、バラバラにされて首をランドリーに入れられる、ダイニングに座ったまま袋をかぶせられるなど、死体の描写はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の反響を狙ったようなホラーテイストを徹底。日曜夜に寝つきが悪くなりそうな凄惨なカットをわざわざ入れているのだから、「生理的に嫌」という人がいるのは当然だろう。

 ただ、ここまで徹底していれば、「いつの間にか、それを待っている自分がいる」「これがないと物足りない」と、一周回ってやみつきになる可能性もあるだけに、さらにエスカレートさせてもいいのかもしれない。

「住民のほとんどが悪?」最悪の展開も


 もうひとつの肝は“多様な登場人物の抱える謎”。2016年秋放送の『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)でも描かれていたように、同じ建物に住む他人は、謎が多く、かつ、恐ろしい存在となり得るものだ。

「なかなか距離が縮まらない」「距離が縮まったと思ったら突き放された」「思わぬ秘密を知ってしまった」「とんでもない過去を抱えていた」「悪口を吹聴されていた」「嫌がらせを受けていた」……それどころか「人を殺していた」、さらに「住民の多くがそうだった」という最悪の展開すら頭をよぎるのが当作の醍醐味だ。

 ただ、中盤以降、「実は味方だった」「いろいろ助けてもらっていた」という人物も現れるはずであり、単に犯人探しだけでなく、登場人物が多いからこそ、善人と悪人を予想することも、当作ならではの楽しみといえる。

 とはいっても、2クールの長丁場だけに、大きく状況を動かして視聴者を驚かせる「“中盤の山場”が2つくらいほしい」のが正直なところ。ただ、それが「甘えん坊キャラの手塚翔太(田中圭)が一変して悪人になる」という、視聴者に見透かされるようなものは避けなければいけないだろう。

 視聴者の予想を上回り、驚かせるほど、「今まで見ていてよかった」の声が飛び交うなど、一気に風向きが変わるかもしれない。

日曜夜にフィットしないダークサイドの物語


 批判の多い現在は、「田中圭の甘えん坊キャラがキツイ」「原田知世の髪型が変」などと細部をつつくようなバッシングが増え、悪目立ちしているのがつらいところだ。なかでも、田中圭の熱心なファンからは、「こんなドラマで2クールも拘束するなんてありえない」「『ゴチ』も含めて日テレは圭くんを安易に使いすぎ」なんて辛辣な声も上がっている。

 しかし、ハイリスクな2クール放送も、30人超の大量キャスト抜擢も、制作サイドの意欲と挑戦の表れにほかならない。高齢層狙いで保守的な1話完結の刑事、医療、弁護士ドラマばかりのなか、多少の文句はあっても、「見ておこうかな」と思えるほどの差別化がされているのは確かだ。

「次々に人が殺されていく」というダークサイドの物語は、翌日の仕事が気になる日曜の夜にフィットしているとは思えない。しかし、今さら「もし土曜の夜に放送していたら……」と考えても遅いだけに、さらなるダークサイドに掘り下げながらやり切るしかないだろう。あらためて、脚本・演出を担うスタッフの技量が問われている。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

東京23区、大規模スーパーが出店しても近くの商店街がシャッター通り化しない謎と答え

 全国の商店街が「シャッター通り化している」といわれるなかで、ひとり気を吐いているのが東京の商店街だ。銀座、表参道、浅草、かっぱ橋などといった特殊な商店街だけではない。日常の買物需要にこたえる「近隣型商店街」も、東京では今なお活況を呈しているところが少なくない。

 2016年度の「東京都商店街実態調査」によると、23区には1942の商店街があるそうだ。人口10万人当たりに換算すると、およそ21カ所。ちなみに、多摩地域は同じ人口10万人当たり約14カ所。中小企業庁の「全国商店街実態調査」による全国平均値は10万人当たり約12カ所なので、多摩地域は全国平均と大差ないが、23区には商店街が突出して多いことになる。

 14年の「商業統計調査」からも、東京の商店街の力が垣間見えてくる。図表1は、一般的な商店街での買い物とは購買動機が違う百貨店と、販売形態が異なる無店舗販売(通販など)を除いた業態別の販売額構成比を求めたものだ。23区ではスーパーマーケットのウエイトが低く、専門店のウエイトが高いことがわかる。一方、東京都多摩地域と埼玉、千葉、神奈川の各県をあわせた首都圏近郊部では、全国平均以上にスーパーのウエイトが高く、専門店のウエイトが低い。これは、専門店が集まった商店街パワーの強さが23区に特徴的な傾向であることを示す傍証にほかならない。


「東京の」あるいは「首都圏の」商店街が活力を保っているのではない。「23区の」商店街だけが特別に元気なのだ。

「郊外の大規模スーパーが原因」という嘘


 23区の商店街が元気を保っている理由として、「地価が高い東京では、大きな駐車場を備えた大規模スーパーが出店しにくいからだ」という説がある。だが、これは事実ではない。

 23区の専門店(すなわち、専門店の集合体である商店街)は大規模な総合スーパーとの競合以上に、食品スーパーをはじめとした専門スーパーとの競合に勝ち残っている。そもそも、メディアも識者も口を揃えて主張し、その結果、誰もが疑いを持たない「郊外部への大規模スーパーの出店が商店街のシャッター通り化を進めた」という考え自体に誤りがある。

 総合スーパー(あるいは総合スーパーを核店舗とした大規模なショッピングセンター)は、なるほど目立つ存在ではあるが、数が限られるため、その影響力はさほど大きなものではない。もう一度、図表1に戻ってほしい。総合スーパーの販売額シェアはたかだか5%ほどで、コンビニエンスストアよりも小さい。

 さらにいえば、総合スーパー(GMS:General Merchandise Store)は、その名が示す通り、消費者のワンストップ購買ニーズへの対応を大原則とする業態であり、基本的に人が集まりやすい場所を最適立地とする。その代表が駅前だ。たとえば、JR総武線での筆者の帰路ルートをたどると、新小岩駅前に西友が、小岩駅前にイトーヨーカドーが、市川駅前にはかつてと比べ規模は縮小したがダイエーが、船橋駅前にイトーヨーカドーが店を構えている。読者が住むまちの駅前にも、総合スーパーがあるのではないだろうか。

すでに内部崩壊が始まっていた商店街


 総合スーパーが郊外化を始めるのは、1992年に当時の大店法が改正施行され、地元との出店調整が廃止されて以降のことだ。これにより、総合スーパーは出店ラッシュの時代を迎え、本来は必ずしも好立地とされていなかった郊外部への進出に拍車がかかることになる。

 図表2は、過去35年間の専門店数の推移を追ったものである。なるほど1992年の大店法改正が商店街に打撃を与えたことに間違いはない。しかし、小売店の数はその前から減少トレンドを示していた。92年の法改正は、この傾向を後押しするものとなったにすぎない。大規模スーパーが郊外化し始める時点で、すでに商店街は内部崩壊を始めていたのだ。


 その後、小売店を取り巻く環境は、2000年6月の大店法の廃止と大店立地法の施行(地域経済的視点に基づく大型店出店規制の自由化=郊外化のさらなる促進)を経て、07年11月の改正都市計画法の施行によって、ようやく都市計画の視点に立った無秩序な郊外化の規制が始まることになる。

 しかし、図表2が示すように、政策的な郊外出店規制は商店街再活性化の効果をもたらすことができなかった。理由はひとつしか考えられない。商店街の内部崩壊は、絆創膏を貼るような目先の対応では解決できないレベルにまで達してしまっていたからだ。

メガストア激戦地でも元気な「砂町銀座」


 先日、久しぶりに江東区の砂町銀座商店街を訪れた。大規模なスーパーが少ない東京23区の中で、江東区は例外的なメガストアの激戦地だ。店舗面積1万平方メートル以上の総合スーパー(総合スーパーないしは大型の食品スーパーを核店舗とするショッピングセンターを含む)は23区に36店あるが、そのうち6店舗が江東区に集まっている。

 店舗面積ベースで見た江東区のメガストア集積度はもっと高く、6店の合計で23区全体の2割に及ぶ16万平方メートルを数える。2位の墨田区、3位の葛飾区がともに7万平方メートル強であることと比べると頭抜けて多い。なかでも、区内メガストアのビッグ3が集う砂町地区は激戦地中の最激戦地である。

 そんな厳しい環境に追い打ちをかけるように、10年には店舗面積3万平方メートル超のアリオ北砂が砂町銀座の目と鼻の先にオープンした。大規模スーパーが商店街のシャッター通り化をもたらしたのであれば、砂町銀座商店街は消えてなくなっていてもおかしくない。

 なるほど、人をかき分けないと前に進めなかったほどのにぎわいは影を潜めていた。それでも通りは多くの人であふれ、行列ができている店も少なくない。


 都営地下鉄大島駅前のサンロード中の橋商店街は、アリオ北砂から直線距離で1㎞強。2000台を超える駐車場を備えるアリオ北砂にとって、十分に商圏射程内にある。

 300mほどの間におよそ90店が軒を連ねるこの商店街の最大の特徴は、食料品店の多さにあった。その意味では、大規模スーパーの影響をより強く受けやすい。こちらは苦戦やむなしか。いや、今も4割を食料品店が占め、八百屋だけで6店が元気に営業中だ。

全国平均の2.3倍!「銭湯一極集中」の東京


「23区の商店街が活力を保ち続けているのは人口が増えているからだ」という説は正しくない。商店街が内部崩壊を始める1980年代後半、地方部の人口はまだ増加中であったが、23区ではその15年以上前から人口が減り続けていた。江東区の人口は近年急増しているものの、砂町地区は横ばい、大島地区も微増にとどまる。

 サンロード中の橋商店街には銭湯がある。砂町銀座も、商店街の中ではないが、近くに銭湯が営業を続けている。

 2016年の「経済センサス」によれば、東京23区には人口10万人当たり5.5軒の銭湯(一般公衆浴場業)があるという。全国平均(2.4軒)の2.3倍。人口シェア7%の東京23区に、我が国の銭湯の6軒に1軒にあたる17%が集まっていることになる。まさに「銭湯一極集中」だ。

 時代が進むとともに消えていく運命に見舞われていった商店街と銭湯。この両者が、世のトレンドの最先端を走る東京23区に残り続けている。その奥に何が潜んでいるのだろうか。

 今はもうすっかり様変わりしてしまったようだが、かつて銭湯がまちに息づいている地方都市が、筆者の知る限り2つあった。三重県伊賀市上野地区(旧上野市)と千葉県香取市佐原地区(旧佐原市)。いずれも名うての「まつりまち」で、まつりを担う地区ごとのサロンの役割を銭湯が果たしているというのが、地元の共通した意見だった。

東京の商店街や銭湯が過去の遺物にならない理由


 かつて小売店は10時開店、18~19時に閉店が普通だった。セブン-イレブンの名が示す通り、7時に開店し23時まで営業しているコンビニは、ほかの店が閉まっているときでも利用できる、一種の隙間産業として登場する。初期のセブンのキャッチコピーは「開いててよかった」だった。

 公共料金のコンビニ支払いが始まった1987年を境として、コンビニは急増していく。それは、コンビニが物販施設からコミュニティ施設へと進化していく過程でもある。「開いてます」だったローソンのキャッチコピーは、91年に「マチのほっとステーション」へと変わる。今やコンビニは、公共料金の支払いはもとより、各種チケットの発券、預金の預け入れや引き出し、通販購入商品の受け取りなど、物販施設の域を大きく超えた存在へと姿を変えた。

 そんなコンビニでも、店員との会話は無機質なマニュアル問答でしかない。これに対して、商店街での買い物はまずコミュニケーションから始まる。顔馴染みになると、話題が的を射てくるから会話も弾む。お年寄りや子どもたちの見守りも、商店街の大きな役割だ。2011年の東日本大震災は平日の昼に発生したが、住宅地でこの時間帯にまちの事情に精通している男手が集まっている場所は商店街くらいしかない。

 商店街の最大の存在価値は「まちのキーステーション」であること。東京では、今もその機能が保たれている。

 情報は東京から地方へと伝播していく。しかし、情報量が多くなれば、その内容は表面をなぞるだけのものになってしまう。たとえば、入浴の効果を高めるグッズやノウハウの情報はあふれていても、要するに興味の対象は「入浴」という行為だけ。だとしたら、銭湯はノスタルジーか物珍しさの対象にしかなり得ない。商店街もまた然りで、モノを買うだけの場所となれば、スーパーとの勝負は厳しい。かくして、銭湯も商店街も過去の遺物と化していく。

 しかし、情報の発信源である東京は銭湯や商店街のもうひとつの価値をしっかりと評価し続けている。

「東京ひとり勝ち」とは、パワーゲームの結果として東京だけが勝ち残ったのではなく、日常生活の価値評価において、地方が次々と白旗をあげていった結果だったのではないだろうか。一番肝心な人々の日々の生活のあり様を「東京発」という名ばかりの薄っぺらな情報に一方的に委ねた時点で、商店街と同じように地方は内部から崩壊を始めたのではなかったのだろうか。

 東京の商店街や銭湯を前にしたとき、筆者にはそんな想いがよぎってくる。
(文=池田利道/東京23区研究所所長)

『獣になれない私たち』に感じる「これ以上ない手応え」…ハードな世界観を生んだ「本気度」

獣になれない私たち|日本テレビ - 日テレ」より
 今年も残すところあと1カ月弱となってきたが、2018年のテレビドラマは野木亜紀子の年だったと言っても過言ではないだろう。


 まず、冬クール(1~3月)に連続ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)を執筆。『科捜研の女』(テレビ朝日系)や海外ドラマ『CSI:科学捜査班』シリーズなどで知られる科学捜査モノの作品だ。不自然な死を迎えたご遺体を検死することで、背後にある意外な真相にたどり着くという展開には、毎回驚かされた。

 野木の作風は、一言で言うと社会派エンターテインメント。現代日本における労働問題や女性差別の問題を盛り込みながらも、説教くさくならずに娯楽作品として楽しく描くことを得意としている。それがもっともうまくいったのが、16年のヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、以下『逃げ恥』)だろう。本作を手がけたことで、野木の名前は広く知られるようになった。

 今までは『重版出来!』(同)や『逃げ恥』のような原作モノの脚色を得意とし、アレンジャーとしての評価が高かった野木だが、オリジナル作品の連ドラ単独執筆は『アンナチュラル』が初めてだった。そのため、仕上がりがどうなるか当初は未知数だったが、作家としての力量を存分に見せつける仕上がりだったといえるだろう。

 そして、10月にはNHKの土曜ドラマ枠にて『フェイクニュース』を前後編で執筆した。インスタントうどんに青虫が入っていたというSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への投稿がきっかけで始まる事件をネットメディアで働く女性記者の視点で描いた本作は、ひとつの情報がネットで拡散され広がっていくことが巻き起こす騒動を見事に戯画化していた。

 物語は二転三転し、加害者と被害者がコロコロと入れ替わっていく。前後編という短い尺に盛り込まれた物語の密度はすさまじく、見る者を圧倒する迫力に満ちていた。

『逃げ恥』とは真逆の『けもなれ』


 そして現在、佳境に入っているのが日本テレビ系で水曜22時から放送されている連続ドラマ『獣になれない私たち』(以下、『けもなれ』)である。

 物語の主人公は、IT企業で働く30歳の女性・深海晶(新垣結衣)。ブラックな労働環境に疲弊し、恋人の花井京谷(田中圭)は引きこもりの元恋人とマンションで同居しているため結婚できない深海が精神的に追い詰められているところから、物語は始まる。

 クラフトビール店「5tap」で飲んでいるときだけが心休まる晶は、そこで税理士の根元恒星(松田龍平)と知り合う。タイトルにある「獣になれない」とは、晶と恒星のことだ。2人とも仕事ができて理性的に振る舞うことができるがゆえに、他人に心を許すことができず追い詰められている。

 当初は同じ新垣結衣主演の『逃げ恥』のようなラブコメになるかと思われたが、蓋を開けてみたらハードなストーリーに多くの視聴者が驚いた。現代社会に生きる女性にとっての仕事と恋愛を描いているという意味では『逃げ恥』の延長線上にある作品だが、楽しいラブコメとして見せることで仕事と結婚というテーマを口当たりよく見せていた『逃げ恥』に対し、『けもなれ』は話数が進むほどハードで重々しい展開になってきている。

 チーフ演出は水田伸生。『Mother』『Woman』『anone』といった坂元裕二脚本の社会派ドラマや宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』(いずれも日本テレビ系)の演出を手がけた水田は、シリアスな描写で社会派娯楽作品を撮ることに定評のある実力派。その意味で、社会派エンターテインメント作品を得意とする野木とは相性がよかったのだが、相性がよすぎて先鋭化しすぎたために、『逃げ恥』を楽しんでいたようなライトな視聴者は振り落とされる結果となっている。

『けもなれ』の本気度と愛おしさ


 観ていて思い出すのは、野木が2010年にヤングシナリオ大賞を受賞したデビュー作『さよならロビンソンクルーソー』(フジテレビ系)だ。

 本作は共依存的な恋愛関係に悩んでいる男女の交流を描いたドラマで、主演を務めたのは『けもなれ』にも出演している田中圭と菊池凛子。劇中の役割もかなり近いものとなっている。おそらく、セルフリメイク的な側面もあるのだろう。

 まじめで頭が良いがゆえに自分を追い込んでしまう登場人物や、共依存的なカップルというモチーフは、もしかしたら野木がもっとも描きたいテーマなのかもしれない。

 デビュー作にはすべてが詰まっているとよく言うが、オリジナル作品を書けるようになったときに、あえて『さよならロビンソンクルーソー』と同じテーマに挑んでいるのを見ると、『けもなれ』の本気度が伝わってくる。

『逃げ恥』のような優しい世界を求める視聴者にとって、『けもなれ』のハードな世界観は受け入れがたいものかもしれない。しかし、テレビドラマに口当たりの良さだけでなく、生きていく上での道標のようなものを求めている人にとっては、これ以上にない手応えを本作は与えてくれる。一見、おしゃれな人たちばかりが登場するスマートな作品に見えるが、不器用に生きる人々が描かれた愛おしいドラマである。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

ネット炎上を起こすのは「7万人に1人」…東急電鉄とサントリーの広告“炎上”はなぜ起きた?

「gettyimages」より
 インターネット上で毎日のように起きる「炎上」。未成年の学生が飲酒をしたり、コンビニエンスストアの従業員がアイスケースに入ったりといったやらかしは定番ネタだが、炎上にもトレンドがある。移り変わりの激しい炎上の現状と実態は、どのようなものか。


炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)の著者で国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師の山口真一氏に話を聞いた。

“やらかし系”に代わって“表現の炎上”が急増


――2016年にも、山口さんに炎上についてお話をうかがいました。それから2年、炎上はどう変わりましたか?

山口真一氏(以下、山口) 炎上そのものは沈静化していない印象があります。社会的な関心も、ずっと高いままですね。

『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版/山口真一)
――それでは、炎上の内容的な変化はあったのでしょうか。

山口 「アイスケースに入る」のように学生などの若者がやらかして炎上するケースはゼロではありませんが、数自体は減ってきている印象です。“アイスケース炎上”は13年、今から5年前がピークだったんです。

――なぜ、近年は減っているのでしょうか。

山口 ネットを利用するなかで「これをしたら炎上する」という知識が浸透してきたことや、学生に向けた情報モラル教育が充実してきた影響でしょう。一方で、エビデンスがあるわけではないのですが、近年目立っていると感じるのが表現に関する炎上です。アイスケースのような「明らかにこれは炎上するだろう」というものでなく、捉え方で炎上してしまうようなケースですね。代表的なものとして、「東急電鉄マナー広告の事例」があります。

※東急電鉄マナー広告の事例…17年1月に同社が「ヒールが似合う人がいた。美しく座る人だった。」というキャッチコピーの車内マナー広告を制作。写真では、足を閉じて座る女性の両脇に足を開いている男性と足を組んだ男性が写っている。これに対し、「おせっかいで抑圧でしかない」「電車内で本当に迷惑なのはこの両脇の男性や痴漢なのに……そっちに直接訴えるべき」などの意見が出て炎上した。

 この事例は、個人的には炎上するような内容だったか疑問です。制作者側の意図を無視した状況で批判が噴出したという印象を受けました。これがダメなら、女性を登場させること自体難しくなってしまいます。一方で、「サントリー頂の事例」は「炎上するかな」という感じはしますね。

※サントリー頂の事例…17年7月にサントリーが新商品「頂」(第3のビール)のPR動画をネット上に公開。女性たちが飲んで「コックゥ~ん! しちゃった」などと話すシーンに「卑猥」と批判が集中した。サントリーは謝罪後、動画の公開を停止した。

――こちらは「攻めてみたら、やっぱり炎上」というケースですね。

山口 この動画では、評価・擁護の声もありました。おそらく、リーチさせたいおじさん層には、ある程度受けたのだと思います。実際、私もそういった意見を聞いたことが何回かあります。一方で、女性や一部の男性に「なんだこれは」という人もいた。その結果、炎上したんです。

 ポイントは、「頂」の場合はテレビCMではなくネット動画だったという点です。テレビで流れるCMは強制的に目に入ってきますが、ネットの動画は見ないという選択もできますよね。だから、ターゲット層に受ければ良いという考え方があった。加えて、ネット動画の競争が激しくなるなか、過激な表現で受けを狙ったが、実際にはこのように炎上する。「ネットでも、対象者以外から批判が集まる」ということがわかる典型的な事例だと思います。

男だらけの会議で20代女性が意見を言えるか


――東急電鉄サントリーも女性の描き方で炎上したといえますが、ジェンダーの問題は“火薬庫”といっても過言ではないですね。

山口 重要なのは、「ある程度炎上するのを見越して炎上したと考えられるケース(サントリー)」と「予期せず炎上してしまったケース(東急電鉄)」は切り分けるべきだということですね。

――制作側は、どういった点に気をつければいいのでしょうか。

山口 ポイントは2つあります。

(1)制作の現場に多様な人材を入れる
(2)心理的安全性を確保する

(1)に関しては、「うちは対応できている」という会社は多いんです。「会議の席に若い女性(男性)を入れている」と……でも、それだけでは足りません。同時に、(2)の心理的安全性も確保できていることが大切です。

 たとえば、会議の席で50代のトップの男性社員、ほかに40代、30代の男性社員がいるなかで、20代の新人女性社員がひとりで発言できるかという問題がありますよね。

――忖度しちゃいそうですね。

山口 賛成意見なら言いやすいでしょうが、特に反対意見は言いにくいですよね。「自由に批判して、自由に意見が言える環境」であることがとても大切で、「うちは若い人を入れているから大丈夫だ」という会社は、その視点が欠けているのではないかと思います。考えてほしいポイントですね。

――かといって、広告などの場合、炎上を恐れて表現を控えると毒にも薬にもならないものしかできず誰も見向きもしなくなり……という点が難しいですね。

山口 ちょっと尖ったことをやれば、1%や0.1%の人が不快に思うのは仕方のないことなんですよね。しかし、0.1%の人たちが熱意を持って書き込むと大炎上になってしまうのがネットの現状です。炎上して当然のような内容のものとそうでないものを、冷静に区別する必要があります。

――ごく少数の大暴れする人たちに全体が振り回されるというのは、前回取材した2年前から変わらない、ネット炎上の大問題ですね。

山口 14年に2万人を対象とした調査では、「過去1年間で炎上について書き込んだことのある人」は全体の0.5%しかいません。これは200人に1人です。

 さらに、「ひとつの炎上事例あたりの参加者」という観点で見ると、さらに参加人数は少なくなります。14年における炎上発生件数は667件です。現役の炎上参加者が年間2件の炎上に書き込んでいると考えても、わずか0.0015%程度、7万人に1人しか、ひとつの炎上事件に書き込んでいないことがわかります。

ジェンダートラブルが陥りがちな展開とは


 私自身は女性だが、「東急電鉄マナー広告事例」で「女性はきれいに座るべきだ」「女性に対する抑圧だ」などと受け取るのはおかしいと思う。一方で、実際に電車のなかで足を広げて座っている人は男性が多いのだから、ポスターにおいて「きちんと座る人」を女性ではなく男性の写真にすれば炎上は避けられたと思うので、この部分に疑問を感じる人の気持ちは理解できる。

 ジェンダーに関するトラブルは「どこに怒っているのか」、そして「その怒りは妥当なのか」が明確にならないまま、「なんだか女が怒っている、おぉ怖い」となってしまいがちであり、それは怒っている側にとってもっとも血圧が上がる展開ではないだろうか。

 次回は、引き続き山口氏に「炎上を引き起こしているのは誰なのか?」という点について話をうかがう。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)

『僕らは奇跡でできている』8話、「親が子を捨てる必要性」めぐり議論沸く

フジテレビ公式<FOD>【1ヶ月無料】独占タイトル続々配信中」より
 11月27日放送の連続テレビドラマ僕らは奇跡でできている』(フジテレビ系)第8話が平均視聴率6.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことがわかった。


 同ドラマは、高橋一生演じる主人公の相河一輝と彼を取り巻く人々のハートフルストーリー。大学で「動物行動学」を教える一輝は、一見すると“変わり者”で、はじめは新庄龍太郎(関西ジャニーズJr.のなにわ男子・西畑大吾)ら学生を困惑させたり、授業の合間に通っていた歯科クリニックの院長・水本育実(榮倉奈々)をいら立たせたりしたことも。しかし同時に、彼らは一輝とのかかわりを通じて価値観を揺り動かされ、一輝もまた、周囲との交流によって成長していた。

 そんななか迎えた第8話は、一輝が家政婦の山田妙子(戸田恵子)に「僕は山田さんから生まれたんですよね?」と、投げかける場面から始まった。その言葉に戸惑う山田と、言うつもりのなかったことを口にしてしまった一輝はギクシャクしてしまう。それでも一輝は、山田との気まずさを解消したくて育実にアドバイスを求めるなどしていた。一方、山田は一輝の祖父・義高(田中泯)や恩師・鮫島瞬(小林薫)に相談した結果、一輝にすべてを打ち明ける決意をする……という展開だった。

 ここからは完全なネタバレになるが、山田は一輝の実の母親で、息子が“変わった子ども”だったことで追い詰められ、一輝が4歳の頃に家を出てしまっていた。そして、一輝が15歳のときにこっそり見に行った運動会で義高に見つかり、「戻ってこないか」と声をかけてもらったという。山田は自分が母親であることを「一生、言わない」と決め、そこからは家政婦として一輝の世話をすることに。

 第7話までに、一輝を慕う小学生・宮本虹一(川口和空)の母親・涼子(松本若菜)が、やはり“変わった子”の育児に悩む姿が描かれてきた。この段階では“虹一は昔の一輝と似ている子ども”ということしか強調されていなかったけれど、実際は“涼子も昔の山田と似ている母親”だったのだ。一輝の家で涼子が虹一を「ダメ」扱いしていたとき、その光景を見ていた山田はどんな気持ちだったのだろうか。

 第8話の内容に戻るが、事実を知った一輝は当然、目に涙を浮かべていた。そして、自分が長年“タコ嫌い”だった理由にも気づく。4歳だった一輝は母親に「タコが見たい」とねだったが、タコを買いに行ったはずの母親が帰って来なくなってしまったから、タコを嫌いになってしまったのだ。しかし、現在35歳の一輝は、タコは「大好きの象徴」だったということにも気がついた。タコが食べられなくなるほどに母親のことが大好きだったから……。この言葉が、どんなに山田の心を救っただろう。

 また今回、義高は山田が家を出るとき、彼女に2万円渡していたことを明かした。切羽詰まった山田に息抜きをさせるために渡したというが、もしかしたら義高は「このまま帰ってこないかもしれない」と思いながらも、彼女を送り出したのでは……と思わずにいられない。むしろ当時、義高が山田を“解放”していなければ、彼女にとっても一輝にとっても良くない状況が続いたような気がする。「子どもを捨ててはいけない」のはもちろんで、捨てた親は一生背負っていかなければならないものがあるだろう。しかしきっと、その選択が必要なときだってあるのだ。

 インターネット上でも、やはり「山田さん、好きなキャラだったけど……一輝を捨てた過去は重すぎる」「簡単には受け入れられない」といった書き込みもあったが、「一輝の考え方に心打たれた。山田さんは救われたし、私も思うところがあった」「今までなら『山田さん最低!』で終わってたけど、なんだか深く考えさせられて良かった」との声も多かった。

 そんな良いストーリーでも、視聴率が振るわなかったのは残念である。ちなみに、同ドラマは初回の7.6%が現時点での自己最高となっており、第7話は7.2%をマークしていたが、そこから今回は0.8ポイント減少。一方、同日にTBS系で放送された有村架純主演の連ドラ『中学聖日記』第8話は、自己最高の7.5%を獲得した。火曜ドラマ対決の勝敗は最後までわからない。
(文=美神サチコ/コラムニスト)

中谷美紀の達筆と真逆!字が汚すぎて大恥をかいた宮沢りえ&沢尻エリカ

沢尻エリカ
 女優の中谷美紀が「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」などでビオラ奏者を務めるドイツ出身のティロ・フェヒナー氏と結婚していたことが明らかになった。11月27日に一部スポーツ紙が報じ、中谷は2ショット写真と直筆の手紙で結婚を報告している。


 長きにわたって独身だった中谷の40代での国際結婚が話題となる一方で、その直筆も注目を集めている。中谷は手紙で「互いの文化に敬意を払いつつ、共に齢を重ねて参りたいと存じます」などとつづっており、まるで書家のような達筆に、インターネット上では「字までお美しい」「品の良さがにじみ出ている」と称賛の声があがっているのだ。

 フジテレビの山崎夕貴アナウンサーは『とくダネ!』で、自身が書道十段であることを明かした上で「私の教養レベルではこれは読めない。ちょっと読むのに時間がかかるほど達筆です」と感想を述べていた。

 結婚や妊娠、離婚などの際に芸能人が直筆の文章で報告することは珍しくない。過去には、菅野美穂や鈴木亜美が直筆メッセージを発表した際に「字がきれい」と称賛されている。

 なかでも、字のうまい女優の筆頭に挙げられるのが井上真央だ。ファン向けの手紙などでの美しい文字が過去にもたびたび話題となっており、主演を務めたNHK連続テレビ小説『おひさま』ではドラマ内で直筆の手紙が使われたという。綾瀬はるかも、主演ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)の中で習字を披露した際に「うますぎる」と話題になったことがある。

 一方で、逆の意味で注目を集めてしまった芸能人も少なくない。宮沢りえは、16年3月に離婚を発表した際、ファックスの直筆署名が独特で「何かのロゴみたい」「まるでギャル文字」「40過ぎてこれはイタい」などと衝撃を受ける人が続出した。ただ、18年3月にV6の森田剛との結婚を発表した際にも同様に署名入りのファックスで報告したが、「字がうまくなった」「美文字になっていて別人レベル」という声があがっていた。

 沢尻エリカは、テレビ番組で過去の履歴書が公開された際に「字が汚すぎる」と波紋を呼んだ。当時は小学6年生だったというが、ガタガタの文字が「読めないレベル」「強烈すぎる」と話題になり、「一発ぎゃく転」「芸能会」などの表記に「漢字が苦手なのか」という声もあがった。

 また、テレビ番組で直筆メモを公開されたことで赤っ恥をかいたのが俳優の斎藤工だ。役者としての心得などが書かれたメモの字はお世辞にもうまいとは言えず、さらには「始めて(初めて)」「意聞(意見)」「定度(程度)」「己人(個人)」など漢字の間違いが目立ったことから、ネット上でツッコミの対象になっている。

 妻夫木聡と堺雅人は、思わぬ反応を呼んだケースといえる。堺は15年5月に妻である菅野の妊娠を「この秋、あたらしい家族がくわわることになりました」と、妻夫木は16年8月に女優のマイコとの結婚を「互いに相手を思いやる心に惹かれ、この気持ちを生涯大切に、そして共に年を重ねていきたく、結婚の運びとなりました」と、それぞれ直筆のメッセージで報告した。いずれも、丸みを帯びたかわいらしい書体であったことから「乙女すぎる」「女子高校生みたい」「優しい性格がにじみ出ているような字」と話題になった。

 今後も、芸能人が直筆で身辺を報告する機会は多いだろう。そのとき、独特の文字に注目してみるのも一興かもしれない。
(文=編集部)