昨年のダービー馬に"吉兆"が訪れた。
28日に東京競馬場で開催される天皇賞・秋(G1)。復権を懸ける昨年のダービー馬レイデオロ(牡4歳、美浦・藤沢和雄厩舎)は、4枠4番という好枠をゲットした。
「いい枠じゃないですか」
陣営がそう話すのも当然。この天皇賞・秋5勝を誇る藤沢和雄厩舎だが、過去に1996年のバブルガムフェローと、2014年のスピルバーグが4番から天皇賞馬に輝いている。厩舎にとっては、まさに吉兆が訪れたというわけだ。
さらに4枠から勝った2002年のシンボリクリスエスは、レイデオロの母父という"縁"もある。他にも1997年のバブルガムフェローや2010年のペルーサが2着するなど、こちらも藤沢厩舎と好相性。「青帽」に、いい思い出が詰まっている。
この中間、レイデオロにはアクシデントがあった。1週前追い切りで馬場に脚を取られ、追い切りを中断したのだ。だが、検査の結果は異状なし。日曜日にはその"埋め合わせ"となる追い切りが行われ、本来の動きに陣営も「問題なし」と判断。しっかりと負荷を掛けた。
そのジャッジが間違っていなかったことを証明したのが、25日に行われた最終追い切りだ。美浦のウッドコースで併せ馬を行ったレイデオロは、抜群の手応えであっさり先着。藤沢厩舎らしく時計こそ地味だったが、動きのスムーズさが目を引いた。
「良い動きでしたね。先週の追い切りで、馬場の穴ボコに脚を入れてしまって歩様が乱れた際はどうなることかと思ったんですが、まったく影響はなさそう。ピリッとしなかったオールカマー(G2)の時と比べても、明らかの状態は上がっていますよ。今回は距離が短縮されるので、調教で前向きさが出てきたのは良い傾向ですね。
前走からは少し間隔が空いていますが消耗が激しい馬なので、これは陣営の計算通り。昨年も神戸新聞杯(G2)からジャパンC(G1)という異例のローテーションで結果を残した通り、しっかり間隔を開けるのが、この馬のパターンです。天皇賞・秋のあとは中3週でジャパンCが控えていますが、現在のところ陣営は出走を考えていない。一戦必勝の体制で天皇賞・秋を獲りに来ています」(競馬記者)
現地の記者から話を聞く限り、周囲をヒヤリとさせた先週のアクシデントは、まったく問題ないようだ。
しかし、オールカマーで復活勝利を上げたとはいえ、クビ差の辛勝。この春も単勝1.6倍に推された京都記念(G2)でまさかの3着に敗れ、ドバイシーマクラシック(G1)でも4着とはいえ、勝ち馬には完敗......。キタサンブラックらと互角に戦った「昨年ほどの勢いはない」という声もある。
この事実をぶつけると記者は「批判になるので、あまり言いたくはないんですが......」と渋りながらも、レイデオロにあった"本当のアクシデント"について語ってくれた。
「春が不甲斐ない内容になってしまったのは、今年2月の京都記念直前にルメール騎手が騎乗停止になったことが発端です。陣営は急遽、短期免許で来日していたバルジュー騎手に代打を依頼したんですが、どうもその乗り方がひどかったようで......。
ただ敗れただけでなく、強引な競馬にレース後には『今まで教えてきたことが台無しでは』と周囲も頭を抱えていましたね。これで厩舎のバルジュー騎手に対する評価がガタ落ちしたのか、結局3月末まで騎乗していましたが、京都記念の後に藤沢厩舎の馬に乗れることはありませんでした。
その後、再びルメール騎手の手元に戻ってきたレイデオロですが、続くドバイシーマクラシックでは変な掛かり癖がつきかけていたので、とにかく馬の後ろに入れて折り合いを付けること、もう一度徹底したそうです。
レースのペースは遅いことはルメール騎手も感じていたようですが、立て直す教育をするためにあえて動かなかったようですね。レースは4着と不甲斐ない結果でしたが、今後を見据えれば仕方なかったんでしょう」(同)
その「成果」が表れたのが、道中でピタリと折り合っていた前走のオールカマーというわけなのだろう。
ルメール騎手も「ドバイでは他馬の後ろに入れて折り合うことを教えたんだ。その経験を前走で活かしてくれた。学習能力が高いね」と、昨年の日本ダービーで見事なストップ&ゴーを見せたような"本来のレイデオロ"に戻ったことに手応えを感じている。
「スタミナがあって、ちょっとエンジンが掛かるのに時間が掛かる。だから東京はいい。最後の200mはすごく切れるからね。直線の長い東京の2000mはぴったりだよ」
舞台は整った。"本当のアクシデント"を乗り越えたレイデオロが、再び東京で本来の輝きを放つ。