介護職員の定着率をよくする方法:職場の人間関係を良くするための秘策

介護職員はなぜ辞めるのか

介護職員の離職率は16%強だと言われています。

これはあくまで平均です。深刻な施設は年間で介護職員の3分の1以上が入れ替わります。

逆に職員がほとんど離職しない施設もあります。

新しい職員を求人し雇用し定着させるためには莫大なコストを必要とします。

新しい職員を雇用するということは、誰かが離職しているということですよね。

多くの園長とお話ししている中で、人材をどう確保するのが効率的であるかを話題にする方が非常に多いことに対し、定着率を上げることを話題にする方は少ないことに気がつきます。

定着率をあげれば離職が少なくなるということですよね。当たり前のことだと思いますが、この辺が離職の多い施設と定着の良い施設の違いなのではないかと思います。

新たな人材を確保することに忙しくなるため、定着させることに頓着しない運営者が多いのではないでしょうか。いくら人材を確保できたとしても、どう定着させれば良いかをしっかり考えなければ、新たな離職者を生むだけのような気がします。

どうすれば人が集まるかを考えるのはもちろん大切ですが、なぜ人が辞めるのか、どうすれば人が辞めないかを考えることも非常に大切です。

ここは少し考え方をシフトさせ、集まった人材をどう定着させるかを真剣に考えてみませんか?

これによって無駄なコストが抑えられるのです。もちろんサービスの質も上がります。

離職の連鎖方程式

新人が常に3分の1を占める施設ではサービスの質の向上は望めませんよね。サービスの質が悪ければ集客も困難になります。

集客の悪い施設の園長には理事長なり法人本部なり会計顧問などからネガティブな指摘があるはずです。

それを受け園長は成績を上げなければならないとばかりに自然と職員に対するあたりもきつくなります。園長からきつい指導を受けた中間管理職は、自分の部下にきつい指摘をします。

きつい指摘を受けた介護チームは、同僚に、立場の弱い職員に責任転嫁します。介護チームの人間関係は健全を保てなくなりいがみ合い、お互いの揚げ足を取り合い、結局利用者のサービスに悪影響を及ぼします。

サービスが悪ければ苦情として現れたり、リピーターが減少したり、度重なる指摘でストレスを抱えきれなくなった職員が利用者への虐待や差別などの問題が発生したり、そして介護チームではさらなる責任のなすり合いが始まり、最悪な人間関係となるのです。

これがいわゆる悪循環。最悪の連鎖です。問題が起こる施設は多かれ少なかれ大概このパターンです。

なぜこのパターンに詳しいか? 何を隠そう私の施設も何度かこのパターンに陥りました。

でも抜け出す方法がかならずあります。抜け出せば必ず好転回していきます。ほんの少しの園長の努力で。

離職連鎖の悪循環を止める方法

よく職員を定着させるためには、賃金を上げること、待遇を良くすること、福利厚生を厚くすること、などと言われていますが、全然違うようです。

ある日私のところに信頼していた一人の主力介護員が退職を願い出てきました。理由をよく聞いてみると、お年寄りのお世話が嫌いになったわけでなく、できれば人のためになるこの仕事を続けたい。しかし今の環境と人間関係だと好きでついたこの仕事の一番大切な利用者に対して、私自身何をしてしまうかわからない状態で、問題を起こす前にやめたい。と訴えてきました。

当時度重なる離職者の発生で、人員補充もおいつかず、介護職員に多大な負担をかけていた時でした。最悪の悪循環に陥っていたのです。

私はこの職員の言葉にレンガで頭を殴られたような衝撃を覚え、しばらく身動きが取れませんでした。

私は必死で考えました。何がどうなってしまったのか。なんとか流れを変えなければならない。とにかく利用者の安全・安心を担保しなければならない。

方法的に正しいかどうかわからないけど、行動を起こして変化させなければならない。

この職員の言葉を何度も何度も考え、完全に忘れていたこの職員の言うところのお年寄りのお世話、福祉の精神を取り戻すことから始めようと思いました。

福祉とは何か? 福祉はなぜ始まったのか? 人権擁護とは何か? そもそもなぜ人は差別するのか? なぜ人は虐待するのか? 差別の歴史は? 虐待の歴史は?

調べたこと、勉強したことを職員にこまめに伝えるよにしました。やりながら、利用者の安全と安心を確保するために、福祉ということ、人権について、差別について、私たちの存在意義、使命を再確認することが重要であると実感し始めました。

職員は意外に興味を持って聞いてくれました。私も古代史を調べたり、古事記や日本書記の神話、戦国時代、江戸時代と人権や差別の歴史について調べたことを講義しつづけました。

不思議なことに、使命感や自分たちの存在意義を何度も何度刷り込まれることによって、いがみ合いに興じていた介護員ひとりひとりの態度が少しずつ変化してくるのです。利用者の介護に集中するようになるのです。

数ヶ月後には、なんとなくまとまったチームになってきました。そしてその年度は不思議なことにその後の離職者はありませんでした。

新たに採用した職員にも、時には一人に対して、時には2人に対して福祉の意義、人権擁護、差別、虐待を理解させるために時間を費やしました。私たち福祉人の使命を講義しつづけました。

介護保険事業所の前に福祉施設なのだ!

ここで、基本に戻って考えてみましょう。

福祉施設の園長は何の専門家なのか?

介護や、介護保健制度や、商業的マーケティングや、その他もろもろの事情に詳しいのはそれはそれで良いと思います。私の場合、教育方法論と学習心理学でした。

しかしそういうことの前に、福祉施設の園長には、福祉施設の職員の信頼を獲得し、チームを束ね、教育指導していくために必要不可欠なことがあるのです。

もしあなたが小学校の教員だったとします。教育になんら関心のない学校長の忠告を素直に受け入れられますか?

もしあなたが料理人だったたといします。料理の出来ないコック長の指示に素直に従えますか?

もしあなたが銀行員だとします。金融にど素人の支店長の指示に素直に応じますか?

あなたの施設の職員が辞めていく原因はそこにあるのです。

もしあなたが福祉施設の職員だったとします。福祉の歴史も意義も使命もわからない園長の下で働きたいですか?人権擁護や弱者救済や差別をなくすこと、虐待やいじめを防ぐこと、人間としての尊厳について、部下に語ることの出来ない園長の下で安心して働けますか?

福祉について、人権について、差別について、しっかり勉強し、職員に自分の言葉で伝えてみてはどうですか?

何度も何度も伝えてみてはどうですか?

 

 

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