JRA「ミルコロガシ」という今なお語り継がれる伝説! ライバルと立場逆転を決定づけた最強馬候補との別れ、屈辱を味わった天才が見せた逆襲の兆し

 先週末、新潟競馬場で行われた新潟記念(G3)を制したのは、12番人気の伏兵マイネルファンロン(牡6、美浦・手塚貴久厩舎)。これまで先行策で結果を残していたパートナーをアッと驚く後方待機策から勝利へ導いたのは、M.デムーロ騎手だ。

 最終開催で馬場の荒れた内側で伸びを欠く馬が見られた中、17頭立てのレースで8枠16番という外枠も味方したとはいえ、外ラチ一杯から豪快に先行勢を飲み込んだ好騎乗を披露してくれた。

 奇想天外な“デムーロマジック”で、末脚が切れるイメージのなかったマイネルファンロンの先入観を覆す勝利に、衝撃の瞬間を目撃した競馬ファンから絶賛の声が相次いだ。それと同時に近年、不振に喘いだデムーロ騎手の勝利に復調の兆しを感じたファンも少なくなかったのではないだろうか。

 今でこそC.ルメール騎手や川田将雅騎手が、トップジョッキーとして盤石の地位を築きつつあるものの、かつてG1レースで彼ら以上に圧倒的な存在感を見せていたのが、デムーロ騎手だった。

 1979年1月11日生まれのデムーロ騎手は現在42歳。94年に母国イタリアで騎手デビューすると97年から4年連続でイタリアの騎手リーディングを獲得する。

 その騎乗センスの高さを買われ、短期免許で初来日したのは遡ること22年前。異国の地で着実に結果を残した若手の有望株の評価は急上昇し、以降も2003年にネオユニヴァースとのコンビで春の二冠、翌年の皐月賞(G1)を10番人気ダイワメジャーで制するなど、騎乗センスは日本でも群を抜いていた。その後も12年には天覧競馬となった秋の天皇賞(G1)をエイシンフラッシュで制するなど、目を引く活躍を見せた。

 中でも今なお伝説として語り継がれるのは、G1騎乗機会10回すべてで3着以内に入った17年の記録だ。この年は5月のオークス(G1)から11月のマイルCS(G1)までの間で【5.1.4.0/10】という驚異的な好成績。人気馬だけでなく穴馬でも馬券圏内に入った回収率は単勝332%、複勝250%だった。当時の成績は以下の通り。

■2017年、M.デムーロ騎手のG1騎乗機会10戦の成績
5.21 オークス、アドマイヤミヤビ、2番人気、3着
5.28 日本ダービー、アドミラブル、1番人気、3着
6.4 安田記念、レッドファルクス、3番人気、3着
6.25 宝塚記念、サトノクラウン、3番人気、1着
10.1 スプリンターズS、レッドファルクス、1番人気、1着
10.15 秋華賞、モズカッチャン、5番人気、3着
10.22 菊花賞、キセキ、1番人気、1着
10.29 天皇賞・秋、サトノクラウン、2番人気、2着
11.12 エリザベス女王杯、モズカッチャン、5番人気、1着
11.19 マイルCS、ペルシアンナイト、4番人気、1着

 最終的にも年間を通じて【6.2.5.8/21】の勝率28.6%、連対率38.1%、複勝率61.9%という成績を残したデムーロ騎手。正式にJRA所属となった15年から上昇一途ということもあり、さらなる飛躍に期待された。

 これにはデムーロ騎手の騎乗馬を複勝で購入して転がしたら、大儲けできた意味も含めて“ミルコロガシ”と評したファンもいたほど。

 ところが順風満帆に見えた天才の潮目が変わったのは、今思えば18年暮れのホープフルS(G1)だったのかもしれない。

 このレースでデムーロ騎手がコンビを組んだのは、1番人気で勝利したサートゥルナーリア。デビューから3戦すべての手綱を取ったパートナーに、二冠馬ドゥラメンテの名前を引き合いに出すほど期待の大きな馬だった。

 当時、デムーロ騎手にはアドマイヤマーズというお手馬もいたが、サートゥルナーリア陣営は、翌年にルメール騎手への乗り替わりを発表。同馬の引退時に『netkeiba.com』で連載しているコラム『M.デムーロ世界一になる Road to No.1』にて、乗り替わりを知らされたときにかなり落ち込んだと振り返っていた。これからも、おそらく不本意な結果だったことも察しが付く。

 この降板劇の影響は、その後のデムーロ騎手の成績に直撃する。JRA所属初年の11勝から13勝、18勝、15勝と好調だった重賞の成績も19年はわずか3勝。20年も4勝に留まるほどの大打撃。20%前後を誇った重賞の勝率も、ついには一桁台まで落ち込んでしまった。

 だが、今年のデムーロ騎手が一味違うのは、以前ほどの馬質を得られない中で、再び上昇気流に乗りそうな気配を感じられるところだ。マイネルファンロンで制した新潟記念の勝利を加え、今年の重賞4勝は9月にして昨年全体の勝利数と同じ。勝率も12.9%と悪くない状況である。

 かつての輝きを取り戻すためにも、秋のG1戦線でさらなる大暴れを期待したい。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。