JRA 14年後に「消費税以下」の評価大暴落、ノーザンファームに見切りをつけられた“6億馬”! その産駒が紫苑S(G3)で反撃の狼煙

 11日(土)の中山メインは秋華賞(G1)トライアルの紫苑S(G3)。3着までに優先出走権が与えられるこのレースには多数の良血馬が顔を揃えそうだ。

 G1を3勝したフィエールマンの全妹エクランドールを筆頭に、ワグネリアンの全妹ミスフィガロ、G1・3勝の名牝スイープトウショウの娘クリーンスイープ、メジャーエンブレムの初仔プレミアエンブレムなど……。

 他にも祖母がメジロドーベルのホウオウイクセル、2008年のオークス馬トールポピーが祖母というシャーレイポピーほか、有力馬は枚挙に暇がない。

 そんななか、祖母が01年のエリザベス女王杯(G1)勝ち馬トゥザヴィクトリーというメイサウザンアワー(牝3歳、美浦・尾関知人厩舎)に注目したい。

 叔父にトゥザワールドやトゥザグローリーがいるいわゆる「トゥザ一族」。母ディナシーは父キングカメハメハ、母トゥザヴィクトリーという血統が評価され、06年のセレクトセールで6億円(税別)という高額で落札された。これは15年が過ぎた現在も、セレクトセール史上最高額として君臨している。

 誕生から僅か5か月の牝駒に6億円もの値が付けられ、そのデビューが待ち望まれたが、デビュー前の放牧中に運悪く落雷に遭遇。これに驚いたディナシーは脚に致命傷を負ってしまい、結局一度も走ることなく生まれ故郷のノーザンファームで繁殖入りした。

 競走馬としての“稼ぎ”はゼロとなってしまったディナシー。それでも繁殖牝馬として期待は大きく、産駒がデビューするたびに注目を浴びてきた。

 しかし、これまで6頭がデビューするも、勝ち上がったのはメイサウザンアワーを含めて3頭。今のところ出世頭は通算3勝した初仔ヴェルデホで、現在2勝のメイサウザンアワーに兄超えの期待が懸かっている。

 競走馬になれず、繁殖牝馬としても苦戦していたディナシーに更なる悪夢が襲ったのは昨年秋。メイサウザンアワーが初勝利を挙げた直後に、ディナシーは「ノーザンファーム繁殖牝馬セール」に上場されたのだ。

 つまり、ノーザンファームから繁殖牝馬としての見切りをつけられたということである。無事落札はされたが、その取引額は1050万円(税別)。14年前の消費税(3000万円)にも満たない大暴落(マイナス5億8950万円)だった。

 こうしてノーザンファームを離れることになったディナシーはこの春、受胎していたニューイヤーズデイ産駒を出産。新天地で第二の繁殖生活をスタートさせている。

 すでに繁殖牝馬としては高齢といえる15歳を迎え、大逆転劇があるならメイサウザンアワーの活躍しかないだろう。そして紫苑Sで13分の11の抽選を突破すれば、それが現実味を帯びてもおかしくない。

 メイサウザンアワーはデビュー2戦目で勝ち上がったあと、昨秋の赤松賞(1勝クラス)でアカイトリノムスメの2着に好走。4月のフローラS(G2)では休み明けながら4着と力を見せた。このとき最後の直線で不利を受けた鞍上の石橋脩騎手は「直線で前が塞がらなければ、2着はあったレース」とあと一歩でオークス(G1)の権利をとれなかった悔しさをにじませた。

 5月に1勝クラスを勝利、夏を休養に充て、秋に備えたメイサウザンアワー。そのスタートセンスは抜群で、これまで先行する競馬をしながらも、5戦中4戦で上がり2位以内をマーク。開幕週の中山芝でその先行力を生かすことができれば、春の実績馬相手でもチャンスは十分あるだろう。

 6億円から1050万円という屈辱の大暴落を味わった母の逆襲はメイサウザンアワーに懸かっている。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。