独特が炸裂するオモシロ台である。
平和から登場した『マリンアタック』は機種名の通り海上戦艦をモチーフにした羽根物である。役物は上段ステージと下段ステージからなる2部構造で、上段が海上、下段が海中を舞台にしている。
上段ステージは海面を模した透明なプラスチック板になっており、まさに海面のように上下に揺れるように可動する。
また、表面にはさまざまな突起が障害物としてあしらわれており、この障害物によって玉がバラエティーに富んだ予測不能な動きを見せるのである。
一方の下段ステージは、上段ステージから繋がる穴の真下に貯留溝があり、そこにいったん収まった後で役物の奥へまっすぐ転がっていく。この下段ステージは遮るものがない分、大当りしやすい「スペシャルルート」的な役割を果たしている。
ただ、本機のVゾーンは常に右から左、左から右へと比較的長い距離を移動しているので、Vゾーンが中央付近に来るタイミングでないとスペシャルルートといえどもなかなか大当りしないようになっているのである。
これは常々思っているが、『ファインプレー』しかり『マジックカーペット』しかり『バイキングキッド』しかり『デビルマン倶楽部』しかり、やはりVゾーンが左右に可動するタイプの羽根物は最高に面白いしハズレはない。これはもう真理である。
さて本機。通常、スペシャルルートが搭載してある機種は、そのスペシャルルートこそがその台のゲーム性のカギを握るのであるが、この『マリンアタック』においては、ノーマルルート、つまり上段ステージにこそ面白さが凝縮されているのである。
「ミラクル連発マシン」。当時、私が付けた本機の二つ名である。ほぼ真横に移動していた玉が突起によって急激に方向転換し、そのままVゾーンに吸い込まれるといったような、本当にありえないようなV入賞をたびたび炸裂させ、一時も町男のワクワク心を衰えさせないのである。
福田からのバーベキューの具材を刺す順番を待ち焦がれるチュートリアル徳井とまったく同じなのである。「はよくれ、放り込んでくれや」と役物の動向に目が釘付けとなる。
そんなユニークな役物機構によって魅惑のゲーム性を創造した完全なる羽根物台なのであるが、区分撤廃によるデジタル要素も組み込んだハイブリッドマシンの側面も持っていた。
1/397の直撃大当り、16R大当りの時短100回。チャッカー4個保留。そして、液晶画面も搭載されていたのである。
役物自体は辛めな印象であったが、こうしたデジタル風味によって緩和される部分もあり、より無理なく遊べるような配慮もなされていた。
このように、町男的には最高の羽根物であったのだが、世間的にはあまり受け入れられなかったのか設置も微妙に少なく、人気的にはメランコリックなインディー味あふれる機種であった。
(文=大森町男)