楽天、出店業者をカモに“罰金ビジネス”の疑い…「違反の指摘あった」と虚偽説明か

 罰金ビジネス。どこぞの名も知れぬブラック企業の話かと思うが、インターネットサービスをはじめとして、金融サービス、プロスポーツ事業にも乗り出している、楽天でのことだ。

 その中核をなす事業は、国内最大の電子商店街である「楽天市場」。そこで問題は起きている。楽天市場に出店するQ社は、メーカーとの間を仲介する商社から受け取った商品の画像を使って、楽天市場内の店舗サイトで商品を紹介していた。

 11月21日、楽天の品質向上委員会・違反点数制度事務局からQ社に、以下のメールが届いた。

----------------------------------------

このたび、株式会社●●より、

貴店において株式会社●●の権利を侵害する行為を確認した、との指摘が当社に寄せられましたのでご連絡いたします。

お忙しいところ恐れ入りますが、ご対応期限までに下記依頼事項の対応をお願いいたします。

----------------------------------------

 株式会社●●というのは、メーカーである。同様の文面で、3社のメーカーについて3通のメールが来たという。メーカーの許諾を得ずに商品の画像を使用したのが、著作権侵害に当たるというわけだ。

 これを見てQ社が思ったのが、罰金ビジネスだ。楽天には、出店店舗に向けた「取扱禁止商材・禁止行為ガイドライン」というものがある。売ってはいけない物として、改造モデルガン、麻薬、使用済みの下着、児童ポルノ、免許証、パスポート、健康保険証、議員バッチ、弁護士バッチなどが挙げられているなど、おおむね常識的内容だ。

 そのなかに禁止事項として、「著作権、肖像権等を侵害する表記」というものが、以下のように書かれている。

----------------------------------------

他人の著作権、肖像権、パブリシティ権の侵害となるような、以下の行為

・掲載許可のない、有名人画像や他人・他店舗の著作物の使用

・掲載許可のない、メディアコンテンツ(雑誌・新聞等)の使用

・「○○さんが愛用」「ドラマ○○で使用」「雑誌○○で紹介!」などの記載

---------------------------------------- 

 この件に関する、違反点数は35点。出店店舗に対する「違反点数制度に関するガイドライン」によれば、違反点数が累積して100点を超えると、300万円の違約金が発生し、ランキング掲載制限などのペナルティーを受ける。これが、300万円を得るための罰金ビジネスだと受け取られたというわけだ。

メーカー側、権利侵害で楽天に連絡した事実なし

 仲介した商社から画像を受け取ったのなら、画像の使用について許諾が成立していると見るのが商習慣として普通のことだ。法律の専門家はこれをどう見るか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士から聞いた。

 まず、著作権法第2条には、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とある。ただ単に商品を撮影した画像が、著作権法の保護対象になるのかという疑問が湧く。

「『商品を撮影した画像』も、撮影の方向、光量、大きさ、背景、色合いなど、その画像を撮影した者の『こういう風に写したい』という思想、感情が表現されているので、『美術』の一つとして保護されます」

 著作権法の保護対象にはなるということだが、商社から受け取った画像の使用が、著作権侵害になるのだろうか。

「何かの間違いでなければ不思議な話ですね。『メーカー』は『商社』に対し、画像の使用に関する許諾や、第三者にさらに許諾する権限を付与しているでしょうから、『出店店舗』も、著作権使用に関する権限を付与されていると考えることができます。したがって、権利侵害にはなり得ません」

 禁止事項にある「『○○さんが愛用』『ドラマ○○で使用』『雑誌○○で紹介!』などの記載」というのも、奇異な印象を受ける。

「〇〇さんの写真を使用したら肖像権侵害や著作権侵害などが成立するでしょうが、『〇〇さん』という名前だけなら、権利侵害にはならないでしょう。もっとも、『〇〇さん』という名前、特に『芸名』が商品の購買意欲を明らかに高めるなど、なんらかの商業上の価値があるところまで至っているのであれば、『〇〇さん』という『芸名』の権利をもっている(例:SMAP、嵐など)芸能事務所の『パブリシティ権』を侵害する可能性はありますね」

 商品の画像の使用について、Q社は楽天からのメールで指摘を受けたメーカー3社に連絡をした。3社とも、権利侵害で楽天に連絡した事実はなく、逆に楽天のほうから連絡を受けたり、「楽天が勝手に巡回チェックされているんじゃないですかね」と語るメーカーもあった。「画像を見ても普通の画像」「ある意味うちも被害者ですね」と口にしたメーカーもある。

 権利侵害に関する指摘がメーカーから楽天に来たというのは、虚偽だった可能性がある。Q社は楽天に説明を求めているが、今に至るまで連絡が取れない状況だという。

 楽天に取材したところ、以下の回答が返ってきた。

「個別の事案については回答を控えさせていただきます。『楽天市場』では、従前からお客様により安心安全にお買い物を楽しんで頂けるよう、外部の組織・公的機関とも連携し、様々な取り組みを行っています。取り組みの一つとして、権利侵害行為についても、ユーザーからのご意見や楽天によるパトロールなどを通じて、権利侵害と疑われる行為については、権利者に確認した上で、対応をしております。楽天は、今後もお客様にお買い物をより安心安全に楽しんでいただけるよう、様々な取り組みを推進してまいります」

 もし、正しい法律知識を持たない警官が街をパトロールしていたら、市民は怖くて街を歩けない。同じことが楽天市場で起きていると感じるのは、気のせいだろうか。

(文=深笛義也/ライター)