俳優の香川照之の「降板ドミノ」が止まらない。事実上の「芸能界追放」になりそうな状況で、一部では「女性問題に甘い梨園が救いの手を差し伸べてくれるでは」との推測もあったが、そちらもかなり厳しい気配が漂っている。
「週刊新潮」(新潮社)などによる香川の性加害・暴力・パワハラの疑惑報道を受けて、1日にトヨタ自動車がCMの放映取りやめや年内での契約終了を発表。それをきっかけに同じく香川を広告に起用していたセゾン自動車火災保険、東洋水産、アリナミン製薬が続々とCM取り下げや契約終了を表明した。
さらに、サントリーが2日に「パーフェクトサントリービール」の新CMに香川を起用しないと発表し、関西電力グループで光放送のサービス「eo光」を提供するオプテージも同日にCMやウェブ広告を取り下げた。残るスポンサーは「キンチョール」のKINCHO(大日本除虫菊)だけだが、こちらも「現在対応を検討中」としており、CM全消滅は時間の問題のようだ。
世界のトヨタが「NO」を突きつけた意味は大きい。香川が“編集長”を務めていた同社のオウンドメディア「トヨタイムズ」は電通が深く関与しており、ここで「香川はNG」と判断されたとなれば「CM復帰」は絶望的だ。
そうなるとテレビ的にもタブーな存在になり、香川は金曜MCを務めていた朝の情報番組『THE TIME,』(TBS系)を降板した。
香川が「カマキリ先生」として出演していたNHKの『香川照之の昆虫すごいぜ』シリーズも「新作を制作する予定はない」として事実上の打ち切りとなり、同局の配信サービスからもコンテンツが削除された。さらに、香川が原作・プロデュースを手がけるEテレのアニメ『インセクトランド』まで5日以降の放送が中止されている。
11月に公開予定の主演映画『宮松と山下』は予定通りに封切られることが決定したものの、舞台あいさつは「未定」とされた。
香川は『THE TIME,』での生謝罪で「与えていただける仕事に対しましては、真摯に真面目に一生懸命、全力で、これまで通り挑んでいきたいと思っています」と活動継続の意思を表明していたが、少なくともテレビ界からは「強制退場」となりそうだ。
歌舞伎界でも香川に居場所なし?
だが、香川には歌舞伎役者・市川中車の顔もある。歌舞伎界は伝統的に「女遊びは芸の肥やし」とされてきた世界で、市川海老蔵に代表されるように酒の席で大問題を起こしながら現在も活躍しているようなケースも珍しくない。
テレビや映画の仕事はしばらく難しくとも、歌舞伎役者として芸に邁進すれば復活の目もあるのではと思える。
しかし、香川の場合は一般的な歌舞伎役者とは若干事情が異なる。香川は市川猿翁の子として生まれた梨園のサラブレッドだったが、3歳で両親が離婚し、母親の浜木綿子に育てられたことで歌舞伎界と距離を置いて育った。
東大卒業後に俳優として成功した後、45歳だった2011年に九代目市川中車を襲名して歌舞伎界に進出。香川が40代で歌舞伎界に飛び込んだのは、息子の市川團子に名跡「市川猿之助」を継がせたいという夢があったからだといわれている。
だが、伝統を重んじる歌舞伎界で「テレビ俳優」「出戻り」の香川の存在は決して大きいものではなく、知名度ありきの「客寄せ」的な扱いを受けた。いくら集客力があったとしても、テレビや映画の現場と違って大きな顔はできず、それどころか「テレビと歌舞伎の二足のわらじ」に苦言を呈す関係者やごひいき筋も少なくなかったという。
いくら梨園が「女性問題に寛容」だとしても、もともと立場がよくなかったところに世間の大バッシングがあれば、かばい切れないだろう。一部では「勧進元の松竹が『日本の伝統芸能の看板を破廉恥なスキャンダルで汚した』と怒り心頭」とも報じられている。先述した息子の市川團子は次世代の歌舞伎役者として注目度が上がっていたが、香川が足を引っ張ってしまった格好となっている。
テレビや映画の世界から追い出され、梨園にも居場所がないとすれば、いよいよ進退窮まったといえそうだ。