百田夏菜子が発達障害の妻を演じる『僕の大好きな妻!』、心配が杞憂だった理由

 フジテレビ系で土曜夜11時40分から放送されているドラマ『僕の大好きな妻!』は、発達障害を題材にした夫婦の物語だ。

 派遣のアパレル販売員として働く北山知花(百田夏菜子)は、漫画家アシスタントの悟(落合モトキ)と結婚し、幸せな夫婦生活を過ごしていたが、職場ではトラブルを起こしてクビになる日々が続いていた。

 幼少期から同じ失敗を繰り返している自分は「発達障害なのではないか?」と思った知花は病院で診断を受け、主治医の指導のもとで発達障害との向き合い方を模索するようになる。一方、悟は知花を優しく見守りながら、漫画家としてプロデビューするための作品を描くために悩んでいた。

 原作はナナトエリ・亀山聡の漫画『僕の妻は発達障害』(新潮社)。ナナトと亀山は夫婦の漫画家で、2人の体験を元にしたフィクションとなっている。

 発達障害は100人いれば100通りの特性があるため、一言でこういう状態だと言うことが難しい。厚生労働省のホームページには「生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態」で、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれると書かれている。

 知花の場合は、忘れ物が激しく、一度に2つ以上の作業をすることが苦手。なにより人の気持ちが理解できずに思っていることを口にしてしまうため、職場でトラブルを起こしてしまう。

 発達障害と定型(発達障害を持たない多数派の人々)の境界はとても曖昧だ。筆者も忘れ物が多く、複数の作業を行うことは苦手で、その場の空気を読めずに無神経な発言をしてしまうことがあるため、知花の失敗を見ていて他人事とは思えない。

 その意味で“発達障害”的な要素は、自分の中にも確実にあるとは思うのだが、だからといって気軽に「同じ」だと言ってしまうと、問題を矮小化し、発達障害に悩んでいる当事者の方を傷つけることになりかねない。

 簡単に「わかる」とは言えないが、だからといって他人事として切り離すこともできない。その意味でも扱いが難しいテーマである。そのため、描き方によっては、当事者を傷つけてしまうドラマになるのではないかと心配だったが、1話を観終えて「それは杞憂だった」と感じた。

 本作は絶妙な距離感で発達障害を描いており、発達障害の知識を視聴者に伝える啓発ドラマであると同時に、夫婦のドラマとしても楽しめる内容となっている。

 この難しいバランスを支えているのが、知花を演じる百田夏菜子の存在感だ。百田は人気アイドルグループ・ももいろクローバーZのリーダーとして知られている。演技の仕事は決して多くはないものの『幕が上がる』や『すくってごらん』といった映画や、連続テレビ小説『べっぴんさん』(NHK)といったテレビドラマで好演している。

 役者としての百田の魅力は明るさの中に浮かび上がる小さな影で、少し笑いながらしゃべる姿はかわいらしくとても華があるのだが、自分でも気づかないうちに何か問題を起こしてしまうのではないか? という不安を抱えていることが同時に伝わってくる。

 ただ明るくかわいいだけの女の子なら、発達障害を抱えた知花の悩みは伝わってこないし、逆に暗すぎると物語が重くなりすぎる。発達障害という難しい題材を扱いながらも、観ていて笑顔になれる楽しい夫婦のドラマとして成立しているのは、百田の芝居があるからだ。

落合モトキには夫役のオファーが殺到か

 一方、悟を演じる落合モトキの落ち着いた芝居も素晴らしい。子役時代から活躍する落合は映画『桐島、部活やめるってよ』など多数の映画やドラマに出演しているが、何でもできる器用さゆえに、個性のある俳優と並ぶと存在感が埋もれがちだった。しかし、本作の悟は、そんな落合だからこそ演じられる薄味の魅力がプラスに働いている。

 悟は自分の意見を一方的に押し付けずに、理性的に妻と向き合おうとする「理解のある夫」だ。タイプとしては『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で星野源が演じた津崎平匡に近い。こういう男性像は今のテレビドラマでは強く求められているため、今後、落合には夫役のオファーが殺到するだろう。

 物語は第5話から新章となり、発達障害であることを受け入れた上でアパレル店員として社会復帰しようと奮闘する知花の姿と、プロの漫画家になるために新人賞用のオリジナル作品を書き上げようと産みの苦しみに直面する悟の話が同時に進んでいく。

 発達障害の知花のエピソードと漫画家を目指す悟のエピソードは一見、別の話に見えるが、自分がどこで失敗したのかを再確認していく知花の姿と、おもしろい漫画を描くために自分の過去の経験を振り返る悟の姿は、「自分自身と向き合う」という意味において、とてもよく似ている。

 どんな人間でも、生きていく中で自分の弱さと向き合い続けなければいけない。自分自身の弱さと懸命に向き合う姿が描かれているからこそ、本作はドラマとして見応えがあるのだ。

百田夏菜子が発達障害の妻を演じる『僕の大好きな妻!』、心配が杞憂だった理由

 フジテレビ系で土曜夜11時40分から放送されているドラマ『僕の大好きな妻!』は、発達障害を題材にした夫婦の物語だ。

 派遣のアパレル販売員として働く北山知花(百田夏菜子)は、漫画家アシスタントの悟(落合モトキ)と結婚し、幸せな夫婦生活を過ごしていたが、職場ではトラブルを起こしてクビになる日々が続いていた。

 幼少期から同じ失敗を繰り返している自分は「発達障害なのではないか?」と思った知花は病院で診断を受け、主治医の指導のもとで発達障害との向き合い方を模索するようになる。一方、悟は知花を優しく見守りながら、漫画家としてプロデビューするための作品を描くために悩んでいた。

 原作はナナトエリ・亀山聡の漫画『僕の妻は発達障害』(新潮社)。ナナトと亀山は夫婦の漫画家で、2人の体験を元にしたフィクションとなっている。

 発達障害は100人いれば100通りの特性があるため、一言でこういう状態だと言うことが難しい。厚生労働省のホームページには「生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態」で、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれると書かれている。

 知花の場合は、忘れ物が激しく、一度に2つ以上の作業をすることが苦手。なにより人の気持ちが理解できずに思っていることを口にしてしまうため、職場でトラブルを起こしてしまう。

 発達障害と定型(発達障害を持たない多数派の人々)の境界はとても曖昧だ。筆者も忘れ物が多く、複数の作業を行うことは苦手で、その場の空気を読めずに無神経な発言をしてしまうことがあるため、知花の失敗を見ていて他人事とは思えない。

 その意味で“発達障害”的な要素は、自分の中にも確実にあるとは思うのだが、だからといって気軽に「同じ」だと言ってしまうと、問題を矮小化し、発達障害に悩んでいる当事者の方を傷つけることになりかねない。

 簡単に「わかる」とは言えないが、だからといって他人事として切り離すこともできない。その意味でも扱いが難しいテーマである。そのため、描き方によっては、当事者を傷つけてしまうドラマになるのではないかと心配だったが、1話を観終えて「それは杞憂だった」と感じた。

 本作は絶妙な距離感で発達障害を描いており、発達障害の知識を視聴者に伝える啓発ドラマであると同時に、夫婦のドラマとしても楽しめる内容となっている。

 この難しいバランスを支えているのが、知花を演じる百田夏菜子の存在感だ。百田は人気アイドルグループ・ももいろクローバーZのリーダーとして知られている。演技の仕事は決して多くはないものの『幕が上がる』や『すくってごらん』といった映画や、連続テレビ小説『べっぴんさん』(NHK)といったテレビドラマで好演している。

 役者としての百田の魅力は明るさの中に浮かび上がる小さな影で、少し笑いながらしゃべる姿はかわいらしくとても華があるのだが、自分でも気づかないうちに何か問題を起こしてしまうのではないか? という不安を抱えていることが同時に伝わってくる。

 ただ明るくかわいいだけの女の子なら、発達障害を抱えた知花の悩みは伝わってこないし、逆に暗すぎると物語が重くなりすぎる。発達障害という難しい題材を扱いながらも、観ていて笑顔になれる楽しい夫婦のドラマとして成立しているのは、百田の芝居があるからだ。

落合モトキには夫役のオファーが殺到か

 一方、悟を演じる落合モトキの落ち着いた芝居も素晴らしい。子役時代から活躍する落合は映画『桐島、部活やめるってよ』など多数の映画やドラマに出演しているが、何でもできる器用さゆえに、個性のある俳優と並ぶと存在感が埋もれがちだった。しかし、本作の悟は、そんな落合だからこそ演じられる薄味の魅力がプラスに働いている。

 悟は自分の意見を一方的に押し付けずに、理性的に妻と向き合おうとする「理解のある夫」だ。タイプとしては『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で星野源が演じた津崎平匡に近い。こういう男性像は今のテレビドラマでは強く求められているため、今後、落合には夫役のオファーが殺到するだろう。

 物語は第5話から新章となり、発達障害であることを受け入れた上でアパレル店員として社会復帰しようと奮闘する知花の姿と、プロの漫画家になるために新人賞用のオリジナル作品を書き上げようと産みの苦しみに直面する悟の話が同時に進んでいく。

 発達障害の知花のエピソードと漫画家を目指す悟のエピソードは一見、別の話に見えるが、自分がどこで失敗したのかを再確認していく知花の姿と、おもしろい漫画を描くために自分の過去の経験を振り返る悟の姿は、「自分自身と向き合う」という意味において、とてもよく似ている。

 どんな人間でも、生きていく中で自分の弱さと向き合い続けなければいけない。自分自身の弱さと懸命に向き合う姿が描かれているからこそ、本作はドラマとして見応えがあるのだ。