12月27日21時から、フジテレビで注目のドラマが放送される。『志村けんとドリフの大爆笑物語』だ。
爆笑コントでスターとなった志村けんの下積み時代から、スターになってからの苦悩を描いた作品。想像を絶するほどの過酷なスケジュールや、舞台上では絶対にわからない苦悩などが描かれるという。ドリフメンバーの著書で断片的に読んだことはあるが、映像で観るのは初めてだ。
ドリフ関連の著書でもっとも心に響いた『だめだこりゃ いかりや長介自伝』(新潮社)には、人気絶頂時のドリフの「裏側の空気」が描かれている。『8時だョ!全員集合』(TBS系)の絶頂期、メンバーは全員が疲れを溜めていたという。日曜日から水曜日は営業で、木曜日と金曜日はコントの稽古、そして土曜日は生本番。今回のドラマでも、「笑いの陰に苦労あり」という舞台裏の大変さが描かれるのを楽しみにしている。
ドリフのコント“珠玉の3本”とは
ドリフマニアの私は、ドリフのさまざまなコント(『8時だョ!全員集合』、『ドリフ大爆笑』<フジテレビ系>、その他)を観られるだけ観てきた。その中から、記憶に残るコント(5人出演もの)を3つほど挙げたい。
●「会社コント」
いかりや演じる課長が4人の社員に訓示を垂れている際、会社に電話がかかってくる。仲本工事が「うるせえ!」とぶっきらぼうに電話を切ると、いかりやが「大切なお得意様だったらどうするんだ!」と一喝。次に加藤茶が丁寧に対応すると、いかりやが「さすがだねぇ。みんなも見習いなさい。ところで誰からだね?」「間違い電話です!」。次の瞬間、全員がズッコケる。いかりやと加藤のやりとりが絶妙であり、セリフを返す間は加藤の持ち味だった。
次に電話に出た志村は「電話が遠いんだけど!」と大声になる。受話器の音声スピーカーを口に、会話スピーカーを耳にした志村に「逆だよ逆!」といかりやが突っ込むと、志村は受話器を逆のまま右耳から左耳に切り替える。
いかりやが部屋を出ると、4人は麻雀を始める。忘れ物をしたいかりやが戻ってくると、志村は仲本の右腕を受話器代わりに電話をしているフリをする。
こんなパターンを、会社員だった父はゲラゲラ笑いながら観ていた。
●「教室コント」
『8時だョ!全員集合』の定番コント。女性ゲストが登場した後、4人が遅刻の設定で登場してくる。最後に入ってきた志村が机に座ると、「オヤジ、酒くれ!」といかりや先生に声をかける。
このつかみの後、いかりや先生が「1時間目は英語です。加藤君、英語で1は?」。答えに悩む加藤に、仲本が「犬が吠えるジェスチャー」をする。すると加藤が「にゃおーん」。
作文の授業では、仲本が「いろはかるたを作りました。『い』かりやが歩けばオバケも逃げる。『ろ』んより証拠にひどい顔。……『とうとう死んだかいかりやは』」――いかりや先生が仲本をメガホンで叩く。
国語の授業では諺などを暗唱する。いかりや先生が「有名な俳句の続きは何でしょう。『雀の子』」と言えば、志村が「そこのけそこのけ あそこの毛」。「石橋を叩いて渡る」の復唱では、志村が「いかりやを叩いて殺せ」。いずれも、志村のマイクは大音量だ。
定番が、いかりや先生が机(トタン製)に顔をぶつけるズッコケ方。「コントのメリハリをつけるうえでとても大きな効果を生んでいた」と、いかりやは前出の著書で述べている。
●「銭湯コント」
『ドリフ大爆笑』の「もしもこんな○○があったら」の大人気バージョン。銭湯にやってきたいかりやが4人に無理やり服を脱がされ、シャンプーをかけられ、股の間を洗われ、湯舟に投げ捨てられる。一回転したいかりやが湯船から出ると、またも同じサービスが……。最後には、タオルで体を叩かれる。このコントをリズミカルにしたのが、ドリフ見習いだった、すわしんじの太鼓叩きだ。
「リーダーのいかりやが4人を指導する」通常のパターンと異なり、リーダーのいかりやがいじめられる。これがカギだった。
ドリフの“隠し味”だった高木ブー
その他にも、相撲部屋、剣道、家族、時代劇、商店街、アパート、軍隊、先生と不良など、さまざまなパターンで笑いを生んできたザ・ドリフターズ。リーダーのいかりや長介、クールで何でもこなす仲本工事、ボケる間が最高の加藤茶、ボケも突っ込みも最上級の志村けん、そして、何もできないキャラで日本中に“優越感”を与えた高木ブー。彼の存在感の薄さこそ、ドリフというグループのインパクトを持ち上げる「隠し味」だった気がする。とにかく、メンバーのキャラとバランスが絶妙だった。
昭和40年代から人気を博したドリフのコント。高校生や大学生になると飽きが来るが、年を取るとまた戻る。いつ見ても懐かしく笑えるのは、疲れようと揉めようと、ドリフが生放送に全力を注いだからだろう。
(文=稲垣翼/テレビウオッチャー)