斎藤佑樹の二の舞いになる危険…愛甲猛が見る「根尾昂投手の落とし穴」

 野手から投手に登録変更した中日ドラゴンズの根尾昂。6月20日の読売ジャイアンツ戦では9回2死で登板し、岡本和真を空振り三振に打ち取った。2日後の東京ヤクルトスワローズ戦では8回表に登板、長岡秀樹と川端慎吾を二ゴロに、塩見泰隆を空振り三振に抑えた。5試合の登板で打者18人に対し被安打4、奪三振3、自責点1(6月30日時点)と好投を続けている。

 ドラフト会議で4球団から指名を受けた根尾は、入団時「ショート一本でいきたい」と宣言するも、2年目から外野手に転向。持ち前の強肩でタッチアップを捕殺にするシーンも目にしたが、3年間(2019~21年)の打撃成績は194打数32安打、1本塁打、打率.165と今一つだった。4年目の今季、立浪和義監督と話し合い、投手に転向。最速151キロのストレートに加えて、スライダーとカーブのキレもよく、「セットアッパーに向いている」との声も聞こえてくる。

投手・根尾に足りない能力とは?

 現在、根尾は投手をメインに、打撃練習もこなしていると報じられている。大谷翔平の登場で二刀流も“一つの道”になった感があるが、球界OBからは「大谷と比べるのは無理」との声が多い。

 根尾と同じく夏の甲子園で全国制覇を果たし、中日などで活躍した愛甲猛氏も「根尾と接していないからわからないけど、映像を観ている限りでは、投打とも大谷には叶わない。“チームへの貢献度”もまだ低い」とみている。投手としても、現状は敗戦処理での好投のため「評価に値しない」という。

「今は投手としての力量を試している最中。根尾はポテンシャルが高いので、一度や二度の失敗には目をつむり、長い目で育ててあげてほしい。先発やセットアッパー、クローザーとして勝利に貢献できて、初めて年俸も上がる。今はまだ、投手に必要な“試合の支配力”が感じられない。イチローが若い頃、150キロを出していたのに投手をあきらめたのは、その“支配力”がなかった点も要因だった気がする」(愛甲氏)

 愛甲氏自身は投手として入団するも、3年間未勝利で打者に転向した。

「プロ1年目のオープン戦で勝利投手になったけど、いざ公式戦で登板したら打たれた。今思えば、グラウンド上での支配力がなかったね」と振り返る。

 根尾は投手としての存在感は「まだまだ」。それでも一軍でチャンスをもらえているのは、投手としても野手としても抜群の素質を誇るポテンシャルと、ファンの注目度にある。

「(投手と野手なら)野手の方が向いている気がする。外野手として最大の武器となる肩の強さが何よりも魅力。あと、まだプロとして実績を残していないのに、かなり話題になっている。がんばっている他の選手の中には、うっとうしく感じる人もいるんじゃないかな。もちろんプロは注目度も必要だけど、チームへの貢献度が何より必要」(同)

 現在、中日の話題といえば「根尾の投手転向」が圧倒的に多いが、実績を残していない選手の話題が先行しすぎているというわけだ。

根尾と斎藤佑樹の共通点

 愛甲氏の言葉を聞いて思い出した選手が「斎藤佑樹」だ。4球団競合の末、北海道日本ハムファイターズに入団したビッグルーキーは3年目以降、周囲の期待にこたえられずに終わった。

「粗削りながら将来性が抜群だった田中将大と、入団時点で完成されていた斎藤佑樹。両者を比べると、“伸びしろ”はマー君が圧倒的だった。今の根尾に一番足りないのは“伸びしろ”なんだ。大阪桐蔭出身でプロで活躍した選手は、みな粗削りだったよ」(同)

 中村剛也(西武)、平田良介(中日)、浅村栄斗(西武)、中田翔(日本ハム)、森友哉(西武)ら、現在もプロで活躍する大阪桐蔭高校出身者は入団当時、「大物感」が抜群かつ「粗削り」だった(球団名は入団当時)。

 逆に、大阪桐蔭初優勝時の4番打者で高校通算58本塁打を放った萩原誠(阪神)は、プロ9年間で198打数38安打、4本塁打、打率.192。守備位置もサードやファースト、セカンド、外野と転々とした。甲子園で最速152キロを計時した辻内崇伸(巨人)も入団当時の完成度は高かったが、プロで一軍登板できずに終わった。

「入団時の完成度の高さって、プロで大成しない要因にもなるんだ。根尾の同期で4番だったロッテの藤原恭大(3年間で332打数74安打、8本塁打。今季は69打数12安打、0本塁打、打率.174)もそうなんだけど、2人とも、もっと活躍できる能力を持っている。けれど、完成度が高すぎ=でき上がりすぎている気がする。

 粘土に例えれば、成功した選手はやわらかいまま打撃フォームを作り上げていくんだけど、完成度が高い選手は固まった状態。新たな打撃指導をしても、現状の粘土がやわらかくないから、形作りが難しい。根尾も藤原も、高校時代からなんら形が変わってないよね」(同)

 体がこれまでの成功例を記憶しすぎているため、別の形にチャレンジしようとしても思うように動かないのかもしれない。

高校時代に成功した選手の“落とし穴”

 愛甲氏が打者に転向した際は、「高校時代から打撃は自己流で何も教わっていなかったから、落合(博満)さんの指導がスムーズに入ってきた」という。

「高校時代に完成しているのはすごいことなんだけど、プロで成功した粗削りの選手は、全員が高校時代から形が変わっている。根尾と藤原はこれまでの形が身につきすぎているから、新たな技術を吸収しにくいのかもしれない。斎藤佑樹も、大学で形を作りすぎたから直しようがなかったのでは……」と愛甲氏は推測する。

 愛甲氏自身、打者転向後は「俺はこういうところがダメだった」と、過去のスタイルにすんなりサヨナラできたという。「高校時代に成功してきた」手法が体に染みついているほど、そこから抜けられなくなるのかもしれない。

 その意味では、根尾が投手として成功するか否かのカギは「新たな技術を取り入れられるか」。「投打すべてがスマートすぎて、泥まみれになっていない感じがする」と愛甲氏は指摘する。

 立浪監督は「投手になった根尾の表情が明るくなった」と語っている。まずは貴重な中継ぎとして、チームの勝利に貢献できる選手になってほしい。