入れ替わりが激しいバラエティー番組の女性タレント枠のなかで、安定した人気を獲得している朝日奈央。プライベートでは11月上旬に美容師との熱愛が発覚し、公私ともに順調のようだ。
ティーン向けファッション誌「ラブベリー」(徳間書店)の専属モデルとして2007年にデビューした朝日は、2008年にアイドルグループ「アイドリング!!!」に2期生として加入。同グループをメインに据えたフジテレビのバラエティー番組『アイドリング!!!』(2015年に放送終了)では、MCのバカリズムのもとで徹底的にお笑いの“特訓”を受けてきた。放送開始当初から同番組を見ていたというエンタメライターの大塚ナギサ氏はこう語る。
「番組開始当初からお笑い要素が強かった『アイドリング!!!』ですが、1期生のころはまだ“清純派アイドルが体を張る”というような“ギャップ”で見せることも多かった。しかし、後に“野武士アイドリング!!!”と名付けられる負けん気が強い2期生が加入したことで、もっとストレートにお笑い路線へと舵を切っていった印象があります。もちろん、歌やダンスの面ではアイドルらしさを発揮するのですが、番組の企画はよりお笑い色が強いものにシフトしていきましたね」(大塚ナギサ氏、以下同)
朝日より先にバラエティーでブレイクした菊地亜美も、このアイドリング!!!の2期生メンバーだ。
「菊地さんは、ひな壇トークの面でかなり飛び抜けた存在でしたね。ガヤを入れるのがとにかく上手くて、いわゆる“裏回し”という役割をアイドリング!!!時代から担っていました。一方の朝日さんは、体を張る企画でのエース。朝日さんが何かをやれば必ず面白いハプニングが起きるんですよ。まさに出川哲朗さんのようなポジションです」
バカリズムとアイドリング!!!はライバル関係
『アイドリング!!!』放送開始当初よりMCを務めたバカリズムは、2005年にピン芸人になった。『R-1ぐらんぷり2006』において初出場ながら決勝戦に進出し、4位に食い込んでみせた彼は、その勢いに乗る形で、2006年10月にスタートした同番組のMCに抜擢されたわけだ。
当時はまだバラエティー番組への露出はほとんどなく、なかば手探り状態で『アイドリング!!!』のMCを務めていたバカリズム。アイドリング!!!のメンバーたちが番組を通してバラエティーを学んでいったのと同様に、バカリズムもまた、『アイドリング!!!』という番組で経験値を積んでいったのである。
「芸人さんが女性アイドルグループの冠番組でMCを務めるのは定番となっていて、その多くが“お兄さん的存在”を任せられるわけです。しかし、アイドリング!!!とバカリズムさんの関係は、必ずしもそういうものではなかった。基本的にバカリズムさんはメンバーたちにすごく冷たいし、彼女たちをまったく甘やかさない。メンバーを引き立てるためのMC……ということではなかったんですよね。バカリズムさんとしても、当時は自分が芸人として売れていかなければならない状況だったわけで、ある意味メンバーとは“ライバル関係”だったのではないでしょうか」
アイドリング!!!のメンバーの多くは歌手や女優、モデルを目指す少女たちだった。その中で、加入当初からバラエティータレント志向だったのが、先に述べた菊地亜美と朝日奈央の2人だ。今では芸人としての評価を確固たるものにしたバカリズムの“ライバル”として切磋琢磨できたのだから、この2人がバラエティータレントとして高いスキルを身に付けたのもある意味当然かもしれない。
アイドリング!!!というオルタナティブな存在
アイドルグループの冠番組は、すでに存在しているファンに向けてその魅力を発信していく……という内容となっているものが多く、ゆえに番組内で行われる企画もそこまで実験的ではないのが一般的。つまり、“ファンが求めるもの”を意識した番組作りとなるわけだ。
しかし『アイドリング!!!』には“現在進行系で成長するメンバーたちを見せていく”というコンセプトが存在し、そもそも視聴者として想定されうるファンがまだ存在しないような状態で開始されている。だからこそ、メンバーのさまざまな可能性を模索するための実験的な企画も可能となり、その結果、菊地亜美、朝日奈央、そしてバカリズムという3人の才能が開花したのではなかろうか。
「“疑似恋愛”や“萌え”の要素が重要視された2010年代のアイドルブームの中で、“バラエティー虎の穴”的存在だった『アイドリング!!!』は、今から見ればかなり異質です。その特殊性ゆえにグループとしてはブレイクできなかった……という側面もあるかもしれませんが、とはいえそんな中であの3人の才能を輩出したのは、十分すぎる功績だといえるでしょう」
AKB48グループ、坂道シリーズ、ももいろクローバーZ、ハロー!プロジェクトなどがそれぞれにメインストリームを歩んでいた、2000年代後半から2010年代前半の女性アイドルブーム。特にライブを重視するグループが多いなか、バラエティーに特化したアイドリング!!!がオルタナティブな存在であったことは間違いない。それゆえにアイドリング!!!は女性アイドルブームの文脈では軽視されがちだが、一方でテレビバラエティーの世界には大きく貢献しているわけだ。
「バラエティー番組としての『アイドリング!!!』は、過小評価されすぎだと思いますね。番組を通して新人タレントを育てるという意味で、これほどまでにお手本となる番組はなかなかないはずです」
タレントがバラエティーで成功していくためのヒントが多数潜んでいたと思われる『アイドリング!!!』。番組終了から4年の月日が経っているが、業界内での再評価熱が高まりそうだ。
(文=編集部)