新庄&立浪より注目?現役時代に優勝経験なしのソフトバンク新監督は名将となるか

 今季、プロ野球界では3名の新監督が誕生した。マスコミの注目を浴びる北海道日本ハムファイターズの新庄剛志は現役時代に日本ハムを日本一に導き、中日ドラゴンズの立浪和義は現役時代から中日一筋で星野&落合政権の下で4度のリーグ優勝を果たしている。2人とも、指導者経験がないまま新監督に就任した。

 この2人と真逆なのが、福岡ソフトバンクホークス藤本博史だ。現役時代は南海ホークス、福岡ダイエーホークス、オリックス・ブルーウェーブに在籍し、勝負強い中距離打者として活躍。2011年からコーチとしてホークスに復帰すると、“球界最強打者”の柳田悠岐をはじめ、中村晃や栗原陵矢らの育成に尽力した。その手腕が買われて、昨オフに監督の座に就任。南海・ダイエー出身の選手がソフトバンクの監督に就任するのは、これが初のケースである。

 親会社がソフトバンクに替わって以降、王貞治(2005~08年)、秋山幸二(2009~14年)、工藤公康(2015~21年)と元スター選手の監督就任が続いていただけに、藤本の抜擢は少々意外という声も聞かれたが、現在のチーム状況を見ると今季が楽しみである。

 しかし、藤本が監督として不安視されるのが「優勝経験のなさ」。当時低迷していた南海・ダイエーで過ごした十数年間は、優勝はおろか、チームがAクラス入りした経験すらない。現役最終年のオリックスで3位となったのが最高順位である。藤本自身、負けることに慣れてしまったせいか、試合前にロッカールームでよく将棋を指していたとのエピソードもあり、常勝球団・西武ライオンズから移籍してきた秋山は、その雰囲気に驚愕したと自身の著書で記したほどである。

 果たして、優勝経験のない選手が監督に就任した場合、チームはどんな成績を収めるのだろうか?

1年目でリーグ優勝か日本一は4名

 検証したのは平成以降に指揮を執った監督で、自身の現役時代にリーグ優勝、日本一の経験がない人物の監督成績。平成以前に指揮を執った人物や、ボビー・バレンタイン(1995年、2004~09年、千葉ロッテマリーンズ)をはじめとする外国人監督は、今回の趣旨とズレるため除外。その結果、12名の人物が該当した。

 12名の顔ぶれを見ると、少々地味な印象を抱く。キャスターから転身した栗山英樹、前年にチームを退団していた中村勝広、前年まで他球団のコーチをしていた与田剛以外の9名は、今回の藤本と同様、監督就任前からチームに在籍し、内部昇格という形で監督就任を果たしている。

 肝心の成績はというと、昨年まで中日の指揮を執っていた与田をはじめ、監督になっても優勝と縁がなかったケースが大半だが、一方でリーグ優勝&日本一経験者はのべ4名いる。しかも4名全員が「監督就任1年目」に達成している。栗山以外は以前からチームにいたため、自軍の戦力をよくわかっていたのだろう。

 各チームの監督就任前年の成績を調べると、この中で前年Bクラスから優勝へとチームをステップアップさせたのは、2010年のロッテ・西村徳文ただひとり。この年のロッテはシーズン成績こそ3位だったものの、クライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズに出場し、「下剋上日本一」を果たした唯一のチーム。その手腕が評価されて、西村は正力松太郎賞を受賞している。前年4位のチームを引き継いだ藤本にとっては、追い風となるデータだろう。

 昭和の監督では古葉竹識の手腕が光る。1975年のシーズン途中、内部昇格で広島東洋カープの監督となると、1年目から初優勝に導いた。その後、79、80、84年と3度も日本一に輝いている。現役時代の58~69年と広島に在籍しており、優勝経験は皆無だったが、主力選手の起用法やチーム指導を南海時代に野村克也の下で学んでいた。

 ただし、監督通算成績から見えてくるのは、やはり「勝ち方を知らない」という結論だ。古葉を除く12名中、通算で勝ち越しているのはわずか4名で、チームを複数回優勝させたのも栗山のみ。下剋上日本一を果たした西村でさえも日本一の翌年は最下位に沈み、奮起を期した就任3年目も5位でチームを去っている。

 これらの前例を見ると、藤本がソフトバンクを優勝へと導くには、就任1年目の今季が最大のチャンスかつ勝負どころである気がする。

※文中、敬称略

(文=福嶌弘/フリーライター)