『エルピス』実質的な視聴率は2ケタ台?見逃し配信でトップ争い、絶賛溢れる理由

 長澤まさみが連続テレビドラマで4年半ぶりの主演を務める『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系)が好評だ。

 長澤が演じるのは、スキャンダルにより深夜の情報バラエティ『フライデーボンボン』に追いやられたアナウンサー・浅川恵那。ドラマは、浅川が若手ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)から、連続殺人事件の犯人とされる死刑囚・松本良夫(片岡正二郎)の冤罪疑惑を持ちかけられたのを機に、事件の真相を突き止めるために動いていくという内容。岸本の弱みを握り、松本の冤罪を調査するようけしかけたヘアメイクスタッフ・大山さくら役には三浦透子、浅川の元カレで報道局のエース記者・斎藤正一役には鈴木亮平が起用されている。

 フジ系「月10」枠で10月24日から放送を開始した『エルピス』。初回世帯平均視聴率は8.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、同31日放送の第2話は7.3%、11月7日放送の第3話は6.3%をマーク。2ケタ台に届いていないばかりか減退している状況だが、民放公式テレビ配信サービス「TVer」のランキングでは、総合・ドラマカテゴリともに2位に入ることも。同サービスにおける『エルピス』の「お気に入り」登録者数も47.1万人となっており、地上波放送は見られずとも、あとからネット配信で見ている視聴者が多い様子がうかがえる。

“フジテレビのドラマ”であることに反響

 そんな『エルピス』は、冤罪事件を扱いつつ報道番組のあり方を問う社会派ドラマ。ネット上では「深い闇に斬り込む感じ」「攻めてる」などと話題になっている。

 たとえば、第1話で斎藤が副総理・大門雄二(山路和弘)に、報道番組で「森友」に関する質問を出すのを「止めてます」とささやいた場面は、「森友学園問題をぶっ込んできた」とネットを騒がせた。

 第2話では、浅川が『フライデーボンボン』の担当コーナー「エナーズ・アイ」で、女子中学生が遺体で発見された事件について取り上げたいと訴えても、チーフプロデューサー・村井喬一(岡部たかし)は「『エナーズ・アイ』は世間じゃなくて、浅川恵那が注目したニュースを解説するコーナー」「浅川恵那が何に注目してるかを決めるのは、浅川恵那じゃねぇの。浅川恵那は、俺らが浅川恵那が注目してることにしたいニュースを、あたかもホントに注目してるみたいに読むための人なの」と言い放ち、こちらも「女子アナ=お飾りってことか」とネットユーザーをザワつかせた。

 また、こうしたセリフが“フジテレビのドラマ”に盛り込まれていることにも反響が。フジにも多数の報道番組があり、アイドル的な扱いをされているように見える女子アナだって少なくないため、「皮肉がすごい」「挑戦的」「自局へのブーメラン」などと、いろいろな意味で面白がられている。

「このような内容に加え、長澤を中心としたキャスト陣も評価されている。どんなに良いドラマでも、出演者がパッとしなければ視聴者を呼び込めない。逆に、豪華な出演者に頼って薄っぺらい脚本だったなら、やはりブーイングを浴びてしまう。その点『エルピス』は、妥協がない。もちろん、せっかく長澤を主演に置くのだから妥協などできないということだったのかもしれないけれど、長澤人気に甘えてしまおうとなっていない点が評価できる」(週刊誌記者)

同じフジの『silent』も好評

 また、テレビ局関係者はいう。

「今クールは同じくフジの『silent』が、ネットでの見逃し配信の再生回数が毎話500万回を超えフジの歴代最高記録を更新するなど好評を博している。『エルピス』もそこまでいかなくても、TVerなど見逃し配信の再生回数では『silent』とトップ争いを演じていることから400万再生くらいだと仮定すると、それだけで全国民の3%ほどが見ていることになり、やや強引だが単純計算でこの人数をテレビでリアルタイム視聴した人数分に丸々加算すると、“実質的な視聴率”としては10%を超えている可能性もある」

 好評の理由について、別のテレビ局関係者はいう。

「『silent』にせよ『エルピス』にせよ、“フジはどうしちゃったんだ?”と感じるほど良くできている。『エルピス』に関していえば、冤罪とテレビ報道、そしてテレビ局の内実というテーマを柱に据え、森友問題をはじめとする今の自民党一強政治の弊害を思わせる現実も描写しつつ、週刊誌の恋愛スキャンダルで足元をすくわれた有名人、今回でいえば女子アナの葛藤と再生の物語にもなっている。

 また、例えば、何かと長澤演じる浅川にきつく当たる、報道から深夜バラエティに左遷されセクハラ・パワハラ言動丸出しの“最低ヤロウ”のチーフプロデューサー・村井が、しばしば浅川を心配する様子を見せたり、浅川と岸本の冤罪事件を扱いたいという訴えを却下する理由が実は2人を心配してのことなのではと匂わせたりと、一人ひとりの登場人物の二面性なども丁寧に描かれている。全体を通して非常に高いクオリティに仕上がっていると感じる」

 なお、ドラマを放送中の「月10」枠は、2021年10月期に新設されたばかり。これまでに綾野剛主演の『アバランチ』、浜辺美波主演の『ドクターホワイト』、広瀬アリス主演の『恋なんて、本気でやってどうするの?』、波瑠主演の『魔法のリノベ』を放送してきたが、いずれも全話を通しての世帯平均視聴率は1ケタ台に終わっている。枠の開設からちょうど1年経ち、大きな注目を集めている『エルピス』は、記録更新できるだろうか。それとも、やはり「配信でじっくり見たい」という視聴者が多いのであれば、「TVer」など配信サービスでの記録を伸ばしていくだろうか。

(文=Business Journal編集部)