『DCU』高視聴率も批判続出で視聴者離れの危機…荒すぎる脚本は海外配信狙いか

 視聴率は今冬ドラマの中で断トツの1位を記録し、「やはり日曜劇場は強い」という声が飛んでいる『DCU』(TBS系)。しかし、1月30日の第3話放送後、ネット上は荒れに荒れた。

 まず、放送後にアップされた『DCU』関連のネット記事タイトルを挙げてみよう。

「『DCU』“隆子”に訪れた衝撃的な展開『心の整理がつかない』『涙が止まらなかった』」

「『DCU』第3話が衝撃ラスト… まさかの“犠牲者”にファン悲鳴『嘘だと言って』『涙が止まらない』」

「<DCU>紅一点“隆子”中村アンに衝撃展開! 視聴者『早すぎるよ』『激重でしんどい』」

「『DCU』笑顔のメンバー集合ショットが涙誘う…衝撃の第3話『皆がいい笑顔過ぎて』『言葉にならない』」

 そのほとんどが「ショック」「悲しい」という論調だったが、それぞれのコメント欄は、ほぼ批判一色。むしろメディアの見出しにあるようなコメントを見つける方が難しいくらいであり、各編集部が高視聴率を続ける日曜劇場のスタッフに忖度したのだろう。

「批判ありき」の声ではない理由

「俳優さん達には何の落ち度もないのだが3話の脚本は酷すぎる 指示に従わず暴走するのは美談ではないし 領海侵犯なんかしたら隊長や部長ら上司、長官から果ては国交大臣まで首が飛びかねない」

「ストーリー酷すぎ どこをツッコんだらいいかわからないくらい酷い あれだけ命令無視の人がいるように見られたら海保にも良くない」

「海上保安庁に協力してもらったのにいくら架空とはいえ独断専行、領海侵犯、殉職とは失礼でしょう 特に領海侵犯はダメダメ 海上保安庁は自衛隊のように内容にダメ出ししなかったのかな」

「第3話目にして急に内容がチープになった。隆子、ドラマだけどあの展開はやり過ぎ。エリートが何回命令無視よ?笑ってしまった。こんな感じじゃ来週のオリンピック挟みで、視聴者離れるんじゃないでしょうか。熱いセリフとパッパラ捜査のギャップがもはやコントです」

「海の捜査官なんだよね️。と思ってしまった。撃たれて死んでいる人間を発見した直後に辺りを警戒するでもなく、船内を捜索するでもなく、物音がしたことに気づいていなから、ドアに背を向けてスマホの操作とは……余りに突っ込みどころが多すぎて、ストーリーに入って行けなかった」

 いずれのコメントにも多くの「そう思う」が押されていたが、決して批判ありきの声ではないのが辛いところ。「あまりに脚本がひどすぎる」から、その理由を理路整然と書こうとして長文になっているコメントの多さが、彼らの失望ぶりを物語っている。

 では、なぜ視聴者がこれほど違和感を抱く脚本になってしまったのか。

紅一点のヒロインを殉職させた理由

 やはり意外性を狙っているところはあるはずだ。日曜劇場の作品は、あの『半沢直樹』を思い出すとわかるように、予想の斜め上を行く意外性で視聴者を引きつけてきた。たとえば『半沢直樹』の第2シリーズで、半沢(堺雅人)が大和田暁(香川照之)や黒崎駿一(片岡愛之助)らと手を組む展開は、その最たるところだろう。

DCU』で言えば、海上保安庁初の女性潜水士かつDCUの紅一点であり、兄を爆発事故で失っている成合隆子(中村アン)が、早い段階で命を落とすことを予想した人は少なかったのではないか。「もし早期殉職するとしたら、演技経験の浅い岡崎体育か土佐兄弟・有輝の演じる役だろう」とみるのが自然かもしれない。

 しかし隆子は、あまりに強引で身勝手な行動を続けたため、視聴者は意外性を感じることなく、「あれなら死んで当然」「自業自得では」と醒めてしまった。このままでは「海上保安庁の潜水士は女性には無理」というレッテルを貼っているようなものだけに、次回放送で隆子が命を落とした意義を視聴者に感じさせなければいけないだろう。

 また、いくら意外性を重視したとしても、隆子が「テロリストに逃げられる」「隊長の命令を連続無視」「領海侵犯」「注意を欠いてあっさり殺される」というプロフェッショナルらしからぬ失態続きだったことには驚かされた。「撮影に全面協力をしている」という海上保安庁がこの脚本に難色を示さなかったことが不思議なくらいだ。

強引な脚本は海外配信への対策か

 ただ、これは『DCU』が海外2社との共同制作による影響も考えられる。たとえば、日本人の多くはテロリスト、国外逃亡、領海侵犯、さらに、近隣諸国との情勢に鈍感だが、外国人の中には敏感な人も多く、だからこそエンタメに直結しやすい。

 とりわけロシア、中国、北朝鮮、韓国がからむ日本海周辺の情勢は、日本人以上に外国人にとってエンタメの材料に見えるのではないか。もし隆子の無謀な行動と殉職に海外2社の影響があるのなら、今後はさらに外国人好みの国際情勢がからむ展開が続くのかもしれない。

 そしてもう1つ忘れてはいけない要素は、北京冬季オリンピックの放送で1週休みになること。「2週間にわたるプチブレイクの前に、意外性のあるショッキングな展開で視聴者を引きつけ、次回は“弔い合戦”としてリスタートさせる」というイメージなのかもしれない。

 実際、次回予告は新名正義(阿部寛)の「これは隆子の弔い合戦だ」という言葉から始まり、「仲間を殺した犯人を探せ!」の文字も見られる。そもそも第1話は25分拡大、第2・3話は15分拡大していた。つまり、ここまで第1~3話で、実質的に4話分放送していることになり、その意味では「殉職のタイミングが早すぎる」ということはないだろう。

「潜らず救助せず」で感動させられるか

 同作を見ていて隆子の殉職以上に気になってしまうのが、カタルシスの不足。「手錠を持ったダイバーが水中事件を解決する」というコンセプトであるにもかかわらず陸のシーンが長く、第3話では潜水シーンがなかった。「今後はさらに潜水シーンが減る」という声も伝わっている。

 いずれにしても、おぼろげに『海猿』(フジテレビ系)のような潜水士の奮闘や人命救助の感動を期待していた視聴者に肩透かしを食らわせているのは間違いのないところ。「事件解決への流れが通常の刑事ドラマと大差ない」という根本的な問題も含め、今後は「どのようにカタルシスを感じさせていくか」が同作の評判を左右していくだろう。

 日曜劇場というドラマ枠には固定ファンが多いことから、視聴率が急落することは考えにくいが、視聴者の信頼となると話が別。果たして『DCU』は第3話で失いつつある信頼を取り戻すことはできるのか。思わぬ形で第4話の内容は注目を集めることになりそうだ。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。