
2023年10月1日から、ステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」の法規制が始まりました。これ以降、ステマは景品表示法違反とみなされるようになります。
ステマといえばイメージされるのが、インフルエンサーマーケティング。つまり、ソーシャルメディア上で活躍するインフルエンサーが、企業の依頼を受けて、ブランドや商品の宣伝を行う行為全般ですが、今回はさらに4マス媒体(テレビメディア、ラジオ、雑誌、新聞)でのステマ行為も規制対象となります。
具体的に何をすればステマに抵触する、あるいはしないのでしょうか?
今回は、長年インフルエンサーマーケティングに取り組んできた第一人者として、CARTA MARKETING FIRMの平賀大地が分かりやすく解説します!
※平賀大地のこれまでの取り組みについてはこちら
<目次>
▼これはステマになる?ならない?意外と知らないステマの2条件
▼「#PR」と書いてあれば良いのか?細かいケースを確認
▼生活者の共感を呼ぶ、正しいインフルエンサーマーケティングとは?
▼SNSマーケティング/インフルエンサーマーケティングは今後どうなる!?
これはステマになる?ならない?意外と知らないステマの2条件
いよいよ日本でステマの法規制が実行されました。
この規制は難しいイメージがあるかもしれませんが、非常にシンプルです。簡単に言えば、
「これは広告なんです」と、消費者に分かりやすく伝わるかどうか
ということです。
ステマに抵触しない条件は、大きく2つです。
①いわゆる #PRマークを分かりやすい場所に付けること
今までと決定的に異なるのは、とにかく分かりやすい場所に「#PR」マークを表記する必要があるということです。
例えばInstagramの投稿の場合、キャプションのあとにハッシュタグを入れることが多いと思います。従来は、以下のように
- #企業の商品名 #企業のイベント名 #PR
と、ハッシュタグ一覧の最後に「#PR」表記を入れているケースが大半でした。しかしこれが、10月からはステマに抵触する場合があります。
ステマに抵触しないためには、
- #PR #企業の商品名 #企業のイベント名
の順番にする必要があります。
②事業者と情報発信者の「関係性」を明示すること
つまり、宣伝の主体(事業者、広告主)と情報発信者との間に、どのような関係性があるのかを明らかにすることです。
具体的には、
- 「〇〇企業に招待されてイベントに来場しています」
- 「〇〇企業のアンバサダーに就任しましたので、これからSNS発信していきます」
といった内容を、消費者に対して分かりやすく伝えていればOKです。要するにこれができていればステマ規制には抵触しませんので、臆する必要はありません。
また、いうまでもなく、インフルエンサーや生活者が「自発的に商品を購入」し、「自発的にSNS投稿」することは、もちろんステマに該当致しません。
なお、ステマと聞くとソーシャルメディアやニュースサイトなどでの宣伝を想像されるかもしれませんが、今回の法規制は4マス媒体も対象となります。マス媒体では昔から広告のルールが徹底されていることもあり、新たに気をつけることはないかもしれませんが、念のためご留意ください。
「#PR」と書いてあれば良いのか?細かいケースを確認
大きなルールは前述の通りですが、もっと細かい話で、「あれはどうなのか?これはどうなのか?」と不安に思う企業が多いと思います。その点について、私たちCARTA MARKETING FIRMでは、ケースバイケースでルール化しています。
例えば、事業者がインフルエンサーに依頼して投稿してもらう場合は「#PR」というハッシュタグを付けることが一般的ですが、企業の社員が自社の公式アカウントで新商品を宣伝するときにも、「#PR」などを表記しないとステマに該当します。
他にもステマ規制に抵触する細かなケースとして、下記のようなことが挙げられます。
- ユーチューバーによる長時間の動画で、終盤まで企業案件だと明かさず、広告だと分かりにくくする
- Instagramの投稿で、「#PR」を投稿本文ではなくコメント欄で表示する
- 「#PR」を小さく表示したり、視認性が低い色にする
他にもありますが、これらは「生活者から広告だと思われたくない」という意図が、明らかに伝わってしまいますよね。そういうケースは全てステマに抵触すると考えられます。
もちろん、もっと微妙な、判断に迷うケースはあると思いますが、われわれのような専門家にご相談いただければと思います。
とにかく重要なのは、「なんとかして広告であることを知らせず、なおかつステマにも抵触したくない」という考え方は、生活者には通用しないということです。
筆者は、インフルエンサーという言葉すらなかった2009年頃から、ソーシャルメディアでのインフルエンサーマーケティングに取り組んできました。その中で強く実感したのが、「#PRを付けても、共感される投稿がある」ということです。
ごまかすから、ステマになる。ならば堂々と広告だと宣言し、広告だと認識してもらったうえで生活者に正しく理解してもらう。それができた時は、「#PR」を付けても付けなくても、効果は変わらないどころか、むしろ強い共感を呼ぶのです。
例えばある時、とあるインフルエンサーの投稿に対し、フォロワーの方から「〇〇(企業名)さんの広告楽しいです!」というコメントが付いているのを見た時は、仕事冥利(みょうり)に尽きる思いでした。
また、アンバサダー施策の時にインフルエンサーが「〇〇企業のアンバサダーに就任しました」と宣言すると、フォロワーからは「〇〇ちゃんすごい!」といった共感を得られることが多いと気が付きました。
タレントブロガーによる「ステマ」が問題になった頃、私たちはステルス(秘密裏な)マーケティングに対抗して、これらの手法を「オープンマーケティング」と名付け、クライアントに提案していました。
この考え方は、ステマ規制が始まった今、ますます重要になってくると思います。
生活者の共感を呼ぶ、正しいインフルエンサーマーケティングとは?
ダメなケースは上記の通りですが、ここでは理想的なインフルエンサーマーケティングの例をご紹介します。
クライアントはトヨタ自動車です。

新型カローラの宣伝を、インフルエンサーに依頼した事例です。
投稿文の先頭に、「トヨタさんの新型カローラの試乗会に招待された」と記載することで、広告主との「関係性の明示」を行っています。
トヨタのような企業から招待されることは、インフルエンサーのファンたちにとっては誇らしいことであるため、「企業案件」であることを隠さずに明示したことで、より大きな共感を得ることができます。
SNSマーケティング/インフルエンサーマーケティングは今後どうなる!?
われわれCARTA MARKETING FIRMは「&Social」というコンセプトを掲げており、ソーシャルメディアでのインフルエンサー施策単体で終わらず、さまざまな施策と組み合わせることで、広告主の事業を進化させていくことをミッションとしています。
例えば、インフルエンサーが投稿したクリエイティブを、広告に2次利用していく。起用したインフルエンサーをイベントに招待し、それをニュースリリースしていく。など、「&Social」できる領域は、まだまだあると考えています。
そのためにも、インフルエンサー関連の部分でステマ対策は必須です。そこで問題を起こしてしまえば、他の全てのプロモーションに影響を与えますので、いかにオープンに発信していくかが問われます。
ステマに限らず、SNSマーケティングにおけるリスク管理はますます重要さをましています。SNSは超高速で情報が広がっていきますし、刻々とトレンドも変わります。「SNSマーケティングをしていく中で、トラブルがゼロになることはない」という前提が必要です。
トラブルが起こってから考えるのではなく、常日頃から、さまざまなケースを想定した「エスカレーションフロー」を策定することは一般的になってきたと思います。そのエスカレーションフローを元にして、トラブルが起きた時はとにかくスピード優先でその対策を実行していく必要があります。
また、これからのSNSマーケティングでは動画、特にショート動画が施策として増加していくと思います。動画は情報量が多い分、思わぬところで炎上のリスクがあります。法令順守はもちろん、倫理観をふまえたチェックも必要です。
とはいえ、広告主は、最大限の効果を出していくことが第一の目的ですので、炎上しないことばかり考えて「訴求を弱める」というのでは本末転倒です。
「きちんとルールにのっとりながら、最大限に広告を盛り上げる」ということに、業界を挙げて取り組んでいければと思います。
インフルエンサーマーケティングの歴史と共にあった、筆者の歩み
筆者は、ネット広告・マーケティングの会社に新卒で入ったのですが、その際、クライアントに「タレントが書くブログ」を積極的に販売していました。タレントのブログ内で、クライアントの商品を記事内で宣伝してもらう、「記事マッチ」というPRメニューです。
私がこのメニューを好んで販売していた理由は、その当時、生活者に対するタレントブロガーの影響力が絶大だったからです。時には記事内で紹介された商品が、ROAS300%以上の売り上げを記録することもありました。
それを見て、これからは1人1人がメディアになる時代だと確信した私は、2009年にインフルエンサーマーケティング会社であるKAIKETSUを起業しました。といっても、まだインフルエンサーという言葉が存在しなかった時代です。
そしてある時、ブロガーを中心に、ある程度インフルエンサーマーケティングのマーケットが伸びてきた中で、有名タレントたちによるステマ事件が発生しました。この時の業界ダメージは大きく、当時の私の会社も衝撃を受けました。
そして、それをきっかけに、「ステマ」という言葉が世の中に定着していきました。私の会社も、私自身も、ずっとステマという言葉と闘い続けました。
その後、インフルエンサーの活躍の舞台は、ブログからTwitter(X)、Instagram、YouTube、TikTokといったソーシャルメディアへと変遷していきましたが、それと共にインフルエンサーマーケティングも進化していきます。
ステマが法的に規制されることになった今、オープンマーケティングの必要性はますます高まっていくはずです。よりオープンに、実直にやっているマーケティングのほうが生活者から評価されるというのが、私の変わらぬ信念です。
