『ヒヤマケンタロウの妊娠』賛否両論の議論沸く…全人類が観るべき、気持ち悪い

 4月に配信がスタートした、男性妊婦の葛藤を描くNetflix・テレビ東京の共同企画・製作ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』。配信直後にはNetflixの国内人気ランキングで2位につけるなど多くの視聴者を獲得する一方、その内容には賛否両論の声があがっている。また、4月にはNetflixの有料会員数が20万の純減(2022年第1四半期)になったことが発表されたが、その理由について同ドラマに海外で不評の声があがっていることと結びつける報道も出ている。

 同名マンガ(作・坂井恵理/講談社)を原作とするこのドラマは、広告会社に勤務するやり手のクリエイター・桧山健太郎(斎藤工)が主人公。仕事も順調で、常に複数の女性たちと関係を持ち独身生活を謳歌するなど、何事も計画性をモットーに起用にこなす“モテ男”健太郎だったが、ある日突然、自身の妊娠が発覚。健太郎は赤ちゃんの母親だと考えられるフリーライター・亜季(上野樹里)に中絶への同意書にいったんは署名してもらうものの、仕事で陥った窮地から脱出する策として男性妊婦であることを利用しようと考え、また、病院で知り合った男性妊婦の話にも影響され、出産を決断。周囲からの偏見や妊婦が味わう心身の変調、そして亜季との価値観のすれ違いなどに苦しめられながらも、自身が広告塔になることで男性妊婦であることを仕事にプラスに結びつけ、メディアにも積極的に露出して一躍、時の人となる。

 そんななか、同じ男性妊婦同士が悩みを共有して問題を解決していくオンラインサロンを立ち上げ、活動を続けるなかで、桧山のなかには、妊婦以外にもさまざまなハンディキャップを抱える人やマイノリティの人が生きづらさや偏見に悩まされている社会を変えていきたいという思いが芽生える――というストーリーだ。

<とてつもなく良い作品でした>

 お腹が大きくなった斎藤工を上野樹里が後ろから抱きかかえるというインパクトのある宣伝ビジュアルや予告動画の効果もあってか、前述のとおり本ドラマは配信直後からヒット作の仲間入りを果たし、Twitter上では以下のように絶賛の声が集まる一方、不評の声もあがるなど、評価は分かれている。

<全人類観た方がいい…めちゃくちゃ面白い 初めて父親側の当事者じゃない感とか、本当に自分の子?って思っちゃうかんじわかった…相手の立場に立つのって自分の想像だけじゃ難しいね>

<とてつもなく良い作品でした。最後の6分を、3回、泣きながらリピートしました。ジェンダー、地域格差、偏見…丁寧におしゃれに新しく描かれていました>

<ドラマ観てすごく鳥肌立った。斎藤工も上野樹里も演技が上手い。全て女性が向き合う現実が描かれているし、真剣にでも重すぎずに描かれていてすごい。色々考えさせられるし心に刺さる、全人類が観るべき 1話30分なのもよき>

<観てて思うのは、こんな風に現実に男性も数%でも妊娠する可能性のある世界だったら、世の中今よりは優しくなるだろうな、ということ>

<コンセプトがめちゃめちゃ面白い。現代社会でもし、女性だけでなく男性も妊娠する世界だったらどうなるのかっていう、ある意味コメディ。男性が妊娠してしまい戸惑いながら体の変化や仕事への支障と向き合うお話>

<男性の妊娠というフィクションがメイン軸なのに、現実社会のいろんな問題の生っぽい空気感がすごく再現度高くて感心 メインテーマではないんだけど人が人を愛したり愛さなかったりいろんな関わり方があるってことまで考えさせるから優秀だなと思った>

<気持ち悪いと思ってしまった。海外では批判されているけど。。。私も少し無理かな>

<外国では不評>

<周りの登場人物が配慮が圧倒的に足りなくて観ててイライラする。ノンデリカシーすぎる>

<ヒヤマケンタロウみたいな男を本当に嫌悪しているので、最後まで感情移入できなかった…生理的に受け付けない>

<共感できない>

<なんか見ててエグい>

テレ東とNetflixのタッグ

ヒヤマケンタロウの妊娠』を見た40代女性はいう。

「健太郎から妊娠を告げられた亜季が、咄嗟的に“本当に私の子ども?”と言ったり、自分たちのキャリアに有利になるという理由で出産を提案し、それに対し健太郎が“亜季が言っていることって、そのへんの男たちと変わらない”と怒るシーンが印象的だった。このほかにも、健太郎から子どものために結婚しようと提案され“結婚は別の話”と拒否したりと、亜季はところどころで“男性目線”的な発言をするが、女性も自分のパートナーである男性のほうが突然妊娠したら、同じような発言をしてしまうかもしれない。

 また、健太郎が出産後に母親のように赤ちゃんを抱いたりお世話するシーンを見ていると、母性は女性だけのものじゃなく、男性も女性も出産によって体の中に沸いてくるものなんだなあと感じた」

 別の40代女性はいう。

「情緒不安定になって会社を退職すると言い出した健太郎が、会社の役員たちから“キミは会社に必要な人材”みたいに説得されて、その場で泣き出したり、会議中に服に乳汁が染み出して狼狽したりと、“妊婦あるある”に襲われた健太郎の情けない姿が描かれているが、男性側を通じて描かれているだけにとても新鮮で、改めて妊娠の大変さが伝わってくる。

 出産後、育児のために仕事で3カ月シンガポールに行く予定をキャンセルすると言い出した亜季に、健太郎が“亜希も俺も子供も、誰も誰かの犠牲になっちゃいけないんだよ”という場面はマジで感動した。このほかにも、記者会見で記者から“男性妊婦らしく”と責め立てられた健太郎が、“男性妊婦らしさって何ですか? あなたも、あなたも、明日妊娠するかもしれない。人生には思いもよらないことが起きる。それにどう対処するかが、その人らしさ”という場面もしびれた。男性妊娠に限らず、広くマイノリティの人たちへの社会の不寛容という問題にどう向き合っていくべきかというのが、このドラマのテーマなのでは」

 議論を呼んでいる『ヒヤマケンタロウの妊娠』について、映画業界関係者はこう評価する。

「テーマ的には、テレ東の深夜番組で放送されるような内容かもしれない。テレ東の良い意味でマニアックなドラマづくりの手法と、Netflixの豊富な資金力が見事にハマって奇跡的に素晴らしい作品に仕上がっている。セリフや演出など細部まで丁寧につくりこまれており、まったく“中ダレ”しないし、何より斎藤工と上野樹里のキャスティングが“他の俳優は考えられない”といえるほど完全にハマっているのも、大きな成功要因の一つだろう。斎藤が持つ女性的な魅力と、上野が持つ男性的な魅力が引き出されているというべきか。1話当たり30分くらいで全8話という見やすい尺なのも功を奏している」

 このゴールデンウィーク必見の1本といえるかもしれない。

(文=Business Journal編集部)