日本ダービー(G1、芝2400メートル)で史上最多の5勝を誇るのが武豊騎手。19日に放映された『日本ダービー 夢舞台へ』(テレビ東京系)では「この時期に来てワクワクしますね」と語っていた。今年の騎乗馬メイショウテンゲン(牡3歳、栗東・池添兼雄厩舎)について検討する。
武豊騎手は昨年、前人未到のJRA通算4000勝を達成し、JRA賞特別賞を受賞した。ただし、JRA賞授賞式では「昨年は自分としては納得できる成績ではなかった」とコメント。G1レースを勝てなかったからだ。
今年はG1レース第1弾フェブラリーS(G1、ダート1600メートル)をインティで快勝。幸先のよいスタートを切った。しかし、その後のG1レースは未勝利。現在49勝を上げリーディング3位なので調子が悪いわけではない。G1を勝てる力を持つ騎乗馬に恵まれていないのだ。
皐月賞(G1、芝2000メートル)で13着だったファンタジストがNHKマイルC(G1、芝1600メートル)に向かうことになり、一時は日本ダービーの騎乗馬がいないという危機にさらされた。自身のオフィシャルサイトでは「ダービーの騎乗馬がいなくなりました。ご指名をお待ちしております(笑)」と綴った。
日本競馬を牽引する大手牧場の御用達ジョッキーではなくなった武豊騎手は、現状、インティやキタサンブラックのような中小牧場の生産馬で結果を出していくしかない。それを象徴していたのが、メイショウカズヒメでのJRA通算4000勝。武豊騎手は「父の代からずっとお世話になっているオーナーの馬で区切りを達成出来て一段と嬉しく思います」と語った。
そして、日本ダービーではメイショウカズヒメと同じ松本好雄オーナーのメイショウテンゲンに騎乗することになった。
メイショウテンゲンは皐月賞トライアル弥生賞(G2、芝2000メートル)の勝ち馬であり、例年ならば日本ダービーの有力候補になっても不思議ではない。しかし、弥生賞が単勝39.1倍という人気薄での勝利であり、しかも皐月賞では15着に大敗しているだけに、ここではまったく人気にならない。
とはいえ素質のない馬が重賞を勝つことは滅多にない。道悪の中、馬場の外目を力強く伸びて、2着馬に1馬身半差をつけた弥生賞は見どころがあった。同馬の名(迷?)レースが初勝利を上げた未勝利戦(芝1800メートル)。直線に向くと2番手に抜け出し、あっさりと逃げ馬をつかまえる勢いだった。ところが、徐々に外へふくれていき、ゴール前では外ラチ沿いまで達していた。
このようにメイショウテンゲンは未完成であり、精神的にも未熟で競馬を理解していない面もある。だからこそ大化けの可能性を秘めている。皐月賞は最後方からの競馬で何もできずの15着。気分が乗らなかっただけかもしれない。武豊騎手との相性が合えば日本ダービーでその気になることもあるだろう。
1週前追い切りに騎乗した武豊騎手は「さすがと言いたくなるいい背中でした。お母さん(重賞を2勝したメイショウベルーガ)もよく知っている馬ですが、ノンビリした性格はよく似ていました」とオフィシャルサイトの日記に書き、そのタイトルは『一発狙った騎乗をするつもりです』と頼もしい。
この日本ダービーは人気となるサートゥルナーリア、ヴェロックス、ダノンキングリー以外は横一線と言っていい。先週のオークス(G1、芝2400メートル)で12番人気のディープインパクト産駒カレンブーケドールがあわやの2着だったように、ディープインパクト産駒メイショウテンゲンが激走する余地はある。
母メイショウベルーガ同様、ノンビリ屋ゆえに本格化するのは秋、あるいは古馬になってからかもしれない。しかし、武豊騎手の馬券を買わなかったために負けるのは悔しい、という考えがあるなら押さえておくべきだろう。心身の成長により素質が開花するのを長い目で見続けていきたい1頭だ。

